(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アセチレン由来カーボンブラックの量が、質量画分として、前記組成物中に存在するカーボンブラックの90%よりも多くを示す、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
前記アセチレン由来カーボンブラック含有量が10〜40phrの範囲であり、前記無機充填剤含有量が8〜30phrの範囲である、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
使用する測定および試験法
上記ゴム組成物を、硬化の前後において、下記で説明するようにして特性決定する。
ムーニー可塑度
フランス規格NF T 43−005 (1991年)に記載されているような振動(oscillating)稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:未硬化状態(即ち、硬化前)の組成物を100℃に加熱した円筒状チャンバー内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験標本内で2rpmで回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1 + 4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0011】
破断点エネルギー
引裂き抵抗指数を100℃で測定する。破壊即ち破断荷重(FRD、MPaでの)を得るために加える荷重を詳細に測定し、さらに、破断点歪み(DRD、%での)を、寸法10×105×2.5mmの試験標本であって、この試験標本の破断をもたらすためにその長さの中心に5mmの深さまで切込みを入れた試験標本において測定する。即ち、FRDとDRDの積である、上記試験標本の破断をもたらすエネルギー(破断点エネルギー)を測定することが可能である。
【0012】
動的特性
動的特性tan(δ)
maxは、規格ASTM D 5992‐96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互正弦波剪断応力に10Hzの周波数で供した加硫組成物のサンプル(厚さ4mmおよび400mm
2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を、規格ASTM D 1349−99に従う標準温度条件(23℃)下に或いは、場合によっては、異なる温度において記録する;実施例においては、測定を60℃で実施している。歪み振幅掃引を、0.1%から45%まで(前向きサイクル)、次いで、45%から0.1%まで(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は損失係数tan(δ)である。tan(δ)
maxで示す観察されたtan(δ)の最高値は、戻りサイクルにおいて示される。
【0013】
コンパウンドの熱伝導率の測定
熱伝導率は、保護熱板(GHP)法によって25℃で測定する。
サンプル調製
熱伝導率を測定するには、サンプルを、15mmの各側面およびほぼ2.5mmの厚さを有する立方体の形で提供する。
【0014】
測定装置
立方体サンプル(w = 15mm、H ≒ 2.5mm)を2つの交換器の間に置く。各交換器の温度を、永続的な熱平衡が得られるまで一定に保つ。この場合、両交換器は、25℃で測定するために20℃および30℃にある。2つのサーモカップル(d = 80μm)を各交換器の表面に配置し、温度の読取りを立方体の軸上で実施する。熱損失を阻止するために、装置全体を、同じ材料の熱保護材を使用して断熱する。定常状態において、以下の4つの温度を測定する:
T
1:高温交換器
T
2:ヒーター (下表面)
T
3:ヒーター (上表面)
T
4:低温交換器
U:ヒーター端子の電圧
I:ヒーター内の電流強度
S:サンプルの断面
L:サンプルの長さ
L
4ー3:ヒーターと低温交換器との間の実際の長さ
T
1 = T
2である場合、ヒーター内で消散した熱流束Φは、完全にサンプルに向う。
【0015】
測定値の処理(結果)
定常状態においては、サンプル内の温度勾配は均一である。サンプル内の熱流束密度は、下記の式によって得られる:
【数1】
【0016】
サンプルの熱伝導率λは、下記の式から推測する:
【数2】
【0017】
発明の詳細な説明
本説明においては、他で明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量パーセントである。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでの範囲にある値の領域を示し(即ち、限界値aとbは除かれる)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aからbまでの範囲にある値の領域を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0018】
ジエンエラストマー
“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2つの炭素・炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0019】
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。一般に、“本質的に不飽和”なる表現は、共役ジエンモノマーに少なくとも1部由来し、15%(モル%)よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい;従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエン/α‐オレフィンコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に属さず、特に、“本質的に飽和”のジエンエラストマー(低いまたは極めて低い、常に15%よりも低いジエン由来の単位含有量)として説明し得る。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和”ジエンエラストマーなる表現は、特に、50%よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0020】
