特許第6397492号(P6397492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397492ポリオレフィン/(メタ)アクリル耐衝撃性改良剤及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397492
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン/(メタ)アクリル耐衝撃性改良剤及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/00 20060101AFI20180913BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20180913BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20180913BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   C08F255/00
   C08L51/06
   C08J3/12 101
   C08J3/12CER
   C08L101/00
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-524282(P2016-524282)
(86)(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公表番号】特表2016-524026(P2016-524026A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】US2014044803
(87)【国際公開番号】WO2015002859
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年4月10日
(31)【優先権主張番号】61/841,957
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リアン
(72)【発明者】
【氏名】サン−ジェラルド,ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ネリアッパン,ベーラ
(72)【発明者】
【氏名】アブダル−ラヒマン,ヴィシヤ
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−264933(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/002858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/00−255/10
C08L 1/00−101/14
C08J 3/12−3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ポリマー組成物の噴霧乾燥生成物を含む耐衝撃性改良剤組成物であって、
(i)1つ以上のポリオレフィン、2〜25重量%の1つ以上の分散安定剤、水、及び任意選択で中和剤の溶融混練生成物を含前記ポリオレフィンの粒子が架橋されていない水性ポリオレフィン分散液と、
(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーと、の乳化重合生成物を含み、
前記1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のTgを有し、前記溶融混練生成物(i)が、前記水中に分散される150nm〜2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、
前記1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、前記ポリマー粒子上に重合して、複合ポリマー粒子を形成する、前記耐衝撃性改良剤組成物
【請求項2】
前記複合ポリマー粒子中の前記1つ以上のポリオレフィン前記ポリ(メタ)アクリルの重量比が、60:40〜95:5である、請求項1に記載の耐衝撃性改良剤組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、官能化(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択され、前記官能化(メタ)アクリルモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリルアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の耐衝撃性改良剤組成物。
【請求項4】
マトリックスポリマー樹脂と、
請求項1から3のいずれか1項に記載の衝撃性改良剤組成物と、を含む、耐衝撃性改良樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン/(メタ)アクリル耐衝撃性改良剤及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な最終使用用途のために使用される、ポリカーボネート等のある特定の樹脂は、室温で良好な衝撃特性を示すが、この衝撃特性はより低い温度では低下する。耐衝撃性改良剤の使用が、より低い温度での衝撃特性の保持に役立つ。
【0003】
窓枠の耐衝撃性改良(特に、より寒冷な気候での)等のある特定の用途にとって、風化によって低下しない低温衝撃抵抗等の特性を向上させる強い市場ニーズが存在する。
【0004】
耐衝撃性改良剤は典型的には、乳化重合プロセスによって調製され、最大95%の低ガラス転移温度(T)のコアと、主としてポリメチルメタクリレート(PMMA)から構成される高Tのシェルからなる。PMMAシェルは、低Tコアがラテックス相から単離されるときに凝集することを防止する。加えて、PMMAシェルは、コアのマトリックス材料との相溶化を補助する。PMMAシェル無しでは、耐衝撃性改良剤の有効性は制限される。
【0005】
ポリブタジエンのコアで調製される組成物においては、残留不飽和が架橋し、脆化するため、耐候性は典型的に貧弱である。
【0006】
耐衝撃性改良が最も有効である粒径は、50〜500nmの範囲内である。この大きさの粒子は、典型的には乳化重合によって作製される。
【0007】
これまでは、耐衝撃性改良剤を調製するために利用可能なケミストリーは、乳化重合することが可能なモノマーに制限されてきた。多層構造(例えば、コア/シェル構造)を伴う小粒子を作製する経路が存在しなかったため、オレフィン(良好な耐候性及び低いTによって、耐衝撃性改良において有効であり得る)等の他のケミストリーを使用することは以前は不可能であった。
【0008】
現在のところ、官能化ポリオレフィンペレットが、別のマトリックス樹脂に混合するために調整量で直接使用され、分離したポリオレフィン相が達成され得る。しかしながら、所望の適合性(制限された樹脂の官能性)及び粒径を得ることは大変困難であり、各特定の樹脂について、処理条件は最適化されねばならない。加えて、溶化及び応力伝達に役立つようなシェル層(PMMA等)を添加することは不可能であった。現在まで、シェルが良好な適合性を提供し、ゴムのコアが衝撃強度を付与するコア−シェル構造を伴うアクリル耐衝撃性改良剤に類似のオレフィン粉末は存在しない。典型的には、凝集した離散粒子(100〜500nm)は、マトリックス樹脂中に容易に分散し得る。我々は、アクリルコアが同一のアクリルシェルを伴うオレフィンエラストマーによって置き換えられる場合、そのような生成物は、多くのシステム中の現在のアクリルまたはブタジエン系耐衝撃性改良剤のドロップイン代替品であり得ると仮定し、加えて、それらの生成物はポリオレフィン由来の良好な性能属性(例えば、耐候性及び低温強靭化)をもたらすことが予期される。現在まで、そのような生成物を作製するために利用可能な技術は存在していない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ポリオレフィン/(メタ)アクリル耐衝撃性改良剤及びその調製方法である。
