特許第6397585号(P6397585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397585列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャおよびその通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397585
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャおよびその通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20180913BHJP
   B60L 15/42 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H04L12/46 Z
   B60L15/42
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-558406(P2017-558406)
(86)(22)【出願日】2016年8月17日
(65)【公表番号】特表2018-523929(P2018-523929A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】CN2016095646
(87)【国際公開番号】WO2017084399
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】201610099714.1
(32)【優先日】2016年2月23日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514222673
【氏名又は名称】中▲車▼青▲島▼四方▲車▼▲輛▼研究所有限公司
【氏名又は名称原語表記】CRRC QINGDAO SIFANG ROLLING STOCK RESEARCH INSTITUTE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐燕芬
(72)【発明者】
【氏名】姜仕▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】薛▲樹▼坤
【審査官】 衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121374(WO,A1)
【文献】 特開2006−197164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/46
B60L 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークであって、
前記列車制御ネットワークおよび前記列車運行ネットワークの結合ネットワークにおけるデータ送信に使用される前記ブロードバンド通信ネットワークは、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとを含むことを特徴とし、データ通信は、前記トラステッドネットワークと前記非トラステッドネットワークとの間でセキュリティゲートウェイを介して実行され、
前記トラステッドネットワークは、各車両に設けられる信頼できる車両レベルのネットワークエレメントを備え、かつ先頭車両および最後尾の車両の各々には、前記信頼できる車両レベルのネットワークエレメントに加えて、信頼できる列車レベルのネットワークエレメントが設けられ、前記信頼できる車両レベルのネットワークエレメントは、前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと通信し、前記トラステッドネットワークにおいて送信されるデータは、前記列車制御ネットワークにおける制御データ、監視データおよび診断情報データと、前記列車運行ネットワークにおける乗客情報データおよびビデオ情報データとを含み、
前記非トラステッドネットワークは、前記先頭車両および前記最後尾の車両のそれぞれに設けられる信頼できない列車レベルのネットワークエレメントを備え、
1つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、セキュリティゲートウェイを介して1つの信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信し、かつ幾つかのセキュリティゲートウェイは、互いに冗長であり、前記非トラステッドネットワークは、前記列車と地上との間の接続を行い、
前記トラステッドネットワークと前記非トラステッドネットワークとの間で送信されるべきデータは、前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントとの間で、セキュリティゲートウェイを介して双方向的に伝達される、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワーク。
【請求項2】
前記トラステッドネットワークでは、各車両に、2つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメント、信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIおよび信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIが設けられ、前記2つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントは、相互接続されて信頼できる車両レベルのネットワーク・エレメント・グループを形成し、かつ前記先頭車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントおよび前記最後尾の車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、それぞれ相互接続されるポートを2つ有し、かつ前記先頭車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと前記最後尾の車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとの2つの端部の相互接続は、前記相互接続されるポートによって実現され、かつ各車両における前記信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIは、前記先頭車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントへ接続され、かつ各車両における前記信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIは、前記最後尾の車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントへ接続されて信頼できるリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成し、前記非トラステッドネットワークでは、前記先頭車両における前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントおよび前記最後尾の車両における前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントは、各々2つの相互接続されるポートを有し、かつ前記先頭車両における前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと前記最後尾の車両における前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントとの間の2つの端部の相互接続は、前記相互接続されるポートによって実現されて、信頼できないリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成することを特徴とする、請求項1に記載の列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワーク。
【請求項3】
前記トラステッドネットワークでは、各車両内に少なくとも1つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントおよび少なくとも1つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメントが設けられ、かつ各車両における前記列車レベルのネットワークエレメントは、隣接する車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントへ連続して直列に接続されて信頼できる列車レベルの線形ネットワークアーキテクチャを形成し、前記非トラステッドネットワークでは、前記先頭車両および前記最後尾の車両に加えて、各車両に前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントが設けられ、前記先頭車両から前記最後尾の車両までの車両における前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントは、連続して接続されて信頼できない線形ネットワークアーキテクチャを形成し、または、前記車両における前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントは、エンドツーエンドで連続して接続されて信頼できないリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成することを特徴とする、請求項1に記載の列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワーク。
【請求項4】
前記先頭車両および前記最後尾の車両に加えて、各車両において、前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、前記セキュリティゲートウェイを介して前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信できることを特徴とする、請求項3に記載の列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワーク。
【請求項5】
前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントおよび前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントの通信ポートとして光ポートが使用され、かつ前記先頭車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと前記最後尾の車両における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとの間の接続媒体として光ケーブルが使用され、かつ前記光ケーブルは、前記先頭車両における前記信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと前記最後尾の車両内における前記信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとの間の接続媒体として使用されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、列車ネットワーク通信の技術分野に属し、かつ通信ネットワークアーキテクチャに関し、具体的には、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャおよびこのアーキテクチャを用いる通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
列車通信ネットワークは、列車制御ネットワークおよび列車運行ネットワークを含み得る。列車制御ネットワークは、主として、列車の車両内に散開する列車搭載デバイスを、これらが協働的に動作しかつ情報を共有できるように制御して、列車搭載デバイスの故障検出および保全を実現するように機能する。列車運行ネットワークは、主として、情報サービスを提供し、かつ列車内の関連スタッフおよび乗客のために列車−地上通信を実施するように機能する。
【0003】
この従来技術における列車通信ネットワークには、次のような問題がある。
(1)ほとんどの列車で、制御ネットワークおよび運行ネットワークは、通常、独立したネットワークアーキテクチャを用いる。
(2)列車制御ネットワークでは、MVB、CANおよびHDLC等の制御バスが使用される。列車内の通信データ量は、大幅に増加していることから、通信制御をリアルタイムで行うことができても、大量のデータ伝達を叶えることができない。
(3)WIFIサービスをサポートする列車では、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたソリューションが採用されている。しかしながら、セキュリティ対策がされていないことから、列車におけるネットワーク通信のセキュリティを保証するためのポリシが存在しない。
