(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
治療薬が、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用調節剤、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、p97/VCP阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項4記載の組成物。
治療薬が、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用調節剤、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、p97/VCP阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
真核細胞において、小胞体(ER)は分泌された膜内在性タンパク質およびそれらの高分子複合体の合成、折りたたみ、および集合の主要部位である(Mu et al., 2008, Cell 134:769-781; Marciniak et al., 2006, Physiol. Rev. 2006:1133-1149; Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 519-529)。ERタンパク質ホメオスタシスの維持は、恒常性タンパク質濃度の閾値を検出し、ERタンパク質のエブアンドフローを制御する複数の経路の適時の収束に頼っている(Mu et al., 2008, Cell 134:769-781; Marciniak et al, 2006, Physiol. Rev. 2006:1133-1149; Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 519-529; Jonikas et al. 2009, Science 323:1693-1697)。このプロセスは、分子シャペロンおよび転写因子の複雑なネットワークによって推進される。ERホメオスタシスの崩壊は、小胞体ストレス応答(UPR)を含むストレス応答経路を活性化する(Marciniak et al, 2006, Physiol. Rev. 2006:1133-1149; Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 519-529; Kim et al., 2008, Nat. Rev. Drug Discov. 7:1013-1030; Xu et al., 2005, J. Clin. Invest. 2656-2664)。
【0002】
哺乳動物UPRは少なくとも2つの相を含む:最初の警告相と、続く細胞保護的な適応相で、ここでUPR因子はアップレギュレートされて、変性タンパク質の濃度上昇を処理する細胞能力を増強する(Marciniak et al, 2006, Physiol. Rev. 2006:1133-1149; Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 519-529; Kim et al., 2008, Nat. Rev. Drug Discov. 7:1013-1030; Xu et al., 2005, J. Clin. Invest. 2656-2664)。ERストレスに応答する能力の不均衡または変更が、様々な疾患および障害において暗示されてきた(Marciniak et al, 2006, Physiol. Rev. 2006:1133-1149; Kim et al., 2008, Nat. Rev. Drug Discov. 7:1013-1030; Ma et al., 2004, Nat. Rev. Cancer 4:966-977)。遷延性ERストレスはUPRを圧倒し、二次的生存応答として自食作用を引き起こしうる(Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 519-529; Bernales et al., 2006, PLoS Biol. 4:e423; Ogata et al., 2006, Mol. Cell Biol. 26:9220-9231; Yorimitsu et al., 2006, J. Biol. Chem. 281:30299-30304)。ERストレス、小胞体ストレス応答、および自食作用の間の関係は不明のままであるが、増えつつある証拠により、これらの応答はおそらくは細胞の生存および成長を調節する統合されたシグナル伝達経路であることが示唆される(Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 519-529, He et al., 2009, Annu. Rev. Genet. 43:67-93, Hoyer-Hansen et al., 2007, Cell Death Differ. 14:1576-1582)。
【0003】
自食作用は、誤って折りたたまれたタンパク質および、損傷オルガネラを含む損傷された細胞成分の大きい凝集物がオートファゴソームと呼ばれる膜結合小胞に隔離され、続いてリソソーム分解の標的となる、大量の細胞分解経路群を記載している(He et al., 2009, Annu. Rev. Genet. 43:67-93; Levine et al., 2004, Dev. Cell 6:463-477)。完全な自食作用はオートファゴソームがリソソームと融合してオートリソソームを形成することを含み、ここで隔離されたタンパク質および脂質は続いて自食分解またはフラックスにより分解される(He et al., 2009, Annu. Rev. Genet. 43:67-93; Levine et al., 2004, Dev. Cell 6:463-477)。自食作用は多くの組織で塩基性条件下で起こり、細胞分化および発生に関与する。自食作用は栄養飢餓および細胞ストレスの状態でも活性化または過剰活性化されて(Levine et al., 2004, Dev. Cell 6:463-477, Mizushima et al., 2008, Nature 451:1069-1075)、エネルギーレベルを維持し、損傷された、細胞毒性の細胞成分を隔離して除去する(Levine et al., 2004, Dev. Cell 6:463-477; Mizushima et al., 2008, Nature 451:1069-1075)。したがって、自食作用は細胞ホメオスタシスおよび疾患予防において重要な役割を果たし、欠陥のある自食作用は神経変性疾患および癌に関係があるとされている(Levine et al., 2008, Cell 132:27-42; Mizushima et al., 2008, Nature 451:1069-1075; White et al., 2009, Clin. Cancer Res. 15:5308-5316)。
【0004】
自食作用は、腫瘍細胞成長および腫瘍形成に影響をおよぼすことが明らかにされている(Levine et al., 2008, Cell 132:27-42; White et al., 2009, Clin. Cancer Res. 15:5308-5316; Degenhardt et al., 2006, Cancer Cell 10:304-312; Mathew et al., 2007, Nat. Rev. Cancer 7:961-967)。自食作用は、癌細胞において細胞保護の役割を提供している可能性もある(Levine et al., 2008, Cell 132:27-42; Mizushima et al., 2008, Nature 451:1069-1075; White et al., 2009, Clin. Cancer Res. 15:5308-5316; Degenhardt et al., 2006, Cancer Cell 10:304-312)。いくつかの抗新生物薬は、自食作用を誘導することが明らかにされている(Rubinsztein et al., 2007, Rev. Drug Discov. 6:304-312)。しかし、多くの場合に、細胞死が自食作用によって起こるかどうか、細胞死が自食作用に関連しているかどうか、または自食作用が細胞毒性化学療法に対する生存応答であるかどうかは不明のままである(Levine et al., 2004, Dev. Cell 6:463-477; Levine et al., 2008, Cell 132:27-42; White et al., 2009, Clin. Cancer Res. 15:5308-5316; Hippert et al., 2006, Cancer Res. 66:9349-9351)。新たに出てきているデータは、自食作用が細胞死か生存かを決定する細胞ストレスに対する統合応答に関与することを示唆している。これらの統合ストレス応答を調節するタンパク質および経路は既定され始めたばかりである(Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 519-529; Kim et al., 2008, Nat. Rev. Drug Discov. 7:1013-1030, Levine et al., 2004, Dev. Cell 6:463-477; Rubinsztein et al., 2006, Neuron 54:9349-9351)。
【0005】
30年前に最初に提唱されたシグマ受容体(Martin et al., 1976, J. Pharmacol. Exp. Ther. 197:517-532)は、古典的なオピオイド受容体(Su, 1982, J. Pharmacol. Exp. Ther. 223:284-290)とは異なる。結合試験により、少なくとも2つのシグマ受容体サブタイプが示唆され、そのうちシグマ1受容体(以後「シグマ1」)だけがクローニングされているが、シグマ2の同一性は不明のままである(Hanner et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:8072-8077; Vilner et al., 1995, Cancer Res. 55:408-413)。シグマ1は哺乳動物の間で高度に保存されている(80%を超えるアミノ酸同一性)が、いかなる伝統的受容体ファミリーまたは他の哺乳動物タンパク質とも有意な相同性を共有していない(White et al., 2009, Clin. Cancer Res. 15:5308-5316; Mathew, et al., 2007, Nat. Rev. Cancer 7:961-967)。クローニングされたシグマ1は26キロダルトンの膜内在性タンパク質である(Hanner et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:8072-8077; Pal et al., 2007, Mol. Pharmacol. 72:921-933; Aydar et al., 2007, Neuron 34:399-410; Hayashi et al., 2007, Cell 131:596-610)。これは主にERで見られ、形質膜、他のオルガネラ、および小胞体膜マイクロドメインに転位しうる(Hanner et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:8072-8077; Aydar et al., 2007, Neuron 34:399-410; Hayashi et al., 2007, Cell 131:596-610; Hayashi et al., 2003, J. Pharmacol. Exp. Ther. 306:718-725; Palmer et al., 2007, Cancer Res. 67:11166-11175)。シグマ受容体は、前立腺腺癌および乳腺癌を含む、腫瘍細胞株において高度に発現される(Vilner et al., 1995, Cancer Res. 55:408-413; Berthosis et al., 2003, Br. J. Cancer 88:438-446; Piergentili et al., J. Med. Chem. 53:1261-1269)。いくつかのシグマリガンドが抗腫瘍剤として報告されている(Berthosis et al., 2003, Br. J. Cancer 88:438-446; Vilner et al., 1995, J. Neurosci. 15:117-134)。興味深いことに、シグマアンタゴニストと推定されるが、アゴニストではないものは、インビトロで前立腺癌の増殖を阻害し、腫瘍異種移植実験において腫瘍成長を阻害する(Berthosis et al., 2003, Br. J. Cancer 88:438-446; Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886)。最近の研究で、リソソーム不安定化および酸化ストレスによるシグマリガンド誘導性の細胞死が記載されている。
【0006】
D2受容体にも同様の親和性で結合し、その抗精神病特性は主にD2仲介性と理解されている、広く用いられる抗精神病薬であるハロペリドール(Seeman, et al., 1975, Science 188:1217-1219; Seeman et al., 1976, Nature 261:717-719)、および内因性シグマ1調節因子であると仮説が立てられている幻覚剤、N,N-ジメチルトリプタミン(Fontanilla et al., 2009, Science 323:934-937)などの、シグマ1に高い親和性で結合し、したがってシグマ1リガンドと考えられる、臨床で使用される化合物には多くの例がある。シグマ受容体は、神経障害性疼痛(de la Puente et al., 2009, Pain 145:294-303)、うつ(Skuza, 2003, Pol. J. Pharmacol. 55:923-934)、コカイン乱用(Matsumoto et al., 2003, Eur. J. Pharmacol. 469:1-12)、てんかん(Lin et al., 1997, Med. Res. Rev. 17:537-572)、精神病(Rowley et al., 2001, J. Med. Chem. 44:477-501)、ならびにアルツハイマーおよびパーキンソン病(Maurice et al., 1997, Prog. Neuro-Psychopharmacol. Biol. Psychiatry 21:69-102; Marrazzo et al., 2005, NeuroReport 16:1223-1226)などの、様々な病態を処置するための非常に魅力的な薬理学的標的であると判明している。最近の報告は、シグマ1受容体遺伝子(SIGMAR1)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)(Al-Saif et al., 2011, Ann Neurol. 70(6):913-9)、ならびに前頭側頭葉変性症(FTLD)(Luty et al., 2010, Ann Neurol. 2010 68(5):639-49)との間の遺伝的関連を示している。さらに、シグマ1アンタゴニストおよびシグマ2アゴニストは、抗癌剤および選択的腫瘍造影剤として有用でありうる(Akhter et al., 2008, Nucl. Med. Biol. 35:29-34; Tu et al., 2007, J. Med. Chem. 50:3194-3204)。
【0007】
シグマ1は、少なくとも特定のモデル細胞株において、ER-ミトコンドリア界面で分子シャペロンとして機能することができる(Hayashi & Su, 2007, Cell 131(3):596-610)。しかし、シグマ受容体の生理的役割ならびに神経変性疾患および癌におけるそれらの役割は不明のままである。インビトロで、シグマアンタゴニストによる処理は、シグマアンタゴニストおよび細胞株に依存して、シグマリガンドの時間作用および用量応答による、長期処理後のアポトーシス細胞死を引き起こす(Berthosis et al., 2003, Br. J. Cancer 88:438-446; Piergentili et al., J. Med. Chem. 53:1261-1269; Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886; Vilner et al., 1995, J. Neurosci. 15:117-134)。それでもシグマ1受容体系のメカニズムについての理解は難しいままである。
【0008】
前立腺腫瘍細胞は最終的には適応し、耐性を生じるため、ほとんどの前立腺癌患者は、最初は有効であったホルモンおよび化学療法に不応性となる。シグマアンタゴニストによる処置は、アンドロゲン感受性およびアンドロゲン非感受性の両方の前立腺癌細胞のアポトーシス細胞死を引き起こす(Berthosis et al., 2003, Br. J. Cancer 88:438-446; Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886)。前立腺癌細胞がどのようにしてそのような耐性を生じるかについてのいくらかの洞察が得られているが、現在のところホルモン抵抗性(去勢抵抗性)前立腺癌を処置するための代替法はほとんどない。難治性、進行性前立腺癌を処置するための新たに出てきている治療法は、前立腺腫瘍の成長および生存を維持するタンパク質プロセシングおよびシャペロン経路を標的とする。
【0009】
当技術分野において、難治性、進行性癌の処置において有用な化合物を同定する必要がある。そのような化合物は、すべて腫瘍の成長、生存および転移の維持を助けうる、タンパク質プロセシング、タンパク質合成、タンパク質折りたたみ、タンパク質輸送、タンパク質局在化、機能的高分子複合体へのタンパク質集合、および関連するシャペロン経路を標的としうる。本発明はこの満たされていない必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物を含む:
(i)式(I)の化合物:
、
式中:
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、ここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR
1基で置換されていてもよく;
R
1のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-NHS(=O)
2R
3、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-CO
2R
3、-OCO
2R
3、-CH(R
3)
2、-N(R
3)
2、-C(=O)N(R
3)
2、-OC(=O)N(R
3)
2、-NHC(=O)NH(R
3)、-NHC(=O)R
3、-NHC(=O)OR
3、-C(OH)(R
3)
2、および-C(NH
2)(R
3)
2からなる群より独立に選択され;
R
2のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく、またはX
3およびR
2は一緒に、0〜2つのR
1基で置換されていてもよい、(C
3-C
7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R
3のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく;
X
1は-CH
2-、-S-、-O-または-(NR
2)-であり;
X
2は=CH
2、=S、=Oまたは=NR
2であり;かつ
X
3は-S-、-O-、または-NR
2-である;および
(ii)式(II)の化合物:
R
A-R
B (II)、式中;
R
Aは
からなる群より選択され
X
4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
R
Bは:
からなる群より選択される;
(iii)その塩、溶媒和物、またはN-オキシド;および
その任意の組み合わせ。
【0011】
1つの態様において、式(I)中、環Aは、0〜4つのR
1基で置換されていてもよい、単環式アリールまたは単環式ヘテロアリール環である。もう1つの態様において、式(I)中、環Aは、0〜4つのR
1基で置換されていてもよい、フェニルである。さらにもう1つの態様において、式(I)中、X
1およびX
3はいずれも-NH-であり、かつX
2は=NHである。
【0012】
さらにもう1つの態様において、式(I)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C)、1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0013】
さらにもう1つの態様において、式(II)の化合物は、1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0014】
本発明は、少なくとも1つの式(III)の化合物、その塩、溶媒和物、またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせを含む組成物を含む:
、
式(III)中、
R
1およびR
2のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-NHS(=O)
2R
5、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-CO
2R
5、-OCO
2R
5、-CH(R
5)
2、-N(R
5)
2、-C(=O)N(R
5)
2、-OC(=O)N(R
5)
2、-NHC(=O)NH(R
5)、-NHC(=O)R
5、-NHC(=O)OR
5、-C(OH)(R
5)
2、および-C(NH
2)(R
5)
2からなる群より独立に選択され;
R
3は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
4は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
5のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH
2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である。
【0015】
1つの態様において、式(III)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0016】
本発明の組成物は、特定の態様を含むこともある。1つの態様において、組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。もう1つの態様において、組成物は、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)または自食作用による生存経路を阻害する、少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含む。さらにもう1つの態様において、治療薬は、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用調節剤、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、p97/VCP阻害剤およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0017】
さらにもう1つの態様において、治療薬は、オクタペプチド、ソマトスタチン、アナログエム(analoguem)、ランレオチド、アンジオペプチン、ダーモペプチン(dermopeptin)、オクトレオチド、ペグビソマント、3-メチルアデニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ワートマニン、イイヤレスタチンI、サルブリナル(salubrinal)、バーシペロスタチン(versipelostatin)、2H-イソインドール-2-カルボン酸、4-フルオロ-1,3-ジヒドロ-, (2R,6S,12Z,13aS,14aR,16aS)-14a-[[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル]-6-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a-ヘキサデカヒドロ-5,16-ジオキソシクロプロパ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアザシクロペンタデシン-2-イルエステル(ダノプレビル)、アダマンタン-アセチル-(6-アミノヘキサノイル)3-(ロイシニル)3-ビニル-(メチル)-スルホン、N-アセチル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-メチオナール、N-[(フェニルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシル-N-[(1S)-1-ホルミル-3-メチルブチル]-L-ロイシンアミド、(2R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-2-[(1S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-4-メチル-5-オキソ-2-ピロリジンカルボキシ-N-アセチル-L-システインチオエステル、 N-[N-(N-アセチル-L-ロイシル)-L-ロイシル]-L-ノルロイシン、ラクタシスチン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、(S)-1-カルボキシ-2-フェニル]-カルバモイル-arg-val-アルギナール、ウシ膵臓トリプシン阻害剤、[(2S,2R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]-L-ロイシン、N-[(S)-1-カルボキシ-イソペンチル)-カルバモイル-アルファ-(2-イミノヘキサヒドロ-4-(S)-ピリミジル]-L-グリシル-L-フェニルアラニナール、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩脱水物、アセチル-ロイシル-ロイシル-アルギナール、イソバレリル-val-val-AHMHA-ala-AHMHA、ここでAHMHA=(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、N-アルファ-L-ラムノピラノシルオキシ(ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン、フェニルメタンスルホニルフッ化物、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、NPI-0052、CEP-18770、MLN9708、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、サリノスポラミドA、PI3K阻害剤、ラパチニブ、ラパマイシン、ラパログ(rapalog)、HSP阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、シグマリガンドと標的指向成分との結合生成物、その塩、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0018】
本発明は、それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する方法も含む。方法は、下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む治療組成物の有効量を対象に投与する段階を含む:
(i)式(I)の化合物:
、
式中:
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、ここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR
1基で置換されていてもよく;
R
1のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-NHS(=O)
2R
3、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-CO
2R
3、-OCO
2R
3、-CH(R
3)
2、-N(R
3)
2、-C(=O)N(R
3)
2、-OC(=O)N(R
3)
2、-NHC(=O)NH(R
3)、-NHC(=O)R
3、-NHC(=O)OR
3、-C(OH)(R
3)
2、および-C(NH
2)(R
3)
2からなる群より独立に選択され;
R
2のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく、またはX
3およびR
2は一緒に、0〜2つのR
1基で置換されていてもよい、(C
3-C
7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R
3のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく;
X
1は-CH
2-、-S-、-O-または-(NR
2)-であり;
X
2は=CH
2、=S、=Oまたは=NR
2であり;かつ
X
3は-S-、-O-、または-NR
2-である;および
(ii)式(II)の化合物:
R
A-R
B (II)、式中;
R
Aは
からなる群より選択され
X
4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
R
Bは:
からなる群より選択される;
(iii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン、
(iv)その塩、溶媒和物、またはN-オキシド;および
その任意の組み合わせ。
【0019】
1つの態様において、式(I)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C)、1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0020】
1つの態様において、式(II)の化合物は、1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0021】
本発明は、それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する方法も含む。方法は、下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む治療組成物の有効量を対象に投与する段階を含む:
(i)式(III)の化合物:
、
式(III)中、
R
1およびR
2のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-NHS(=O)
2R
5、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-CO
2R
5、-OCO
2R
5、-CH(R
5)
2、-N(R
5)
2、-C(=O)N(R
5)
2、-OC(=O)N(R
5)
2、-NHC(=O)NH(R
5)、-NHC(=O)R
5、-NHC(=O)OR
5、-C(OH)(R
5)
2、および-C(NH
2)(R
5)
2からなる群より独立に選択され;
R
3は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
4は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
5のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH
2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である;
(ii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iii)その塩、溶媒和物、またはN-オキシド;および
その任意の組み合わせ。
【0022】
1つの態様において、式(III)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0023】
本発明の方法は特定の態様を含むこともある。1つの態様において、シグマ受容体関連疾患または障害は、癌、神経障害性疼痛、うつ、物質乱用、てんかん、精神病、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭葉変性症、筋萎縮性側索硬化症、およびその任意の組み合わせを含む群から選択される。もう1つの態様において、癌は前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、CNS腫瘍、乳癌、神経芽腫、白血病、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。さらにもう1つの態様において、疾患または障害は癌であり、さらにここで治療組成物を対象に投与することは、対象の癌における少なくとも1つの成長因子受容体の分解を引き起こす。さらにもう1つの態様において、癌は乳癌または前立腺癌を含む。さらにもう1つの態様において、前立腺癌は去勢感受性または去勢非感受性前立腺癌を含む。さらにもう1つの態様において、少なくとも1つの成長因子受容体はEGFR、HER2、HER3、p95HER2、アンドロゲン受容体、およびその任意の組み合わせを含む。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体はシグマ1である。さらにもう1つの態様において、対象は哺乳動物である。さらにもう1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0024】
本発明は、それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する方法も含む。方法は、シグマ受容体調節化合物の有効量を対象に投与する段階を含み、ここで方法はユビキチンプロテアソーム系(UPS)または自食作用による生存経路を阻害する、少なくとも1つの追加の治療薬を対象に投与する段階をさらに含む。
【0025】
1つの態様において、シグマ受容体調節化合物はシグマ受容体アンタゴニストである。もう1つの態様において、シグマ受容体はシグマ1である。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を同時投与する。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を共製剤化する。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を別々の時点で投与する。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物を対象に投与することは、対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する際に同様の結果を達成するのに必要とされる、治療薬単独の用量に比べて、低い用量の治療薬を対象に投与することを可能にする。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体関連障害または疾患は癌である。さらにもう1つの態様において、癌は前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、神経芽腫、CNS腫瘍、白血病、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0026】
1つの態様において、シグマ受容体調節化合物は、下記からなる群より選択される:
(i)式(I)の化合物:
、
式中:
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、ここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR
1基で置換されていてもよく;
R
1のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-NHS(=O)
2R
3、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-CO
2R
3、-OCO
2R
3、-CH(R
3)
2、-N(R
3)
2、-C(=O)N(R
3)
2、-OC(=O)N(R
3)
2、-NHC(=O)NH(R
3)、-NHC(=O)R
3、-NHC(=O)OR
3、-C(OH)(R
3)
2、および-C(NH
2)(R
3)
2からなる群より独立に選択され;
R
2のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく、またはX
3およびR
2は一緒に、0〜2つのR
1基で置換されていてもよい、(C
3-C
7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R
3のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく;
X
1は-CH