【0010】
一実施形態において、本発明は、(i)1つ以上のポリオレフィン、2〜25重量%の1つ以上の分散安定剤、水、及び任意選択で中和剤の溶融混練生成物を含む水性ポリオレフィン分散液と、(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーと、の乳化重合生成物を含み、1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のTを有し、溶融混練生成物(i)が、水中に分散される150nm〜2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、ポリマー粒子に重合し、複合ポリマー粒子を形成する、複合ポリマー組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明を例証する目的のために、例示的な形態が図面中に示されるが、本発明は示されるまさにその配置及び手段に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0012】
図1】120℃での熱暴露後のノッチ付きアイゾット衝撃強度の保持(3.2mmの射出成形試験片上で測定)を、5重量%の耐衝撃性改良剤を伴う組成物について、時間の関数として図示したグラフである。
図2】本発明に従う耐衝撃性改良剤を伴うLEXAN 141RのTEM画像である。
図3】PARALOID EXL 2691Aの名でThe Dow Chemical Companyから市販される耐衝撃性改良剤を伴うLEXAN 141RのTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリオレフィン/(メタ)アクリル耐衝撃性改良剤及びその調製方法である。
【0014】
本発明に記載の複合ポリマー組成物は、(i)1つ以上のポリオレフィン、2〜25重量%の1つ以上の分散安定剤、及び水の溶融混練生成物を含む水性ポリオレフィン分散液と、(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーと、の乳化重合生成物を含み、1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のTを有し、溶融混練生成物(i)が、水中に分散される150nm〜2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、ポリマー粒子に重合し、複合ポリマー粒子を形成する。
【0015】
別の代替的な実施形態において、本発明は、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかに従う複合ポリマー組成物の噴霧乾燥生成物を含む、耐衝撃性改良剤組成物を更に提供する。
【0016】
別の代替的な実施形態において、本発明は、マトリックスポリマー樹脂を含む耐衝撃性改良樹脂と、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかに従う耐衝撃性改良剤組成物とを更に提供する。
【0017】
別の代替的な実施形態において、本発明は、1つ以上のポリオレフィン、1つ以上以下の分散安定剤、及び水を溶融混練することであって、1つ以上のポリオレフィンが50℃以下のTを有する、溶融混練することと、溶融混練生成物に、乳化重合条件下で1つ以上の(メタ)アクリルモノマーを添加して、複合ポリマー組成物を形成することと、乳濁液から水を除去することによって、複合ポリマー粒子を単離することとを含み、この単離プロセスが、噴霧乾燥及び流動床乾燥からなる群から選択される、耐衝撃性改良剤組成物を形成するための方法を更に提供する。
【0018】
水性ポリオレフィン分散液
ポリオレフィン
水性分散液は、水性分散液の固形分量の総重量を基に、5〜99重量パーセントの1つ以上のポリオレフィンを含む。5〜99重量パーセントのすべての単一値及び副範囲が、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、重量パーセントは、下限の5、8、10、15、20、25重量パーセントから上限の40、50、60、70、80、90、95、または99重量パーセントまでであり得る。例えば、水性分散液は、水性分散液の固形分量の総重量を基に、15〜99、または15〜90、または15〜80、または15〜75、または30〜70、または35〜65重量パーセントの1つ以上のポリオレフィンを含み得る。水性分散液は、少なくとも1つ以上のポリオレフィンを含む。
【0019】
本発明で使用されるポリオレフィンは、50℃以下のTを有する。50℃以下のすべての単一値及び副範囲が、本明細書に開示され、本明細書に含められる。例えば、Tは50℃以下であってもよく、または代替例において、Tは40℃以下であってもよく、または代替例において、Tは30℃以下であってもよく、または代替例において、Tは15℃以下であってもよく、または代替例において、Tは0℃以下であってもよく、または代替例において、Tは−15℃以下であってもよい。一実施形態において、ポリオレフィンは、−50℃以下のTを有する。
【0020】
ポリオレフィンの実施例としては、限定されるものではないが、典型的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマー、及びプロピレン−1−ブテンコポリマーとして表されるエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセン等の1つ以上のα−オレフィンのホモポリマー及びコポリマー(エラストマーを含む);典型的に、エチレン−ブタジエンコポリマー及びエチレン−エチリデンノルボルネンコポリマーとして表される、共役または非共役ジエンを持つα−オレフィンのコポリマー(エラストマーを含む);ならびに、典型的にエチレン−プロピレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエンコポリマー、及びエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンコポリマーとして表される共役または非共役ジエンをもつ2つ以上のα−オレフィンのコポリマー等のポリオレフィン(エラストマーを含む);エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸またはエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマー、及びエチレン−(メタ)アクリレートコポリマー等のエチレン−ビニル化合物コポリマーが挙げられる。これらの樹脂は、単独または2つ以上の組み合わせのいずれかで用いられてもよい。
【0021】
