(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397582
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】動力発生用タービンシステム内の作動流体の再加熱
(51)【国際特許分類】
F01K 7/22 20060101AFI20180913BHJP
F01K 3/18 20060101ALI20180913BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
F01K7/22 F
F01K3/18
F01D9/02 102
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-544934(P2017-544934)
(86)(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公表番号】特表2018-511727(P2018-511727A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】US2016019699
(87)【国際公開番号】WO2016138342
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】62/121,593
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507291523
【氏名又は名称】エレクトリック パワー リサーチ インスティテュート,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒューム,スコット アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シムゼン,デイビッド
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−220163(JP,A)
【文献】
特開2013−234607(JP,A)
【文献】
特開2015−031174(JP,A)
【文献】
実開昭62−143004(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 7/22 − 7/24
F01D 9/02
F01K 3/18 − 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの蒸気温度および熱力学的効率を高めるように構成された、その場での漸増的な再加熱システムであって、当該再加熱システムは、
(a) ポンプと、
(b) 輻射ヒーターと、
(c) 前記ポンプ、輻射ヒーター及び蒸気タービンを相互接続してフロー回路を創出する配管と、
(d) 前記フロー回路を流れると共に蒸気タービンで使用される蒸気に熱を直接的に伝達するように構成された熱伝達物質と、
を備え、前記ポンプは前記フロー回路を通じて前記熱伝達物質を移動させ、前記輻射ヒーターは、前記熱伝達物質が熱を蒸気に伝達した後で当該熱伝達物質を再生する、ことを特徴とする再加熱システム。
【請求項2】
前記熱伝達物質は液体塩である、請求項1に記載の再加熱システム。
【請求項3】
前記熱伝達物質は液体金属である、請求項1に記載の再加熱システム。
【請求項4】
前記熱伝達物質は、華氏1400度(摂氏760度)の温度まで加熱される、請求項1に記載の再加熱システム。
【請求項5】
前記熱伝達物質は、熱を蒸気に直接的に伝達すべく、前記蒸気タービンのステータブレードの内部流路を流れる、請求項1に記載の再加熱システム。
【請求項6】
高圧タービン、中間圧タービンおよび低圧タービンを有してなる蒸気タービンの蒸気温度および熱力学的効率を高めるように構成された、その場での漸増的な再加熱システムであって、当該再加熱システムは、
(a)フロー回路であって、
(i) 当該フロー回路を通って流体を移動させるように構成されたポンプ、
(ii) 当該フロー回路を流れる前記流体を再生するように構成された輻射ヒーター、
(iii) 前記蒸気タービンのタービンステータブレードを通って延びる内部流路、並びに、
(iv) 前記ポンプ、輻射ヒーター及び内部流路を相互接続する配管、
を有してなるフロー回路と、
(b) 前記フロー回路を流れると共に蒸気タービンで使用される蒸気に熱を直接的に伝達するように構成された熱伝達物質と、
を備えたことを特徴とする再加熱システム。
【請求項7】
前記熱伝達物質は液体塩である、請求項6に記載の再加熱システム。
【請求項8】
前記熱伝達物質は液体金属である、請求項6に記載の再加熱システム。
【請求項9】
前記熱伝達物質は、華氏1400度(摂氏760度)の温度まで加熱される、請求項6に記載の再加熱システム。
【請求項10】
蒸気タービンの蒸気温度および熱力学的効率を高めるための方法であって、
(a) ポンプ、輻射ヒーター、並びに、前記ポンプ及び輻射ヒーターを前記蒸気タービンの内部通路に相互接続する配管を有してなるフロー回路を提供するステップと、
(b) 前記フロー回路を流れるように構成された熱伝達物質を提供するステップと、
(c) 前記輻射ヒーターを用いて前記熱伝達物質を加熱するステップと、
(d) 前記ポンプを用いて前記配管を通じて加熱された熱伝達物質を移動させ、前記蒸気タービンの高圧タービンの内部通路に送り込むステップであって、前記加熱された熱伝達物質は、前記高圧タービンで膨張した蒸気に熱を直接的に伝達して熱付加の平均温度を増大させる、ステップと、
(e) 加熱された蒸気を前記蒸気タービンの中間圧タービンに移すステップと、
