(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端が雄螺子の頭部と相補的な形状に形成され、該雄螺子の頭部と係合することによって、前記雄螺子に対する前記雄螺子の軸線周りの位置関係が固定される保持軸と、前記保持軸を該保持軸の軸線周りに回転駆動する保持軸駆動部と、を有し、前記保持軸は、前記保持軸駆動部に対し、回転力受け取り可能で且つ該保持軸の軸線方向に所定距離相対的に移動可能に構成されている螺子回し機構と、
前記保持軸駆動部に対し前記保持軸を基端から先端に向う方向に付勢する付勢部と、
前記保持軸の軸線方向における前記保持軸の前記保持軸駆動部に対する相対的な位置を検出する位置検出部と、
前記螺子回し機構を保持し、前記螺子回し機構を移動させるロボット本体と、
前記ロボット本体を制御し、且つ前記ロボット本体と協調して作業を行う外部軸として前記保持軸駆動部を制御するロボットコントローラと、を備える、ロボットシステム。
前記ロボットコントローラは、前記保持軸と係合した雄螺子の締め動作を行う際に、前記保持軸の回転角度位置及び回転速度の少なくとも一方を制御し、且つ前記保持軸駆動部が前記保持軸を回転駆動するための電流が目標トルクに対応する制限電流に達したか否かの判定に基づいて前記保持軸の回転駆動を停止するように前記螺子回し機構を制御する、請求項1又は2に記載のロボットシステム。
前記ロボットコントローラは、前記雄螺子と該雄螺子に対応する雌螺子孔とを螺合させた後に前記雄螺子を前記雌螺子孔に螺入させる際に、前記雄螺子の螺入動作開始位置から該螺入動作開始位置と螺入動作終了位置との間の基準位置に前記雄螺子が位置している間は該基準位置から螺入動作終了位置までの回転速度よりも回転速度が高くなるように前記保持軸駆動部を制御する、請求項1乃至4の何れかに記載のロボットシステム。
先端が雄螺子の頭部と相補的な形状に形成され、該雄螺子の頭部と係合することによって、前記雄螺子に対する前記雄螺子の軸線周りの位置関係が固定される保持軸と、前記保持軸を該保持軸の軸線周りに回転駆動する保持軸駆動部と、を有し、前記保持軸は、前記保持軸駆動部に対し、回転力受け取り可能で且つ該保持軸の軸線方向に所定距離相対的に移動可能に構成されている螺子回し機構と、
前記保持軸駆動部に対し前記保持軸を基端から先端に向う方向に付勢する付勢部と、
前記保持軸の軸線方向における前記保持軸の前記保持軸駆動部に対する相対的な位置を検出する位置検出部と、
前記螺子回し機構を保持し、前記螺子回し機構を移動させるロボット本体と、
前記ロボット本体を制御し、且つ前記ロボット本体と協調して作業を行う外部軸として前記保持軸駆動部を制御するロボットコントローラと、を備え、
前記ロボットコントローラは、前記保持軸と係合した雄螺子の締め動作を行う際に、前記保持軸の回転角度位置に位置及び回転速度の少なくとも一方を制御し、且つ前記保持軸駆動部が前記保持軸を回転駆動するための電流が目標トルクに対応する制限電流に達したか否かの判定に基づいて前記保持軸の回転駆動を停止するように前記螺子回し機構を制御する、ロボットシステムの制御方法。
前記ロボットコントローラは、前記雄螺子と該雄螺子に対応する雌螺子孔とを螺合させた後に前記雄螺子を前記雌螺子孔に螺入させる際に、前記雄螺子の螺入動作開始位置から該螺入動作開始位置と螺入動作終了位置との間の基準位置に前記雄螺子が位置している間は該基準位置から螺入動作終了位置までの回転速度よりも速度が高くなるように前記保持軸駆動部を制御する、請求項6又は7に記載のロボットシステムの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の着眼点)
本発明者等は、ロボットによる螺子の締付を高速に且つきめ細かく行うことを鋭意検討した。そして、従来技術には以下の欠点が存在することに着眼した。
【0028】
螺子締め作業は、一般的に、仮締め及び本締め、螺子の螺子孔への螺入時における回転速度調整、締め付けトルクの管理等を含む。具体的に説明すると、2つの物品を複数の螺子を用いて締結する場合、締付力を均一に分散するために、複数の螺子を仮締めした後本締めする。この場合、ナットランナーをロボットにより複数の螺子締め箇所へ順次移動させながら螺子締めを行うが、そのためには、螺子締めの都度、螺子締め箇所に到達したことをロボットがナットランナーに通知し、且つ螺子締め作業が終了したことをナットランナーがロボットに通知する必要がある。また、螺子を螺子孔に螺入する場合、確実に螺子の軸心と螺子孔の中心軸とを一致させるために、低い回転速度で螺子を螺子孔に螺入し、その後、回転速度を所定の回転速度に上げて螺子を締め付ける。この場合、螺子締めが進行するに連れて螺子が前進する。もし、ナットランナーにおける螺子への回転力の伝達部位であるソケットを螺子の前進に追従させるためにナットランナーをロボットによって移動させる方法を採用するのであれば、螺子の前進に関する情報(回転速度、螺子の位置等)をリアルタイムでナットランナーがロボットに提供する必要がある。また、螺子締めの質を担保するために、締め付けトルクを管理するが、この場合、ナットランナーが、締め付けトルクを検知してそれが許容範囲内にあることをロボットに通知する必要がある。
【0029】
このように、ナットランナーをロボットに装着して螺子締め作業を行う場合、ナットランナーとロボットとが協調する必要がある。
【0030】