(4)列車の通信ネットワークアーキテクチャとしてイーサネット(登録商標)を用いる設計では、イーサネットケーブルとしてツイストペアケーブルが使用される。その結果、このソリューションは、ツイストペアケーブルの伝送距離および伝送品質によって制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のこれらの欠点に鑑みて、本発明の目的は、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせた、データ伝送セキュリティレベルが高い通信ネットワークアーキテクチャを提供することにあり、かつこの通信ネットワークアーキテクチャを用いる列車通信方法をも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、次のような技術的ソリューション、即ち、トラステッドネットワークおよび非トラステッドネットワークを含む、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャ、を用いる。トラステッドネットワークは、各車両に設けられる信頼できる車両レベルのネットワークエレメントを備える(列車は、通常、先頭車両、最後尾の車両および中間車両を備え、「各車両」という言い回しは、先頭車両、最後尾の車両または中間車両を指す)。先頭車両および最後尾の車両の各々には、信頼できる車両レベルのネットワークエレメントに加えて、信頼できる列車レベルのネットワークエレメントが設けられる。非トラステッドネットワークは、先頭車両および最後尾の車両に各々設けられる信頼できない列車レベルのネットワークエレメントを含む。1つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、セキュリティゲートウェイを介して1つの信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信し、幾つかのセキュリティゲートウェイは、互いに冗長である。
【0006】
例えば、あるトラステッドネットワークでは、先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、主要セキュリティゲートウェイを介して先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信し、このトラステッドネットワークにおいて、最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、補助セキュリティゲートウェイを介して最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信し、主要セキュリティゲートウェイおよび補助セキュリティゲートウェイは、互いに冗長である。通常、先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、主要セキュリティゲートウェイを介して先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信する。主要セキュリティゲートウェイの通信回線に故障が発生すると、最後尾の車両における補助セキュリティゲートウェイの通信回線が起動される。
【0007】
好ましくは、トラステッドネットワークでは、各車両内に少なくとも1つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントが設けられ、各車両内のすべての信頼できる車両レベルのネットワークエレメントは、各車両内で信頼できる車両レベルのネットワーク・エレメント・グループを形成し、かつ先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントの2つの端部および最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントの2つの端部は、相互接続されて信頼できるリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成し、各車両における信頼できる車両レベルのネットワーク・エレメント・グループは、先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントおよび最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと各々通信し、非トラステッドネットワークでは、先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントの2つの端部および最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントの2つの端部は、相互接続されて信頼できないリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成する。
【0008】
またさらに、信頼できる車両レベルのネットワーク・エレメント・グループは、2つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントを含む。即ち、各車両において、信頼できる車両レベルのネットワーク・エレメント・グループは、信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIおよび信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIを含み、これらの2つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントは、相互接続される。言い換えれば、各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIおよび信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIは、相互接続され、かつ各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIは、先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントへ接続され、かつ各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIは、最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントへ接続される。
【0009】
具体的には、各車両における信頼できる車両レベルのネットワーク・エレメント・グループ(相互接続された信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIおよび信頼できる車両レベルのネットワークエレメントII)は、先頭車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントおよび最後尾の車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントと共に、信頼できるリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成する。
【0010】
