(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記着目領域の範囲が変更された場合に、当該範囲が変更された前記着目領域について、変更の前後の前記評価値を演算して出力する、領域変更評価値演算手段を有する、ことを特徴とする請求項1記載の視野計。
前記評価値演算出力手段は、前記被検眼の視野全体についての評価値も前記視野測定結果に基づいて演算し、前記着目領域についての評価値と共に出力することを特徴とする、請求項1記載の視野計。
前記ディスプレイ上に表示された構造検査画像に対して構造異常部位を設定し、当該設定された構造異常部位を前記構造検査画像上に表示する構造異常部位指定表示手段を有する、請求項1記載の視野計。
【背景技術】
【0002】
視野検査(閾値検査)では、網膜各部位における光刺激に対する感度を得ることが出来るので、緑内障において、この感度の経時変化を確認することで疾患の進行を判定することが出来る。
【0003】
この際、視野検査では、一般的には、各検査ポイントにおける正常値と検査結果との差を算出し、それらの平均値を指標とすることが多い(MDスロープ等)。また、この平均の計算は視野全体の単純な平均値を使用することもあるが、視野の各部位における重み係数を用意し、重み平均とする場合もある(従来の視野計では、各部位における正常眼データの分散を重み係数としている)。
【0004】
こうした重み係数を採用する理由としては、視野の中心の方が周辺よりも重要であり、同じ1dBの低下でもその重要性が異なることがあげられる。重み係数の考え方としては、従来の視野計のように正常データの標準偏差から算出されるものや、正常値から指定したパーセンタイルまでのデシベル値に対する割合とする方法が考えられる。前者と後者はデータが正規分布を示すような場合には同じ結果を得るが、視野周辺部のように低値側に裾野が広くなるような分布においては、後者の方が実際の分布を反映することが出来有用であると考えられる。
【0005】
さらに、緑内障初期においては、網膜全体ではなく一部において感度低下が見られ、進行するに従いその範囲が拡大することから、個々の検査点における経時変化を表示する視野計もある。この製品の機能としては、視野の個々の部位における経時変化を表示し、それぞれの回帰において統計的有意な低下が見られるかを調べるものである。また有意な低下を示す部位だけを抽出したMD(平均偏差)の方が、全体のMD値の経時変化よりも早く進行を捉えられるという報告もある。
【0006】
しかし、現状のものにおいては、以下の問題がある。
(1)進行判定は統計的に有意な傾きが得られたものを抽出するが、かならずしも緑内障性の構造異常を示す部位であるとは限らない。
(2)各ポイントにおける低下の重大度を考慮していない。(全て同じ尺度で低下を評価している)
そこで、視野検査の結果から着目エリアを指定して、当該着目エリアについての経時変化を演算測定する方式が提案されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、視野検査結果から着目エリアを指定して異常エリアを予測する方法では、既に病状が進行した状態を観察することとなるので、対応が後手になってしまう危険性が有る。
また、最近の知見では視野よりも構造異常の方が早く出現すると言われていることから、眼底カメラ、OCT(干渉断層計)SLO(走査型レーザ検眼鏡)などの構造異常検知機器を用いて眼球の構造異常を検知して、将来の緑内障などにおける視野異常を予見できるような構成が望ましい。
【0009】
本発明は、眼球の構造異常を検知することで、視野計の検査結果を、構造異常を示す部位のみで演算表示、確認することが出来、将来の視野異常の発生を予見することの可能な視野計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、被検眼(22a)の複数の測定点(RG)について所定の視野測定動作を行うことで、当該被検眼(22a)の視野を測定することの出来る、視野計(2)において、
前記視野測定結果を格納するメモリ手段(17)、
前記視野測定の結果を眼底に対応したマップ画像(MAP1,MAP2)としてディスプレイ(20)に生成表示する視野測定結果表示手段(10、24)、