しかし、ナットランナーとロボットとは、それぞれ別個のコントローラによって制御され、且つ2つのコントローラ間の指令やデータ等のやりとりは所定のプロトコルによる通信によって行われる。そのため、2つのコントローラ間の指令やデータ等のやりとりに時間を要することから、ナットランナーとロボットとの協調を高速に且つきめ細かく行うことが困難である。
【0031】
そこで、本発明者等は、この従来技術の欠点を克服すべく、先端が雄螺子の頭部と相補的な形状に形成され、該雄螺子の頭部と係合することによって、前記雄螺子に対する前記雄螺子の軸線周りの位置関係が固定される保持軸と、前記保持軸を該保持軸の軸線周りに回転駆動する保持軸駆動部と、を有する螺子回し機構と、前記螺子回し機構を保持し、前記螺子回し機構を移動させるロボット本体と、前記ロボット本体を制御し、且つ前記ロボット本体と協調して作業を行う外部軸として前記保持軸駆動部を制御するロボットコントローラと、を備える、ロボットシステムの発明を想到した。
【0032】
本発明によれば、ロボット本体を制御するロボットコントローラが保持軸駆動部をも制御するので、従来技術のような2つのコントローラ間のやりとりのための所定のプロトコルによる通信が不要になり、ロボット本体と螺子回し機構との協調動作の遅延を少なくすることができる。よって、螺子回し作業を高速に且つきめ細かく行うことができる。また、螺子回し機構の構成を簡素化することができ、製造に有利、且つ製造コストも安価となる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るロボットシステム100の構成例を概略的に示す図である。
【0035】
ロボットシステム100は、螺子の締付作業に用いることができるものである。
【0036】
図1に示すように、ロボットシステム100は、螺子回し機構1と、ロボット本体2と、ロボットコントローラ3とを備える。
【0037】
[ロボット本体]
ロボット本体2は、例えば、多関節型の産業用ロボット(多関節ロボット)である。ロボット本体2は、基部21と、多関節のアーム22と、アーム駆動部23(
図3参照)とを有する。
【0038】
基部21は、床面等の載置面に設置される台であり、アーム22を支えている。
【0039】
アーム22は、例えば、複数の関節を備え、基端部が基部21に対して回動可能に連結されている。
【0040】
アーム駆動部23は、駆動軸を回転駆動させることにより、螺子回し機構1を動作領域内の所定位置に位置させるようにアーム22の関節軸を駆動し、螺子回し機構1を移動させる。アーム駆動部23は、アーム駆動部23の駆動軸の回転角度位置、回転速度を検出するエンコーダ23e(
図3参照)を備える。
【0041】
[螺子回し機構]
図2は、ロボットシステム100の螺子回し機構1の構成例を示す要部断面図である。
【0042】
図2に示すように、螺子回し機構1は、保持軸11と、保持軸駆動部13とを備える。また、本実施の形態において、螺子回し機構1は、軸支持部12と、保持軸位置検出部14と、支持枠15を備える。
【0043】
保持軸11は、先端部に雄螺子8の頭部8aと係合する係合部11aを有する。係合部11aは、保持軸11の軸線L1の延在方向から見て、例えば略正六角形の凸状に形成されている。また、雄螺子8の頭部8aには雄螺子8の軸方向から見て、略正六角形の溝が形成され、係合部11aと相補的な形状に形成されている。すなわち、係合部11a及び雄螺子8の頭部8aは、互いの軸線及び軸線L1周りの角度位置(位相)を一致させることにより、係合させることができるようになっている。そして、係合部11aと雄螺子8の頭部8aを係合させることによって、雄螺子8に対する雄螺子8の軸線周りの相対的な位置関係が固定されるように構成されている。通常、保持軸11の係合部11aが雄螺子8の頭部8aの形状に応じた形状となるように、保持軸11は使用する雄螺子8の種類に応じて複数用意される。
【0044】
また、保持軸11は、基端部に後述する軸支持部12の先端部に着脱可能に構成された接続部11bを有する。
【0045】
また、保持軸11は、磁石であり、磁性体で構成された雄螺子8を引き寄せることができるように構成されている。よって、係合部11aと雄螺子8の頭部8aとを係合させることによって、雄螺子8を保持軸11に係止することができる。
【0046】
軸支持部12は、保持軸11を支持し、保持軸駆動部13の回転駆動力を保持軸11に伝達する。本実施の形態において、軸支持部12は、固定軸31と、可動軸32と、ばね33とを有する。
【0047】
固定軸31は、軸線L1の延在方向に延びる棒状に形成されている。
【0048】
可動軸32は、軸線L1の延在方向に延びる棒状に形成されている。可動軸32は、先端部に、接続部32aを有する。接続部32aは、保持軸11の接続部11bに着脱可能に構成され、保持軸11を係合部11aの形状が使用する雄螺子8の種類に応じた形状のものに交換することができるようになっている。
【0049】
また、可動軸32の接続部32a、及び保持軸11を係合部11aは、可動軸32の接続部32aに保持軸11の接続部11bを取り付けることによって、少なくとも、軸線L1周りの相対的な位置関係が固定されるように構成されている。したがって、可動軸32を回転させると、同時に保持軸11も回転するように構成されている。
【0050】
