(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語の定義
用語「医薬品有効成分」は、本明細書で使用される場合、製剤の処方に使用される活性化合物を意味する。
【0011】
用語「AUC」は、本明細書で使用される場合、医薬品有効成分(例えば、エストラジオール、文献では17β−エストラジオール、oestradiol、又はE2とも称される)の血中濃度の経時的な変化を表す曲線下面積を指す。
【0012】
用語「生物学的利用能」は、本明細書で使用される場合、有効成分(例えば、エストラジオール)の血液(血清又は血漿)中濃度を意味する。相対生物学的利用能は、時間に対する血液(血清又は血漿)中濃度として測定され得る。生物学的利用能の測定及び評価に使用できる薬物動態(PK)指標は、AUC、Cmax、及び所望によりTmaxなどの好適な測定基準によって決定される。
【0013】
用語「生物学的同等性」は、試験製剤が、改訂版の米国食品医薬品局による生物学的同等性として定められる基準に準じて、基準製剤と比較して同様の生物学的利用能をもたらすことを意味する。一般に、生物学的同等性製剤中の医薬品有効成分の生物学的利用能は、AUC及びCmaxに関して、基準製剤の医薬品有効成分の生物学的利用能の80〜125%である。
【0014】
用語「生物学的同一ホルモン」は、本明細書で使用される場合、インビボで自然に作られるホルモンと化学構造が同一である合成由来化合物を意味する。これらの天然又は生物学的同一ホルモンは、様々な成分から合成され、エストラジオール又はエストロン又はエストリオール(3つの主なエストロゲン)の化学構造及び効果に一致させる。
【0015】
用語「Cmax」は、本明細書で使用される場合、医薬品有効成分(例えば、エストラジオール)の血中濃度の経時的な変化を表す曲線上に示される、血中濃度の最大値を指す。
【0016】
用語「併用される」は、本明細書で使用される場合、2種類の製剤が、同時に又は同一若しくは別の日に連続的に投与されることを意味する。
【0017】
用語「製剤」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1種の賦形剤と組み合わされ、単位投与剤形で提供される少なくとも1種の医薬品有効成分を意味する。
【0018】
用語「賦形剤」は、本明細書で使用される場合、キャリア、可溶化剤、油、潤滑剤及びその他医薬品の処方に使用されるものなどの非医薬品有効成分を指す。これらは、米国食品医薬品局が公布するものなど、確立された政府機関による基準によって、ヒトを含む動物への投与に関して概ね安全である。
【0019】
本明細書に述べられるホルモンについて、用語「天然」は、本明細書で使用される場合、ヒト体内に天然に存在する(内因性)ものの化学構造及び効果と一致する、合成された生物学的同一ホルモンを意味する。代表的な天然エストロゲンは、エストラジオールである(17β−エストラジオール及びE2とも記載される)。
【0020】
用語「中鎖」は、本明細書で使用される場合、C4〜C18、及びC6〜C12物質を含む任意の中鎖炭素含有物質、グリセロールの脂肪酸エステル、脂肪酸、並びにかかる物質のモノ−、ジ−、及びトリ−グリセリドを意味する。更なる例として、C6〜C14、C6〜C12脂肪酸、及びC8〜C10脂肪酸は、全て中鎖脂肪酸であり、規格が、中鎖脂肪酸、例えば、グリセロール又はその他グリコールの中鎖脂肪酸エステルの使用を求める場合に使用できる。
【0021】
用語「基準として記載される製剤」は、本明細書で使用される場合、Vagifem(登録商標)を意味する。
【0022】
用語「可溶化剤」は、本明細書で使用される場合、エストラジオールの溶解性改善に使用できる任意の物質又は物質の混合物を意味し、例えば、溶媒、共溶媒、界面活性剤、乳化剤、油、及びキャリアなどの適切な製薬的に許容可能な賦形剤を非限定的に含む。
【0023】
用語「治療」又はこの派生語は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される製剤が予防的に、又はかかる製剤が投与される病態の発症後に投与されるとき、言及される病態又は病状の部分的又は完全阻害を意図する。本開示の目的において、「予防」は、有効成分を動物、典型的にはヒトに投与し、本明細書並びにその他に記載される任意の疾患から動物を保護することを指す。
【0024】
用語「Tmax」は、本明細書で使用される場合、医薬品有効成分(例えば、エストラジオール)及び/又はエストロンの血中濃度が最大値に達するのにかかる時間を指す。
【0025】
説明
本明細書には、可溶化エストラジオール(様々な実施形態では、溶液中少なくとも90%)を含む医薬製剤が提供され、かかる製剤は、充填物内に、次の成分、すなわち、親水性ゲル形成生体接着剤(例えば、粘膜接着剤)、親油性剤、親油性剤用ゲル化剤、及び/又は水分散性剤のうち、1種以上の成分を含まない。親水性ゲル形成生体接着剤は、1種以上のカルボキシビニル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、キサンタンガム、グアーガム、ケイ酸アルミニウム、又はこれらの混合物と定め、又は除外できる。親油性剤は、1種以上の液体トリグリセリド、固体トリグリセリド(約35℃の融点を有する)、カルナバワックス、カカオバター、又はこれらの混合物と定め、又は除外できる。ゲル化剤は、1種以上の疎水性コロイドシリカと定め、又は除外できる。水分散性剤は、1種以上のポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール7−グリセリル−ココエート、及びこれらの混合物と定め、又は除外できる。
【0026】
一般的に、本明細書に記載の医薬製剤は、充填カプセル、典型的には、例えば軟ゼラチンカプセルを非限定的に含む、当該技術において周知の1種以上の材料の軟カプセルとして調製され、投与される。しかしながら、様々な実施形態では、本明細書に記載の医薬製剤は、ジェル、クリーム、軟膏、経皮的デリバリーシステム、又は類似の製剤として調製される。
【0027】
本開示の他の態様は、例えば、乾燥、痒み、ひりひり感、過敏、出血、及び性交疼痛症を非限定的に含む少なくとも1つのVVA症状の治療を含む、外陰膣萎縮の治療に対して本明細書に記載される製剤を使用することを含む。
【0028】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の製剤の、エストロゲン欠乏尿状態の治療に対する使用を提供する。