好ましくは、トラステッドネットワークでは、各車両内に少なくとも1つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントおよび少なくとも1つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメントが設けられて信頼できるネットワーク・エレメント・グループを形成し、かつ各車両における信頼できるネットワーク・エレメント・グループは、連続して直列に接続されて信頼できる線形ネットワークアーキテクチャを形成し、非トラステッドネットワークでは、先頭車両および最後尾の車両に加えて、各車両(先頭車両および最後尾の車両を除く各中間車両)内に信頼できない列車レベルのネットワークエレメントが設けられ、先頭車両から最後尾の車両までの車両(先頭車両、最後尾の車両および中間車両を含む)における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントは、連続して接続されて信頼できない線形ネットワークアーキテクチャを形成し、または、車両(先頭車両、最後尾の車両および中間車両を含む)における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントは、エンドツーエンドで連続して接続されて信頼できないリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成する。
【0011】
具体的には、信頼できない線形ネットワークアーキテクチャとは異なり、信頼できないリング・ネットワーク・アーキテクチャでは、先頭車両および最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントが相互接続されてリングネットワークを形成する。
【0012】
またさらに、トラステッドネットワークでは、各車両内に1つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントおよび2つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメントが設けられ、これらは、エンドツーエンドで連続して接続されて車両内にリングネットワーク構造体を形成する。
【0013】
例えば、各車両は、信頼できる車両レベルのネットワークエレメントと、信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIと、信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIとを備える。信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIおよび信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIは、相互接続され、かつ信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIおよび信頼できる車両レベルのネットワークエレメントIIの双方は、信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと通信することができてリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成する。
【0014】
またさらに、先頭車両および最後尾の車両に加えて、任意の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、セキュリティゲートウェイを介して信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信することができる。この方法では、ネットワークの冗長性が高められる。
【0015】
具体的には、各中間車両の場合、信頼できない列車レベルのネットワークエレメントも設けられていることから、中間車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントは、セキュリティゲートウェイを介して信頼できない列車レベルのネットワークエレメントとも通信することができる。これにより、先頭車両または最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと信頼できない列車レベルのネットワークエレメントとの通信に故障が発生した際の列車内ネットワーク通信への影響が回避される。
【0016】
好ましくは、信頼できる列車レベルのネットワークエレメントおよび信頼できない列車レベルのネットワークエレメントの通信ポートとして光ポートが使用され、かつ先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとの間の接続媒体として光ケーブルが使用され、かつ先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとの間の接続媒体として光ケーブルが使用される。光ケーブルによる伝送には、広い伝送周波数帯域、大きな通信容量および低い伝送損失という利点がある。光ケーブルの他に、他の通信ケーブルが使用されてもよい。
【0017】
列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせた、列車制御ネットワークおよび列車運行ネットワークがトラステッドネットワークおよび非トラステッドネットワークに分かれるブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャを用いてデータ通信を実行する方法は、トラステッドネットワークにおける通信方法と、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間の通信方法とを含む。
【0018】
トラステッドネットワークにおいて送信されるデータは、列車制御ネットワークにおける制御データ、監視データおよび診断情報データを含み、さらに、列車運行ネットワークにおける乗客情報データおよびビデオ情報データを含む。異なるデータに対しては、異なる優先順位が設定される。制御データ、監視データおよび診断情報データ等のプロセスデータは、乗客情報データおよびビデオ情報データの優先性より高い優先性を有する。送信されるべきデータは、自動的にキャッシュされ、次に、優先順に送信される。
【0019】
非トラステッドネットワークとトラステッドネットワークとの間で送信されるべきデータは、信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとの間で、セキュリティゲートウェイを介して双方向的に送信される。トラステッドネットワークから非トラステッドネットワークへ送信されるデータは、列車走行データおよび列車内/外の温度データを含む。非トラステッドネットワークからトラステッドネットワークへ送信されるデータは、非常警報デバイスへ転送される地上オーディオデータと、トップセットボックスへ転送される地上ビデオデータとを含む。ネットワーク間通信の間、セキュリティゲートウェイは、まず、データを送信するデバイスに対してデバイス認証を実行し、デバイスが認証条件を満たしていれば、次に、データメッセージに対してメッセージ認証を実行する。
【0020】
本出願は、次のような有益な効果を有する。