選択された実施形態において、基材ポリマーは、例えば、エチレン−αオレフィンコポリマー、プロピレン−αオレフィンコポリマー、及びオレフィンブロックコポリマーからなる群から選択される1つ以上のポリオレフィンを含み得る。具体的には、選択された実施形態において、基材ポリマーは、1つ以上の非極性ポリオレフィンを含み得る。
【0022】
特定の実施形態において、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらのコポリマー、及びそれらのブレンド、ならびにエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー等のポリオレフィンが、使用され得る。いくつかの実施形態において、例示的なオレフィンポリマーは、米国特許第3,645,992号に記載されるような均一なポリマー、米国特許第4,076,698号に記載されるような高密度ポリエチレン(HDPE)、不均質に分岐した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、不均質に分岐した超低直鎖状密度ポリエチレン(ULDPE)、均一に分岐した直鎖状エチレン/α−オレフィンコポリマー、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,272,236号及び同第5,278,272号に開示される処理によって調製することができる、均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン/α−オレフィンポリマー、ならびに低密度ポリエチレン(LDPE)またはエチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)等の高圧、フリーラジカル重合エチレンポリマー及びコポリマーを含む。
【0023】
他の特定の実施形態において、基材ポリマーは、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)系ポリマーであり得る。他の実施形態において、基材ポリマーは、例えば、エチレン−メチルアクリレート(EMA)系ポリマーであり得る。他の特定の実施形態において、エチレン−αオレフィンコポリマーは、例えば、エチレン−ブテン、エチレン−ヘキセン、またはエチレン−オクテンコポリマーまたはインターポリマーであり得る。他の特定の実施形態において、プロピレン−αオレフィンコポリマーは、例えば、プロピレン−エチレンまたはプロピレン−エチレン−ブテンコポリマー、またはインターポリマーであり得る。
【0024】
特定の一実施形態において、ポリオレフィンは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有することを特徴とする、プロピレン/α−オレフィンコポリマーである。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」とは、配列が、約0.85超、代替例において約0.90超、他の代替例において約0.92超、及び他の代替例において約0.93超の、13C NMRにより測定されるアイソタクチックトライアッド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックトライアッドは、当分野で周知であり、例えば、13C NMRスペクトルにより決定されるコポリマー分子鎖内のトライアッド単位に関しアイソタクチック配列を参照する、米国特許第5,504,172号及び国際公開第00/01745号に記載される。プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、プロピレン由来単位及び1つ以上のα−オレフィンコモノマー由来ポリマー単位を含む。プロピレン/α−オレフィンコポリマーを製造するのに活用される、例示的なコモノマーは、C及びC〜C10α−オレフィン、例えば、C、C、C、及びCα−オレフィンである。
【0025】
オレフィンコポリマーは、ASTM D−1238(190℃で/2.16Kg)に従って測定される、1〜1500g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。1〜1500g/10分のすべての単一値及び副範囲は、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、メルトフローレートは、下限の1g/10分、2g/10分、3g/10分、4g/10分、5g/10分、100g/10分、200g/10分、500g/10分、800g/10分、1000g/10分、1300g/10分、または1400g/10分から、上限の1500g/10分、1250g/10分、1000g/10分、800g/10分、500g/10分、100g/10分、50g/10分、40g/10分、及び30g/10分までであり得る。例えば、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1〜1500g/10分、または1〜500g/10分、または500〜1500g/10分、または500〜1250g/10分、または300〜1300g/10分、または5〜30g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。
【0026】
オレフィンコポリマーは、重量平均分子量割る数平均分子量(M/M)として定義される分子量分布(MWD)3.5以下、代替例において3.0以下、または他の代替例において1.8〜3.0を有する。
【0027】
そのようなオレフィンコポリマーは、VERSIFY(商標)及びENGAGE(商標)の商標名の下にThe Dow Chemical Companyから市販されるか、またはVISTAMAXX(商標)及びEXACT(商標)の商標名の下に、ExxonMobil Chemical Companyから市販されている。
【0028】
他の選択される実施形態において、国際公開第2005/090427号及び米国特許出願公開第2006/0199930号に記載されるような、オレフィンブロックコポリマー、例えば、エチレンマルチブロックコポリマー等が、ポリオレフィンとして使用されてもよく、これらはそのようなオレフィンブロックコポリマーを記載する範囲で参照により本明細書に組み込まれる。そのようなオレフィンブロックコポリマーは、
(a)約1.7〜約3.5のM/M、少なくとも1つの摂氏での融解点T、及びグラム/立方センチメートルでの密度dを有し、T及びdの数値は、
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)の関係に対応する、または
(b)約1.7〜約3.5のM/M、J/gの融解熱ΔHにより特徴付けられ、及び最高DSC頂点と最高CRYSTAF頂点との間の温度差により定義される摂氏でのデルタ量ΔTを有し、ΔT及びΔHの数値は以下の関係を有し、
ΔHが0超及び130J/g以下の場合、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81であり、
ΔHが130J/g超の場合、ΔT≧48℃であり、
CRYSTAF頂点は、少なくとも5パーセントの堆積ポリマーを用いて決定され、5パーセント未満のポリマーが同定可能なCRYSTAF頂点を有する場合、CRYSTAF温度は30℃となる、または
(c)圧縮成型されたエチレン/α−オレフィンインターポリマーの膜で測定される、300パーセント歪度及び1サイクルにおける、パーセントでの弾性回復性Reにより特徴付けられ、グラム/立方センチメートルでの密度dを有し、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、実質的に架橋相のない時、以下の関係を満たし、