【0029】
本開示の別の態様は、アルコールを含まない、又は実質的にアルコールを含まない製剤と、その使用と、を提供する。特に、この製剤は、使用中の快適性を改善するため、患者コンプライアンスを向上させる傾向がある。
【0030】
本明細書に記載の治療法は、一般にヒトの女性に投与される。
【0031】
本発明の更なる態様は、生物学的同等性臨床試験の実施によって判定される本発明の製剤の投与後の循環血中濃度が、基準として記載される製剤の投与後の循環血中濃度と生物学的同等性である、本発明の製剤を提供する。
【0032】
本開示の製剤は、経口的に投与されるエストロゲン系(つまり、プロゲスチン系、又はプロゲスチン及びエストロゲン系)医薬品、又は、パッチ、クリーム、ジェル、スプレー、経皮的デリバリーシステム、若しくはその他非経口的に投与されるエストロゲン系医薬品(それぞれ天然、バイオシミラー、又はその他合成若しくは誘導エストロゲンを含んでよい)及び/又は、投与されるプロゲスチンの併用を伴って、又は伴わずに、膣投与されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「プロゲスチン」は、プロゲステロンに類似する薬理学的特性を有する任意の天然又は人工物質を意味する。
【0033】
本開示の製剤の投与によってもたらされる循環エストロゲン濃度の調節は、なされる場合は、任意の併用されるエストロゲン製品、及びそれに付随する循環血中濃度を追加することを目的としない。
【0034】
本開示の製剤の投与のタイミングは、主治医が処方する際、任意の安全な手段によって実施されてよい。典型的には、患者は、14日間1日1個のカプセルを膣内に挿入し、その後、医師が処方した残りの期間、1週間に2回、1個のカプセルを挿入する。膣内挿入は、アプリケータの使用によって、又は患者の指を使用してアプリケータを用いずに行ってよい。アプリケータの使用、ないしは別の方法は、周囲組織の穿刺又は裂傷を起こさないように、しかるべき注意を要する。
【0035】
エストラジオールの含量は可変である。本開示の製剤では、エストラジオール(又は、かかるエストラジオールが、補正を要する水和型又は別の形態である範囲におけるエストラジオール当量)の含量は、少なくとも約1マイクログラム(mcg)、少なくとも約2.5mcg、少なくとも約5mcg、少なくとも約10mcg、約1mcg〜約10mcg、約10mcg〜約25mcg、約1mcg、約2.5mcg、約5mcg、約10mcg、及び約25mcgである。エストラジオールの副作用を防ぐため、可能な限り低い用量を、VVA及び本明細書に示すその他状態の治療に使用しなくてはならない。一実施形態では、用量は約10mcgであり、別の実施形態では、用量は約25mcgである。
【0036】
更に、挿入しやすく、内容物が完全に放出されるまでカプセルを適所に保持するよう設計される軟カプセルが提供される。様々な実施形態では、様々な実施形態によるソフトゲルカプセルは、ヒト膣内に快適に収まる大きさである。つまり、ソフトゲルカプセルは、ヒト膣内に適合可能な任意の寸法を含んでよい。
図2を参照すると、ソフトゲルカプセル200が図示される。ソフトゲルカプセル200は、充填材料202と、ゼラチン204と、を含む。ゼラチン204は、間隔208で表される厚さを有する。間隔208は、2.74mm(0.108インチ)の距離を有する。ソフトゲルカプセル200の一方の端部から別の端部までの距離は、間隔206で表される。間隔206は、17.53mm(0.690インチ)の距離を有する。またソフトゲルカプセル200の寸法は、ある長さの半径によって描かれる弧によっても表すことができる。例えば、ゼラチン204の外面によって画定される弧210は、半径4.80mm(0.189インチ)によって描かれる弧である。ゼラチン204の内面によって画定される弧212は、半径2.38mm(0.0938インチ)によって描かれる弧である。ゼラチン204の外面によって画定される、弧210と反対側の弧214は、半径2.74mm(0.108インチ)によって描かれる弧である。
【0037】
エストラジオールは、以下の教示に従って配合できる。これらの製剤は、膣内挿入用に1回単位投与剤形、又はその他本明細書で特定されるように、調製されてよい。
【0038】
様々な実施形態では、エストラジオールは製造中に少なくとも1回可溶化され、様々な実施形態では、エストラジオールは投与後のある点で可溶化される。溶解性は、質量分率(% w/w)で表すことができる。本明細書で使用される場合、用語「可溶性」又は「可溶化される」は、エストラジオールが、少なくとも約85%可溶性、少なくとも90%可溶性、少なくとも95%可溶性、及び多くは100%可溶性であることを意味する。%溶解性は、本明細書では質量分率(% w/w、又はwt%とも称する)で表す。
【0039】
本開示のカプセルの挿入後、膣管内で充填物が放出されると、エストラジオールは、体内組織内に局所的に吸収され得る。
【0040】
様々な実施形態では、可溶化剤は、少なくとも1種の溶媒又は共溶媒から選択される。好適な溶媒及び共溶媒として、任意のモノ−、ジ−又はトリグリセリド及びグリコール、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
本開示の可溶化エストラジオールは、エストラジオールを、例えば、少なくとも1種のモノ−、ジ−、若しくはトリグリセリドからなる中鎖脂肪酸などの少なくとも1種の中鎖脂肪酸、又はこれらの誘導体、又はこれらの組み合わせ(総じて、「グリセリド」)を非限定的に含む、製薬的に許容可能な可溶化剤とブレンドすることによって調製される。様々な実施形態では、本開示の可溶化エストラジオールは、少なくとも1種のグリコール若しくはこれらの誘導体若しくはこれらの組み合わせ(総じて、「グリコール」)並びに/又は、かかる少なくとも1種のグリセリド及びグリコールの組み合わせを含んでもよい。グリコールは、可溶化剤として、及び/又は粘度を調整するために使用してよく、そのため、本明細書で更に説明する増粘剤と見なされる場合もある。所望により、例えば、抗酸化剤、潤滑剤などを非限定的に含む、他の賦形剤が添加される。十分な可溶化剤(1種又は複数)を用いて、エストラジオールを可溶化する。
【0042】