また、可動軸32は、基端部に係合凹部32bを有する。係合凹部32bは、軸線L1の延在方向から見て、固定軸31の先端部に嵌められ、固定軸31に対して軸線L1の延在方向に摺動させることができるように構成されている。これによって、保持軸11は、第1位置P1と、第1位置P1から軸線L1の保持軸11の先端から基端に向かう方向に動かし、固定軸31の基端に近づけた第2位置P2との間を動かすことができるように構成されている。すなわち、保持軸11は、保持軸駆動部13に対し、回転力受け取り可能で且つ保持軸11の軸線方向に距離D1相対的に移動可能に構成されている。
【0051】
そして、可動軸32の係合凹部32bは、軸線L1の延在方向から見て、固定軸31の先端部と相補的な形状に形成され、可動軸32と固定軸31とは、軸線L1周りの相対的な位置関係が固定されるように構成されている。具体的には、係合凹部32b及び固定軸31の先端部が、互いに微小な隙間を有して嵌合する非円形(例えば多角形、外周に凹凸を有する円形等)の断面を有するように形成される。したがって、固定軸31を回転させると、固定軸31と共に可動軸32及び保持軸11が回転するように構成されている。
【0052】
ばね33は、圧縮コイルばねであり、固定軸31の外側であって、固定軸31の基端部と可動軸32の基端部との間に位置するように固定軸31に嵌められ、両端部がそれぞれ固定軸31の基端部及び可動軸32の基端部に当接している。したがって、ばね33は、固定軸31の基端部と可動軸32の基端部とを互いに離間するように付勢している。したがって、通常の状態において、可動軸32は、第1位置P1に位置するように構成され、保持軸11が第1位置P1から第2位置P2に向かって押し付けられることによって、ばね33の付勢力に抗して保持軸11が第1位置P1から第2位置P2に向かって移動するように構成されている。
【0053】
なお、ばね33は、圧縮コイルばねに限定されない。例えば、引張コイルばねを用いて、通常の状態において、可動軸32は、第1位置P1に位置するように構成され、保持軸11が第1位置P1から第2位置P2に向かって押し付けられることによって、ばね33の付勢力に抗して保持軸11が第1位置P1から第2位置P2に向かって移動するように構成してもよい。また、ばね33は、コイルばねに限定されるものではなく、ガスばねでもよい。
【0054】
なお、第1位置P1は、第1位置P1に位置する可動軸32が支持枠15のガイド部15a又はその近傍の部位に当接し、軸線L1方向において第2位置P2から第1位置P1に向かう側に移動しないように規制されることによって規定されている。
【0055】
保持軸駆動部13は、軸支持部12を介して、保持軸11を軸線L1周りに回転駆動する。保持軸駆動部13は、例えばサーボモータである。保持軸駆動部13の駆動軸13aは、固定軸31の基端部に固定的に連結されている。したがって、保持軸駆動部13は、その駆動力によって、固定軸31、可動軸32、及び保持軸11を回転させ、これによって、保持軸11と係合する雄螺子8の螺子締め作業を行うことができるように構成されている。また、駆動軸13aは、駆動軸13aの角度位置及び回転速度を検出するエンコーダ13e(
図3参照)を備える。
【0056】
支持枠15は、例えば円筒状に構成され、固定軸31及び可動軸32の外側に嵌められている。そして、支持枠15の基端部は、保持軸駆動部13を支持している。上述の通り、保持軸駆動部13の駆動軸13aと固定軸31とは固定されているので、支持枠15と固定軸31との軸線L1の延在方向における相対的な位置関係は固定されている。
【0057】
保持軸位置検出部14は、軸線L1の延在方向における保持軸11の軸支持部12に対する相対的な位置を検出するものである。
【0058】
また、ガイド部15aが支持枠15の先端部と可動軸32との間に介在するように設けられている。ガイド部15aは、可動軸32が支持枠15に対して軸線L1の軸線方向に移動可能に案内すると共に、軸線L1周りに回転可能に案内する。
【0059】
保持軸位置検出部14は、例えば、レーザー変位計であるセンサ本体41と、反射板42と、反射板支持部43とを有する。
【0060】
センサ本体41は、軸線L1と平行に伸びる軸線L2上に配設され、反射板42に対してレーザー光を照射し、反射板42からの反射光によって反射板42との距離を検出することができるように構成されている。センサ本体41は、支持枠15に取り付けられている。したがって、センサ本体41は、固定軸31に対する軸線L1の延在方向における相対的な位置関係は固定されている。
【0061】
反射板42は、軸線L2上に配設され、反射板支持部43を介して支持枠15に取り付けられている。
【0062】
反射板支持部43は、支持軸43aと、支持軸連結部43bと、支持軸案内部43cと、を備える。支持軸43aは、軸線L1と平行に伸びる軸線L2に沿って延び、基端部に反射板42が取り付けられている。支持軸連結部43bは、可動軸32に軸受けを介して取り付けられている。よって、支持軸連結部43bは可動軸32に対して軸線L1周りに相対的に回転するように構成されている。一方、支持軸連結部43bは可動軸32に対して軸線L1の延在方向に動かないように固定されて取り付けられている。そして、支持軸43aの先端が支持軸連結部43bに取り付けられている。支持軸案内部43cは、支持枠15に固着されている。また、支持軸案内部43cは、軸線L2と同軸の挿通孔を有し、当該挿通孔には支持軸43aが挿通されている。よって、支持軸案内部43cは、支持軸43aを軸線L2の延在方向に案内するように構成されている。一方、支持軸案内部43cは、支持軸43aが軸線L2の延在方向と直交する平面において動かないように規制している。