Re>1481−1629(d)、または
(d)TREFを用いて分画したとき、40℃〜130℃で溶出する分子率を有し、この分画が、同一の温度間で溶出する比較ランダムエチレンインターポリマー分画よりも、少なくとも5パーセント高い1モル当たりのコモノマー含有量を有することに特徴付けられ、該比較ランダムエチレンインターポリマーは、同一のコモノマー(複数可)を有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの10パーセント以内のメルトインデックス、密度、及び(ポリマー全体を基に)モル当たりのコモノマー含有量を有する、または
(e)25℃での貯蔵弾性率G′(25℃)、及び100℃での貯蔵弾性率G′(100℃)を有し、G′(25℃)とG′(100℃)との比率は、約1:1〜約9:1の範囲である、エチレン/α−オレフィンインターポリマーであり得る。
【0029】
そのようなオレフィンブロックコポリマー、例えば、エチレン/α−オレフィンインターポリマーはまた、
(a)TREFを用いて分画された時、40℃〜130℃の間で溶出する分子率を有し、分画が、少なくとも0.5以上〜約1のブロックインデックスを有し、分子量分布M/M、が、約1.3超であることにより特徴付けられるか、または
(b)0超〜約1.0の平均ブロックインデックス及び約1.3超の分子量分布M/Mを有し得る。
【0030】
ある特定の実施形態において、ポリオレフィンは、例えば、コモノマーまたはグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する1つ以上の極性ポリオレフィンを含む。例示的な極性ポリオレフィンとしては、限定されるものではないが、The Dow Chemical Companyから市販されるPRIMACOR(商標)、E.I.DuPont de Nemoursから市販されるNUCREL(商標)、ならびにExxonMobil Chemical Companyから市販され、米国特許第4,599,392号、同第4,988,781号、及び同第5,938,437号に記載されるESCOR(商標)の商標の下に入手可能なもの等の、エチレン−アクリル酸(EAA)及びエチレン−メタクリル酸コポリマーが挙げられ、これらの特許はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の例示的な基材ポリマーとしては、限定されるものではないが、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリレート(EBA)が挙げられる。
【0031】
一実施形態において、極性ポリオレフィンは、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよく、安定剤は、例えばエチレン−アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される極性ポリオレフィンを含んでもよいが、但し、基材ポリマーが、例えば、ASTM D−974に従って測定される、安定剤よりも低い酸価を有し得ることを条件とする。
【0032】
安定剤
水性分散液は、安定した分散液の形成を促進するため、本明細書においては分散剤とも呼ばれる、少なくとも1つ以上の安定剤を更に含む。安定剤は、好ましくは外部安定剤でもよい。水性分散液は、分散液の固形分量の総重量を基に、2〜25重量パーセントの1つ以上の安定剤を含む。2〜25重量パーセントのすべての単一値及び副範囲が、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば重量パーセントは、下限の2、5、7、9、11、14、19、または24重量パーセントから上限の4、6、8 10、15、20、または25重量パーセントまでであり得る。例えば、分散液は、分散液の固形分量の総重量を基に、2〜25、または代替例において1〜5、または代替例において3〜10、または代替例において2〜8重量パーセント、または代替例において5〜20重量パーセント、または代替例において10〜20重量パーセントの1つ以上の安定剤を含み得る。選択された実施形態において、安定剤は、界面活性剤、ポリマー、またはそれらの混合物であり得る。ある特定の実施形態において、安定剤は、コモノマーまたはグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する極性ポリマーであり得る。例示的な実施形態において、安定剤は、コモノマーまたはグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する1つ以上の極性ポリオレフィンを含む。例示的なポリマー安定剤としては、限定されるものではないが、The Dow Chemical Companyから市販されるPRIMACOR、E.I.DuPont de Nemoursから市販されるNUCREL、ならびにExxonMobil Chemical Companyから市販され、米国特許第4,599,392号、同第4,988,781号、及び同第5,938,437号に記載されるESCORの商標の下に入手可能なもの等の、エチレン−アクリル酸(EAA)及びエチレン−メタクリル酸コポリマーが挙げられ、これらの特許はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の例示的なポリマー安定剤としては、限定されるものではないが、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリレート(EBA)を含む。他のエチレン−カルボン酸コポリマーもまた、使用することができる。当業者ならば、他の多くの有用なポリマーもまた使用され得ることを認識するであろう。
【0033】
使用され得る他の安定剤としては、限定されるものではないが、12〜60個の炭素原子を有する、長鎖脂肪酸、脂肪酸塩、または脂肪酸アルキルエステルを含む。他の実施形態において、長鎖脂肪酸または脂肪酸塩は、12〜40個の炭素原子を有し得る。
【0034】
安定剤は、任意選択で、部分的または完全に中和剤で中和され得る。ある特定の実施形態において、長鎖脂肪酸またはEAA等の安定剤の中和は、モル換算で25〜200パーセントであり得、または代替例においては、モル換算で50〜110パーセントであり得る。例えばEAAに関し、中和剤は、例えば水酸化アンモニウムまたは水酸化カリウム等の塩基であり得る。他の中和剤としては、例えば、水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムを挙げることができる。別の代替例において、中和剤は、例えば炭酸塩であってもよい。別の代替例において、中和剤は、例えばモノエタノールアミンまたは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)等の任意のアミンであり得る。本明細書に開示する実施形態において有用なアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びTRIS AMINO(それぞれAngusから入手可能)、NEUTROL TE(BASFから入手可能)、ならびにトリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びN,N−ジメチルエタノールアミン(それぞれThe Dow Chemical Company,Midland,MIから入手可能)が挙げられ得る。他の有用なアミンとしては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−n−プロピルアミン、ジメチル−nプロピルアミン、N−メタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、N,N,N′N′−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1.2−ジアミノプロパンが挙げられ得る。いくつかの実施形態において、アミンの混合物、またはアミン及び界面活性剤の混合物が使用され得る。当業者ならば、適切な中和剤の選択が、配合された特定の組成物に依存すること、及びそのような選択が当業者の知識内にあることを理解するであろう。
