(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水溶性キトサンは塩酸塩を備えており、前記浸透圧重量モル濃度低減剤はヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを備えており、前記リン酸塩含有溶液はグリセロールリン酸を備えている、請求項1に記載の副鼻腔ステントペースト。
前記副鼻腔ステントペーストは潤滑剤又は湿潤剤を更に備えており、前記潤滑剤又は前記湿潤剤は総ペースト重量の1重量%から10重量%である、請求項1に記載の副鼻腔ステントペースト。
前記副鼻腔ステントペーストは、引っ張り試験機を1mm/秒の分離速度で作動させて使用し、前記ペーストの試料を間にして4.4ニュートンの圧縮力を用いて互いに圧縮されている2つのコラーゲン被覆ゴム製半球体を分離させる場合に、5グラムから80グラ
ムの間の力が必要になる接着強度を有している、請求項1に記載の副鼻腔ステントペースト。
前記水溶性キトサンは塩酸塩を備えており、前記浸透圧重量モル濃度低減剤はヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを備えており、前記リン酸塩含有溶液はグリセロールリン酸を備えている、請求項8に記載の方法。
前記キトサンステント材ペーストは潤滑剤又は湿潤剤を更に備えており、前記潤滑剤又は前記湿潤剤は総ペースト重量の1重量%から10重量%である、請求項8に記載の方法。
前記水溶性キトサンは塩酸塩を備えており、前記浸透圧重量モル濃度低減剤はヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースを備えており、前記リン酸塩含有溶液はグリセロールリン酸を備えている、請求項13に記載の使用方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0004]伝統的な詰め物技法よりも少ない侵入及び少ない痛みで術後の副鼻腔の通り道を一時的に封止する、ステント留置する、又はそれ以外に保護する場合の有望な技法として副鼻腔シーラント又は他の生物学的材料が登場してきている。
【0006】
[0005]或る一定の期間に亘って溶解してゆく又はそれ以外に分解してゆく詰め物又は生体材料のステントが望ましい。詰め物又はステントは、望ましくは、手袋をした片手だけを使って適した計量分配装置(例えばシリンジ)を通して計量分配できるようになっているべきである。詰め物又はステントは、更に、望ましくはすぐに使用できる状態をした注入可能又は押し出し可能な組成物として提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0006]本発明は、1つの態様では、副鼻腔ステントペーストであって、室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間、を有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサン又はその誘導体及と浸透圧重量モル濃度低減剤とを備えている副鼻腔ステントペーストにおいて、浸透圧重量モル濃度低減剤は水溶性キトサンと架橋結合していない、副鼻腔ステントペーストを提供している。
【0008】
[0007]本発明は、別の態様では、キトサンステント材ペーストを調製するための方法であって、
水溶性キトサン又はその誘導体と浸透圧重量モル濃度低減剤とをリン酸塩含有溶液中に混合及び溶解させて、室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間、を有するペーストを提供する段階を備えている方法において、浸透圧重量モル濃度低減剤は水溶性キトサンと架橋結合していない、
キトサンステント材ペーストを調製するための方法を提供している。
【0009】
[0008]本発明は、更に別の態様では、ステント留置のための方法であって、
a)室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、及び約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、を有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサン又はその誘導体と浸透圧重量モル濃度低減剤とを備えている組成物を提供する段階において、浸透圧重量モル濃度低減剤は水溶性キトサンと架橋結合していない、組成物を提供する段階と、
b)保護的な詰め物、層、又はステントを形成するようにペーストを鼻又は副鼻腔の部位上へ塗布する段階において、ペーストは鼻又は副鼻腔の部位へ接着し少なくとも1日間の滞留時間を有する、ペーストを塗布する段階と、
を備えている方法を提供している。
【0010】
[0009]本発明は、或る追加の態様では、内部組織又は内部手術部位をステント留置するためのペースト組成物の使用であって、組成物は、室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間、を有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサン又はその誘導体と浸透圧重量モル濃度低減剤とを備えている、ペースト組成物の使用において、浸透圧重量モル濃度低減剤は水溶性キトサンと架橋結合していない、ペースト組成物の使用を提供している。
【0011】
[0010]開示されているペースト、ステント、方法、及び使用は、特に、鼻及び副鼻腔の手術に有用である。
本願発明の実施形態は、例えば、以下の通りである。
[形態1]
副鼻腔ステントペーストであって、室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間、を有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサン又はその誘導体と浸透圧重量モル濃度低減剤とを備えている副鼻腔ステントペーストにおいて、前記浸透圧重量モル濃度低減剤は前記水溶性キトサンと架橋結合していない、副鼻腔ステントペースト。
[形態2]
キトサンステント材ペーストを調製するための方法であって、
水溶性キトサン又はその誘導体と浸透圧重量モル濃度低減剤とをリン酸塩含有溶液中に混合及び溶解させて、室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間、を有するペーストを提供する段階を備えている方法において、前記浸透圧重量モル濃度低減剤は前記水溶性キトサンと架橋結合していない、
キトサンステント材ペーストを調製するための方法。
[形態3]
ステント留置のための方法であって、
a)室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、及び約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、を有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサン又はその誘導体と浸透圧重量モル濃度低減剤とを備えている組成物を提供する段階において、前記浸透圧重量モル濃度低減剤は前記水溶性キトサンと架橋結合していない、組成物を提供する段階と、
b)保護的な詰め物、層、又はステントを形成するように前記ペーストを鼻又は副鼻腔の部位上へ塗布する段階において、前記ペーストは前記鼻又は副鼻腔の部位へ接着し少なくとも1日間の滞留時間を有する、ペーストを塗布する段階と、
を備えている方法。
[形態4]
内部組織又は内部手術部位をステント留置するためのペースト組成物の使用であって、前記組成物は、室温で、少なくとも4のpH、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間、を有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサン又はその誘導体と浸透圧重量モル濃度低減剤とを備えている、ペースト組成物の使用において、前記浸透圧重量モル濃度低減剤は前記水溶性キトサンと架橋結合していない、ペースト組成物の使用。
[形態5]
前記水溶性キトサンは塩酸塩を備えている、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態6]
