特許第6397393号(P6397393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397393
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】環境診断システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20180913BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20180913BHJP
【FI】
   A01G7/00 603
   A01G7/00 601Z
   G06Q50/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-221275(P2015-221275)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-85989(P2017-85989A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂 幸憲
(72)【発明者】
【氏名】石原 哲哉
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−016182(JP,A)
【文献】 特開2006−031072(JP,A)
【文献】 特開2011−120569(JP,A)
【文献】 特表2014−502851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/00
A01G 31/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培室内に設置される栽培棚に対して複数の栽培容器が配置されており、
前記栽培棚の各段の載置部において各栽培容器が配置されることでそれぞれ形成される植物栽培空間の栽培環境情報を検出する検出部と、前記検出部に電力を供給する電源部と、を含む診断ユニットを備え、
前記診断ユニットは、任意の植物栽培空間に対して移動可能に配置されており、
前記栽培棚における各植物栽培空間に対応する部位にはタグがそれぞれ設置されており、
前記診断ユニットは、前記診断ユニットの位置を検出するために、前記タグからの位置情報を受信する位置情報受信部を備え、
前記診断ユニットは、前記位置情報受信部が受信した位置情報と共に前記検出部によって検出された栽培環境情報を、前記栽培環境情報を管理する栽培環境管理装置へ無線で伝送する無線伝送部を含むことを特徴とする環境診断システム。
【請求項2】
前記検出部は、複数のセンサと、前記複数のセンサを一括して制御可能であり、且つ前記複数のセンサからの信号に基づいて前記栽培環境情報を検出する制御部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の環境診断システム。
【請求項3】
前記診断ユニットは、前記検出部によって検出された栽培環境情報を記憶する記憶部を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環境診断システム。
【請求項4】
前記栽培容器は、前記栽培棚に対して移動可能に配置されており、
前記診断ユニットが、前記栽培容器と並設した状態で前記任意の植物栽培空間に対して定期的に移動することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の環境診断システム。
【請求項5】
前記栽培容器は、前記栽培棚に対して固定して配置されており、
前記診断ユニットが、前記栽培容器に隣接した状態で前記任意の植物栽培空間に対して定期的に移動することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の環境診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培環境を診断する環境診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や果実、花木等の植物を室外で栽培すると、天候の変化によっては、植物の成長に悪影響を及ぼすことがあるため、最近では、天候の変化の影響を受けない室内空間(栽培室)で植物を栽培する植物工場が実用化されている。植物工場の栽培室内には、植物を収容する栽培容器を一方向に所定の間隔をおいて配置可能な栽培棚が設置されている。
【0003】
ところで、植物を安定的に栽培するためには、温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度等を栽培環境に適した値に調節し、栽培室内の栽培環境を適正なものに保つことが必要である。そこで、例えば、栽培室内の複数箇所に、温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度等の栽培環境情報を検出する各種センサを複数設置し、各種センサにより、栽培室内の複数箇所の栽培環境情報を検出する。そして、各種センサにより検出された栽培環境情報に基づいて、栽培室内の栽培環境が適正なものに保たれるように、栽培室内の栽培環境を制御する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−34248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、栽培室内の複数箇所に複数設置された各種センサでは、栽培棚において各栽培容器が配置される植物栽培空間の栽培環境情報を精度良く検出することができない。