2-、-S-、-O-または-(NR
2)-であり;
X
2は=CH
2、=S、=Oまたは=NR
2であり;かつ
X
3は-S-、-O-、または-NR
2-である;および
(ii)式(II)の化合物:
R
A-R
B (II)、式中;
R
Aは
からなる群より選択され;
X
4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
R
Bは:
からなる群より選択される;
(iii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iv)その塩、溶媒和物、またはN-オキシド;および
その任意の組み合わせ。
【0027】
もう1つの態様において、式(I)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C)、1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0028】
さらにもう1つの態様において、式(II)の化合物は、1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0029】
1つの態様において、シグマ受容体調節化合物は、下記からなる群より選択される:
(i)式(III)の化合物:
、
式(III)中、
R
1およびR
2のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-NHS(=O)
2R
5、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-CO
2R
5、-OCO
2R
5、-CH(R
5)
2、-N(R
5)
2、-C(=O)N(R
5)
2、-OC(=O)N(R
5)
2、-NHC(=O)NH(R
5)、-NHC(=O)R
5、-NHC(=O)OR
5、-C(OH)(R
5)
2、および-C(NH
2)(R
5)
2からなる群より独立に選択され;
R
3は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
4は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
5のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH
2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である;
(ii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iii)その塩、溶媒和物、またはN-オキシド;および
その任意の組み合わせ。
【0030】
1つの態様において、式(III)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0031】
1つの態様において、治療薬は、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用調節剤、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0032】
1つの態様において、治療薬は、オクタペプチド、ソマトスタチン、アナログエム、ランレオチド、アンジオペプチン、ダーモペプチン、オクトレオチド、ペグビソマント、3-メチルアデニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ワートマニン、イイヤレスタチンI、サルブリナル、バーシペロスタチン、2H-イソインドール-2-カルボン酸、4-フルオロ-1,3-ジヒドロ-, (2R,6S,12Z,13aS,14aR,16aS)-14a-[[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル]-6-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a-ヘキサデカヒドロ-5,16-ジオキソシクロプロパ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアザシクロペンタデシン-2-イルエステル(ダノプレビル)、アダマンタン-アセチル-(6-アミノヘキサノイル)3-(ロイシニル)3-ビニル-(メチル)-スルホン、N-アセチル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-メチオナール、N-[(フェニルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシル-N-[(1S)-1-ホルミル-3-メチルブチル]-L-ロイシンアミド、(2R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-2-[(1S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-4-メチル-5-オキソ-2-ピロリジンカルボキシ-N-アセチル-L-システインチオエステル、 N-[N-(N-アセチル-L-ロイシル)-L-ロイシル]-L-ノルロイシン、ラクタシスチン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、(S)-1-カルボキシ-2-フェニル]-カルバモイル-arg-val-アルギナール、ウシ膵臓トリプシン阻害剤、[(2S,2R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]-L-ロイシン、N-[(S)-1-カルボキシ-イソペンチル)-カルバモイル-アルファ-(2-イミノヘキサヒドロ-4-(S)-ピリミジル]-L-グリシル-L-フェニルアラニナール、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩脱水物、アセチル-ロイシル-ロイシル-アルギナール、イソバレリル-val-val-AHMHA-ala-AHMHA、ここでAHMHA=(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、N-アルファ-L-ラムノピラノシルオキシ(ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン、フェニルメタンスルホニルフッ化物、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、NPI-0052、CEP-18770、MLN9708、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、サリノスポラミドA、PI3K阻害剤、ラパチニブ、ラパマイシン、ラパログ、ヒートショックタンパク質(HSP)阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、シグマリガンドと標的指向成分との結合生成物、その塩、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0033】
1つの態様において、対象は哺乳動物である。もう1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
【0034】
本発明は、それを必要としている対象の細胞タンパク質ホメオスタシスを調節する方法も含む。方法は、シグマ受容体調節化合物の有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象の細胞タンパク質ホメオスタシスが調節される。
【0035】
1つの態様において、シグマ受容体調節化合物はシグマ受容体アンタゴニストである。もう1つの態様において、シグマ受容体はシグマ1である。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を同時投与する。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を共製剤化する。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を別々の時点で投与する。
【0036】
1つの態様において、シグマ受容体調節化合物は、下記からなる群より選択される:
(i)式(I)の化合物:
、
式中:
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、ここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR
1基で置換されていてもよく;
R
1のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-NHS(=O)
2R
3、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-CO
2R
3、-OCO
2R
3、-CH(R
3)
2、-N(R
3)
2、-C(=O)N(R
3)
2、-OC(=O)N(R
3)
2、-NHC(=O)NH(R
3)、-NHC(=O)R
3、-NHC(=O)OR
3、-C(OH)(R
3)
2、および-C(NH
2)(R
3)
2からなる群より独立に選択され;
R
2のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく、またはX
3およびR
2は一緒に、0〜2つのR
1基で置換されていてもよい、(C
3-C
7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R
3のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく;
X
1は-CH
2-、-S-、-O-または-(NR
2)-であり;
X
2は=CH
2、=S、=Oまたは=NR
2であり;かつ
X
3は-S-、-O-、または-NR
2-である;および
(ii)式(II)の化合物:
R
A-R
B (II)、式中;
R
Aは
からなる群より選択され;
X
4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
R
Bは:
からなる群より選択される;
(iii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iv)その塩、溶媒和物、またはN-オキシド;および
その任意の組み合わせ。
【0037】
もう1つの態様において、式(I)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C)、1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0038】
さらにもう1つの態様において、式(II)の化合物は、1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0039】
1つの態様において、シグマ受容体調節化合物は、下記からなる群より選択される:
(i)式(III)の化合物:
、
式(III)中、
R
1およびR
2のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-NHS(=O)
2R
5、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-CO
2R
5、-OCO
2R
5、-CH(R
5)
2、-N(R
5)
2、-C(=O)N(R
5)
2、-OC(=O)N(R
5)
2、-NHC(=O)NH(R
5)、-NHC(=O)R
5、-NHC(=O)OR
5、-C(OH)(R
5)
2、および-C(NH
2)(R
5)
2からなる群より独立に選択され;
R
3は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
4は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
5のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH
2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である;
(ii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iii)その塩、溶媒和物、またはN-オキシド;および
その任意の組み合わせ。
【0040】
1つの態様において、式(III)の化合物は、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F)、1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G)、その塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびその任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0041】
1つの態様において、対象は神経変性疾患に罹っている。もう1つの態様において、神経変性疾患はパーキンソン病、前頭側頭葉変性症、筋萎縮性側索硬化症、またはその任意の組み合わせを含む。さらにもう1つの態様において、対象は哺乳動物である。さらにもう1つの態様において、哺乳動物はヒトである。
以下に、本発明の基本的な諸特徴および種々の態様を列挙する。
[1]
下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む組成物:
(i)以下の式(I)の化合物:
、
式中、
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、かつここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR1基で置換されていてもよく;
R1のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR3、-SR3、-S(=O)R3、-S(=O)2R3、-NHS(=O)2R3、-C(=O)R3、-OC(=O)R3、-CO2R3、-OCO2R3、-CH(R3)2、-N(R3)2、-C(=O)N(R3)2、-OC(=O)N(R3)2、-NHC(=O)NH(R3)、-NHC(=O)R3、-NHC(=O)OR3、-C(OH)(R3)2、および-C(NH2)(R3)2からなる群より独立に選択され;
R2のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく、またはX3およびR2は一緒に、0〜2つのR1基で置換されていてもよい(C3-C7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R3のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく;
X1は-CH2-、-S-、-O-または-(NR2)-であり;
X2は=CH2、=S、=Oまたは=NR2であり;かつ
X3は-S-、-O-、または-NR2-である;および
(ii)以下の式(II)の化合物:
RA-RB (II)、
式中、
RAは
からなる群より選択され
X4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
RBは:
からなる群より選択される;
(iii)それらの塩、溶媒和物、またはN-オキシド;ならびに
それらの任意の組み合わせ。
[2]
式(I)中、環Aが、0〜4つのR1基で置換されていてもよい、単環式アリールまたは単環式ヘテロアリール環である、[1]記載の組成物。
[3]
式(I)中、環Aが、0〜4つのR1基で置換されていてもよい、フェニルである、[1]記載の組成物。
[4]
式(I)中、X1およびX3がいずれも-NH-であり、かつX2が=NHである、[1]記載の組成物。
[5]
式(I)の化合物が下記からなる群より選択される、[1]記載の組成物:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C);
1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[6]
式(II)の化合物が下記からなる群より選択される、[1]記載の組成物:
1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[7]
薬学的に許容される担体をさらに含む、[1]記載の組成物。
[8]
ユビキチンプロテアソーム系(UPS)または自食作用による生存経路を阻害する、少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含む、[1]記載の組成物。
[9]
治療薬が、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用調節剤、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、p97/VCP阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[8]記載の組成物。
[10]
治療薬が、オクタペプチド、ソマトスタチン、アナログエム(analoguem)、ランレオチド、アンジオペプチン、ダーモペプチン(dermopeptin)、オクトレオチド、ペグビソマント、3-メチルアデニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ワートマニン、イイヤレスタチンI、サルブリナル(salubrinal)、バーシペロスタチン(versipelostatin)、2H-イソインドール-2-カルボン酸、4-フルオロ-1,3-ジヒドロ-, (2R,6S,12Z,13aS,14aR,16aS)-14a-[[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル]-6-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a-ヘキサデカヒドロ-5,16-ジオキソシクロプロパ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアザシクロペンタデシン-2-イルエステル(ダノプレビル)、アダマンタン-アセチル-(6-アミノヘキサノイル)3-(ロイシニル)3-ビニル-(メチル)-スルホン、N-アセチル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-メチオナール、N-[(フェニルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシル-N-[(1S)-1-ホルミル-3-メチルブチル]-L-ロイシンアミド、(2R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-2-[(1S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-4-メチル-5-オキソ-2-ピロリジンカルボキシ-N-アセチル-L-システインチオエステル、 N-[N-(N-アセチル-L-ロイシル)-L-ロイシル]-L-ノルロイシン、ラクタシスチン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、(S)-1-カルボキシ-2-フェニル]-カルバモイル-arg-val-アルギナール、ウシ膵臓トリプシン阻害剤、[(2S,2R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]-L-ロイシン、N-[(S)-1-カルボキシ-イソペンチル)-カルバモイル-アルファ-(2-イミノヘキサヒドロ-4-(S)-ピリミジル]-L-グリシル-L-フェニルアラニナール、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩脱水物、アセチル-ロイシル-ロイシル-アルギナール、イソバレリル-val-val-AHMHA-ala-AHMHA、ここでAHMHAは(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸である、N-アルファ-L-ラムノピラノシルオキシ(ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン、フェニルメタンスルホニルフッ化物、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、NPI-0052、CEP-18770、MLN9708、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、サリノスポラミドA、PI3K阻害剤、ラパチニブ、ラパマイシン、ラパログ(rapalog)、HSP阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、シグマリガンドと標的指向成分との結合生成物、それらの塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[9]記載の組成物。
[11]
少なくとも1つの以下の式(III)の化合物、その塩、溶媒和物、またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせを含む組成物:
、
式(III)中、
R1およびR2のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR5、-SR5、-S(=O)R5、-S(=O)2R5、-NHS(=O)2R5、-C(=O)R5、-OC(=O)R5、-CO2R5、-OCO2R5、-CH(R5)2、-N(R5)2、-C(=O)N(R5)2、-OC(=O)N(R5)2、-NHC(=O)NH(R5)、-NHC(=O)R5、-NHC(=O)OR5、-C(OH)(R5)2、および-C(NH2)(R5)2からなる群より独立に選択され;
R3は-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R4は-C1-C6アルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R5のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である。
[12]
式(III)の化合物が下記からなる群より選択される、[11]記載の組成物:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[13]
薬学的に許容される担体をさらに含む、[11]記載の組成物。
[14]
ユビキチンプロテアソーム系(UPS)または自食作用による生存経路を阻害する、少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含む、[11]記載の組成物。
[15]
治療薬が、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用調節剤、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、p97/VCP阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[14]記載の組成物。
[16]
治療薬が、オクタペプチド、ソマトスタチン、アナログエム、ランレオチド、アンジオペプチン、ダーモペプチン、オクトレオチド、ペグビソマント、3-メチルアデニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ワートマニン、イイヤレスタチンI、サルブリナル、バーシペロスタチン、2H-イソインドール-2-カルボン酸、4-フルオロ-1,3-ジヒドロ-, (2R,6S,12Z,13aS,14aR,16aS)-14a-[[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル]-6-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a-ヘキサデカヒドロ-5,16-ジオキソシクロプロパ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアザシクロペンタデシン-2-イルエステル(ダノプレビル)、アダマンタン-アセチル-(6-アミノヘキサノイル)3-(ロイシニル)3-ビニル-(メチル)-スルホン、N-アセチル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-メチオナール、N-[(フェニルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシル-N-[(1S)-1-ホルミル-3-メチルブチル]-L-ロイシンアミド、(2R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-2-[(1S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-4-メチル-5-オキソ-2-ピロリジンカルボキシ-N-アセチル-L-システインチオエステル、 N-[N-(N-アセチル-L-ロイシル)-L-ロイシル]-L-ノルロイシン、ラクタシスチン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、(S)-1-カルボキシ-2-フェニル]-カルバモイル-arg-val-アルギナール、ウシ膵臓トリプシン阻害剤、[(2S,2R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]-L-ロイシン、N-[(S)-1-カルボキシ-イソペンチル)-カルバモイル-アルファ-(2-イミノヘキサヒドロ-4-(S)-ピリミジル]-L-グリシル-L-フェニルアラニナール、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩脱水物、アセチル-ロイシル-ロイシル-アルギナール、イソバレリル-val-val-AHMHA-ala-AHMHA、ここでAHMHAは(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸である、N-アルファ-L-ラムノピラノシルオキシ(ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン、フェニルメタンスルホニルフッ化物、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、NPI-0052、CEP-18770、MLN9708、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、サリノスポラミドA、PI3K阻害剤、ラパチニブ、ラパマイシン、ラパログ、HSP阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、シグマリガンドと標的指向成分との結合生成物、それらの塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[15]記載の組成物。
[17]
それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する方法であって、下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む治療組成物の有効量を対象に投与する段階を含む、方法:
(i)以下の式(I)の化合物:
、
式中、
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、かつここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR1基で置換されていてもよく;
R1のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR3、-SR3、-S(=O)R3、-S(=O)2R3、-NHS(=O)2R3、-C(=O)R3、-OC(=O)R3、-CO2R3、-OCO2R3、-CH(R3)2、-N(R3)2、-C(=O)N(R3)2、-OC(=O)N(R3)2、-NHC(=O)NH(R3)、-NHC(=O)R3、-NHC(=O)OR3、-C(OH)(R3)2、および-C(NH2)(R3)2からなる群より独立に選択され;
R2のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく、またはX3およびR2は一緒に、0〜2つのR1基で置換されていてもよい(C3-C7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R3のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく;
X1は-CH2-、-S-、-O-または-(NR2)-であり;
X2は=CH2、=S、=Oまたは=NR2であり;かつ
X3は-S-、-O-、または-NR2-である;および
(ii)以下の式(II)の化合物:
RA-RB (II)、
式中、
RAは
からなる群より選択され
X4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
RBは:
からなる群より選択される;
(iii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン、
(iv)それらの塩、溶媒和物、またはN-オキシド;ならびに
それらの任意の組み合わせ。
[18]
式(I)の化合物が下記からなる群より選択される、[17]記載の方法:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C);
1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[19]
式(II)の化合物が下記からなる群より選択される、[17]記載の方法:
1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[20]
シグマ受容体関連疾患または障害が、癌、神経障害性疼痛、うつ、物質乱用、てんかん、精神病、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭葉変性症、筋萎縮性側索硬化症、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、[17]記載の方法。
[21]
癌が前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、CNS腫瘍、乳癌、神経芽腫、白血病、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[20]記載の方法。
[22]
疾患または障害が癌であり、さらにここで治療組成物を対象に投与することが、対象の癌における少なくとも1つの成長因子受容体の分解を引き起こす、[20]記載の方法。
[23]
癌が乳癌または前立腺癌を含む、[22]記載の方法。
[24]
前立腺癌が去勢感受性または去勢非感受性前立腺癌を含む、[23]記載の方法。
[25]
少なくとも1つの成長因子受容体がEGFR、HER2、HER3、p95HER2、アンドロゲン受容体、およびそれらの任意の組み合わせを含む、[22]記載の方法。
[26]
シグマ受容体がシグマ1である、[17]記載の方法。
[27]
対象が哺乳動物である、[17]記載の方法。
[28]
哺乳動物がヒトである、[27]記載の方法。
[29]
それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する方法であって、下記からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む治療組成物の有効量を対象に投与する段階を含む、方法:
(i)以下の式(III)の化合物:
、
式(III)中、
R1およびR2のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR5、-SR5、-S(=O)R5、-S(=O)2R5、-NHS(=O)2R5、-C(=O)R5、-OC(=O)R5、-CO2R5、-OCO2R5、-CH(R5)2、-N(R5)2、-C(=O)N(R5)2、-OC(=O)N(R5)2、-NHC(=O)NH(R5)、-NHC(=O)R5、-NHC(=O)OR5、-C(OH)(R5)2、および-C(NH2)(R5)2からなる群より独立に選択され;
R3は-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R4は-C1-C6アルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R5のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である;
(ii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iii)それらの塩、溶媒和物、またはN-オキシド;ならびに
それらの任意の組み合わせ。
[30]
式(III)の化合物が下記からなる群より選択される、[29]記載の方法:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[31]
シグマ受容体関連疾患または障害が、癌、神経障害性疼痛、うつ、物質乱用、てんかん、精神病、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭葉変性症、筋萎縮性側索硬化症、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、[29]記載の方法。
[32]
癌が前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、CNS腫瘍、乳癌、神経芽腫、白血病、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[31]記載の方法。
[33]
疾患または障害が癌であり、さらにここで治療組成物を対象に投与することが、対象の癌における少なくとも1つの成長因子受容体の分解を引き起こす、[31]記載の方法。
[34]
癌が乳癌または前立腺癌を含む、[33]記載の方法。
[35]
前立腺癌が去勢感受性または去勢非感受性前立腺癌を含む、[34]記載の方法。
[36]
少なくとも1つの成長因子受容体がEGFR、HER2、HER3、p95HER2、アンドロゲン受容体、およびそれらの任意の組み合わせを含む、[33]記載の方法。
[37]
シグマ受容体がシグマ1である、[29]記載の方法。
[38]
対象が哺乳動物である、[29]記載の方法。
[39]
哺乳動物がヒトである、[38]記載の方法。
[40]
それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する方法であって、シグマ受容体調節化合物の有効量を対象に投与する段階を含み、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)または自食作用による生存経路を阻害する、少なくとも1つの追加の治療薬を対象に投与する段階をさらに含む、方法。
[41]
シグマ受容体調節化合物がシグマ受容体アンタゴニストである、[40]記載の方法。
[42]
シグマ受容体がシグマ1である、[40]記載の方法。
[43]
シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を同時投与する、[40]記載の方法。
[44]
シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を共製剤化する、[43]記載の方法。
[45]
シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を別々の時点で投与する、[40]記載の方法。
[46]
シグマ受容体調節化合物を対象に投与する段階が、対象のシグマ受容体関連障害または疾患を予防、処置、または改善する際に同様の結果を達成するのに必要とされる、治療薬単独の用量に比べて、低い用量の治療薬を対象に投与することを可能にする、[40]記載の方法。
[47]
シグマ受容体関連障害または疾患が癌である、[40]記載の方法。
[48]
癌が前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、神経芽腫、CNS腫瘍、白血病、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[47]記載の方法。
[49]
シグマ受容体調節化合物が下記からなる群より選択される、[40]記載の方法:
(i)以下の式(I)の化合物:
、
式中、
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、かつここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR1基で置換されていてもよく;
R1のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR3、-SR3、-S(=O)R3、-S(=O)2R3、-NHS(=O)2R3、-C(=O)R3、-OC(=O)R3、-CO2R3、-OCO2R3、-CH(R3)2、-N(R3)2、-C(=O)N(R3)2、-OC(=O)N(R3)2、-NHC(=O)NH(R3)、-NHC(=O)R3、-NHC(=O)OR3、-C(OH)(R3)2、および-C(NH2)(R3)2からなる群より独立に選択され;