前記水溶性キトサンは総ペースト重量の約3重量%から約20重量%である、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態7]
前記水溶性キトサンは総ペースト重量の約12重量%から約18重量%である、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態8]
前記水溶性キトサンは約5kDaから約2000kDaの数平均分子量を有している、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態9]
前記水溶性キトサンは約30kDaから約400kDaの数平均分子量を有している、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態10]
前記浸透圧重量モル濃度低減剤はヒドロキシル官能性セルロース又はアルキル修飾型セルロースを備えている、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態11]
前記ヒドロキシル官能性セルロース又は前記アルキル修飾型セルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースである、形態10に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態12]
前記浸透圧重量モル濃度低減剤は総ペースト重量の約1重量%から約20重量%である、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態13]
前記リン酸塩含有溶液は9から12のpHを有するリン酸緩衝生理食塩水である、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態14]
滅菌包装体に入っている何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態15]
電子ビーム放射又はガンマ線放射によって滅菌されている形態14に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態16]
引っ張り試験機を1mm/秒の分離速度で作動させて使用し、前記ペーストの試料を間にして約4.4ニュートンの圧縮力を用いて互いに圧縮されている2つのコラーゲン被覆ゴム製半球体を分離させる場合に、約5グラムから約80グラムの間の力が必要になる接着強度を有している、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態17]
前記ペーストは1又はそれより小さい細胞毒性評点を有する無細胞毒性である、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態18]
前記リン酸塩含有溶液はグリセロールリン酸を備えている、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態19]
潤滑剤又は湿潤剤を更に備えている何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態20]
前記潤滑剤又は前記湿潤剤はグリセロールである、形態19に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態21]
前記潤滑剤又は前記湿潤剤は総ペースト重量の約1重量%から約10重量%である、何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態22]
すぐに使用できる状態をした組成物として包装されている何れかの上記形態に記載のペースト、方法、又は使用。
[形態23]
前記鼻又は副鼻腔の部位に塗布されている前記ペーストを潅注する段階を更に備えている、形態3又は形態5から形態22の何れかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0013]図面の様々な図の中の同様の符号は同様の要素を指し示す。図面中の要素は縮尺合わせされていない。
[0014]次の詳細な説明は、一部の特定の実施形態を説明しており、制限を課す意味に取られてはならない。本明細書の中の全ての重さ、量、及び比は、別途特に指摘されていない限り重量によるものである。以下に示されている用語の意味は次の通りである。
【0014】
[0015]「接着」という用語は、身体構造又は人工器官材料が組織へ一体に粘着すること、組織が組織へ一体に粘着し長期間密接に接触した状態にあること、又は身体構造、人工器官材料、又は組織同士を通常は開放空間を跨いで互いに接続する組織の形成、を指す。
【0015】
[0016]「抗微生物性の」という用語が物質に関して使用されている場合、それは、当該物質が、例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、緑膿菌、又は大腸菌の様な、細菌を殺すことができる、又はその成長を有意に抑制又は制御することができる、という意味である。
【0016】
[0017]「生体適合性の」という用語が物質に関して使用されている場合、それは、当該物質が身体への有意な有害効果又は悪影響をもたらさないという意味である。
[0018]「生体分解性の」という用語が物質に関して使用されている場合、それは、当該物質が生体内で分解又は侵食してより小さい化学的又は物理的な種を形成するという意味である。その様な分解プロセスは、酵素的、化学的、又は物理的であってもよい。
【0017】
[0019]「キトサン」という用語は、ランダムに分散したβ−(1−4)−結合D−グルコサミン(脱アセチル化)及び随意的なN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化)のモノマー単位を含有する多糖類ポリマーを指し、キトサン誘導体であって当該ポリマーの1つ又はそれ以上のヒドロキシル基又はアミン基が誘導体の溶解度又は粘膜接着の特性を改変するように修飾されているキトサン誘導体を含む。
【0018】
[0020]「共形の」という用語が組織又は他の身体構造へ塗布されるペーストに関して使用されている場合、それは、ペーストがそれを塗布された面積を覆って実質的に連続する層を形成することができるという意味である。
【0019】
[0021]「止血材」という用語は血流を停止させる装置又は材料を意味する。
[0022]「粘膜接着性の」という用語が物質に関して使用されている場合、それは、当該物質が上皮組織を覆って粘膜へ接着しようとするという意味である。
【0020】
[0023]「鼻又は副鼻腔の」という用語は、限定するわけではないが、鼻孔(nostrils又はnares)、鼻甲介(nasal concha又はturbinates)、前頭洞、蝶形骨洞、及び上顎洞、副鼻腔口、及び鼻咽頭、を含め、鼻及び副鼻腔の空洞部内の正常なら空気が満ちている通路及び房を画定している様々な組織を指す。
【0021】
[0024]「不透明な」という用語が材料に関して使用されている場合、それは、普通の頭上にある照明が約4mm厚の材料層を透過されないことを意味する。
[0025]「浸透圧重量モル濃度」という用語は、凝固点降下オスモメーターを使用して測定される、溶媒1キログラム当たりの溶質のオスモル数を意味する。
【0022】
[0026]「ペースト」という用語が物質に関して使用されている場合、それは、当該物質が見るからに均質、無孔、不透明な材料であって、例えば歯磨きペーストと同様の柔らかで延ばしたり広げたりできる粘稠度と、材料が鼻組織又は副鼻腔組織のステント留置(例えば離隔保持)で使用されるのに適切となるような粘度と、を有している材料であることを意味する。不透明ゲルはペーストであるとされる。自由に流動する乾燥した固体粒子の集合体、延ばせない固形物、多孔質スポンジ、透明ゲル、液体、又は噴霧可能な組成物は、ペーストではないということになる。
【0023】
[0027]「保護的な」という用語が組織又は他の身体構造へ塗布されるペーストに関して使用されている場合、それは、当該ペーストが、負傷した、炎症のある、又は外科的に修復された組織面を、例えば、炎症応答の変調、食菌作用、粘膜リモデリング、繊毛再生(reciliation)、又は他の全面的又は部分的な正常機能復元、の様な1つ又はそれ以上の治癒機序を通じて正常な状態へ戻すのを支援することができるという意味である。