(f) 加熱された蒸気を前記蒸気タービンの低圧タービンに移すステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記高圧タービンで膨張した蒸気に継続的な熱付加をもたらすべく、前記ステップ(c)及び(d)を繰り返すというステップを更に備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱するステップは、前記熱伝達物質を、華氏1400度(摂氏760度)の温度まで加熱することを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、動力発生(又は発電)に利用されるタービンシステムに関し、特にそのようなタービンシステムの熱力学的効率を高める、その場での(in-situ)漸増的な再加熱を提供するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気−ランキン(Rankine)動力サイクルは、熱を動力に変換する標準的な熱力学的動力サイクルである。そのようなものとして、それ(動力サイクル)が熱を動力に変換する効率は、最重要には、蒸気が上げられる温度(高いほど良い)と、低グレードの熱が動力サイクルから取り除かれる温度(低いほど良い)とに依存する。高圧(HP)タービン内の高温蒸気を膨張させ、その蒸気が中間圧(IP)タービン内で膨張する前にその蒸気を再加熱すること(
図1参照)は、蒸気−電力プラントにおける歴史的な手法であった。少数の動力プラントは、IPタービンから生じる蒸気が低圧(LP)タービンに送られる前に再び再加熱されるというダブル再加熱を採用している。蒸気作動流体への熱付加(熱の追加)の平均温度を増大することで、全体の動力サイクル効率およびネットの(正味の)プラント効率が増大される。
【0003】
シングル再加熱(の)蒸気−ランキン動力サイクルの利用は、約150MWe容量を上回る蒸気−電力プラントにおいて標準的なものである。ダブル再加熱に関連しての蒸気配管/制御のコストの増大、並びに、ダブル再加熱に関連した操作の、相対的により多くの労力を要するスタートアップ及びシャットダウンの手順は、動力プラントの開発者/所有者によるそれの受け入れを制限するものとなっていた。従来型の蒸気−電力プラントは、4000psia/1120°Fまでの主蒸気(main steam)条件、および1120°Fまでのシングル再加熱温度を採用している。
【0004】
蒸気タービンは一般に、タービンシャフトの周りに円を成して配列された、交互に並んだ固定式のブレード(ステータ)及び回転式のブレード(回転子)からなっている。固定式ブレードは蒸気流れを回し且つ加速する。蒸気の勢いは回転式ブレードに伝達され、(回転式ブレードは)タービンシャフトを、そして最終的には発電機を回す。追従する回転子を伴ったステータは共に、タービンの単一ステージ(一つの段階)を作り上げる。典型的なHP蒸気タービン及びLP蒸気タービンは直列で10段階を超えることがある。
【0005】
最近10年ほどの間に、蒸気温度を1400°Fまで高めると共に、1400°F程度のシングル再加熱温度で圧力を5100psiaまで高めることの見込み(可能性)が調査されてきた。しかしながら、蒸気温度を従来例の1120°Fよりも上に高めることは、一般的な蒸気−電力プラントで現在使用されていない高ニッケル合金の使用を必要とする。最後の過熱器/再加熱器で高圧の主蒸気(main steam)及び再加熱蒸気を生み出して、その高い圧力/温度の蒸気をボイラーからタービンに運ぶためには、これらの高ニッケル合金が必要とされる。
【0006】
残念なことに、適切な高ニッケル合金は、従来型の動力プラントにおけるスチールよりも一桁ほどコストが高くなる傾向にある。このことは、これら特異な金属に求められる強度的要求や材料量を最小化しつつ、主蒸気(main steam)の圧力よりも低い圧力でボイラーからタービンへ高温度のエネルギーを運ぶ代替的方法の探求へと導いた。
【0007】
従って、高価な合金や配管を必要とせずに、蒸気温度を高めるシステム及び方法に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】(特になし)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記必要性は、動力発生(又は発電)で使用されるタービンシステムの熱力学的効率を高めるための、その場での(in-situ)漸増的な再加熱システム及び方法を提供する本発明によって解決される。
【0010】
本発明の一つの特徴(一観点)によれば、蒸気タービンの蒸気温度および熱力学的効率を高めるように構成された、その場での漸増的な再加熱システムであって、当該再加熱システムは、ポンプと、輻射ヒーター(radiant heater)と、前記ポンプ、輻射ヒーター及び蒸気タービンを相互接続してフロー回路を創出する配管と、前記フロー回路を流れると共に蒸気タービンで使用される蒸気に熱を直接的に伝達するように構成された熱伝達物質と、を備えている。前記ポンプは前記フロー回路を通じて前記熱伝達物質を移動させ、前記輻射ヒーターは、前記熱伝達物質が熱を蒸気に伝達した後で当該熱伝達物質を再生する。
【0011】
本発明の一つの特徴(一観点)によれば、高圧タービン、中間圧タービンおよび低圧タービンを有してなる蒸気タービンの蒸気温度および熱力学的効率を高めるように構成された、その場での漸増的な再加熱システムであって、当該再加熱システムは、フロー回路と、前記フロー回路を流れると共に蒸気タービンで使用される蒸気に熱を直接的に伝達するように構成された熱伝達物質と、を備えている。尚、前記フロー回路は、
当該フロー回路を通って流体を移動させるように構成されたポンプ、
当該フロー回路を流れる前記流体を再生するように構成された輻射ヒーター、
前記蒸気タービンのタービンステータブレードを通って延びる内部流路、並びに、