前記視野測定を行った被検眼(22a)についての構造検査画像(PC1)を取得してディスプレイ(20)上に表示する構造検査画像取得表示手段(13)、
前記表示された構造検査画像(PC1)と前記マップ画像(MAP2)を重ね合わせて合成画像(PC2)として前記ディスプレイ(20)上に表示する画像合成手段(16)、
前記合成画像(PC2)上で、着目領域(NA)を設定する着目領域設定手段(15,19)、
当該着目領域(NA)について、前記視野測定の評価値(MD値など)を前記視野測定結果に基づいて演算して出力する評価値演算出力手段(21)、
から構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の観点は、前記マップ画像(MAP1,MAP2)は、前記測定点に対応した複数の区分領域(RG)から構成されており、
前記着目領域設定手段(15、19)は、前記着目領域(NA)を複数の前記区分領域(RG)から設定することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点は、前記各区分領域(RG)には重み係数が設定されており、
前記評価値演算出力手段(21)は、前記視野測定の評価値を前記重み係数を用いた前記着目領域を構成する区分領域(RG)の加重平均値(重みが標準偏差の二乗値の逆数)として演算(式(1)など)することを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の観点は、前記評価値演算出力手段(21)は、前記被検眼の視野全体についての評価値も前記視野測定結果に基づいて演算し、前記着目領域についての評価値と共に出力する(
図8参照)ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の観点は、前記メモリ手段(17)は、被検眼(22a)についての時間的に前後した視野測定結果を格納することが出来、
前記視野変化演算出力手段(21)は、前記時間的に前後した複数の時点の視野測定の評価値をそれぞれ演算して出力する(
図8参照)ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の観点は、前記着目領域設定手段(15,19)は、複数の着目領域を設定することが出来、
前記評価値演算出力手段(21)は、それぞれの前記着目領域について、前記評価値を演算して出力することを特徴とする。
【0016】
本発明の第7の観点は、前記メモリ手段(17)は、視野測定の前記各測定点についての正常閾値(例えば、正常者の平均閾値)を格納しており、
被検眼が反応を返すことの出来た視標の輝度の最低値を、前記複数の測定点について測定して、前記各測定点における閾値検査結果を得る閾値測定手段(10)を有し、
前記視野測定結果表示手段(10)は、該測定された閾値検査結果から各測定点(RG)について、前記メモリ手段(17)に格納された正常閾値に基づいてその偏差値を演算し、それら偏差値からなるトータル偏差結果を示す前記マップ画像(MAP2)を生成するマップ画像生成手段(24)を有する、
ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の観点は、前記ディスプレイ上に表示された構造検査画像(PC1)に対して構造異常部位(UP)を設定し、当該設定された構造異常部位(UP)を前記構造検査画像(PC1)上に表示する構造異常部位指定表示手段(16)を有する、
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の観点は、被検眼(22a)の複数の測定点(RG)について所定の視野測定動作を行うことで、当該被検眼(22a)の視野を測定することの出来る視野測定方法であって、
前記視野測定結果をメモリ(17)に格納するステップ、
前記視野測定の結果を眼底に対応したマップ画像(MAP1,MAP2)としてディスプレイ(20)に生成表示するステップ、
前記視野測定を行った被検眼(22a)についての構造検査画像(PC1)を取得しディスプレイ(20)上に表示するステップ、
前記表示された構造検査画像(PC1)と前記マップ画像(MAP2)を重ね合わせて合成画像(PC2)として前記ディスプレイ(20)上に表示するステップ、
