(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397448
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】野菜の蒸煮装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
A47J27/16 G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-121307(P2016-121307)
(22)【出願日】2016年6月18日
(65)【公開番号】特開2017-221619(P2017-221619A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598060981
【氏名又は名称】エースシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
(72)【発明者】
【氏名】佐古 圭弘
【審査官】
西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−100866(JP,A)
【文献】
実開平06−079299(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜を連続的に搬送する搬送装置と、
野菜を蒸し煮する処理室を備え、
当該処理室は、前記搬送装置の搬送面の下方に配置された蒸気供給室と、前記蒸気供給室の上方に備えられた蒸気室と、前記蒸気供給室に過熱水蒸気を供給する1以上の配管ユニットを備え、
前記蒸気供給室は、前記搬送装置の搬送方向に連続して配置された2以上の小室を有し、
前記配管ユニットは、前記搬送装置の搬送方向に連続して配置された複数の小室単位で備えられ、
当該配管ユニットは、前記小室間の隔壁を貫通して前記搬送装置の搬送方向に配設される噴出口を備えた1以上の縦管と、前記小室内において前記縦管と直交する方向に配設される噴出口を備えた1以上の横管と、
を有する野菜の蒸煮装置。
【請求項2】
過熱水蒸気は前記配管ユニットの縦管及び横管からその側方及び/又は下方に向けて放出される請求項1に記載の野菜の蒸煮装置。
【請求項3】
さらに過熱水蒸気供給装置を備え、
100℃越140℃以下、好ましくは130℃以下の過熱水蒸気が前記配管ユニットから前記蒸気供給室に供給される請求項1又は2に記載の野菜の蒸煮装置。
【請求項4】
前記加熱水蒸気供給装置から過熱水蒸気が前記配管ユニットの横管に供給される請求項1〜3の何れか1項に記載の野菜の蒸煮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野菜の蒸煮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気は100℃で蒸発した飽和水蒸気を定圧のまま、100℃を超える温度に加熱した蒸気である。過熱水蒸気は高い顕熱を有し、短時間で食材を加熱調理できるという利点を有する。この利点を活かした調理方法が例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1に記載された方法は、調理容器内にて過熱水蒸気で食物を100℃〜350℃に過熱して調理する方法である。また、特許文献2に記載された方法は、100℃〜500℃の過熱水蒸気が供給された加熱室内にじゃがいもなどの野菜を投入する方法である。
【0003】
一方、過熱水蒸気を利用して食材を加工する連続式の装置が、例えば、特許文献3や特許文献4に開示されている。特許文献3に記載の装置は内部を2つのゾーンに仕切られた処理室と当該処理室内で食品を搬送するコンベアを備える。この装置では、一方のゾーンに100〜120℃の過熱水蒸気が供給され、他方のゾーンにはそれよりも高温である170〜200℃の過熱水蒸気が供給される。低温の過熱水蒸気が供給されるゾーンにおいて解凍などの前処理が行われ、解凍された食品は高温の過熱水蒸気が供給されるゾーンにおいてグリル調理が行われる。特許文献4に記載の装置は野菜などの乾燥具材を製造するための装置である。当該装置はコンベアの上下に配置された蒸気管を有する。蒸気管からは110℃〜400℃の過熱水蒸気が乾燥具材に向けて噴射される。これにより、予め乾燥させて得られた乾燥具材に、ロースト感のある香ばしさや焦げ目が付与される。