これらの定義を考慮すれば、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーは、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレンおよび3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレンおよびプロピレンから得られるエラストマーのような;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0021】
本発明は、任意のタイプのジエンエラストマーに当てはまるけれども、タイヤ技術における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、特に上記タイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーと一緒に使用するものであることを理解されたい。
【0022】
以下は、特に共役ジエンとして適している:1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3-ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C
1〜C
5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、2,4‐ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;市販の“ビニルトルエン”混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0023】
上記のコポリマーは、99質量%と20質量%の間のジエン単位と1質量%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含有し得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化し或いは官能化し得る。カーボンブラックにカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または例えばアミノベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号およびWO 2008/141702号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号、WO 2009/000750号およびWO 2009/000752号に記載されているような)を挙げることができる。また、官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0024】
下記が適している:ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のTg (ガラス転移温度、Tg;ASTM D 3418に従い測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−5℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐プラス3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−5℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
【0025】
要するに、本発明に従う組成物の1種以上のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選ばれる。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選ばれる。
【0026】
1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、SBR (エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれか)であるか、或いは、SBR/BR、SBR/NR (またはSBR/IR)、BR/NR (またはBR/IR)或いはSBR/BR/NR (またはSBR/BR/IR)ブレンド(混合物)である。SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中程度のスチレン含有量または例えば35〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4‐結合を有するBRとの混合物として使用し得る。
【0027】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(50phrよりも多くにおいて)、イソプレンエラストマーである。これは、特に、本発明の組成物を、タイヤにおいて、ある種のトレッド(例えば、産業車両用の)、クラウン補強用プライ(例えば、ワーキングプライ、保護プライまたはフーピングプライ)、カーカス補強用プライ、側壁、ビード、プロテクター、下地層、ゴムブロックおよびタイヤの上記領域間の界面を提供する他の内部ライナーのゴムマトリックスを構成するように意図する場合である。
【0028】
“イソプレンエラストマー”なる表現は、知られているとおり、イソプレンホモポリマーまたはイソプレンコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。イソプレンコポリマーのうちでは、特に、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム;IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)が挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは、90%よりも多い、さらに好ましくは98%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0029】