製薬的に許容可能な可溶化剤として、例えば、少なくとも1種の、カプロン脂肪酸、カプリル脂肪酸、カプリン脂肪酸、タウリン、ミリスチン酸、リノール酸、コハク酸、グリセリン、モノ−、ジ−、又はトリグリセリド並びにこれらの組み合わせ及び誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールグリセリド(GELUCIRE(ポリエチレングリコールグリセリド)、GATTEFOSSE SAS(Saint−Priest,France)、本明細書で可溶化剤として、又はアニオン性界面活性剤として使用できる)、プロピレングリコール、カプリル/カプリントリグリセリド(MIGLYOL(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、SASOL Germany GMBH(Hamburg)、MIGLYOLとして、MIGLYOL 810(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、MIGLYOL 812(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、MIGLYOL 816(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)及びMIGLYOL 829(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド)が挙げられる)、カプロン酸/カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノカプリン酸プロピレングリコール(CAPMUL PG−8(モノカプリル酸プロピレングリコール)及びCAPMUL PG−10(モノカプリン酸プロピレングリコール)、CAPMULブランドは、ABITEC(Columbus Ohio)の所有)、モノ−及びジカプリル酸プロピレングリコール、モノ−及びジカプリン酸プロピレングリコール、中鎖モノ−及びジ−グリセリド(CAPMUL MCM(中鎖モノ−及びジグリセリド))、ジエチレングリコールモノエステル(2−(2−エトキシエトキシ)エタノール:TRANSCUTOL(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)を含む)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノ−及びジ−カプリル酸、プロピレングリコール、飽和ココヤシ及びパーム核油の1,2,3−プロパントリオール(グリセロール、グリセリン(glycerin)、グリセリン(glycerine))エステル、並びにこれらの誘導体、分画植物脂肪酸のトリグリセリド、並びにこれらの組み合わせ及び誘導体の利用が非限定的に挙げられる。様々な実施形態では、プロピレングリコールは、クリーム又は軟膏中で使用される。
【0043】
本明細書に定義されるこれらの可溶化剤、及びこれらの組み合わせを用いて、本開示の可溶化エストラジオール製剤を形成できる。
【0044】
可溶化エストラジオールを含有する本開示の製剤の追加の実施形態において、少なくとも1種のアニオン性及び/又は非イオン性界面活性剤を使用してもよい。
【0045】
代表的な非イオン性界面活性剤として、例えば、1種以上のオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、及びステアリン酸を非限定的に挙げてよい。更なる実施形態では、非イオン性界面活性剤は、商標TWEEN 80(ポリソルベート80)(Sigma Aldrich(St.Louis,MO))で市販されるポリソルベート80を含む、ポリエチレンソルビトールエステルを含んでよい。ポリソルベート80は、およそ60%〜70%のオレイン酸を含み、残部は主にリノール酸、パルミチン酸、及びステアリン酸を含む。ポリソルベート80は、約5〜50%の範囲の量で、特定の実施形態では、製剤の総質量の約30%で使用できる。様々なその他の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、1種以上のグリセロール及び長鎖脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、例えば、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド及び/又はラウロイルポリオキシル−32グリセリドから選択され、例えば、GELUCIRE 39/01(飽和C12〜C18脂肪酸のグリセロールエステル)、GELUCIRE 43/01(ハードファットNF/JPE)及びGELUCIRE 50/13(ステアロイルマクロゴール−32グリセリドEP、ステアロイルポリオキシル−32グリセリドNF、ステアロイルポリオキシルグリセリド(USA FDA IIG))など、GELUCIREとして市販される。これらの界面活性剤は、約0.01%を超える濃度で、典型的には約0.01%〜10.0%、10.1%〜20%、及び20.1%〜30%の様々な量で使用できる。
【0046】
可溶化剤と界面活性剤の割合は、対応する可溶化剤及び対応する界面活性剤、並びに得られる可溶化エストラジオール製剤の所望の物性に応じて可変である。例えば非限定的に、CAPMUL MCMと非イオン性界面活性剤は、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、及び90:10などの割合で使用できる。別の非限定例として次が挙げられ、すなわち、CAPMUL MCMとGELUCIRE 39/01は、例えば非限定的に、6:4、7:3、及び8:2などの割合で使用でき、CAPMUL MCMとGELUCIRE 43/01は、例えば非限定的に、7:3、及び8:2などの割合で使用でき、CAPMUL MCMとGELUCIRE 50/13は、例えば非限定的に、7:3、及び8:2、及び9:1などの割合で使用できる。
【0047】
別の代表的な非イオン性界面活性剤として、PEG−6パルミトステアレートとエチレングリコールパルミトステアレートが挙げられ、これはTEFOSE 63(「Tefose 63」、GATTEFOSSE SAS(Saint−Priest,France))として市販されており、例えば、CAPMUL MCMと、例えば8:2、及び9:1のMCM対TEFOSE 63比で使用できる。非イオン性界面活性剤を伴う可溶化剤の更なる例として、例えば、MIGLYOL 812:GELUCIRE 50/13及びMIGLYOL 812:TEFOSE 63が挙げられる。