【0004】
さらに特許文献5には過熱水蒸気を用いた連続式の炊飯装置が記載されている。当該炊飯装置は過熱水蒸気が供給される処理室と当該処理室内で米を搬送するコンベアを備える。この装置では、処理室内に140〜150℃の過熱水蒸気と60〜90℃の温水が供給されることで、連続的に炊飯が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−90677号公報
【特許文献2】特開2002−247972号公報
【特許文献3】特開平3−83547号公報
【特許文献4】特開2000−228970号公報
【特許文献5】特開2001−169915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や2に記載の方法はいわゆるバッチ式の方法であって、大量の食材を加工することにおいて効率が悪い。また、特許文献2に記載されたように、バッチ式では130℃程度の比較的低温の過熱水蒸気を用いた場合には蒸らし工程を必要とし、蒸らし工程を経ない場合には300℃以上の過熱水蒸気でないと皮むきができない程度には調理できない。
【0007】
また、過熱水蒸気は、その温度が高くなると乾燥能力が強くなるという性質を有する。このために、特許文献2にも記載されているように、320℃のような高温の過熱水蒸気を用いると表面から焦げ目が付いたり、特許文献4に記載されているように乾燥野菜を用いると160〜170℃の比較的低い温度の過熱水蒸気でもロースト感や一部に焦げ目が付いたりする。一方、特許文献5に記載の装置は米の炊飯装置であって、炊飯の場合には米に吸水させる必要があり、ある程度高い温度の過熱水蒸気でないと炊飯できない。従って、この装置では野菜を具合よく蒸し煮することができなかった。
【0008】
本発明は上記の問題を解決すべくなされたものであって、本発明の解決しようとする課題は、過熱水蒸気を利用した野菜の蒸し煮に適した連続処理が行える蒸煮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る野菜の蒸煮装置は、野菜を連続的に搬送する搬送装置と、野菜を蒸し煮する処理室を備え、当該処理室は、前記搬送装置の搬送面の下方に配置された蒸気供給室と、前記蒸気供給室の上方に備えられた蒸気室と、前記蒸気供給室に過熱水蒸気を供給する1以上の配管ユニットを備え、さらに好ましくは100℃越140℃以下、好ましくは130℃以下の過熱水蒸気を前記配管ユニットに供給する過熱水蒸気供給装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る蒸煮装置によると、野菜が乾燥したり、焦げ目が付くことなく、連続的に野菜の蒸し煮が好ましい調理状態で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る蒸煮装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は同上の蒸煮装置の一部を破断した概略平面図である。
【
図3】
図3は本発明の他の実施形態に係る蒸煮装置の一部を破断した概略平面図である。
【
図4】
図4は本発明のさらに他の実施形態に係る蒸煮装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る蒸煮装置は、野菜を連続的に搬送する搬送装置と、前記野菜を蒸し煮する処理室を備える。処理室は、前記搬送装置の搬送面の下方に配置された蒸気供給室と、前記蒸気供給室の上方に備えられた蒸気室と、前記蒸気供給室に過熱水蒸気を供給する1以上の配管ユニットを有する。搬送装置は、無端ベルトとそれを駆動する一対のローラを有するベルトコンベアが好ましく用いられる。無端ベルトは、耐熱性と耐腐食性を有する材質から作製され、多数の孔を有する。例えば、ステンレス製の金網からなる無端ベルトである。搬送装置の搬送面、つまり蒸煮対象物が載置される往路は、蒸気供給室の長手方向に配置される(以下、本明細書においては、搬送装置の搬送方向を「長手方向」といい、それに直交する方向を「短手方向」という)。蒸気供給室は好ましくは無端ベルトの往路と無端ベルトの復路の間に配置される。もっとも、無端ベルトの復路の下方に蒸気供給室を配置してもよいが、この構成では、野菜との接触時の温度が低下しないように、蒸気供給量が多くされたり、供給される過熱水蒸気の温度が高めに設定される。
