特許第6397550号(P6397550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6397550-体質改善剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6397550
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】体質改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/45 20060101AFI20180913BHJP
   A61K 36/47 20060101ALI20180913BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20180913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A61K36/45
   A61K36/47
   A61P3/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-174465(P2017-174465)
(22)【出願日】2017年9月12日
【審査請求日】2018年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】内山 太郎
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/005514(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/173010(WO,A1)
【文献】 伊藤正男ほか編,医学書院 医学大辞典,2003年 3月 1日,第1版,p.1523
【文献】 日本臨牀,1987年,第45巻, 第8号,pp.1741-1746
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL,2009年 9月,Vol.37, No.9,pp.39-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea)とアムラ(Phyllanthus emblica又はEmblica officinale)の植物体又はその抽出物を含有することを特徴とする、疲労、睡眠、むくみ、肩のこり、又は手足の冷えのいずれかを改善するための体質改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea)とアムラ(Phyllanthus emblica又はEmblica officinale)の植物体又はその抽出物を含有した、食品又は医薬品に有用な体質改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
働く人の多くは、疲労感やだるさ、慢性的な消化器系の不快感、睡眠不足などに悩まされており、特に女性は、これら症状に加え、手足の冷え、肌の不調などの症状が、日常的な悩みとなっている。
【0003】
このような日常的かつ慢性的な症状を総合的に緩和あるいは治療するため、漢方薬が服用されることが多いが、その効果は長期間服用することによって徐々に現れるため、症状のすばやい改善を求めることは困難である。
【0004】
一方、各症状に対し西洋医薬を服用することも可能ではあるが、予防薬として日常的に服用することは困難であり、長期間に服用した場合には副作用等による弊害が生じる危険性も考えられる。
【0005】
このため、日常的な疲労感等の症状に対して、すぐれた効果を有するとともに、継続的な経口摂取が可能な天然由来で安全性の高い有効成分を配合した体質改善剤の開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−292738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、日常的な疲労感等の症状に対し、すぐれた改善効果を有するとともに、継続的な経口摂取が可能な天然由来で安全性の高い有効成分を配合した体質改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ツツジ科スノキ属(Vaccinium)のリンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea)とトウダイグサ科エンブリカ属(Emblica)のアムラ(Phyllanthus emblica又はEmblica officinale)の植物体又はその抽出物を継続的に服用した場合、疲労、睡眠、むくみ、肩のこり、手足の冷えが効果的に改善されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、リンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea)とアムラ(Phyllanthus emblica又はEmblica officinale)の植物体又はその抽出物を含有することを特徴とする、疲労、睡眠、むくみ、肩のこり、又は手足の冷えのいずれかを改善するための体質改善剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の体質改善剤によれば、継続的に服用した場合、疲労、睡眠、むくみ、肩のこり、又は手足の冷えのいずれかを効果的に改善し、健康的で良好な状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】体質改善の効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の体質改善剤は、経口摂取することが可能なツツジ科スノキ属(Vaccinium)のリンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea)とトウダイグサ科エンブリカ属(Emblica)のアムラ(Phyllanthus emblica又はEmblica officinale)から得られる植物体又はその抽出物を有効成分として含有する。
【0013】
リンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea)は、別名コケモモと呼ばれ、北欧の北極圏やカナダに数多く自生し、ビタミンC やクエン酸を豊富に含むことが知られている。果実は、生食されるとともに、ジュース、ジャムなどの加工食品に常用されている。
【0014】
本発明に用いられるリンゴンベリーの部位としては、特に限定されるものでないが、果実(未熟果実、完熟果実、乾燥果実)、葉、塊根、花、種子等、任意に用いられ得る。中でも果実が好ましく用いられる。
【0015】
本発明に用いるリンゴンベリーは生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の点から乾燥粉末あるいは溶媒抽出物として用いることが好ましい。
【0016】
乾燥粉末を得る方法としては、植物の各種部位(果実、葉、塊根、花、種子等)あるいは全草を細断又は粉砕し、その後に乾燥する方法や植物を乾燥した後に細断又は粉砕して乾燥粉末を得る方法がある。また、植物を細断又は粉砕し、発酵や酵素処理を施した後、乾燥し、更に必要に応じて所定の粒径にすべく粉砕する方法等を適宜採ることができる。
【0017】
リンゴンベリーの抽出物は常法より得ることができ、例えば、リンゴンベリーを必要により乾燥した後、抽出溶媒に一定期間浸漬するか、あるいは加熱還流している抽出溶媒と接触させ、次いで濾過し、濃縮して得ることができる。抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。上記溶媒で抽出して得た抽出液をそのまま、あるいは濃縮したエキスを用いるか、あるいはこれらエキスを吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えばアンバーライトXAD−2)のカラムにて吸着させた後、メタノールまたはエタノールで溶出し、濃縮したものも使用することができる。また分配法、例えば水/酢酸エチルで抽出した抽出物等も用いられる。リンゴンベリー抽出物は、例えば「リンゴンベリーエキス」(オリザ油化(株)製)等として市販されており、これら市販品を用いてもよい。
【0018】
本発明で用いるアムラ(Phyllanthus emblica又はEmblica officinale)は、トウダイグサ科コミカンソウ属(Emblica)に属する落葉の亜高木で、インドからマレーシア地域および中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。アムラは各地方または言語によりそれぞれ固有の名称を有しており、例えば、余柑子、油柑、アンマロク、マラッカノキ、インディアングーズベリー等とも称されている。
【0019】
アムラの使用部位としては、特に限定されるものではなく、果実(未熟果実、完熟果実、乾燥果実)、葉、塊根、花、種子等、任意に用いることができるが、中でも果実が好ましく用いられる。
【0020】
アムラは生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の点から乾燥粉末あるいは溶媒抽出物として用いることが好ましい。乾燥粉末や抽出物を得るための方法は、特に限定されるものでなく、上記リンゴンベリーで記した方法を採用することができる。アムラ抽出物は、例えば太陽化学(株)から「サンアムラ」等として市販もされており、これら市販品を用いてもよい。
【0021】
本発明の体質改善剤は、各種飲食品に配合し食品として摂取することができ、また、医薬製剤として投与することができる。
【0022】
本発明の体質改善剤は、各種飲食品にリンゴンベリーとアムラの植物体又はその抽出物を配合しても得ることができるが、量産工程においては、前記体質改善剤を仕掛品とし、これを各種飲食品に配合してもよい。
【0023】
摂取(投与)するリンゴンベリーとアムラの量は、摂取(投与)する方法や剤型等に応じて、適宜決めることができるが、一日当たりの摂取(投与)量を、乾燥質量換算でリンゴンベリーについては0.1mg〜10g、好ましくは1〜1000mg、最も好ましくは10〜100mgとし、アムラについては、0.1mg〜10g、好ましくは1〜1000mg、最も好ましくは10〜100mgとするように調製することが望ましい。
【0024】
本発明の体質改善剤を飲食品に配合する場合には、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては機能性素材、賦形剤、呈味剤を含ませることができる。
【0025】
機能性素材としては、パントテン酸、葉酸、ビオチンなど各種ビタミン類、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄など各種ミネラル類、アミノ酸、オリゴ糖、プロポリス、ローヤルゼリー、イチョウ葉、ウコン、EPA、DHA、コエンザイムQ10、コンドロイチン、乳酸菌、ラクトフェリン、イソフラボン、プルーン、キチン、キトサン、グルコサミン、α−リポ酸、アガリクス、ガルシニア、プロポリス、コラーゲン、アスタキサンチン、フォースリン、カテキン、セサミン、セラミド、モロヘイヤ、スピルリナ、キャッツクローなどが挙げられる。これらの機能性素材は、単独で又は二種以上で組み合わせて使用できる。
【0026】
賦形剤としては、所望の剤型とするときに通常用いられるものであれば何でも良く、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類が挙げられる。これら賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0027】
呈味剤としては、ボンタンエキス、ライチエキス、ゆずエキス等の各種果汁エキス、リンゴ果汁、オレンジ果汁、レモン果汁等の各種果汁、ピーチフレーバー、ウメフレーバー、ヨーグルトフレーバー等の各種フレーバー、アセスルファムK、スクラロース、エリスリトール、オリゴ糖類、マンノース、キシリトール、異性化糖類等の各種甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の各種酸味料、緑茶、ウーロン茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶等の各種茶成分等が挙げられる。これら呈味剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