【0024】
[0028]「滞留時間」という用語が組織又は他の身体構造へ塗布されるペーストに関して使用されている場合、それは、巨視的観察下にペースト又はその一部が生体内でその場に留まっている時間的期間を意味する。
【0025】
[0029]「室温」という用語は20−25℃の温度を意味する。
[0030]「薄い」という用語が組織又は他の身体構造の上の保護的な層に関して使用されている場合、それは、約5ミリメートル未満の平均厚さを有しているという意味である。
【0026】
[0031]「張度」という用語が外的物質に対する細胞の応答(例えば、耳、鼻、及び咽喉に見られる様な繊毛のある組織)に関して使用されている場合、それは、所与の膜を横断して浸透力を働かせる容量を有する溶質濃度の総和を指す。細胞膜を横断することのできない溶質が浸透力を働かせる。細胞膜に関しては物質の溶質濃度に依存して張度は「高張性」、「低張性」、又は「等張性」と呼称されることもある。「高張性」は細胞膜の外により高い溶質濃度を有する物質を指す。そういうものとして、当該物質が細胞膜に接触したとき、細胞内の水は細胞から外へ出て行き細胞膜の外の溶質濃度を平衡させる傾向を有することになる。「低張性」は細胞膜の外により低い溶質濃度を有する物質を指す。そいうものとして、細胞の外からの水は細胞の中へ入ってゆき、細胞内部の溶質濃度の平衡を図ろうとして腫脹を引き起こす。「等張性」は物質の溶質濃度が物質が接触することになる細胞と同じであることを指す。そいうものとして、それは細胞と生理学的一体にあると考えられ、故に水の純流動は無い。
【0027】
[0032]「粘度」という用語が物質に関して使用されている場合、それは、当該物質が応力に曝されたときに流動しようとする傾向にどこまで抗うかの程度である。粘度は、特定の応力を物質へ掛ける円錐平板粘度計を用いて測定することができ、結果としての応力変形又は抵抗はASTM F2103−11(第5部)に従って測定される。粘度の単位はパスカル−秒(Pa.s.)として報告される。開示されているペーストについて、粘度の値はペーストを滅菌した後に確定され報告されている。
【0028】
[0033]開示されているペースト又は方法は、リン酸塩含有溶液中に溶解させた高濃度の水溶性キトサン(例えばキトサン塩)及び浸透圧重量モル濃度低減剤を含んでおり、当該ペーストは少なくとも4のpHを有している。開示されているペーストは、塗布されたときに視認し易くなるオフホワイト乃至は黄色がかった着色を有しているのが望ましい。開示されているペーストは不透明であるのが望ましい。開示されているペーストは、更に、すぐに使用できる状態をした保存安定性のある注入可能又は押し出し可能な形態で提供されていて、調製が不要であるか又は最小限の調製しか必要としないのが望ましい。浸透圧重量モル濃度低減剤は、キトサンでもなければキトサンと架橋結合可能な浸透圧重量モル濃度低減剤でもないのが望ましい。ペーストは望ましいことに架橋結合剤を含んでいないので長期間保存でき、塗布前に更に水和段階、混合段階、又は同様の調製段階を必要としないのが望ましい。
【0029】
[0034]開示されているペーストは、最初は固体である成分(例えば水溶性キトサン及び浸透圧重量モル濃度低減剤)をリン酸塩含有溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS))中に混合又は溶解させることによって調製することができる。ペーストは、室温(例えば約20℃から約25℃)で成分が可溶化して形成され、室温ではペーストのまま留まる。
【0030】
[0035]
図1を参照して、開示されているペースト又は方法は、例えば患者の鼻又は副鼻腔の空洞部100であって、鼻孔114a、114b及び鼻甲介116a、116bを通じてアクセスされ得る上顎洞110a、110b、前頭洞112a、112b、を含む空洞部100に使用又は施行することができる。患者の鼻孔114a、114bを含む外部造作部は点線で示されていることに留意されたい。患者が例えば慢性的な鼻副鼻腔炎を患っている場合、中鼻甲介116aと関連付けられる治療部位118の様な1つ又はそれ以上の治療部位が内科的に又は必要であれば外科的に問題解決を図られることになる。開示されているペーストの層120を部位118へ塗布し、治癒が起こっている間その場に留まらせることができる。
【0031】
[0036]
図2は、外科医の右手202に保持されている、開示されているペーストのための計量分配シリンジ200を示している。プランジャ204がシリンジバレル206の中へ押し下げられてゆくと、開示されているペーストは一直線の先端208及び曲げることのできる先端210を通して計量分配され、その際、先端210を不透明な塊220として出てゆく。
図3は、患者の解剖学的構造の諸部分に到達するのが難しいアクセスを容易にするように曲げることのできる先端210に形成され得る様々な曲げ位置(仮想)を示している。
【0032】
[0037]当業者には開示されているペーストが他の身体部分の中に又は他の身体部分へ塗布されてもよいことが認識されるであろう。開示されているペーストは、例えば、耳、咽喉、四肢、又は脊柱の中又は付近の組織(例えば粘膜組織)又は他の内部組織若しくは構造の治療を含め、脈管又は非脈管的用途に実用性を有していよう。
【0033】
[0038]塗布されたペーストは治療部位(例えば、鼻又は副鼻腔の空洞部、又は四肢又は脊柱の或る部分の開口部、陥凹部、通り道、又は関節部)を充填することができ、その場合、開示されているペーストは非常に厚く、空気又は付近の他の気体に曝されることはなく、全体に亘って厚さを変化させている。開示されているペーストは更に薄い膜又は他の共形被覆として塗布されてもよく、その場合、層は比較的薄く、空気又は付近の他の気体に曝され、層全体に亘って実質的に均一な厚さをしている。保護的なペーストは、治療部位にて粘膜又は他の天然組織(例えば軟骨又は骨)へ接着し、例えば、少なくとも1日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも15日間から、約3週間に及ぶ、約4週間に及ぶ、約45日間に及ぶ、又は約60日間に及ぶ、生体内での滞留時間の後に、自然分解又は潅注又は加水分解によって開始される分解が起こるまでは、剥離又は他の破壊に耐えるのが望ましい。その間、細菌の再コロニー形成又は再感染は有意に低減又は予防され、改善された治癒(例えば繊毛再生(reciliation)が起こることになろう。保護的なペーストは、限定するわけではないが、細菌付着抑制、抗感染特質、局所的免疫変調、組織保護、疼痛又は出血の低減又は排除、炎症低減、繊毛再成長のための環境最適化、重要な解剖学的構造への付着物低減、など、を含む様々な療法的利点を提供することができよう。これらの利点は、a)細菌を殺す、b)細菌コロニー形成を抑制する、c)組織への細菌付着を抑制する、d)組織の病的状態又は膿瘍形成を低減する、e)疾患再発を低減又は予防する(例えば、特に細菌毒素及び細胞外多糖類マトリックス(即ちバイオフィルム)毒素に関係付けられる慢性的な炎症を低減する)、f)湿った傷口を保全して血小板凝集を促進させることによる又は乾いた傷口を閉じて余計な粗面形成を起こさせないことによるなどで治癒中の皮膚を被覆及び保護する、g)止血、h)粘膜の繊毛再生のための環境を最適化する、i)繊毛の成長又は再成長を速める、及びj)(単数又は複数の)療法剤を治療部位へ送達する、を含む様々な機構のおかげでもたらされる。
【0034】
[0039]望ましいことに、保護的なペーストは粘膜の一部分へ接着しながらも、なお非接着部分の繊毛には自然な律動的繊毛運動(即ち繊毛搏動)を行わせておくことができ、所望により抗微生物剤又は追加の療法剤を送達することもでき、また細菌が治療部位でコロニー形成するのを阻止又は予防することができるのが望ましい。
【0035】