【0013】
蒸気供給室は長手方向に連続して配置された2以上の小室を有する。各小室は上面のみが開放された空間となっている。蒸気供給室の大きさや小室の数は当業者によって適宜設定され得る。小室(蒸気供給室)の短手方向の大きさは、搬送装置の搬送面の幅とほぼ同じか、それよりもわずかに小さいことが好ましい。また、それは搬送面の幅よりも大きくても差し支えない。この場合には、搬送面の側方から逃げる蒸気量が大きくなるので、好ましくは搬送面の側方から蒸気が逃げるのを防ぐためのカバーが備えられる。蒸気供給室は過熱水蒸気が供給される小室のみからなることが望ましいが、野菜と過熱水蒸気を接触させる際の温度やタイミングなどを調整するための過熱水蒸気が供給されない小室が蒸気供給室の両端などに備えられることもある。
【0014】
蒸気供給室には1以上の配管ユニットから過熱水蒸気が供給される。配管ユニットは、小室間の隔壁を貫通し、蒸気供給室の長手方向に配設される1以上の縦管を有する。また、配管ユニットは、縦管のみで構成されることもあるが、好ましくは、縦管と接続され、蒸気供給室の短手方向に配設される1以上の横管を有する。配管ユニットは、隣接する複数の小室を1つのまとまりとして過熱水蒸気を供給する。横管は縦管とほぼ直角に交差して縦管に接続されるか、T字を形成するように縦管に接続される。また、横管と縦管とで環を構成するように接続される。なお、本明細書において「接続」とは、配管ユニットから小室に過熱水蒸気が供給できるように接続されることを意味し、横管と縦管の接続部の全てが貫通している場合や、環を構成する場合には一部の接続部が閉塞されている場合も含む意味で用いられる。縦管及び/又は横管にはそれぞれ複数の噴出口が設けられる。全ての小室に横管が配設される場合には、横管にのみ噴出口が設けられることもある。噴出口は、配管ユニットの側方又は側方及び/又は下方に向けて過熱水蒸気が吹き出すように設けられ、噴出口から吹き出た過熱水蒸気は小室内に充満される。
【0015】
1の配管ユニットが過熱水蒸気を供給する小室の数は、好ましくは3〜7である。この数が大きくなると、調理温度の温度調整が困難になる。各小室の大きさは適宜設定される。1の配管ユニットは、1の縦管と1の横管を有する場合や、1の横管と2以上の縦管を有する場合、2以上の横管と1又は2以上の縦管を有する場合がある。1つの小室に対して1の横管が配設されることが好ましく、1の小室に対して2以上の横管又は縦管が配設される場合もあり得る。配管ユニットの数も蒸気供給室の大きさなど過熱水蒸気の必要量に応じて適宜設定され、その数は1つでもあり2以上でもあり得る。過熱水蒸気は、好ましくは横管に供給される。蒸煮装置は、配管ユニットから供給される過熱水蒸気の量や温度を制御する蒸気制御部を有し、蒸気制御部は各配管ユニットから供給される過熱水蒸気の供給量や温度を調整する。複数の配管ユニットが備えられた場合には、各蒸気制御部はそれぞれ独立して過熱水蒸気の供給量や温度を調整し、あるいは互いに連動して調整し得る。
【0016】
処理室は蒸気供給室の上方に野菜を蒸し煮する蒸気室を有する。蒸気室は蒸気供給室と一体となって処理室を構成する。蒸気室には水又は温水を供給するシャワーノズルなどの散水装置が備えられる場合もある。散水装置は野菜の過度な乾燥を防ぐための装置である
【0017】
野菜は処理室の外で搬送装置である無端ベルト上に載置され、蒸気室に搬入される。過熱水蒸気発生装置から供給された過熱水蒸気は、横管や縦管の側方ないし下方に吹き出され、小室を充満する。過熱水蒸気は各小室から上方に流れ、載置面上の野菜と接触する。過熱水蒸気過熱水蒸気により蒸し煮された野菜は搬送装置によって処理室外に搬出される。
【0018】