【0063】
したがって、上述の通り、支持軸連結部43bは可動軸32に対して軸線L1の延在方向に動かないように固定されて取り付けられ、更に支持軸案内部43cは、支持軸43aを軸線L2の延在方向に案内するように構成されているので、保持軸11及び可動軸32が支持枠15に対して軸線L1の延在方向に相対的に移動すると、保持軸11及び可動軸32と共に支持軸連結部43b、支持軸43a、及び反射板42が支持枠15に対して軸線L1の延在方向に相対的に移動する。一方、センサ本体41は、上述の通り、支持枠15に取り付けられているので、保持軸11及び可動軸32の移動に伴って移動しない。よって、軸線L1の延在方向におけるセンサ本体41と反射板42との距離が変化し、当該距離の変化をセンサ本体41が検出するように構成されている。すなわち、保持軸位置検出部14は、軸線L1の延在方向における保持軸11の保持軸駆動部13に対する相対的な位置を検出することができるように構成されている。
【0064】
また、上述の通り、支持軸連結部43bは可動軸32に対して軸線L1周りに相対的に回転するように構成され、更に支持軸案内部43cは支持軸43aが軸線L2の延在方向と直交する平面において動かないように規制しているので、可動軸32が軸線L1周りに回転しても反射板42及び反射板支持部43は可動軸32と共に回転しないように構成されている。よって、反射板42が軸線L2上から外れないようになっている。
【0065】
[ロボットコントローラ]
図3は、ロボットコントローラ3の構成を概略的に表すブロック図である。以下、
図3を参照しながら、ロボットシステム100の制御系統について説明する。
【0066】
ロボットコントローラ3は、ロボット本体2の周辺に配置され、ロボット本体2の関節軸及びロボット本体2以外の制御対象軸の位置制御、速度制御、又は電流制御を行う。このロボット本体2以外の制御対象軸がロボットコントローラ3の外部軸を構成する。そして、本実施の形態において、ロボットコントローラ3は、外部軸として、保持軸駆動部13の駆動軸13aの制御を行う。したがって、ロボットコントローラ3は、ロボット本体2の関節軸の制御を行うように、螺子回し機構1の保持軸駆動部13の駆動軸13aの制御も行うことができるように構成されている。すなわち、ロボット本体2を操作する者からみて、ロボット本体2に対する動作命令と同様の動作命令を用いて螺子回し機構1を制御することができ、多関節ロボットの制御の中で、螺子締めロボットを制御することができる。よって、螺子回し機構1が独自の動作命令に基づいて動作する場合と比較してロボットシステム100の構成を簡素なものとすることができる。よって、製造に有利、且つ製造コストも安価となる。以下、ロボットコントローラ3の構成について詳述する。
【0067】
ロボットコントローラ3は、例えば、CPU等の演算器を有する制御部51と、ROM及びRAM等のメモリを有する記憶部54と、アーム駆動部23及び保持軸駆動部13に対応するサーボアンプ52とを備えている。
【0068】
制御部51は、目標角度位置、目標回転速度、又は目標トルクを決定し、サーボアンプを介して、アーム駆動部23及び保持軸駆動部13の駆動を制御する。制御部51は、集中制御する単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。
【0069】
サーボアンプ52は、サーボモータであるアーム駆動部23及び保持軸駆動部13のサーボ制御を行うものである。すなわち、サーボアンプ52は、制御部51において決定された目標角度位置、目標回転速度、又は目標トルクに対する現在値との偏差を0にするように追従制御を行う。そして、サーボアンプ52は、アーム駆動部23及び保持軸駆動部13に対して出力する電流値を検出する電流検出部(図示せず)を備える。
【0070】
アーム駆動部23のエンコーダ23e(
図3参照)及び保持軸駆動部13のエンコーダ13eから出力された回転角度位置情報及び回転速度情報、並びに保持軸位置検出部14から出力された保持軸11の位置情報は、制御部51に入力される。また、サーボアンプ52の電流検出部で検出されたサーボアンプ52からアーム駆動部23及び保持軸駆動部13に対して出力された電流の電流値情報も制御部51に入力される。
【0071】
記憶部54には所定の制御プログラムが記憶されていて、制御部がこれらの制御プログラムを読み出して実行することにより、螺子回し機構1及びロボット本体2の動作が制御される。また、記憶部54には、サーボアンプ52から保持軸駆動部13に対して出力された電流値と、当該電流値に対応する保持軸駆動部13の締め付けトルクとの関係を示す制限電流算出テーブルTを記憶している。
【0072】
更に、記憶部54には、螺子回し機構1の後述する螺子取りアプローチ位置Pa、螺子取り位置Pb、螺子取り退避位置Pc、仮締めアプローチ位置Pf、仮締め位置Pg、本締めアプローチ位置Ps、及び本締め位置Ptが記憶されている。また、記憶部54には、保持軸11の第3位置P3、第5位置P5、及び第6位置P6が記憶されている。
【0073】
[動作例]
次に、ロボットシステム100の動作例を説明する。
【0074】
図4Aは、本発明の実施の形態におけるロボットシステム100の動作例を示すフローチャートである。
【0075】
まず、