【0048】
アニオン性界面活性剤は周知であり、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ラウリル硫酸カリウム、及びステアリン酸ナトリウムを非限定的に挙げてよい。
【0049】
非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤は、単独で、若しくは少なくとも1種の可溶化剤と共に使用でき、又は別の界面活性剤と組み合わせて使用できる。したがって、本明細書に示すこのような界面活性剤又は任意のその他賦形剤を用いて、膣挿入カプセルから一貫した可溶化エストラジオールが放出されると、吸収を促進し、特にVAGIFEM錠の使用後に頻繁に起こる膣からの排出と比べて、膣からの排出を最小限にする、可溶化エストラジオールを提供しなくてはならない。
【0050】
更に、本明細書に開示される製剤中のエストラジオールは、投与/挿入時に完全に可溶化される(例えば、溶液中少なくとも98%)必要はないが、膣挿入カプセルからの放出時に実質的に可溶化される必要がある。つまり、本明細書で教示される可溶化剤は、可溶化剤以外の追加の賦形剤を含み、又は含まず、エストラジオール含有可溶化剤及びその他賦形剤が流れてカプセルの充填が可能である限りは、投与時に液体又は半固体状であってよい。投与/挿入時にエストラジオールが完全に可溶化されない範囲において、エストラジオールは、温度約37℃(例えば体温)、かつ通常はpH約4.5において、実質的に可溶化されなくてはならない。別の実施形態では、少なくとも1種の増粘剤が本開示の製剤に添加されてよい。可溶化エストラジオールの粘度は、使用する可溶化剤、医薬製剤への他の賦形剤の添加、及び、可溶化エストラジオールの吸収を最適化するのに必要な所望の又は必要とする最終粘度に依存し得る。特定の実施形態では、本明細書にて上述の界面活性剤は、可溶化エストラジオールを増粘でき、それにより放出されると、特にVagifem錠の使用後に頻繁に起こる膣からの排出と比べて、膣からの排出を最小限にしながら、エストラジオールの膣粘膜による吸収を助ける。その他かかる増粘剤の例として、例えば非限定的に、ハードファット;プロピレングリコール;ハードファットEP/NF/JPE、グリセリルリシノレエート、エトキシ化脂肪族アルコール(セテス−20、ステアレス−20)EP/NFの混合物(OVUCIRE 3460(ハードファットEP/NF/JPE(及び)グリセリルリシノレエート(及び)エトキシ化脂肪族アルコール(セテス−20、ステアレス−20)EP/NFの混合物)(Gattefosse(Saint−Priest France))として市販);ハードファットEP/NF/JPE、グリセロールモノオレエート(タイプ40)EP/NFの混合物(OVUCIRE WL 3264(ハードファットEP/NF/JPE(及び)グリセロールモノオレエート(タイプ40)EP/NFの混合物として市販);ハードファットEP/NF/JPE、グリセリルモノオレエート(タイプ40)EP/NFの混合物(OVUCIRE WL 2944(ハードファットEP/NF/JPE(及び)グリセリルモノオレエート(タイプ40)EP/NFの混合物)として市販);及び様々なハードファットの混合物(WITESPOL(ハードファット)Sasol Germany GmbH(Hamburg)として市販)が挙げられる。様々な実施形態では、様々な実施形態による製剤の粘度は、25℃において約50cps〜約1000cpsを含んでよい。
【0051】
その他の実施形態では、1種以上の粘膜接着剤を使用して、可溶化エストラジオールの粘膜吸収を補佐してよい。例えば、ポリカルボフィルは、許容可能な粘膜接着剤として使用できる。別の剤として、例えば非限定的に、分子量約100,000〜約900,000のポリ(エチレンオキシド)ポリマー、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールと架橋した、アクリル酸のキトサンカーボポール含有ポリマー、アリルペンタエリスリトールと架橋した、アクリル酸及びC10〜C30アルキルアクリレートのポリマー、ポリエチレングリコール及び長鎖アルキル酸エステルのブロックコポリマーを含有するカルボマーホモポリマー又はコポリマーなどが挙げられる。様々な親水性ポリマー及びヒドロゲルを使用してもよい。様々な実施形態では、親水性ポリマーは、膣又は他の身体分泌物と接触して膨潤し、保湿及び粘膜接着効果を増強する。親水性ポリマーの選択及び量は、選択された製薬的に許容可能な可溶化剤の選択及び量に基づいてよい。製剤は、親水性ポリマーを含むが、所望によりゲル化剤を含まない。ヒドロゲルを有する実施形態では、総質量の約5%〜約10%の親水性ポリマーを含んでよい。更なる実施形態では、ヒドロゲルを使用してよい。ヒドロゲルは、キトサンを含んでよく、これは水と接触すると膨潤する。様々な実施形態では、クリーム製剤はPEG−90Mを含んでよい。
【0052】
追加の実施形態では、本開示の製剤は、例えば非限定的に、親水性スクロース及び他の糖類系モノマーを含む、典型的には親水性の1種以上の熱可逆性ゲル(参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第6,018,033号)を含んでよい。
【0053】
その他の実施形態では、潤滑剤を使用してよい。例えばレシチンなどの任意の好適な潤滑剤を使用してよい。レシチンは、リン脂質の混合物を含んでよい。
【0054】
追加の実施形態では、酸化防止剤が使用される。例えば非限定的にブチル化ヒドロキシトルエンなどの、任意の好適な抗酸化剤を使用してよい。
【0055】
様々な実施形態では、医薬製剤は、約20重量%〜約80重量%の可溶化剤、約0.1重量%〜約5重量%の潤滑剤、及び約0.01重量%〜約0.1重量%の酸化防止剤を含む。
【0056】
大方の場合、賦形剤の選択は、例えば非限定的に、溶解性及び安定性に対する賦形剤の影響などの要因に依存する。様々な実施形態で用いられる追加の賦形剤として、着色剤及び防腐剤を挙げてよい。例えば着色剤は、約0.1%〜約2重量%を含んでよい。防腐剤は、例えば非限定的に、例えば約10:1の比、かつ約0.005重量%及び0.05重量%の割合の、メチルパラベン及びプロピルパラベンを含んでよい。
【0057】