もう1つの特定の実施態様によれば、特にタイヤ側壁用またはチューブレスタイヤの気密内部ライナー(または他の空気不透過性コンポーネント)用を意図する場合、本発明に従う組成物は、少なくとも1種の本質的に飽和のジエンエラストマー、特に、少なくとも1種のEPDMコポリマーまたは少なくとも1種のブチルゴム(必要に応じて塩素化または臭素化した)を含み得る;これらのコポリマーは、単独で或いは上述したような高不飽和ジエンエラストマー、特に、NRもしくはIR、BRまたはSBRとの混合物として使用する。
【0030】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、−70℃と0℃の間のTgを有する1種以上の“高Tg”ジエンエラストマーと−110℃と−80℃の間、より好ましくは−105℃と−90℃の間のTgを有する1種以上の“低Tg”ジエンエラストマーとのブレンドを含む。高Tgエラストマーは、好ましくは、SSBR、E‐SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%よりも高いシス‐1,4‐連鎖含有量(モル%)を有する)、BIR、SIR、SBIRおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。低Tgエラストマーは、好ましくは、少なくとも70%に等しい含有量(モル%)に従うブタジエン単位を含む;低Tgエラストマーは、好ましくは、90%よりも多いシス‐1,4‐連鎖含有量(モル%)を有するポリブタジエン(BR)からなる。本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、例えば、30〜100phr、特に50〜100phrの高Tgエラストマーを、0〜70phr、特に0〜50phrの低Tgエラストマーとのブレンドとして含む;もう1つの例によれば、上記ゴム組成物は、100phrの全体において、溶液中で調製した1種以上のSBRを含む。
【0031】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、90%よりも多いシス‐1,4‐連鎖含有量(モル%)を示すBR (低Tgエラストマーとして)と1種以上のSSBRまたはE‐SBR (高Tgエラストマーとして)とのブレンドを含む。
【0032】
本発明に従う組成物は、単一のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含み得る;これらの単独または複数のジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと、或いはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーとさえ組合せて使用することが可能である。
【0033】
充填剤
本発明に従う組成物は、タイヤを製造するのに使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている補強用充填剤として、少なくともカーボンブラックと無機充填剤を含み;上記カーボンブラックは、少なくとも1種のアセチレン由来カーボンブラックを含む。本発明においては、タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0034】
全てのカーボンブラック、特に、タイヤにおいて通常使用するHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(“タイヤ級”ブラック類)は、アセチレン由来カーボンブラック以外のカーボンブラックとして適している。さらに詳細には、これらのタイヤ級ブラック類のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N400、N660、N683またはN722)も挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0035】
多くの場合“アセチレンブラック”なる表現によっても呼称されるアセチレン由来カーボンブラックは、出発物質としてのアセチレンからから製造されたカーボンブラックである。使用するアセチレンブラックは、当業者にとって既知の任意のアセチレンブラック、特に、共に40m
2/gよりも大きいBET表面積とCTAB比表面積および80ml/100gよりも大きいCOAN構造を有するアセチレンブラックからなり得る。アセチレン由来カーボンブラックとして特に適するのは、Chevron Chemical Company社から販売されている“アセチレンカーボンブラック”、Denki Kagaku Kogyo社から販売されている“Denka Black”のようなアセチレン由来カーボンブラック、或いは、例えば、SN2A社から販売されている“Y70”のようなアセチレン由来カーボンブラックである。
【0036】
また、本発明に従う組成物は、カーボンブラック以外の有機充填剤も含み得る。例えば、出願 WO-A-2006/069792号およびWO-A-2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル芳香族有機充填剤を挙げることができる。
【0037】
“無機充填剤”なる表現は、本出願においては、定義によれば、カーボンブラックと対比して、“白色充填剤”、“透明充填剤”とも、または“非黒色充填剤”とさえも称する、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る、その色合およびその由来(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである。そのような充填剤は、一般に、知られているとおり、その表面における官能基、特に、ヒドロキシル(−OH)基の存在に特徴を有し、補強用充填剤として使用するためには、イソプレンエラストマーと上記充填剤間に安定な化学結合を付与することを意図するカップリング剤またはカップリング系の使用を必要とする。