(1)本願のネットワークアーキテクチャは、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャであり、これにより、列車制御情報、監視情報および診断情報、ならびに乗客情報およびビデオ情報を結合されたネットワーク内で送信することができ、即ち、乗客情報提供システムネットワークからのデータおよび列車制御ネットワークからのデータを結合ネットワークにおいて送信することができ、よって、乗客情報提供システムネットワークの帯域幅に対する要望が満たされ、かつ列車ネットワークの安定性が保証される。
【0021】
(2)列車制御ネットワークおよび列車運行ネットワークにおいて送信されるべきデータの異なるセキュリティレベルに従って、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたネットワークアーキテクチャは、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークに分割され、よって、列車制御ネットワークにおける制御データ、監視データおよび診断情報データと、列車運行ネットワークにおける乗客情報データおよびビデオ情報データは、トラステッドネットワーク内で一緒に送信され、かつ列車走行データ、列車内/外の温度データ、非常警報デバイスへ転送される地上オーディオデータ、セットトップボックスへ転送される地上ビデオデータおよびこれらに類似するものは、セキュリティゲートウェイによって認証された後にトラステッドネットワークおよび非トラステッドネットワーク間で送信される。一方で、非トラステッドネットワークは、さらに、列車と地上との間の通信、および地上と列車との間のWIFIアクセスを担当する。列車内の物理ネットワークから無線ネットワークを隔離することにより、列車ネットワークにおけるデータ伝送のセキュリティが強化される。
【0022】
(3)本出願では、従来のジャンピングリング方式とは異なる内接リングネットワーク方式が使用される。各車両には、幾つかの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントが設けられてもよい。冗長な信頼できる車両レベルのネットワークエレメントは、ダブル・ネットワーク・ポートによってアクセスされ、かつ信頼できる車両レベルのネットワークエレメントは各々、コアである信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと共にリングネットワークを形成する。ある車両において通信に故障が発生しても、他の車両における通信は、影響を受けないものとする。優れた故障分離性能および冗長性が示される。具体的には、内接リングネットワークは、円環接触を形成するすべての円環中心が接点の同じ側にあること、およびこの接点は、すべてのリングの共通ノードになることを意味する。先頭車両および最後尾の車両におけるネットワークデバイスを接点としてとることにより、接点として機能するネットワークデバイスは、中間車両におけるネットワークデバイスと共に内接リングネットワークを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態1における第1の構造略図である。
図2】実施形態1における第2の構造略図である。
図3】実施形態1による、モータ車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメント間の接続を示す構造略図である。
図4】実施形態1による、トレーラ車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメント間の接続を示す構造略図である。
図5】実施形態2の構造略図である。
【符号の説明】
【0024】
1:信頼できない列車レベルのネットワークエレメント、
2:信頼できる列車レベルのネットワークエレメント、
3:信頼できる車両レベルのネットワークエレメント、
4:セキュリティゲートウェイ、
5:先頭車両、
6:最後尾の車両
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本出願の具体的な実装についてさらに詳細に説明する。
【0026】
実施形態1
列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャ(以下、ネットワークアーキテクチャと称する)を提供し、これにより、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとの結合ネットワークにおけるデータ伝送を実現することができる。このネットワークアーキテクチャでは、列車制御ネットワークおよび列車運行ネットワークがトラステッドネットワークと非トラステッドネットワークに分割され、トラステッドネットワークにおいて伝送されるデータは、列車制御ネットワークにおける制御データ、監視データおよび診断情報データを含み、かつさらに、列車運行ネットワークにおける乗客情報データおよびビデオ情報データを含む。データ通信は、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間で、セキュリティゲートウェイを介して実行される。送信されるべきデータには、列車走行データおよび列車内/外の温度データ、非常警報デバイスへ転送される地上オーディオデータおよびセットトップボックスへ転送される地上ビデオデータが含まれる。一方で、非トラステッドネットワークは、さらに、電車と地上との間の接続、および列車と地上との間の通信の実現、および地上と列車との間のWIFIアクセスを担当する。WIFIアクセスのリスクは高く、列車ネットワークに侵入する手段となる可能性が高い。
【0027】
本ネットワークアーキテクチャは、以下の特有の構造を有する。図1に示すように、トラステッドネットワークは、各車両内に信頼できる車両レベルのネットワークエレメント(ネットワーク構成要素)3を備える。先頭車両5および最後尾の車両6には、信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3に加えて、信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2が設けられる。非トラステッドネットワークは、各々先頭車両5および最後尾の車両6に設けられる信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1を備える。トラステッドネットワークでは、先頭車両5における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2が、セキュリティゲートウェイ4を介して先頭車両5における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1と通信し、かつトラステッドネットワークでは、最後尾の車両6における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2が、セキュリティゲートウェイ4を介して最後尾の車両6における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1と通信する。2つのセキュリティゲートウェイ4は、主要セキュリティゲートウェイおよび補助セキュリティゲートウェイであってもよく、これらは、互いに冗長である。例えば、先頭車両5が接続されるセキュリティゲートウェイ4が主要セキュリティゲートウェイとして規定されれば、通常、先頭車両5における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2は、主要セキュリティゲートウェイを介して信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと通信する。主要セキュリティゲートウェイの通信回線に故障が発生する、または、デバイスに故障が発生すると、最後尾の車両6と補助セキュリティゲートウェイとの間の通信回線が起動される。