前記合成画像(PC2)上で、着目領域(NA)を設定するステップ、
当該着目領域(NA)について、前記視野測定の評価値(MD値など)を前記視野測定結果に基づいて演算して出力するステップ、
から構成されることを特徴とする。
【0019】
本発明の第10の観点は、更に、前記ディスプレイ(20)上に表示された構造検査画像(PC1)に対して構造異常部位(UP)を設定し、当該設定された構造異常部位(UP)を前記構造検査画像(PC1)上に表示するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1及び第9の観点によれば、構造検査画像とマップ画像を重ね合わせた合成画像上で着目領域を設定し、当該着目領域において、視野測定の評価値を演算するように構成したので、眼底画像などの構造検査画像を用いて、眼球の構造異常を検知することが出来、同時に視野計の検査結果利用して、構造異常を示す部位のみで被検眼の視野状態を演算表示、確認することが出来るようになり、将来の視野異常の発生を予見することの可能な視野計及び視野の測定方法の提供が可能となる。
【0021】
本発明の第2の観点によれば、着目領域を指定する区分領域が視野測定の測定点に対応することから、構造検査画像と視野測定の測定結果を適切に対応させることが出来る。
【0022】
本発明の第3の観点によれば、重み係数を各区分領域に設定することで、各区分領域が存在する視野内の位置に応じた重要度を加味した形で評価値を求めることが出来る。
【0023】
本発明の第4の観点によれば、着目領域と視野全体の評価値を比較することが出来、病変の進行程度などを適切に判断することが可能となる。
【0024】
本発明の第5の観点によれば、時間的に前後した複数の時点の視野測定の評価値を得ることが可能となるので、視野の経時変化などの確認が容易となる。
【0025】
本発明の第6の観点によれば、複数の着目領域を設定することで、構造異常部位が複数確認された場合や、構造異常部位の形状が複雑な場合などにも、容易に対応が可能となる。
【0026】
本発明の第7の観点によれば、各測定点の正常閾値に対する偏差からなるトータル偏差結果がマップ画像で表示されるので、標準状態に対する乖離状態を画像上で容易に認識することが出来る。
【0027】
本発明の第8及び第10の観点によれば、構造異常部位を構造検査画像上に表示することにより、視野測定結果との対比が容易となる。
【0028】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0031】
視野計2は、
図1に示すように、全体が箱状に形成された本体3を有しており、本体
3の前面3aには、あご載せ5及びひたい当て6が設けられている。本体3の、
図1右側には、応答スイッチ1が接続コード9を介して着脱自在に設けられており、更に、あご載せ5及びひたい当て6の前方、即ち
図1紙面の奥方の本体3の内部には、視標が提示される半球状の視野ドーム7が設けられている。視野ドーム7は、
図2に示す、本体3に内蔵された視野測定部10により、視野測定用の視標(図示せず)が視野ドーム7内の任意の位置に自在に投影出来るように構成されている。
【0032】
また、本体3の内部には、
図2に示すように、視野計2の制御部8が設けられており、制御部8は、主制御部11を有している。主制御部11には、バス線12を介して眼底画像入力部13、前述の視標測定部10,着目点領域設定部15,画像合成部16,検査データメモリ17、キーボードなどの入力部19、ディスプレイ20,視標演算部21及び結果解析部24などが接続している。なお、
図2に示す制御部ブロック図は、本発明と関連の有る部分のみを表示しており、本発明と関連のない視野計2の他の構成部分の図示は行っていない。
【0033】
視野計2は、以上のような構成を有するので、被検者22の被検眼22aについてその視野を測定して、緑内障などの診断に利用する場合には、
図2に示すように、被検者22に対して、あご載せ5にあごを載せ、更に、ひたい部分をひたい当て6に押圧接触させて、被検者22の被検眼22aを、所定の視野測定位置に配置するようにする。
【0034】
この状態で、オペレータが入力部19を介して視野計2に対して被検眼の視野測定動作の開始を指令すると、主制御部11は、視野測定部10に対して被検眼22aの視野の測定を指令し、これを受けて視野測定部10は、公知の視野測定手法を用いて、視標(図示せず)を、視野ドーム7内の適宜な位置に順次提示してゆく。その結果、