[0040]水溶性キトサン、好ましくはキトサン塩を、ペーストを形成するのに使用することができる。例えば、高濃度のキトサン塩をリン酸塩含有溶液(例えば、PBS、グリセロールリン酸二ナトリウム塩水和物又はその何れかの組合せ)に混合してすぐに使用できる状態をしたペーストを提供するようにしてもよい。高いキトサン塩濃度は、結果であるペーストの浸透圧重量モル濃度及び不透明度の両方に寄与する。理論によって縛る意図はないが、リン酸塩及びキトサンは、ペーストを形成するのを手助けするイオン反応を介して反応するようになっていてもよい。キトサンは、所望キトサン量全部を開示されているペースト中に溶解させることができるように十分に水溶性であるのが望ましい。とはいえ、キトサンの一部が開示されているペースト中に分散されているのであってもよい。選定されているキトサンは、少なくとも約3重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15%、少なくとも約18%、又は少なくとも約20重量%、の水溶解度を有しているのが好ましい。例示としてのキトサン濃度は、総ペースト重量の、約3重量%から約20重量%まで、約5重量%から約8重量%まで、約8重量%から約12重量%まで、約12重量%から約18重量%まで、約16重量%から約18重量%まで、又は約18重量%から約20重量%まで、であってもよい。ペースト中に使用されている高いキトサン濃度は、良好なステント留置及び受容され得るシリンジ送達力にとって望ましい粘度をもたらす。所望粘度は、25℃、剪断速度221s
−1で試験して、約1Pa.s.から約15Pa.s.の範囲である。この剪断速度は、物質がルアーロック(登録商標)コネクタを有する標準的な30mlのBD(商標)シリンジを通して1ml/秒の速度で計量分配される際に経験することになる大凡平均剪断速度に対応する。
【0036】
[0041]例示としての非修飾の水溶性キトサン及びそれらの塩(塩化物塩、クエン酸塩、硫酸塩、乳酸塩、リン酸塩、及びグルタミン酸塩の塩類を含む)は、米国特許出願公開第US2009/0291911A1号に記載されている供給源を含む様々な商業的供給源から手に入れることができる。
【0037】
[0042]キトサンは、更に、キチン(ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン)の脱アセチル化によって窒素原子のアセチル基を加水分解によって排除するようにして合成されていてもよい。結果としてのポリマーは、複数の反復単位(例えば、約30から約3000の反復単位、約60から約600の反復単位、又は選定されている末端使用にとって望ましいとされる他の量)を有していて、そのうちの幾つか又は全てが脱アセチル化されたアミノ基を含んでおり(例えば、総反復単位の約30%から約100%又は約60%から約95%)、残りの反復単位(仮にあったとして)はアセチル化されたアミノ基を含んでいる。ポリマーはカチオン性であり、グルコサミンモノマーから構成されていると見なされ得る。
【0038】
[0043]キトサンは、様々な数平均分子量を有していてもよく、例えば、約5kDaから約200kDa、約10kDaから約500kDa、又は約10kDaから約100kDa、であってもよい。キトサンは、例えば、約30kDaより小さいか又は約30kDaの数平均分子量を有する超低分子量材料、約30kDaから約400kDaの数平均分子量を有する低分子量材料、約200kDaから約500kDaの数平均分子量を有する中分子量材料、又は約500kDaより大きい数平均分子量を有する高分子量材料、であってもよい。低分子量キトサンが好適である。開示されている分子量はペーストの滅菌前の重量である。キトサンはリン酸塩溶液との混合前には乾燥した粒子の形態をしているのが望ましく、例えば、その平均粒径が約1mm未満、約100μm未満、約1μmから約80μm、又は1μm未満の自由に流動する顆粒である。
【0039】
[0044]キトサン誘導体を採用することもでき、例えば、1つ又はそれ以上のヒドロキシル基又はアミノ基が誘導体の溶解度又は粘膜接着の特性を改変することを目的に修飾されたキトサン誘導体が採用されてもよい。例示としての誘導体は、チオール化キトサン、及びアセチル化、アルキル化、又はスルホン化キトサンの様な非チオール化キトサン誘導体(例えば、O−アルキルエーテル、O−アシルエステル、カチオン化トリメチルキトサン、及びポリエチレングリコールで修飾されたキトサン)を含む。キトサン誘導体は各種供給源から手に入れることができる。例えば、チオール化キトサンは、ThioMatrix Forschungs Beratungs GmbH及びMucobiomer Biotechnologische Forschungs−und Entwicklungs GmbHから手に入れられてもよいし、又はキトサンと適したチオール化反応物質との反応によって調製されてもよく、例えば、公開されているPCT出願第WO03/020771A1号に記載されている様に、又はロルド他、経口による制御された薬物送達のためのプラットフォームとしての粘膜接着性チオール化キトサン:合成及び試験管内評価、ヨーロピアンジャーナル・オブ・ファーマシューティクス・アンド・バイオファーマシューティクス、第57巻、115−121頁(2004年)(Rold et al.,Mucoadhesive thiolated chitosans as platforms for oral controlled drug delivery:synthesis and in vitro evaluation,European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics,57,115−121,(2004))、クローランド他、新しい現場ゲル化性チオール化キトサン共役の粘弾性的性質、ドラッグデベロップメント・アンド・インダストリアルファーマシー、第31巻、885−893頁(2005年)(Krauland et al.,Viscoelastic Properties of a New in situ Gelling Thiolated Chitosan Conjugate,Drug Development And Industrial Pharmacy,31,885−893(2005))、ベルンコップ−シュニュルヒ、チオマー:粘膜接着性ポリマーの新世代、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビュー、第57巻、1569−1582頁、(2005年)(Bernkop−Schnurch,Thiomers:A new generation of mucoadhesive polymers,Advanced Drug Delivery Reviews,57,1569−1582(2005))、及びベルンコップ−シュニュルヒ他、チオマー:粘膜接着性ナノ粒子薬物送達システムの調製及び試験管内評価、インターナショナルジャーナル・オブ・ファーマシューティクス、第317巻、76−81頁(2006年)(Bernkop−Schnurch et at.,Thiomers: Preparation and in vitro evaluation of a mucoadhesive nanoparticulate drug delivery system,International journal of Pharmaceutics,317,76−81(2006))に記載されている様に、調製されてもよい。
【0040】
[0045]高いキトサン濃度はステント留置にとって望ましい粘度を有してはいるが、それは高い浸透圧重量モル濃度をもたらしもする(例えば、約18重量%キトサンHClから作られ約30kDaから約400kDaの範囲の分子量を有しているペーストは約2800mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度をもたらす)。高浸透圧重量モル濃度ペーストは生理学的にはペーストが塗布されることになる細胞又は組織と適合性が無い。所望の浸透圧重量モル濃度は、ペーストが、ペーストを塗布される細胞又は組織(例えば繊毛のある組織)に対し等張性又は高張性と見なされるような浸透圧重量モル濃度である。ペーストが約2000mOms/kgより小さい、例えば、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kg又は約270mOsm/kgから約1500mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、を有し、なおも所望の粘度を有しているのが望ましい。