【0035】
本発明の実践において有用であり得る追加的な安定剤としては、限定されるものではないが、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、または非イオン界面活性剤が挙げられる。陰イオン界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、スルホン酸塩、カルボン酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。陽イオン界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、第四級アミンを含む。非イオン界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、エチレンオキシド及びシリコーン界面活性剤を含有するブロックコポリマーが挙げられる。本発明の実践において有用な安定剤は、外部界面活性剤または内部界面活性剤のいずれかであり得る。外部界面活性剤は、分散液調製中にポリオレフィンに対して化学反応状態にならない界面活性剤である。本明細書において有用な外部界面活性剤の例としては、限定されるものではないが、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩及びラウリルスルホン酸塩が挙げられる。内部界面活性剤は、分散液調製中にポリオレフィンに対して化学反応状態になる界面活性剤である。本明細書において有用な内部界面活性剤の例としては、2,2−ジメチロールプロパン酸及びその塩が挙げられる。本発明の実践において有用であり得る追加的な界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、またはそれらの組み合わせが挙げられる。種々の市販される界面活性剤を本明細書に開示される実施形態において使用してもよく、それらの界面活性剤としては、それぞれRTD Hallstarから入手可能な、OP−100(ステアリン酸ナトリウム)、OPK−1000(ステアリン酸カリウム)、及びOPK−181(オレイン酸カリウム)、Baker Petroliteから入手可能なUNICID 350、それぞれCognisから入手可能なDISPONIL FES 77−IS及びDISPONIL TA−430、それぞれRhodiaから入手可能なRHODAPEX CO−436、SOPROPHOR 4D384、3D−33、及び796/P、RHODACAL BX−78、及びLDS−22、RHODAFAC RE−610、及びRM−710、及びSUPRAGIL MNS/90、ならびにそれぞれThe Dow Chemical Company,Midland,Michiganから入手可能なTRITON QS−15、TRITON W−30、DOWFAX 2A1、DOWFAX 3B2、DOWFAX 8390、DOWFAX C6L、TRITON X−200、TRITON XN−45S、TRITON H−55、TRITON GR−5M、TRITON BG−10、及びTRITON CG−110が挙げられる。
【0036】
液状媒体
分散液は液状媒体を更に含む。液状媒体は任意の媒体であってもよく、例えば液状媒体は水でもよい。本発明の分散液は、分散液の総体積に基づいて、35〜80体積パーセントの液状媒体を含む。特定の実施形態において、水含有量は、分散液の総体積を基に35〜75、または代替例において35〜70、または代替例において45〜60体積パーセントの範囲であり得る。分散液の水含有量は好ましくは、固形分量(ポリオレフィンと安定剤)が約1体積パーセント〜約74体積パーセントであるように制御され得る。特定の実施形態において、固形分の範囲は、約10体積パーセント〜約70体積パーセントであり得る。他の特定の実施形態において、固形分の範囲は、約20体積パーセント〜約65体積パーセントである。ある特定の他の実施形態において、固形分の範囲は、約25体積パーセント〜約55体積パーセントである。
【0037】
追加成分
いくつかの実施形態において、水性分散液は、任意選択でアクリルラテックス、ビニルアクリルラテックス、スチレンアクリルラテックス、酢酸ビニルエチレンラテックス、及びそれらの組み合わせ等の1つ以上のバインダー組成物、任意選択で1つ以上の充填剤、任意選択で1つ以上の添加剤、任意選択で1つ以上の顔料、例えば、二酸化チタン、雲母、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、粉砕ガラス、アルミニウム三水和物、タルク、三酸化アンチモン、飛灰、及び粘土、任意選択で1つ以上の助溶剤、例えばグリコール、グリコールエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチルレート、アルコール、ミネラルスピリット、及び安息香酸エステル、任意選択で1つ以上の分散剤、例えば、アミノアルコール及びポリカルボキシレート、任意選択で1つ以上の界面活性剤、任意選択で1つ以上の消泡剤、任意選択で1つ以上の保存剤、例えば、殺生物剤、防カビ剤、殺菌剤、殺藻剤、及びそれらの組み合わせ、任意選択で1つ以上の増粘剤、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、疎水的に改質されたアルカリ可溶性乳濁液(UCAR POLYPHOBE TR−116等のHASE増粘剤)、及び疎水的に改質されたエトキシル化ウレタン増粘剤(HEUR)等のセルロース系増粘剤、または任意選択で1つ以上の追加的な中和剤、例えば、水酸化物、アミン、アンモニア、及び炭酸塩を更に含んでもよい。
【0038】
水性分散液の形成
水性分散液は、当業者に認識される任意の数の方法により形成することができる。一実施形態においては、1つ以上のポリオレフィン、1つ以上のサブ粒子、及び任意選択で1つ以上の安定剤が、押出機内で水、及びアンモニア、水酸化カリウム、またはこれら2つの組み合わせ等の中和剤と共に溶融混練されて分散液を形成する。別の実施形態においては、1つ以上のポリオレフィン及び1つ以上のサブ粒子が混合され、次いでポリオレフィン/サブ粒子化合物が、押出機内で任意の安定剤、水、及び1つ以上の中和剤の存在下で溶融混練され、それにより分散液を形成する。いくつかの実施形態においては、分散液はまず、約1〜約3重量%の水を含有するように希釈され、次いで約25重量%超の水を含むように更に希釈される。
【0039】