【0028】
図2に示すように、2つのモータ車両と2つのトレーラ車両とを有する列車を例にとって、本ネットワークアーキテクチャの特有の実装について説明する。このような4車両は、次のような形式、即ち、モータ車両(TC)−トレーラ車両(M)−トレーラ車両(M)−モータ車両(TC)の形式、で配列される。4車両のうちで、2つのモータ車両は、先頭車両および最後尾の車両であり、2つのトレーラ車両は、中間車両である。先頭車両および最後尾の車両におけるネットワークエレメントは、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間の通信を担当することから、先頭車両および最後尾の車両におけるネットワークエレメントの配列は、中間車両におけるネットワークエレメントの配列とは異なる。
【0029】
ネットワークエレメント(ネットワーク構成要素)は、次のようにして配列される。中間車両(この実施形態では、2つのトレーラ車両)では、カバーされるネットワークがトラステッドネットワークであり、よって各車両に、2つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメント、即ち信頼できる車両レベルのネットワークエレメントI3および信頼できる車両レベルのネットワークエレメントII3、が設けられ、これらが信頼できる車両レベルのネットワークエレメントのグループを形成する。2つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメントによる冗長設計の使用が、冗長なネットワークアーキテクチャの確立を容易にし、かつネットワーク通信の安定性を保証することは、留意されるべきである。本ネットワークアーキテクチャの要件によれば、各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントの数は、2つに限定されない。各車両には、1つ、3つ、または4つ以上の信頼できる車両レベルのネットワークエレメントが存在してもよい。先頭車両および最後尾の車両は、トラステッドネットワークおよび非トラステッドネットワークの双方によってカバーされる、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの共通部分になる。先頭車両および最後尾の車両の各々の内部には、2つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3(信頼できる車両レベルのネットワークエレメントのグループを形成する信頼できる車両レベルのネットワークエレメントI3および信頼できる車両レベルのネットワークエレメントII3)に加えて、1つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2および1つの信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1が設けられる。一方で、ネットワーク通信の認証を行うためのツールとして、セキュリティゲートウェイ4がさらに設けられる。
【0030】
ネットワークは、以下の構造を有する。2つのトレーラ車両、先頭車両および最後尾の車両の各々において、信頼できる車両レベルのネットワークエレメントI3および信頼できる車両レベルのネットワークエレメントII3は、直列に接続され、かつ信頼できる車両レベルのネットワークエレメントI3および信頼できる車両レベルのネットワークエレメントII3は、デバイスレベルの冗長性を保証するために互いに冗長である。信頼できる車両レベルのネットワークエレメントI3および信頼できる車両レベルのネットワークエレメントII3は、100メガバイトのイーサネットツイストペアによって接続される。各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントI3は、先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2へ接続され、かつ各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントII3は、最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2へ接続される。図2に示すように、実線で示されるネットワーク接続および破線で示されるネットワーク接続は、互いに冗長である信頼できるリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成し、一方は、主要回線であって、他方は、バックアップ回線である。通常は、主要回線が動作し、主要回線に故障が発生すると、バックアップ回線が起動して動作する。各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3のための接続ポートに加えて、先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2および最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2は、各々2つの相互接続ポートを有し、これらによって、先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2および最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2の2つの端部が相互接続されて信頼できるリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成する。先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2は、先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1へセキュリティゲートウェイ4を介して接続される。