よって、各植物栽培空間の温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度等が栽培環境に適した値になっていない虞がある。各植物栽培空間の温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度等が栽培環境に適した値になっていないと、各栽培容器に収容された植物を安定的に栽培することができない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、各植物栽培空間の栽培環境情報を精度良く検出することができる環境診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する環境診断システムは、栽培室内に設置される栽培棚に対して複数の栽培容器が配置されており、前記栽培棚において各栽培容器が配置される植物栽培空間の栽培環境情報を検出する検出部と、前記検出部に電力を供給する電源部と、を含む診断ユニットを備え、前記診断ユニットは、任意の植物栽培空間に対して移動可能に配置されている。ここで、「栽培環境情報」とは、植物栽培空間の温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度や、それらが測定された位置や時間の情報を含めたものを言う。
【0008】
上記環境診断システムにおいて、前記検出部は、複数のセンサと、前記複数のセンサを一括して制御可能であり、且つ前記複数のセンサからの信号に基づいて前記栽培環境情報を検出する制御部と、を含むことが好ましい。
【0009】
上記環境診断システムにおいて、前記診断ユニットは、前記検出部によって検出された栽培環境情報を、前記栽培環境情報を管理する栽培環境管理装置へ無線で伝送する無線伝送部を含むことが好ましい。
【0010】
上記環境診断システムにおいて、前記診断ユニットは、前記検出部によって検出された栽培環境情報を記憶する記憶部を含むことが好ましい。
上記環境診断システムにおいて、前記栽培棚における各植物栽培空間に対応する部位にはタグが設置されており、前記診断ユニットは、前記診断ユニットの位置を検出するために、前記タグからの位置情報を受信する位置情報受信部を備えていることが好ましい。
【0011】
上記環境診断システムにおいて、前記栽培容器は、前記栽培棚に対して移動可能に配置されており、前記診断ユニットが、前記栽培容器と並設した状態で前記任意の植物栽培空間に対して定期的に移動することが好ましい。
【0012】
上記環境診断システムにおいて、前記栽培容器は、前記栽培棚に対して固定して配置されており、前記診断ユニットが、前記栽培容器に隣接した状態で前記任意の植物栽培空間に対して定期的に移動することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、各植物栽培空間の栽培環境情報を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における植物工場の栽培室内を示す模式図。
図2】環境診断システムの全体構成を模式的に示すブロック図。
図3】診断ユニットの周辺を拡大して示す模式図。
図4】別の実施形態における診断ユニットの周辺を拡大して示す模式図。
図5】別の実施形態における環境診断システムの全体構成を模式的に示すブロック図。
図6】別の実施形態における植物工場の栽培室内を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、環境診断システムを具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。本実施形態の環境診断システムは、植物栽培装置の栽培棚において形成される植物栽培空間の栽培環境を診断するものである。
【0016】
まず、植物栽培装置10について説明する。
図1に示すように、植物栽培装置10は、植物工場11の栽培室12内に設置される多段式の栽培棚13を複数備えている。なお、図1では、説明の都合上、紙面手前の栽培棚13に関して詳細に説明し、その他の栽培棚13については二点鎖線で示してそれらの栽培棚13に関する詳細な説明を省略する。なお、本実施形態において、各栽培棚13に関する構成は全て同じ構成である。
【0017】
栽培棚13における上下方向に対して直交する第1の方向を栽培棚13の左右方向とし、栽培棚13における上下方向に対して直交し、且つ左右方向に対しても直交する第2の方向を栽培棚13の奥行方向とすると、栽培棚13の左右方向の長さは、栽培棚13の奥行方向の長さよりも長くなっている。栽培棚13における左右方向の両側方、及び栽培棚13における奥行方向の両側方は開放している。
【0018】
植物工場11は、二酸化炭素ガスボンベ11aを備えている。二酸化炭素ガスボンベ11aは、図示しない圧力調整器、制御弁が配置された導入配管11bを介して栽培室12内に連通している。そして、二酸化炭素ガスボンベ11aから導入配管11bを介して栽培室12内へ二酸化炭素ガスの導入が行われている。よって、栽培室12内の空気には、二酸化炭素が混合されている。また、栽培室12内には、栽培室12内の温度を調整する空調装置12aと、栽培室12内の湿度を調整する加湿器12bとが設けられている。栽培室12内は、空調装置12aによって温度が調整され、加湿器12bによって湿度が調整されている。
【0019】