図5(a)に示すように、測定座標系CS上の複数の測定点(図中、多数の正方形の領域RGで表示。網膜の各部位に対応)について、被検者が反応を返すことの出来た視標の輝度の最低値が測定収集され、それらの値が閾値SVとして、ディスプレイ20上に数値でマップ画像MAP1として表示される。このマップ画像MAP1は、前述した測定点に対応した複数の領域RGから構成されている。図中、視野測定に使用する測定座標系CSの原点ZPは、被検眼22aの黄斑部中心位置対応する形で設定され、また、図中、空欄の部分は、被検者の反応が無かった、又は、測定を行わなかった測定点である。
図5(a)の場合、二つの領域RGb、RGbに対応する測定点は、盲点に対応する測定点である。
【0035】
なお、測定に際しては、被検者は視野ドーム7に提示された視標を被検眼22aを介して視認した場合には、応答スイッチ1を操作し、視認できなかった場合には、応答スイッチ1の操作は行わないので、応答スイッチ1の操作状態と、その際の視野ドーム7内の視標位置及び視標の輝度を関連付ける形で、視野測定部19は、各測定点に関する測定結果を、
図5(a)に示すように取得してゆくことが出来る。
図5(a)の測定結果は、閾値SVの数値が被検眼22aの反応閾値を表示することから、閾値検査結果SHRと呼ばれる。
【0036】
こうして、被検眼11aに関する閾値検査結果SHRが得られたところで、主制御部11は、結果解析部24に対して、得られた閾値検査結果SHRの各測定点に関して、トータル偏差を演算して、トータル偏差結果THRを表示するように指令する。これを受けて、結果解析部24は、検査データメモリ17から、視野測定の各測定点についての、正常閾値ASV(多数の被検眼の測定結果の平均値の場合もあるが、各測定点における正常値と見なされる閾値であることから、被検眼の測定結果の中央値等の適切な値であってもよい)を読み出し、両者の差を偏差値DVとして演算して、
図5(b)に示すように、当該各測定点について当該偏差値DVを眼底視野領域に対応する形で表示してマップ画像MAP2を生成し、ディスプレイ20に表示する。
図5(b)のトータル偏差結果THRのマップ画像MAP2において、偏差値DVとして「0」が表示された領域RGは、測定された閾値SVと正常閾値ASVが等しい測定点であり、「1」や「2」等の正の数字が表示された領域RGは、測定された閾値SVの方が正常閾値ASVよりも感度が高い測定点であり、「−1」や「−2」等の負の数字が表示された領域RGは、測定された閾値SVの方が正常閾値ASVよりも感度が低い測定点である。得られた閾値検査結果SHR及びトータル偏差結果THR及びそのマップ画像MAP1,MAP2は、検査データメモリ17内の被検眼22aに対応するIDデータが付された領域に、被検者22の被検眼22aの測定データMDとしてそれぞれ格納される。
【0037】
こうして、被検眼22aに対する視野測定が完了したところで、オペレータは入力部19を介して測定の終了した被検眼22aの構造検査画像をディスプレイ20に表示するように指令する。これを、受けて主制御部11は眼底画像入力部13に対して測定の終了した被検眼22aについての構造検査画像PC1を取得してディスプレイ20に表示するように指令する。眼底画像入力部13は、検査データメモリ17に既に格納されている当該被検眼22aに関する、眼底カメラ、OCT(干渉断層計)、SLO(走査型レーザ検眼鏡)などの構造異常検知機器を用いて取得した眼底画像等の構造検査画像PC1を読み出して、
図3に示すように、ディスプレイ20に表示する。なお、眼底画像入力部13による構造検査画像PC1の取得は、検査データメモリ17に格納された状態のデータである必要は無く、視野計2と通信回線でオンライン接続された構造異常検知機器に格納された当該被検眼22aに関する構造検査画像PC1のデータを取得する形でもよく(視野検査に前後して構造異常検知機器で取得された構造検査画像PC1でもよい)、また、適宜な携帯形メモリ素子に格納された状態の構造検査画像データを読み込む形でもよい。
【0038】
ディスプレイ20に構造検査画像PC1が、