図4Aに示すように、制御部51は、螺子回し機構1を移動させ螺子置台110にセット(保持)されている雄螺子8を保持軸11に保持させる螺子取り動作を行う(ステップS1)。例えば、雄螺子8は、螺子置台110(
図6A参照)の挿通孔110aに挿通されて螺子置台110に保持されている。挿通孔110aは、雄螺子8の螺子軸の径よりも少し大きい径に形成され、雄螺子8を容易に引き抜くことができるように構成されている。
【0076】
そして、保持軸11に雄螺子8が保持されると、次に、雄螺子8と螺合する雌螺子孔9が設けられている位置に雄螺子8を運び、雄螺子8と雌螺子孔9とを螺合及び螺入させる仮締め動作を行う(ステップS2)。
【0077】
次に、雄螺子8を所定の締め付けトルクで締め付ける本締め動作を行う(ステップS3)。なお、その後任意の退避位置に螺子回し機構1を移動させてもよい。以下、螺子取り動作、仮締め動作、及び本締め動作の詳細について説明する。
【0078】
<螺子取り動作>
図4Bは、ロボットシステム100の動作例を示すフローチャートであり、螺子取り動作について説明するものである。
【0079】
図5A〜Cは、ロボットシステム100の動作例を示す図である。
【0080】
まず、
図5Aに示すように、制御部51は、ロボット本体2を制御して、螺子取りアプローチ位置Paに螺子回し機構1を位置させる(ステップS11)。螺子取りアプローチ位置Paは、保持軸11の係合部11aが螺子置台110に保持されている雄螺子8の頭部8aと対峙する位置であり、且つ雄螺子8の軸線と保持軸11の軸線L1とが一致する位置である。
【0081】
次に、
図5Bに示すように、制御部51は、ロボット本体2を制御して、軸線L1に沿って螺子回し機構1を動かし、螺子取り位置Pbに螺子回し機構1を位置させる(ステップS12)。螺子取り位置Pbは、螺子取りアプローチ位置Paの軸線L1の延在方向において保持軸11を雄螺子8に近づける側(保持軸11の基端から先端に向かう側)に設定され、更に、保持軸11の係合部11a及び雄螺子8の頭部8aの軸線L1周りの角度位置が一致していれば、保持軸11は、ばね33の付勢力に抗して第1位置P1から第2位置P2に向かう方向に少し押し込まれた第3位置P3に位置した状態で雄螺子8と係合する位置である。
【0082】
なお、雄螺子8を螺子置台110にセットする際は、通常、雄螺子8の軸線周りの角度位置はランダムにセットされるため、保持軸11の係合部11a及び雄螺子8の頭部8aの軸線L1周りの角度位置が一致しない可能性がある。この場合、
図5Cに示すように、螺子取り位置Pbに位置する螺子回し機構1の保持軸11の係合部11aは、雄螺子8の頭部8aの溝に嵌らずに頭部8aに乗り上げ、第3位置P3よりも更に第1位置P1から第2位置P2に向かう方向に押し込まれる。
【0083】
次に、制御部51は、保持軸位置検出部14から出力された保持軸11の位置情報に基づき、保持軸11が第3位置P3に位置するか否かを判定する(ステップS13)。上述の通り、保持軸11の係合部11aと雄螺子8の頭部8aとが係合していれば保持軸11は第3位置P3に位置する。一方、保持軸11と雄螺子8とが係合してなければ保持軸11は第3位置P3よりも更に第1位置P1から第2位置P2に向かう方向に距離d1押し込まれる。よって、当該判定を行うことによって、保持軸11の係合部11aと雄螺子8の頭部8aとが係合しているかを判定することができる。
【0084】
そして、制御部51は、保持軸11が第3位置P3に位置してないと判定すると(ステップS13においてNo)、次に、制御部51は、保持軸11を回転させる(ステップS14)。このとき、保持軸11の係合部11a及び雄螺子8の頭部8aの軸線L1周りの角度位置が一致すると、ばね33の付勢力によって、保持軸11の係合部11aは雄螺子8の頭部8aの溝に押し込まれ、保持軸11の係合部11aと雄螺子8の頭部8aとが係合する。そして、再度、保持軸11が第3位置P3に位置するか否かを判定する。すなわち、保持軸11の係合部11a及び雄螺子8の頭部8aの軸線L1周りの角度位置が一致するまで保持軸11を回転させる。これによって、保持軸11と雄螺子8とを係合させることができる。そして、保持軸11と雄螺子8とが係合すると、磁石である保持軸11は、磁性体で構成された雄螺子8を引き寄せ、保持軸11は雄螺子8に保持される。
【0085】
そして、制御部51は、保持軸11が第3位置P3に位置していると判定すると(ステップS13においてYes)、制御部51は、螺子回し機構1を螺子取り退避位置Pcに位置させる(ステップS15)。これによって、雄螺子8は螺子置台110から引き抜かれる。そして、螺子取り動作を終了する。
【0086】
<仮締め動作>
図4Cは、ロボットシステム100の動作例を示すフローチャートであり、仮締め動作について説明するものである。
【0087】
図6A〜Dは、ロボットシステム100の動作例を示す図である。
【0088】
図8は、ロボットシステム100の動作例における、サーボアンプ52の電流検出部が検出した保持軸駆動部13に対して出力する電流値の変化、及び保持軸位置検出部14が検出した保持軸11の位置の変化を示すグラフであり、仮締め動作における変化を示すグラフである。
【0089】
まず、
図6Aに示すように、制御部51は、ロボット本体2を制御して、仮締めアプローチ位置Pfに雄螺子8を保持軸11に保持させた螺子回し機構1を位置させる(ステップS21)。仮締めアプローチ位置Pfは、保持軸11が保持する雄螺子8の先端が雌螺子孔9の端部と対峙する位置に設定され、且つ雄螺子8を螺合させる雌螺子孔9の軸線と保持軸11の軸線L1とが一致する位置である。