栽培棚13の各段には、植物15(例えば野菜や果実、花木等)を収容する栽培容器16(栽培パレット)が複数設けられている。複数の栽培容器16は、栽培棚13の各段において、左右方向(一方向)に所定の間隔をおいて配置されている。そして、栽培棚13には、各栽培容器16が配置される植物栽培空間13kがそれぞれ形成されている。したがって、栽培棚13の各段には、植物栽培空間13kが左右方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。各植物栽培空間13kは、栽培棚13において予め定められた位置に形成された空間である。なお、栽培棚13の奥行方向には、栽培容器16は複数並設されていない。よって、栽培棚13の左右方向の長さは、栽培容器16が複数配置可能な長さになっており、栽培棚13の奥行方向の長さは、栽培容器16が一つだけ配置可能な長さになっている。
【0020】
栽培棚13の各段において、栽培容器16が載置される載置部13aは、例えば、栽培棚13の左右方向に延びるベルトコンベアであり、載置部13aに載置された栽培容器16を栽培棚13の左右方向に搬送可能になっている。したがって、栽培容器16は、栽培棚13に対して栽培棚13の左右方向に移動可能に配置されている。そして、栽培容器16は、載置部13aによって、例えば、栽培棚13の左右方向の一端側の植物栽培空間13kから栽培棚13の左右方向の他端側で隣り合う位置の植物栽培空間13kへ順に搬送される。
【0021】
栽培棚13の各段には、植物15に対して光を照射する照明装置17が設けられている。照明装置17は、栽培棚13の各段において、植物15の上方であって、且つ植物15に対して上下方向に重なる位置に配置されている。なお、図1では、説明の都合上、栽培棚13の最も上段の照明装置17のみ図示しており、栽培棚13における最も上段以外の各段に配置されている照明装置17の図示を省略している。
【0022】
照明装置17は、例えば発光ダイオード(LED)や蛍光灯等からなる。本実施形態では、照明装置17は、柱状の蛍光灯をその長手方向が栽培棚13の奥行方向に沿った方向に配置され、複数の蛍光灯を栽培棚13の左右方向に並設した構成になっている。照明装置17からは、植物15の光合成に必要な所定波長の光が植物15に向けて照射される。照明装置17は点灯と消灯とに切り換え可能である。そして、照明装置17を点灯させて植物15に光を照射させたり、照明装置17を消灯したりすることにより、植物15が光合成を行う昼の時間と、光合成を行わない夜の時間とを人工的に作り出している。
【0023】
次に、環境診断システム19について説明する。
図2及び図3に示すように、環境診断システム19は、植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出する検出部21を含む診断ユニット20を備えている。検出部21は、温度を検出する温度センサ、湿度を検出する湿度センサ、照度を検出する日照センサ、二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度センサ、気流を検出する気流センサ、養水分の状態を検出するpHセンサやECセンサ等の複数のセンサ21aを含む。
【0024】
また、検出部21は、複数のセンサ21aを一括して制御可能であり、且つ複数のセンサ21aからの信号に基づいて栽培環境情報を検出する制御部21b(CPU)を含む。制御部21bは、各々の植物栽培空間13kの環境に合わせて、各センサ21aの作動(各センサ21aのオンオフの切り換え)をコントロールし、各センサ21aからの信号に基づいて、各々の植物栽培空間13kに必要な栽培環境情報を個別に検出(測定)するプログラムが予め記憶されている。そして、制御部21bは、プログラムによって、温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度、気流、養水分等の栽培環境情報を検出する。
【0025】
また、環境診断システム19は、検出部21によって検出された栽培環境情報を管理する栽培環境管理装置25(例えば、図1に示すノートパソコン等)を備えている。さらに、診断ユニット20は、検出部21によって検出された栽培環境情報を、栽培環境管理装置25へ電波を用いて無線で伝送する無線伝送部22を含む。そして、検出部21によって検出された栽培環境情報は、無線伝送部22によって栽培環境管理装置25へ伝送される。栽培環境管理装置25は、無線伝送部22によって伝送された栽培環境情報を管理、分析する。
【0026】
また、診断ユニット20は、入出力ポート20pを備えている。入出力ポート20pは、接続線L1を介して栽培環境管理装置25に接続可能である。また、入出力ポート20pは、制御部21bと電気的に接続されている。そして、入出力ポート20pが、接続線L1を介して栽培環境管理装置25に接続されている場合では、栽培環境管理装置25から接続線L1及び入出力ポート20pを介して制御部21bへ制御ソフト等の制御情報が送信可能になっている。栽培環境管理装置25から接続線L1及び入出力ポート20pを介して制御部21bへ制御ソフト等の制御情報が送信されると、制御部21bに記憶されているプログラムを変更したり更新したりすることが可能になっている。例えば、制御部21bに記憶されているプログラムを変更することで、診断ユニット20を使用する環境に合わせてカスタマイズをすることが可能になっている。また、制御部21bに記憶されているプログラムを更新することで、制御部21bをバージョンアップ(性能アップ)させることが可能になっている。