【0038】
従って、そのような無機充填剤は、カップリング剤と一緒に使用して、カップリング剤を含ませたゴム組成物の補強を可能にすることができる。また、無機充填剤は、カップリング剤以外にまたはカップリング無し(この場合、無機充填剤は補強役割を奏しない)で被覆剤(充填剤とエラストマーマトリックス間に結合をもたらさない)と一緒に使用し得る。
【0039】
無機充填剤が存在する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、球体または任意の他の適切な濃密化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、“無機充填剤”なる表現は、種々の無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
【0040】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO
2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al
2O
3)は、無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物を、低転がり抵抗性を有するタイヤトレッド用に意図する場合、使用する無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m
2/gと400m
2/gの間、より好ましくは60m
2/gと300m
2/gの間のBET表面積を有する。
【0042】
好ましくは、平均粒度(質量による)が20nmと300nmの間、より好ましくは20nmと150nmの間である無機充填剤が、本発明においては特に適している。この平均粒度は、通常、分析すべき充填剤の水中または界面活性剤を含む水溶液中での超音波解凝集による分散後に測定する。シリカのような無機充填剤においては、測定は、Brookhaven Instruments社から販売されている“XDC”(“X線ディスク遠心分離機”)タイプのX線検出遠心分離沈降速度計(sedimentometer)を使用して、以下の手順に従い実施する。分析すべき無機充填剤の3.2gのサンプルの40mlの水中懸濁液を、1500W超音波プローブ(Bioblock社から販売されている3/4インチ(19.05mm)Vibracellソニケーター)の60%出力(“出力制御”の最高位置の60%)における8分間に亘る作用によって生成させる;音波処理後、15mlの懸濁液を、3000rpmと6000rpmの間の範囲にある速度で回転しているディスクに導入する(速度は、充填剤の平均粒度の関数として調整する:粒度が小さいほど、速度は高い);120分間の沈降後、粒子の質量による粒度および平均粒度の質量分布dwを、上記“XDC”沈降速度計のソフトウェアによって算出する(dw = Σ(ni di5)/Σ(ni di4);niは粒度群即ち直径diを有する物体数である)。
【0043】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、上記無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合をもたらすことを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば出願 WO03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO03/002649号 (またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造に応じて“対称形”または“非対称形”と称するシランポリスルフィドを使用する。
【0044】
特に適しているのは、以下の定義に限定されることなく、下記の一般式(III)に相応する“対称形”シランポリスルフィドである:
【化1】
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC
1〜C
18アルキレン基またはC
6〜C
12アリーレン基、特にC
1〜C
10アルキレン、特にC
1〜C
4アルキレン、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化2】
(式中、R
1基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C
1〜C
18アルキル、C
5〜C
18シクロアルキルまたはC
6〜C
18アリール基(好ましくはC
1〜C
6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC
1〜C
4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R
2基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C
1〜C
18アルコキシルまたはC
5〜C
18シクロアルコキシル基(好ましくは、C
1〜C
4アルコキシル、特に、メトキシルおよびエトキシルから選ばれる基)を示す)]。
【0045】
上記式(III)に相応するアルコキシシランポリスルフィド類の混合物、特に、標準の商業的に入手可能な混合物の場合、“x”符号の平均値は、好ましくは2と5の間の、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x = 2)によっても有利に実施し得る。
【0046】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのような、ビス((C
1〜C
4)アルコキシル(C
1〜C
4)アルキルシリル(C
1〜C
4)アルキル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)が挙げられる。これらの化合物のうちでは、特に、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S