R2のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく、またはX3およびR2は一緒に、0〜2つのR1基で置換されていてもよい(C3-C7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R3のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく;
X1は-CH2-、-S-、-O-または-(NR2)-であり;
X2は=CH2、=S、=Oまたは=NR2であり;かつ
X3は-S-、-O-、または-NR2-である;および
(ii)以下の式(II)の化合物:
RA-RB (II)、
式中、
RAは
からなる群より選択され;
X4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
RBは:
からなる群より選択される;
(iii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iv)それらの塩、溶媒和物、またはN-オキシド;ならびに
それらの任意の組み合わせ。
[50]
式(I)の化合物が下記からなる群より選択される、[49]記載の方法:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C);
1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[51]
式(II)の化合物が下記からなる群より選択される、[49]記載の方法:
1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[52]
シグマ受容体調節化合物が下記からなる群より選択される、[40]記載の方法:
(i)以下の式(III)の化合物:
、
式(III)中、
R1およびR2のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR5、-SR5、-S(=O)R5、-S(=O)2R5、-NHS(=O)2R5、-C(=O)R5、-OC(=O)R5、-CO2R5、-OCO2R5、-CH(R5)2、-N(R5)2、-C(=O)N(R5)2、-OC(=O)N(R5)2、-NHC(=O)NH(R5)、-NHC(=O)R5、-NHC(=O)OR5、-C(OH)(R5)2、および-C(NH2)(R5)2からなる群より独立に選択され;
R3は-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R4は-C1-C6アルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R5のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である;
(ii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iii)それらの塩、溶媒和物、またはN-オキシド;ならびに
それらの任意の組み合わせ。
[53]
式(III)の化合物が下記からなる群より選択される、[52]記載の方法:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[54]
治療薬が、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用調節剤、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[40]記載の方法。
[55]
治療薬が、オクタペプチド、ソマトスタチン、アナログエム、ランレオチド、アンジオペプチン、ダーモペプチン、オクトレオチド、ペグビソマント、3-メチルアデニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ワートマニン、イイヤレスタチンI、サルブリナル、バーシペロスタチン、2H-イソインドール-2-カルボン酸、4-フルオロ-1,3-ジヒドロ-, (2R,6S,12Z,13aS,14aR,16aS)-14a-[[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル]-6-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a-ヘキサデカヒドロ-5,16-ジオキソシクロプロパ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアザシクロペンタデシン-2-イルエステル(ダノプレビル)、アダマンタン-アセチル-(6-アミノヘキサノイル)3-(ロイシニル)3-ビニル-(メチル)-スルホン、N-アセチル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-メチオナール、N-[(フェニルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシル-N-[(1S)-1-ホルミル-3-メチルブチル]-L-ロイシンアミド、(2R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-2-[(1S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-4-メチル-5-オキソ-2-ピロリジンカルボキシ-N-アセチル-L-システインチオエステル、 N-[N-(N-アセチル-L-ロイシル)-L-ロイシル]-L-ノルロイシン、ラクタシスチン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、(S)-1-カルボキシ-2-フェニル]-カルバモイル-arg-val-アルギナール、ウシ膵臓トリプシン阻害剤、[(2S,2R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]-L-ロイシン、N-[(S)-1-カルボキシ-イソペンチル)-カルバモイル-アルファ-(2-イミノヘキサヒドロ-4-(S)-ピリミジル]-L-グリシル-L-フェニルアラニナール、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩脱水物、アセチル-ロイシル-ロイシル-アルギナール、イソバレリル-val-val-AHMHA-ala-AHMHA、ここでAHMHAは(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸である、N-アルファ-L-ラムノピラノシルオキシ(ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン、フェニルメタンスルホニルフッ化物、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、NPI-0052、CEP-18770、MLN9708、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、サリノスポラミドA、PI3K阻害剤、ラパチニブ、ラパマイシン、ラパログ、ヒートショックタンパク質(HSP)阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、シグマリガンドと標的指向成分との結合生成物、それらの塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、[54]記載の方法。
[56]
対象が哺乳動物である、[40]記載の方法。
[57]
哺乳動物がヒトである、[56]記載の方法。
[58]
それを必要としている対象の細胞タンパク質ホメオスタシスを調節する方法であって、シグマ受容体調節化合物の有効量を対象に投与する段階を含み、それにより対象の細胞タンパク質ホメオスタシスが調節される、方法。
[59]
シグマ受容体調節化合物がシグマ受容体アンタゴニストである、[58]記載の方法。
[60]
シグマ受容体がシグマ1である、[58]記載の方法。
[61]
シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を同時投与する、[58]記載の方法。
[62]
シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を共製剤化する、[61]記載の方法。
[63]
シグマ受容体調節化合物および追加の治療薬を別々の時点で投与する、[58]記載の方法。
[64]
シグマ受容体調節化合物が下記からなる群より選択される、[58]記載の方法:
(i)以下の式(I)の化合物:
、
式中、
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、かつここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR1基で置換されていてもよく;
R1のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR3、-SR3、-S(=O)R3、-S(=O)2R3、-NHS(=O)2R3、-C(=O)R3、-OC(=O)R3、-CO2R3、-OCO2R3、-CH(R3)2、-N(R3)2、-C(=O)N(R3)2、-OC(=O)N(R3)2、-NHC(=O)NH(R3)、-NHC(=O)R3、-NHC(=O)OR3、-C(OH)(R3)2、および-C(NH2)(R3)2からなる群より独立に選択され;
R2のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく、またはX3およびR2は一緒に、0〜2つのR1基で置換されていてもよい(C3-C7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R3のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR1基で置換されていてもよく;
X1は-CH2-、-S-、-O-または-(NR2)-であり;
X2は=CH2、=S、=Oまたは=NR2であり;かつ
X3は-S-、-O-、または-NR2-である;および
(ii)以下の式(II)の化合物:
RA-RB (II)、
式中、
RAは
からなる群より選択され;
X4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
RBは:
からなる群より選択される;
(iii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iv)それらの塩、溶媒和物、またはN-オキシド;ならびに
それらの任意の組み合わせ。
[65]
式(I)の化合物が下記からなる群より選択される、[64]記載の方法:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C);
1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[66]
式(II)の化合物が下記からなる群より選択される、[64]記載の方法:
1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[67]
シグマ受容体調節化合物が下記からなる群より選択される、[58]記載の方法:
(i)以下の式(III)の化合物:
、
式(III)中、
R1およびR2のそれぞれは-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-OR5、-SR5、-S(=O)R5、-S(=O)2R5、-NHS(=O)2R5、-C(=O)R5、-OC(=O)R5、-CO2R5、-OCO2R5、-CH(R5)2、-N(R5)2、-C(=O)N(R5)2、-OC(=O)N(R5)2、-NHC(=O)NH(R5)、-NHC(=O)R5、-NHC(=O)OR5、-C(OH)(R5)2、および-C(NH2)(R5)2からなる群より独立に選択され;
R3は-C1-C6アルキル、-C1-C6フルオロアルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R4は-C1-C6アルキル、-C1-C6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R5のそれぞれはH、C1-C6アルキル、C1-C6ヘテロアルキル、アリール、および-C1-C3アルキル-(C3-C6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である;
(ii)ハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン;
(iii)それらの塩、溶媒和物、またはN-オキシド;ならびに
それらの任意の組み合わせ。
[68]
式(III)の化合物が下記からなる群より選択される、[67]記載の方法:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
それらの塩、溶媒和物またはN-オキシド、およびそれらの任意の組み合わせ。
[69]
対象が神経変性疾患に罹っている、[58]記載の方法。
[70]
神経変性疾患がパーキンソン病、前頭側頭葉変性症、筋萎縮性側索硬化症、またはそれらの任意の組み合わせを含む、[69]記載の方法。
[71]
対象が哺乳動物である、[58]記載の方法。
[72]
哺乳動物がヒトである、[71]記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下の本発明の好ましい態様の詳細な説明は、添付の図面と共に読めば、よりよく理解される。本発明を例示する目的のために、現在好ましい態様を図面に示している。しかし、本発明は図面に示す態様の厳密な配列および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【
図1】
図1A〜1Bを含む、
図1は、シグマ1アンタゴニストによって誘導された前立腺腺癌細胞死を示す。
図1Aは、アラマーブルー(Alamar blue)検定によって測定した細胞数のシグマリガンド仲介性の減少を示すグラフである:シグマアンタゴニスト(ハロペリドール)またはアゴニスト(PRE084)で3日間処理し、対照(DMSO処理)と比較した、DU145細胞の用量応答分析。
図1Bは、5μMシグマアンタゴニスト(ハロペリドール)またはアゴニスト(PRE084)で最大3日間処理した後のトリパンブルー色素排除検定により定量し、対照(DMSO処理)細胞培養物と比較した、PC3細胞死を示すグラフである。定量した細胞死を薬物処理集団ごとにトリパンブルー陽性細胞のパーセンテージで示した。シグマアンタゴニストによる約24〜48時間の処理後に顕著な細胞死が起こった。
【
図2】
図2A〜2Bを含む、
図2は、シグマアンタゴニスト仲介性の腫瘍細胞死のモデルを示すフローチャート群である。
図2Aは、シグマアンタゴニストが小胞体(ER)ストレスを誘導し、UPRおよび自食作用を含む一連の適応または細胞保護応答を生じることを示すフローチャートで、ここでUPRは細胞保護応答として自食作用を誘導する。
図2Bは、自食作用の細胞保護応答が圧倒されると、細胞はアポトーシスを起こすことを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、IPAGのアリールグアニジンとハロペリドールの4-フェニルピペリジン部分のサイズおよび体積比較を示す図である。
【
図4】
図4A〜4Iを含む、
図4は、シグマアンタゴニスト処理に関連するオートファゴソーム形成および自食フラックスを示す。
図4Aは、MDA-MB-468乳腺癌細胞の10μMシグマアンタゴニスト(IPAG、ハロペリドール、PB28、リムカゾール)による24時間の処理が、LC3IIレベルの顕著な誘導を引き起こしたが、アゴニスト(PRE-084、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン)は誘導を引き起こさなかったという知見を示すゲルの画像である。サイズマーカーはキロダルトン(kDa)を示す。
図4Bは、シグマリガンド処理したMDA-MB-468(GFP-LC3)細胞における、GFPタグLC3(GFP-LC3)のオートファゴソームへの転位を示す一連の写真である。細胞を10μM IPAG、ハロペリドール、PB28、リムカゾール、および50μM PRE-084、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシンで24時間処理した。(+)-SKF10047は(+)-SKFと略記し、(+)-ペンタゾシンは(+)-PTZと略記する。
図4Cは、GFP-LC3のオートファゴソームへの用量応答性の転位を示すグラフである。GFP-LC3点を、アンタゴニストおよびアゴニストの漸増濃度で24時間処理したMDA-MB-468(GFP-LC3)細胞で定量した。ヒストグラムは、少なくとも4回の測定からのデータを、表示する薬物用量での細胞ごとの点の平均数±S.E.Mで示す。薬物EC
50±S.E.M.値を示す。データは各薬物濃度について少なくとも10の視野および300個の細胞の代表である。すべてのアンタゴニストでアゴニストと比べてP<0.01;IPAGおよびハロペリドールではPB28およびリムカゾールに比べてP<0.05。
図4Dは、E64d存在下でのLC3IIの蓄積を示すゲルの画像である。E64d(20μg/ml)およびIPAG(10μM)の同時処理18時間後に細胞溶解物を評価した。
図4Eは、E64dと組み合わせたハロペリドール(10μM)の効果を示すグラフである。
図4Fは、E64dと組み合わせたIPAGの効果を示すグラフである。
図4E〜4Fのヒストグラムは、DMSO対照レーンに対する処理レーンのLC3IIバンド濃度の比の定量を示し、データは対照(DMSO単独)と比較してのLC3IIバンド濃度の誘導倍率で示す(n=4、
*P<0.05)。DMSO単独について、この条件は対照として基準線を設定しているため、ヒストグラムの棒は示していないことに留意されたい。
図4Gは、GFP-LC3の切断を用いて、自食フラックスをさらに評価したことを示すゲルである。MDA-MB-468(GFP-LC3)細胞を表示のシグマリガンドで24時間処理した。
図4Hは、IPAGおよびE64d非存在下ではGFP-LC3IIの蓄積は見られなかったことを示すゲルの画像である。
図4Iは、IPAG(10μM)およびE64d(20μg/ml)の組み合わせ処理によるGFPLC3IIの蓄積およびGFP減弱を示すゲルの画像である。
【
図5】
図5A〜5Cを含む、
図5は、シグマ1アンタゴニスト仲介性自食作用はシグマ1依存性であるとの知見を示す。MDA-MB-468(GFP-LC3)細胞を、対照またはシグマ1 siRNAのいずれかによる形質移入の72時間後、10μM IPAGで24時間処理した。
図5Aは、MDA-MB-468(GFP-LC3)細胞において形質移入後および処理後にシグマ1のsiRNA仲介性ノックダウンを評価したことを確認する、免疫ブロットの画像である。GFP-LC3切断のレベルをGFP免疫ブロットによって測定した。データは3回の測定の代表である。
図5Bは、10μM IPAGにより24時間処理したMDA-MB-468(GFP-LC3)細胞におけるGFP-LC3点形成の代表的画像である。
図5Cは、10μM IPAGにより24時間処理したMDA-MB-468(GFP-LC3)細胞におけるGFP-LC3点形成の定量を示すグラフである。
【
図6】
図6A〜6Fを含む、
図6は、シグマ1アンタゴニストによるUPRの用量応答性誘導を示す。MDA-MB-468細胞をIPAGの漸増用量(1〜20μM)で24時間処理した。
図6Aは、LC3IIタンパク質レベルの誘導を示すゲルの画像である。
図6Bは、GRP78/BiPタンパク質レベルの誘導を示すゲルの画像である。
図6Cは、p38MAPK(Thr180/Tyr182)のリン酸化を示すゲルの画像である。
図6Dは、IRE1αタンパク質レベルの誘導およびJNK(Thr183/Tyr185)のリン酸化を示すゲルの画像である。
図6Eは、ATF4タンパク質レベルの誘導およびeIF2α(Ser51)のリン酸化を示すゲルの画像である。
図6Fは、1μM IPAGによる24時間の処理後のオートファゴソームの定量およびURPマーカー誘導を示すグラフである。データは少なくとも3回の独立した測定から生成し、DMSO処理対照に対する平均誘導倍率で示す。誤差バーは平均の標準誤差を示す。
*P<0.05、
***P<0.001。
【
図7】
図7A〜7Eを含む、
図7は、シグマ1アンタゴニスト誘導性UPRの時間経過を示す。シグマ1アンタゴニスト誘導性ERストレスの時間経過をUPRマーカーの免疫ブロット分析によって評価した。細胞を10μM IPAGで表示の時間処理した。
図7Aは、IRE1αタンパク質レベルの誘導およびJNK(Thr183/Tyr185)のリン酸化を示すゲルの画像である。
図7Bは、ATF4タンパク質レベルの誘導およびeIF2α(Ser51)のリン酸化を示すゲルの画像である。
図7Cは、p38MAPK(Thr180/Tyr182)のリン酸化を示すゲルの画像である。
図7Dは、GRP78/BiPタンパク質レベルの誘導を示すゲルの画像である。
図7Eは、MDA-MB-468(GFP-LC3)におけるオートファゴソーム形成の時間-作用ヒストグラムを示すグラフの画像である。データは各薬物濃度について少なくとも10の視野および300個の細胞の代表である。0時間(基準)、1時間、および6時間に比べて24時間IPAG処理でP<0.001;12時間IPAG処理に比べて24時間処理でP<0.05。
【
図8】
図8A〜8Dを含む、
図8は、シグマ1アンタゴニスト仲介性UPRの阻害は自食作用を阻害するとの知見を示す。
図8Aは、形質移入後48〜72時間のIRE1α siRNAノックダウンを示す免疫ブロットの画像である。IRE1αのノックダウンはGFP-LC3切断のIPAG仲介性誘導を抑制する。
図8Bは、IRE1αのsiRNA仲介性ノックダウンおよびATF抑制GFP-LC3点形成の代表的画像を含む。
図8Cは、IRE1αのsiRNA仲介性ノックダウンおよびATF4によるGFP-LC3点形成の抑制を定量するグラフである。
図Dは、JNK阻害剤、SP610250がIPAG仲介性点形成を抑制することを示すグラフである。MDA-MB-468(GFP-LC3)細胞をIPAG(10μM)およびJNK阻害剤SP610250(20μM)の組み合わせで24時間処理した。
【
図9】
図9A〜9Cを含む、
図9は、ベクリン1 RNAiによるシグマ1アンタゴニスト関連自食作用の阻害を示す。ベクリン1または対照siRNAを、シグマ1アンタゴニストによる処理の72時間前に形質移入した。細胞を10μMの表示したシグマ1アンタゴニスト(IPAG、ハロペリドール)で24時間処理した。
図9Aは、前述のとおりに処理したMDA-MB-468(GFP-LC3)細胞の代表的画像を示す。
図9Bは、細胞あたりのGFP-LC3点の平均数としての画像の定量を示すグラフである。データは各処理条件について少なくとも10の視野および200個の細胞の代表である。
図9Cは、ベクリン1のsiRNAノックダウンおよびベクリン1ノックダウン細胞におけるシグマ1アンタゴニスト仲介性GFP-LC3切断の阻害を確認する免疫ブロットの画像である。
【
図10】
図10A〜10Fを含む、
図10は、UPRまたは自食作用の阻害はシグマアンタゴニスト誘導性アポトーシスを加速するとの知見を示す。
図10Aは、シグマ1アンタゴニスト誘導性細胞死の時間経過を示すグラフである。MDA-MB-468細胞を10μM IPAG(アンタゴニスト)で24および48時間処理し、10μM PRE-084(アゴニスト)またはDMSO(対照)で同じ時間処理した細胞と比較した。細胞死をトリパンブルー色素排除により測定し、計数した集団の死滅細胞のパーセンテージで示す。データは少なくとも4回の測定からのものである(
***P<0.001)。
図10Bは、48時間のIPAG処理後のカスパーゼ3(Asp 175)切断(cカスパーゼ)を示す免疫ブロットの画像である。PRE-084はPREと略記する。
図10Cは、ベクリン1 siRNAの形質移入の72時間後に、シグマ1アンタゴニスト(IPAG)がベクリン1ノックダウン細胞で細胞死を誘導したことを示すグラフである。データは少なくとも4回の測定からのものである。
図10Dは、siRNA仲介性ベクリン1ノックダウンを確認し、カスパーゼ3切断(cカスパーゼ)およびPARP切断(cPARP)によるIPAG誘導性アポトーシスを示す、免疫ブロットの画像である。
図10Eは、IRE1αノックダウン細胞において測定したシグマ1アンタゴニスト誘導性細胞死を示す。細胞を、IRE1α siRNAの形質移入の72時間後に、10μM IPAGで24時間処理した。細胞死を
図10Aのとおりに定量した。
図10Fは、
図10Dのとおりに、アポトーシス細胞死を切断カスパーゼ3(cカスパーゼ)および切断PARP(cPARP)の免疫ブロット検出によって確認したことを示す免疫ブロットの画像である。
【
図11】
図11は、シグマ1アンタゴニスト処理に関連するMDAMB468細胞サイズの低減を示すグラフである。MDA-MB-468細胞をDMSO(対照)、10μM IPAG(アンタゴニスト)、または10μM PRE084(アゴニスト)で24時間処理した。細胞サイズを、Becton Dickinson FACS CaliburフローサイトメーターおよびCell Questソフトウェアを用いて、フローサイトメトリーにより定量した。G1期集団の平均前方散乱光強度(FSC-H)を相対的な細胞サイズの尺度として測定した。FL2幅対FL-2面積のドットプロットを用いて、単細胞を凝集細胞からゲーティングにより除去した。平均FSC-H±S.E.を少なくとも4回の独立した測定から計算した。各FSC-H測定について、10,000個の単細胞でFACS分析を実施した。DMSO(対照)およびPRE084処理したMDA-MB-468の平均FSC-H測定値はそれぞれ370±6および372±7であったが、IPAG処理したMDA-MB-468細胞の平均FSC-Hは323±4であった。
**DMSOと比較してのIPAGおよびPRE084と比較してのIPAGでP<0.01。
【
図12】
図12A〜12Bを含む、
図12は、自食作用の化学的阻害はシグマ1アンタゴニスト仲介性細胞死を加速するとの知見を示す。MDA-MB-468細胞をDMSO(対照)、10μM IPAG(シグマアンタゴニスト)、もしくは5mM 3-メチルアデニン(3-MA、自食作用阻害剤)、またはIPAGおよび3-MAの組み合わせで24時間処理した。
図12Aは、細胞あたりのGFP-LC3点の定量を示すグラフである。データは4回の測定から定量し、平均±S.E.M.で示す。
図12Bは、トリパンブルー色素排除によって測定した細胞死を示すグラフである。対照レベルを超える細胞死が、IPAGと3-MAを組み合わせたときにのみ、24時間で観察された。統計学的有意性を一元配置分散分析と、続くボンフェローニの事後検定により決定した。
【
図13】
図13A〜13Bを含む、
図13は、シグマ1受容体関連タンパク質を記載する。実験は、タンパク質複合体精製ならびにタンデムヘマグルチン(HA)エピトープおよび6-ヒスチジン(His
6)による二重親和性タグシグマ1を用いての同定実験を含んでいた。
図13Aは、MDA-MB-468乳腺癌細胞からタンデム親和性精製によって単離したシグマ1-HA-His
6関連タンパク質を示す銀染色ゲルの画像である。約80のタンパク質がシグマ1に関連した(すなわち、同時精製された)。
図13Bは、MUD-Pit LC-MS/MSによって測定したシグマ1関連タンパク質の概要を示す円グラフである。シグマ1関連タンパク質の80%は、ERタンパク質ホメオスタシス、細胞生存、および死滅に直接関連する細胞プロセスに関与していた。
【
図14】
図14は、シグマアンタゴニスト処理に関連するユビキチン化タンパク質のレベル上昇を示す免疫ブロットの画像である。10μMハロペリドール(アンタゴニスト)またはDMSO(対照)で処理したPC3前立腺腺癌細胞。全細胞溶解物をSDS-PAGEで分離し、ユビキチン抗体(P4D1)により免疫ブロットした。DU145前立腺癌細胞でも同様の結果が得られた。
【
図15】
図15は、前立腺癌細胞株におけるUPRの誘導を示す免疫ブロットの画像である。免疫ブロットは、10μMハロペリドール(アンタゴニスト)で20時間処理したPC3前立腺腺癌細胞からの細胞界面活性剤に可溶性の細胞溶解物のもので、DMSO(対照)処理細胞と比較した。P-IRE1αはリン酸化IRE1αを示す。DU145前立腺癌細胞でも同様の結果が得られた。
【
図16】
図16A〜16Bを含む、
図16は、シグマアンタゴニスト関連自食作用を示す。
図16Aは、対照(DMSO)群およびハロペリドール処理群(10μM、アンタゴニスト)におけるGFPタグLC3(LC3-GFP)のオートファゴソームへの転位の代表的画像を示す。
図16Bは、活性化自食作用の指標として広く用いられている、微小管関連タンパク質軽鎖3BIIイソフォーム(CL3BII)のレベル上昇を示すゲルの画像である。10μMのハロペリドールによる24時間の処理は、LC3BIIレベルの顕著な誘導を引き起こした。
【
図17】
図17は、新規ハイブリッドIPAG-ハロペリドール類縁体の一般化合成経路を示す合成スキームである。
【
図18】
図18は、N-アリール-N'-置換グアニジンの代替合成を示す合成スキームである。
【
図19】
図19は、放射性同位体標識したハイブリッドIPAG-ハロペリドールの合成を示す合成スキームである。
【
図20】
図20は、N-アリール-N'-置換グアニジンの一般化合成経路を示す合成スキームである。
【
図21】
図21は、N-アリール-N'-置換グアニジンの代替一般化合成経路を示す合成スキームである。
【
図22】
図22は、溶液または固相法を用いての、グアニジン前駆体の一般合成経路を示す合成スキームである。
【
図23】
図23は、ハロペリドールアミンの合成を示す合成スキームである。
【
図24】
図24は、ハロペリドール様アミンの合成を示す合成スキームである。
【
図25】
図25は、R
1で様々な基により置換された、グアニジンシグマアンタゴニストの代表的構造のリストである。
【
図26】
図26A〜26Bを含む、
図26は、6つのプロトタイプのシグマ受容体リガンドを示す。
図26Aは、シグマ1もしくはシグマ2または両方のそれらの選択性、およびアゴニストまたはアンタゴニストとしてのそれらの推定薬理活性について選択した6つのプロトタイプのシグマ受容体リガンドを示すリストである。
図26Bは、シグマ受容体リガンドの対応する化学構造を示す。ここに示すすべての化合物は市販されている。
【
図27】
図27A〜27Cを含む、
図27は、シグマ受容体アンタゴニストがエストロゲン受容体陽性および陰性細胞両方の増殖を阻害するとの知見を示す。インビトロ細胞増殖をアラマーブルー還元によって定量した。表示の薬物の6つの薬物濃度の抗増殖効果を、処理の4日後に定量した。これらの乳腺癌細胞培養物において、シグマ1アゴニスト(+)-ペンタゾシンおよび(+)-SKF10047(データは後者について示す)は0.1Mもの高濃度でも無効であった。シグマ1アンタゴニストIPAGおよびリムカゾールは、すべての細胞株において同様の効力で細胞増殖を阻害した。
図27Aは、エストロゲン受容体陽性乳房腫瘍細胞(MCF-7)培養物において、タモキシフェン、IPAG、およびリムカゾールが類似の効力で細胞増殖を阻害したことを示すグラフである。
図27Bは、エストロゲン受容体陽性乳房腫瘍細胞(T47D)培養物において、タモキシフェン、IPAG、およびリムカゾールが類似の効力で細胞増殖を阻害したことを示すグラフである。
図27Cは、シグマアンタゴニストIPAGおよびリムカゾールが、エストロゲン受容体陰性MDA-MB-468細胞の細胞増殖も、類似の効力で阻害したことを示すグラフである。他のシグマ1アンタゴニスト、BD1063、BD1047、およびハロペリドールも、細胞増殖を阻害した(データは示していない)。データは二つ組で実施した3回の実験の代表である。
【
図28】
図28は、シグマ受容体アンタゴニストが抗エストロゲン療法による腫瘍成長阻害を強化するとの知見を示すグラフである。リムカゾールによるタモキシフェン強化をインビボで評価した。予備的腫瘍異種移植実験を、MSKCC Tumor Assessment Core施設プロトコルに従って実施した。簡単に言うと、β-エストラジオール処置した無胸腺マウスにMCF7細胞を注射し、平均腫瘍体積が約140mm
3に達した時点で薬物処置を開始したが、これはMCF-7注射の17日後に起こった。1日1回の腹腔内薬物注射を最大11日間実施し、腫瘍体積を次の式で定量した:腫瘍体積=L×W
2×π/6。このパイロット実験において、1群につき3〜5匹のマウスを試験した。11日間の薬物処置後、タモキシフェン(1mg/kg)およびリムカゾール(10mg/kg)はそれぞれ腫瘍成長を約50%阻害した。11日間の時間経過中、腫瘍成長はタモキシフェン(1mg/kg)およびリムカゾール(10mg/kg)を組み合わせると完全に阻害された。1群につきより多くのマウスおよび複数の薬物用量を用い、長期時間経過を実施して、組み合わせ薬物処置の腫瘍成長阻害効果が相加的または相乗的のいずれかを決定してもよい。
【
図29】
図29は、シグマ1アンタゴニストが乳腺癌細胞のアポトーシス細胞死を誘導する時間経過を示す。シグマ1アンタゴニスト、IPAGによる処理は、subG1期細胞のパーセンテージによって示されるとおり、MDA-MB-468細胞のアポトーシス細胞死を誘導する。10μM IPAG(シグマ1リガンド、推定アンタゴニスト)で24および48時間処理したMDA-MB-468細胞は、48時間の処理後にsubG1(死滅、アポトーシス)細胞の数の有意な増加、31.7%(M1細胞集団により示す)を示した。一番左の図はDMSO(媒体対照)で24時間処理した細胞を示す。
【
図30】
図30A〜30Bを含む、
図30は、シグマ1アンタゴニストが細胞周期停止を仲介することを示す。シグマ1アンタゴニスト、IPAGによる処理は、細胞周期のG1期の乳腺癌細胞の蓄積を引き起こす。
図30Aは、DMSO(媒体対照)、1μM IPAG(シグマ1アンタゴニスト)、または10μM (+)SKF-10047(シグマ1アゴニスト)で24時間処理したT47D細胞におけるG1、S、およびG2期細胞のパーセンテージを示すグラフである。
図30Bは、DMSO(媒体対照)、10μM IPAG(シグマ1アンタゴニスト)、または10μM (+)-SKF-10047(シグマ1アゴニスト)で24時間処理したMDA-MB-468細胞におけるG1、S、およびG2期細胞のパーセンテージを示すグラフである。IPAG処理とは対照的に、対照(DMSO)および(+)-SKF10047(SKF)処理した細胞は、細胞周期のプロファイルにおいて有意な差を示さなかった。
【
図31】
図31A〜31Eを含む、
図31は、シグマ1アンタゴニストが用量および時間応答性の様式で腫瘍細胞サイズを低減することを示す。
図31Aは、DMSO(薬物媒体対照)、10μM IPAG(アンタゴニスト)または10μM PRE084(アゴニスト)で約20時間処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞の微分干渉コントラスト(DIC)画像である。各画像中に20ミクロンのバーを示す。データは平均±SEMで示す。
図31Bは、IPAGが時間応答性の様式でMDA-MB-468乳房腫瘍細胞の平均細胞サイズ(FSC-H)を低減したとの知見を示すグラフである。t
0の370±5の平均FSC-Hは24時間のIPAG処理後に323±4に低減し、48時間の処理後に267±2に低減した。統計学的有意性をもとめるために両側t検定を実施した。対照(DMSO)およびシグマアゴニスト(SKFおよびPRE084)と比較してのIPAG処理について、d1でP=0.0002およびd2でP=0.00013である。データは各時点について3〜5回の独立した測定から生成した。T-47D乳腺癌細胞の平均細胞サイズ(平均FSC-H)を測定するために、フローサイトメトリーを用いた。
図31Cは、10μMの表示したシグマリガンドで24時間処理したT-47D細胞を示す棒グラフである。IPAGおよびBD 1047(シグマ1アンタゴニスト)は細胞サイズを、対照(DMSO)細胞の412±5の平均FSC-HからIPAGおよびBD1047処理細胞のそれぞれ341±7および381±8に低減した。両方のシグマ1推定アゴニスト、(+)-SKF10047(SKF)およびPRE-084は、細胞サイズを変えなかった。データは5回の独立の測定を示す(
*P<0.05、
***P<0.001)。
図31Dは、IPAG(アンタゴニスト)がいかにして用量応答性の様式で細胞サイズを低減するかを示す棒グラフである。T-47Dを1および10μM IPAGで24時間処理し、平均FSC-Hを測定した。
図31Eは、T47D細胞サイズが経時的に低減することを示すグラフである。T-47D細胞を10μMの表示したシグマリガンドで合計48時間処理した。IPAG処理は、G1期T-47Dの平均FSC-Hを412±5から薬物処理24時間(d1)および48時間(d2)で331±3および300±2に低減した。シグマ1アゴニスト、(+)-SKF10047およびPRE084はいずれも細胞サイズを変えなかった。これらのデータは、少なくとも3回の独立の実験から生成した。統計学的有意性をもとめるために両側t検定を実施した。対照(DMSO)およびシグマ1アゴニスト(SKFおよびPRE084)と比較してのIPAG処理について、d1でP=0.0002およびd2でP<0.0001である。