【0027】
栽培棚13における各植物栽培空間13kに対応する部位にはタグ26がそれぞれ設置されている。検出部21は、タグ26からの位置情報を受信する位置情報受信部23を備えている。位置情報受信部23が受信した位置情報は、制御部21bで処理され、無線伝送部22によって栽培環境管理装置25に伝送される。栽培環境管理装置25は、無線伝送部22によって伝送された位置情報に基づいて、診断ユニット20の位置を検出する。よって、本実施形態では、栽培環境管理装置25は、診断ユニット20の位置を検出する位置検出部としても機能する。
【0028】
診断ユニット20は、検出部21(複数のセンサ21a、位置情報検出部23及び制御部21b)及び無線伝送部22に電力を供給する電源部24を含む。そして、複数のセンサ21a、制御部21b、無線伝送部22及び位置情報受信部23は、電源部24から電力が供給されることにより駆動する。
【0029】
診断ユニット20は、検出部21、無線伝送部22及び電源部24を収容する収容容器20aを有している。収容容器20aは、栽培容器16と同じサイズである。収容容器20aは、栽培棚13の各段において、栽培容器16と並設した状態で載置部13aに定期的に載置されて、栽培棚13の左右方向に移動する。よって、診断ユニット20は、栽培棚13に対して栽培棚13の左右方向に移動可能に配置されており、栽培容器16と並設した状態で任意の植物栽培空間13kに対して栽培棚13の左右方向に定期的に移動する。
【0030】
次に、本実施形態の作用について説明する。
診断ユニット20を、栽培棚13の任意の植物栽培空間13kに配置することにより、診断ユニット20が配置された植物栽培空間13kの栽培環境情報が検出部21により検出される。さらに、診断ユニット20が、栽培棚13の左右方向に移動することにより、複数の植物栽培空間13kに対して移動し、各植物栽培空間13kの栽培環境情報が検出部21により検出される。検出部21の各種センサ21aで検出された温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度、気流、養水分の状態などの環境情報や、タグ26から位置情報受信部23が受信した位置情報などは制御部21bで処理され、時間情報などと共に無線伝送部22によって栽培環境管理装置25に伝送される。そして、栽培環境管理装置25は、診断ユニット20から伝送された温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度や、それらが測定された位置や時間の情報を含めた「栽培環境情報」を分析して、植物栽培空間13kが植物15の栽培に適した環境であるか否かを診断する。
【0031】
植物工場11の栽培室12内に植物栽培装置10が導入されたときには、まず、栽培棚13の各段の載置部13aに栽培容器16を載置する前に、載置部13aに診断ユニット20を載置し、診断ユニット20を栽培棚13の左右方向に移動させ、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出部21により検出する。そして、栽培環境管理装置25が、無線伝送部22によって伝送された栽培環境情報に基づいて、各植物栽培空間13kの栽培環境が植物15の栽培に適した環境であるか否かを診断する。
【0032】
栽培される植物15には、個々に育成に最適な栽培条件がある。植物15が光合成を行う昼間の時間の温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度、気流などの環境条件や、光合成を行わない夜間の温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度、気流などの環境条件、そして、昼間と夜間との時間設定、また、養水分の成分や濃度、量、液温、時間などの諸条件の管理も、植物15を最適に育成させるためには必要な栽培条件である。
【0033】
栽培室12内に複数の栽培棚13を設置して複数の栽培容器16を用いて一度に大量の植物15を栽培すると、栽培室12内の栽培棚13の位置や棚の上段、下段などの位置により、栽培容器16が配置される植物栽培空間13kの栽培環境に差が生じる。最適な栽培条件とは一致しない、栽培に適さない悪環境下で栽培された植物15は生育が良くないことが多く、安定した植物生産ができない。環境診断システム19は、任意の植物栽培空間13kに移動可能で、全ての植物栽培空間13kに対して診断ユニット20を使って栽培環境情報を測定して栽培環境管理装置25に送り、植物15の最適な栽培条件と比較して栽培に適した環境であるか否かを診断することが可能で、植物15の安定生産が実現できる。
【0034】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)環境診断システム19は、検出部21と、検出部21に電力を供給する電源部24とを含む診断ユニット20を備えている。診断ユニット20は、任意の植物栽培空間13kに対して移動可能に配置されている。これによれば、診断ユニット20が、任意の植物栽培空間13kに対して移動することにより、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出部21により検出することができる。よって、従来技術のように、栽培室12内の複数箇所にセンサ21aを複数設置する場合に比べて、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を精度良く検出することができる。