当分野において既知の任意の溶融混練法が使用され得る。いくつかの実施形態において、混練機、BANBURY(登録商標)混合機、単軸押出機、または複数軸押出機、例えば二軸押出機が使用される。本発明に従う分散液の生成方法は、特に限定されない。例えば、ある特定の実施形態において、押出機、例えば二軸押出機は、背圧調整器、溶融ポンプ、または歯車ポンプと連結される。例示的な実施形態はまた、それぞれポンプを含む塩基貯蔵槽及び初期水貯蔵槽も提供する。所望の量の塩基及び初期水が、それぞれ、塩基貯蔵槽及び初期水貯蔵槽から提供される。任意の好適なポンプが使用され得るが、いくつかの実施形態においては、例えば240バールの圧力で約150cc/分の流量を提供するポンプが、塩基及び初期水を押出機へ提供するために使用される。他の実施形態において、注液ポンプは、200バールで300cc/分、または133バールで600cc/分の流量を提供する。いくつかの実施形態において、塩基及び初期水は、予熱器で予熱される。
【0040】
1つ以上のポリオレフィンは、ペレット、粉末、またはフレークの形態で、供給装置から樹脂が溶解または混合される押出機の注入口へ供給される。1つ以上のサブ粒子は、供給装置を介して、1つ以上のポリオレフィンと共に同時に押出機へ供給されてもよく、または代替例において、1つ以上のサブ粒子は、1つ以上のポリオレフィンへ混合され、次いで供給装置を介して押出機へ供給されてもよい。代替例において、追加的な1つ以上のサブ粒子は、1つ以上のポリオレフィン及び任意選択で1つ以上のサブ粒子を含む溶融化合物への乳化帯以前に、注入口を介し、更に計量され得る。いくつかの実施形態において、分散剤は、1つ以上のポリオレフィンに樹脂を通し、かつ樹脂と共に添加され、他の実施形態においては、分散剤は二軸押出機に別途提供される。樹脂溶融体は次いで、混合及び運搬帯から、水及び塩基貯蔵槽からの初期量の水及び塩基が注入口を通し添加される押出機の乳化帯へ送達される。いくつかの実施形態において、分散剤は、追加的または独占的に水流へ添加され得る。いくつかの実施形態において、更なる希釈水が、押出機の希釈及び冷却帯の貯水槽から水注入口を介し、添加され得る。典型的に、分散液は、冷却ゾーンで少なくとも30重量パーセントの水に希釈される。加えて、この希釈された混合物は、所望の希釈度が達成されるまで任意の回数希釈され得る。いくつかの実施形態において、水は二軸押出機ではなく、むしろ樹脂溶融体が押出機から出た後に、その溶融体を含む流れに添加される。このようにして、押出機に蓄積される蒸気圧は除去され、分散液が、動静翼混合装置等の第2の混合装置内で形成される。
【0041】
溶融混練生成物は、水中に分散される150nm〜2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含む。150nm〜2000nmのすべての値及び副範囲は、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、粒径は、下限の150、350、550、750、950、1150、1350、1550、1750、または1950nmから、上限の200、400、600、800、1000、1200、1400、1600、1800、または2000nmまでの範囲にわたり得る。
【0042】
(メタ)アクリルモノマー
本明細書で使用する場合、用語「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0043】
本明細書で使用される(メタ)アクリルモノマーとしては、例として、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びジシクロペンタジエニルメタクリレートと、それらのブレンドと、ならびにそれらの組み合わせ等の、C1−C18(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリルモノマーは、官能化、非官能化、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0045】
例示的な官能化(メタ)アクリルモノマーとしては、限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリルアミドが挙げられる。
【0046】
乳化重合
乳化重合条件は、当分野で周知である。乳化重合プロセスは典型的には、1つ以上の界面活性剤を活用する。任意選択で、例示的な界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤が挙げられる。
【0047】
1つ以上の架橋及び/またはグラフト結合剤が、任意選択で乳化重合に添加され得る。例示的な架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリル(イソ)シアヌレート及びトリアリルトリメリテ−トを含むビニル基含有モノマー、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ならびにその混合物及び組み合わせを含む(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0048】
例示的なグラフト結合剤としては、例えばアリルメタクリレート、ジアリルマレエート、及びアリルアクリロキシプロピオネートが挙げられる。
【0049】
代替的な実施形態において、本発明は、1つ以上のポリオレフィンが、エチレンホモポリマー、エチレン/α−オレフィンコポリマー、エチレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィンコポリマー、及びプロピレン/α−オレフィンマルチブロックインターポリマーからなる群から選択される点を除いて、本明細書に開示される実施形態のいずれかに従って、複合ポリマー組成物、耐衝撃性改良剤、耐衝撃性改良樹脂、及び耐衝撃性改良剤を作製する方法を提供する。
【0050】
代替的な実施形態において、本発明は、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、官能化及び非官能化(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される点を除いて、本明細書に開示される実施形態のいずれかに従って、複合ポリマー組成物、耐衝撃性改良剤、耐衝撃性改良樹脂、及び耐衝撃性改良剤を作製する方法を提供する。
【0051】
代替的な実施形態において、本発明は、1つ以上のビニルモノマーが、アルキル/アリール(メタ)アクリレート、官能化アルキル(メタ)アクリレートスチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、クロロプレン、塩化ビニル、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、及びそれら2つ以上の組み合わせからなる群から選択される点を除いて、本明細書に開示される実施形態のいずれかに従って、コア/シェルポリマー組成物、耐衝撃性改良剤、耐衝撃性改良樹脂、及び耐衝撃性改良剤を作製する方法を提供する。
【0052】
代替的な実施形態において、本発明は、乳化重合が1つ以上の架橋剤及び/またはグラフト結合剤の存在下で実行される点を除いて、本明細書に開示される実施形態のいずれかに従って、コア/シェルポリマー組成物、耐衝撃性改良剤、耐衝撃性改良樹脂、及び耐衝撃性改良剤を作製する方法を提供する。
【0053】
代替的な実施形態において、本発明は、マトリックスポリマー樹脂が、ポリカーボネート(PC)及びPCブレンド、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(PBT/PET)及びポリ乳酸等)、ポリスチレン(PS)、スチレンコポリマー(アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)(ポリアミド6及びポリアミド66等)、ならびにアセタール樹脂(POMコポリマー等)からなる群から選択される点を除いて、本明細書に開示される実施形態のいずれかに従う、耐衝撃性改良樹脂を提供する。