図31B〜31Eについて、各細胞周期集団(すなわち、G1、S、G2/M)の平均FSC-Hをもとめ、データをG1期細胞について示す。SおよびG2/M期細胞は同様に応答した(データは示していない)。
【
図32】
図32A〜32Bを含む、
図32は、シグマ1アンタゴニスト処理に関連する小胞体ストレス応答(UPR)の誘導を示す。
図32Aは、10μMシグマ1アンタゴニスト(IPAG)で表示の時間、最大24時間まで処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞の免疫ブロットの画像を含む。全細胞溶解物をSDS-PAGEで分離し、UPRマーカー、IRE1α、GRP78/BiP、GRP94、およびORP150について免疫ブロットした。より高く移動するIRE1αバンドはリン酸化型(P-IRE1α)に一致した。
図32Bは、10μM IPAG(シグマ1アンタゴニスト)または10μM PRE084(シグマ1アゴニスト)で約24時間処理した様々な腫瘍細胞株を示す免疫ブロットの一連の画像である。GRP78/BiP(BiP)のレベル上昇はUPRの指標であった。細胞株には:乳腺癌(MDAMB468、MCF-7、T47D)、前立腺腺癌(DU145、PC3)、肝細胞癌(HepG2)、膵臓腺癌(Panc1)が含まれる。
【
図33】
図33A〜33Dを含む、
図33は、シグマ1アンタゴニスト処理が翻訳停止を仲介したとの知見を示す。
図33Aは、10μMのシグマ1アンタゴニスト、IPAGおよびハロペリドール(HPL)、またはアゴニスト、PRE-084および(+)SKF10047で20時間処理し、続いて新しいタンパク質合成を測定するために[
35S]-メチオチンおよびシステインで1時間パルス標識した、T-47D細胞の免疫ブロットの画像である。界面活性剤に可溶性のタンパク質抽出物を10%SDS-PAGEで分離し、PVDFフィルター上に転写し、3日間のオートラジオグラフフィルターへの曝露後に[
35S]-標識タンパク質含有量について分析し、続いてシグマ1およびβアクチンレベルを検出するために免疫ブロットした。
図31Bは、10μMの表示のシグマリガンド、IPAG(アンタゴニスト)およびPRE084(アゴニスト)で20時間処理したT-47D細胞の免疫ブロットの画像であり;ホスホトレオニン389-p70S6キナーゼ(P-S6K)およびホスホセリン65-4E-BP1(P-4E-BP1)のレベルを免疫ブロットにより評価した。
図33Cは、10μM IPAGによる表示の期間の処理に応答しての、P-S6KおよびP-4E-BP1レベルにおける変化の時間経過の免疫ブロットの画像である。
図33Dは、翻訳停止が、前述の
図33Cに記載したものと同じ条件下で、ホスホセリン209-eIF4E(P-eIF4E)およびホスホセリン51-eIF2α(P-eIF2α)の免疫ブロット検出によってさらに確認されたことを示す、免疫ブロットの画像である。
【
図34】
図34A〜34Bを含む、
図34は、シグマ1アンタゴニスト処理がユビキチン化タンパク質のレベル上昇に関連しているとの知見を示す。
図34Aは、10μMシグマ1アンタゴニスト(IPAG)で表示の時間、最大24時間まで処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞の免疫ブロットの画像である。全細胞溶解物をSDS-PAGEで分離し、ポリユビキチン抗体P4D1で免疫ブロットした。
図34Bは、10μMの表示したシグマ1リガンドで20時間処理したHepG2肝細胞癌細胞の免疫ブロットの画像である。免疫ブロットにより、ユビキチン化タンパク質のレベル上昇が明らかとなった(P4D1抗ポリユビキチン抗体で検出)。
【
図35】
図35A〜35Cを含む、
図35は、ハロペリドールによる処置が皮質下構造におけるポリユビキチン化タンパク質のレベル上昇および翻訳停止を引き起こしたとの知見を示す。10mg/kgハロペリドール(Haldol)の腹腔内注射による24時間処置後に摘出したBalb-cマウス脳の皮質下領域(皮質下)。
図35Aは、ハロペリドール(Haldol)処置に応答してのポリユビキチン化(ポリ-Ub)タンパク質のレベル上昇を示す免疫ブロットの画像である。
図35Bは、翻訳停止マーカーのホスホ-Ser 209-elF4E(P-eIF4E)およびホスホThr-389-p70S6キナーゼ(P-S6K)を示す免疫ブロットの画像である。
図35Cは、
図35Bのバンドの定量を示すグラフである。
【
図36】
図36A〜36Cを含む、
図36は、シグマ1アンタゴニスト関連の自食作用を示す。
図36Aは、MDA-MB-468(MDA468)乳腺癌細胞におけるGFP-タグLC3(LC3-GFP)のオートファゴソームへの転位の代表的画像を含む。アンタゴニスト処理したMDA-MB-468細胞だけがLC3-GFPのオートファゴソームへの転位を示した:10μM IPAG(アンタゴニスト)および10μM PRE084(アゴニスト)。同様の結果がハロペリドール(アンタゴニスト)および(+)SKF-10047(アゴニスト)でも得られた(示していない)。画像は各処理条件の少なくとも80の視野の代表である。
図36Bは、オートファゴソーム形成の指標である、GFP-LC3IIの形成GFP-LC3陽性点の形成の知見を示す免疫ブロットの画像である。10μMの表示のシグマ1リガンドで24時間処理した、GFP-LC3を安定に形質移入し、これを発現する、MDA-MB-468細胞からのタンパク質抽出物。
図36Cは、微小管関連タンパク質軽鎖3BIIイソフォーム(LC3BII)のレベル上昇が、活性化自食作用のもう1つの広く用いられる指標であることを示す免疫ブロットの画像を含む。様々な腫瘍細胞株の10μM IPAGによる24時間の処理は、LC3BIIレベルの顕著な誘導を引き起こしたが、PRE084は基準の自食作用を有意に変えることはなかった。同様の結果がハロペリドールおよび(+)SKF-10047でも得られた(示していない)。凡例:MCF-7(乳腺癌)、T47D(乳腺癌)、DU145(前立腺腺癌)、PC3(前立腺腺癌)、HepG2(肝細胞癌)、およびPanc1(膵臓腺癌)。
【
図37】
図37A〜37Dを含む、
図37は、自食作用の阻害がシグマ1アンタゴニスト誘導性アポトーシスを加速および/または強化することを示す。
図37Aは、フローサイトメトリーによって測定した、シグマアンタゴニスト誘導性細胞死の時間経過を示すグラフである。DNA含有量分析のために、MDA-MB-468細胞をDMSO(対照)、10μM IPAG(アンタゴニスト)、または10μM PRE084(アゴニスト)で処理し、固定し、ヨウ化プロピジウムで染色した。subG1集団を定量し、細胞死の尺度として用いた。データは4回の独立した測定からのものである。
図37Bは、カスパーゼ3(Asp175)切断のウェスタンブロットの画像である。IPAG誘導性アポトーシス細胞死が処理48時間の時点で起こった。
図37Cは、IPAG(10μM)および自食作用阻害剤3-メチルアデニン(3-MA、5mM)の組み合わせで24時間処理したDA-MB-468細胞を示すグラフである。細胞死をトリパンブルー色素排除により測定した。
図37Dは、切断されたカスパーゼ3(Asp175)および切断されたPARP(Asp214)の検出によりアポトーシス細胞死を確認する免疫ブロットの画像である。細胞死は、シグマアンタゴニストおよび自食作用阻害剤を組み合わせた場合にのみ、24時間で観察された。
図37A〜37Cについて、統計学的有意性を両側分散分析と、続くボンフェローニ事後検定によって決定した、
***P<0.001。
【
図38】
図38は、シグマ受容体アンタゴニストがボルテゾミブ誘導性腺癌細胞死を強化することを示す一連のグラフである。インビトロ細胞増殖および細胞死をアラマーブルー還元により定量した。IPAGによるプロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ)誘導性細胞死の強化を評価するために、MDA-MB-468細胞を10μM IPAGもしくは0.01μMボルテゾミブ単独で、または両方の薬物を組み合わせて、20時間処理した。細胞死を、トリパンブルー色素排除検定により確認した(データは示していない)。データは三つ組で実施した実験の代表である。
【
図39】
図39A〜39Bを含む、
図39は、ラパマイシンがシグマ1アンタゴニスト仲介性小胞体ストレスに対する応答を調節することを示す。MDA-MB-468乳腺癌細胞を表示の濃度のIPAG(シグマ1アンタゴニスト)単独または0.1μMラパマイシンとの組み合わせで20時間処理した。
図39Aは、小胞体ストレス応答(UPR)マーカーのATF4およびBiPのレベルを評価する免疫ブロットの一連の画像である。
図39Bは、ホスホ-JNKのレベルを評価する免疫ブロットの一連の画像である。これは、mTOR仲介性マクロ自食作用の増強がシグマ1アンタゴニスト誘導性ERストレスを軽減しうることを示唆する。
【
図40】
図40A〜40Cを含む、
図40は、Akt、S6K、およびERKリン酸化のシグマ1アンタゴニスト調節を示す。MDA-MB-468乳房腫瘍細胞を10μM IPAG(シグマ1アンタゴニスト)または(+)SKF-10047(SKF、シグマ1アゴニスト)で24時間処理した。処理した細胞を回収し、細胞タンパク質を、リン酸およびプロテアーゼ阻害剤を補足した、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびデオキシコール酸塩(DOC)を含む緩衝液で抽出した。
図40Aは、Aktリン酸化を示す免疫ブロットの画像である。セリン473でのAktリン酸化はIPAG処理細胞では3分の1に低減したが、(+)-SKF10047処理はAktリン酸化を変えなかった。トレオニン308でのAktリン酸化は、どの試料でも変わらなかった(示していない)。抗GAPDH抗体による等価の負荷が確認された。
図40Bは、リン酸化を示す免疫ブロットの画像である。mTOR基質、p70S6Kのトレオニン389でのリン酸化は、IPAG処理細胞では3分の1に低減したが、SKF処理細胞では低減しなかった。全p70S6Kをローディング対照として免疫ブロットした。
図40Cは、p44/42ERK1/2のトレオニン202およびチロシン204でのリン酸化がIPAGによる24時間処理によって抑制されたことを示す免疫ブロットである。示したデータは2回の独立した実験の代表である。
【
図41】
図41A〜41Bを含む、
図41は、シグマ1関連タンパク質の同定のためのワークフロー概略図を示す。
図41Aは、シグマ1の推定形態を示す。ホモ二官能性架橋剤、ジチオ-ビス(スクシンイミジルプロピオナート)(DSP)を、シグマ1の2つのリジン残基のいずれかへのシグマ1関連タンパク質の細胞内架橋のために用いた。アミノ酸残基E150を示す。
図41Bは、シグマ1-HA-His6関連タンパク質を単離し、同定するための、二重親和性精製スキームを示すフローチャートである。
【
図42】
図42A〜42Bを含む、
図42は、乳房腫瘍細胞株におけるシグマ1関連タンパク質を示す。
図42Aは、ウサギ抗ヘマグルチニン(HA)エピトープ、HRP結合抗体で免疫ブロットした、二重親和性精製したシグマ1-HA-His6試料のウェスタンブロットである。HA-アガロース親和性カラムを、マウスモノクローナル抗HA抗体で作成した。
図42Bは、シグマ1関連タンパク質のオルガネラ分布を示す円グラフである。同定したタンパク質は、単一の機能的範疇に制限されるものではなく、また、示したオルガネラだけに局在するものでもなかった。ほぼすべての場合に、シグマ1関連タンパク質は複数のオルガネラおよび複数の細胞プロセスに存在した。細胞成分分割後のLC/MS分析は、シグマ1関連タンパク質相互作用およびシグマリガンド処理への応答に関するより多くの情報を提供しうる。凡例:ER、小胞体;ERGIC、ER-ゴルジ中間区画;PM、形質膜。
【
図43】
図43A〜43Dを含む、
図43は、シグマ1仲介性作用のメカニズムに対して提唱されたモデルを示す。
図43Aは、シグマ1-HA-His6計数的結合を示すモデルである。
図43Bは、計数的解離を示すモデルである。
図43Cは、結合の計量的増加を示すモデルである。
図43Dは、結合の計量的減少を示すモデルである。シグマ1「受容体」は、公知の固有の酵素機能またはシグナル伝達機能を有していない。シグマ1は新規分子シャペロンとして機能することもあり、シグマ1アンタゴニストはそのパートナーのタンパク質との物理的結合を変えることによってERストレスを誘導しうる。推定シグマ1リガンド結合部位を三角(△)で示し、これらはIDRタンパク質結合とは異なる。
【
図44】
図44A〜44Dを含む、
図44は、p97/VCPがシグマ1関連タンパク質であるとの知見を示す。タンパク質-タンパク質相互作用を含むシグマ1機能のシグマ1リガンド調節を評価するために、新規検定を開発した。
図44Aは、Ni-NTA樹脂に加えた(投入)界面活性剤可溶性細胞抽出物中のp97/VCPおよびシグマ1-HA-His6の発現を確認する免疫ブロットの画像である。
図44Bは、Ni-NTA親和性精製した画分からの溶出物に関連する免疫ブロットの画像である。p97/VCPと、Ni-NTAにより単離/精製したシグマ1-HA-His6との同時単離/同時精製を達成した。シグマ1-HA-His6を発現しない(-)非形質移入、親細胞のタンパク質抽出物から精製したNi-NTAからの溶出画分中に、p97/VCPは検出されなかった。
図44Cは、10μM IPAG(シグマ1推定アンタゴニスト)で12時間処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞からの界面活性剤可溶性細胞抽出物中のp97/VCPおよびシグマ1-HA-His6の発現を確認する免疫ブロットの画像である;抽出物をNi-NTA樹脂に加えた(投入)。
図44Dは、Ni-NTA親和性精製した画分からの溶出物を示す免疫ブロットの画像である。p97/VCPと、Ni-NTAにより単離/精製したシグマ1-HA-His6との同時単離/同時精製を達成した。10μM IPAG(シグマ1推定アンタゴニスト)で12時間処理したMDA-MB-468細胞のタンパク質抽出物から精製したNi-NTAからの溶出画分中に、より低いレベルのシグマ1関連p97/VCPが検出された。分子量をキロダルトン(kDa)で示す。
【
図45】
図45A〜45Bを含む、
図45は、ユビキチン化タンパク質がシグマ1に結合するとの知見を示す。ユビキチン化タンパク質との結合を含むシグマ1機能のシグマ1リガンド調節を評価するために、新規検定を開発した。
図45Aは、10μM IPAG(シグマ1推定アンタゴニスト)で12時間処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞からの、Ni-NTA樹脂に加えた(投入)界面活性剤可溶性細胞抽出物中のシグマ1-HA-His6の発現およびユビキチン化タンパク質レベルの誘導を確認する免疫ブロットの画像である。
図45Bは、Ni-NTA親和性精製した画分からの溶出物の免疫ブロットの画像である。ポリユビキチン化タンパク質とシグマ1-HA-His6との同時単離/同時精製を、Ni-NTAにより単離/精製した。10μM IPAG(シグマ1推定アンタゴニスト)で12時間処理したMDA-MB-468細胞のタンパク質抽出物から精製したNi-NTAからの溶出画分中に、高いレベルのシグマ1関連ユビキチン化タンパク質が検出された。分子量をキロダルトン(kDa)で示す。
【
図46】
図46A〜46Gを含む、
図46は、シグマ1細胞質側末端における天然変性領域のバイオインフォマティクス予測および変異解析を示す。
図46Aは、シグマ1膜形態の略図である。残基150のまわりのアミノ酸配列を下部に示す。この配列は、この領域に対して生成された合成遮断ペプチドにも対応する。
図46Bは、HEK293T一過性形質移入体細胞溶解物からのWTおよび変異シグマ1の変性SDS-PAGEゲルの画像である。見かけ分子量(M
r)をキロダルトン(kDa)で示す。
図46Cは、同じ細胞溶解物の未変性PFO-PAGEである。
図46Dは、野生型と
図46Aにおいて予測し、SDS-PAGEによって判明した変異シグマ1との間の高次構造における相違の例示である。
図46Eは、野生型と
図46Aにおいて予測し、PFO-PAGEによって判明した変異シグマ1との間の高次構造における相違の例示である。
図46Fは、PONDR VL-XT(URLおよび参照文献)を用いてのシグマ1における天然変性が、
図46Aにおいて下線を引いた残基に対応する、マウスシグマ1カルボキシ末端内の短い天然変性領域(IDR)を示すことを例示するグラフである。黒い下向き矢印は変性領域を指す。
図46Gは、E150A変異が天然変性の減少をもたらすとの知見を示すグラフである。
【
図47】
図47は、シグマ1 C末端ペプチドのUVCDスペクトル分析を示す。シグマ1細胞質側末端における天然変性領域を、下記の温度依存性紫外円偏光二色性(UVCD)スペクトルによって調べた:(a)天然シグマ1ペプチド残基137〜159および(b)対応する変異シグマ1ペプチド(E150A)。矢印は283〜363Kの温度上昇を示す。図(c)および(d)は、それぞれ天然および変異ペプチドについての温度の関数としてプロットした、UVCDスペクトルから得た負の最大二色性(Δε
193nm)を示す。
【
図48】
図48A〜48Bを含む、
図48は、シグマ1 IDR変異体がERストレスのリガンド仲介性誘導を抑制し、シグマ1リガンド仲介性ERストレス応答の局面を評価するための道具として用いうるとの知見を示す。HEK293T細胞にシグマ1-HA-His
6(WT
OE)またはシグマ1E150A-HA-His
6(E150A
OE)を安定に形質移入し、DMSOまたは10μM IPAG(シグマ1「アンタゴニスト」)で約16時間処理した。
図48Aは、小胞体ストレス応答および小胞体(ER)ストレスのマーカーである、GRP78/BiP(BiP)の免疫ブロットの一連の画像である。
図48Bは、3回の測定からのBiP誘導の定量を示すグラフである。
【
図49】
図49A〜49Dを含む、
図49は、シグマ1細胞質側末端における点突然変異がシグマ1アンタゴニスト仲介性細胞周期停止を阻害し、細胞周期および増殖のシグマリガンド調節を評価するための新規道具として用いうるとの知見を示す。シグマ1アンタゴニストによる処理は、細胞周期のG1期にある細胞の蓄積を引き起こした。
図49Aは、DMSO(媒体対照)、1μM IPAG(シグマ1アンタゴニスト)、または10μM (+)-SKF-10047(シグマ1アゴニスト)で24時間処理したT47D細胞におけるG1、S、およびG2期細胞のパーセンテージを示すグラフである。
図49Bは、DMSO(媒体対照)、10μM IPAG(シグマ1アンタゴニスト)、または10μM (+)SKF-10047(シグマ1アゴニスト)で24時間処理したMDA-MB-468細胞におけるG1、S、およびG2期細胞のパーセンテージを示すグラフである。IPAG処理とは対照的に、対照(DMSO)および(+)SKF10047(SKF)処理した細胞は細胞周期のプロファイルにおいて有意な差を示さなかった。
図49Cは、MTT検定によって測定した、細胞増殖に対するリガンド仲介性変化を示すグラフである。親の野生型、シグマ1発現細胞の増殖を標準の細胞培養培地中で測定し、10μM BD1047(シグマ1アンタゴニスト、黒色破線)を含む培地(黒色実線)中の増殖と比較した。MTT検定を表示の時点(処理日数)で実施した。
図49Dは、標準の細胞培養培地中で測定し、10μM BD1047(シグマ1アンタゴニスト、破線)を含む培地(実線)中の増殖と比較した、E150A変異体(σ1E150A)発現細胞の増殖を示すグラフである。
【
図50】
図50A〜50Bを含む、
図50は、シグマ1小分子リガンドの結合は細胞質側末端の変異によって変わらず、シグマ1リガンド-受容体相互作用によって仲介されるリガンド結合後段階を評価するための道具として用いうるとの知見を示す。
図50Aは、[
3H]-(+)-ペンタゾシン(選択的シグマ1リガンド)結合飽和を示すグラフである。
図50Bは、[
3H]-(+)-ペンタゾシン競合結合の結果を示す。結合を、シグマ1-HA形質移入細胞(クローン320-3-3)、シグマ1変異(E150A-HA)細胞(クローン167-11-7)およびシグマ1変異(E150K-HA)細胞(クローン320-32-12)からのHEK細胞膜において、[
3H]-(+)-ペンタゾシン(3nM)で実施した。細胞増殖の阻害に対する変異の重大な効果にもかかわらず、E150A変異は3H-シグマリガンド結合を変えることはなかった。
【
図51】
図51は、シグマ1リガンド処理がERストレスに関連しているとの知見を示す免疫ブロットである。MDA-MB-468乳腺癌細胞をDMSO対照、IPAG(10μM)、ハロペリドール(10μM)、PB28(20μM)、リムカゾール(20μM)、PRE084(20μM)、(+)SKF10047[(+)SKF、(20μM)]、または(+)ペンタゾシン[(+)PTZ、20μM]で約16時間処理した。界面活性剤可溶性の全細胞抽出物を10%SDS-PAGEで分離し、GRP78/BiP(BiP)、シグマ1、およびβアクチン(ローディング対照)のレベルを検出するために免疫ブロットした。推定シグマ1「アンタゴニスト」および「アゴニスト」を示す。
【
図52】
図52A〜52Bを含む、
図52は、3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン-1-アミンを示し、これはハロペリドールアミン代用物として作用しうる。
図52Aは、1-(3-クロロプロポキシ)-4-フルオロベンゼンから始める、3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン-1-アミンの合成を示すスキームである。
図52Bは、3-(4-フルオロフェノキシ)プロパン-1-アミンの
1H NMRスペクトルを示す。
【
図53】
図53は、N-(4-ヨードフェニル)シアナミドの合成に向けての一般合成戦略を示す合成スキームである。
【
図54】
図54A〜54Dを含む、
図54は、グアニジンに向けての合成戦略を示す。
図54Aは、グアニジンの一般合成を示すスキームである。
図54Bは、対称または非対称4-ヨードフェニルグアニジン(構造はスペクトルの下に示す)の生成を示す
1H NMRスペクトルである。
図54Cは、非対称グアニジンおよび二量体の混合物のHPLCトレースである。
図54Dは、非対称グアニジンおよび二量体の混合物のMSトレースである。
【
図55】
図55A〜55Cを含む、
図55は、試験のための1-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジンのHPLC精製を示す。
図55Aは、精製した化合物のHPLCトレースを示す。
図55Bは、HPLC分画のトレースを示す。純粋な分画を強調している(黒い矢印)。
図55Cは、1-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジンの構造である。
【
図56】
図56A〜56Dを含む、
図56は、新規シグマ1リガンド、JMS-51-58[1-3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン]が自食作用を誘導したとの知見を示す。
図56Aは、10μM IPAGまたは10μM 1-3 JMS-51-58で約16時間処理した、GFP-LC3(緑色蛍光タンパク質タグ軽鎖3、自食作用マーカー)を安定に形質移入したMDA-MB-468乳腺癌細胞を示す免疫ブロットである。GFP-LC3IIの出現はオートファゴソーム形成の指標であった。
図56Bは、
図56Aのとおり、10μM JMS-51-58で処理したMDA468(GFP-LC3)におけるオートファゴソーム(GFP-LC3点)の形成を示す画像である。矢印はGFP-LC3-陽性オートファゴソームの例を指す。画像の下部の白色のバーは100μmを示す。
図56Cは、10μM JMS-51-58で16時間処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞における、オートファゴソーム形成のマーカーである、内因性LC3IIの出現を示す免疫ブロットの画像である。
図56Dは、10μM JMS-51-58で16時間処理したT47D乳腺癌細胞における、オートファゴソーム形成のマーカーである、内因性LC3IIの出現を示す免疫ブロットの画像である
【
図57】
図57A〜57Bを含む、
図57は、新規シグマ1リガンド、JMS-51-58が翻訳停止を仲介したとの知見を示す。
図57Aは、10μMのJMS-51-58で16時間処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞を示す免疫ブロットの画像である。
図57Bは、10μMのJMS-51-58で16時間処理したT47D乳腺癌細胞を示す免疫ブロットの画像である。ホスホトレオニン389-p70S6キナーゼ(P-S6K)およびホスホセリン65-4E-BP1(P-4E-BP1)のレベルを免疫ブロットによって評価した。両方のリンタンパク質レベルのレベル低下はタンパク質合成の低減を示していた。
【
図58】
図58A〜58Bを含む、
図58は、新規シグマ1リガンドJMS-51-58がERストレス応答を仲介したとの知見を示す。
図58Aは、10μM JMS-51-58で16時間処理したMDA-MB-468乳腺癌細胞の免疫ブロットの画像である。
図58Bは、10μM JMS-51-58で16時間処理したT47D乳腺癌細胞の免疫ブロットの画像である。ホスホ-Thr 180/Tyr 182 p38MAPK(P-p38MAPK)およびGRP78/BiPのレベルを免疫ブロットによって評価した。
【
図59】
図59A〜59Bを含む、
図59は、新規シグマ1リガンドJMS-51-58がユビキチンプロテアソーム系を調節したとの知見を示す。
図59Aは、10μMのJMS-51-58で16時間処理したMDA-MB-468乳腺癌のポリユビキチン化タンパク質のレベルを評価する免疫ブロットの画像である。
図59Bは、10μMのJMS-51-58で16時間処理したMDA-MB-231乳腺癌細胞のポリユビキチン化タンパク質のレベルを評価する免疫ブロットの画像である。ポリユビキチン化タンパク質のレベルを免疫ブロットによって評価した。JMS-51-58処理はDMSO対照に比べてユビキチン化タンパク質レベルの上昇をもたらした。
【
図60】
図60A〜60Dを含む、
図60は、新規シグマ1リガンドJMS-51-58が腫瘍細胞増殖を阻害したとの知見を示す。インビトロ細胞増殖をアラマーブルー検定によって定量した。新規シグマ1小分子リガンドJMS-51-2
nd-58の4つの薬物濃度の抗増殖効果を、40〜70時間の処理後に定量した。データは各細胞株について三つ組で形成した実験の代表である。
図60Aは、MDA-MB-468乳腺癌細胞培養物中の細胞死を示すグラフである。
図60Bは、T47D乳腺癌細胞培養物中の細胞死を示すグラフである。
図60Cは、MDA-MB-231乳腺癌細胞培養物中の細胞死を示すグラフである。
図60Dは、PC3前立腺腺癌細胞培養物中の細胞死を示すグラフである。
【
図61】
図61A〜61Bを含む、
図61は、新規シグマ1リガンドJMS-51-58がプロテアソーム阻害剤仲介性の腫瘍細胞増殖の阻害を強化したとの知見を示すグラフ群である。インビトロ細胞増殖をアラマーブルー検定によって定量した。新規シグマ1小分子リガンドJMS-51-58の4つの薬物濃度の抗増殖効果を、MDA-MB-231乳腺癌細胞培養物の約70時間の処理後に定量した。
図61Aは、MDA-MB-231細胞培養物において、3μMのJMS-51-58は細胞増殖または細胞死の割合を変えなかったことを示すグラフである。
図61Bは、JMS-51-58の致死量以下の用量はボルテゾミブ(BTZ)の細胞増殖阻害効果を強化したことを示すグラフである。用量応答曲線(破線)の左へのシフトに留意されたい。データは三つ組で実施した実験の代表である。
【
図62】
図62A〜62Bを含む、
図62は、新規シグマ1リガンドJMS-51-58がプロテアソーム阻害剤仲介性の腫瘍細胞死を強化したとの知見を示すグラフ群である。インビトロ細胞死をトリパンブルー色素排除検定によって定量した。プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ)誘導性細胞死のJMS-51-58による強化を評価するために、MDA-MB-468細胞をJMS-51-58(10μM)単独、ボルテゾミブ(1nM、10nM、100nM)単独または両薬物の組み合わせで20時間処理した。IPAG(10μM)単独またはボルテゾミブ(1nM、10nM、100nM)との組み合わせによる処理を並行して実施した。データは三つ組で実施した実験の代表である。
【
図63】
図63A〜63Dを含む、
図63は、新規シグマ1リガンドJMS-51-58が転移性の乳腺癌および前立腺腺癌細胞株の接着を阻害したとの知見を示し、その腫瘍細胞転移の阻害剤としての使用の可能性が明らかにされた。インビトロ細胞接着をアラマーブルー検定によって定量した。MDA-MB-231およびPC3細胞を0.25%トリプシン+2mM EDTAにより脱離し、96穴プレートに再播種した。細胞播種の時点で、IPAG(シグマ1推定アンタゴニスト)を腺癌細胞を含むウェルに、表示の用量で加えた。懸濁細胞を沈降させ、薬物存在下で16時間接着させた。続いて、培地を吸引により除去し、各ウェルを0.2mlのPBS(カルシウムおよびマグネシウムを含まない)で1回洗浄し、アラマーブルー検定を実施して、各ウェルの表面に接着した生細胞の数を定量した。
図63Aは、MDA-MB-231乳腺癌細胞における細胞接着を示すグラフである。
図63Bは、PC3前立腺腺癌細胞における細胞接着を示すグラフである。同じ手順を、表示の濃度のJMS-51-58を用いて実施した。
図63Cは、MDA-MB-231乳腺癌細胞における細胞接着を示すグラフである。
図63Dは、PC3前立腺腺癌細胞における細胞接着を示すグラフである。標準偏差バーを示す。
【
図64】
図64A〜64Cを含む、
図64は、生細胞における生物学的現象を試験するための新規蛍光プローブとして用いるための、蛍光体のシグマリガンドへの組み込みを示す。
図64Aは、蛍光色素、7-アミノ-4-メチルクマリンの構造である。
図64Bは、生細胞におけるシグマ受容体の生物学を試験するのに有用な蛍光プローブ(蛍光体を含むシグマ1リガンド)の構造である。
図64Cは、蛍光プローブの合成を示すスキームである。
【
図65】
図65は、シグマ1アンタゴニストによる前立腺癌中のアンドロゲン受容体レベルの調節を示す。アンドロゲン受容体(AR)陽性前立腺腺癌細胞株、LNCaPを、シグマ1アンタゴニスト、IPAGの漸増用量(1〜10μM)で16時間処理し、続いて細胞を回収し、タンパク質を抽出し、免疫ブロットして、ARタンパク質レベルのシグマ1リガンド仲介性の変化、AR応答性遺伝子タンパク質レベル(サイクリンD1、p21)の変化、UPRの誘導(PERKのバンド移動シフト、BiPのレベル上昇)、自食作用の誘導(LC3IIの出現、p62SQSTMのレベル上昇)、タンパク質合成の変化(この場合、タンパク質合成マーカー、ホスホ-4EBP1における変化なし)、およびユビキチン化タンパク質のレベル上昇を評価した。βアクチンをローディング対照とした。
【
図66】
図66A〜66Hを含む、
図66は、シグマ1リガンド作用の非限定的メカニズムを示し、ここでシグマリガンド処理はシグマ1の区別的局在化を誘導する。
図66Aは、シグマ1定常状態タンパク質レベルはIPAG処理に応答して変化しないことを示す免疫ブロットである。
図66Bは、生化学的細胞成分分画検定から回収した分画の免疫ブロットである。この免疫ブロットは、シグマ1分布がIPAG処理に応答して変わることを示す。
図66Cは、
図66Bのバンドの定量を示すグラフである。
図66Dは、IPAGで12〜16時間処理したSKBR3細胞におけるシグマ1の共焦点免疫蛍光顕微鏡法の画像群である。緑色シグナルはシグマ1を示し、青色シグナル(DAPI)は核を示していた。
図66Eは、SKBR3細胞を用いて実施した生化学的細胞成分分画検定から回収した分画の定量を示すグラフ群である。赤色の線はIPAGでの12〜16時間処理後の分画を示し、青色の線は12〜16時間DMSO(媒体(対照)処理した細胞の分画を示す。グラフ(i):VCP分画免疫ブロットの定量。グラフ(ii):p62SQSTM分画免疫ブロットの定量。
図66Fは、共焦点顕微鏡画像群で、p97/VCP(VCP)およびオートファゴソームマーカーGFP-LC3II(LC3)の共存の証拠が見られる。この共焦点画像はオートファゴソーム中のVCPの存在を示していた(マージ画像、右下の図の白い矢印で示した)。
図66Gは、共焦点顕微鏡画像群で、p62SQSTMおよびオートファゴソームマーカーGFP-LC3II(LC3)の共存の証拠が見られる。この共焦点画像はオートファゴソーム中のp62SQSTMの存在を示していた(マージ画像、右下の図の白い矢印で示した)。p62SQSTMはユビキチン化タンパク質のオートファゴソームへの輸送および取り込みのためのアダプタータンパク質である。LC3IIとの機能的および物理的結合ならびにVCPとの機能的相互作用が文献で報告されている。
図66Hは、共焦点顕微鏡画像群で、ポリユビキチン化タンパク質およびp62SQSTMの共存の証拠が見られる。この共焦点画像はp62SQSTMを含むオートファゴソーム中のポリユビキチン化タンパク質の存在を示していた。ユビキチン-p62SQSTMの共存および分布パターンは、IPAG処理後に変化した。本明細書において示すデータは、ERストレスを誘導するシグマリガンド(例えば、IPAG)での細胞の処理は全シグマ1受容体レベルを変えなかったが、シグマ1の細胞内局在を変え、シグマ1はER中に再分布され、集中したとの知見を支持するものである。シグマ1に機能的に関連し、物理的に結合したタンパク質は、細胞の他の部分、特にオートファゴソーム中に再分布した。さらに、IPAG処理によって誘導された長期ERストレスは癌細胞死を引き起こした。これは、シグマリガンド処理に応答してタンパク質結合における変化が観察された、
図43〜44に示すデータと一致する。
【
図67】
図67A〜67Fを含む、
図67は、シグマ1リガンドを、検出可能な細胞死非存在下、乳癌細胞におけるHER2およびHER3などの成長因子受容体のレベルを調節(この場合、低減)するために用いうるとの知見を示す。IPAGは時間および用量依存的にSkBr-3細胞中のHER2/3のレベル低下を引き起こす。IPAGへの短時間曝露またはより低い用量は、HER2/3のユビキチン仲介性オートファゴソーム分解を誘導する。長期IPAG処理またはより高い用量は、翻訳停止を引き起こした。より後期に、オートファゴソーム分解および翻訳定位の組み合わせ効果は、SkBr-3細胞中のHER2/3レベルを有意に低下させた。
図67Aは、IPAGによる処理後のHER2の免疫ブロット群である。界面活性剤可溶性の全細胞溶解物を変性SDS-PAGEによって分析した。(i)10μM IPAGまたは1μMタプシガルジン(TG)による1〜24時間(h)処理。(ii)1、3、10、20μM IPAGによる12時間処理の後。
図67Bは、IPAGによる処理後のHER3の免疫ブロット群である。界面活性剤可溶性の全細胞溶解物を変性SDS-PAGEによって分析した。(i)10μM IPAGまたは1μMタプシガルジン(TG)による1〜24時間(h)処理。(ii)1、3、10、20μM IPAGによる12時間処理の後。
図67Cは、変性SDS-PAGEによって分析した、界面活性剤可溶性全細胞溶解物の免疫ブロット群である。(i)10μM IPAGによる1〜24時間(h)処理後の、翻訳調節、自食作用、およびタンパク質ユビキチン化マーカーの免疫ブロット。(ii)薬物用量応答を評価するための免疫ブロット−(i)に示したものと同じマーカーを用いての、1、3、10、20μM IPAGによる12時間処理。
図67Dは、SKBR3細胞を用いて実施した生化学的細胞成分分画検定から回収した分画の免疫ブロット群である。(i)この免疫ブロットは、ユビキチン化タンパク質の細胞内分布がIPAG処理に応答して変わることを示す。IPAG処理細胞の分画3〜5に比べて、対照(DMSO)処理細胞の主に分画4〜6からのバンド強度の顕著なシフトに留意されたい。(ii)オートファゴソームマーカーLC3IIが見られる分画は(i)のユビキチン化タンパク質と相関している。(iii)(i)のバンドの定量。
図67Eは、共焦点顕微鏡画像群で、HER2およびユビキチン(Ub)の共存の証拠が見られる。この共焦点画像は、IPAG処理に応答してのHER2のレベル低下(IPAG右上図に比べてDMSO右上図の緑色シグナルの強度)ならびにIPAG処理後のUbおよびHER2の集中した共存(マージ画像、右下の図の白い矢印で示した)を示した。
図67Fは、生化学的細胞成分分画を示す。(i)10μM IPAGによる16時間(h)処理後のSKBR3からの細胞溶解物分画中のHER3の免疫ブロット。(ii)DMSO(媒体対照)処理条件におけるHER3バンドの定量。(iii)IPAG処理条件におけるHER3バンドの定量。
【
図68】
図68は、ポリユビキチン化タンパク質およびオートファゴソームマーカーGFP-LC3II(LC3)の共存の証拠を示す、共焦点顕微鏡画像群である。この共焦点画像は、オートファゴソームにおけるポリユビキチン化タンパク質の存在を示す(マージ画像、右下の図の白い矢印で示した)。
【
図69】
図69A〜69Bを含む、
図69は、シグマ1リガンド、JMS-57-10が、細胞死非存在下、UPRを仲介し、タンパク質翻訳、および自食作用を調節するとの知見を示す。(