同様に、最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2は、最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1へセキュリティゲートウェイ4を介して接続される。このようにして、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間の通信が実現される。非トラステッドネットワークでは、先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1および最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1もまた、各々2つの相互接続ポートを有し、これらによって、先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1および最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1の2つの端部が相互接続されて信頼できないリング・ネットワーク・アーキテクチャを形成する。信頼できる列車レベルのネットワークエレメントおよび信頼できない列車レベルのネットワークエレメントが通信するためのポートとしては、光ポートが使用される。列車レベルのネットワークエレメント間の接続ネットワークでは、列車バスとして、全二重モードをサポートしかつ1000Mbit/秒の伝送速度を有する1000Base−LXが使用される。先頭車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントと最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントとの間の接続媒体としては、光ケーブルが使用され、かつ光ケーブルは、先頭車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメントと最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとの間の接続媒体としても使用される。
【0031】
以下、列車搭載デバイスとの接続および通信の方法を説明する。
トラステッドネットワークにおいて、信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3は、ルーティングおよびネットワークアドレス変換等の機能を有し、かつ列車の再接続および逆多重化後のネットワーク再構成を担当する。トラステッドネットワークにおけるデバイスは、主として列車制御情報、監視情報および診断情報、ならびに乗客情報およびビデオ情報を送信するために、同じローカルエリアネットワーク内に存在する。異なるデータに対しては、異なる優先順位が設定される。列車制御データ、監視データおよび診断情報データ等のプロセスデータは、最も高い優先順位を有し、ビデオ情報は、より低い優先順位を有する。送信されるべきデータは、自動的にキャッシュされ、次に、優先順に送信される。モータ車両において、信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3は、2400メガバイトの電気ポート+2キロメガの光ポートを有する2層スイッチであって、これらのスイッチは、光ポートによって互いに接続される。図3に示すように、キャブ内のヒューマン−マシンインタフェースHMI、車両制御ユニットVCU、リモート入/出力モジュールRIOMおよびブレーキ制御ユニットBCU等の主要な端末デバイスは、2つの冗長な車両レベルのスイッチへ、2つのネットワークポートによって同時に接続される。これらの2つのスイッチの一方には、所望に応じて、火災警報システムFAS、イベント記録モジュールERM、走行診断システムTDS、補助制御ユニットSIV、電子ドア制御ユニットEDCU、暖房、換気および空調ユニットHVAC等の単一ネットワーク・ポート・デバイス、およびPISシステムにおけるプロジェクションホスト、エンドスクリーン、カメラ、非常警報デバイス、LCDマップ、乗客情報システムコントローラおよび車両コントローラが接続されるものとする。
【0032】
トレーラ車両において、信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3は、2400メガバイトの電気ポート+2キロメガの光ポートを有する2層スイッチであって、これらのスイッチは、光ポートによって互いに接続される。図4に示すように、駆動制御ユニットDCUおよびリモート入/出力モジュールRIOMは、冗長スイッチへ2つのネットワークポートによって接続される。PISシステムにおける車両コントローラ、LCD電子マップ、非常警報デバイス、車両コントローラおよび車両ネットワーク切換ユニットは、各々所望に応じて2つのスイッチのうちの一方へ接続される。
【0033】
非トラステッドネットワークには、列車と地上との間の通信およびWIFIサービスネットワークに関連する、セントラルサーバおよびWIFIアクセスデバイス等のPISシステム内のデバイスが配置される。非トラステッドネットワークにおいて、列車レベルの帯域幅は、全二重モードで1000Mである。車両レベルのデバイスは、100メガバイトの全二重モードを採用している。各モータ車両および各トレーラ車両には、WIFIホットスポットが配置され、セントラルサーバは、モータ車両に配置される。
非トラステッドネットワークとトラステッドネットワークは、セキュリティゲートウェイにより100メガバイトのポートを介して接続される。セキュリティゲートウェイを通るメッセージには、次の2種類がある。
【0034】
非トラステッドネットワークからトラステッドネットワークへ送信されるデータストリーム、即ち、非常警報デバイスへ転送される地上オーディオデータ、およびセットトップボックスへ転送される地上ビデオデータ、および、
トラステッドネットワークから非トラステッドネットワークへ送信されるデータストリーム、即ち、列車走行データおよび列車の内/外の温度データ。
【0035】
セキュリティゲートウェイは、デバイス認証およびメッセージ認証の機能を有する。ネットワーク間通信を実行する必要がある端末デバイスは、まず、セキュリティゲートウェイのデバイス認証に合格しなければならない。セキュリティゲートウェイを通るメッセージは、既定のフォーマットによるものでなければならない。即ち、既定のフォーマットによるメッセージは、セキュリティゲートウェイを介してトラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間で送信可能である。
【0036】
実施形態2
この実施形態は、列車制御ネットワークと列車運行ネットワークとを組み合わせたブロードバンド通信ネットワークアーキテクチャを提供する。実施形態1と同様に、このネットワークアーキテクチャも、やはりトラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとに分割される。実施形態1との相違点は、このネットワークアーキテクチャに特有の構成にある。