過熱水蒸気発生装置からは、100℃を越え140℃以下、好ましくは130℃以下の過熱水蒸気が蒸気供給室に供給される。本発明において過熱水蒸気とは100℃の飽和水蒸気を定圧下でさらに100℃よりも高い温度に過熱して得られる水蒸気を意味する。本発明においては、野菜に接触させる際の温度が140℃以下、好ましくは130°以下であることが望まれる。140℃を越えると、野菜が乾燥したり、乾燥しすぎて表面に焦げ目が付く可能性が高くなる。また、過熱水蒸気を野菜に向けて噴射するのではなく、蒸気供給室の小室に充満した過熱水蒸気と接触させる必要がある。野菜に向けて噴射させると、局所的に野菜が加熱され、均一な蒸し煮が行えなくなる。このために、配管ユニットに設けられた噴出口は、縦管の側面から下面にかけて設けられる。また、多くの場合では散水をする必要がないが、必要に応じて散水が行われる。
【0019】
過熱水蒸気と接触させる時間は、過熱水蒸気の温度や野菜の種類、カットされた厚み等によっても調整され得るが概ね1分〜30分程度である。接触時間は、搬送路の長さや搬送速度によって調整され得る。
【0020】
本発明において蒸煮され得る野菜は、蒸し煮することで可食可能な食材であれば足りる。野菜は、例えば大根や人参、ごぼう等の根菜類であり、玉葱やアスパラガスなどの茎菜類、キャベツや白菜、ほうれん草などの葉菜類、カリフラワーやブロッコリーなどの花菜類、大豆やインゲンなどの豆類、椎茸やしめじなどのきのこ類でもあり得る。野菜は生の野菜であれば特段の制約はない。また、既に蒸しやその他の調理が加えられた野菜であっても差し支えない。蒸し煮に際しては水で予め濡らしておくことや調味による味付けなどの処理も特段必要としないが、蒸し煮された後にそのままで摂取されるので、蒸し煮前に付着した土やほこりなどを除去しておくことが望ましく、必要に応じて皮を剥いたり、適当な大きさにカットしておくことが望まれる。また、散水時、水やお湯に替え、あるいは水やお湯と共に味付けされた調味液を散布してもよい。
【0021】
本発明の蒸煮装置では、処理室の長手方向に過熱水蒸気が供給される複数の小室が配置され、小室を充満した過熱水蒸気が野菜に接触するので、100℃越140℃以下の低い温度の過熱水蒸気によって、乾燥したり焦げ目が付くことなく野菜の蒸し煮が良好に行える。
【0022】
次に添付の図面を参照しながら、本発明について具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の一実施形態である蒸煮装置1の概略断面図、
図2は同蒸煮装置1の一部を破断した概略平面図である。蒸煮装置1は野菜を連続的に蒸し煮する装置であり、当該蒸煮装置1は、野菜が蒸し煮される処理室10と、野菜を搬送するコンベア30と、図示しない過熱水蒸気発生装置と、図示しない蒸気制御部を備える。
【0024】
処理室10はコンベア30の搬送面の往路面(野菜が載置される面)の下方に配置された蒸気供給室20と、蒸気供給室20の上方に配置された蒸気室11と、蒸気供給室20に過熱水蒸気を供給する2つの配管ユニット40を有する。図に示す蒸気供給室20はその長手方向に連続して配置された過熱水蒸気が供給される6つの小室21と、蒸気供給室20の両端に過熱水蒸気が供給されない2つの小室22を有する。過熱水蒸気が供給されない小室22と過熱水蒸気が供給される小室21は隔壁25で区切られている。蒸気供給室20は、蒸気室11とによってコンベア30の往路面を挟む位置にあり、蒸気室11の下面と蒸気供給室20の上面はほぼ同じ大きさである。つまり、コンベア30の搬送面は蒸気室11と蒸気供給室20とから一体に形成される蒸煮室を上下に二分している。
【0025】
蒸気室11の両端には野菜を搬入又は搬出させるための開口がそれぞれ設けられ、野菜の搬入口13と搬出口14となっている。搬入口13や搬出口14には蒸気遮断用のカーテン(図示せず)が必要に応じて備えられる。カーテンは柔軟性及び耐熱性のある素材から作製され、野菜の出入りを妨げない。処理室10は蒸気室11の上部に排気口12を有している。また、蒸気室11には、コンベア30の搬送面の上方に散水用の複数のシャワーノズル15が備えられている。
【0026】