図69A)表示したシグマ1リガンドの様々な用量で72時間処理した後の、生存可能な細胞(生細胞)の相対数を定量するために用いたアラマーブルー検定。赤丸はJMS-57-10(57-10)での処理の効果を強調している。3つの細胞株すべてについて、JMS-57-10はこれらの条件下で評価可能な細胞死を誘発しなかったことに留意されたい。したがって、T47Dに対して観察された生細胞の相対%の低下は、細胞増殖が阻害されたことを示す。(
図69B)IPAGおよびJMS-57-10(57-10)に応答してのUPR、翻訳調節、および自食作用の誘導を評価するための免疫ブロット。
【
図70】
図70は、シグマ1が主にSKBR3乳癌細胞のERに存在するとの知見を示す、共焦点顕微鏡画像群である。共焦点免疫蛍光顕微鏡は、シグマ1および常在小胞体(ER)タンパク質であるカルネキシンの共存を示した。結果は、IPAGで12〜16時間処理した細胞において、シグマ1は、分布パターンは明らかに異なるが、ERに局在したままであることを示した。黄色シグナル(組み合わせ)は共存を示した。
【
図71】
図71は、本発明において有用な蛍光プローブ、1-フェニルシクロヘキサンカルボン酸2-(4-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)ピペラジン-1-イル)エチルの合成を示す合成スキームである。
【
図72】
図72は、本発明において有用な蛍光プローブ、1-(4-メトキシフェニル)-3-(3-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)プロピル)グアニジンおよび1-(4-ヨードフェニル)-3-(3-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)プロピル)グアニジンの合成を示す合成スキームである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
発明の詳細な説明
本発明は、シグマ受容体に結合し、その活性を調節する、新規化合物の予想外の発見に関する。これらの化合物は、シグマ受容体関連疾患および障害の処置において、単独または少なくとも1つの追加の治療薬との組み合わせのいずれかで有用である。1つの態様において、本発明のシグマ調節因子は、シグマアンタゴニスト、逆アゴニストまたはアゴニストである。もう1つの態様において、本発明のシグマ調節因子は、シグマアンタゴニストである。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体はシグマ1受容体(シグマ1としても公知)である。
【0044】
本発明は、本発明の化合物を用いて、シグマ受容体関連疾患または障害を処置、改善、または予防する新規方法を含む。1つの態様において、シグマ受容体関連疾患または障害は、癌、神経障害性疼痛、うつ、物質乱用、てんかん、精神病、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびその組み合わせを含む群から選択される。もう1つの態様において、癌は前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、CNS腫瘍(脳腫瘍を含む)、乳癌、神経芽腫、白血病、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0045】
本発明は、本発明の化合物を、UPRおよび/または自食作用による生存経路を標的とする治療薬と組み合わせて用いて、シグマ受容体関連疾患または障害を処置、改善、または予防する新規方法も含む。好ましい態様において、シグマ受容体関連疾患または障害は癌である。
【0046】
本発明の方法の範囲内で有用な化合物には、本明細書において他所に記載する式(I)および式(II)の化合物、ならびにハロペリドール、IPAG、PB28、リムカゾール、BD1063、BD1047、PRE084、NE100、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシンなどであるが、それらに限定されるわけではない、シグマアンタゴニスト、アゴニストまたは逆アゴニストであることが公知の任意の化合物、およびその任意の組み合わせが含まれる。本発明は、それを必要としている対象において、細胞タンパク質合成、プロセシング、および/または分解を調節するために任意のこれらの化合物を用いることを企図する。
【0047】
1つの局面において、本発明の化合物は、癌および神経変性障害の処置において有用であり、ここで細胞機能がシグマリガンドによって選択的に標的とされうる。
【0048】
本明細書において示すとおり(
図69)、本発明の化合物は試験したいくつかの腫瘍細胞株に対して細胞毒性ではないことが示された。この細胞毒性の欠如にもかかわらず、化合物はまだUPRを誘導した。したがって、本発明の化合物を、神経変性疾患ならびにタンパク質ホメオスタシスの調節(タンパク質の合成、折りたたみ、プロセシング、または分解)が有益でありうる、他の病態および障害を処置するために用いてもよい。
【0049】
図66に示すとおり、ERストレスを誘導するシグマリガンド(例えば、IPAG)による細胞の処理は、シグマ1レベルを変えなかったが、シグマ1の細胞内局在を変えた。一貫して、本明細書において示すとおり(
図43〜44)、タンパク質結合における変化がシグマリガンド処理に応答して観察された。1つの態様において、シグマ1パートナータンパク質結合に対するリガンド仲介性変化およびシグマ1細胞内局在における対応する/結果としての変化は、シグマリガンド構造活性相関を確立するための生化学的メカニズム試験の基礎を提供しうる。
【0050】
図67に示すとおり、シグマ1リガンドは、検出可能な細胞死非存在下、乳癌細胞におけるHER2およびHER3などの成長因子受容体のレベルを調節(この場合、低減)する。1つの態様において、本発明の化合物は、それを必要としている対象の癌を処置するために用いてもよく、ここで化合物の対象への投与は腫瘍細胞中の成長因子受容体の分解を引き起こす。もう1つの態様において、成長因子受容体はEGFR(上皮成長因子受容体)、HER2、HER3、p95HER2(HER2の切断型)、アンドロゲン受容体、またはその任意の組み合わせを含む。さらにもう1つの態様において、癌は乳癌または前立腺癌を含む。さらにもう1つの態様において、前立腺癌は去勢感受性または去勢非感受性前立腺癌を含む。したがって、シグマリガンドを選択的細胞毒または細胞毒性のない細胞成長の選択的阻害剤として用いてもよい。これはシグマリガンドの有用性を単純な細胞毒性物質の範囲を超えて拡げ、本発明の化合物の潜在的多用性を示す。
【0051】
定義
特に定義されないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。
【0052】
本明細書において用いられる以下の用語はそれぞれ、本項においてそれに関連する意味を有する。
【0053】
「a」および「an」なる冠詞は、本明細書において冠詞の文法上の対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)に言及するために用いられる。例として、「要素(an element)」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0054】
本明細書において用いられる「約」は、量、持続時間などの測定可能な値に言及する場合、指定の値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動は、開示する方法を実施するのに適切であるため、そのような変動を含むことが意図される。
【0055】
「異常な」なる用語は、生物、組織、細胞またはその成分の文脈において用いられる場合、少なくとも1つの観察可能または検出可能な特徴(例えば、年齢、処置、時刻など)において、「正常な」(予想される)それぞれの特徴を示す生物、組織、細胞またはその成分とは異なる生物、組織、細胞またはその成分を意味する。1つの細胞または組織型で正常な、または予想される特徴は、異なる細胞または組織型では異常でありうる。
【0056】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持することができず、疾患が改善されなければ、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康の状態である。
【0057】
対照的に、動物の「障害」は、動物がホメオスタシスを維持することはできるが、動物の健康の状態が障害がない場合よりも望ましくない、健康の状態である。未処置のままにしても、障害は必ずしも動物の健康の状態のさらなる低下を引き起こすことはない。
【0058】
疾患または障害は、疾患または障害の症状の重症度、そのような症状を患者が経験する頻度、または両方が低減すれば、「緩和」される。
【0059】
本明細書において用いられる「シグマ」なる用語は、シグマ1受容体(シグマ1)、シグマ2受容体(シグマ2)、その任意のスプライスバリアントまたはその任意のアイソフォームを意味する。
【0060】
本明細書において用いられる「シグマ受容体調節因子」は、シグマ受容体に結合し、調節因子非存在下の受容体の活性または生物学的機能に比べて、受容体の活性または生物学的機能を調節する化合物である。調節因子は受容体アゴニストであってもよく、これは受容体を活性化し、非結合受容体の基準活性よりも増強された生物学的応答を引き起こすことができる。調節因子は部分アゴニストであってもよく、これは受容体を完全には活性化せず、完全アゴニストのものに比べて規模が小さい生物学的応答を引き起こす。調節因子は受容体アンタゴニストであってもよく、これは受容体に結合するが、それを活性化せず、受容体遮断をもたらし、他のアゴニストの結合を阻害する。アンタゴニストはアゴニスト非存在下で基準細胞内応答を減弱しない。調節因子は逆アゴニストであってもよく、これはその構成的活性を阻害することによって受容体の活性を低減する。
【0061】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書において交換可能に用いられ、インビトロまたはインサイチューのいずれかにかかわらず、本明細書に記載の方法に適用できる、任意の動物、またはその細胞を意味する。非限定的態様において、患者、対象または個体はヒトである。
【0062】
「治療的」処置は、病態の徴候を減弱または除去する目的のために、それらの徴候を示す対象に投与する処置である。
【0063】
本明細書において用いられる「処置」または「処置すること」なる用語は、本明細書において企図される状態、本明細書において企図される状態の症状または本明細書において企図される状態を発生する可能性を治癒する、癒す、緩和する、軽減する、変更する、矯正する、改善する、改良する、または影響することを目的として、本明細書において企図される状態、本明細書において企図される状態の症状または本明細書において企図される状態を発生する可能性を有する患者への、治療薬、すなわち、本発明の化合物(単独または別の薬学的物質との組み合わせで)の適用もしくは投与、または患者から単離した組織もしくは細胞株への治療薬の適用もしくは投与(例えば、診断またはエクスビボ投与のため)と定義される。そのような処置は、薬理ゲノミクスの分野から得た知識に基づいて、特に適応させ、または改変してもよい。
【0064】
本明細書において用いられる「組成物」または「薬学的組成物」なる用語は、本発明の範囲内で有用な少なくとも1つの化合物と薬学的に許容される担体との混合物を意味する。薬学的組成物は、化合物の患者または対象への投与を容易にする。当技術分野において、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺および局所投与を含むが、それらに限定されるわけではない、化合物を投与する複数の技術が存在する。
【0065】
本明細書において用いられる「治療的有効量」なる語句は、シグマ受容体に関連する疾患または状態の症状の緩和を含む、そのような疾患を予防または処置する(その発症を遅延もしくは予防する、その進行を予防する、阻害する、低減する、または逆転する)ために十分または有効な量を意味する。
【0066】
本明細書において用いられる「有効量」、「薬学的有効量」および「治療的有効量」なる用語は、所望の生物学的結果を提供するための薬剤の、非毒性であるが、十分な量を意味する。その結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因の低減および/もしくは緩和、または生物学的システムの任意の他の所望の変更でありうる。任意の個々の症例における適切な治療的量は、当業者が日常的実験を用いて決定してもよい。
【0067】
送達媒体の「有効量」は、化合物を有効に結合または送達するのに十分な量である。
【0068】
本明細書において用いられる「効力」なる用語は、最大応答の半分を生じるのに必要な用量(ED
50)を意味する。
【0069】
本明細書において用いられる「有効性」なる用語は、検定の範囲内で達成される最大効果(E
max)を意味する。
【0070】
本明細書において用いられる「PRE084」なる用語は、1-フェニルシクロヘキサン-1-カルボン酸2-モルホリン-4-イルエチルまたはその塩を意味する。
【0071】
本明細書において用いられる「BD1047」なる用語は、N'-[2-(3,4-ジクロロフェニル)エチル]-N,N,N'-トリメチルエタン-1,2-ジアミンまたはその塩を意味する。
【0072】
本明細書において用いられる「BD1063」なる用語は、1-[2-(3,4-ジクロロフェニル)エチル]-4-メチルピペラジンまたはその塩を意味する。
【0073】
本明細書において用いられる「ハロペリドール」なる用語は、4-[4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジル]-1-(4-フルオロフェニル)-ブタン-1-オンまたはその塩を意味する。
【0074】
本明細書において用いられる「(+)-SKF10047」なる用語は、[2S-(2α,6α,11R
*]-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロ-6,11-ジメチル-3-(2-プロペニル)-2,6-メタノ-3-ベンザゾシン-8-オールまたはその塩を意味する。
【0075】
本明細書において用いられる「(+)-ペンタゾシン」なる用語は、(+)-[2S-(2 ,6 ,11R
*)]-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロ-6,11-ジメチル-3-(3-メチル-2-ブテニル)-2,6-メタノ-3-ベンザゾシン-8-オールまたはその塩を意味する。
【0076】
本明細書において用いられる「リムカゾール」なる用語は、9-{3-[(3R,5S)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル]プロピル}-9H-カルバゾールまたはその塩を意味する。
【0077】
本明細書において用いられる「PB28」なる用語は、1-シクロヘキシル-4-[3-(5-メトキシ-1,2,3,4-テトラ-ヒドロナフタレン-1-イル)プロピル]ピペラジンまたはその塩を意味する。
【0078】
本明細書において用いられる「IPAG」なる用語は、1-(4-ヨードフェニル)-3-(2-アダマンチル)グアニジンまたはその塩を意味する。
【0079】
本明細書において用いられる「NE100」なる用語は、4-メトキシ-3-(2-フェニルエトキシ)-N,N-ジプロピルベンゼンエタンアミン塩酸塩またはその塩を意味する。
【0080】
本明細書において用いられる「E64d」なる用語は、(2S,3S)-トランス-エポキシスクシニル-L-ロイシルアミド-3-メチルブタンエチルエステルまたはその塩を意味する。
【0081】
本明細書において用いられる「メチルアデニン」なる用語は、3-メチルアデニンまたはその塩を意味する。
【0082】
本明細書において用いられる「タモキシフェン」なる用語は、(Z)-2-[4-(1,2-ジフェニルブタ-1-エニル)フェノキシ]-N,N-ジメチルエタンアミンまたはその塩を意味する。
【0083】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」なる用語は、化合物の生物学的活性または特性を抑制せず、相対的に非毒性である、担体または希釈剤などの材料を意味し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こす、またはそれが含まれる組成物の任意の成分と有害な様式で相互作用することなく、個体に投与しうる。
【0084】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される塩」なる用語は、無機酸、有機酸、溶媒和物、水和物、またはその包接化合物を含む、薬学的に許容される非毒性酸から調製された、投与化合物の塩を意味する。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、ヘキサフルオロリン酸、クエン酸、グルコン酸、安息香酸、プロピオン酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アムソン酸、パモ酸、p-トルエンスルホン酸、およびメシル酸である。適切な有機酸は、例えば、有機酸の脂肪族、芳香族、カルボン酸およびスルホン酸クラスから選択してもよく、その例はギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン(パモ)酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシラート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。さらに、薬学的に許容される塩には、非限定例として、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム依存性またはカルシウム)、およびアンモニウム塩が含まれる。
【0085】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」なる用語は、本発明の範囲内で有用な化合物を、それがその意図される機能を実施しうるように、患者の範囲内または患者に運ぶ、または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒またはカプセル化材料などの、薬学的に許容される材料、組成物または担体を意味する。典型的には、そのような作成物を、体の1つの器官、または一部から、体の別の器官、または一部に運ぶ、または輸送する。各担体は、本発明の範囲内で有用で、患者に対して有害ではない、化合物を含む、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの例には下記が含まれる:乳糖、ブドウ糖およびショ糖などの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどの、その誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;界面活性剤;アルギン酸;発熱原物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに薬学的製剤において用いられる他の非毒性、適合性物質。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」には、本発明の範囲内で有用な化合物の活性と適合性であり、患者に対して生理学的に許容される、任意のおよびすべてのコーティング、抗菌および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤なども含まれる。補助的活性化合物を組成物に組み込んでもよい。「薬学的に許容される担体」には、本発明の範囲内で有用な化合物の薬学的に許容される塩もさらに含まれうる。本発明の実施において用いられる薬学的組成物に含まれてもよい、他の追加の成分は、当技術分野において公知で、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)に記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0086】
本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、それ自体または別の置換基の一部として、特に記載がないかぎり、明示された数の炭素原子(すなわち、C
1-6は1〜6個の炭素原子を意味する)を有し、直鎖、分枝鎖、または環式置換基を含む、直鎖または分枝鎖炭化水素を意味する。例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、およびシクロプロピルメチルが含まれる。最も好ましいのは(C
1〜C
6)アルキル、特にエチル、メチル、イソプロピル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルおよびシクロプロピルメチルである。
【0087】
本明細書において用いられる「置換アルキル」なる用語は、ハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH
2、-N(CH
3)
2、-C(=O)OH、トリフルオロメチル、-C≡N、-C(=O)O(C
1-C
4)アルキル、-C(=O)NH
2、-SO
2NH
2、-C(=NH)NH
2、および-NO
2からなる群より選択される1、2または3つの置換基で置換され、好ましくはハロゲン、-OH、アルコキシ、-NH
2、トリフルオロメチル、-N(CH
3)
2、および-C(=O)OHから選択され、より好ましくはハロゲン、アルコキシおよび-OHから選択される1または2つの置換基を含む、上で定義するアルキルを意味する。置換アルキルの例には、2,2-ジフルオロプロピル、2-カルボキシシクロペンチルおよび3-クロロプロピルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0088】
本明細書において用いられる「ヘテロアルキル」なる用語は、それ自体または別の用語との組み合わせで、特に記載がないかぎり、示された数の炭素原子ならびにO、N、およびSからなる群より選択される1または2個のヘテロ原子からなる、安定な直鎖または分枝鎖アルキル基を意味し、ここで窒素および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく、かつ窒素原子は任意に四級化されていてもよい。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の残りとそれが結合している断片との間、ならびにヘテロアルキル基の最も末端の炭素原子への結合を含む、ヘテロアルキル基の任意の位置に配置されてもよい。例には:-O-CH
2-CH
2-CH
3、-CH
2-CH
2-CH
2-OH、-CH
2-CH
2-NH-CH
3、-CH
2-S-CH
2-CH
3、および-CH
2CH
2-S(=O)-CH
3が含まれる。例えば、-CH
2-NH-OCH
3、または-CH
2-CH
2-S-S-CH
3のように、最大2個までのヘテロ原子が連続してもよい。
【0089】
本明細書において用いられる「アルコキシ」なる用語は、単独または他の用語との組み合わせで用いられ、特に記載がないかぎり、例えば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ(イソプロポキシ)ならびにより高級のホモログおよび異性体などの、分子の残りに酸素原子を介して連結された、上の定義のとおりの、明示された数の炭素原子を有するアルキル基を意味する。好ましいのは(C
1-C
3)アルコキシ、特にエトキシおよびメトキシである。
【0090】
本明細書において用いられる「ハロ」または「ハロゲン」なる用語は、単独または別の置換基の一部として、特に記載がないかぎり、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子、好ましくはフッ素、塩素、または臭素、より好ましくはフッ素または塩素を意味する。
【0091】
本明細書において用いられる「シクロアルキル」なる用語は、単環式または多環式、非芳香族基を意味し、ここで環を形成する原子(すなわち、骨格原子)はそれぞれ炭素原子である。1つの態様において、シクロアルキル基は飽和または部分不飽和である。もう1つの態様において、シクロアルキル基は芳香環と縮合している。シクロアルキル基には、3〜10個の環原子を有する基が含まれる。シクロアルキル基の実例には、以下の部分が含まれるが、それらに限定されるわけではない:
【0092】
単環式シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。二環式シクロアルキルには、テトラヒドロナフチル、インダニル、およびテトラヒドロペンタレンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。多環式シクロアルキルには、アダマンタンおよびノルボルナンが含まれる。シクロアルキルなる用語は、「不飽和非芳香族カルボシクリル」または「非芳香族不飽和カルボシクリル」基を含み、これらはいずれも少なくとも1つの炭素炭素二重結合または1つの炭素炭素三重結合を含む、本明細書において定義する非芳香族炭素環を意味する。
【0093】
本明細書において用いられる「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」なる用語は、それぞれO、SおよびNから選択される1〜4個の環ヘテロ原子を含む、ヘテロ脂環式基を意味する。1つの態様において、前記基の環が2個の隣接するOまたはS原子を含まないとの条件で、各ヘテロシクロアルキル基はその環系に4〜10個の原子を有する。もう1つの態様において、ヘテロシクロアルキル基は芳香環と縮合している。1つの態様において、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、かつ窒素原子は任意に四級化されていてもよい。複素環系は、特に記載がないかぎり、安定な構造を提供する任意のヘテロ原子または炭素原子で結合してもよい。複素環は本質的に芳香族または非芳香族であってもよい。1つの態様において、複素環はヘテロアリールである。
【0094】
3員ヘテロシクロアルキル基の例には、アジリジンが含まれるが、それに限定されるわけではない。4員ヘテロシクロアルキル基の例には、アゼチジンおよびベータラクタムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。5員ヘテロシクロアルキル基の例には、ピロリジン、オキサゾリジンおよびチアゾリジンジオンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。6員ヘテロシクロアルキル基の例には、ピペリジン、モルホリンおよびピペラジンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ヘテロシクロアルキル基の他の非限定例は下記である:
【0095】
非芳香族複素環の例には、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ピロリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、ジオキソラン、スルホラン、2,3-ジヒドロフラン、2,5-ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオファン、ピペリジン、1,2,3,6-テトラヒドロピリジン、1,4-ジヒドロピリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、2,3-ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ホモピペラジン、ホモピペリジン、1,3-ジオキセパン、4,7-ジヒドロ-1,3-ジオキセピン、およびヘキサメチレンオキシドなどの単環式基が含まれる。
【0096】
本明細書において用いられる「芳香族」なる用語は、1つまたは複数の多価不飽和環を有し、かつ芳香族特性を有する、すなわち、(4n+2)非局在化π(パイ)電子を有する、炭素環または複素環を意味し、ここでnは整数である。
【0097】
本明細書において用いられる「アリール」なる用語は、単独または他の用語との組み合わせで用いられ、特に記載がないかぎり、1つまたは複数の環(典型的には、1、2または3つの環)を含む炭素環式芳香族系を意味し、ここでそのような環は、ビフェニルのように、ぶら下がった様式で一緒に結合していてもよく、またはナフタレンのように、縮合していてもよい。アリール基の例には、フェニル、アントラシル、およびナフチルが含まれる。好ましい例はフェニルおよびナフチルで、最も好ましいのはフェニルである。
【0098】
本明細書において用いられる「アリール-(C
1-C
3)アルキル」なる用語は、1〜3炭素アルキレン鎖がアリール基に結合している官能基、例えば、-CH
2CH
2-フェニルを意味する。好ましいのはアリール-CH
2-およびアリール-CH(CH
3)-である。「置換アリール-(C
1-C
3)アルキル」なる用語は、アリール基が置換されているアリール-(C
1-C
3)アルキル官能基を意味する。好ましいのは置換アリール(CH
2)-である。同様に、「ヘテロアリール-(C
1-C
3)アルキル」なる用語は、1〜3炭素アルキレン鎖がヘテロアリール基に結合している官能基、例えば、-CH
2CH
2-ピリジルを意味する。好ましいのはヘテロアリール-(CH
2)-である。「置換ヘテロアリール-(C
1-C
3)アルキル」なる用語は、ヘテロアリール基が置換されているヘテロアリール-(C
1-C
3)アルキル官能基を意味する。好ましいのは置換ヘテロアリール-(CH
2)-である。
【0099】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」なる用語は、芳香族特性を有する複素環を意味する。多環式ヘテロアリールは、部分飽和である1つまたは複数の環を含んでもよい。例には以下の部分が含まれる:
【0100】
ヘテロアリール基の例には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル(特に2-および4-ピリミジニル)、ピリダジニル、チエニル、フリル、ピロリル(特に2-ピロリル)、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル(特に3-および5-ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリゾリル、1,3,4-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリルおよび1,3,4-オキサジアゾリルも含まれる。多環式複素環およびヘテロアリールの例には、インドリル(特に3-、4-、5-、6-および7-インドリル)、インドリニル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル(特に1-および5-イソキノリル)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル、シンノリニル、キノキサリニル(特に2-およい5-キノキサリニル)、キナゾリニル、フタラジニル、1,8-ナフチリジニル、1,4-ベンゾジオキサニル、クマリン、ジヒドロクマリン、1,5-ナフチリジニル、ベンゾフリル(特に3-、4-、5-、6-および7-ベンゾフリル)、2,3-ジヒドロベンゾフリル、1,2-ベンズイソキサゾリル、ベンゾチエニル(特に3-、4-、5-、6-、および7-ベンゾチエニル)、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル(特に2-ベンゾチアゾリルおよび5-ベンゾチアゾリル)、プリニル、ベンズイミダゾリル(特に2-ベンズイミダゾリル)、ベンゾトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジジニル、およびキノリジジニルが含まれる。
【0101】
本明細書において用いられる「置換」なる用語は、原子または原子群が別の基に結合された置換基として水素に取って代わることを意味する。「置換」なる用語は、そのような置換が許容される、任意のレベルの置換、すなわち、一、二、三、四、または五置換をさらに意味する。置換基は独立に選択され、置換は任意の化学的に可能な位置でありうる。1つの態様において、置換基の数は1〜4の間で変動する。もう1つの態様において、置換基の数は1〜3の間で変動する。さらにもう1つの態様において、置換基の数は1〜2の間で変動する。
【0102】
本明細書において用いられる「置換されていてもよい」なる用語は、言及される基が置換されていてもよく、または無置換でもよいことを意味する。1つの態様において、言及される基はゼロの置換基で置換されていてもよく、すなわち、言及される基は無置換である。もう1つの態様において、言及される基は、本明細書に記載の基から個々に、かつ独立に選択される1つまたは複数の追加の基で置換されていてもよい。
【0103】
1つの態様において、置換基はオキソ、ハロゲン、-CN、-NH
2、-OH、-NH(CH
3)、-N(CH
3)
2、アルキル(直鎖、分枝および/または不飽和アルキルを含む)、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換ヘテロシクロアルキル、フルオロアルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アルコキシ、フルオロアルコキシ、-S-アルキル、S(=O)
2アルキル、-C(=O)NH[置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換フェニル]、-C(=O)N[Hまたはアルキル]
2、-OC(=O)N[置換または無置換アルキル]
2、-NHC(=O)NH[置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換フェニル]、-NHC(=O)アルキル、-N[置換または無置換アルキル]C(=O)[置換または無置換アルキル]、-NHC(=O)[置換または無置換アルキル]、-C(OH)[置換または無置換アルキル]
2、および-C(NH
2)[置換または無置換アルキル]
2からなる群より独立に選択される。もう1つの態様において、例として、任意の置換基はオキソ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-CN、-NH
2、-OH、-NH(CH
3)、-N(CH
3)
2、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CF
3、-CH
2CF
3、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2、-OCF
3、- OCH
2CF
3、-S(=O)
2-CH
3、-C(=O)NH
2、-C(=O)-NHCH
3、-NHC(=O)NHCH
3、-C(=O)CH
3、および-C(=O)OHから選択される。さらに1つの態様において、置換基はC
1-6アルキル、-OH、C
1-6アルコキシ、ハロ、アミノ、アセトアミド、オキソおよびニトロからなる群より独立に選択される。さらにもう1つの態様において、置換基はC
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、ハロ、アセトアミド、およびニトロからなる群より独立に選択される。本明細書において用いられる、置換基がアルキルまたはアルコキシ基である場合、炭素鎖は分枝、直鎖または環式であってもよいが、直鎖が好ましい。
【0104】
範囲:本開示の全体を通して、本発明の様々な局面を範囲形式で示すことができる。範囲形式での記載は単に便宜および簡潔のためであることが理解されるべきで、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載はすべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると考えられるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0105】
説明
本発明は、シグマ受容体に結合し、その活性を調節する、新規化合物の予想外の発見に関する。1つの態様において、本発明のシグマ受容体調節因子は、シグマ受容体アンタゴニストである。もう1つの態様において、シグマ受容体は、シグマ1、シグマ2およびその組み合わせからなる群より選択される。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体はシグマ1である。
【0106】
本発明の化合物を、癌、神経障害性疼痛、うつ、物質乱用、てんかん、精神病、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびその組み合わせなどであるが、それらに限定されるわけではない、シグマ受容体関連疾患および障害を処置するために用いてもよい。癌は前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、神経芽腫、白血病、CNS癌(脳腫瘍を含む)、およびその組み合わせからなる群より選択されうる。1つの態様において、本発明の化合物によって誘発される治療効果はシグマ受容体によって仲介される。もう1つの態様において、本発明の化合物によって誘発される治療効果はシグマ受容体によって仲介されない。
【0107】