[0046]所望の粘度又はペースト様粘稠度を有意に改変又は低減すること無しに浸透圧重量モル濃度を維持する又は下げるためには、1つ又はそれ以上の浸透圧重量モル濃度低減剤を使用することができるということが見いだされた。浸透圧重量モル濃度低減剤は、浸透圧重量モル濃度低減剤の所望量全部を開示されているペースト中に溶解させることができるように十分に水溶性であるのが望ましい。とはいえ、浸透圧重量モル濃度低減剤の一部が開示されているペースト中に分散されているのであってもよい。選定されている浸透圧重量モル濃度低減剤は、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約10重量%、又は少なくとも約20重量%、の水溶解度を有しているのが好ましい。浸透圧重量モル濃度低減剤は、塩基を殆ど又は全く含んでいないのが望ましく、というのもその様な基は開示されているペーストの浸透圧重量モル濃度を減少させるどころではなくむしろ増加させるからである。浸透圧重量モル濃度低減剤の推奨量は、例えば、総ペースト重量の、約1重量%から約20重量%まで、約1重量%から約10重量%まで、又は約2重量%から約8重量%まで、であってもよい。適した浸透圧重量モル濃度低減剤の例には、キトサン以外の多糖類であって生体適合性があり且つ開示されているペースト中の浸透圧重量モル濃度を低減しはするがキトサンと架橋結合しない多糖類が挙げられる。その様な多糖類の例には、寒天、アルギン酸塩、カラゲナン、セルロース、デキストラン、ガラクトマンナン、グリコーゲン、ヒアルロン酸、及び澱粉、があり、特に塩基を含むこと無く所望限度まで水溶性であるものが挙げられる。
【0041】
[0047]好適な多糖類は、ヒドロキシル官能性セルロース又はアルキル修飾型セルロースを含む。例示としてのセルロース材料には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの混合物が挙げられる。理論によって縛る意図はないが、浸透圧重量モル濃度低減剤は、ペーストの浸透圧重量モル濃度を低減し所望のペースト様粘稠度を維持するのに助けとなる「塩スカベンジャー」として働くものと確信している。
【0042】
[0048]ペーストは、例えば、キトサン及び浸透圧重量モル濃度低減剤を、総ペースト組成物の約1重量%から約20重量%、約10重量%から約20重量%、又は約10重量%から約15重量%、に相当する組み合わされた量で含有していてもよい。キトサンと浸透圧重量モル濃度低減剤は、例えば、約10:1から約1:20、約5:1から約1:10、又は約3:1から約1:5、の比で組み合わされていてもよい。
【0043】
[0049]ペーストは、ヒト組織に接触するのに適当なpH、例えば、少なくとも4のpH、中性に近いpH、又は10より小さいpH、を有しているのが望ましい。適当なpHを維持するのを助けるように、例えば、酸、塩基、又は緩衝剤が含まれていてもよい。緩衝剤が好適であり、リン酸塩含有緩衝剤が最も好適である。例示としての緩衝剤には、バルビタールナトリウム、グリシンアミド、グリシン、塩化カリウム、リン酸カリウム、フタル酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はリン酸ナトリウムと、それらの共役酸との混合物(例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸との混合物)が挙げられる。
【0044】
[0050]例示としてのリン酸塩含有緩衝剤は、リン酸と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、それらの混合物など、から選択されている塩基と、から誘導されている。例示としてのリン酸塩には、第二リン酸ナトリウム及び第一リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム及び第一リン酸カリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。開示されている緩衝剤中のリン酸及び塩基又は塩は所望のpHを実現するように変えられてもよい。
【0045】
[0051]以上に論じられている様に、キトサン及び浸透圧重量モル濃度低減剤はリン酸塩含有溶液中に溶解させるのが望ましい。例示としてのリン酸塩含有溶液にはPBSの様なリン酸塩含有緩衝液が挙げられる。PBS溶液は、典型的には、1つ又はそれ以上のリン酸塩と1つ又はそれ以上の塩化物塩の組合せを含んでいる。例示としてのリン酸塩には、リン酸二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、又はそれらの組合せ、が挙げられる。例示としての塩化物塩には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの組合せ、が挙げられる。PBS溶液を調製するのに使用される塩を水和物とするのは随意である。例示としての塩の組合せは、リン酸二ナトリウム七水和物(Na
2HPO
4・7H
2O)及びリン酸二水素カリウム(KH
2PO
4)を、所謂1X PSB溶液中に、約0.01Mリン酸塩、約0.0027M KCl、約0.137M NaCl、の濃度で採用しており、pHは25℃で7.4である。PBS緩衝溶液は、2X、3X、5X、10X、又は何れかの他の適した強度の様な、他の強度に調製されていてもよい。例えば、1X PBS緩衝液について説明されている成分を10倍添加して、約0.1Mリン酸塩、約0.027M KCl、約1.37M NaCl、の濃度をもたらすようにすることによって、約10X PBS緩衝液が調製されてもよい。リン酸塩含有溶液はPBS溶液であるのが好ましく、1Xより大きいPBS溶液であるのがより好ましい。PBS溶液は約9から約12の間のpHを有しているのが好ましく、約11のpHを有する3X溶液がより好ましい。
【0046】
[0052]リン酸塩は、更に、グリセロール−3−リン酸(GlyPhos)の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩)として提供されていてもよい。GlyPhosの立体異性体型式、好ましくはラセミ、メソ、α、及びβの配合物、又は他の型式又は配合物、も使用することができる。幾つかの実施形態では、リン酸塩は、緩衝剤(例えばPBS)によって、又はGlyPhosの塩によって、又はそれら両方によって、提供されている。
【0047】
[0053]開示されているペーストは、上述の水溶性キトサン又は誘導体、浸透圧重量モル濃度低減剤、及びリン酸塩含有溶液、から成る又は基本的に成るものとされ、各種補助剤の何れか1つ又はそれ以上と一体に成るのは随意である。例示としての補助剤には、潤滑剤、湿潤剤、療法剤、抗微生物剤、染料、顔料、又は他の着色剤、指示薬、香味料又は甘味料、酸化防止剤、消泡剤、チキソトロープ、療法剤の持続放出又は遅延放出のための放出剤改質剤、及び当業者に既知であるはずの他の成分、が挙げられる。
【0048】
[0054]潤滑剤及び湿潤剤は、ペースト粘稠度を維持するのを助けたりペーストを所望治療部位の中へ又は上へ計量分配するのを支援したりすることのできる特に望ましい補助剤である。望ましくは、ペーストは施術者が手袋をした片手だけを使って適した送達装置(例えばシリンジ)から計量分配できるようになっているのがよい。潤滑剤及び湿潤剤の1つの好適な類は2つ又はそれ以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシ化合物を含み、1,2−ジオール基が存在しているのが望ましい。2−4炭素原子を有するヒドロキシ化合物がとりわけ有用な潤滑剤であることが判っている。グリセロールが特に好適である。他の化合物には、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、及びブタン−1,4−ジオール、が含められる。ヒドロキシ化合物の混合物、特にグリセロールと1つ又はそれ以上のジオールとの混合物、を採用することもできる。潤滑剤及び湿潤剤の所望量は、例えば、総ペースト重量の、約1重量%から約15重量%、又は約2重量%から約12重量%、であってもよい。
【0049】