2]
2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S]
2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(または、US 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C
1〜C
4)アルコキシルジ(C
1〜C
4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0047】
アルコキシシランポリスルフィド類以外のカップリング剤の例としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式IIIにおいて、R
2 = OH)、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
【0048】
被覆剤としては、一般に、知られている通り、ゴムマトリックス中での無機充填剤の分散性を改良し且つ組成物の粘度を低下させることによって、未硬化状態における加工の容易性を改良することのできる加工助剤が考えられる;これらの加工助剤は、例えば、アルキルアルコキシシラン(特に、アルキルトリエトキシシラン)のような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);第一級、第二級または第三級アミン(例えば、トリアルカノールアミン);ヒドロキシル化または加水分解性POP類、例えば、α,ω−ジヒドロキシポリオルガノシロキサン(特に、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン);および、例えばステアリン酸のような脂肪酸である。
【0049】
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、160m
2/gのCTAB表面積に対して好ましくは無機充填剤の0.1質量%と12質量%の間の量、160m
2/gのCTAB表面積に対してはより好ましくは無機充填剤の4質量%と10質量%の間の量であり;および/または、被覆剤の含有量は、160m
2/gのCTAB表面積に対して好ましくは無機充填剤の0.1質量%と20質量%の間の量、160m
2/gのCTAB表面積に対してはより好ましくは無機充填剤の5質量%と20質量%の間の量である;カップリング剤の含有量は、充填剤の比表面積に対して調整することが可能である。
【0050】
本発明に従う組成物中に存在する無機充填剤の含有量は、5phr (エラストマー100質量部当りの質量部)以上であって、組成物の充填剤全体の質量画分として、多くとも50%を示し、そして、アセチレン由来カーボンブラックの含有量は3phrよりも多く、アセチレン由来カーボンブラックの量は、質量画分として、組成物中に存在するカーボンブラックの50%よりも多くを示す。
【0051】
好ましくは、アセチレン由来カーボンブラックの量は、質量画分として、組成物中に存在する充填剤全体の50%よりも多くを示す。
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、アセチレン由来カーボンブラックの量は、質量画分として、組成物中に存在するカーボンブラックの90%よりも多くを示し、さらにより好ましくは、該含有量は、組成物中に存在するカーボンブラックの100%を示す。
【0052】
好ましくは、充填剤全体含有量は、20〜150phr、好ましくは30〜90phr、さらにより好ましくは30〜70phrの範囲である。
アセチレン由来カーボンブラック含有量は、好ましくは、10phr以上である。
無機充填剤含有量は、好ましくは、8phr以上である。
【0053】
さらに好ましくは、アセチレン由来カーボンブラック含有量は10〜40phrの範囲であり、無機充填剤含有量は8〜30phrであり、さらにより好ましくは、無機充填剤含有量は12〜30phrの範囲である。
もう1つの好ましい実施態様によれば、無機充填剤含有量は、質量画分として、充填剤全体の多くとも30%を示し、さらにより好ましくは、無機充填剤含有量は、組成物の充填剤全体の質量画分として、40%よりも多くを示す。
【0054】
可塑化用オイルおよび樹脂
本発明に従う組成物は、可塑化用オイルおよび/または可塑化用樹脂を含み得る。
“可塑化用オイル”または“可塑化用樹脂”なる表現は、ムーニー可塑度を低下させることによって加工性を容易にする通例の機能を有するオイルまたは樹脂を意味するものと理解されたい。
【0055】
さらに詳細には、これらの可塑化用オイルは、多かれ少なかれ粘稠であって、特に本来固体である樹脂またはゴムとは対照的に、周囲温度(23℃)において液体(即ち、注釈すれば、その容器の形状を最終的に取る能力を有する物質)であるとして定義される。
好ましくは、増量剤オイルを、ポリオレフィンオイル(即ち、オレフィン、モノオレフィンまたはジオレフィンの重合に由来するオイル)、パラフィンオイル、ナフテン系オイル(低または高粘度を有する)、芳香族オイル、鉱油およびこれらのオイルの混合物からなる群から選択する。
【0056】
さらにまた、当業者にとっては既知の通り、“可塑化用樹脂”なる表現は、本出願においては、定義によれば、一方では周囲温度(23℃)において固体であり(オイルのような液体可塑化用化合物とは対照的に)、且つ、他方では使用を意図するゴム組成物と相溶性(即ち、典型的には5phrよりも多い使用含有量において混和性)であって真の希釈剤として作用する化合物に対して使用する。
【0057】