理論に縛られたくはないが、本発明の化合物のタンパク質ホメオスタシス/「タンパク質恒常性」(すなわち、適切なタンパク質合成、プロセシング、折りたたみ、輸送、集合、および分解の維持)調節特性は、タンパク質ホメオスタシスが崩壊している(例えば、神経変性疾患)またはこのプロセスが特に重大である(例えば、癌)任意の疾患の処置において使用されることを可能にする。1つの態様において、本発明の化合物は、血液脳関門を通過する。もう1つの態様において、本発明の化合物は、血液脳関門を通過しない。
【0108】
非限定的局面において、本発明は、シグマ1アンタゴニストが、用量および時間応答性の様式でERストレス(翻訳停止、小胞体ストレス応答(UPR)、または自食作用)を誘導し、小胞体ストレス応答(UPR)を活性化するという予想外の発見に関する。本明細書において示すとおり、自食作用はシグマ1アンタゴニストによる長期処理後に起こり、遷延性UPRは二次的応答として自食作用を引き起こすことが示唆される。事実、シグマ1アンタゴニスト処理細胞において、UPR活性化はオートファゴソーム形成よりも優先され、自食作用はアポトーシスよりも優先された。シグマ1アンタゴニスト誘導性UPRまたは自食作用の阻害は、シグマ1アンタゴニスト仲介性アポトーシスを加速した。したがって、本明細書において示すとおり、シグマ1アンタゴニストとUPRおよび/または自食作用による生存経路を標的とする薬剤との組み合わせは、癌を処置、改善または予防するための新規かつ有効なアプローチを提供する。1つの態様において、本発明の化合物は、翻訳停止、小胞体ストレス応答(UPR)、自食作用、およびその組み合わせなどであるが、それらに限定されるわけではない、小胞体(ER)ストレスを誘導する。もう1つの態様において、本発明の化合物は、ER関連プロテアソーム分解(ERAD)を含むが、それに限定されるわけではない、細胞タンパク質ユビキチン化を調節する。本明細書において示すとおり、シグマリガンド、IPAGは、乳癌細胞株において新規、ユビキチン選択的自食作用を誘導した。
【0109】
本発明は、少なくとも1つの本発明の化合物を含む組成物であって、少なくとも1つの追加の治療薬を任意にさらに含む組成物を含む。本発明は、シグマ受容体調節化合物および少なくとも1つの追加の治療薬を含む組成物も含む。1つの態様において、追加の治療薬はUPRおよび/または自食作用による生存経路を標的とする。もう1つの態様において、追加の治療薬はシグマ受容体に結合し、これを調節する。さらにもう1つの態様において、追加の治療薬は化学療法剤および/またはホルモン療法剤である。
【0110】
本発明の範囲内で企図される追加の治療薬の例には、成長因子受容体阻害剤、成長因子受容体に対するモノクローナル抗体(例えば、トラズツズマブ(Traztuzumab ))、ホルモン受容体アンタゴニスト(例えば、アンドロゲン受容体阻害剤)、自食作用調節剤(ラパマイシンおよびその類縁体または「ラパログ」などの)、ERストレス応答阻害剤、プロテアソーム阻害剤、p97/VCP阻害剤(例えば、DBeQおよびその誘導体-Chou et al., 2011, Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 108(12):4834-9)、およびその組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の範囲内で企図される追加の治療薬の非限定例には、オクタペプチド、ソマトスタチン、アナログエム、ランレオチド、アンジオペプチン、ダーモペプチン、オクトレオチド、ペグビソマント、3-メチルアデニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ワートマニン、イイヤレスタチンI、サルブリナル、バーシペロスタチン、2H-イソインドール-2-カルボン酸、4-フルオロ-1,3-ジヒドロ-(2R,6S,12Z,13aS,14aR,16aS)-14a-[[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル]-6-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a-ヘキサデカヒドロ-5,16-ジオキソシクロプロパ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアザシクロペンタデシン-2-イルエステル(ダノプレビル)、アダマンタン-アセチル-(6-アミノヘキサノイル)3-(ロイシニル)3-ビニル-(メチル)-スルホン、N-アセチル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-メチオナール、N-[(フェニルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシル-N-[(1S)-1-ホルミル-3-メチルブチル]-L-ロイシンアミド、(2R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-2-[(1S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-4-メチル-5-オキソ-2-ピロリジンカルボキシ-N-アセチル-L-システインチオエステル、 N-[N-(N-アセチル-L-ロイシル)-L-ロイシル]-L-ノルロイシン、ラクタシスチン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、(S)-1-カルボキシ-2-フェニル]-カルバモイル-Arg-Val-アルギナール、ウシ膵臓トリプシン阻害剤、[(2S,2R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]-L-ロイシン、N-[(S)-1-カルボキシ-イソペンチル)-カルバモイル-アルファ-(2-イミノヘキサヒドロ-4-(S)-ピリミジル]-L-グリシル-L-フェニルアラニナール、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩脱水物、アセチル-ロイシル-ロイシル-アルギナール、イソバレリル-Val-Val-AHMHA-Ala-AHMHA、ここでAHMHA=(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、N-アルファ-L-ラムノピラノシルオキシ-(ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン、フェニルメタンスルホニルフッ化物、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、NPI-0052、CEP-18770、MLN9708、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、サリノスポラミドA、PI3K阻害剤、ラパチニブ、ラパマイシンおよびラパログ、ヒートショックタンパク質(HSP)阻害剤(例えば、ゲルダナマイシンおよび17-AAGなどの誘導体)、アンドロゲン受容体阻害剤(例えば、MDV3100、ARN-509)、ならびにハーセプチン/トラズツズマブなどのシグマリガンドと標的指向成分との結合生成物(例えば、トラスツズマブ-エムタンシン、T-DM1は、細胞毒メルタンシンに連結された抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)を含む抗体-薬物結合体である-Niculescu-Duvaz, 2010, Curr. Opin. Mol. Ther. 12(3):350-60)が含まれる。
【0111】
単独または少なくとも1つの追加の治療薬(例えば、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)および/または自食作用による生存経路を標的とするもの)との組み合わせで用いる、本発明の化合物は、シグマ受容体関連障害または疾患の処置において有用である。本発明の範囲内で企図される障害または疾患の例には、癌、神経障害性疼痛、うつ、物質乱用、てんかん、精神病、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経変性、リソソーム蓄積症、タンパク質折りたたみおよびプロセシングが変更されている疾患、ならびに自食作用の調節が治療的に有益でありうる適応症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましい態様において、疾患は癌である。
【0112】
1つの態様において、本発明の化合物は、シグマ受容体に結合し、これを調節することが当技術分野において公知の化合物よりも、改善された薬物様特性を有する。もう1つの態様において、本発明の化合物は、血液脳関門を通過しない。さらにもう1つの態様において、本発明の化合物は血液脳関門を通過する。
【0113】
本発明の化合物は、生細胞における生物学的現象を試験するために用いうる、シグマリガンドプローブを含む。1つの態様において、シグマリガンドプローブは蛍光体を含む。もう1つの態様において、蛍光体は7-アミノ-4-メチルクマリン(
図64)である。1つの態様において、蛍光プローブは1-フェニルシクロヘキサンカルボン酸2-(4-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)ピペラジン-1-イル)エチルである。もう1つの態様において、蛍光プローブは1-(4-メトキシフェニル)-3-(3-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)プロピル)グアニジンである。さらにもう1つの態様において、蛍光プローブは1-(4-ヨードフェニル)-3-(3-((4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)オキシ)プロピル)グアニジンである。さらにもう1つの態様において、蛍光プローブは1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)である。
【0114】
本発明の化合物は、薬理学的、細胞、生化学的、インビボ、薬動力学、または薬力学特性によって特徴付けられてもよい。特徴付け試験の好ましい例には、シグマ1リガンド結合特性、シグナル伝達経路分析および/または特徴付け、シグマリガンド処置に応答してのシグマ1タンパク質結合のプロテオミクス分析、腫瘍、脳応答、および毒性が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0115】
本発明の化合物
本発明の化合物は、有機合成の技術分野において周知の技術を用いて合成してもよい。合成に必要な出発原料および中間体は、商業的供給源から入手してもよく、または当業者には公知の方法に従って合成してもよい。
【0116】
1つの局面において、本発明の化合物は式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはN-オキシドである:
、
式中:
環Aは単環式もしくは二環式アリールまたは単環式もしくは二環式ヘテロアリール環であり、ここでアリールまたはヘテロアリール環は0〜4つのR
1基で置換されていてもよく;
R
1のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
3、-SR
3、-S(=O)R
3、-S(=O)
2R
3、-NHS(=O)
2R
3、-C(=O)R
3、-OC(=O)R
3、-CO
2R
3、-OCO
2R
3、-CH(R
3)
2、-N(R
3)
2、-C(=O)N(R
3)
2、-OC(=O)N(R
3)
2、-NHC(=O)NH(R
3)、-NHC(=O)R
3、-NHC(=O)OR
3、-C(OH)(R
3)
2、および-C(NH
2)(R
3)
2からなる群より独立に選択され;
R
2のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキルもしくはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく、またはX
3およびR
2は一緒に、0〜2つのR
1基で置換されていてもよい、(C
3-C
7)ヘテロシクロアルキル基を形成し;
R
3のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は0〜5つのR
1基で置換されていてもよく;
X
1は-CH
2-、-S-、-O-または-(NR
2)-であり;
X
2は=CH
2、=S、=Oまたは=NR
2であり;かつ
X
3は-S-、-O-、または-NR
2-である。
【0117】
1つの態様において、環Aは、0〜4つのR
1基で置換されていてもよい、単環式アリールまたは単環式ヘテロアリール環である。もう1つの態様において、環Aは無置換である。さらにもう1つの態様において、環Aはフェニルまたは置換フェニルである。
【0118】
好ましい態様において、X
1およびX
3はいずれも-NH-であり、かつX
2は=NHである。
【0119】
もう1つの局面において、本発明の化合物は式(II)の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはN-オキシドである:
R
A-R
B (II)、式中;
R
Aは
からなる群より選択され;ここで
X
4はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;かつ
R
Bは:
からなる群より選択される。
【0120】
もう1つの局面において、本発明の化合物は式(III)の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはN-オキシドである:
、
式(III)中、
R
1およびR
2のそれぞれは-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6ヘテロアルキル、F、Cl、Br、I、-CN、-NO
2、-OR
5、-SR
5、-S(=O)R
5、-S(=O)
2R
5、-NHS(=O)
2R
5、-C(=O)R
5、-OC(=O)R
5、-CO
2R
5、-OCO
2R
5、-CH(R
5)
2、-N(R
5)
2、-C(=O)N(R
5)
2、-OC(=O)N(R
5)
2、-NHC(=O)NH(R
5)、-NHC(=O)R
5、-NHC(=O)OR
5、-C(OH)(R
5)
2、および-C(NH
2)(R
5)
2からなる群より独立に選択され;
R
3は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6フルオロアルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
4は-C
1-C
6アルキル、-C
1-C
6アルコキシ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択され;
R
5のそれぞれはH、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6ヘテロアルキル、アリール、および-C
1-C
3アルキル-(C
3-C
6シクロアルキル)からなる群より独立に選択され、ここでアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはシクロアルキル基は置換されていてもよく;
XはCH
2、C=O、またはOからなる群より選択され;
nは1〜3の整数であり;
xは0〜4の整数であり;かつ
yは0〜4の整数である。
【0121】
1つの態様において、本発明の化合物は下記からなる群より選択される:
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物A;JMS-51-58または51-58としても公知);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物B);
1-(n-プロピル)-3-(4-ヨードフェニル)グアニジン(化合物C);
1-(n-プロピル)-3-(4-メトキシフェニル)グアニジン(化合物D);
1,3-ビス(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)グアニジン(化合物E);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-トリフルオロメチルフェニル)グアニジン(化合物F);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-クロロフェニル)グアニジン(化合物G);
1-(3-(4-フルオロフェノキシ)プロピル)-3-(4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)グアニジン)(化合物H);
その塩、溶媒和物またはN-オキシド;およびその任意の組み合わせ。
【0122】
本発明の化合物の調製
式(I)の化合物を、当業者には公知の合成法を用い、本明細書に記載の一般スキームによって調製してもよい。以下の例は本発明の非限定的態様を示す。
【0123】
非限定的態様において、非対称のN,N'-二置換グアニジンの合成を、アリールシアナミドおよびアミンをカップリングすることにより達成する(
図17)。1つの態様において、カップリング反応は80℃〜250℃の範囲の高温で起こる。アニリンをエーテル中、臭化シアンによりアリールシアナミドに変換してもよい。次いで、非対称のN,N'-二置換グアニジンを、アリールシアナミドをアミンとカップリングすることによって生成する。カップリング法の非限定例には、アセトニトリル中、還流温度で加熱すること、およびマイクロ波中、120℃で加熱することが含まれる。
【0124】
もう1つの非限定的態様において、非対称のN,N'-二置換グアニジンを、ベンズイミドチオアートおよびアミンをカップリングすることにより合成してもよい(
図18)。例えば、アニリンをイソチオシアン酸カリウムと反応させてチオ尿素を得てもよい。次いで、チオ尿素を還流温度まで加熱したアセトン中、ヨウ化メチルで処理して、所望のベンズイミドチオアートを得てもよい。次いで、非対称のN,N'-二置換グアニジンを、ベンズイミドチオアートをアミンとカップリングすることによって生成してもよい。カップリング法の非限定例には、エタノール中、還流温度で加熱することが含まれる。
【0125】
本発明の化合物は、1つまたは複数の立体中心を有していてもよく、各立体中心は独立にRまたはS立体配置のいずれかで存在してもよい。1つの態様において、本明細書に記載の化合物は光学活性体またはラセミ体で存在する。本明細書に記載の化合物は、本明細書に記載の治療上有用な特性を有する、ラセミ体、光学活性体、位置異性体および立体異性体、またはその組み合わせを含むことが理解されるべきである。光学活性体の調製は、非限定例として、ラセミ体の再結晶技術による分割、光学活性出発原料からの合成、またはキラル固定相を用いてのクロマトグラフィ分離を含む、任意の適切な様式で達成される。1つの態様において、1つまたは複数の異性体の混合物を本明細書に記載の治療化合物として用いる。もう1つの態様において、本明細書に記載の化合物は1つまたは複数のキラル中心を含む。これらの化合物を、立体選択的合成、エナンチオ選択的合成ならびに/または鏡像異性体および/もしくはジアステレオマーの混合物の分離を含む、任意の手段によって調製する。化合物およびその異性体の分割は、非限定例として、化学的方法、酵素的方法、分別結晶、蒸留、およびクロマトグラフィを含む、任意の手段によって達成される。
【0126】
本明細書に記載の方法および製剤は、本発明の任意の化合物の構造を有する化合物のN-オキシド(適切な場合)、結晶型(多形としても公知)、溶媒和物、アモルファス相、および/または薬学的に許容される塩、ならびに同じ型の活性を有するこれらの化合物の代謝物および活性代謝物の使用を含む。溶媒和物には水、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル)またはアルコール(例えば、エタノール)溶媒和物、酢酸塩などが含まれる。1つの態様において、本発明に記載の化合物は、水およびエタノールなどの薬学的に許容される溶媒による溶媒和型で存在する。もう1つの態様において、本発明に記載の化合物は非溶媒和型で存在する。
【0127】
1つの態様において、本発明の化合物は互変異性体で存在してもよい。すべての互変異性体は本明細書に示す化合物の範囲内に含まれる。
【0128】
1つの態様において、本明細書に記載の化合物をプロドラッグとして調製する。「プロドラッグ」とは、インビボで親薬物に変換される物質である。1つの態様において、インビボ投与後に、プロドラッグは化合物の生物学的、薬学的または治療的活性型に化学的に変換される。もう1つの態様において、プロドラッグは、1つまたは複数の段階または過程によって化合物の生物学的、薬学的または治療的活性型に酵素的に代謝される。
【0129】
1つの態様において、例えば、本発明の化合物の芳香環部分上の部位は様々な代謝反応に対して感受性である。芳香環構造上に適切な置換基を組み込むことで、この代謝経路を低減、最小化、または除去してもよい。1つの態様において、芳香環の代謝反応に対する感受性を低下または除去するための適切な置換基は、例でしかないが、重水素、ハロゲン、またはアルキル基である。
【0130】
本明細書に記載の化合物には、1つまたは複数の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられている、同位体標識化合物も含まれる。本明細書に記載の化合物への包含に適した同位体の例には、
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
36Cl、
18F、
123I、
125I、
13N、
15N、
15O、
17O、
18O、
32P、および
35Sが含まれるが、それらに限定されるわけではない。1つの態様において、同位体標識化合物は薬物および/または基質組織分布試験において有用である。もう1つの態様において、重水素などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性(例えば、インビボ半減期の延長または必要な用量の低減)を提供する。さらにもう1つの態様において、
11C、
18F、
15Oおよび
13Nなどのポジトロン放出同位体による置換は、基質受容体占有を調べるためのポジトロン放出断層撮影(PET)試験において有用である。同位体標識化合物は、適切な同位体標識試薬を、そうでなければ使用する非標識試薬の代わりに用い、任意の適切な方法またはプロセスによって調製する。
【0131】
1つの態様において、本明細書に記載の化合物を、発色団もしくは蛍光部分、生物発光標識、または化学発光標識の使用を含むが、それらに限定されるわけではない、他の手段によって標識する。
【0132】
本明細書に記載の化合物、および異なる置換基を有する他の関連化合物を、本明細書に記載の、および、例えば、以下に記載するとおりの、技術および材料を用いて合成する:Fieser & Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-17 (John Wiley and Sons, 1991); Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5 and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 1989); Organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley and Sons, 1991), Larock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989), March, Advanced Organic Chemistry 4
th Ed., (Wiley 1992); Carey & Sundberg, Advanced Organic Chemistry 4th Ed., Vols. A and B (Plenum 2000,2001), and Green & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Ed., (Wiley 1999)(これらはすべてそのような開示のために参照により本明細書に組み入れられる)。本明細書に記載の化合物の調製の一般法を、本明細書において提供する式に見られる様々な部分を導入するために、適切な試薬および条件の使用によって改変する。
【0133】
本明細書に記載の化合物を、商業的供給源から入手可能であるか、または本明細書に記載の手順を用いて調製される化合物から出発し、任意の適切な手段を用いて合成する。
【0134】
1つの態様において、ヒドロキシル、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基などの、反応性官能基を、反応におけるそれらの有害な関与を避けるために保護する。保護基を用いて、反応性部分のいくつか、またはすべてをブロックし、保護基を除去するまで、そのような基が化学反応に関与するのを防止する。もう1つの態様において、各保護基は異なる手段によって除去可能である。全く異なる反応条件下で切断される保護基は、区別しての除去の必要条件を満たす。
【0135】
1つの態様において、保護基は酸、塩基、還元条件(例えば、水素化分解などの)、および/または酸化条件によって除去する。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタールおよびt-ブチルジメチルシリルなどの基は酸に不安定で、水素化分解によって除去可能なCbz基および塩基に不安定なFmoc基で保護したアミノ基存在下のカルボキシおよびヒドロキシ反応性部分を保護するために用いる。t-ブチルカルバマートなどの酸に不安定な基、または酸および塩基の両方に安定であるが、加水分解で除去可能なカルバマートでブロックしたアミン存在下では、カルボン酸およびヒドロキシ反応性部分は、メチル、エチル、およびアセチルなどであるが、それらに限定されるわけではない、塩基に不安定な基でブロックする。
【0136】
1つの態様において、カルボン酸およびヒドロキシ反応性基を、ベンジル基などの加水分解で除去可能な保護基でブロックし、その一方で酸と水素結合可能なアミン基を、Fmocなどの塩基に不安定な基でブロックする。カルボン酸反応性部分は、アルキルエステルへの変換を含む、本明細書に例示する単純なエステルへの変換によって保護するか、または2,4-ジメトキシベンジルなどの酸化により除去可能な保護基でブロックし、その一方で共存するアミノ基はフッ化物に不安定なシリルカルバマートでブロックする。
【0137】
アリルブロック基は安定で、後に金属またはパイ酸触媒によって除去されるため、酸および塩基保護基存在下で有用である。例えば、アリルブロックしたカルボン酸は、酸に不安定なt-ブチルカルバマートまたは塩基に不安定なアセタートアミン保護基存在下、パラジウム触媒反応で脱保護する。保護基のさらにもう1つの形は、化合物または中間体が結合する樹脂である。残基が樹脂に結合しているかぎり、官能基はブロックされ、反応しない。樹脂から遊離されれば、官能基は反応することが可能である。
【0138】
典型的には、ブロック/保護基は下記から選択してもよい:
【0139】
他の保護基、ならびに保護基の創製およびそれらの除去に適用可能な技術の詳細な記載は、Greene & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999、およびKocienski, Protective Groups, Thieme Verlag, New York, NY, 1994に記載されており。これらはそのような開示のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0140】
本発明の方法
本発明は、それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を処置、改善または予防する方法を含む。方法は、本発明の化合物を含む治療組成物の有効量を対象に投与する段階を含む。1つの態様において、シグマ受容体関連疾患または障害は、癌、神経障害性疼痛、うつ、物質乱用、てんかん、精神病、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびその組み合わせを含む群から選択される。もう1つの態様において、癌は前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、CNS腫瘍(脳腫瘍を含む)、神経芽腫、白血病、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0141】
本発明は、それを必要としている対象のシグマ受容体関連障害または疾患を処置、改善または予防する方法も含む。方法は、シグマ受容体調節化合物を含む治療組成物の有効量を対象に投与する段階、およびユビキチンプロテアソーム系(UPS)および/または自食作用による生存経路を阻害する治療薬を対象にさらに投与する段階を含む。1つの態様において、シグマ受容体調節化合物は本発明の化合物である。
【0142】
1つの態様において、シグマ受容体調節化合物を対象に投与することは、対象のシグマ受容体関連障害を処置、改善または予防する際に同様の結果を達成するのに必要とされる、治療薬単独の用量に比べて、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)および/または自食作用による生存経路を阻害する治療薬の低い用量を投与することを可能にする。もう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および治療薬を対象に同時投与する。さらにもう1つの態様において、シグマ受容体調節化合物および治療薬を共製剤化し、対象に同時投与する。
【0143】
1つの態様において、本明細書に記載の方法は、シグマ受容体を阻害する段階をさらに含む。もう1つの態様において、本明細書に記載の方法は、シグマ受容体を調節する段階をさらに含む。
【0144】
1つの態様において、対象は哺乳動物である。もう1つの態様において、対象はヒトである。
【0145】
併用療法
本発明の化合物は、1つまたは複数の追加の化合物との組み合わせで有用であることが意図される。これらの追加の化合物は、本発明の化合物またはシグマ受容体関連障害または疾患の症状または影響を処置、予防、または低減することが公知の治療薬を含んでもよい。そのような化合物には、ホルモン受容体アンタゴニスト、自食作用阻害剤、ERストレス応答阻害剤、およびプロテアソーム阻害剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0146】
非限定例において、本発明の化合物は、下記からなる群より選択される1つまたは複数の治療薬(またはその塩、溶媒和物またはプロドラッグ)との組み合わせで用いてもよい:
【0147】
ホルモン受容体アンタゴニスト、これにはオクタペプチド、ソマトスタチン、アナログエム、ランレオチド、アンジオペプチン、ダーモペプチン、オクトレオチド、およびペグビソマントが含まれるが、それらに限定されるわけではない;
自食作用阻害剤、これには3-メチルアデニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、およびワートマニンが含まれるが、それらに限定されるわけではない;
ERストレス応答阻害剤、これにはイイヤレスタチンI、サルブリナル、およびバーシペロスタチンが含まれるが、それらに限定されるわけではない;
プロテアソーム阻害剤、これには2H-イソインドール-2-カルボン酸、4-フルオロ-1,3-ジヒドロ-(2R,6S,12Z,13aS,14aR,16aS)-14a-[[(シクロプロピルスルホニル)アミノ]カルボニル]-6-[[(1,1-ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]-1,2,3,5,6,7,8,9,10,11,13a,14,14a,15,16,16a-ヘキサデカヒドロ-5,16-ジオキソシクロプロパ[e]ピロロ[1,2-a][1,4]ジアザシクロペンタデシン-2-イルエステル(ダノプレビル)、アダマンタン-アセチル-(6-アミノヘキサノイル)3-(ロイシニル)3-ビニル-(メチル)-スルホン、N-アセチル-L-ロイシル-L-ロイシル-L-メチオナール、N-[(フェニルメトキシ)カルボニル]-L-ロイシル-N-[(1S)-1-ホルミル-3-メチルブチル]-L-ロイシンアミド、(2R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-2-[(1S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル]-4-メチル-5-オキソ-2-ピロリジンカルボキシ-N-アセチル-L-システインチオエステル、 N-[N-(N-アセチル-L-ロイシル)-L-ロイシル]-L-ノルロイシン、ラクタシスチン、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、(S)-1-カルボキシ-2-フェニル]-カルバモイル-arg-val-アルギナール、ウシ膵臓トリプシン阻害剤、[(2S,2R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブタノイル]-L-ロイシン、N-[(S)-1-カルボキシ-イソペンチル)-カルバモイル-アルファ-(2-イミノヘキサヒドロ-4-(S)-ピリミジル]-L-グリシル-L-フェニルアラニナール、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩脱水物、アセチル-ロイシル-ロイシル-アルギナール、イソバレリル-val-val-AHMHA-ala-AHMHA、ここでAHMHA=(3S,4S)-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、N-アルファ-L-ラムノピラノシルオキシ-(ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン、フェニルメタンスルホニルフッ化物、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、NPI-0052、CEP-18770、MLN9708、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、およびサリノスポラミドAが含まれるが、それらに限定されるわけではない;ならびに
p97/VCP阻害剤、これにはDBeQおよびその誘導体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0148】
相乗効果を、例えば、S字状E
max式(Holford & Scheiner, 1981, Clin. Pharmacokinet. 6:429-453)、レーヴェ(Loewe)相加性(Loewe & Muischnek, 1926, Arch. Exp. Pathol Pharmacol. 114:313-326)および半数有効式(Chou & Talalay, 1984, Adv. Enzyme Regul. 22:27-55)などの適切な方法を用いて計算してもよい。上で言及した各式を実験データに適用して対応するグラフを作成し、薬物併用効果の評価を補助してもよい。上で言及した式に関連する対応するグラフは、それぞれ、濃度作用曲線、アイソボログラム曲線および併用指数曲線である。
【0149】
投与/用量/製剤
投与計画は有効量を構成するものに影響をおよぼしうる。治療製剤を対象に、シグマ受容体関連障害または疾患の発症の前または後のいずれかに投与してもよい。さらに、いくつかの分割用量、ならびに交互の用量を1日1回もしくは逐次投与してもよく、または用量を持続的に注入してもよく、もしくはボーラス注射であってもよい。さらに、治療製剤の用量を、治療または予防の状況の緊急性によって指示されるとおり、比例的に増量または減量してもよい。
【0150】
本発明の組成物の患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトへの投与は、公知の手順を用い、患者のシグマ受容体関連障害または疾患を処置するのに有効な用量および期間で実施してもよい。治療効果を得るために必要な治療化合物の有効量は、患者の疾患または障害の状態;患者の年齢、性別、および体重;ならびに患者のシグマ受容体関連障害または疾患を処置するための治療化合物の能力などの因子に応じて変動しうる。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調節してもよい。例えば、いくつかの分割用量を1日1回投与してもよく、または用量を、治療状況の緊急性によって指示されるとおり、比例的に減量してもよい。本発明の治療化合物の有効用量範囲の非限定例は、約1から5,000mg/kg体重/日である。当業者であれば、関連する因子を試験し、過度の実験を行うことなく、治療化合物の有効量に関する決定を行うことができるであろう。
【0151】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性ではなく、特定の患者、組成物、および投与様式に対する所望の治療応答を達成するのに有効な、活性成分の量を得るために変動してもよい。
【0152】
特に、選択する用量レベルは、用いる特定の化合物の活性、投与の時間、化合物の排出速度、処置の持続時間、他の薬物、化合物との組み合わせで用いる化合物または材料、処置中の患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および過去の既往歴、ならびに医学の技術分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0153】