【0035】
(2)検出部21は、複数のセンサ21aと、複数のセンサ21aを一括して制御可能であり、且つ複数のセンサ21aからの信号に基づいて栽培環境情報を検出する制御部21bとを含む。これによれば、例えば、制御部21bは、各々の植物栽培空間13kの環境に合わせて、各センサ21aの作動(各センサ21aのオンオフの切り換え)をコントロールし、各センサ21aからの信号に基づいて、各々の植物栽培空間13kに必要な栽培環境情報を個別に検出(測定)することができる。また、制御部21bに記憶されているプログラムを変更することで、診断ユニット20を使用する環境に合わせてカスタマイズをすることが可能になる。さらには、制御部21bに記憶されているプログラムを更新することで、制御部21bをバージョンアップ(性能アップ)させることが可能になる。
【0036】
(3)診断ユニット20は、検出部21によって検出された栽培環境情報を、栽培環境管理装置25へ伝送する無線伝送部22を含む。これによれば、検出部21によって検出された栽培環境情報を栽培環境管理装置25へスムーズに伝送することができ、栽培環境管理装置25により栽培環境の管理、分析をスムーズに行うことができる。
【0037】
(4)栽培棚13における各植物栽培空間13kに対応する部位にはタグ26が設置されている。診断ユニット20は、診断ユニット20の位置を検出するために、タグ26からの位置情報を受信する位置情報受信部23を備えている。位置情報受信部23が受信した位置情報は、検出部21の各種センサ21aで検出された環境情報などと共に栽培環境管理装置25に伝送される。これによれば、栽培環境管理装置25は、各植物栽培空間13kの栽培環境情報がそれぞれ把握可能になるため、栽培環境の制御を効率良く行うことができる。
【0038】
(5)栽培容器16は、栽培棚13に対して栽培棚13の左右方向に移動可能に配置されており、診断ユニット20は、栽培容器16と並設した状態で任意の植物栽培空間13kに対して定期的に移動する。これによれば、植物15の栽培を継続したまま、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出部21により検出することができるため、植物15の栽培を効率良く行うことができる。
【0039】
(6)従来技術のように、栽培室12内の複数箇所に複数のセンサ21aを設置することは、植物工場11の栽培室12内が大規模になるほど、センサ21aの数が増加していくため、設備費用が増大する。しかし、本実施形態では、診断ユニット20を、栽培棚13の左右方向に移動させるだけで、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出部21により検出することができるため、センサ21aの数が増加することが無く、設備費用を抑えることができる。
【0040】
(7)診断ユニット20は、載置部13aにおける栽培棚13の左右方向への搬送によって、栽培棚13の左右方向に移動する。よって、診断ユニット20は、載置部13aの駆動によって自動的に栽培棚13の左右方向に移動するため、診断ユニット20を手動で栽培棚13の左右方向に移動させる必要が無く、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を自動的に検出することができる。
【0041】
(8)センサ21aは、同じ種類のセンサ21aであったとしても、個々のセンサ21aによって検出の精度に誤差が生じる。よって、各植物栽培空間13kにセンサ21aをそれぞれ設置する場合、個々のセンサ21aの検出にばらつきが生じることがあり、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を精度良く検出することができない虞がある。しかし、本実施形態では、診断ユニット20が栽培棚13の左右方向に移動することにより、一台の診断ユニット20で、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出することができるため、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を精度良く検出することができる。
【0042】
(9)診断ユニット20は、栽培棚13の各段において、栽培容器16と並設した状態で載置部13aに定期的に載置される。よって、各植物栽培空間13kの栽培環境情報が検出部21により定期的に検出される。したがって、例えば、照明装置17や空調装置12a等の栽培環境を制御する装置に不具合が生じていないか否かを定期的に監視することが可能となり、装置の不具合を事前に検出することが可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図4に示すように、診断ユニット20は、検出部21(制御部21b)によって検出された栽培環境情報を記憶する記憶部27を含んでいてもよい。記憶部27は、複数のセンサ21aで検出された環境情報や位置情報受信部23が受信した位置情報等を制御部21bで処理して、時間情報などと共に保管する。この場合、診断ユニット20は、無線伝送部22を備えていてもよいし、無線伝送部22を備えていなくてもよい。無線伝送部22を備えていない場合、記憶部27に保管された栽培環境情報は、例えば、入出力ポート20p及び接続線L1を介して栽培環境管理装置25に送信される。
【0044】