図3に示すように表示されたところで、オペレータ(医師)は、当該構造検査画像PC1を参照して、構造異常を呈している部位を判定して、入力部19を介してディスプレイ20上で、当該部位を構造異常部位UPとして選定指定する。すると、画像合成部16がディスプレイ20の構造検査画像PC1上で指定された部位を構造異常部位UPとしてマーキング設定し、
図4に示すように表示する。
図4の盲点部分BPから図中左に向けて横に細長い三角形状に広がる部位がマーキングされた構造異常部位UPである。この構造異常部位UPの抽出は、オペレータが行ってもよいが、構造検査画像PC1の構造異常部位UPに現れる明度の周囲に対する変化などを判定して、画像判定により自動的に抽出するように構成することも出来る。
【0039】
次に、オペレータは、入力部19を介して主制御部11に対して、ディスプレイ20に表示されている構造検査画像PC1に対して、視野測定の終了した被検眼22aについての視野検査結果のトータル偏差結果THRを重ね合わせて表示するように指令する。なお、この処理は、オペレータからの指令を待つこと無く主制御部11が、構造検査画像PC1を取得した段階又は、オペレータが構造異常部位UPを抽出した段階で、図示しないメモリに格納された処理プログラムに基づいて自動的に行ってもよい。
【0040】
構造検査画像PC1に対して、視野測定の終了した被検眼22aについての視野検査結果のトータル偏差結果THRを重ね合わせて表示する旨の指令を受けた主制御部11は、画像合成部16に対して、
図5(b)に示すトータル偏差結果THRのマップ画像MAP2と、
図4の構造異常部位UPが抽出された構造検査画像PC1を、
図6に示すように、ディスプレイ20に重ね合わせる形の合成画像PC2として表示するように指令する。この処理は、
図5(b)のトータル偏差結果THRのマップ画像MAP2の直交座標CSの原点ZPが被検眼22aの黄斑部中心位置(
図4のCT)と対応しており、また領域RGb、RGbに対応する測定点は、盲点BPに対応しているので、構造検査画像PC1の黄斑部中心位置CTを、トータル偏差結果THRのマップ画像MAP2の原点ZPに、構造検査画像PC1の盲点BPをトータル偏差結果THRのマップ画像MAP2の領域RGb、RGbに整合させる形で重ね合わせることで、容易に行うことが出来る。
【0041】
すると、ディスプレイ20には、トータル偏差結果THRのマップ画像MAP2と構造検査画像PC1が重ね合わされた形の合成画像PC2が、
図6に示すように表示されるが、構造検査画像PC1には、予め異常部位UPが抽出表示されているので、当該異常部位UPとトータル偏差結果THRを視覚的に比較して被検眼22aを観察することが出来る。
図6からも分かるように、構造検査画像PC1で抽出された構造異常部位UPとトータル偏差結果THRで「−1」や「−2」等の負の数字が表示された領域RG、即ち、測定された閾値SVの方が正常閾値ASVよりも感度が低い異常部位が概ね対応していることが分かる。しかし、構造異常部位UP以外の領域でも、測定された閾値SVの方が正常閾値ASVよりも感度が低い異常部位が見られる。一方、構造異常部位UPでも、視野測定で視野の異常が出ていないところもある(偏差値DVが0のところ)。一般的に、眼底の構造異常の方が視野測定の機能異常よりも早くに検出されると言われていることから、眼底の構造異常部位周辺でも視野測定の検査結果では正常を示すことはよくあることである。ただし、病気が進行した場合、将来的には眼底画像における構造異常部位周辺で視野の異常が検出される可能性は高いものと考えられる。
【0042】
オペレータ(医師)は、合成画像PC2を観察しながら、入力部19を操作して、
図7に示すように、経時変化を監視すべき着目領域NAを、視野測定の測定座標系CSに設定されたマップ画像MAP2を構成する領域RG単位で指定し、これを受けて主制御部11は着目領域設定部15に対して、オペレータが指定した一つ以上の領域RGを着目領域NAとして設定し、適宜なメモリに格納してゆくように指令する。こうして
図7の場合、15個の領域RGが着目領域NAとして測定座標系CSのX軸の上側に、構造異常部位UPに対応する形で設定される。設定された着目領域NAは、合成画像PC2や検査日などその他のデータと共に、当該被検眼22aの測定データとして検査データメモリ17に格納される。