【0054】
複合ポリマー粒子
一実施形態において、本複合ポリマー粒子は、コア/シェル構造を提示する。
【0055】
代替的な実施形態において、複合ポリマー粒子は、コアがポリオレフィンを含むコア/シェル構造を有する。
【0056】
更に別の代替的な実施形態において、複合ポリマー粒子は、(メタ)アクリルモノマーがポリオレフィン上に重合して、ポリオレフィンコアの周囲に少なくとも部分的シェルを形成する、コア/シェル構造を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、複合ポリマー粒子は、50〜95重量%のオレフィン由来単位、及び5〜50重量%の(メタ)アクリル由来単位を含み得る。50〜95重量%のすべての単一値及び副範囲が、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、オレフィン由来単位は、上限の55、60、65、70、75、80、85、90、または95重量%から、下限の50、55、60、65、70、75、80、85、または90重量%までであり得る。例えば、オレフィン由来単位は50〜95重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、オレフィン由来単位は60〜95重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、オレフィン由来単位は70〜90重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、オレフィン由来単位は85〜95重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、オレフィン由来単位は65〜85重量%の範囲にわたってもよい。5〜50重量%のすべての単一値及び副範囲が、本明細書に含められ、本明細書に開示され、例えば、(メタ)アクリル由来単位は、上限の10、15、20、25、30、35、40、45、または50重量%から、下限の5、10、15、20、25、30、35、40、または45重量%までの範囲にわたり得る。例えば、(メタ)アクリル由来単位は5〜50重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル由来単位は10〜50重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル由来単位は5〜40重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル由来単位は5〜30重量%の範囲にわたってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル由来単位は15〜35重量%の範囲にわたってもよい。
【0058】
複合粒子のいくつかの実施形態において、メタ(アクリル)成分は、部分的に架橋される。
【0059】
複合粒子のいくつかの実施形態において、(メタ)アクリル成分は、少なくとも50℃のTを有する。50℃以上のすべての単一値及び副範囲が、本明細書に含められ、本明細書に開示される。例えば、(メタ)アクリル成分のTは少なくとも50℃以上であってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル成分のTは少なくとも50℃以上であってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル成分のTは少なくとも60℃であってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル成分のTは少なくとも70℃であってもよく、または代替例において、(メタ)アクリル成分のTは少なくとも80℃であってもよい。別の実施形態において、(メタ)アクリル成分は、120℃以下のTを有する。メタ(アクリル)相は好ましくは、部分的に架橋される。
【実施例】
【0060】
以下の実施例が本発明を例証するものの、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0061】
水性ポリオレフィン分散液を、KWP(Krupp Werner & Pfleiderer Corp.(Ramsey,New Jersey)ZSK25押出機(軸直径25mm、450rpmで回転する60L/D)を活用し、以下の手順に従って調製した。Dow ChemicalからのENGAGE(商標)8200(密度=0.87g/cm、メルトフローインデックス=5(190℃/2.16kg)、ガラス転移温度(T)=−53℃)等の基材ポリオレフィン樹脂(エチレン−オクテンコポリマー)、及びマレイン化ポリエチレン(Clariant(Muttenz,Switzerland)からのLICOCENE PE MA 4351等)を、それぞれ、Schenck Mechatronロスインウェイト式供給装置、及びSchenck定量供給装置を介して、押出機の供給口に供給した。次いでポリマーを溶融ブレンドし、次いで初期水溶液流及びラウリルエーテル(2EO)硫酸塩(HuntsmanからのEMPICOL ESB 70)の存在下で、高圧で乳化した。次いで、この乳濁液相を押出機の希釈及び冷却帯に前方搬送し、ここで追加的な希釈水が添加されて、70重量パーセント未満の範囲の固形分レベル含有量を有する水性分散液を形成した。初期水溶液流及び希釈水はすべて、Isco二重シリンジポンプ(Teledyne Isco,Inc.(Lincoln,Nebraska,USA)から)で供給した。押出機のバレル温度を150℃に設定した。分散液が押出機を出た後、分散液を更に冷却し、メッシュサイズ200μmの濾し袋で濾過した。粒径分析を、Beckman Coulter LS 13320レーザー光散乱式粒径分析計(Beckman Coulter Inc.,Fullerton,California)で、標準的手順を用いて行った。体積平均粒径を獲得した。
【0062】
【表1】
【0063】
ポリオレフィン/(メタ)アクリル複合ポリマーを、水性ポリオレフィン分散液を本発明的複合ポリマー組成物を生成するための種子として用いる乳化重合によって、以下の手順に従って生成した。
【0064】
すべての重合は、表1のポリオレフィン分散液の固形分として示される量を丸底フラスコ反応器に装入し、65℃を維持しながら窒素ガスでパージすることにより行った。触媒溶液を攪拌しながら反応器に添加した。示されるモノマーを予混合し、表2に示される割合でモノマー乳濁液を調製し、60分間にわたって反応器に注入した。同時に、酸化還元触媒対をフリーラジカル開始剤として90分間にわたって反応器に供給した。反応を60℃で90分間維持し、次いで25℃まで冷まし、190μm濾材を通して濾過した。生成物複合ポリマーは、100:15のポリオレフィン対アクリルの比率を含んだ。
【0065】
【表2】
【0066】
(メタ)アクリルモノマーとオレフィンとの比率を変えることにより、PMMA系アクリル成分(ポリオレフィンに対して10〜40重量%)を伴うポリオレフィン粒子を獲得できることが理解されるであろう。
【0067】