当技術分野において通常の技術を有する医師、例えば、内科医または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方しうる。例えば、内科医または獣医師は、薬学的組成物において用いる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に用量を増やすこともできる。
【0154】
特定の態様において、投与を容易にし、用量を均一にするために、化合物を用量単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書において用いられる用量単位剤形とは、処置する患者の単位用量として適した、物理的に分離した単位を意味し;各単位は、必要な薬学的媒体と共に所望の治療効果を生じるよう計算した、所定の量の治療化合物を含む。本発明の用量単位剤形は、(a)治療化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、および(b)患者のシグマ受容体関連障害または疾患の処置のためにそのような治療化合物を配合/製剤化する技術分野に固有の制限によって指示され、それらに直接に依存する。
【0155】
1つの態様において、本発明の組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤化する。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、治療的有効量の本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む。
【0156】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む、溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には、必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持してもよい。微生物の活動の予防を、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成してもよい。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウム、またはマンニトールおよびソルビトールなどのポリアルコールを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収を、組成物中に吸収を遅らせる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含むことによってもたらしてもよい。1つの態様において、薬学的に許容される担体はDMSO単独ではない。
【0157】
1つの態様において、本発明の組成物を患者に、1日に1〜5回またはそれ以上の範囲の用量で投与する。もう1つの態様において、本発明の組成物を患者に、1日に1回、2日に1回、3日に1回〜1週間に1回、および2週間に1回を含むが、それらに限定されるわけではない、用量範囲で投与する。当業者には、本発明の様々な組み合わせ組成物の投与頻度は、年齢、処置する疾患または障害、性別、全般的健康、および他の因子を含むが、それらに限定されるわけではない、多くの因子に依存して、個体ごとに変動することが容易に明らかである。したがって、本発明は、任意の特定の投与計画に限定されると解釈されるべきではなく、任意の患者に投与される正確な用量および組成物は、主治医が患者に関するすべての他の因子を斟酌して決定する。
【0158】
投与のための本発明の化合物は、約1μg〜約10,000mg、約20μg〜約9,500mg、約40μg〜約9,000mg、約75μg〜約8,500mg、約150μg〜約7,500mg、約200μg〜約7,000mg、約3050μg〜約6,000mg、約500μg〜約5,000mg、約750μg〜約4,000mg、約1mg〜約3,000mg、約10mg〜約2,500mg、約20mg〜約2,000mg、約25mg〜約1,500mg、約30mg〜約1,000mg、約40mg〜約900mg、約50mg〜約800mg、約60mg〜約750mg、約70mg〜約600mg、約80mg〜約500mg、ならびにその間の任意およびすべての全または部分的増分の範囲であってもよい。
【0159】
いくつかの態様において、本発明の化合物の用量は約1mgから約2,500mgである。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物において用いる本発明の化合物の用量は約10,000mg未満、または約8,000mg未満、または約6,000mg未満、または約5,000mg未満、または約3,000mg未満、または約2,000mg未満、または約1,000mg未満、または約500mg未満、または約200mg未満、または約50mg未満である。同様に、いくつかの態様において、本明細書に記載の第二の化合物の用量は約1,000mg未満、または約800mg未満、または約600mg未満、または約500mg未満、または約400mg未満、または約300mg未満、または約200mg未満、または約100mg未満、または約50mg未満、または約40mg未満、または約30mg未満、または約25mg未満、または約20mg未満、または約15mg未満、または約10mg未満、または約5mg未満、または約2mg未満、または約1mg未満、または約0.5mg未満、ならびにその任意およびすべての全または部分的増分である。
【0160】
1つの態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の化合物を、単独または第二の薬学的物質との組み合わせで保持する容器;および患者のシグマ受容体関連障害または疾患の1つまたは複数の症状を処置、予防、または低減するために化合物を使用する説明書を含む、包装された薬学的組成物を目的とする。
【0161】
製剤を通常の賦形剤、すなわち、当技術分野において公知の、経口、非経口、経鼻、静脈内、皮下、経腸、または任意の他の適切な投与様式に適した、薬学的に許容される有機または無機担体物質との混合物で用いてもよい。薬学的調製物は滅菌し、望まれる場合には、補助剤、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響をおよぼすための塩、緩衝剤、着色、着香および/または芳香物質などと混合してもよい。これらは、望まれる場合には、他の活性物質、例えば、他の鎮痛剤と組み合わせてもよい。
【0162】
任意の本発明の組成物の投与経路には、経口、経鼻、直腸、腟内、非経口、口腔、舌下または局所が含まれる。本発明において用いるための化合物を、経口または非経口、例えば、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)口腔、(経)尿道、膣(例えば、経膣および膣周囲)、鼻(内)および(経)直腸)、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、クモ膜下、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、および局所投与などの、任意の適切な経路による投与のために製剤化してもよい。
【0163】
適切な組成物および剤形には、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、丸剤、ゲルキャップ、トローチ、分散化剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、顆粒剤、ビーズ、経皮パッチ、ゲル、散剤、ペレット、マグマ剤、ロゼンジ、クリーム、ペースト剤、硬膏剤、ローション、ディスク、坐剤、経鼻または経口投与用の液体噴霧剤、吸入用のドライパウダーまたはエアロゾル製剤、膀胱内投与用の組成物および製剤などが含まれる。本発明において有用な製剤および組成物は、本明細書に記載の特定の製剤および組成物に限定されないことが理解されるべきである。
【0164】
経口投与
経口適用のために、特に適しているのは錠剤、糖衣錠、液剤、滴剤、坐剤、またはカプセル剤、カプレットおよびゲルキャップである。経口使用が意図される組成物を、当技術分野において公知の任意の方法に従って調製してもよく、そのような組成物は錠剤の製造に適した不活性、非毒性薬学的賦形剤からなる群より選択される1つまたは複数の物質を含んでもよい。そのような賦形剤には、例えば、乳糖などの不活性希釈剤;トウモロコシデンプンなどの造粒および崩壊剤;デンプンなどの結合剤;ならびにステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤が含まれる。錠剤はコーティングしていなくてもよく、またはエレガンスのため、もしくは活性成分の放出を遅らせるために、公知の技術によりコーティングしてもよい。経口使用のための製剤は、活性成分が不活性希釈剤と混合されている、ゼラチン硬カプセル剤として提供してもよい。
【0165】
経口投与のために、本発明の化合物は、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、トウモロコシデンプン、乳糖、微結晶セルロースまたはリン酸カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤と共に、通常の手段によって調製される錠剤またはカプセル剤の形であってもよい。望まれる場合、錠剤を適切な方法およびColorcon、West Point、Pa.から入手可能なOPADRY(登録商標)フィルムコーティングシステムなどのコーティング材料(例えば、OPADRY(登録商標)OY Type、OYC Type、Organic Enteric OY-P Type、Aqueous Enteric OY-A Type、OY-PM TypeおよびOPADRY(登録商標)White、32K18400)を用いてコーティングしてもよい。経口投与のための液体調製物は、液剤、シロップ剤または懸濁剤の形であってもよい。液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは硬化食用油);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステルまたはエチルアルコール);および保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物と共に、通常の手段によって調製してもよい。
【0166】
造粒技術は、活性成分の出発粉末または他の粒状材料を改変するために、薬学の技術分野において周知である。粉末を、典型的には結合材料と混合して、「顆粒」と呼ばれる、より大きい永久的流動性凝塊または細粒とする。例えば、溶媒を用いる「湿式」造粒工程は、一般には、粉末を結合材料と混合し、湿った粒状塊を形成する条件下で水または有機溶媒により加湿し、次いで、これから溶媒を蒸発させなければならないことにより特徴付けられる。
【0167】
溶融造粒は一般に、室温では固体または半固体である(すなわち、比較的低い軟化点または融点範囲を有する)材料を使用して、基本的には水または他の液体溶媒を加えることなく、粉末または他の材料の造粒を促進することにある。低融点固体は、融点範囲の温度まで加熱すると、液化して結合剤または造粒媒質として作用する。液化固体はそれが接触している粉末材料の表面上にそれ自体を広げ、冷却すると、その中で最初の材料が一緒に結合している固体粒状塊を形成する。次いで、得られた溶融顆粒を、経口剤形を調製するために打錠機に提供するか、またはカプセル化してもよい。溶融造粒は、固体分散剤または固溶体を形成することにより、活性物質(すなわち、薬物)の溶解速度およびバイオアベイラビリティを改善する。
【0168】
米国特許第5,169,645号は、改善された流動特性を有する、直接圧縮可能なワックス含有細粒を開示している。細粒は、ワックスを特定の流動性改善添加物と共に溶融物中で混合し、続いて冷却し、混合物を造粒して得られる。特定の態様において、ワックスおよび添加物の溶融物組み合わせにおいて、ワックス自体だけが溶融し、他の場合には、ワックスおよび添加物の両方が溶融する。
【0169】
本発明は、本発明の1つまたは複数の化合物の遅延放出を提供する層、およびパーキンソン病の処置用薬剤の即時放出を提供するさらなる層を含む、多層錠も含む。ワックス/pH感受性ポリマー混合物を用いて、その中に活性成分が捕捉され、その遅延放出を確実にする、胃不溶性組成物を得てもよい。
【0170】
非経口投与
非経口投与のために、本発明の化合物を注射もしくは注入、例えば、静脈内、筋肉内または皮下注射もしくは注入用、またはボーラス投与および/もしくは持続注入用に製剤化してもよい。任意に懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの他の製剤物質を含む、油性または水性媒体中の懸濁剤、液剤または乳剤を用いてもよい。
【0171】
追加の投与形態
本発明の追加の剤形には、米国特許第6,340,475号;第6,488,962号;第6,451,808号;第5,972,389号;第5,582,837号;および第5,007,790号に記載の剤形が含まれる。本発明の追加の剤形には、米国特許出願20030147952号;第20030104062号;第20030104053号;第20030044466号;第20030039688号;および第20020051820号に記載の剤形も含まれる。本発明の追加の剤形には、PCT出願国際公開公報第03/35041号;第03/35040号;第03/35029号;第03/35177号;第03/35039号;第02/96404号;第02/32416号;第01/97783号;第01/56544号;第01/32217号;第98/55107号;第98/11879号;第97/47285号;第93/18755号;および第90/11757号に記載の剤形も含まれる。
【0172】
制御放出製剤および薬物送達系
1つの態様において、本発明の製剤は、短期、急速オフセット、ならびに制御、例えば、持続放出、遅延放出および拍動性放出製剤であってもよいが、それらに限定されるわけではない。
【0173】
持続放出なる用語は、長期にわたって薬物の徐々の放出を提供し、かつ、必ずではないが、長期にわたって薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらしうる、薬物製剤を意味するために、その通常の意味で用いられる。期間は一ヶ月以上もの長さであってもよく、ボーラス型で投与された同じ量の薬剤よりも長い放出であるべきである。
【0174】
持続放出のために、化合物を、化合物に持続放出特性を提供する適切なポリマーまたは疎水性材料と共に製剤化してもよい。したがって、本発明の方法を用いるための化合物を、例えば、注射により微小粒子の形で、または埋め込みによりウェーハもしくはディスクの形で投与してもよい。
【0175】
本発明の1つの態様において、本発明の化合物を患者に、単独または別の薬学的物質との組み合わせで、持続放出製剤を用いて投与する。
【0176】
遅延放出なる用語は、薬物投与に続くいくらかの遅延の後に薬物の最初の放出を提供し、かつそのマットは、必ずではないが、約10分から最大約12時間までの遅延を含む、薬物製剤を意味するために、本明細書においてその通常の意味で用いられる。
【0177】
拍動性放出なる用語は、薬物投与後に薬物の拍動性血漿プロファイルを生じるような様式で薬物の放出を提供する、薬物製剤を意味するために、本明細書においてその通常の意味で用いられる。
【0178】
即時放出なる用語は、薬物投与の直後に薬物の放出を提供する、薬物製剤を意味するために、その通常の意味で用いられる。
【0179】
本明細書において用いられる短期とは、薬物投与後の薬物投与後の、最大約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分まで、かつこれらを含む任意の期間、およびその任意またはすべての全または部分的増分を意味する。
【0180】
本明細書において用いられる急速オフセットとは、薬物投与後の、最大約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分まで、かつこれらを含む任意の期間、ならびにその任意およびすべての全または部分的増分を意味する。
【0181】
投与
本発明の化合物の治療的有効量または用量は、患者の年齢、性別および体重、患者の現在の医学的状態ならびに治療中の患者のシグマ受容体関連障害または疾患の進行に依存する。当業者であれば、これらおよび他の因子に依存して適切な用量を決定することができる。
【0182】
本発明の化合物の適切な用量は、約0.1mg〜約1,000mgなどの、1日に約0.01mg〜約5,000mg、例えば、1日に約5mg〜約250mgなどの、約1mg〜約500mgの範囲であってもよい。用量は1回の投与で、または複数回の投与、例えば、1日に1〜4回またはそれ以上で投与してもよい。複数回投与を用いる場合、各投与の量は同じでも異なっていてもよい。例えば、1日に1mgの用量を、2回の0.5mg用量として、投与の間に約12時間の間隔をおいて投与してもよい。
【0183】
1日に投与する化合物の量を、非限定例において、毎日、1日おき、2日に1回、3日に1回、4日に1回、または5日に1回投与しうることが理解される。例えば、1日おきの投与で、1日に5mgの用量を月曜日に開始し、続く最初の1日に5mgの用量を水曜日に投与し、続く二回目の1日に5mgの用量を金曜日に投与するなどしてもよい。
【0184】
患者の状態が改善している場合、医師の裁量により、本発明の阻害剤の投与を任意に持続的に与え;または、投与している薬物の用量を特定の期間一時的に低減する、または一時的に中止する(すなわち、「休薬」)。休薬の長さは、例でしかないが、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、または365日を含む、任意に2日から1年の間で変動する。休薬中の用量低減は、例でしかないが、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%を含む、10%〜100%を含む。
【0185】
いったん患者の状態の改善が起これば、必要に応じて維持用量を投与する。続いて、投与の用量もしくは頻度、または両方を、改善された疾患が保持されるレベルまで、ウイルス量の関数として低減する。1つの態様において、患者は、症状および/または感染のいかなる再発後にも、長期ベースで間欠的処置を必要とする。
【0186】
本発明の方法において用いるための化合物は、単位剤形に製剤化してもよい。「単位剤形」なる用語は、処置を受けている患者の単位用量として適切な、物理的に分離した単位を意味し、各単位は、任意に適切な薬学的担体と共に、所望の治療効果を生じるよう計算した、所定の量の活性材料を含む。単位剤形は単一の1日用量、または複数の1日用量の1つ(例えば、1日に約1〜4回またはそれ以上)であってもよい。複数の1日用量を用いる場合、単位剤形は各投与について同じでも異なっていてもよい。
【0187】
そのような治療計画の毒性および治療効果は、LD
50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED
50(集団の50%で治療的に有効な用量)の測定を含むが、それらに限定されるわけではない、細胞培養物または実験動物で任意に測定する。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数であり、これはLD
50とED
50との間の比で表される。高い治療指数を示すキャプシド集合阻害剤が好ましい。細胞培養検定および動物試験から得られたデータを、ヒトで用いるための様々な用量の製剤において任意に用いる。そのようなキャプシド集合阻害剤の用量は、好ましくは、毒性が最小限のED
50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いる剤形および用いる投与経路に依存して、この範囲内で任意に変動する。
【0188】
当業者であれば、日常的実験だけを用いて、本明細書に記載の具体的手順、態様、特許請求の範囲、および実施例に対する多くの等価物を理解するか、または確認することができる。そのような等価物は本発明の範囲内であると考えられ、本明細書に添付の特許請求の範囲に含まれる。例えば、反応時間、反応サイズ/量、ならびに溶媒、触媒、圧、雰囲気条件、例えば、窒素雰囲気、および還元/酸化剤などの、実験試薬を含むが、それらに限定されるわけではない、反応条件の、当技術分野において認められている代替物による、日常的実験だけを用いての改変は、本出願の範囲内であることが理解されるべきである。
【0189】
本明細書において値および範囲が提供される場合は常に、これらの値および範囲に含まれるすべての値および範囲は、本発明の範囲内に含まれることになることが理解されるべきである。さらに、これらの範囲内に入るすべての値、ならびに値の範囲の上限または下限も、本出願によって企図される。
【0190】
以下の実施例は、本発明の局面をさらに例示する。しかし、これらは決して本明細書に示す本発明の教示または開示の限定ではない。
【実施例】
【0191】
本発明を、以下の実験例を参照することにより、さらに詳細に記載する。これらの例は例示のために提供するにすぎず、特に記載がないかぎり、限定を意図するものではない。したがって、本発明は決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきでなく、それよりも本明細書に提供する教示の結果明らかになる任意の、およびすべての変種を含むと解釈されるべきである。
【0192】
さらなる記載なしで、当業者であれば、前述の記載および以下の実施例を用いて、本発明の化合物を作成して利用し、特許請求する方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の作業実施例は、本発明の好ましい態様を具体的に示し、開示の残りをいかなる様式でも限定すると解釈されるべきではない。
【0193】
材料と方法
化学物質
IPAG、ハロペリドール塩酸塩、リムカゾール2塩酸塩、PB282塩酸塩、BD1047、BD1063、NE100、PRE-084塩酸塩、(+)-SKF10047塩酸塩、および(+)-ペンタゾシンはTocris(Minneapolis、MN)から入手した。(+)-ペンタゾシンはNational Institute on Drug Abuse(Bethesda、MD)から入手した。細胞膜透過性カルパインおよびカテプシン阻害剤E64dはSigma Aldrich(St. Louis、MO)から購入した。
【0194】
細胞株および形質移入
本明細書において評価および/または言及する細胞株には下記が含まれる:MDA-MB-468、MDA-MB-231、MCF-7、T47D、SKBR3、4T1、PC3、DU145、LNCaP、Panc1、HepG2、HCT116、BE2C、SH-SY5Y、K562、HEK293T、およびNIH3T3。すべての細胞株はATCCからのものである。細胞を、4.5g/lのグルコース、5%FCS、可欠アミノ酸およびペニシリン/ストレプトマイシンを含む、DMEM:F-12の1:1混合物中で維持した。ほとんどの検定で、薬物処理開始の約24時間前に細胞を播種した。
【0195】
ヒトベクリン1、ヒトATG5、ヒトp97/VCP、ヒトシグマ1、ヒトIRE1α、ヒトATF4、および対照siRNAはSanta Cruz Biotechnologyから購入した。siRNA形質移入(10nmole/ウェル)をINTERFERin(PolyPlus)またはoligofectamineにより、製造者の手順(InVitrogen)に従って実施した。
【0196】
細胞死検定
細胞死をトリパンブルー色素排除検定、切断カスパーゼ3(Asp175)および切断PARP(Asp214)免疫ブロットにより評価した。トリパンブルー色素排除およびヨウ化プロピジウム染色を用いて、全般細胞死を定量し、アポトーシス細胞死の存在を免疫ブロットにより確認した。所与の集団における死細胞のパーセンテージを、トリパンブルー陽性(死)細胞の数を定量し、トリパンブルー陽性および陰性細胞の総数で割ることによりもとめた。
【0197】
免疫ブロットおよび抗体
細胞を溶解し、10%グリセロール(体積/体積)、完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)、およびHaltホスファターゼ阻害剤カクテル(Pierce)を補足した改変RIPA緩衝液(25mM Tris-HCl pH7.6、150mM NaCl、1%NP-40、1%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.1%SDS)中でタンパク質を抽出した。約10〜20μgの界面活性剤可溶性タンパク質をNOVEX 10〜20%ポリアクリルアミドトリス-グリシンゲル(InVitrogen)上で分離した。免疫ブロットを、0.1%トゥイーン-20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート)および5%(重量/体積)ブロッティング等級脱脂粉乳(BioRad)を含む20mMトリス緩衝化137mM食塩溶液(pH7.6)中で実施した。Lumigen PS-3増強化学発光キット(GE Healthcare)を用いて、免疫ブロットしたタンパク質を可視化した。
【0198】
マウス抗-GFP、マウスβ-アクチン、およびウサギベクリン1、マウスATF4、ならびにすべてのホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体をSanta Cruz Biotechnologiesから購入した。ウサギポリクローナルLC3、ホスホ-p38MAPK(Thr180/Tyr182)、ホスホ-SAPK/JNK(Thr183/Tyr185)、IRE1α、ホスホ-eIF2α(Ser51)、GRP78/BiP、切断カスパーゼ3(Asp175)、および切断PARP(Asp214)はすべてCell Signaling Technologiesから購入した。
【0199】
オートファゴソーム形成の顕微鏡検査および定量
ヒトGFP-LC3発現プラスミド、pEGFP-LC3(Dr. Grazia AmbrosiniおよびDr. Gary K. Schwartz、MSKCCから供与)をMDA-MB-468に安定に形質移入し、0.5mg/ml G418硫酸塩で選択した。安定な集団を生成し、シグマ1発現ならびにシグマリガンドに対する自食作用および成長阻害応答について親MDA-MB-468と比較した。GFP-LC3転位(点形成)をMDA-MB-468(GFP-LC3)安定細胞集団において顕微鏡検査により評価した。顕微鏡検査に基づく実験のために、細胞をLab-Tek IIガラスチャンバースライド(Nalge Nunc International)上に播種した。24時間の薬物処理の後、細胞を、室温のカルシウムおよびマグネシウム含有Dulbecco改変リン酸緩衝化食塩溶液で洗浄し、室温のCytofix-Cytoperm溶液(BD Biosciences)で固定し、透過化処理した。GFP-LC3点の画像をZeiss Axioplan 2 Imaging広視野顕微鏡で、Axiovision LEソフトウェアを用いて取得した。点をFluoro-Chemソフトウェアパッケージ(Alpha Innotech)の点定量プログラムを用いて計数し、手動計数により並行して確認した。MDAMB-468(GFP-LC3)細胞におけるオートファゴソーム形成を、GFP-LC3点の平均数/GFP陽性細胞として定量した。
【0200】
自食フラックス検定
自食フラックス(オートリソソームカーゴの代謝回転)を、2つの以前に記載された方法を用いて評価した。脂質結合GFP-LC3は、リソソームと条件付きで融合するオートファゴソームに転位し、活性自食フラックスの場合には、LC3のオートリソソーム分解およびGFPの遊離をもたらす。このGFP-LC3分解検定において、切断されたGFPを免疫ブロットにより検出した。自食フラックスも、細胞透過性カルパインおよびカテプシン阻害剤E64dでオートリソソーム分解を阻害することにより検証した。この検定では、LC3IIの蓄積が自食フラックスの指標であった。
【0201】
統計分析
統計学的有意性を、Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて、一元配置分散分析と、続くボンフェローニの事後検定により決定した。
【0202】
実施例1:
自食作用の用量応答的活性化の誘導
シグマ1を自然に発現する、MDA-MB-468およびT47D乳腺癌細胞を、シグマ受容体アンタゴニストまたはアゴニストで処理した。すべての実験で、アンタゴニストは10μMの薬物による24時間の処理後に細胞サイズを約20%低減したが、アゴニストではそのような低減はなかった(
図11)。自食作用は細胞成長において役割を果たすという最近の証拠を考慮して、このプロセスを、シグマアンタゴニスト処理細胞において活性化されたかどうかを決定するために評価した。
【0203】
最初に、微小管関連タンパク質軽鎖3(LC3)脂質付加を検出するための確立された免疫ブロットに基づく検定を用いて、自食作用の活性化について試験した。これらの実験において、シグマアンタゴニスト(IPAG、ハロペリドール、リムカゾール、PB28)による処理はLC3を、LC3脂質結合およびオートファゴソーム形成の指標である、LC3IIに変換したが、アゴニスト(PRE-084、(+)-SKF10047、(+)-ペンタゾシン)では変換は見られなかった(
図4A)。これらの結果は、アミノ末端緑色蛍光タンパク質タグLC3(GFPLC3)の、オートファゴソーム形成に特徴的なGFPが濃縮された点として現れる、小胞構造への転位を可視化し、定量するために、広く用いられている顕微鏡検査に基づく検定によって確認した。一過性形質移入は擬似GFP-LC3凝集物を生じうるため、MDA-MB-468(GFP-LC3)の安定GFP-LC3形質移入集団を生成した。これらの細胞を漸増濃度のシグマ受容体アンタゴニストおよびアゴニストで24時間処理し、基準およびDMSO処理した対照と比較した(
図4B&4C)。
【0204】
シグマアンタゴニスト誘導性オートファゴソーム形成は、アンタゴニストの間の様々な効力で、用量応答性であった(
図4C)。24時間の処理後、40μMのIPAGおよびハロペリドール、ならびに100μMのリムカゾールおよびPB28で急峻な細胞死が起こった。EC
50レベルを算出する上で、これらの濃度で生じた細胞あたりの点の数を最大オートファゴソーム誘導レベル(最大効果、E
max)に設定した。4つのアンタゴニストすべてのE
maxは細胞あたりの点30〜35で、リガンドによって有意な差はなかった(
図4C)。しかし、シグマアンタゴニストの効力(EC
50±S.E.M.)はIPAG(9±3μM)、ハロペリドール(2±2μM)、リムカゾール(50±8μM)、およびPB28(52±9μM)で変動した(
図4C)。基準およびDMSO処理細胞は、それぞれ、細胞あたり4±1および5±1の点を生じた(
図4C)。アゴニストPRE-084、(+)-SKF10047、および(+)-ペンタゾシンは、それぞれ、最大100μMまでの薬物濃度で、細胞あたり6±2、5±1、および6±1以下の点を生じた(
図4C)。したがって、シグマ受容体アンタゴニスト処理は、用量応答性の様式でオートファゴソームを生じて、飽和レベルに達し、この結果は受容体仲介性効果に一致した。
【0205】
実施例2:
シグマ1アンタゴニスト関連自食作用のシグマ1RNAiによる阻害
シグマ1アンタゴニスト処理関連自食作用が実際にシグマ1仲介性であったことを確認するために、siRNAを用いてMDA-MB-468(GFP-LC3)細胞中のシグマ1受容体をノックダウンし、IPAG誘導性自食作用を評価した(
図5)。有意なシグマ1ノックダウンが、シグマ1選択的siRNAの形質移入後>72時間で検出可能であり、安定な、長いタンパク質半減期を示唆し、以前の報告と一致した。ノックダウンレベルは基準レベルの約20%に達した(
図5A)。
【0206】
オートファゴソーム形成(GFP-LC3点)および自食分解(GFP-LC3切断)を評価した。シグマ1単独のノックダウンはシグマ1リガンド非存在下でオートファゴソームの形成を誘導せず、細胞あたりの点は対照siRNA形質移入細胞では7±3であったのに比べて、6±2であった(
図5C)。10μM IPAGによる20時間の処理は、対照siRNA形質移入細胞で細胞あたり28±4の点を生じたが、シグマ1ノックダウン細胞では細胞あたり10±2の点への有意な阻害を示した(
図5C)。
【0207】
実施例3:
ERストレスの誘導およびUPRの活性化
シグマアンタゴニストがただちに自食作用を誘導するかどうか、またはそれが他の細胞事象の下流で活性化されるかどうかを次に調べた。シグマ1はER中に非常に多く含まれるため、次に調べたのはアンタゴニスト処理がERストレス仲介性UPRを誘導しうるかどうかであった。UPRのIRE1α-JNK1/2およびeIF2α-ATF4ブランチの成分ならびにUPR関連ERシャペロン、GRP78/BiPを、活性化UPRの指標として検定した。
【0208】
ストレス誘導性のマイトジェン活性化タンパク質キナーゼp38(p38MAPK)は、ERストレスに応答して活性化され、続いてリン酸化してアポトーシスを増強する、IRE1-TRAF2(TNF受容体関連受容体2)-ASK1(アポトーシスシグナル伝達調節キナーゼ1)シグナル伝達複合体の下流標的である。加えて、p38MAPKは基準および飢餓誘導性自食作用の制御において役割を有する。
【0209】
UPRを自食作用の用量応答性活性化と比較するために、前述のERストレスのマーカーすべてを、漸増用量のシグマ1リガンドによる処理後に評価した。シグマ1アンタゴニスト、IPAGはUPRを用量応答性様式で活性化した(
図6)。これとは対照的に、シグマ1アゴニストはこれらのマーカーのいずれも活性化しなかった(データは示していない)。興味深いことに、シグマ1アンタゴニスト誘導性ERストレスに対するUPRは、自食応答よりも低い用量で起こる(
図6)。事実、オートファゴソームを生じない用量の1μM IPAGによる処置は、UPRの少なくとも7つのマーカーの顕著な活性化を引き起こした(
図6)。これに対し、LC3脂質結合(すなわち、LC3II誘導)の平均EC
50は7μMで、ATF4、IRE1α、GRP78/BiPの誘導、ならびにeIF2α(Ser51)、JNK(Thr183/Tyr185)、およびp38MAPK(Thr180/Tyr182)のリン酸化のEC
50値は、それぞれ、0.5、0.9、1.4、2.3、1.6、1.7、および0.5μMであった。2回の独立の測定からの、これらの平均値は、UPRのシグマ1アンタゴニスト誘導は、オートファゴソームに必要とされるよりも3〜14分の1の低い濃度で起こることを示していた(
図6)。
【0210】
次に、自食作用がUPRの前または後のいずれで起こるかを調べた。細胞を10μM IPAGで1、6、12、および24時間処理した(
図7)。この実験で評価した6つのERストレスおよびUPRマーカーのうち、5つの顕著な誘導が1時間の処理で検出され、1つは1〜6時間の間に明らかに誘導された(
図7A〜D)。これとは対照的に、GFP-LC3点およびLC3II免疫ブロットにより測定した、オートファゴソームの有意な形成は、6〜12時間の間に検出された(
図7E)。
【0211】
実施例4:
UPRの阻害はシグマ1アンタゴニスト関連自食作用を防止する
用量応答および時間作用実験の結果は、ERストレス誘導性UPRが自食作用の上流に関わることを示唆した。しかし、これらの実験は自食作用を活性化するのにERストレスが必要であるとは示さなかった。UPRがシグマ1アンタゴニスト誘導性自食作用よりも先に起こり、それに必要であることを確認するために、UPRをIRE1αまたはATF4のsiRNA仲介性ノックダウンにより阻害した。これらの実験において、siRNAの形質移入の72時間後に、MDA-MB-468細胞を10μM IPAGで20時間処理した(
図8)。IRE1αのノックダウンは、オートファゴソーム形成の低減および自食分解を引き起こした(
図8A&8B)。細胞あたりのオートファゴソームの数は、IPAGで処理した場合の24±2から、IRE1αをノックダウンした場合の9±2に低減した(
図8C)。ATF4をノックダウンすると、IPAG処理により細胞あたり5±1のオートファゴソームが生じた(
図8C)。ノックダウン実験に加えて、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達の化学阻害剤、SP600125を用いて、UPRのIRE1α/JNKブランチを阻害した。IRE1αノックダウンと一致して、IPAG処理細胞培養物におけるSP600125の添加は、オートファゴソーム形成を23±2(IPAG単独)から7±1(IPAGおよびSP600125)に低減した(
図8D)。総合すると、これらのデータはシグマ1アンタゴニスト誘導性自食作用はUPR活性化を介して起こることを示唆した。
【0212】
実施例5:
シグマ1アンタゴニスト誘導性自食作用はベクリン1を必要とした
GFP陽性点形成および分解が実際に自食作用の産物であることを確認するために、本質的な自食作用タンパク質であるベクリン1のRNAi仲介性ノックダウンの効果を評価した。ベクリン1のノックダウンは点形成を有意に阻害し、細胞あたりの点の平均数をIPAG処理細胞では28±3から6±1に、ハロペリドール処理細胞では36±4から17±1に低減した(