【0043】
即ち、将来的に構造異常部位UPの周辺で視野の異常が検出される可能性は高いことから、その周辺に着目領域NAを設定しておくことで、将来に渡り、より感度良く進行の程度を把握することが可能になる。なお、
図7の場合、視野全体でのMD値(全測定点、即ち全領域RGにおける測定値(実測閾値)に対するトータル偏差の重み付け平均値)は、+0.23dBとなり、構造検査画像PC1上で構造異常部位UPが認められるにもかかわらず、+となり、平均の閾値SVよりも高くなり、視野測定だけの結果では、正常範囲と判断されることとなる。一方着目領域NAを構成する複数の領域RG(区分領域)についてのMD値は-0.89dBとなり、平均の閾値SVよりも低く、当該領域については、既に正常の閾値SVよりも低い値を示していることが分かる。なお、このMD値は評価値として、着目領域設定部15により着目領域NAが設定される度に、主制御部11の指令により、指標演算部21が当該着目領域NA及び視野全体について演算し、結果をディスプレイ20や図示しないプリンタなどの出力機器に出力すると共に、検査データメモリ17に格納しておく。
【0044】
ここで、トータル偏差に重み付け平均値を用いるのは、視野の中心部と周辺部では、応答の安定度が異なることによる。応答の安定度は、測定結果のばらつきとして現れてくるが、視野中心部は測定感度(閾値)が良く、結果のばらつきも少ないが、視野周辺に向かうにつれて測定感度(閾値)は低く、ばらつきも大きくなる。よって視野中心部ではより少ない感度低下でも異常と判定すべきだし、視野周辺部の場合は、ある程度結果の数値が低くてもばらつきの範囲内である可能性がある。すなわち、同じ1dBの変動でも視野中心部と視野周辺部とでは重要度が異なることとなる。
【0045】
このため、視野検査結果の解析において一般的に使用される、Mean Deviation(MD値)は重み係数を用いたトータル偏差(各点における正常値と実測閾値との差)の平均値として計算される。このとき、重み係数には正常眼の視野測定結果のデータベースから得られる、各測定点(領域RG)でのばらつきを示す“標準偏差の二乗値の逆数”が用いられる。重み係数を使用してMD値を求める式(1)参照。
【数1】
ここで、Xi:点iにおける実測閾値 (dB)、Ni:点iにおける正常値(dB)、SIi:点iにおける標準偏差(dB)である。即ち、各測定点、従って領域RG毎に、重み係数が設定され、MD値は、当該重み係数を加味して求められる。
【0046】
重み係数を用いることの意味は、各測定点における閾値低下量を等しく評価する点にある。すなわち、狭い範囲であれば、重み係数を用いる利点はあまりないが、視野の中心部から周辺部を含んだ範囲(例えば、着目領域NA)等の広い範囲で解析をする場合は、重み係数を用いた方がより視野の重要度を考慮した解析が可能となるのである。
【0047】
こうして、被検眼22aについて、ある時点の構造検査画像PC1、視野測定結果、それらの合成画像PC2、着目領域NA及び当該着目領域NA及び視野全体についてのMD値などが検査データメモリ17に格納されると、その後の当該被検眼22aについて、所定の時間経過毎(例えば、6ヶ月毎、1年毎など)に同様の検査を行ない、そのたび毎に構造検査画像PC1、視野測定結果、それらの合成画像PC2、着目領域NA及び当該着目領域NA及び視野全体についてのMD値などを測定データとして格納してゆく。すると、検査データメモリ17には、当該被検眼22aの着目領域NA及び視野全体についての、MD値などの変化が蓄積されてゆくこととなる。
【0048】
そこで、オペレータ(医師)が、任意の時点で、検査データメモリ17の当該被検眼22aについて、病状の変化などを見るために、過去の複数の時点の視野測定結果に基づいて、着目領域NA及び視野全体についてMD値の経時変化を表やグラフなどの視野変化図として表示するように、入力部19を介して指示する。すると、主制御部11は、結果解析部24に対して、検査データメモリ17に格納された当該被検眼22aについてのデータに基づいて、例えば、
図8(a)に示すように、検査日DAT毎の、着目領域NAのMD値MD1や、その際の視野全体のMD値MD2を表の形でディスプレイ20に表示したり、