前記ポンプ、輻射ヒーター及び内部流路を相互接続する配管、を含む。
【0012】
本発明の別の特徴(別観点)によれば、蒸気タービンの蒸気温度および熱力学的効率を高めるための方法は、次のステップを備える、即ち、
ポンプ、輻射ヒーター、並びに、前記ポンプ及び輻射ヒーターを前記蒸気タービンの内部通路に相互接続する配管を有してなるフロー回路を提供するステップと、
前記フロー回路を流れるように構成された熱伝達物質を提供するステップと、
前記輻射ヒーターを用いて前記熱伝達物質を加熱するステップと、
前記ポンプを用いて前記配管を通じて加熱された熱伝達物質を移動させ、前記蒸気タービンの高圧タービンの内部通路に送り込むステップであって、前記加熱された熱伝達物質は、前記高圧タービンで膨張した蒸気に熱を直接的に伝達して熱付加(熱の追加)の平均温度を増大させる、ステップと、
加熱された蒸気を前記蒸気タービンの中間圧タービンに移すステップと、
加熱された蒸気を前記蒸気タービンの低圧タービンに移すステップと、を備える。
【0013】
本発明は、添付の図面と組み合わされる以下の説明を参照することで、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、従来型のタービン用再加熱構成を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に従う、その場での漸増的な再加熱システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面(但し各種の図を通して同じ参照番号は同じ構成要素を示す)を参照すると、
図2は、蒸気タービン11の蒸気温度および熱力学的効率を高めるように構成された、その場での(in-situ)漸増的な再加熱システム10を示す。図示のように、蒸気タービン11は、高圧(HP)タービン12、中間圧(IP)タービン13、及び、低圧(LP)タービン14を含む。このシステム10は、1400°F、即ち760°Cまでの温度で蒸気圧が低いところの中間的な熱流体または熱伝達物質(すなわち、液体塩または液体金属)を使用し、相対的に薄壁な低圧配管の使用を許容する。熱流体は、蒸気がHPタービン12内で膨張されるときに、蒸気タービン11で使用される蒸気に熱を直接的に伝えるために使用され、かくして、より多くの動力を生み出すと共に、ボイラーからタービンへ高温蒸気を運ぶのに必要となるコストの高い高ニッケル合金の必要性を減らすのみならず、分離した(又は別個の)再加熱回路の必要性を排除する。
【0016】
図示のように、熱流体は、ポンプ17によってタービンステータブレード20内の内部流路16を通って循環させられ、熱流体からの熱を、HPタービン内で膨張した蒸気に伝達する。輻射ヒーター(radiant heater、放射加熱器)18は、熱流体を所望温度に再加熱または再生して戻すために使用される。熱流体は、最小厚さの配管でも足りる低圧にてタービン11に送られ、それ(熱流体)は、タービンを通過して膨張するとき作動流体(蒸気)を継続的に再加熱するために使用されることができ、個別の再加熱回路の必要性を排除する。このことは、熱付加(heat addition、熱の追加)の平均温度を改善し、最終的な蒸気温度を増大させることなく効率を改善する。
【0017】
蒸気が熱流体によって一旦加熱されると、それはIPタービン及びLPタービンへ送られる。一般に現在(既存)の発明は、熱付加の平均温度を大幅に増大させる連続的再加熱を提供することで効率を上げている。臨界未満の蒸気動力サイクル(1990年代に作られたものが典型的)については、蒸気追加の平均温度のこの増加は、60°F程度であるかもしれない。加えて、増大した効率(又は効率の増大)は、ほぼ同じサイズのタービン及びボイラーについてタービン出力の増大という結果をもたらす(蒸気に同じ温度限界を用いて、約+0.7%のエイジポイント(age points)の改善)。
【0018】
上記では、動力発生(又は発電)に使用されるタービンシステムの熱力学的効率を増大させるための、その場での再加熱システム及び方法を説明した。この明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された全ての特徴、並びに/又は、そのように開示された方法もしくはプロセスの全てのステップ(工程)は、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的となるような組合せを除いて、任意の組合せで組み合わされてもよい。
【0019】
この明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された各特徴は、そうではないと明確に述べられていない限り、同じ、等価な、あるいは同様の目的を果たす代替的な特徴で置き換えられてもよい。かくして、そうではないと明確に述べられていない限り、開示された各特徴は一連の等価な又は同様の特徴のほんの一例に過ぎない。
【0020】
本発明は、前記実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、この明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴のうちの新規な一つ若しくは全ての新規な組合せに、又は、そのように開示された方法もしくはプロセスのステップのうちの新規な一つ若しくは全ての新規な組合せに拡大適用される。
【符号の説明】
【0021】
10 再加熱システム
11 蒸気タービン
12 高圧(HP)タービン
13 中間圧(IP)タービン
14 低圧(LP)タービン
16 タービンステータブレード内の内部流路
17 ポンプ
18 輻射ヒーター(又は放射加熱器)
20 タービンステータブレード(turbine stator blades)