【0090】
次に、
図6Bに示すように、制御部51は、ロボット本体2を制御して、軸線L1に沿って螺子回し機構1を動かし、仮締め位置Pgに螺子回し機構1を位置させる(ステップS22)。仮締め位置Pgは、仮締めアプローチ位置Pfの軸線L1の延在方向において雄螺子8を雌螺子孔9に近づける側(保持軸11の基端から先端に向かう側)に設定され、更に、保持軸11に保持されている雄螺子8の先端と雌螺子孔9の端部とが当接する位置である。この状態において、保持軸11は、ばね33の付勢力に抗して第1位置P1から第2位置P2に向かう方向に大きく押し込まれた位置に位置するように仮締め位置Pgは構成される。この位置は、第1位置P1からの距離が、雄螺子8の螺子軸の螺子溝が切られた部分の長さよりも長くなるように構成されるのが好ましい。そして、制御部51は、保持軸位置検出部14から入力された保持軸11の軸線L1方向における位置を、第4位置P4として、記憶部54に格納する。
【0091】
次に、制御部51は、保持軸駆動部13を駆動し、保持軸11を雄螺子8の締め方向に低速で回転させる(ステップS23)。これは、雄螺子8と雌螺子孔9とを螺合させるかかり動作である。このとき、制御部51は、保持軸11の回転角度位置及び回転速度の少なくとも一方を制御する。
【0092】
そして、雄螺子8の螺子山の先端と雌螺子孔9の螺子溝の先端の軸線L1周りの角度位置が一致し、雄螺子8と雌螺子孔9とが螺合する(かかる)と、雄螺子8が雌螺子孔9に螺入していく。これによって、保持軸位置検出部14から入力された保持軸11の位置と第4位置P4との差が大きくなる。
【0093】
次に、制御部51は、保持軸位置検出部14から入力された保持軸11の位置と第4位置P4との差(変位)が所定の値よりも大きくなったと判定するまで保持軸11を雄螺子8の締め方向に低速で回転させる(ステップS24)。当該所定の値は、雄螺子8と雌螺子孔9とが確実に螺合したときの螺入深さ寸法に応じた値に設定されることが好ましく、例えば、雄螺子8の螺子ピッチの1/2の値である。
【0094】
なお、上述の通り、保持軸11は、ばね33によって、第2位置P2から第1位置P1に向かって付勢されているので、雄螺子8が雌螺子孔9に沈み込むと、これに追従して保持軸11は第2位置P2から第1位置P1に向かって移動するように構成されている。よって、雌螺子孔9が螺子回し機構1から離れても保持軸11の係合部11aと雄螺子8の頭部8aとの係合状態が維持されるように構成されている。したがって、螺子回し機構1を所定位置に位置させたまま螺子締めを行うことができる。よって、ロボットコントローラ3による制御内容を簡素化することができる。なお、雄螺子8と雌螺子孔9とが螺合した際の雄螺子8の位置(回転角度位置)が螺入動作開始位置を構成する。
【0095】
次に、雄螺子8が雌螺子孔9にかかると、制御部51は、保持軸11を雄螺子8の締め方向に速度V1(
図8参照)で回転させる(ステップS25)。このとき、制御部51は、保持軸11の回転角度位置及び回転速度の少なくとも一方を制御する。
【0096】
次に、
図6Cに示すように、制御部51は、第5位置P5に保持軸11が位置するまで保持軸11を速度V1で回転させる(ステップS26)。第5位置P5に保持軸11が位置したことは、例えば、保持軸11の回転角度位置、又は保持軸位置検出部14から入力された保持軸11の軸線L1方向における位置に基づいて検出される。
【0097】
そして、制御部51は、保持軸11が第5位置P5に位置したと判定すると、次に、保持軸11を頭部8aの締め方向に速度V2で回転させる(ステップS27)。速度V2は、速度V1よりも低い速度である(
図8参照)。このとき、制御部51は、保持軸11の回転角度位置及び回転速度の少なくとも一方を制御する。なお、保持軸11が第5位置P5に位置している時の雄螺子8の位置が基準位置を構成する。
【0098】
このように、制御部51は、雄螺子8と雌螺子孔9とを螺合させた後、雄螺子8を雌螺子孔9に螺入させる際に、雄螺子8の螺入動作開始位置から基準位置との間に前記雄螺子が位置している間は基準位置から螺入動作終了位置までの回転速度よりも回転速度が高くなるように構成されている。これによって、雄螺子8と雌螺子孔9の螺合を速やかに行うことができる。
【0099】
次に、制御部51は、電流値Irが仮締め電流閾値Iaに到達したか否かを判定する(ステップS28)。この判定は、
図6Dに示すように、雄螺子8の頭部8aの座着面が着座したかを判定するものである。すなわち、
図8に示すように、雄螺子8の頭部8aの座着面が着座すると、雄螺子8の回転速度が急激に低下又は雄螺子8の回転が停止する。よって、目標回転角度位置又は目標回転速度と現在値との差が急拡大し、位置制御又は速度制御によって保持軸駆動部13の制御を行っているサーボアンプ52は、目標回転角度位置又は目標速度に対する現在値との偏差を縮小させようと保持軸駆動部13に供給する電流を急激に増大させる。よって、制御部51は、この急激に増大する電流値を捕捉することができる値に設定された電流閾値Iaを用いて、この値と電流値Irとを比較し、電流値Irが仮締め電流閾値Iaに到達したか否かを判定することによって、雄螺子8の頭部8aの座着面が着座したかを判定することができる。なお、仮締め電流閾値Iaは、後述する本締め電流閾値Ibよりも小さい値となるように設定される。これによって、過大なトルクで雄螺子8が締め付けられ、雄螺子8又は雌螺子孔9が破損することを防止することができる。