図8(b)に示すように、グラフで表示したりするように指令し、結果解析部24は、それを実行する。なお、経時変化を見る際に、被検眼について視野測定のデータが多くの時点に関して検査データメモリ17に格納されている場合には、オペレータが入力部19を介して選択した、複数の時点の視野測定のデータに基づいて
図8に示すような図表が作成出力されるように構成することも出来る。
【0049】
なお、当然構造異常部位UP自体も病気の進行によって範囲が広がる場合も考えられ、また、別の部位に異常を示すことも考えられるので、着目領域NAは、1個以上、何個でも指定することが出来る。オペレータは合成画像PC2を見ながら、経時的に経過観察を行うべきであると判定した一つ以上の領域RGを指定し、一つ以上の着目領域NAが着目領域設定部15により設定される。この着目領域NAの設定は任意の時点で行うことが出来るので、ある時点の検査結果から、着目領域NAを新たに設定して、当該着目領域NAについて、検査データメモリ17内に格納された構造検査画像PC1や視野測定結果に基づいて、過去にさかのぼって経時変化を調べることも可能となる。また、こうすることで、どの時点から機能異常がはじまるか(または始まったか)を確認することも可能となる。本発明の良い点は、過去にさかのぼって測定結果を再解析することも可能な点にある。
【0050】
なお、着目領域NAを検査毎に、毎回変更することが必ずしも正しい評価になるとは限らない点を付記しておく。例えば、新たな着目領域NAの設定により、着目領域NAが、それまでの着目領域NAに比して範囲が広がった形で設定された場合、新たに範囲が広がった領域においてそれほど視野測定の感度が低下していない場合には、MD値の算出結果として値に差が出ない場合もあるので、注意が必要である。従って、着目領域設定部15では、着目領域NAの設定変更については、その履歴を記録しておき、オペレータが構造検査画像PC1を見て、着目領域NAの範囲を変更した場合には、その変更の前後の着目領域NAについて、指標演算部21でMD値をそれぞれ演算して出力するようにして、着目領域NAの設定が適切であるかをオペレータに判断させる機会を与え、不用意な着目領域NAの変更にも適切に対応できるようにすることが望ましい。
【0051】
上記のように視野検査結果の一部の範囲のみに注目して、異常検出、経時変化確認を行う手法としては、セクター分類という概念が知られている。しかし、このセクター分類では予め視野の範囲をいくつかのグループ(セクター)に分割し、それぞれのグループ内で結果を解析する手法であり、実際の患者の構造検査画像PC1に基づいて着目領域NAを任意に設定し、当該着目領域NAの経時変化を観察するものではない。予め決められたセクターに分割する場合、必ずしも、個人個人の異常部位とセクターが一致するとは限らないので、精度よく構造変化を検出することが出来るかについては問題が多い。本発明のように、実際に構造異常が起こっている範囲を構造検査画像PC1からオペレータ(医師)が指定する方が、患者ごとのばらつきを受けない分、精度良く経過観察が可能になると思われる。
【0052】
本発明は、構造異常を示している部位を構造検査画像PC1上で観察して着目領域NAを設定することで、被検眼22aについて経時的な変化を確認することが容易にできる。また、着目領域NAを設定することで、構造検査画像PC1上で異常を示している部位、もしくはこれから異常を示す可能性の高い部位のみを抽出し、評価することが出来、病状進行についての判定の感度を向上させることが出来る。
【0053】
また、本発明により1個以上の領域RGからなる着目領域NAを適宜設定することで、領域RGなどの測定ポイント毎の重要性を加味した形で、進行評価をすることが出来る。また、構造検査画像PC1を視野測定の結果と重ね合わせることで、両者を比較することで構造異常に対する機能(視野)異常の発現、進行を確認することが容易にでき、構造異常との対応がとりやすい。既に、述べたが、構造検査画像PC1との重ね合わせを実施していなかった時期の視野測定と構造検査画像PC1を重ね合わせることで、視野測定結果を改めて評価することが出来、過去の視野測定を無駄にすること無く、有効に活用することが出来るものである。即ち、構造検査画像PC1と視野測定結果のマップ画像との重ね合わせは、必ずしも、同一の検査時点のデータで無くても、いいということである。