全ての可溶化剤と同様に、本明細書に記載の製剤中で使用される賦形剤及び任意のその他添加剤は、それぞれが毒性を示さず、製薬的に許容可能であり、かつ使用する全てのその他成分と相溶性である。
【0058】
本明細書には、治療を必要とする典型的にはヒトの女性に、無毒性かつ薬剤的有効量の、本明細書に更に提供されるような製剤を投与することを含む、VVA及び/又はエストロゲン欠乏尿状態の治療方法が更に提供される。
【0059】
上述のように、本開示の製剤は、一般に、軟ゼラチンカプセルを含む軟カプセルなどのカプセルによって、膣内に投与される。崩壊によって、実質的に全ての可溶化エストラジオールが放出される程度まで崩壊し、可溶化エストラジオールが素早く吸収して、カプセル残留物が最小限ないしは残留物がないように、これらの軟カプセルを調製することが望ましい。
【0060】
本開示の追加の目的として、不適切な挿入による特定の副作用を潜在的に最低限に抑え、Vagifem及び他の現在入手可能な製品の使用による外陰膣真菌感染の発生率と比較して、外陰膣真菌感染の発生率を最低限に抑えながらも、患者の使いやすさが向上すること、及び、Vagifem及び他の現在入手可能な製品の使用によって発生し得る生殖器掻痒症及び/又は背部痛と比較して、結果として生じる生殖器掻痒症が低減することが挙げられる。本発明の例示的実施形態では、エストラジオールの可溶化には油を可溶化剤として使用し、これらには、中鎖脂肪酸エステル(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、又はプロピレングリコールのエステル)及びこれらの混合物が挙げられる。例示的実施形態では、中鎖脂肪酸はC6〜C14又はC6〜C12脂肪酸である。例示的実施形態では、中鎖脂肪酸は、飽和、又は大部分飽和されており、例えば、約60%超又は約75%超飽和されている。例示的実施形態では、エストラジオールは、室温で油に可溶性であるが、製造中にまず特定の油を加温し、粘度を高めることが望ましい場合もある。例示的実施形態では、油又は油/増粘剤は、室温〜約50℃、例えば、50℃以下、40℃以下、又は50℃以下で液体である。例示的実施形態では、GELUCIRE 44/14(ラウロイルマクロゴール−32グリセリドEPラウロイルポリオキシル−32グリセリドNFラウロイルポリオキシルグリセリド(USA FDA IIG))を約65℃まで加熱し、CAPMUL MCMを約40℃まで加熱して、油と非イオン性界面活性剤の混合を促進するが、このような加熱はエストラジオールの溶解には不要である。例示的実施形態では、油(又は油/界面活性剤)中のエストラジオールの溶解性は、少なくとも約0.5wt%、例えば、0.8wt%以上、又は1.0wt%以上である。中鎖脂肪酸のモノ−及びジグリセリドの実例として、特に、CAPMUL MCM、CAPMUL MCM C10(グリセリルモノカプリン酸)、CAPMUL MCM C8(グリセリルモノカプリル酸)、及びCAPMUL MCM C8 EP(グリセリルモノカプリル酸)が挙げられる。これらの油は、C8及びC10脂肪酸モノ−及びジグリセリドである。中鎖脂肪酸のトリグリセリドである油の実例として、特に、MIGLYOL 810及びMIGLYOL 812が挙げられる。プロピレングリコールの中鎖脂肪酸エステルである油の実例として、特に、CAPMUL PG−8、CAPMUL PG−2L EP/NF(ジラウリン酸プロピレングリコール)、CAPMUL PG−8 NF(モノカプリル酸プロピレングリコール)、CAPMUL PG−12 EP/NF(モノラウリン酸プロピレングリコール)及びCAPRYOL(モノカプリル酸プロピレングリコール(タイプII)NF)が挙げられる。その他実例として、MIGLYOL 840(ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール)が挙げられる。
【0061】
ポリエチレングリコールの中鎖脂肪酸エステルである油の実例として、特に、ポリエチレングリコールのモノ−、ジ−及びトリグリセリド、並びにモノ−及びジエステルからなるポリエチレングリコールグリセリドである、GELUCIRE 44/14(PEG−32ラウリン酸グリセリルEP)が挙げられる。
【0062】
これらの実例は、主に中鎖長の飽和脂肪酸(すなわち、脂肪酸の50%超が中鎖飽和脂肪酸)を、具体的には主にC8〜C12飽和脂肪酸を含む。
【0063】
当然のことながら、市販のグリセロール及びその他グリコールの脂肪酸エステルは、多くの場合天然油から調製されるため、(重量による)主要成分を含み、それによって生成物の特徴付けに使用される脂肪酸エステルに加えて、構成成分を含む場合がある。このような他の構成成分は、例えば、別の脂肪酸トリグリセリド、モノ−及びジエステル、遊離グリセロール、又は遊離脂肪酸である場合がある。したがって例えば、本明細書に、油/可溶化剤がグリセロールの飽和C8脂肪酸モノ−又はジエステルと記載されるとき、油の主要成分、すなわち、>50wt%(例えば、>75wt%、>85wt%、又は>90wt%)がカプリルモノグリセリド及びカプリルジグリセリドであると理解されよう。例えば、ABITECのCAPMUL MCM C8のTechnical Data Sheetには、CAPMUL MCM C8は、中鎖脂肪酸(主にカプリル)のモノ及びジグリセリドからなると記載されており、アルキル含量は、≦1%のC6、≧95%のC8、≦5%のC10、及び≦1.5%のC12以上と記載されている。
【0064】
更なる例として、MIGLYOL 812は、脂肪酸組成が、少なくとも約80%のカプリル(C8)酸及びカプリン(C10)酸であることから、一般にC8〜C10トリグリセリドと記載される。しかしながら、少量の別の脂肪酸、例えば、約5%未満のカプロン(C6)酸、ラウリン(C12)酸、及びミリスチン(C14)酸を含む場合もある。
【0065】
具体的には、SASOLのMIGLYOLの製品情報シートには、以下のような脂肪酸組成が記載されている。
【0067】
したがって、本発明の実施形態が、カプセルシェルと、C8〜C10トリグリセリド中に可溶化されるエストラジオールと、増粘剤と、を含む(又は、から本質的になる)と記載される場合、本製剤の脂肪酸エステル成分は、例えば、MIGLYOL 812又は類似製品である場合があると理解されよう。
【0068】