その他の着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤等については、食品等に使用される公知のものを適宜選択して使用できる。
【0029】
飲食品の形態としては、例えば、液体状、固形状、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状など任意に選択することができる。
【0030】
飲食品の具体例として、例えば、果汁飲料、野菜ジュース、清涼飲料、茶等の飲料類、スープ、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、クッキー、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、ドリンク剤などの栄養補助飲食品、特定保健用飲食品、機能性飲食品、健康飲食品などが挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0031】
本発明の体質改善剤を医薬製剤として用いる場合、剤型は適宜選択できるが、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の液体製剤等とすることができ、これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の効果を確認するために行った試験及び結果ついてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の試験例あるいは実施例に限定されるものではない。
【0033】
パネラーによる連用テストを行い、以下に示す試験により本発明の効果を確認した。連用テストは、4種類の試験試料(ドリンク)を用意し、A〜D群に分かれて実施した。パネラーの数は、A群39名、B群8名、C群14名、D群39名である。各パネラーは試験試料(ドリンク)を1日1本、経口摂取により服用した。
【0034】
試験試料(ドリンク)の処方を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
試験1「アンケート評価」
(試験方法)
連用テスト開始前と連用テスト開始28日後において、「疲れやすさ」、「疲労の回復度合い」、「朝の目覚めやすさ」、「ぐっすり眠れる」、「体が重くだるい」、「筋肉痛のなりやすさ」、「足のむくみ」、「朝の顔のむくみ」、「肩のこり」、「手足の冷え」、「ほてりやホットフラッシュ」、「二日酔いのなりやすさ」に関する項目についてアンケート調査を実施した。
【0037】
アンケートは、評価尺度として汎用されているVAS(視覚的アナログ尺度(visual analogue scale)の略称)により評価した。すなわち、それぞれの調査日に、被験者に10cmの横一直線に引いた直線を記載した用紙を配布し、直線の左端を「一番悪い状態」、右端を「一番良い状態」として、実感できる程度を直線上の位置として記入(被験者が線分上の一箇所に印を付す)してもらい、試験開始の位置を基準として右側(又は左側)に移動した距離を尺度値として評価した。尚、群間差を検証するための統計解析はTukeyにて実施した。
【0038】
図1に示すように、D群(リンゴンベリーとアムラ配合)は、A群(プラセボ)、B群(アムラ単独配合)、C群(リンゴンベリー単独配合)のいずれと比較しても、すべての項目においてすぐれた効果を発揮することが確認された。
【0039】
【表2】
【0040】
また表2は、A群(プラセボ)、B群(アムラ単独配合)、C群(リンゴンベリー単独配合)、D群(リンゴンベリーとアムラ配合)の群間差を統計解析により検証した結果を示す。表中、***印は有意確率p<0.001による有意差、**印は有意確立p<0.01による有意差、*印は有意確率p<0.05による有意差、+印は有意確率p<0.1による有意な傾向差が認められたことを示す。

【0041】
表2の結果から、D群(リンゴンベリーとアムラ配合)は、A群(プラセボ)に対して、すべての項目において有意差があることが認められた。また、D群(リンゴンベリーとアムラ配合)は、B群(アムラ単独配合)、C群(リンゴンベリー単独配合)に対しても、ほぼすべての項目において有意差あるいは有意な傾向差が認められ、リンゴンベリーとアムラを配合することによる相乗効果を確認することができた。
【0042】
以下に、ドリンク以外の体質改善剤の処方例を示すが、これらは単なる一例であり本発明を限定するものではない。
【0043】
処方例1:タブレット(1日分)
(1)リンゴンベリー抽出物(乾燥質量換算) 25mg
(2)アムラ抽出物(乾燥質量換算) 30mg
(3)調整油(鐚瓶E含有)(加工でんぷん) 36mg
(4)ビタミンC 200mg
(5)ビタミンB2 8mg
(6)ビタミンB6 20mg
(7)ショ糖エステル 40mg
(8)結晶セルロース 126mg
(9)コーンスターチ 適量
合計 2g
【0044】
処方例2:カプセル(1日分)
(1)リンゴンベリー抽出物(乾燥質量換算) 25mg
(2)アムラ抽出物(乾燥質量換算) 30mg
(3)ステアリン酸カルシウム 24mg
(4)二酸化ケイ素 12mg
(5)澱粉 適量
(6)被包剤 192mg
合計 1.2g
【0045】
処方例3:ゼリー(1日分)
(1)リンゴンベリー抽出物(乾燥質量換算) 25mg
(2)アムラ抽出物(乾燥質量換算) 30mg
(3)エリスリトール 6.75g
(4)ゲル化剤 1.35g
(5)ビタミンC 360mg
(6)ビタミンB2 0.75mg
(7)ビタミンB6 0.75mg
(8)甘味料 45mg
(9)酸味料 195mg
(10)香料 165mg
(11)精製水 適量
合計 150g
【要約】      (修正有)
【課題】日常的な疲労感等の症状に対し、すぐれた改善効果を有するとともに、継続的な経口摂取が可能な天然由来で安全性の高い有効成分を配合した体質改善剤の提供。
【解決手段】リンゴンベリー(別名:コケモモ)とアムラ(別名:余柑子、油柑、アンマロク、インディアングーズベリー等)の植物体又はその抽出物を含有する体質改善剤。
【選択図】図1
図1