2つの配管ユニット40のそれぞれは、1つの小室21内に短手方向に配設された1本の横管41と、横管41とほぼ直角に交差して配設され、横管41と接続された2本の縦管42を有する。過熱水蒸気発生装置からの配管(図示せず)は横管41に接続される。2本の縦管42は横管41が配設された小室21から、小室21を隔てる隔壁23を貫通してその両側にある2つの小室21に延びており、各配管ユニット40は蒸気供給室10の長手方向に連続して配置された3つの小室21に過熱水蒸気を供給する。つまり、3つの小室21が1つの蒸気供給単位(ユニット)を構成し、この装置では2つの蒸気供給単位が構成されている。蒸気制御部は2つの蒸気供給単位でそれぞれ独立して供給する蒸気量や温度を調整する。
【0027】
コンベア30は処理室10の外部に配置された一対のローラ31と、一対のローラ31によって駆動される無端ベルト32を備える。無端ベルト32の往路は搬送面として使用される。無端ベルト32はステンレス製の金網から作製されている。コンベア30の両端は処理室10の外に位置しており、無端ベルト32に載置された野菜は搬入口13から処理室10内に搬送され、処理室10内を矢印方向に搬送される。蒸し煮された野菜は搬出口14から処理室10外に搬送される。無端ベルト32の復路は蒸気供給室20の下方に位置し、コンベア30の処理室10の外に出た部分はカバー33で覆われている。
【0028】
過熱水蒸気発生装置から供給された過熱水蒸気は、横管41と縦管42の噴出口(図示せず)から、小室21の全体が過熱水蒸気で満たされるように小室21の横方向及び下方向けて小室21内に供給される。各小室21に供給され、各小室21を充満した過熱水蒸気は小室21から蒸気室11に向かって上方に流れる。コンベア30によって搬送された野菜は、蒸気室11内で過熱水蒸気によって蒸し煮された後、処理室10の外に搬出される。
【0029】
当該蒸煮装置1(蒸気室内の長さが約2m、蒸し煮時間5分)を使用して、カットしたほうれん草を蒸し煮したところ、150℃ではパリパリと乾燥した部分が目立ったが、120℃ではほどよく蒸されていた。また、色あせも少なくほうれん草の緑色が保たれていた。また、1cm程度の厚みにスライスしたサツマイモを蒸し煮したところ、150℃では乾燥気味であったが、140℃ではほどよく蒸し煮されていた。なお、いずれの場合も散水しなかった。
【実施例2】
【0030】
図3は本発明の他の実施形態に係る蒸煮装置1の一部を破断した概略平面図である。この装置では、過熱水蒸気発生装置からの配管(図示せず)が接続された横管41に接続された2本の縦管42のうち1本の縦管42は、それと十字状に交差して接続され、残る1本の縦管42はそれとT字状に交差して接続されている。さらに2本の縦管42の両端は小室21の短手方向に配置された横管43で接続され、配管ユニット40から蒸気を供給する蒸気管がループ状に構成されている。その結果、蒸気供給単位を構成する3つの小室にはそれぞれ横管41又は横管43が配置される。縦管42と横管41,43の接続部は閉塞されておらず、過熱水蒸気は横管41から縦管42へ、そして、縦管42から横管43へ流れる。この態様では、全ての小室21において横管43又は横管41から過熱水蒸気が短手方向に供給されるので、小室21間における温度のばらつきが抑えられ、より均一に蒸し煮が行える。従って、130℃以下、例えば110℃程度のより低い温度の過熱水蒸気による加熱が良好に行われる。
【実施例3】
【0031】
図4は本発明のさらに他の実施形態に係る蒸煮装置1の概略断面図である。この蒸煮装置1は、無端ベルト32の復路の下方に蒸気供給室22が設けられ、処理室内10に無端ベルト32の往路及び復路が配置されている点で、実施例1の蒸煮装置1と異なっている。このように、蒸気供給室20から供給された過熱水蒸気が無端ベルト32の往路及び復路を通過する構成も採用され得る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る野菜の蒸煮装置を利用することで、焦がさずに野菜を連続的に蒸し煮することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 処理室
11 蒸気室
20 蒸気供給室
21 過熱水蒸気が供給される小室
30 コンベア
32 無端ベルト
40 配管ユニット
41 横管
42 縦管