更なる例として、GELUCIRE 44/14は、脂肪酸組成が30〜50%ラウリン酸とそれより少量の別の脂肪酸、例えば、最大15%のカプリル酸、最大12%のカプリン酸、最大25%のミリスチン酸、最大25%のパルミチン酸、及び最大35%のステアリン酸であるため、一般にラウロイルポリオキシル−32グリセリド、すなわち、ポリオキシエチレン32ラウリン酸グリセリド(グリセロールのモノ−、ジ−、及びトリエステル、並びにPEGのモノ−及びジエステルの混合物)と記載される。この製品は、少量の非エステル型グリコールも含む場合がある。したがって、本発明の実施形態が、カプセルシェルと、トリグリセリド中に可溶化されるエストラジオールと、グリセロール及びポリエチレングリコールのC8〜C18脂肪酸エステルを含む非イオン性界面活性剤である増粘剤と、を含む(又は、から本質的になる)と記載される場合、本製剤の増粘剤成分は、例えば、GELUCIRE 44/14又は類似製品である場合があると理解されよう。
【0069】
同様に、本発明の実施形態が、カプセルシェルと、トリグリセリド中に可溶化されるエストラジオールと、PEG−6ステアレート、エチレングリコールパルミトステアレート、及びPEG−32ステアレートを含む非イオン性界面活性剤である増粘剤と、を含む(又は、から本質的になる)と記載される場合、本製剤の増粘剤成分は、例えば、TEFOSE 63又は類似製品である場合があると理解されよう。
【0070】
中鎖脂肪酸グリセリド、例えば、C6〜C12、C8〜C12、又はC8〜C10脂肪酸モノ−及びジグリセリド、又はモノ−、ジ−、及びトリグリセリドの混合物は、エストラジオールの溶解に非常に適しており、主にC8〜C10飽和脂肪酸モノ−及びジグリセリドの混合物である油を用いると、良好な結果が得られている。より長鎖のグリセリドは、エストラジオールの溶解に適していないと思われる。
【0071】
エストラジオールの高い溶解性は、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、例えば、TRANSCUTOL中、及びプロピレングリコールモノカプリル酸、例えば、Capryol(商標)90(Gattefosse)中で得られている。
【0072】
様々な実施形態では、可溶化剤は、少なくとも1種の溶媒又は共溶媒から選択される。好適な溶媒及び共溶媒として、任意のモノ−、ジ−又はトリグリセリド及びグリコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
加えて、その他の可溶化剤として、例えば非限定的に、グリセリルモノ−及びジ−カプリル酸、プロピレングリコール、及び1,2,3−プロパントリオール(グリセロール、グリセリン(glycerin)、グリセリン(glycerine))が挙げられる。
【0074】
例示的製剤
様々なグリセロール及びその他グリコールの脂肪酸エステルを幅広く試行錯誤しながら試験することによって、ヒト用製剤としての開発に好適な1つ以上の特徴を有する本発明の実施形態が発明された。このような好適な特徴として、例えば、別の類似製剤と比べて刺激性がない又は低減していること、別の類似製剤と比べて製剤の膣からの排出がない又は低減していること、膣内部の製剤残留物がない又は低減していることなどが挙げられる。刺激性がない製剤とは、ほとんどの患者で多く使われる製剤であり、処方薬として使用されるとき、膣内部で痛み、ひりひり感、腫脹、又は刺激感を引き起こさず、ほとんどの患者が、処方された治療を完了する前に治療を中止しない。刺激性がない製剤は、競合製品、例えば錠剤、クリーム、又はその他膣内エストロゲン送達剤形と比較して、前文で説明したような刺激性がない製剤でもある。また、このような例示的製剤は、患者がカプセル化製剤をアプリケータを必要とせずに膣内に指でおよそ5.08cm(2インチ)挿入することによって、対応する排出が最小限ないしは排出がない状態で、容易に任意の位置に自己投与される。
【0075】
残留物を生じない製剤とは、吸収されていない、又は分散されていない製剤の粒子、又はその他不快な残留物をもたらさずに、吸収及び/若しくは分散される製剤である。更に、残留物がないとは、競合製品と比較してであってよい。
【0076】
膣から排出しない製剤とは、膣から流れ出たり落ちたりしない製剤である。更に、排出がないとは、競合製品と比較してであってよい。
【0077】
このような実施形態として、エストラジオールの膣内送達用カプセル化液体医薬製剤が挙げられ、かかる製剤は、1種以上のグリセロールのC6〜C14脂肪酸モノ−、ジ−、又はトリエステル中に少なくとも約90%可溶化されているエストラジオールと、増粘剤と、を含む。
【0078】
より具体的なこのような実施形態は、エストラジオールが、1種以上のグリセロールのC6〜C12脂肪酸モノ−、ジ−、又はトリエステル、例えば1種以上のC6〜C14トリグリセリド、例えば1種以上のC6〜C12トリグリセリド、例えば1種以上のC8〜C10トリグリセリド中に可溶化される(例えば、>90%可溶化される)ような製剤である。
【0079】
このような一般的かつより具体的な実施形態では、増粘剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール飽和又は不飽和脂肪酸エステル又はジエステルであってよい。特定のこのような実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコール長鎖(C16〜C20)脂肪酸エステルを含み、エチレングリコール長鎖脂肪酸エステル、例えば、飽和又は不飽和C16〜C18脂肪酸、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸のPEG−脂肪酸エステル又はジエステルを更に含む。特定のこのような実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコール長鎖飽和脂肪酸エステルを含み、エチレングリコール長鎖飽和脂肪酸エステル、例えば、飽和C16〜C18脂肪酸、例えば、パルミチン酸及びステアリン酸のPEG−及びエチレングリコール−脂肪酸エステルを更に含む。このような非イオン性界面活性剤は、非限定的にTEFOSE 63などの、PEG−6ステアレート、エチレングリコールパルミトステアレート、及びPEG−32ステアレートを含んでよい。
【0080】
特定のこのような実施形態では、増粘剤として使用される非イオン性界面活性剤は親水性ではなく、良好なエマルション特性を有する。かかる界面活性剤の実例はTEFOSE 63であり、約9〜10のHLB値を有する。
【0081】