炭化水素樹脂は、当業者にとって周知のポリマーであって、これらの炭化水素樹脂をさらに“可塑化用”であるとして説明する場合、ジエンエラストマー組成物中で本来混和性である。炭化水素樹脂は、例えば、R. Mildenberg、M. ZanderおよびG. Collin (New York, VCH, 1997, ISBN 3‐527‐28617‐9)による“Hydrocarbon Resins”と題した著作物に記載されており、その第5章は、炭化水素樹脂の用途、特に、タイヤゴム分野に当てられている(5.5. "Rubber Tires and Mechanical Goods")。炭化水素樹脂は、脂肪族、芳香族または脂肪族/芳香族タイプ、即ち、脂肪族モノマーおよび/または芳香族モノマーをベースとし得る。炭化水素樹脂は、石油系(そうである場合、石油樹脂の名称でも知られている)または石油系でない天然または合成であり得る。炭化水素は、好ましくは、専ら炭化水素系である、即ち、炭化水素は、炭素原子と水素原子のみを含む。
【0058】
本発明に従う組成物は、そのように、1種以上の可塑化用オイルおよび/または1種以上の可塑化用樹脂を、使用する可塑化用オイル(1種以上)と可塑化用樹脂(1種以上)の合計含有量が30phr以下である、好ましくは0〜5phrの範囲にある限りにおいて含み得る。さらにより好ましくは、上記組成物は、可塑化用オイルと可塑化用樹脂を含まない。
【0059】
各種添加剤
また、本発明に従うゴム組成物は、例えば、他の可塑剤(本発明の可塑化用系以外の)、好ましくは、非芳香族または極僅かに芳香族性の可塑剤)、例えば、ナフテン系またはパラフィン系オイル、MESまたはTDAEオイル、グリセリンエステル(特にトリオレアート)、特にナタネまたはヒマワリ植物油のような天然エステル;顔料;化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドをベースとする架橋系;加硫促進剤;加硫活性化剤または戻り防止剤のような、タイヤまたはタイヤ用の半製品の製造を意図するエラストマー組成物において慣用的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。
【0060】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、無機充填剤の被覆用の薬剤、或いは、知られている通り、ゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改良し且つ組成物の粘度を低下させることによって、未硬化状態における組成物の加工性を改良することのできるより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル;第一級、第二級または第三級アミン;或いは、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0061】
ゴム組成物の製造
上記組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階、および、その後の、典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度まで機械加工する第2の段階を使用して製造し、この仕上げ段階において、架橋系を混入する。
【0062】
タイヤ内部ライナー用のゴム組成物を製造するための本発明に従う方法は、下記の段階を含む:
第1段階において、充填剤を、エラストマー中に、全てを、1以上の工程において、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練することによって混和する段階;
・その後、第2段階において、架橋系を混入する段階;
・全てを、110℃よりも低い最高温度まで混練する段階。
【0063】
これらの2つの段階は、同じミキサー内で連続して実施してもよく、或いは100℃よりも低い温度まで冷却する段階によって分離し、その後、第2のミキサーを使用して最終段階を実施してもよい。
【0064】
例えば、第1段階を1回の熱機械段階において実施し、その間に、全ての必須ベース構成成分(エラストマー、充填剤および必要な場合のカップリング剤およびグラファイト)を、先ず、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、次に、例えば1〜2分の混錬後、架橋系を除く他の添加剤、任意構成成分としての被覆剤または追加の加工助剤を導入する。そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、この場合、低温(例えば40℃と100℃の間)に維持したオープンミルのような開放ミキサー内で混入する。その後、全ての成分を、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する。
【0065】
架橋系は、好ましくは、加硫系、即ち、イオウ(またはイオウ供与体)と一次加硫促進剤とをベースとする系である。このベース加硫系に、各種既知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸または等価の化合物、またはグアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)等を添加し、後述するような第1非生産段階中および/または生産段階中に混入する。
【0066】
イオウは、0.5phrと12phrの間、特に1phrと10phrの間の好ましい含有量で使用する。一次加硫促進剤は、好ましくは0.5phrと1.0phrの間、より好ましくは0.5phrと5.0phrの間の含有量で使用する。
【0067】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、並びにチウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用し得る。これらの促進剤は、例えば、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(“TBZTD”)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“CBS”)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“DCBS”)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“TBBS”)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンイミド(“TBSI”)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(“ZBEC”)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。