【0100】
また、上述の通り、速度V2は速度V1よりも低い速度となるように構成されているので、雄螺子8の頭部8aの座着面が着座してから仮締め動作を終了させるまでの間に過大なトルクで雄螺子8が締め付けられ、雄螺子8又は雌螺子孔9が破損することを防止することができる。
【0101】
そして、制御部51は、電流値Irが本締め電流閾値Ib(制限電流)に到達していないと判定する間は(ステップS28においてNo)、保持軸11を回転させ(ステップS27)、電流値Irが本締め電流閾値Ib(制限電流)に到達すると(ステップS28においてYes)、保持軸11の回転を停止する(ステップS29)。なお、保持軸11の回転を停止した際の雄螺子8の位置(回転角度位置)が螺入動作終了位置を構成する。
【0102】
したがって、制御部51は、雄螺子8と雌螺子孔9とを螺合させた後に雄螺子8を雌螺子孔9に螺入させる際に、雄螺子8の螺入動作開始位置から螺入動作開始位置と螺入動作終了位置との間の基準位置に雄螺子8が位置している間は基準位置から螺入動作終了位置までの回転速度よりも回転速度が高くなるように前記保持軸駆動部を制御するように構成されている。
【0104】
<本締め動作>
図4Dは、ロボットシステム100の動作例を示すフローチャートであり、本締め動作について説明するものである。
【0105】
図7A、
図7Bは、ロボットシステム100の動作例を示す図である。
【0106】
図9は、ロボットシステム100の動作例における、サーボアンプ52の電流検出部が検出した保持軸駆動部13に対して出力する電流値の変化、及び保持軸位置検出部14が検出した保持軸11の位置の変化を示すグラフであり、本締め動作における変化を示すグラフである。
【0107】
まず、
図7Aに示すように、制御部51は、ロボット本体2を制御して、本締めアプローチ位置Psに螺子回し機構1を位置させる(ステップS31)。本締めアプローチ位置Psは、保持軸11の係合部11aが雌螺子孔9と螺合する雄螺子8の頭部8aと対峙する位置であり、且つ雄螺子8の軸線と保持軸11の軸線L1とが一致する位置である。
【0108】
次に、
図7Bに示すように、制御部51は、ロボット本体2を制御して、軸線L1に沿って螺子回し機構1を動かし、本締め位置Ptに螺子回し機構1を位置させる(ステップS32)。本締め位置Ptは、本締めアプローチ位置Psの軸線L1の延在方向において保持軸11を雄螺子8に近づける側(保持軸11の基端から先端に向かう側)に設定され、更に、保持軸11の係合部11a及び雄螺子8の頭部8aの軸線L1周りの角度位置が一致していれば、保持軸11は、ばね33の付勢力に抗して第1位置P1から第2位置P2に向かう方向に押し込まれた第6位置P6に位置した状態で雄螺子8と係合する位置である。
【0109】
次に、制御部51は、ステップS33〜S34を実行し、保持軸11と雄螺子8とを係合させるが、当該動作は、上記ステップS13〜S14と同様であるので、その説明を省略する。
【0110】
なお、仮締め動作が終了した後、保持軸11と雄螺子8とを係合させたまま本締め動作を行う場合は、上記動作を省略することができる。
【0111】
次に、制御部51は保持軸11を締め方向にゆっくりと回転させる(ステップS35)。このとき、制御部51は、保持軸11の回転角度位置及び回転速度の少なくとも一方を制御する。
【0112】
次に、制御部51は、電流値Irが本締め電流閾値Ib(制限電流)に到達し、且つ保持軸11が回転していないか否かを判定する(ステップS36)。すなわち、制御部51は、保持軸駆動部13が保持軸11を回転駆動するための電流が本締め電流閾値Ibが達したか否かの判定を含む判定を行う。
【0113】
図9に示すように、本締め電流閾値Ibは、上記本締め電流閾値Ibは、予め決定される値であり、予め規定されている雄螺子8の締付トルクに対応する電流値に基づく値である。本実施の形態において、本締め電流閾値Ibは、制御部51が記憶部54に記憶されている制限電流算出テーブルTを参照し、予め規定されている雄螺子8の締付トルクに対応する電流を算出することによって算出される。したがって、制御部51は、本締め電流閾値Ibと電流値Irとを比較し、電流値Irが本締め電流閾値Ibに到達したか否かを判定することによって、予め規定されている締付トルクで雄螺子8が締め付けられているか否かを判定することができる。更に、本実施の形態において、制御部51は、保持軸11が回転していないか否かの判定も行っているので、より確実に予め規定されている締付トルクで雄螺子8が締め付けられているか否かを判定することができる。
【0114】
そして、ロボットシステム100は、ロボットコントローラ3の外部軸としての保持軸駆動部13の駆動電流を利用して雄螺子8の締め付けトルクを検出するので、螺子締めをきめ細かく行うことができ、且つ専用のトルクセンサが不要になる。
【0115】
なお、制御部51は、上記判断に加え、例えば保持軸11の変位が検出されない状態にあるか否かについても同時に判断すれば、更に正確に雄螺子8を締め付けることができる。
【0116】