図5に示すように、栽培環境管理装置25とは別の管理装置25aから接続線L2及び入出力ポート20pを介して制御部21bへ制御ソフト等の制御情報を送信するようにしてもよい。
【0045】
図6に示すように、栽培容器16は、栽培棚13に対して固定して配置されており、診断ユニット20が、栽培容器16に隣接した状態で任意の植物栽培空間13kに対して定期的に移動するようにしてもよい。栽培室12内の床面には、診断ユニット20における栽培容器16に隣接した状態での任意の植物栽培空間13kに対しての移動をガイドする一対のガイドレール28が設けられている。診断ユニット20には、駆動輪が設けられており、自身の駆動によって、栽培容器16に隣接した状態で任意の植物栽培空間13kに対して移動可能になっている。これによれば、栽培容器16が、栽培棚13に対して固定して配置されている場合であっても、診断ユニット20が、栽培容器16に隣接した状態で任意の植物栽培空間13kに対して定期的に移動することにより、各植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出することができる。
【0046】
・ 実施形態において、診断ユニット20の移動方向は、栽培棚13の左右方向に限定されるものではない。例えば、栽培棚13の奥行方向に栽培容器16が複数並設されている構成であれば、診断ユニット20は、栽培棚13に対して栽培棚13の奥行方向に移動可能に配置されていてもよい。また、診断ユニット20が、栽培棚13の上下方向に移動可能な構成にしてもよい。
【0047】
・ 実施形態において、栽培棚13における各植物栽培空間13kに対応する部位にタグ26が設置されていなくてもよい。この場合、栽培環境管理装置25は、例えば、無線伝送部22から伝送される栽培環境情報の受信時間から、検出部21が栽培環境情報を検出した位置を推定するようにしてもよい。
【0048】
・ 実施形態において、環境診断システム19は、検出部21により検出された栽培環境情報が異常な情報であった場合に、その栽培環境情報を検出した位置やその位置の環境状態等を報知する報知部をさらに備えてもよい。
【0049】
・ 実施形態において、載置部13aが、載置部13aに載置された栽培容器16や診断ユニット20を栽培棚13の左右方向に搬送可能になっていなくてもよい。例えば、栽培容器16や診断ユニット20の収容容器20aに駆動輪を設けて、栽培容器16や診断ユニット20が、自身の駆動によって栽培棚13の左右方向に移動するようにしてもよい。
【0050】
・ 実施形態において、収容容器20aが、栽培容器16と同じサイズでなくてもよく、収容容器20aが、栽培容器16よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。例えば、収容容器20aを栽培容器16よりも小さくし、栽培容器16と同じサイズの容器に複数の収容容器20aを配置してもよい。要は、一つの容器に診断ユニット20が複数搭載されている構成でもよい。例えば、収容容器20aのサイズを、一つの植物15と同じサイズにし、一つの植物15に対応する診断ユニット20を設ける構成にしてもよい。これによれば、一つ一つの植物15が配置される植物栽培空間13kの栽培環境情報を検出することができる。
【0051】
・ 実施形態において、診断ユニット20を手動で栽培棚13の左右方向に移動させるようにしてもよい。
・ 実施形態において、検出部21として、例えば、カメラを用いてもよい。そして、栽培環境管理装置25が、カメラによって撮影された栽培環境情報である画像に基づいて、各植物栽培空間13kの栽培環境が植物15の栽培に適した環境であるか否かを分析するようにしてもよい。
【0052】
・ 実施形態において、植物栽培装置10に照明装置17を設けずに、例えば、太陽光を植物15に照射するようにしてもよい。
・ 実施形態において、無線伝送部22は、電波以外に、光、電磁波等を用いてもよい。
【0053】
・ 実施形態において、検出部21によって検出された栽培環境情報を、入出力ポート20p及び接続線L1を介して栽培環境管理装置25へ送信するようにしてもよい。この場合、診断ユニット20に、無線伝送部22が設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0054】
・ 実施形態において、無線伝送部22を用いて、制御ソフト等の制御情報を、栽培環境管理装置25から制御部21bへ送信するようにしてもよい。
・ 実施形態において、載置部13aが、植物15を栽培するために必要な栽培養液で満たされたパレットであってもよい。そして、栽培容器16が、例えば、発泡スチロール材等で形成されており、栽培容器16が栽培養液の中で浮いた状態で、パレット内を浮遊しながら移動するようになっていてもよい。この場合、複数並設された栽培容器16は、パレットの片側から外力によって押されて任意の植物栽培空間13kに対して移動可能になっている。そして、診断ユニット20が、栽培容器16と並設した状態で任意の植物栽培空間13kに対して定期的に移動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
12…栽培室、13…栽培棚、13k…植物栽培空間、16…栽培容器、19…環境診断システム、20…診断ユニット、21…検出部、21a…センサ、21b…制御部、22…無線伝送部、23…位置情報受信部、24…電源部、25…栽培環境管理装置、26…タグ、27…記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6