【0037】
図5に示すように、この場合も、2つのモータ車両および2つのトレーラ車両を有する列車を例にとって、ネットワークアーキテクチャの特有の実装について説明する。このような4車両は、次のような形式、即ち、モータ車両(TC)−トレーラ車両(M)−トレーラ車両−モータ車両(TC)の形式、で配列される。これらの車両のうちで、2つのモータ車両は、先頭車両および最後尾の車両であり、2つのトレーラ車両は、中間車両である。先頭車両および最後尾の車両におけるネットワークエレメントは、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの通信を担当する。
【0038】
この実施形態では、トラステッドネットワークにおけるネットワークは、2つのアーキテクチャ、即ち、列車レベルおよび車両レベルのアーキテクチャ、を有するように設計される。即ち、トラステッドネットワークは、信頼できる列車レベルのネットワークと信頼できる車両レベルのネットワークとを含む。
【0039】
各車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントの数は、端末デバイスの数によって決定することができる。この実施形態では、各車両内に1つの信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3および2つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2が設けられ、これらの3つのネットワークエレメントは、エンドツーエンドで連続して接続されて冗長リングネットワーク構造体を形成する。言い換えれば、車両レベルのネットワークでは、この車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメントと信頼できる列車レベルのネットワークエレメントとがリングネットワークを形成する。2つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2は、互いに冗長である。
【0040】
車両における通信は、信頼できる車両レベルのネットワークエレメント3または信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2によって実現される。各車両における任意の2つの信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2は、各々、隣接する車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2へ連続して直列に接続され、信頼できる線形ネットワークアーキテクチャを形成する。
【0041】
列車レベルのネットワークでは、リンクアグリゲーションによって、バイパス機能をサポートする信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2が線形ネットワークを形成する。非トラステッドネットワークでは、先頭車両、最後尾の車両および中間車両の各々に信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1が設けられる。信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1は、先頭車両から最後尾の車両まで連続して接続され、信頼できない線形ネットワークアーキテクチャを形成する。先頭車両および最後尾の車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント1は、セキュリティゲートウェイ4を介して、先頭車両および最後尾の車両における信頼できる列車レベルのネットワークエレメント2へ接続されかつこれと通信する。実施形態1の原理と同様に、先頭車両および最後尾の車両におけるセキュリティゲートウェイは、主要セキュリティゲートウェイと、補助セキュリティゲートウェイとを含む。通常、主要セキュリティゲートウェイは、トラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間の通信を担当する。主要セキュリティゲートウェイの通信回線に故障が発生する、または、デバイスに故障が発生すると、補助セキュリティゲートウェイの通信回線が通信を担当する。このソリューションでは、先頭車両および最後尾の車両に、互いに冗長であるセキュリティゲートウェイが配置されることも留意されるべきである。しかしながら、実際の適用においては、セキュリティゲートウェイの位置は、所望に応じて決定されてもよく、所定の具体的な車両に限定されない。セキュリティゲートウェイが中間車両に配置されれば、中間車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメント2は、このセキュリティゲートウェイへ接続されてトラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間の通信接続部を形成する。即ち、中間車両における信頼できる車両レベルのネットワークエレメント2は、セキュリティゲートウェイを介して同じ中間車両における信頼できない列車レベルのネットワークエレメント2と通信する。
【0042】
非トラステッドネットワークでは、ネットワークは、実際のニーズに従って、リングネットワーク、線形ネットワークまたはスターネットワークであってもよい。この実施形態では、各車両における1つの列車レベルのネットワークエレメントが直線的に接続される線形ネットワークが使用される。
【0043】
ネットワークエレメント間の通信インタフェースは、所望に応じて構成することができ、かつトラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間の伝送媒体は、光ファイバおよび光ケーブルに限定されない。
【0044】
トラステッドネットワークにおいて、列車レベルのネットワークは、2400メガバイトの電気ポートを有する2層スイッチを用いる。キャブ内のヒューマン−マシンインタフェースHMI、車両制御ユニットVCU、リモート入/出力モジュールRIOMおよびブレーキ制御ユニットBCU等の主要な端末デバイスは、2つの冗長な列車レベルのスイッチへ、2つのネットワークポートによって同時に接続される。これらの2つの冗長な列車レベルのスイッチの一方には、所望に応じて、補助制御ユニットSIV、電子ドア制御ユニットEDCU、暖房、換気および空調ユニットHVAC等の単一ネットワーク・ポート・デバイス、およびPISシステムにおけるプロジェクションホスト、エンドスクリーン、カメラ、非常警報デバイス、LCDマップ、乗客情報システムコントローラおよび車両コントローラが接続されるものとする。
【0045】
トラステッドネットワーク間、およびトラステッドネットワークと非トラステッドネットワークとの間のデータ通信方法は、実施形態1に類似する。
図1
図2
図3
図4
図5