【0068】
その後、そのようにして得られた最終組成物は、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはスラブの形にカレンダー加工するか、或いは、押出加工して、例えば、タイヤトレッドのような半製品の製造において使用するゴム形状要素を形成する。
【0069】
加硫(即ち硬化)は、既知の方法で、一般的に120℃と200℃の間の温度で、特に硬化温度、使用する加硫系および当該組成物の加硫速度に応じて、例えば、5分と90分の間の範囲であり得る十分な時間実施する。
【0070】
即ち、本発明に従う組成物は、有利には、タイヤ、特に、土木工事用に意図するタイヤのトレッドを構成し得る。また、後者は、例えばタイヤの中央円周領域内および/またはトレッドの肩部に位置するストライプまたはドレインの形でタイヤトレッドの1部分のみを構成し得る。
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0071】
本発明の典型的な実施態様
ゴム組成物の製造
下記の試験を、以下の方法で実施する:70%充填し且つ初期容器温度がおよそ90℃である密閉ミキサー内に、ジエンエラストマー、充填剤(カーボンブラックおよびシリカ)を、その後、1〜2分間混練後、加硫系を除いた各種他の添加剤を導入する。その後、熱機械的加工(非生産段階)を、1工程において、165℃の最高“落下”温度に達するまで実施する(およそ5分間に等しい総混練時間)。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、加硫系(イオウおよびスルフェンアミド促進剤)を、70℃の開放ミキサー(ホモ・フィニッシャー)に、混ぜ合せた混合物を、およそ5〜6分間配合することによって添加する(生産段階)。
【0072】
そのようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのスラブ(2〜3mm厚)または薄シートの形にカレンダー加工する。加硫(即ち硬化)を120℃で300分間実施する。
【0073】
試験1
この試験の目的は、本発明に従う組成物の熱伝導率とヒステリシス特性の改良を対照組成物と対比して実証することである。
【0074】
2通りの組成物A1およびB1は、上記の項において詳述した方法に従って製造し、量をphr、即ち、エラストマー100質量部当りの質量部で表している下記の同じ基本配合を有していた:
エラストマー (1) 100
酸化防止剤 (2) 1.5
パラフィン 1
PEG (3) 2.5
酸化亜鉛 3
ステアリン酸 1.5
スルフェンアミド (4) 1.1
イオウ 1.7
(1) 天然ゴム;
(2) 6PPD:N−1,3−ジメチルブチル−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン(Flexsys社からの“Santoflex 6−PPD);
(3) ポリエチレングリコール:Dow Corning社から販売されている“CARBOWAX 8000”;
(4) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(Flexsys社からの“Santocure CBS”)。
【0075】
組成物A1とB1は、下記の通りに定義する:
・対照組成物A1は、N115カーボンブラック(アセチレン由来ではない)とシリカのブレンドを含む土木工事車両タイヤ用の“通常”のタイヤトレッド組成物である。
・対照組成物B1においては、N115カーボンブラックの全てをアセチレン由来カーボンブラックで置換えている。
【0076】
2通りの組成物間のphrでの配合の違いは、下記の表1に示している:
【表1】
(4) Cabot Corporation社から販売されているN115;
(5) Denki Kagaku Kogyo社から販売されている“Denka black”;
(6) シリカ:Evonik社から販売されている“Ultrasil ULTRASIL VN3SP”。
【0077】
これらの2通りの組成物から得られた結果は、下記の表に示している:
【表2】
【0078】
カーボンブラックN115をアセチレン由来カーボンブラックで置換えている本発明に従う組成物B1は、対照組成物A1と比較して、予測した通りに、改良された熱伝導率(λ値は上昇している)を、しかも、驚くべきことに、改良されたヒステリシス(tan (δ)
maxの低下)をも有していることが観察されている。
【0079】
試験2
この試験の目的は、良好な熱伝導率とヒステリシス特性を有する本発明に従う2通りの組成物を比較することによって、本発明に従う数種の組成物によって驚くべく得られたもう1つの利点を実証することである。
【0080】
2通りの組成物B2(試験1からの組成物B1と同一)およびC2は、上記で詳細に説明した方法に従って製造し、試験1において示した配合と同じ基本配合を有していた。
組成物B2およびC2は本発明に従っており、これらの組成物は、それぞれ、アセチレン由来カーボンブラックとシリカのブレンドを本発明に従う含有量でもって含む。
【0081】
2通りの組成物間のphrでの配合の違いは、下記の表3に示している:
【表3】
(7) 組成物の充填剤全体に対する質量画分としてのシリカ含有量。
【0082】
これら2通りの組成物から得られた結果は、下記の表4に示している:
【表4】
【0083】
本発明に従う組成物C2は、本発明に従う組成物B2と同様に、良好な熱伝導率(λ値)および低ヒステリシス(tan (δ)
max)を有していることが観察されている。
また、驚くべきことに、組成物B2のシリカ含有量よりも多いシリカ含有量を有する組成物C2は、組成物B2と対比して、充填剤全体の量が同一であったとしても破断点エネルギーの有意の改良を可能にしていることも観察されている。