本発明的複合ポリマー組成物を、以下の手順に従って噴霧乾燥した。二流体ノズル噴霧器に、Mobile Minor噴霧乾燥器(GEA Process Engineering Inc.(Copenhagen,Denmark))を備え付けた。ノズルへの窒素圧力を、6.0kg/時間の空気流に等しい、50%の流量を伴う1バールに固定した。ガラスジャーを、サイクロン底部の弁が開いているサイクロンの下に配置した。オレフィン−アクリル分散液(〜40重量%の固形分)を、加熱したチャンバ中に乳濁液供給ポンプで圧送した。噴霧乾燥実験を、120℃に固定した注入口温度を伴うN環境下で行い、出口温度は、分散液の供給速度を調整することにより40℃に制御した。その間、疎水表面改質したCaCO(Solvay Chemicals(Brussels,Belgium)からのWINNOFIL(登録商標)S)を、固結防止剤としてチャンバに供給した。乾燥粉末の平均粒径を測定して、20〜40μmの範囲内であった。
【0068】
本発明的耐衝撃性改良剤(オレフィン:アクリル=100:15、アクリル相 94.5%MMA/4%エチルヘキシルメタクリレート/1.5%エチレングリコールジメタクリレート、及び0.5重量%のトリメチルシリメタクリレートを、ポリカーボネート(SABIC Americas,Inc.(Houston,Texas)から商業的に獲得したLEXAN 141R、メルトインデックス12g/分)の耐衝撃性改良剤として使用した。表3は、ポリカーボネート中の本発明的耐衝撃性改良剤の異なる積載量についての物理的特性のデータを提供する。ポリカーボネート(PC)は、LEXAN 141Rであった。比較例を、ブチルアクリレートに基づく総アクリルコア/シェル耐衝撃性改良剤であるPARALOID EXL−2300、及びMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)耐衝撃性改良剤であるPARALOID EXL−2691Aを用いて生成した。PARALOID耐衝撃性改良剤は、The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から商業的に入手可能である。
【0069】
混合手順
グラフト化ポリオレフィンコア−シェルを、ポリカーボネート(Lexan 141R)の耐衝撃性改良剤として使用した。これを、アクリル耐衝撃性改良剤(PARALOID EXL 2300)及びMBS耐衝撃性改良剤(PARALOID EXL 2691A)と比較した。比較目的のため、非グラフト化ポリオレフィン粒子、ならびにエチレン−オクテンコポリマーのペレットを、ポリカーボネート樹脂と共に溶融ブレンドした。混合前に、ポリカーボネート樹脂は、減圧乾燥器中110℃で4時間、十分に乾燥させた。
【0070】
樹脂及び耐衝撃性改良剤(3及び5%添加度で)を、Werner and Pfleiderer ZSK 30共回転二軸押出機(L/D=26)で混合した。
【0071】
樹脂及び改良剤を、押出機の供給口に重量分析K−Tron供給装置を介して供給し、次いで溶融ブレンドした。次いで押出ストランドを冷まし、粒度計(Sheer & Cie−Stuttgart 30)でペレット化した。
【0072】
押出機の温度プロファイルを260−270−280−285−290℃(ホッパーからダイへ)として設定し、混合を150RPMの軸速度及び10kg/時間の産出量で行った。
【0073】
射出成形手順
混合したペレットを減圧乾燥器中110℃で4時間乾燥させ、以下の温度プロファイル、280−280−285−290℃(ホッパーからダイへ)を伴うBattenfield HM80/120装置を活用して、射出成形した。保圧は200バールに設定し、成形温度は80℃であった。成形物を、40秒の冷却時間の後に排出した。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に見られるように、本発明的複合ポリマー耐衝撃性改良剤組成物は、LEXAN 141R(SABIC Americas Inc.から入手可能)が比較例3または4よりも衝撃を多く保持することに役立ち、ここではポリオレフィンがペレットとして添加され、押出機中でブレンドが達成される一方で、比較例4ではポリオレフィンはシェルなしで調製され、次いでLEXANに添加される。最後の2つの場合における衝撃の保持は、市販の添加剤(比較例1及び2)ならびに本発明的実施例1と比較したとき、より低い。
【0076】
下の表4は、本発明的実施例1ならびに比較例1及び2のアイゾット衝撃における風化の効果を例証する。加速された風化は、Atlas Xenon CI−65耐候性試験機を用いて実行した。風化が加速された速度で起こり、それにより自然暴露の長年の効果の観察が大変短い時間でできるように、一定の環境的両極端に試料を曝す。全体的な結果は、生成物の耐候性が素早く決定できるということである。表4に見られるように、アクリル系PARALOID EXL 2300ならびに本発明的耐衝撃性改良剤は、アイゾット衝撃の良好な保持を提供する。
【0077】
【表4】
【0078】
MVIの説明
混合したペレットを、減圧乾燥器中110℃で4時間乾燥させた。溶融粘度指数(MVI)を、Kayeness Dynisco 4000メルトインデクサーを用いて測定した。少量の本化合物(約5〜6グラム)をフィードに導入し、300℃に加熱した。次いで、溶融化合物に力をかけるためにピストンを1.2kg重で挿入し、それをダイ(直径:2mm)を通じて押出する。MVIはcc/10分で表される。
【0079】
図1から容易に見出せるように、低レベルのポリオレフィン/(メタ)アクリル耐衝撃性改良剤を含む本発明的実施例は、エージングを伴う非改良ポリカーボネートと比較して改善された衝撃抵抗を示し、LEXAN 141RのENGAGE 8200とのブレンドの異なりゆく値もまた指摘することができる。
【0080】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
エチレン系ポリマーの密度は、ISO 1183に従って測定した。
プロピレン系ポリマーの密度は、ASTM D792に従って測定した。
MVIは、ISO 1133に従って測定した。
ノッチ付きアイゾット衝撃強度は、ASTM D256に従って測定した。
【0081】
オーブンエージング:ノッチ前の射出成形試験片を、120℃の設定温度の通風オーブン中に配置する。アイゾットバーを、他のバーまたはオーブン表面と接触させないような様式で載置する。試料を一定の時間間隔で取り出し、衝撃強度を室温で測定する。
【0082】
透過電子顕微鏡(TEM)分析
アイゾットバーを、TEM分析のために使用した。試料を円刃刀でざっと整え、ミクロトームチャック中に留めた。締め金を超ミクロトーム中に載置した。次いでこのフィルムを、Diatome CryoTrim器具を用いて1mm×1mm未満の大きさのブロックフェイスに整えた。薄片を表5に見られる条件を用いて切断した。好適な切片を標準的なFormvar TEMグリッド上に睫毛で収集し、グリッドをグリッドホルダー中に配置した。標準的な炭素被覆TEMグリッド上の切片を染色した。表5は、タイミングと、使用された染色液とを示す。次いでグリッドをHitachi 7000 TEMに移し、試料を検査した。画像を、Gatan Ultrascan 1000 4メガピクセルカメラで記録した。
【0083】
【表5】
【0084】
本発明は、その趣旨及び本質的な属性から逸脱することなく他の形態で具現化され得、したがって本発明の範囲を示すものとしては、上述の明細書ではなく添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。

図1
図2
図3