[0055]例示としての療法剤には、意図される治療部位での使用に適する何れかの材料であって、鎮痛剤、抗コリン薬、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド性又は非ステロイド性抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、制生剤、化学療法剤、抗新生物剤、サイトカイン、うっ血除去剤、止血剤(例えばトロンビン)、免疫抑制剤、粘液溶解剤、核酸、ペプチド、タンパク質、ステロイド、血管収縮剤、ビタミン、それらの混合物、及び当業者に既知であるはずの他の療法材料、を含む材料が挙げられる。その様な療法剤の有用な一覧は更に例えば米国特許第7,959,943B2号(ヒッソンら)に見いだすことができる。
【0050】
[0056]開示されているペーストは本質的に抗微生物性であって別個の抗微生物剤の添加を必要としないのが望ましい。抗微生物活性はペースト中のキトサンの比率によって影響され得る。所望される場合は別個の抗微生物剤を採用することもできる。その様な抗微生物剤の有用な一覧は例えば米国特許第7,959,943B2号に見いだすことができる。
【0051】
[0057]例示としての染料、顔料、又は他の着色剤には、FD&C赤色3号、FD&C赤色20号、FD&C黄色6号、FD&C青色2号、D&C緑色5号、D&Cオレンジ色4号、D&C赤色8号、キャラメル、二酸化チタン、ビートパウダー又はベータカロチン、ターメリック、パプリカの様な果物又は野菜着色剤、及び当業者に既知であるはずの他の材料が挙げられる。例示としての指示薬、香味料又は甘味料は、アニス油、サクランボ、桂皮油、かんきつ油(例えば、レモン油、ライム油、又はオレンジ油)、ココア、ユーカリ、ハーブ芳香植物(例えば、チョウジ油、セージ油、又はカッシア油)、乳糖、麦芽糖、メントール、ハッカ油、サッカリン、シクラミン酸ナトリウム、スペアミント油、ソルビトール、スクロース、バニリン、ウインターグリーン油、キシリトール、及びそれらの混合物、を含む。
【0052】
[0058]開示されているペーストは、典型的には、適した密封包装体(例えば、シリンジ、バイアル、又は適した材料で作られている袋、又はその様な包装体と随意的な取扱説明書を包含するキット)に入れられ、滅菌を施されることになっており、滅菌されたうえで、必要であればペースト又はキットの鼻又は副鼻腔手術での正しい使用を説明している取扱説明書と共に更に包装されることになる。滅菌方法は、不当に変色(例えば茶褐色)させたり、接着強度又は粘度に影響を及ぼしたり、又はそれ以外にペーストの粘稠度に不当に影響を及ぼしたりすることのない方法が望ましい。適した滅菌方法は、蒸気又はイオン化放射(例えば、ガンマ線放射及び電子ビーム(E−ビーム))を含む。E−ビーム滅菌はペースト変色を防ぐ又は制限するように見える。E−ビーム滅菌は、米国特許第8,653,319B2号(アメリーら)に記載されている様に低温度で遂行されてもよい。E−ビーム又はガンマ線滅菌は、例えは、約12kGyから約40kGyの範囲の線量で使用することができる。幾つかの実施形態では、開示されているペーストは、滅菌前は透明で滅菌後は不透明になっている。
【0053】
[0059]ペーストは、混合、撹拌、水和、又は他の調製を殆ど又は全く必要としないすぐに使用できる状態をした組成物として提供されているのが望ましい。ペーストは、ペーストを注入させる又は押し出させる計量分配器に入って提供されるのが望ましく、例えば、約5gから約100gの単位用量で包装されていてもよい。ペーストは、接着強度、粘度、及びpHによって決まる十分な保管寿命を有しているのが望ましく、12月間よりも長く保存できるようになっているのが好適である。幾つかの実施形態では、ペーストは、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度をなお維持しながらに、15月間より長く、18月間より長く、又は24月間に及んで、保存できるようになっている。ペーストが分離されてしまったように見える場合、再混合(例えば組成物に2つのシリンジ間を行き来させること)すれば典型的にペーストはより均質な粘稠度へ戻ることになろう。但し、ペーストは保存中に分離することのないのが好ましい。ペーストは約2℃から約60℃の範囲の温度で安定しているのが望ましい。加えて、ペーストは、ISTA−2A試験中に課される極限温度範囲(例えば約−29℃から約60℃)に曝された後もペーストのまま留まっているのが望ましい。
【0054】
[0060]開示されているペーストは更に所望の粘膜接着性を有することができる。換言すると、開示されているペーストは、それが塗布される特定の身体組織又は通り道へ接着又は粘着し、通り道の適度な保持を得るうえで当該通り道を完全に充填しなくてもよくなるのが好ましい。ペーストは、約5グラムから約80グラム、約20グラムから約50グラム、又は約15グラムから約30グラム、の分離力が必要となるような接着強度を有しているのが望ましい。分離力は、引っ張り試験機(例えばMTS(商標)引っ張り試験機)を1mm/秒の分離速度で作動させて使用し、ペーストの試料を間にして約4.4ニュートン(1ポンド)の圧縮力を用いて互いに圧縮されている2つのコラーゲン被覆ゴム製半球体を分離させる場合に必要とされる力として測定することができる。ゴム製半球体は、約5cm(2インチ)の直径を有する超軟質ショアOOの30デュロメーター黒ゴムボールを約2.5cm(1インチ)の高さに二等分して作られているのが望ましい。半球体は凸が互いに反対側になる配置関係にしてソーセージケーシングで各半球体を包んだ状態で引っ張り試験機に装着するのが望ましい。約0.2mlから約0.5mlの開示されているペーストを望ましくは下半球体の中心へ塗布し、半球体同士を指定の圧縮力を用いて一体に圧縮し、当該半球体同士を指定の分離速度で分離するのに必要とされる力を記録する。接着強度値は滅菌済みペーストについて報告されている。ペーストは、塗布された通路又は構造での滞留時間として、潅注有り又は潅注無しに、少なくとも1日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、又は少なくとも7日間の滞留時間を有しているのが望ましい。ペーストは自然に又は潅注(例えば生理食塩水溶液)により分解する。
【0055】
[0061]開示されているペーストは、ISO指針10993−5、医療装置の生物学的評価−第5部:試験管内細胞毒性の試験によって測定して0、1、又は2の細胞毒性評点を有する無細胞毒性であるのが望ましい。ペーストは1又はそれより小さい細胞毒性評点を有しているのが望ましいであろう。
【0056】
[0062]開示されているペーストは、実質的にコラーゲンを含んでいないのが望ましい。ペーストは、ヒトでの制約の無い使用のために世界中で販売できるようになる程度にコラーゲンが含まれていない(例えばコラーゲンを一切含有していない)のが望ましい。開示されているペーストは、粘膜組織又は構造、例えば鼻又は副鼻腔の空洞部の組織、を害する可能性のある他の成分を含有していないのが望ましい。
【0057】
[0063]開示されているペーストは、多段階治療養生法の一環として使用されていてもよい。例えば、清浄/崩壊、殺菌、曝気、保護/被覆、及び治癒、と大きく分類できる一連の段階が実施されてもよい。清浄/崩壊段階は、米国特許第7,976,873B2号及び同第7,976,875B2号に、及び米国特許出願公開第2011/0245757A1号に記載されている様な溶媒和系を投与することによって実施することができる。殺菌段階は、適した抗微生物剤を治療部位へ塗布することによって実施することができる。これは、例えば、抗微生物剤を溶媒和系中に含ませることによって達成されてもよいし、別途塗布される薬剤として達成されてもよいし、溶媒和系と別途塗布薬剤の両方で達成されてもよい。抗微生物剤は、更に、術後に塗布又は投与されてもよい。曝気段階は、閉塞しているか又は部分的に閉塞している通路、例えば鼻適用の場合には副鼻腔又は副鼻腔口、を開放することにより、治療された組織への空気の通り道を提供すること又は空気の通り道を改善することによって実施することができる。これは、例えば、障害となっている組織構造を外科的に除去することによって又はその様な構造を手で変位させることによって達成することができる。保護/被覆段階は、こうして治療された組織の少なくとも一部を開示されているペーストで被覆することによって実施することができる。治癒段階は、清浄され、保護され、密封された組織面が、例えば、炎症応答の変調、食菌作用、粘膜リモデリング、繊毛再生(reciliation)、又は全面的又は部分的な正常機能復元、の様な1つ又はそれ以上の治癒機序を通じて、正常状態への復帰を行えるようにすることによって実施することができる。多段階治療養生法は清浄段階を含むか又は清浄段階が次に続いていてもよく、開示されているペーストは、例えば5日間より長い又は約7日間から15日間の所望の時間的期間内に、又は潅注によって、治療部位から消えてゆくように十分に生体分解性である。ペーストは、分解するか又はそれ以外に大きな固体の塊を落屑させることなく除去できるのが望ましい。開示されている方法は、手術を要すること無く、例えば、随意的な溶媒和系を塗布及び除去することによって、及び開示されているペーストを普通の吸引又は吸入技法を通じて塗布することによって、又は冒されている組織を単純に洗い流すことによって、達成させることができるのが好都合である。