そして、制御部51は、電流値Irが本締め電流閾値Ib(制限電流)に到達していない、又は電流値Irが本締め電流閾値Ib(制限電流)に到達していても保持軸11が回転していると判定する間は(ステップS36においてNo)、保持軸11を回転させ(ステップS35)、電流値Irが本締め電流閾値Ib(制限電流)に到達し、且つ保持軸11が回転していないと判定すると(ステップS36においてYes)、保持軸11の回転を停止する(ステップS37)。保持軸11の回転の停止は、例えば、目標回転速度を0にすることによって行われる。なお、これに限られるものではなく、制御部51が保持軸11の回転を停止するためのブレーキ装置を制御して、保持軸11にブレーキをかけることによって、保持軸11の回転を停止させてもよい。
【0117】
そして、制御部51は、保持軸11の制御を終了し、本締め動作を終了する。
【0118】
なお、本締め動作を終了する前に、制御部51は保持軸11を緩め方向に回転させてもよい。これによって、保持軸11の係合部11aを雄螺子8の頭部8aの溝から容易に抜くことができる。
【0119】
以上に説明したように、本発明のロボットシステム100は、ロボット本体2を制御するロボットコントローラ3が保持軸駆動部13をも制御するので、従来技術のような2つのコントローラ間のやりとりのための所定のプロトコルによる通信が不要になり、ロボット本体2と螺子回し機構1との協調動作の遅延を少なくすることができる。よって、螺子回し作業を高速に且つきめ細かく行うことができる。
【0120】
また、螺子回し機構1の構成を簡素化することができ、製造に有利、且つ製造コストも安価となる。
【0121】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係るロボットシステム200の構成例を概略的に示す図である。
図11は、ロボットコントローラ3の構成を概略的に表すブロック図である。
【0122】
図10に示すように、ロボットシステム200は、螺子回し機構1と、ロボット本体2と、ロボットコントローラ3と、トルクセンサ204とを備える。螺子回し機構1、ロボット本体2、及びロボットコントローラ3の構成は、上記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0123】
トルクセンサ204は、螺子回し機構1の保持軸11と係合する係合部205を有する。そして、トルクセンサ204は、係合部205の負荷トルクを検出するように構成されている。
図11に示すように、トルクセンサ204が検出した負荷トルク値は、制御部51に入力される。
【0124】
[動作例]
次に、ロボットシステム200の動作例を説明する。
【0125】
まず、制御部51は、ロボット本体2を制御して保持軸11を移動させて、保持軸11と係合部205とを係合させる。
【0126】
次に、制御部51は、保持軸駆動部13に供給する第1の電流値を決定し、保持軸駆動部13に第1の電流値で電流が供給されるよう制御する。これによって、保持軸11が回転し、係合部205を所定のトルクで締め付け、トルクセンサ204が負荷トルクを検出する。
【0127】
次に、制御部51は、トルクセンサ204が検出した負荷トルク値と第1の電流値とを関連付ける。
【0128】
そして、上記動作を繰り返し実行し、異なる電流値である第1〜第Nの電流値と、これらの電流値にそれぞれ関連付けられた負荷トルク値とを得る。
【0129】
そして、上記第1〜第Nの電流値と、これらの電流値にそれぞれ関連付けられた負荷トルク値に基づいて近似式を算出し、これを、
図12に示すように制限電流算出テーブルTとして決定する。
【0130】
このように、ロボットシステム200は、螺子の目標締付トルクと実際の締付トルクの乖離を自動で防止することができる。
【0131】
(実施の形態3)
上記実施の形態1において、螺子回し機構1は、ばね33によって保持軸11を第2位置P2から第1位置P1に向かって付勢されるように構成し、雄螺子8が雌螺子孔9に沈み込むと、これに追従して保持軸11は第2位置P2から第1位置P1に向かって移動するように構成した。これに代えて、ロボット本体2が保持軸11を第2位置P2から第1位置P1に向かって付勢し、雄螺子8が雌螺子孔9に沈み込むと、これに追従して螺子回し機構1の保持軸11が第2位置P2から第1位置P1に向かって移動するように、制御部51がロボット本体2を制御してもよい。このとき、保持軸位置検出部14による保持軸11の位置の検出に代えて、ロボット本体2の関節軸の角度軸に基づいて螺子回し機構1の保持軸11の位置を検出するように構成されてもよい。
【0132】
このように構成することによって、更に螺子回し作業を高速に且つきめ細かく行うことができる。
【0133】
(実施の形態4)
上記実施の形態1において、保持軸11は、ばね33によって、第2位置P2から第1位置P1に向かって付勢されるように構成した。これに代えて、保持軸11は、サーボモータ等の駆動部の駆動力によって、第2位置P2から第1位置P1に向かって付勢されるように構成してもよい。これによって、任意の付勢力で保持軸11を付勢することができるので螺子回し作業を更にきめ細かく行うことができる。
【0134】
(実施の形態5)
上記実施の形態1において、制御部51は、可動軸32に装着されている保持軸11を、雄螺子8の種類に応じた形状のものに交換するように螺子回し機構1及びロボット本体2を制御するように構成されていてもよい。
【0135】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。