上記のように、かかる製剤は、室温で液体であり、ゲル、ハードファット、又は任意のその他固体剤形ではない。増粘剤は、例えば、最大10,000cP(10,000mPa−s)まで、典型的には5000cP以下まで、より典型的には50〜1000cPまで粘度を上げる働きをする。いくつかのこのような実施形態では、非イオン性界面活性剤、例えば、GELUCIRE又はTEFOSEは室温で固体である場合があり、脂肪酸−グリコールエステル中に可溶化されるエストラジオールと混合するために融解する必要があるが、得られる製剤は、有利には固体ではなく液体である。
【0082】
このような実施形態の製剤は、典型的には軟ゼラチンカプセル又は他の軟カプセル中にカプセル化される。
【0083】
典型的には、かかる製剤は、生体接着(すなわち、粘膜接着)剤、ゲル化剤、若しくは分散剤を含まず、又は少なくとも1つ若しくは2つのこのような成分を含まない。
【0084】
より具体的なかかる製剤において、カプセルシェル、医薬品有効成分、脂肪酸エステル、及び増粘剤のみが必須成分である。非必須成分、例えば、着色剤、酸化防止剤、又はその他防腐剤などは、もちろん含まれてよいが、エストラジオールの溶解性、カプセル化製剤のPK、刺激性、膣からの排出性、膣内残留物などを実質的に変え得る量の他の成分、例えば、別の油又は脂肪酸エステル、レシチン、粘膜接着剤、ゲル化剤、分散剤などは含まれない。このような本発明の実施形態は、好適な特徴を有することが見出された例示的実施形態について説明する直前の段落で記載したように、カプセルシェル、医薬品有効成分、脂肪酸エステル、及び増粘剤から本質的になると述べてよい。
【0085】
かかる好適な特徴を有することが見出されたこのような実施形態の例として、以下で「実験5」として実施例3で識別する生成物について延べる。
【実施例】
【0086】
様々な実施形態では、医薬品有効成分(例えば、エストラジオール)を1種以上の製薬的に許容可能な可溶化剤中に溶解して、溶媒系を調製する。続いて溶媒系をゲル塊と組み合わせ、例えば、膣坐剤での使用に好適な最終製剤を調製できる。その際、様々な実施形態では、1種以上の溶媒系を1種以上のゲル塊と組み合わせてよい。様々な実施形態では、別の賦形剤を溶媒系中に含めてもよい。
【0087】
(実施例1)
配合物:溶媒系
様々な実施形態では、エストラジオール医薬品有効成分を得て、1種以上の製薬的に許容可能な可溶化剤と混合する。エストラジオールは、微粒子化形態であっても非微粒子化形態であってもよい。様々な実施形態では、最終製剤は、約1mcg〜約25mcgの含量でエストラジオールを含む。
【0088】
様々な実施形態では、エストラジオールは様々な製薬的に許容可能な可溶化剤と混合される。上記のように、CAPMUL MCM、MIGLYOL 812、GELUCIRE 39/01、GELUCIRE 43/01、GELUCIRE 50/13、及びTEFOSE 63は、単独又は様々な組み合わせで、エストラジオールに関する製薬的に許容可能な可溶化剤として使用できる。
【0089】
エストラジオールの溶解性は、最終製剤の安定性及び均一性に影響し得るため、適切な溶媒系を選択する際に注意が必要である。なお、界面活性剤は、典型的には親水性基及び親水性基の両方を含有する両親媒性分子である。親水性−親油性バランス(「HLB」)数は、これらの基の比率の程度として用いられる。これは、界面活性剤の水又は油に対する親和性を定義する、0〜20の値である。HLB数は非イオン性界面活性剤について計算され、これらの界面活性剤は0〜20の範囲の数を有する。>10のHLB数は、水に対する親和性を有し(親水性)、<10の数は、油への親和性を有する(親油性)。
【0090】
これに関して、GELUCIRE 39/01及びGELUCIRE 43/01のHLB値はそれぞれ1である。GELUCIRE 50/13のHLB値は13である。TEFOSE 63のHLB値は9〜10である。
【0091】
様々な製薬的に許容可能な可溶化剤の混合物をエストラジオールと組み合わせ、試験を行った。表1にはその結果を含める。表1には、次の略語、すなわち、CAPMUL MCM(「MCM」)、GELUCIRE 39/01(「39/01」)、GELUCIRE 43/01(「43/01」)、GELUCIRE 50/13(「50/13」)、及びTEFOSE(「Tefose 63」)を含める。
【0092】
【表2】
【0093】
室温で液体又は半固体であった表1中の溶媒系は、室温にてBrookfield粘度計(Brookfield Engineering Laboratories(Middleboro,MA))を用いて試験した。周囲温度で固体であった表1中に示す溶媒系は、37℃にてBrookfield粘度計を用いて試験した。
【0094】
固体であった表1中に示す溶媒系を、37℃にて配置し、融解特性を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1中の溶媒系11は、37℃又は41℃で融解しなかった。
【0095】
表1に示す溶媒系の分散評価を行った。分散評価は、37℃の水100mL中に300mgの各溶媒系を攪拌せずに移し、混合特性を観察することによって行った。
【0096】
(実施例2)
配合物:ゲル塊
様々な実施形態では、溶媒系をゲル塊と混合してよい。ゲル塊は、例えば、ゼラチン(例えば、ゼラチン、NF(150ブルーム、Bタイプ))、加水分解コラーゲン(例えば、GELITA(登録商標)、GELITA AG(Eberbach,Germany))、グリセリン、ソルビトールスペシャル、及び/又はその他様々な性質の好適な材料を含んでよい。ソルビトールスペシャルは商業的に入手でき、可塑剤及び湿潤剤として作用する傾向がある場合がある。
【0097】
ゲル塊A〜Fを表2中の配合に従って調製した。ゲル塊A〜Fは、例えば1種以上の成分の割合が異なっている。
【0098】
【表3】
【0099】
各ゲル塊A〜Fを、約45℃〜約85℃の温度範囲で調製した。各融解ゼラチン塊A〜Fをフィルムに流延し、乾燥してストリップに切断した。ストリップは、重量約0.5g、厚さ約0.5mmの均一片に切断した。ストリップを、水又はpH 4緩衝液のいずれかが入っているUSPタイプ2溶解容器に入れ、完全に溶解するまでの時間を記録し、表2に示した。なお、ゲル塊Aは、水及びpH 4緩衝液の両方において一番溶解が早かった。
【0100】
(実施例3)
配合物:最終製剤及びカプセル化