【0058】
[0064]開示されているペーストは各種適用のために使用されてもよい。例示としてのその様な適用は、手術による外傷によって危うくなった組織又は構造を分離するための又は鼻空洞部の粘膜面同士を隔て癒着を防ぐためのステント又は空間塞ぎ用詰め物としての使用を含む。他の適用は、出血(例えば限定的出血)及び手術又は外傷後の創傷清拭された粘膜面の滲出を、タンポナーゼ効果、血液吸収、又は血小板凝集により制御し、それにより止血を支援すること、自然な治癒過程を支援する添加剤の役目を果たすこと、鼻血を治療するための鼻詰め物としての役目を果たすこと、及び抗菌バリア又は抗菌効果を提供すること、を含む。
【実施例】
【0059】
[0065]発明を次の非限定的な実施例に更に例証する。
【実施例1】
【0060】
ペースト調合物
[0066]PBS錠剤を水に溶かし、1N NaOHを使用してpHをpH11−12へ調節して、3X PBS(pH11−12)溶液を調製した。グリセロールを使用する場合には、グリセロールをPBS溶液に添加してPBS/グリセロール溶液を形成した。PBS溶液か又はPBS/グリセロール溶液の何れかへ、乾燥成分、つまりは、30−400kDa分子量キトサン、グリセロールリン酸二ナトリウム塩水和物の固体、又は多糖類、の可変量を添加し、室温で混合してペーストを形成した。次いでペーストをガンマ線滅菌した。調合物4を除く全ての調合物がペーストを形成した。調合物4は、最初は液体様をしており、その後に粘り気を持ち糸を引くようになった。表1は総液体体積中の成分の割合を示している。表1は、各調合物についての滅菌後の浸透圧重量モル濃度、粘度、及び接着度の値も示している。
【0061】
【表1】
【実施例2】
【0062】
[0067]10%グリセロール0.6mlと実施例1で調製された3X PBS溶液(pH11)5.4mlを10mlシリンジの中で混合した。このPBS/グリセロール溶液へ、グリセロールリン酸、キトサンHCl、及びヒドロキシプロピルセルロール(HPC)の可変量を固体の形態で添加した。シリンジ内の成分全てを室温で完全に混合した後、結果としてのペーストをガンマ線滅菌又はE−ビーム滅菌した。調合物を下の表2に示す。調合物全てが室温でペーストを形成し、室温でペーストのまま留まった。表2は総液体体積の割合として報告されている様々な成分の割合を示している。各調合物についての浸透圧重量モル濃度、粘度、及び接着度の値を下の表3に滅菌後の値で示している。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【実施例3】
【0065】
抗微生物性
[0068]表2からの調合物14、調合物15、及び調合物16を評価し、4つの一般的な菌種(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌、及び緑膿菌)に対するそれらの抗微生物活性を抑制域スクリーニング技法を使用して判定した。
【0066】
[0069]4種の細菌をミューラ・ヒントン寒天培地上に成長させた。無菌条件下に、各調製物の大凡0.1mlから0.2mlを寒天培地上に直接置いた。寒天培地を35℃で12時間培養した。培養後、培地を細菌成長について観察した。「抑制域」という用語の使用は、調合物の周りの細菌成長が抑制された区域を表す。「静菌」という用語は、細菌が調合物の縁まで成長したがそれ以上の成長は観察されなかったことを表す。換言すると、「静菌」という用語は、細菌を殺すことはできそうもないが細菌が成長すること及び増殖することを抑制することはできるということをいう。
【0067】
[0070]下表4に示されている結果は調合物毎の三重反復試験に基づく。
【0068】
【表4】
【0069】
[0071]結果は調合物が抗微生物性であり抑制域を現出させたことを示している。
[0072]調合物16を、米国薬局方(USP)の抗微生物効力試験を施行するための指針第<51>章及び微生物回収率の妥当性確認第<1227>章に従って評価したところ、一般的な有機体に対する抗微生物効能が治療適用区域に典型的に見られることを確定した。測定された抗微生物性を下の表5に示している。
【0070】
【表5】
【実施例4】
【0071】
細胞毒性
[0073]調合物14及び調合物16をE−ビーム滅菌又はガンマ線滅菌し、ISO指針10993−5医療装置の生物学的評価−第5部:試験管内細胞毒性の試験、に従って潜在的細胞毒性効果について評価した。調合物14及び調合物15を37℃の純水(PW)の中で24時間抽出した。PW抽出物を強度が2倍の最小必須媒体(2X MEM)と50%の濃度へ混合した。陰性対照(高密度ポリエチレン)及び試薬対照(例えばPW)を同様に調製した。陽性対照(天然ゴムラテックス、カルバミン酸亜鉛促進剤、酸化亜鉛、及び二酸化チタン、を含んでいるラテックス手袋粉無)を37℃の強度1倍のMEM(1X MEM)の中で24時間抽出した。L−929マウス繊維芽細胞を有する哺乳類細胞培養単層の三重反復試験に各抽出物(調合物14、調合物16、陽性対照、陰性対照、及び試薬対照)を投与し、37℃で5%CO
2存在下に48時間培養した。培養に続いて、それら単層を異常細胞形態学及び細胞変性について顕微鏡(100X)で検査した。
【0072】
[0074]評点を確証するため、トリパンブルー染色液0.2mlを、試験試料の入った溜めに添加した。トリパンブルー分子は大きく、容易には生細胞によって吸収され得ない。死細胞又は危うくなった細胞膜を有するものだけが青い色をした染色液を取り込む。表6は評点及び視覚的特性を記載している。
【0073】
【表6】
【0074】
[0075]下の表7には、調合物14及び調合物16のE−ビーム滅菌型(e)又はガンマ線滅菌型(g)のどちらかについての結果が提示されており、下付き文字のe又はgは滅菌方法を表している。
【0075】
【表7】
【0076】
[0076]調合物16
eは微弱な細胞溶解又は細胞毒性を示したが細胞毒性評点1であることから概ね無細胞毒性であると見なされる。調合物16
g、調合物14
e、及び調合物14
gはそれぞれ細胞毒性評点0を有する無毒性であることが示された。
【実施例5】
【0077】
ウサギでの繊毛毒性(Ciliotoxity)
[0077]調合物14及び調合物16に、E−ビーム滅菌か又はガンマ線滅菌のどちらかを施し、それらのウサギ繊毛への影響について評価した。各調合物(調合物14、調合物16、対照(無処理、生理食塩水のみ))の0.6cc分を無作為に選ばれたニュージーランド白ウサギの両側上顎洞開洞術へ単ルーメンカテーテルを使用して適用した。治療に続き、生理食塩水3ccで毎日の潅注を施行した。7日間又は10日間の終わりに、それらウサギを安楽死させ、上顎洞内側壁片を取り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)のために固定した(カルノフスキー固定液)。
【0078】
[0078]盲分析で、組織標本を繊毛の存在又は不存在について評価し点数化した。結果を表8に示している。
【0079】
【表8】
【0080】
[0079]調合物を用いて治療されたウサギは、生理食塩水対照と同様に繊毛の存在を示した。これらの結果は、これらの調合物が繊毛にとって無毒性であることを示唆している。加えて、滅菌方法は繊毛に対する調合物の毒性に影響していないようであり、つまりはガンマ線滅菌された調合物もE−ビーム滅菌された調合物も繊毛にとって無毒性であった。
【実施例6】
【0081】
ヒツジでの繊毛毒性