図8)。シグマ1アンタゴニスト誘導性オートファゴソーム形成は、広く用いられるIII型ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ阻害剤の3-メチルアデニン(3-MA)によっても阻害された。3-MA(5mM)の添加は細胞あたりのIPAG誘導性の点の数を23±2から12±1に低減した(
図12A)。5mM 3-MA単独での処理は細胞あたり5±1の点を生じ、DMSO対照中で生じた4±2と有意差はなかった(
図12A)。
【0213】
実施例6:
シグマ1アンタゴニスト誘導性UPRおよび自食作用の阻害はアポトーシス細胞死を加速した
前述の結果は、UPRおよび自食作用が、シグマ1アンタゴニスト誘導性ERストレスに対する、それぞれ、一次および二次生存応答として機能しうることを示唆した。IPAGによる24時間の処理後の死滅MDA-MB-468細胞の比率(10±2%)は、DMSO処理(9±1%)対照細胞培養物と有意差はなかった(
図10)。しかし、48時間の持続処理の後、30±2%のIPAG処理細胞はアポトーシス細胞死を起こす(
図10)。72時間までに>75%のIPAG処理細胞が死滅した。このパターンと一致して、対照siRNA形質移入細胞は24時間のIPAGを耐えた(9±4%)が、IRE1αノックダウンによるUPRの阻害は24時間処理の時点でIPAGの細胞毒性効果を強化した(47±8%)(
図10C〜10D)。ATF4のノックダウンもIPAG誘導性アポトーシスを強化し、ウェルあたりの死細胞は30±9%であったが、ATF4ノックダウンだけでは細胞死滅率を有意に変更せず、ウェルあたりの死細胞は7±2%であった。したがって、IRE1αまたはATF4のsiRNAノックダウンによるUPRの阻害はオートファゴソーム形成を抑制し(
図8)、シグマ1アンタゴニスト仲介性アポトーシス細胞死を強化した(
図10C〜10D)。
【0214】
次に、siRNA仲介性ベクリン1ノックダウンまたは3-メチルアデニン(3-MA)による化学的阻害のいずれかによる自食作用阻害の効果を評価した。10μM IPAGによる24時間の処理は有意な細胞死を誘導せず(5±3%)、アポトーシスの証拠もなかったが、3-MA(5mM)またはベクリン1のsiRNAノックダウンによるオートファゴソーム形成の阻害は、24時間のIPAG処理で細胞死を引き起こし、ウェルあたりの死滅細胞は33%を超えた(
図10E〜10F)。ウェルあたりの死細胞のパーセンテージは、IPAG単独(5±2%)または3-MA単独(6±2%)による24時間処理の間で有意差はなかったが、IPAGおよび3-MAによる併用処理はウェルあたりの死細胞の数を24±5%に強化した(
図12B)。
【0215】
実施例7:
シグマ1受容体はERタンパク質プロセシング、細胞成長、および生存に関与するタンパク質と結合する
液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析(LC-MS/MS)技術および免役共沈降実験を実施して、シグマ1関連細胞因子を同定し、確認した。タンデムヘマグルチニン(HA)エピトープおよび6-ヒスチジン(His6)タグによる二重カルボキシ末端親和性タグシグマ1、シグマ1-HA-His6を含むプラスミド作成物を生成した。この二重タグシグマ1作成物は連続の高度に選択的なタンパク質精製手順を可能にした。このアプローチを用いて、前立腺腺癌(PC3、DU145)、乳腺癌(MDA-MB-468、MCF-7)、神経芽腫(BE(2)-C)を含む様々な腫瘍細胞株からシグマ1-HA-His6受容体複合体を単離した。銀染色により、シグマ1と同時精製されるいくつかのタンパク質が明らかとなった(
図13)。複合体のLC-MS/MS分析により、約80のシグマ1関連タンパク質が同定された。予備的データから、シグマ1関連タンパク質の約85%はERホメオスタシスおよびストレス応答と直接関連していることが判明した。これらの関連タンパク質の中にはGRP78/BiPおよびGRP94、ならびに少なくとも12のヒートショックファミリーシャペロンがあった。
【0216】
実施例8:
シグマ受容体アンタゴニスト処理はERストレスおよび小胞体ストレス応答の活性化を誘導する
ERホメオスタシス因子とのシグマ1関連に一致して、3つの前立腺癌細胞株(PC3、DU145、LaPC4)による予備的データから、ユビキチン化におけるERAD仲介性増大(PC3のハロペリドール処理のデータは
図4に示す)を暗示する、シグマアンタゴニスト処理によるユビキチン化タンパク質のレベル増大が判明した。これはユビキチン化タンパク質の蓄積、またはユビキチンリガーゼ活性の増大によると考えられる。ERストレス応答の進行をマーカー群によってモニターすることができ、これらの多くはUPRに直接連結していた。UPRを開始する最も広く調査されたセンサーはIRE1α、PERK、およびATF6で、これらはシグナルをエフェクターのカスケードに伝達する。これらのUPR 4エフェクターの多くは、タンパク質ホメオスタシスの維持に関与する、GRP78/BiPおよびGRP94などの、ERシャペロンの合成を誘導する転写因子として機能する。予備的実験により、PC3およびDU145 PCa細胞のシグマ1アンタゴニスト、IPAGおよびハロペリドールによる処理は、IRE1αおよびBiPレベルの顕著な誘導を引き起こすことが明らかにされた(ハロペリドールのデータは
図15に示す)。
【0217】
実施例9:
オートファゴソーム形成および自食分解
シグマアンタゴニス誘導性ERストレスは、PC3前立腺癌細胞を含む、いくつかの腫瘍細胞株において自食作用の活性化につながった(
図16)。予備的実験において、免疫ブロット検定を実施して、広く用いられているオートファゴソーム形成のマーカーである、微小管関連タンパク質軽鎖3(LC3II)の脂質結合型を検出した(
図16)。加えて、
図6のハロペリドールで見られるとおり、アミノ末端緑色蛍光タンパク質タグLC3(GFP-LC3)の、オートファゴソーム形成に特徴的なGFPが濃縮された点として現れる、小胞構造への転位を検出する、十分に確立され、広く用いられている顕微鏡検査に基づく検定を実施した。
【0218】
シグマアンタゴニストはERストレスを誘導し、これは次いで、UPRの進行性のステージを含む一連の段階を通じて自食作用につながる。シグマアンタゴニスト処理によって観察されるアポトーシスはおそらくERストレスによる。自食作用は、毒性タンパク質および損傷オルガネラを分解することにより、ストレスを受けた細胞をホメオスタシスへと復旧させるよう機能すると考えられる。しかし、自食作用の細胞保護能力を超えると、シグマアンタゴニスト処理細胞はアポトーシスへと進行しうる。しかし、乳腺癌細胞による最近の研究は、自食作用の遮断はシグマアンタゴニスト誘導性のアポトーシス死を顕著に増大するため、自食作用は生存応答として機能するとの仮説を裏付けている。この多層生存応答は、
図27の図によって最もうまく説明されているであろう。これは前立腺癌細胞株にも適用され;予備的データは、少なくともいくつかの前立腺癌細胞が同様の様式でシグマアンタゴニスト処理に応答しうることを示唆している。
【0219】
実施例10:
シグマ1受容体はERタンパク質プロセシング、細胞成長、および生存に関与するタンパク質と結合する
シグマ1の細胞的役割、そのER機能との関連と、したがってシグマアンタゴニストによるERストレス応答の誘導に関しては、ほとんど知られていない。そのメカニズムのより良い理解は、それが結合するタンパク質を同定することによって達成されるであろう。この問題に取り組むために、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析(LC-MS/MS)技術および免役共沈降実験を実施して、シグマ1関連細胞因子を同定し、確認した。タンデムヘマグルチニン(HA)エピトープおよび6-ヒスチジン(His6)タグによる二重カルボキシ末端親和性タグシグマ1、シグマ1-HA-His6を含むプラスミド作成物を生成した。この二重タグシグマ1作成物は連続の高度に選択的なタンパク質精製手順を可能にした。
【0220】
このアプローチを用いて、前立腺腺癌(PC3、DU145)、乳腺癌(MDA-MB-468、MCF-7)、神経芽腫(BE(2)-C)を含む様々な腫瘍細胞株からシグマ1-HA-His6受容体複合体を単離した。銀染色により、シグマ1と同時精製されるいくつかのタンパク質が明らかとなった(
図13)。複合体のLC-MS/MS分析により、約80のシグマ1関連タンパク質が同定された。予備的データから、シグマ1関連タンパク質の約85%はERホメオスタシスおよびストレス応答と直接関連していることが判明した。これらの関連タンパク質の中にはGRP78/BiPおよびGRP94、ならびに少なくとも12のヒートショックファミリーシャペロンがあった。
【0221】
実施例11:
シグマ受容体アンタゴニスト処理はERストレスおよび小胞体ストレス応答の活性化を誘導する
シグマ1は小胞体に多く含まれるためと、LC-MS/MSの結果を考慮して、シグマアンタゴニスト処理がERストレス応答を誘導しうるかどうかを調べた。ERホメオスタシス因子とのシグマ1関連に一致して、3つの前立腺癌細胞株(PC3、DU145、LaPC4)による予備的データから、ユビキチン化におけるERAD仲介性増大(PC3のハロペリドール処理のデータは
図4に示す)を暗示する、シグマアンタゴニスト処理によるユビキチン化タンパク質のレベル増大が判明した。これはユビキチン化タンパク質の蓄積、またはユビキチンリガーゼ活性の増大のいずれによるかを決定することができる。
【0222】
ERストレス応答の進行をマーカー群によってモニターすることができ、これらの多くはUPRに直接連結していた。UPRは、ERストレスに応答してERのタンパク質折りたたみおよびプロセシング能力を高める、いくつかのシグナル伝達経路を含む。UPRを開始する最も広く調査されたセンサー、IRE1α、PERK、およびATF6は、シグナルをエフェクターのカスケードに伝達する(Marciniak et al. 2006, Cell 134:769-781;Ron et al. 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8:519-529;Xu et al., 2005, J. Clin. Invest 115:2656-2664;Schroder et al., 2005, Annu. Rev. Biochem. 74:739-789)。これらのUPRエフェクターの多くは、タンパク質ホメオスタシスの維持に関与する、GRP78/BiPおよびGRP94などの、ERシャペロンの合成を誘導する転写因子として機能する(Marciniak et al. 2006, Cell 134:769-781;Ron et al. 2007, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8:519-529;Xu et al., 2005, J. Clin. Invest 115:2656-2664;Schroder et al., 2005, Annu. Rev. Biochem. 74:739-789)。予備的実験により、PC3およびDU145 PCa細胞のシグマ1アンタゴニスト、IPAGおよびハロペリドールによる処理は、IRE1αおよびBiPレベルの顕著な誘導を引き起こすことが明らかにされた(ハロペリドールのデータは
図15に示す)。
【0223】
実施例12:
前立腺癌細胞株
シグマアンタゴニスト処理に応答して増大した細胞保護シグナル伝達経路を同定することにより、ERストレスを誘導し、生存応答を選択的に遮断する、より有効なシグマアンタゴニストに基づく組み合わせが設計される(
図2)。この仮説を、DU145、PC3、LaPC4、LNCaP、MDA-PCa-2aおよび-2bを含む、広く試験されたアンドロゲン感受性および非感受性前立腺癌細胞株、ならびにCWR22系からの細胞株の混合セットを用いて試験する。DU145およびPC3による予備的結果ならびにLNCaP細胞株の他のシグマ受容体リガンド処理により報告された結果は、シグマアンタゴニスト仲介性増殖停止および細胞死に対して感受性である(Berthois, et al., 2003, Br. J. Cancer 88:438-446;Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886, Figure 1)。MDA-PCa-2aおよび-2b、ならびに選択したCWR22株を試験する;これらの細胞株は容易に検出可能なレベルの前立腺特異的抗原を発現することができ、異種移植実験においてアンドロゲン感受性腫瘍成長およびシグマリガンド応答を評価する際に特に有用でありうる。この細胞株の混合セットは、アンドロゲン感受性および非感受性前立腺癌株がシグマアンタゴニスト処理に同様に応答するかどうかの手がかりを提供する。
【0224】
DU145、PC3、およびLNCaP細胞株はシグマ1を発現すると記載されている(Berthois, et al., 2003, Br. J. Cancer 88:438-446;Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886)。MDA-PCa-2a、-2b、およびCWR22細胞株におけるシグマ1発現は不明である。しかし、シグマ1は広範囲の腫瘍細胞株で検出されている。これらの株のほとんどで、シグマ1結合部位の数は定量されていない。さらに、シグマ1結合部位のレベルと、シグマアンタゴニスト誘導性前立腺癌細胞死の感受性およびその動力学との間の相関は不明である。したがって、まず、前立腺癌細胞におけるシグマ1結合部位を、[
3H]-(+)-ペンタゾシンおよび[
3H]-ハロペリドールを用いての放射性リガンド結合検定により定量する。これらはシグマ結合部位の薬理学的特徴付けのための基準リガンドであり、市販されている。前立腺癌細胞膜の結合親和性(K
d)および1ミリグラムあたりの結合部位(B
max)を、他所に記載の標準のシグマ1結合検定プロトコルを用いて測定する(Ryan-Moro et al., 1996, Neurochem. Res. 21:1309-1314)。
【0225】
実施例13:
シグマ受容体リガンド
最初に、乳腺癌、神経芽腫、白血病、および前述の前立腺癌細胞株の3つの増殖を阻害し、その細胞死を誘導することが確認されている、プロトタイプのシグマリガンドの細胞ストレス誘導特性を特徴付けた。このリガンドのセットには下記が含まれる:ハロペリドール、IPAG、リムカゾール、およびPB28(Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886;Hayashi et al., 2008, Expert Opin. Ther. Targets 12:45-58)。これらの化合物は乳腺癌細胞株においてERストレス応答および自食作用を誘発することが明らかにされている。これら4つのシグマ受容体アンタゴニストは、異なる割合および異なる効力で自食作用を誘発する。これらはシグマ1とシグマ2サブタイプに対する選択性も異なる(Hayashi et al., 2008, Expert Opin. Ther. Targets 12:45-58;Berardi et al., 1996, J. Med. Chem. 39:4255-4260;Ferris et al., 1986, Life Sci. 38:2329-2337)。興味深いことに、シグマ1選択的化合物(ハロペリドールおよびIPAG)はシグマ2選択的化合物(リムカゾールおよびPB28)よりも強力なERストレス応答および自食作用の誘導物質である。これは、スピペチアンから誘導された新規の高度にシグマ1選択的なリガンドの効力を記載している最近の報告と一致し、抗腫瘍シグマリガンドのシグマ1選択性を裏付けている(Piergentili et al., J. Med. Chem. 53:1261-1269)。続いて、市販のプロトタイプのシグマ受容体アンタゴニストおよびアゴニストのより広いパネルを評価する。
【0226】
DU-145およびPC3細胞による予備的実験により、1つのシグマリガンドの単一用量、10μMハロペリドール(アンタゴニスト)で、単一の時点、すなわち24時間処理後に、UPRおよび自食作用の活性化が示される。したがって、ERストレス応答(ユビキチン化、UPR、および自食作用を含む)および細胞死の用量応答性の誘導を評価する。シグマリガンドの効力(EC
50)およびERストレス応答および細胞死の最大誘導(E
max)による有効性を確立する。続いて、有効なシグマリガンドの選択したセットのEC
20、EC
50、およびEC
80用量の時間-作用を評価する。時間-作用実験は、処理した細胞が低用量でのシグマ薬物誘導性ストレスに応答し、適応しうるかどうかを調べる助けとなる。本明細書において確立したEC
50およびE
max値を実験で用いて、薬物併用の相乗作用を評価する。
【0227】
実施例14:
シグマ受容体アンタゴニスト処理関連のユビキチン化タンパク質レベルの増大
他所に記載のとおり、小分子合成ペプチドプロテアソーム阻害剤MG-132の非存在下、および存在下で、ユビキチン化タンパク質レベルの時間および用量応答性の増大を評価するために、免疫ブロット検定を実施する(Korolchuk et al., 2009, Mol. Cell 33:517-527)。最初の免疫ブロット実験は、広く用いられている市販の抗ユビキチン抗体(クローンP4D1)で行う。他所に記載のとおり、確立された[
35S]-標識パルスチェイス実験手順を用い、緑色蛍光タンパク質タグユビキチン、Ub-GFPを用いてユビキチン化とUPS仲介性分解の速度を比較し、これを分解抵抗性の変異体ユビキチン、UbG76V-GFPと比較するために、さらなる実験を行う(Korolchuk et al., 2009, Mol. Cell 33:517-527)。
【0228】
これらの実験は、UPS誘導の用量応答および動力学を明らかにし、同様にシグマアンタゴニスト処理がユビキチン化を増大するか、またはユビキチン化タンパク質の分解を阻害するかを明らかにする。この計画のゴールのために、これらの検定を用いて、シグマアンタゴニスト処理に応答してのUPS仲介性分解の変化を評価し、プロテアソーム阻害剤をシグマアンタゴニストとの組み合わせで用いた場合の、その活性を測定し、制御する。ERストレスおよび自食作用の状況において、確立されたユビキチンリガーゼ検定プロトコルを用いる(Korolchuk et al., 2009, Mol. Cell 33:517-527;Korolchuk et al., FEBS Lett. 584:1393-1398;Gao et al., Autophagy 6 :126-137)。
【0229】
実施例15:
シグマ受容体アンタゴニスト処理関連のERストレスおよび小胞体ストレス応答の活性化
これらのストレス応答マーカーの誘導を免疫ブロットにより評価する。それらのほとんどに対する抗体が市販されている。UPRのIRE1α-JNK1/2およびeIF2α-ATF4ブランチの成分、ならびにUPR関連ERシャペロン、GRP78/BiP(
図15)、GRP94、およびORP150を、活性化UPRの指標として検定する(Marciniak et al., 2006, Physiol. Rev. 86:1133-1149;Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 8:519-529;Ni et al., 2007, FEBS Lett. 581:3641-3651)。
【0230】
翻訳停止はER中の折りたたまれていないタンパク質蓄積に対するストレス応答のもう1つの指標である。この応答を評価するために、免疫ブロット検定を実施する。4E-BP1およびeIF4Eのリン酸化は翻訳停止を反映している。有用性を乳腺癌において確認し、ここでERストレスのマーカー、IRE1αおよびGRP78/BiPの時間依存性の誘導がシグマアンタゴニストIPAG 35による処理中に観察される。これは翻訳の進行性の抑制を伴う。タンパク質翻訳停止を、[
35S]-タンパク質標識パルスチェイス実験でも評価する。このアプローチはシグマ薬物処理に応答しての、タンパク質分解を定量し、また翻訳停止を定量する。
【0231】
1つの態様において、すべての細胞株が検出可能なレベルのすべてのUPRおよびストレスマーカーを発現するわけではない(乳癌細胞株で経験したとおり)。例えば、UPR誘導の特徴であるPERKリン酸化は、多くの細胞株で検出不可能であり、これらにおいては他のマーカーによるいくつかの他のUPRマーカーが明らかに存在する。様々なシグマリガンドが異なるメカニズムによりUPRを誘発しうる。さらに、異なる細胞株がUPRの別個のブランチまたは別個のストレス応答経路を活性化することにより応答しうる。したがって、マーカーの広いパネルを評価し、UPR誘導の複数のマーカーが検出可能な細胞株を用いる。siRNA試験を実施して、シグマ1仲介性活性の有効性を認め、確認する。
【0232】
実施例16:
シグマアンタゴニスト処理に関連するオートファゴソーム形成および自食分解
シグマアンタゴニスト誘導性ERストレスは、PC3およびDU145前立腺癌細胞を含む、いくつかの腫瘍細胞株における自食作用の活性化を引き起こす(
図16)。本明細書の他所に記載の確立され、広く用いられている免疫ブロットおよび顕微鏡検査に基づく検定を実施して、シグマアンタゴニスト処理に対する前立腺癌細胞の自食応答を特徴付け、定量する(Klionsky et al., 2008, Autophagy 4:151-175)。シグマアンタゴニスト誘導性オートファゴソーム形成における相違を定性的および定量的に分析する。前述の前立腺細胞株からの安定なGFP-LC3形質移入体を、以前に記載したとおりに生成する。シグマアンタゴニスト誘導性の点が実際にオートファゴソームであり、擬似凝集物または小胞ではないことを確認するために、ATG5およびベクリン1などの基本的自食作用タンパク質のsiRNA仲介性ノックダウンによる対照実験を実施する(Klionsky et al., 2008, Autophagy 4:151-175;Kuma et al., 2007, Autophagy 3:323-328)。シグマアンタゴニストがカーゴタンパク質のリソソーム分解を誘導するかどうかを、本明細書および文献中に記載の、LC3分解を検出し、定量するための、2つの免疫ブロットに基づく検定を用いて判定する(Ron et al., 2007, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 8:519-529)。
【0233】
実施例17:
自食作用阻害剤およびシグマ受容体アンタゴニスト
シグマアンタゴニストはPC3およびDU145前立腺癌において自食作用を活性化する(PC3について
図16に示す)。基本的自食成分のRNAi仲介性ノックダウンによるオートファゴソーム形成もしくは自食分解の阻害または3-メチルアデニンを用いての自食作用の小分子阻害は、シグマアンタゴニスト仲介性アポトーシスの顕著な加速および強化を引き起こす。実験道具として有用ではあるが、3-メチルアデニンは良好な薬物様特性を有していないため、その臨床上の有用性は疑わしい(Huyer et al., 2004, J. Biol. Chem. 279:38369-38378)。
【0234】
HCQなどの確立された自食作用阻害剤に加えて、シグマアンタゴニストと、自食作用を阻害することが最近になって判明した、2つの広く用いられている化学療法剤、パクリタキセルおよびビンクリスチン(Groth-Pedersen et al., 2007, Cancer Res. 67:2217-2225)との組み合わせを調べる。ドセタキセル/シグマアンタゴニストの組み合わせも調べる。これらの自食作用阻害剤を含むインビトロ検定を、前述の前立腺腫瘍細胞株のセットにより実施する。細胞増殖および死滅を以下に記載するとおりに評価する。ドセタキセル、パクリタキセルおよびビンクリスチンならびに他所に記載のヒドロキシクロロキン用量により、インビボで、腫瘍異種移植実験を以下に記載するプロトコルに従って実施する(Amaravadi et al., 2007, J. Clin. Invest. 117:326-336;Amaravadi et al., 2007, Clin. Cancer Res. 13:7271-7279;Groth-Pedersen et al., 2007, Cancer Res. 67:2217-2225;Canfield et al., 2006, Mol. Cancer Ther. 5:2043-2050;Kim et al., 2009, Autophagy 5:567-568)。
【0235】
実施例18:
プロテアソーム阻害剤およびシグマ受容体アンタゴニスト
シグマアンタゴニスト処理細胞はユビキチン化タンパク質のレベル増大を示す(
図14)。この効果はおそらくはユビキチンリガーゼ活性の上昇またはプロテアソーム分解の阻害のいずれかによる(上記参照)。ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤と組み合わせたERストレス誘導剤の有効性を示す試験は、シグマアンタゴニスト薬物併用の可能性を示唆している。シグマ受容体アンタゴニストをボルテゾミブおよびMG-132(26Sプロテアソーム阻害剤およびカルパイン阻害剤)との組み合わせで、インビトロで評価する。これを前立腺腫瘍異種移植実験に拡大する(以下に記載)。
【0236】
実施例19:
分子シャペロン阻害剤およびシグマ受容体アンタゴニスト
予備的データから、シグマ1受容体が他の分子シャペロンと結合することが明らかにされている(
図13)。シグマ1が分子シャペロン能力において機能する場合、おそらくはシグマ1アンタゴニストは相手のタンパク質とのその物理的結合を変えることによってERストレスを誘導すると考えられる。
【0237】
アンタゴニスト誘導性ストレスは、前立腺腺癌細胞株においてタンパク質分解経路を活性化する(
図14)。さらに、予備的結果から、シグマ1とGRP94を含むHSP90ファミリータンパク質との間の直接の物理的結合が明らかにされている。シグマリガンドのアンドロゲン受容体(AR)またはAR関連シグナル伝達経路との相互作用の証拠は報告されていない。シグマ1のHSPファミリーシャペロンおよび他のAR関連タンパク質との結合を示す予備的データを考慮して、シグマアンタゴニストが、おそらくはその同族分子シャペロンとのAR結合を変えることにより、ARタンパク質レベルを調節することによってARシグナル伝達を調節しうるかどうかも評価する。
【0238】
実施例20:
細胞死検定
いくつかの単層培養細胞死検定を、資源の入手可能性ならびに細胞死のタイプおよび規模に関する実験的精度の必要性に応じて実施する。96穴形式での比色アラマーブルーまたはMTT(黄色テトラゾリウム塩)検定を、薬物組み合わせの細胞数を低減する能力についての初期スクリーンに用いる。これらの検定は広く用いられている市販のキットである。しかし、これらの検定は、低減した細胞数が細胞死もしくは増殖停止または両方の組み合わせのいずれによるかに、直接取り組むものではない。したがって、選択した薬物処理をトリパンブルー色素排除検定で続けて試験し、アラマーブルーまたはMTT検定で低減した細胞数が実際に細胞死によるものであることを確認する。細胞周期停止および細胞死の両方の定量が必要な場合、フローサイトメトリーに基づくヨウ化プロピジウム染色検定を実施する。細胞死がアポトーシスによるかどうかを、免疫ブロット、フローサイトメトリー、または顕微鏡検査でカスパーゼ3(Asp175)およびPARP(Asp214)切断を評価することによって判定する。これらも、アポトーシスを判定し、定量するために広く用いられている検定である。
【0239】
可能な時はいつでも、これらの細胞死検定と並行に、ERストレス応答および自食作用マーカーを評価する。トリパンブルー色素排除またはヨウ化プロピジウム染色検定のための細胞の一部およびさらなる生化学分析のためのタンパク質抽出用の一部を用いる。同じ処理試料からの細胞死、ERストレス、および自食作用を直接比較する。
【0240】
前立腺癌細胞をマウスに接種する前に、軟寒天腫瘍成長検定を実施する。軟寒天中で成長中の凝集した前立腺癌細胞の足場非依存性三次元成長は、ERストレス誘導剤に対して、接着した単層細胞培養とは異なる反応をしうるため、この検定は重要な移行実験である。最も有望な薬物組み合わせ検定を、続く前立腺異種移植において評価する。これらのインビトロ検定のすべてにおいて、薬物相乗作用をアイソボログラム検定により確認する(Zhao et al., 2004, Clin. Cancer Res. 10:7994-8004)(薬物相互作用の統計分析の項に記載)。
【0241】
実施例21:
マウス腫瘍異種移植モデル
インビボ構成要素は2つの主な実験群からなる:グループ1では、単剤化学療法剤としてのシグマリガンドの薬理学的特徴付けを行い;グループ2では、ユビキチンプロテアソームおよび自食作用阻害剤と組み合わせてのシグマリガンドの抗腫瘍効果を評価する。
【0242】
正常および去勢雄マウスの両方を用いて、前述のアンドロゲン依存性および非依存性前立腺細胞株のアンドロゲン感受性および非感受性成長を比較する。初期実験において、前立腺腫瘍の皮下注射を記載のとおりに実施する(Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886;Sirotnak et al., 2002, Clin. Cancer Res. 8:3870-3876)。しかし、皮下接種は前立腺腫瘍の微小環境の影響を評価しないと思われるため、前立腺癌細胞の前立腺内注射も実施する(Spruce et al., 2004, Cancer Res. 64:4875-4886;Sato et al., 1997, Cancer Res. 57:1584-1589;Moussavi et al., Cancer Res. 70:1367-1376)。これらの実験において、腫瘍成長を、MDAPCa-2a、-2b、LNCaP、および選択したCWR22細胞株の場合、前立腺特異的抗原レベルの測定によって追跡する(Navone, et al. 2000, Clin. Cancer Res. 6:1190-1197;Navone, et al. 1997, Clin. Cancer Res. 3:2493-2500;Fox et al., 2002, Clin. Cancer Res. 8:3226-3231;Agus et al., 1999, Cancer Res. 59:4761-4764;Denmeade et al., 2003, Prostate 54:249-257)。
【0243】
グループ1:単剤抗腫瘍化学療法剤としてのシグマアンタゴニストの薬理学的特徴付けには、以下に記載するいくつかの標準化アプローチが必要である。試験は主に、シグマ受容体薬物による処置に応答しての、腫瘍退縮または成長の阻害を評価する。薬物を腹腔内または静脈内注射により投与する。
【0244】
薬物の効力および有効性
効力は最大応答の半分を生じるのに必要な用量(ED
50)と定義され、その一方で有効性は検定の範囲内で達成される最大効果(E
max)と機能的に定義される。これらは、薬物の漸増用量を試験し、用量依存性腫瘍退縮または腫瘍成長の阻害を実験終点として測定することにより決定する。ED
50およびE
maxを決定するために、マウス3〜5匹の群および伝統的な用量応答を用いる。癌細胞の接種および続く処置に関連する可変性により、適切な統計学的評価のためにはセットあたり十分な数の動物を用いることが必須である。さらに、用量応答曲線には、応答の評価のために薬物濃度あたり十分な数の動物ならびに曲線を規定し、正確なED
50値および信頼限界を生成するために十分な数の薬物濃度が必要である。典型的な実験は4つの薬物濃度を含み、以前の利用に基づいて、再現性を確保し、信頼限界が狭い統計学的に有意なED
50を得るために、少なくとも3つの実験が期待される。評価するシグマアンタゴニストの少なくとも4つは、異種移植モデルにおける腫瘍成長の有効な阻害剤であることが確認される。
【0245】
単剤処置の統計分析
用いる統計分析は行う測定のタイプに依存する。単一の比較は、データに依存して、スチューデンツt検定、フィッシャー直接検定、またはマンホイットニーU検定のいずれかを用いて実施する。多重比較には分散分析(ANOVA)と、続く適切な事後分析が必要である。
【0246】
薬物可逆性
最終的に臨床処置プロトコルを設計し、開発するために、シグマアンタゴニストの薬理学的効果が可逆性か、または不可逆性かを調べることは重要である。可能性のある副作用の可逆性は特に重要な考慮すべき事項である。したがって、腫瘍成長が安定した時点で薬物処置を中止する実験のセットも実施し、これらのマウスにおける腫瘍成長を、持続的薬物処理を行っているマウスと同じ様式で評価する。
【0247】
グループ2:このグループでは、ユビキチンプロテアソームおよび自食作用を阻害する小分子化合物と組み合わせてのシグマアンタゴニストを評価する。
【0248】
前立腺腫瘍異種移植実験のための薬物組み合わせの選択
インビトロでの結果が、インビボで試験する薬物組み合わせの選択の指標となる。初期実験において、シグマアンタゴニストおよびHCQ(自食作用阻害剤)またはボルテゾミブ(プロテアソーム阻害剤)を含む組み合わせを用いる。ボルテゾミブおよびHCQ用量および処置間隔は、発表されたプロトコルが指標となる(Williams et al., 2003, Mol. Cancer. Ther. 2:835-843:Williams et al., 2003, Cancer Res. 63:7338-7344;Amaravadi et al., 2007, J. Clin. Invest. 117:326-336;Amaravadi et al., 2011, Clin. Cancer Res. 17:654-666)。シグマアンタゴニスト用量は上で実施した用量応答試験に基づく。薬物間の相互作用および腫瘍内の標的は、副作用を増大させずに有効性を最適化する機会を提供する。したがって、腫瘍成長阻害または退縮の有効性は主な読み出しであるが、シグマアンタゴニスト単独または薬物組み合わせの副作用の可能性をモニターする。
【0249】
薬物相互作用の統計分析
薬物相互作用をアイソボログラム分析を用いて評価する。これらのタイプの試験における主なゴールは、薬物相互作用/組み合わせが相乗作用または単なる相加効果を示すかどうかを調べることである。このアプローチにおいて、各薬物または各部位のED
50をもとめ、それらの比を確立する。この比を用いての相互作用の用量応答曲線を実施し、組み合わせのED
50をもとめる。次いで、結果をプロットする。個々の薬物それぞれのED
50値をX軸またはY軸のいずれかにプロットする。組み合わせのED
50をプロットに加える。これが2つの個々の測定をつなぐ線上にあれば、結果は相加性である。これが線の下であれば、相互作用は相乗的である。これが線の上であれば、それらは拮抗性である。用量応答曲線を前述のとおりに実施する。
【0250】
異種移植前立腺腫瘍の生化学的分析
各処置過程終了時に、死後の腫瘍ならびに肝臓および全脳を含む臓器を摘出する。腫瘍をUPR、ERストレス応答、ユビキチン化、細胞増殖、自食作用、およびアポトーシスの証拠について分析する。肝毒性および潜在的神経毒性などの副作用を予測するのを助けるために、シグマアンタゴニストおよび薬物組み合わせ処理の他の組織に対する効果を評価するための生化学試験用に臓器を得る。回収した前立腺腫瘍を下記のための3つの断片に分ける:(1)タンパク質抽出および生化学的分析(例えば、前述のマーカーおよびタンパク質を評価するための免疫ブロット);(2)RT-PCR実験のためのmRNA抽出(例えば、UPRのマーカーとしてXBP-1スプライシングを用いる場合、または転写もしくはmRNA安定性もしくは選択した代謝回転における変化が疑われる場合);(3)免疫組織化学(IHC)実験のためのホルマリン固定。IHC手順を用いてシグマ1(我々の研究室で生成したウサギポリクローナルおよびモノクローナル抗体、マウスおよびハムスターモノクローナル抗体)、UPRマーカー(GRP78/BiP)、自食作用(LC3II)、アポトーシス(切断カスパーゼ3)を評価する。
【0251】
本明細書において示すとおり、シグマ1アンタゴニストは小胞体(ER)ストレスおよび続く小胞体ストレス応答(UPR)を誘導したが、アゴニストは誘導しなかった(
図4〜8)。重度または長期のシグマ1アンタゴニスト誘導性ERストレスはUPRの細胞保護、適応能力を圧倒するようで、自食作用が二次応答として起こった。4つのシグマ1アンタゴニスト(IPAG、ハロペリドール、リムカゾール、PB28)による処理はオートファゴソーム形成およびフラックスを引き起こした。しかし、3つのアゴニストはどれもUPRまたは自食作用を誘導しなかった。シグマ受容体に対する親和性に加えて、これらの化合物は他の受容体系にも結合する。例えば、リムカゾールはDATドーパミン輸送体にシグマ受容体系よりも高い親和性で結合する。ハロペリドールはD2ドーパミン受容体およびシグマ受容体にほぼ同等の親和性で結合する。本試験で用いたシグマリガンドは、シグマ受容体サブタイプに対して様々な親和性および選択性を有することも記載されている。例えば、IPAG(K
i 5±2nM)はリムカゾール(K
i 80±22nM)よりも有意に高いシグマ1親和性を有する。興味深いことに、高いシグマ1結合親和性を有する2つのアンタゴニスト、ハロペリドールおよびIPAGは、自食作用の有意に強力な誘導剤であった(
図4)。RNAi検定の結果は、シグマ1がこの効果の主な媒介物質であることに一致している(
図5)。
【0252】
理論に縛られたくはないが、アゴニスト効果がないことの説明として可能性があるのは、構成性アゴニスト構造において受容体が優位であることであろう。または、IPAGおよびハロペリドール関連のオートファゴソーム形成はPRE084および(+)-SKF10047によって遮断されないため、アンタゴニストおよびアゴニストは受容体の異なる領域に結合し、それによって異なる効果を誘発する可能性もある。