表1の溶媒系及び表2のゲル塊の様々な組み合わせを調製した。その組み合わせを表3に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
エストラジオールを各溶媒系と混合し、300mgの各溶媒系中に約10mcgのエストラジオールが含まれるようにした。バッチサイズは表3に示す通りとした。溶媒系をカプセル化するため、各300mgの溶媒系を約200mgの示したゲル塊と混合した。つまり、例えば実験1では、8:2の比率のMCM:39/01をゲルA及び10mcgのエストラジオールと混合した。各最終用量において、実験1は、300mgの溶媒系、200mgのゲル塊、及び10mcgのエストラジオールを含んでいた。しかしながら、様々な実施形態では、溶媒系、ゲル塊、及びエストラジオールの総質量が約100mg〜約1000mgでもよいことに留意されたい。
【0103】
溶媒系、エストラジオール、及びゲル塊の各組み合わせは、例えば、膣坐剤での使用に好適であってよい。
【0104】
(実施例4)
エストラジオールの溶解性
様々な実験において、100mgの充填物塊中エストラジオールが2mgとなるのに十分な溶解性をもたらす好適な溶媒を決定し、このとき所望の達成目標は、エストラジオールについて〜20mg/gの溶解性とした。最初の溶解性実験は、エストラジオールを様々な溶媒と混合し、溶液をエストラジオールで飽和し、少なくとも3日間平衡化し、溶解しなかった粒子を濾過し、透明な上清につき、溶解したエストラジオール量をHPLCで分析することによって実施した。
【0105】
エストラジオール溶解性実験を実施した。この表からは、少なくとも1種の品目(例えば、プロピレングリコール)は、カプセル化に不適であることが知られている。
【0106】
【表5】
【0107】
更なる溶解性実験において、エストラジオールは、81:19〜95:5の比率のMIGLYOL TRANSCUTOL、91:11のMIGLYOL:エタノール、及び88:11のMIGLYOL:CAPMUL PG8に、少なくとも6mg/gmで可溶性であったが、96:4のMIGLYOL:TRANSCUTOL、70:30〜80:20のMIGLYOL:Labrasol、又は86:14のMIGLYOL:CAPMUL PG8では溶けなかった。
【0108】
(実施例5)
プロセス
図1を参照して、充填材料100の製造方法を示す。工程102は、可溶化剤を40℃±5℃に加熱する工程を含む。加熱工程は、任意の好適な手段によって達成してよい。加熱工程は、任意の好適な容器、例えばステンレス鋼容器内で実施してよい。可溶化剤は、本明細書に記載の任意の可溶化剤、例えばCAPMUL MCMであってよい。
【0109】
工程104は、GELUCIREを可溶化剤と混合する工程を含む。本明細書で使用される場合、任意の形態のGELUCIREを工程104で使用してよい。例えば、1種以上のGELUCIRE 39/01、GELUCIRE 43/01、GELUCIRE 50/13を工程104で使用してよい。混合工程は、インペラ、攪拌器、又はその他好適な手段によって促進できる。工程104は、不活性又は比較的不活性なガス雰囲気、例えば窒素ガス下で実施してよい。混合工程は、任意の好適な容器、例えばステンレス鋼容器内で実施してよい。
【0110】
工程106は、可溶化剤とGELUCIREの混合物中にエストラジオールを混合する工程を含む。エストラジオールは、微粒子化形態又は非微粒子化形態で混合できる。混合工程は、鋼タンク又はその他許容可能な容器中で実施できる。混合工程は、インペラ、攪拌器、又はその他好適な手段によって促進できる。工程106は、不活性又は比較的不活性なガス雰囲気、例えば窒素ガス下で実施してよい。しかしながら、様々な実施形態では、工程104に先立ってエストラジオールの添加を行ってよい。その際、様々な実施形態では、工程106を工程104の前に実施する。
【0111】
工程110は、ゲル塊を調製する工程を含む。本明細書に記載の任意のゲル塊を工程110で使用してよい。その際、ゼラチン(例えば、ゼラチン,NF(150ブルーム、Bタイプ))、加水分解コラーゲン、グリセリン(glyercin)、及び/又はその他好適な材料を、約45℃〜約85℃の温度範囲で混合し、フィルムとして作製してよい。混合工程は、鋼タンク又はその他許容可能な容器中で実施できる。混合工程は、インペラ、攪拌器、又はその他好適な手段によって促進できる。工程110は、不活性又は比較的不活性なガス雰囲気、例えば窒素ガス下で実施してよい。工程112は、脱気する工程を含む。工程112で得られた混合物は、ソフトゲルカプセルを作るのに好適な充填材料を含んでよい。
【0112】
工程112では、工程106で得られた材料を工程110のゲル塊と混合することによってソフトゲルカプセルが調製される。ゲルフィルムで材料の周囲を包み込み、部分的に又は完全にカプセル化してよい。工程106で得られた材料を用いて、ゲルフィルムに注入ないしは別の方法で充填してもよい。
【0113】
所望の形状を提供するための好適なダイ中で工程112を実施してもよい。膣ソフトゲルカプセルは、様々な形状で調製してよい。例えば、膣ソフトゲルカプセルは、涙滴型、円錐台形端付き円錐型、円柱型、大きな「キャップ」部分付き円柱型、又は膣内への挿入に適したその他形状に成形されてよい。様々な実施形態による膣ソフトゲルカプセルは、アプリケータと共に使用されても、使用されなくてもよい。
【0114】
本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく本開示に様々な修正及び変更を実施できることは当業者には自明であろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内である限り、本開示の様々な修正及び変更を含むことが意図される。
【0115】
同様に、多くの特性及び利点は、装置及び/又は方法の構造及び機能の詳細と共に、様々な代替物を含む前述の説明に記載されている。本開示は例示のみを意図しており、そのため包括的ではない。添付の特許請求の範囲で表す用語の広義の意味が示す範囲である限り、様々な修正が、本開示の原理内の組み合わせを含む、特に部品の構造、材料、要素、成分、形状、寸法、及び配置の点でなされることは当業者には明らかであろう。これらの様々な修正が添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、特許請求の範囲に包含されることが意図される。