[0080]両側中鼻甲介切除術及び篩骨蜂巣周りの中間層創傷(partial thickness wounding)を含む内視鏡的副鼻腔手術をヒツジに施行した。ヒツジは無作為に選ばれ、一方の鼻孔を各試験調合物(調合物7及び調合物8)7mlを用いて治療し、他方の鼻孔は治療無し(対照)とした。毎日の両側20cc生理食塩水潅注を鼻を通して施行した。手術から28日後、鼻/副鼻腔の空洞部の内側壁2片を各ヒツジから採取し、各片をSEM分析(カルノフスキー固定液)か又は組織学若しくは病理学評価(ホルマリン)の何れかのために固定した。盲分析で、組織標本を繊毛の存在又は不存在について評価し点数化した。
【0082】
[0081]28日後のヒツジにペースト材料は観察されなかった。SEM分析は治療標本と対照標本のどちらにも繊毛が存在していることを示した。顕微鏡的評価は治療標本と対照の間で類似する炎症応答を明らかにした。これらの結果は調合物が生体内使用にとって安全であることを示唆している。
【実施例7】
【0083】
増感及び刺激
[0082]調合物16を、増感について、モルモットモデル及びISO指針10993−10医療装置の生物学的評価−第10部:刺激及び皮膚増感の試験、を使用して評価した。調合物は、モルモットモデルでの全試験部位について0の増感評点を受けており、何らの遅延反応の形跡も示さなかった。調合物は、更に、ウサギモデルでの膣粘膜組織の顕微鏡的評価を使用して0の刺激指数を受けた。調合物はISO指針の下に増感物質でも刺激物質でもないと考えられるということになる。
【0084】
[0083]調合物16を、増感について、更に、ELISAタンパク質分析を使用して評価した。調合物は、2ppmの検出限界で、5.1ppm甲殻類アレルゲン又は0.00051%甲殻類タンパク質を含有することが判明した。
【実施例8】
【0085】
急性全身毒性
[0084]調合物16を、急性全身毒性について、ラットモデル、5g/Kg経口経路用量、ISO指針10993−11医療装置の生物学的評価−第11部:全身毒性の試験、を使用して評価した。開示されているペースト約12gを含有する成体ヒトでの使用のための包装製品について、選定された5/g/kg試験用量は成体用量の約29倍に相当することになる。全ての動物が研究を生き抜いた。
【実施例9】
【0086】
滞留時間
[0085]調合物16を評価し、10体の成体ヒツジの鼻空洞部の創傷組織への適用に続くその滞留時間及び癒着形成を判定した。研究では全動物が処置を十分に耐え、9体は正常な術後回復を極めて軽度な有害事象と共に示した。観察された滞留時間は7日間から14日間であり、研究中は動物の何れにも癒着は存在しなかった。
【0087】
[0086]本発明を更に例示するために幾つかの追加の非限定的な実施形態を以下に提供する。
実施形態1.
滅菌包装体内ペーストであって、室温で、少なくとも4のpHを有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサンと浸透圧重量モル濃度低減剤と潤滑剤又は湿潤剤とを備えている滅菌包装体内ペーストにおいて、浸透圧重量モル濃度低減剤は水溶性キトサンと架橋結合可能ではなく、ペーストは、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度及び約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度を有しており、ペーストは組織部位へ接着し少なくとも1日間の滞留時間を有している、滅菌包装体内ペースト。
【0088】
実施形態2.
副鼻腔ステントペーストであって、室温で、少なくとも4のpHを有するペーストを提供するようにリン酸塩含有溶液中に溶解させた水溶性キトサンと浸透圧重量モル濃度低減剤と潤滑剤又は湿潤剤とを備えている副鼻腔ステントペーストにおいて、ペーストは、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間を有しており、浸透圧重量モル濃度低減剤は水溶性キトサンと架橋結合していない、副鼻腔ステントペースト。
【0089】
実施形態3.
ペーストを作製するための方法であって、
水溶性キトサンと浸透圧重量モル濃度低減剤と潤滑剤又は湿潤剤をリン酸塩含有溶液中に混合及び溶解させて、室温で、少なくとも4のpHを有するペーストを提供する段階を備えている方法において、ペーストは、約1Pa.s.から約15Pa.s.の粘度、約270mOsm/kgから約2000mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度、及び少なくとも1日間の滞留時間、を有しており、浸透圧重量モル濃度低減剤は水溶性キトサンと架橋結合していない、
ペーストを作製するための方法。
【0090】
実施形態4.
水溶性キトサンは塩を備えている、実施形態1、実施形態2、又は実施形態3。
実施形態5.
水溶性キトサンは塩酸塩を備えている、実施形態1から実施形態4の何れかの実施形態。
【0091】
実施形態6.
水溶性キトサンは総ペースト重量の約3−20重量%である、実施形態1から実施形態5の何れかの実施形態。
【0092】
実施形態7.
浸透圧重量モル濃度低減剤はヒドロキシル官能性セルロース又はアルキル修飾型セルロースを備えている、実施形態1から実施形態6の何れかの実施形態。
【0093】
実施形態8.
ヒドロキシル官能性セルロース又はアルキル修飾型セルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、又はヒドロキシエチルセルロースである、実施形態7。
【0094】
実施形態9.
潤滑剤又は湿潤剤はグリセロールを備えている、実施形態1から実施形態8の何れかの実施形態。
【0095】
実施形態10.
リン酸塩含有溶液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、実施形態1から実施形態9の何れかの実施形態。
【0096】
実施形態11.
リン酸塩含有溶液は3xPBS溶液である、実施形態1から実施形態10の何れかの実施形態。
【0097】
実施形態12.
リン酸塩含有溶液は9から12の間のpHを有している、実施形態1から実施形態11の何れかの実施形態。
【0098】
実施形態13.
滅菌包装体は電子ビーム滅菌又はガンマ線滅菌されている、実施形態1から実施形態12の何れかの実施形態。
【0099】
実施形態14.
滅菌エネルギーは約12kGyから約40kGyの間である、実施形態13。
実施形態15.
滞留時間は少なくとも3日間である、実施形態1から実施形態14の何れかの実施形態。
【0100】
実施形態16.
引っ張り試験機を1mm/秒の分離速度で作動させて使用し、ペーストの試料を間にして約4.4ニュートンの圧縮力を用いて互いに圧縮されている2つのコラーゲン被覆ゴム製半球体を分離させる場合に、約5グラムから約80グラムの間の力が必要になる接着強度を有している実施形態1から実施形態15の何れかの実施形態。
【0101】
実施形態17.
無細胞毒性である実施形態1から実施形態16の何れかの実施形態。
実施形態18.
1又はそれより小さい細胞毒性評点を有している実施形態17。
【0102】
実施形態19.
グリセロールリン酸を更に備えている実施形態1から実施形態18の何れかの実施形態。
【0103】
実施形態20.
実施形態1から実施形態19の何れかの組成物から形成されているステント又は詰め物。
【0104】
実施形態21.
ステント又は包装体は鼻又は副鼻腔の通路に接触している、実施形態20のステント又は詰め物。
【0105】
[0087]本明細書の中で引用されている全ての特許、特許出願、及び文献は、これにより参考文献としてそっくりそのまま援用する。何らかの矛盾がある場合、本開示が、その中の何れの定義をも含め、優先することになる。好適な実施形態を説明することを目的に特定の実施形態を図示し説明してきたが、当業者には認識される様に、本発明から逸脱することなく、同じ目的を実現するように計算された広範に様々な代わりの又は同等の実施形を、示され説明されている特定の実施形態の代わりに用いることもできる。この出願はここに論じられている好適な実施形態の何れの改造型又は変型にも及ぶものとする。従って、明白にも、本発明は特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるものとする。