(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主従関係にないインバータ装置が複数並列接続されている電力システムにおいて、前記複数のインバータ装置のうちの1つのインバータ装置に備えられており、当該インバータ装置が有するインバータ回路を制御する制御回路であって、
連系点電圧を目標値に制御するための補償値を生成する連系点電圧制御手段と、
前記各インバータ装置と協調するための補正値を生成する協調補正値生成手段と、
前記補償値に前記補正値を加算した補正補償値に基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
前記補正補償値に重み付けを行う重み付け手段と、
少なくとも1つの他のインバータ装置と通信を行う通信手段と、
を備え、
前記通信手段は、重み付けされた補正補償値を、前記他のインバータ装置に送信し、
前記協調補正値生成手段は、前記重み付けされた補正補償値と、前記通信手段が前記他のインバータ装置より受信した受信補償値とに基づく演算結果を用いて、前記補正値を生成する、
ことを特徴とする制御回路。
前記演算手段は、前記受信補償値から前記重み付けされた補正補償値をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記通信手段が通信を行っている他のインバータ装置の数で加算結果を除算することで、演算結果を演算する、
請求項2に記載の制御回路。
前記演算手段は、前記受信補償値から前記重み付けされた補正補償値をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記重み付けされた補正補償値を加算結果に乗算することで、演算結果を演算する、
請求項2に記載の制御回路。
前記演算手段は、前記受信補償値を前記重み付けされた補正補償値からそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算して、前記重み付けされた補正補償値の2乗を加算結果に乗算することで、演算結果を演算する、
請求項2に記載の制御回路。
主従関係にないインバータ装置が複数並列接続されている電力システムにおいて、前記複数のインバータ装置のうちの1つのインバータ装置が有するインバータ回路を制御する制御方法であって、
連系点電圧を目標値に制御するための補償値を生成する第1の工程と、
前記各インバータ装置と協調するための補正値を生成する第2の工程と、
前記補償値に前記補正値を加算した補正補償値に基づいてPWM信号を生成する第3の工程と、
前記補正補償値に重み付けを行う第4の工程と、
重み付けされた補正補償値を、少なくとも1つの他のインバータ装置に送信する第5の工程と、
前記他のインバータ装置が送信した値を受信補償値として受信する第6の工程と、
を備え、
前記第2の工程は、前記重み付けされた補正補償値と、前記第6の工程で受信した受信補償値とに基づく演算結果を用いて、前記補正値を生成する、
ことを特徴とする制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る制御回路を太陽光発電所のインバータ装置に用いた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1は、第1実施形態に係るインバータ装置を説明するための図である。
図2は、第1実施形態に係るインバータ装置が複数並列接続された太陽光発電所(電力システム)を示す図である。
【0029】
インバータ装置Aは、いわゆるパワーコンディショナと呼ばれるものであり、
図1に示すように、インバータ回路2、制御回路3、電流センサ4、電圧センサ5、および、直流電圧センサ6を備えている。インバータ装置Aは、直流電源1が出力する直流電力をインバータ回路2によって交流電力に変換して出力する。なお、図示しないが、インバータ回路2の出力側には、交流電圧を昇圧(または降圧)するための変圧器が設けられている。
【0030】
また、
図2に示すように、インバータ装置Aは、他のインバータ装置Aと並列接続されている。
図2においては、5つのインバータ装置A(A1〜A5)が接続されている状態を示している。なお、実際の電力システムにおいては、より多くのインバータ装置Aが接続されているが、説明の簡略化のために極端に少ないケースを示している。また、本実施形態では、インバータ装置A5がSVCを構成するものとしている。インバータ装置A5には、直流電源1が接続されておらず、入力端のコンデンサを容量の大きいものとしている。
【0031】
図2に示す矢印は、通信を行っていることを示している。すなわち、インバータ装置A1はインバータ装置A2とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A2はインバータ装置A1およびインバータ装置A3とのみ相互通信を行っている。また、インバータ装置A3はインバータ装置A2およびインバータ装置A4とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A4はインバータ装置A3およびインバータ装置A5とのみ相互通信を行っており、インバータ装置A5はインバータ装置A4とのみ相互通信を行っている。
【0032】
図1に戻って、直流電源1は、直流電力を出力するものであり、太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよいし、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0033】
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換して出力するものである。インバータ回路2は、図示しないPWM制御インバータとフィルタとを備えている。PWM制御インバータは、図示しない3組6個のスイッチング素子を備えた三相インバータであり、制御回路3から入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタは、スイッチングによる高周波成分を除去する。なお、インバータ回路2は、これに限られない。例えば、PWM制御インバータは、単相インバータであってもよいし、マルチレベルインバータであってもよい。また、PWM制御に限定されず、フェーズシフト制御など他の方式を用いるものであってもよい。
【0034】
電流センサ4は、インバータ回路2の三相の出力電流の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電流センサ4は、検出した瞬時値をディジタル変換して、電流信号Iu,Iv,Iw(3つの電流信号をまとめて「電流信号I」と記載する場合がある。)として制御回路3に出力する。電圧センサ5は、インバータ装置Aの三相の連系点電圧の瞬時値をそれぞれ検出するものである。電圧センサ5は、検出した瞬時値をディジタル変換して、実効値を算出し、電圧信号Vとして制御回路3に出力する。直流電圧センサ6は、インバータ回路2の入力電圧を検出するものである。直流電圧センサ6は、検出した電圧をディジタル変換して、電圧信号Vdcとして制御回路3に出力する。
【0035】
制御回路3は、インバータ回路2を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。本実施形態に係る制御回路3は、インバータ回路2の入力電圧、連系点電圧およびインバータ回路2の出力電流の制御を行っている。このうち、連系点電圧については、電力システムに接続されたすべてのインバータ装置A(A1〜A5)(
図2参照)が協調して制御を行う。
【0036】
以下に、本発明に係る連系点電圧の制御システムについて、
図3〜
図6を参照して説明する。
【0037】
図3は、インバータ装置Aの無効電力制御系(連系点電圧制御系)を説明するための図である。
【0038】
図3(a)は、インバータ装置Aのモデルを示している。インバータ装置Aが出力する有効電力の変化量をΔP、無効電力の変化量をΔQ、インバータ装置Aの出力電流のd軸成分およびq軸成分の変化量をΔIdおよびΔIq(各目標値をΔId
*およびΔIq
*)、入力電圧をVdc(目標値をVdc
*)、連系点電圧をV(目標値をV
*)としている。なお、d軸成分およびq軸成分は、後述する三相/二相変換処理および回転座標変換処理によって変換された後の回転座標系の二相の成分である。また、インバータ装置Aの内部位相が連系点電圧の位相に完全に追従していると仮定すると、出力電圧のq軸成分はVq=0となり、d軸成分はVd=Vとなるので、
ΔP=Vd・ΔId+Vq・ΔIq=V・ΔId
ΔQ=Vd・ΔIq−Vq・ΔId=V・ΔIq
となっている。
【0039】
電流制御系、PWMおよびインバータ主回路のダイナミクスは、電力制御系のダイナミクスと比較すると高速のため、無視することができる。
図3(b)は、これらを無視して近似したモデルである。
図3(b)のモデルから有効電力制御系を無視して、無効電力制御系だけに注目したモデルを、
図3(c)に示している。
【0040】
図4は、電力システム全体の連系点電圧制御系を説明するための図である。各インバータ装置A1〜A5が出力する無効電力をそれぞれΔQ
1〜ΔQ
5だけ変動させ、連系点に供給される無効電力は、これらを合算した変化量ΔQだけ変動する。連系点電圧Vは、供給される無効電力Qの変動および有効電力Pの変動により変動する。
図4(a)では、これらを表している。なお、RおよびXは、送電線の線路インピーダンスの抵抗成分およびリアクタンス成分である。また、有効電力の変動(外乱)ΔPには、負荷変動や太陽電池の出力変化による変動などが含まれる。
【0041】
各インバータ装置Aでそれぞれ行われるVの乗算を、合算後に乗算するように変形すると、
図4(a)から
図4(b)とすることができる。
図4(b)が、連系点電圧の変動を各インバータ装置Aの無効電力調整によって抑制するシステムを表している。ただし、この場合、各インバータ装置Aが協調して無効電力を出力するわけではないので、各インバータ装置Aが出力する無効電力は、内部で設定されているゲインや、配置場所などによって定まってしまう。例えば、インバータ装置A5にできるだけ無効電力を補償させ、インバータ装置A5が補償できない分を各インバータ装置A1〜A4に均等に補償させるとか、各インバータ装置Aの容量に応じて補償させるということができない。
【0042】
次に、各インバータ装置Aが協調して無効電力を出力するための方法について説明する。
【0043】
複数の制御対象の状態の値を同じ値に収束させるコンセンサスアルゴリズムが知られている(非特許文献1,2参照)。各制御対象を頂点とし各制御対象間の通信状態を辺で表したグラフとして表現した場合、当該グラフがグラフ理論における無向グラフで連結であれば、コンセンサスアルゴリズムを用いて各制御対象の状態の値を同じ値に収束させて、コンセンサスを達成することができる。例えば、
図2に示す電力システムをグラフで表現すると、
図5(a)のようになる。頂点A1〜A5がそれぞれインバータ装置A1〜A5を表し、矢印付きの辺が各インバータ装置間の通信状態を表している。各辺は相互通信を行うことを示しており、当該グラフは無向グラフである。当該グラフの任意の2つの頂点に対して通信経路が存在しているので、当該グラフは連結である。したがって、
図2に示す電力システムの場合、コンセンサスを達成することができる。また、
図5(b)、(c)に示すグラフも無向グラフで連結であるので、
図2の電力システムにおける各インバータ装置A1〜A5の通信状態がこれらのグラフで示される場合にも、コンセンサスを達成することができる。このように、インバータ装置Aが、電力システムに接続しているインバータ装置Aのうち、少なくとも1つのインバータ装置Aと相互通信を行っており、電力システムに接続している任意の2つのインバータ装置Aに対して通信経路が存在している状態(以下ではこの状態を「連結状態」と言う。)であればよく、電力システムに接続しているすべてのインバータ装置Aと通信を行っている必要はない。
【0044】
本実施形態では、各制御対象の状態の値を同じ値に収束させるのではなく、重み付けを行って、重み付け後の値を同じ値に収束させる。すなわち、各インバータ装置Aの重み付け値W
iをそれぞれ設定しておき、状態の値を重み付け値W
iで除算することで重み付けを行い、重み付け後の値を同じ値に収束させる。これにより、各状態の値は重み付け値W
iに応じた値に収束する。例えば、W
1=W
2=W
3=W
4=1、W
5=10とすれば、インバータ装置A
5の状態の値は、他のインバータ装置Aの状態の値の10倍の値に収束する。
【0045】
図6は、
図4(b)に示すシステムにコンセンサスアルゴリズムと重み付けとを追加したものであり、各インバータ装置Aが協調して自分の負担分である無効電力を補償することで連系点電圧の変動を抑制する制御システムを表している。
【0046】
コンセンサスアルゴリズムによって、補償値ΔIq
iを重み付け値W
iで除算した補償値ΔIq
i’(=ΔIq
i/W
i)が同じ値に収束する。収束値をΔIqα’とすると、各インバータ装置A
iは、補償値ΔIq
i=W
i・ΔIqα’に応じた無効電力を補償することになる。つまり、重み付け値W
iに応じた無効電力を補償することになる。したがって、例えば、W
1=W
2=W
3=W
4=1、W
5=10とすれば、インバータ装置A
5に、他のインバータ装置Aの10倍の無効電力を補償させることができる。
【0047】
図1に戻って、制御回路3は、電流センサ4より入力される電流信号I、電圧センサ5より入力される電圧信号V、および、直流電圧センサ6より入力される電圧信号Vdcに基づいてPWM信号を生成して、インバータ回路2に出力する。制御回路3は、入力電圧制御部31、連系点電圧制御部32、協調補正値生成部33、加算器34、電流制御部35、指令信号生成部36、PWM信号生成部37、重み付け部38、および、通信部39を備えている。
【0048】
入力電圧制御部31は、インバータ回路2の入力電圧を制御するためのものである。入力電圧制御部31は、入力電圧を制御することで、入力電力を制御して、インバータ回路2の出力有効電力を制御する。入力電圧制御部31は、直流電圧センサ6より入力される電圧信号Vdcとその目標値である入力電圧目標値Vdc
*との偏差ΔVdcを入力され、PI制御(比例積分制御)を行い、有効電力補償値を出力する。有効電力補償値は、目標値Id
*として電流制御部35に入力される。なお、入力電圧制御部31の制御はPI制御に限られず、I制御(積分制御)などの他の制御を行うようにしてもよい。
【0049】
連系点電圧制御部32は、連系点電圧を制御するためのものである。連系点電圧制御部32は、インバータ回路2が出力する無効電力を制御することで、連系点電圧を制御する。連系点電圧制御部32は、電圧センサ5より入力される電圧信号Vとその目標値である連系点電圧目標値V
*との偏差ΔVを入力され、PI制御を行い、無効電力補償値を出力する。無効電力補償値は、加算器34に入力される。なお、連系点電圧制御部32の制御はPI制御に限られず、I制御(積分制御)などの他の制御を行うようにしてもよい。
【0050】
協調補正値生成部33は、各インバータ装置Aと協調するための協調補正値を生成するものである。協調補正値生成部33の詳細については、後述する。
【0051】
加算器34は、連系点電圧制御部32より入力される無効電力補償値に、協調補正値生成部33より入力される協調補正値を加算して、補正補償値ΔIq
iを算出する。補正補償値ΔIq
iは、目標値Iq
*として電流制御部35に入力される。また、加算器34は、算出した補正補償値ΔIq
iを、重み付け部38にも出力する。
【0052】
電流制御部35は、インバータ回路2の出力電流の制御を行うためのものである。電流制御部35は、電流センサ4より入力される電流信号Iに基づいて電流補償値を生成し、指令信号生成部36に出力する。
【0053】
図7は、電流制御部35の内部構成を説明するための機能ブロック図である。
【0054】
電流制御部35は、三相/二相変換部351、回転座標変換部352、LPF353、LPF354、PI制御部355、PI制御部356、静止座標変換部357、および、二相/三相変換部358を備えている。
【0055】
三相/二相変換部351は、いわゆる三相/二相変換処理(αβ変換処理)を行うものである。三相/二相変換処理とは、三相の交流信号をそれと等価な二相の交流信号に変換する処理であり、三相の交流信号を静止した直交座標系(以下、「静止座標系」という。)における直交するα軸とβ軸の成分にそれぞれ分解して各軸の成分を足し合わせることで、α軸成分の交流信号とβ軸成分の交流信号に変換するものである。三相/二相変換部351は、電流センサ4から入力された三相の電流信号Iu,Iv,Iwを、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβに変換して、回転座標変換部352に出力する。
【0056】
三相/二相変換部351で行われる変換処理は、下記(1)式に示す行列式で表される。
【数1】
【0057】
回転座標変換部352は、いわゆる回転座標変換処理(dq変換処理)を行うものである。回転座標変換処理とは、静止座標系の二相の信号を回転座標系の二相の信号に変換する処理である。回転座標系は、直交するd軸とq軸とを有し、連系点電圧の基本波と同一の角速度で同一の回転方向に回転する直交座標系である。回転座標変換部352は、三相/二相変換部351から入力される静止座標系のα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβを、連系点電圧の基本波の位相θに基づいて、回転座標系のd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqに変換して出力する。
【0058】
回転座標変換部352で行われる変換処理は、下記(2)式に示す行列式で表される。
【数2】
【0059】
LPF353およびLPF354は、ローパスフィルタであり、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分だけを通過させる。回転座標変換処理によって、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβの基本波成分が、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分に変換されている。つまり、LPF353およびLPF354は、不平衡成分や高調波成分を除去して、基本波成分のみを通過させるものである。
【0060】
PI制御部355は、d軸電流信号Idの直流成分と目標値との偏差に基づいてPI制御を行い、電流補償値Xdを出力するものである。入力電圧制御部31より入力される有効電力補償値が、d軸電流信号Idの目標値Id
*として用いられる。PI制御部356は、q軸電流信号Iqの直流成分と目標値Iq
*との偏差に基づいてPI制御を行い、電流補償値Xqを出力するものである。加算器34より入力される補正補償値ΔIq
iが、q軸電流信号Iqの目標値Iq
*として用いられる。
【0061】
静止座標変換部357は、PI制御部355およびPI制御部356からそれぞれ入力される電流補償値Xd,Xqを、静止座標系の電流補償値Xα,Xβに変換するものであり、回転座標変換部352とは逆の変換処理を行うものである。静止座標変換部357は、いわゆる静止座標変換処理(逆dq変換処理)を行うものであり、回転座標系の電流補償値Xd,Xqを、位相θに基づいて、静止座標系の電流補償値Xα,Xβに変換する。
【0062】
静止座標変換部357で行われる変換処理は、下記(3)式に示す行列式で表される。
【数3】
【0063】
二相/三相変換部358は、静止座標変換部357から入力される電流補償値Xα,Xβを、三相の電流補償値Xu,Xv,Xwに変換するものである。二相/三相変換部358は、いわゆる二相/三相変換処理(逆αβ変換処理)を行うものであり、三相/二相変換部351とは逆の変換処理を行うものである。
【0064】
二相/三相変換部358で行われる変換処理は、下記(4)式に示す行列式で表される。
【数4】
【0065】
なお、本実施形態では、インバータ装置Aが三相のシステムである場合について説明したが、単相のシステムであってもよい。単相のシステムの場合、電流制御部35は、インバータ回路2の出力電流を検出した単相の電流信号に対して制御を行えばよい。
【0066】
指令信号生成部36は、電流制御部35より入力される電流補償値Xu,Xv,Xwに基づいて指令信号を生成して、PWM信号生成部37に出力する。
【0067】
PWM信号生成部37は、PWM信号を生成するものである。PWM信号生成部37は、キャリア信号と指令信号生成部36より入力される指令信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号を生成する。例えば、指令信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、指令信号がキャリア信号以下の場合にローレベルとなるパルス信号が、PWM信号として生成される。生成されたPWM信号は、インバータ回路2に出力される。なお、PWM信号生成部37は、三角波比較法によりPWM信号を生成する場合に限定されず、例えば、ヒステリシス方式でPWM信号を生成するようにしてもよい。
【0068】
重み付け部38は、加算器34より入力される補正補償値ΔIq
iに重み付けを行うものである。重み付け部38には、重み付け値W
iがあらかじめ設定されている。重み付け部38は、補正補償値ΔIq
iを重み付け値W
iで除算した重み付け後の補正補償値ΔIq
i’を通信部39および協調補正値生成部33に出力する。
【0069】
重み付け値W
iは、インバータ装置Aに補償させる無効電力の大きさに応じてあらかじめ設定しておく。例えば、SVCのインバータ装置A5(
図2参照)にできるだけ多くの無効電力を補償させるために、インバータ装置A5の重み付け値W
5には、他のインバータ装置A1〜A4の重み付け値W
1〜W
4と比べて大きな値を設定する。また、重み付け値W
1〜W
4については、無効電力をインバータ装置A1〜A4に平等に補償させるのであれば同じ値とすればよいし、インバータ装置A1〜A4の容量がそれぞれ異なるのであれば容量に応じた値とすればよい。また、インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルの大きさに応じて重み付け値W
iを設定するようにしてもよい。すなわち、接続されている太陽電池パネルが小さい場合、発電される電力が小さく、インバータ装置Aの容量に対して余裕があるので、多くの無効電力を補償させるために重み付け値W
iを大きくする。逆に、接続されている太陽電池パネルが大きい場合、重み付け値W
iを小さくする。
【0070】
通信部39は、他のインバータ装置Aの制御回路3との間で通信を行うものである。通信部39は、重み付け部38より重み付け後の補正補償値ΔIq
i’を入力され、他のインバータ装置Aの通信部39に送信する。また、通信部39は、他のインバータ装置Aの通信部39から受信した補償値ΔIq
j’を、協調補正値生成部33に出力する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0071】
例えば、インバータ装置Aが
図2に示すインバータ装置A2の場合、通信部39は、重み付け後の補正補償値ΔIq
2’をインバータ装置A1およびA3の通信部39に送信し、インバータ装置A1の通信部39から補償値ΔIq
1’を受信し、インバータ装置A3の通信部39から補償値ΔIq
3’を受信する。
【0072】
次に、協調補正値生成部33の詳細について説明する。
【0073】
協調補正値生成部33は、重み付け部38より入力される重み付け後の補正補償値ΔIq
i’(以下では、「補償値ΔIq
i’」と省略して記載する)と、通信部39より入力される、他のインバータ装置Aの補償値ΔIq
j’とを用いて、各インバータ装置Aと協調するための協調補正値を生成する。補償値ΔIq
i’と補償値ΔIq
j’とが異なっていても、協調補正値生成部33での演算処理が繰り返されることで、補償値ΔIq
i’と補償値ΔIq
j’とが共通の値に収束する。
図1に示すように、協調補正値生成部33は、演算部331、乗算器332および積分器333を備えている。
【0074】
演算部331は、下記(5)式に基づく演算を行う。すなわち、演算部331は、通信部39より入力される各補償値ΔIq
j’から、重み付け部38より入力される補償値ΔIq
i’をそれぞれ減算し、減算結果をすべて加算した演算結果u
iを乗算器332に出力する。
【数5】
【0075】
例えば、インバータ装置Aがインバータ装置A2の場合(
図2参照)、演算部331は、下記(6)式の演算を行い、演算結果u
2を出力する。
【数6】
【0076】
乗算器332は、演算部331から入力される演算結果u
iに所定の係数εを乗算して積分器333に出力する。係数εは、0<ε<1/d
maxを満たす値であり、あらかじめ設定されている。d
maxは、通信部39が通信を行う他のインバータ装置Aの数であるd
iのうち、電力システムに接続しているすべてのインバータ装置Aの中で最大のものである。つまり、電力システムに接続しているインバータ装置Aのなかで、一番多くの他のインバータ装置Aと通信を行っているものの通信部39に入力される内部位相θ
jの数である。なお、係数εは、演算結果u
iが大きく(小さく)なりすぎて、協調補正値の変動が大きくなりすぎることを抑制するために、演算結果u
iに乗算されるものである。したがって、協調補正値生成部33での処理が連続時間処理の場合は、乗算器332を設ける必要はない。
【0077】
積分器333は、乗算器332から入力される値を積分することで協調補正値を生成して出力する。積分器333は、前回生成した協調補正値に乗算器332から入力される値を加算することで協調補正値を生成する。協調補正値は、加算器34に出力される。
【0078】
本実施形態では、制御回路3をディジタル回路として実現した場合について説明したが、アナログ回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを制御回路3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0079】
本実施形態において、協調補正値生成部33は、重み付け部38より入力される補償値ΔIq
i’と、通信部39より入力される、他のインバータ装置Aの補償値ΔIq
j’とを用いて、協調補正値を生成する。補償値ΔIq
i’が各補償値ΔIq
j’の相加平均値より大きい場合、演算部331が出力する演算結果u
iは負の値になる。そうすると、協調補正値は小さくなり、補償値ΔIq
i’も小さくなる。一方、補償値ΔIq
i’が各補償値ΔIq
j’の相加平均値より小さい場合、演算部331が出力する演算結果u
iは正の値になる。そうすると、協調補正値は大きくなり、補償値ΔIq
i’も大きくなる。つまり、補償値ΔIq
i’は各補償値ΔIq
j’の相加平均値に近づいていく。この処理が各インバータ装置Aそれぞれで行われることにより、各インバータ装置Aの補償値ΔIq
i’は同じ値に収束する。コンセンサスアルゴリズムを用いることで制御対象の状態の値が同じ値に収束することは、数学的にも証明されている(非特許文献1,2参照)。本実施形態の場合、補償値ΔIq
i’が制御対象の状態の値である。
【0080】
以下に、
図2に示す電力システムにおいて、各インバータ装置Aが協調して無効電力を補償することで連系点電圧の変動を抑制することを確認したシミュレーションについて説明する。
【0081】
インバータ装置A1の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
1を「0.5」、積分ゲインKi
1を「5」、インバータ装置A2の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
2を「1」、積分ゲインKi
2を「8」、インバータ装置A3の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
3を「1」、積分ゲインKi
3を「4」、インバータ装置A4の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
4を「0.2」、積分ゲインKi
4を「2」、インバータ装置A5の連系点電圧制御部32の比例ゲインKp
5を「0.3」、積分ゲインKi
5を「3」とし、インバータ装置A1〜A5の重み付け部38に設定されている重み付け値W
1〜W
5を、W
1=W
2=W
3=W
4=1、W
5=10としている。
図8および
図9は、当該シミュレーションの結果を示すものであり、
図8は協調を行わなかった場合(すなわち、
図1に示す協調補正値生成部33、重み付け部38および通信部39がない構成の場合)のものであり、
図9は協調を行った場合(すなわち、
図1に示す構成の場合)のものである。
【0082】
どちらも、シミュレーション開始から1秒後に、外乱として連系点電圧変動分0.05[p.u.]を注入した。また、
図9の場合は、シミュレーション開始から50秒後にインバータ装置A1の重み付け値W
1を、「1」から「0.2」に変更した。
図8(a)および
図9(a)は、連系点電圧偏差ΔV(=V
*−V)の時間変化を示している。また、
図8(b)および
図9(b)は、各インバータ装置A1〜A5の加算器34がそれぞれ出力する補正補償値ΔIq
1〜ΔIq
5の時間変化を示している。
【0083】
図8の場合、連系点電圧の変動をすぐに抑制することができているが、補正補償値ΔIq
1〜ΔIq
5の値は、各ゲインに応じた値に固定されている。したがって、各インバータ装置A1〜A5が補償する無効電力を制御することができない。
図8(b)の場合、インバータ装置A2が最も多くの無効電力を補償し、本来最も多くの無効電力を補償するべきインバータ装置A5が少ししか無効電力を補償しない。
【0084】
図9の場合も、
図8の場合と同様に、連系点電圧の変動をすぐに抑制することができている。また、
図9の場合、各インバータ装置A1〜A5が、それぞれ重み付け値W
1〜W
5に応じた無効電力を補償する。すなわち、
図9(b)に示すように、シミュレーション開始から約30秒で、補正補償値ΔIq
1〜ΔIq
4が同じ値に収束しており、補正補償値ΔIq
5が補正補償値ΔIq
1〜ΔIq
4の収束値の約10倍の値に収束している。したがって、インバータ装置A5は、インバータ装置A1〜A4の約10倍の無効電力を補償する。また、シミュレーション開始から50秒後に重み付け値W
1を変更した後は、補正補償値ΔIq
1は大きく(すなわち、補償する無効電力が少なく)なり、補正補償値ΔIq
2〜ΔIq
5は小さく(すなわち、補償する無効電力が多く)なっている。つまり、インバータ装置A1が補償していた無効電力の一部を、インバータ装置A2〜A5が負担している。
【0085】
図2の電力システムの通信状態が
図5(b)、(c)に示すグラフとなる場合についてもそれぞれシミュレーションを行った。これらの場合も、
図9の場合と同様に、連系点電圧の変動をすぐに抑制することができ、各インバータ装置A1〜A5がそれぞれ重み付け値W
1〜W
5に応じた無効電力を補償することが確認できた。また、
図5(b)のグラフの場合の方が、
図9の場合(
図5(a)のグラフの場合)より補正補償値ΔIq
1〜ΔIq
5が収束するまでの時間が短く、
図5(c)のグラフの場合はさらに収束までの時間が短くなった。なお、シミュレーション結果の図示は省略している。
【0086】
本実施形態によると、協調補正値生成部33は、補償値ΔIq
i’と補償値ΔIq
j’とに基づく演算結果を用いて、協調補正値を生成する。各インバータ装置A1〜A5の協調補正値生成部33がこれを行うことで、すべてのインバータ装置A1〜A5の補償値ΔIq
i’が同じ値に収束する。したがって、各インバータ装置A1〜A5の補正補償値ΔIq
iは、それぞれの重み付け値W
1〜W
5に応じた値になる。各インバータ装置A1〜A5の出力無効電力は補正補償値ΔIq
iに基づいて制御されるので、重み付け値W
1〜W
5に応じた無効電力を各インバータ装置A1〜A5に補償させることができる。
【0087】
また、電力システムに接続されている各インバータ装置Aがそれぞれ少なくとも1つのインバータ装置A(例えば、近隣に位置するものや、通信が確立されたもの)とだけ相互通信を行っており、電力システムが連結状態であればよく、1つのインバータ装置Aや監視装置が他の全てのインバータ装置Aと通信を行う必要はない。したがって、システムが大がかりにならない。また、あるインバータ装置Aが故障した場合や、あるインバータ装置Aを削減した場合でも、他の全てのインバータ装置Aがいずれかのインバータ装置Aと通信可能であり、電力システムが連結状態であればよい。また、インバータ装置Aを増加する場合は、そのインバータ装置Aが少なくとも1つのインバータ装置Aと相互通信を行うようにすればよいだけである。したがって、インバータ装置Aの増減に柔軟に対応できる。
【0088】
なお、上記第1実施形態においては、演算部331に設定する演算式を上記(5)式とした場合について説明したが、これに限られない。インバータ装置A1〜A5の補償値ΔIq
i’を同じ値に収束させる他の式を用いるようにしてもよい。
【0089】
例えば、演算部331に設定する演算式を下記(7)式とした場合にも、補償値ΔIq
i’を同じ値に収束させることができる。d
iは、通信部39が通信を行う他のインバータ装置Aの数、すなわち、通信部39に入力される補償値ΔIq
j’の数である。
【数7】
【0090】
また、演算部331に設定する演算式を下記(8)〜(10)式とした場合にも、補償値ΔIq
i’を同じ値に収束させることができる。
【数8】
【0091】
上記第1実施形態においては、各インバータ装置Aの重み付け値として、固定値があらかじめ設定されている場合について説明したがこれに限られない。各インバータ装置Aの重み付け値を変更可能にしてもよい。
【0092】
図10は、第2実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。
図10においては、制御回路3のみを記載しており、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(
図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第2実施形態に係るインバータ装置Aは、インバータ回路2の温度に応じて重み付け値W
iを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。
図10に示すように、第2実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に温度検出部40および重み付け値設定部41をさらに備えている。
【0093】
図示しないが、インバータ回路2のヒートシンクには温度センサが取り付けられている。温度検出部40は、当該温度センサが検出した温度を検出し、検出した温度を重み付け値設定部41に出力する。重み付け値設定部41は、温度検出部40より入力される温度に応じた重み付け値W
iを重み付け部38に設定する。インバータ回路2の温度が高い場合、インバータ回路2に負担がかかっていると考えられるので、無効電力の補償のための負担を軽減する方がいい。したがって、重み付け値設定部41は、温度検出部40より入力される温度が高くなるほど、設定する重み付け値W
iを小さい値にする。本実施形態では、温度検出部40より入力される温度をあらかじめ設定しているしきい値と比較し、温度がしきい値より大きい場合に重み付け値W
iを小さい値に変更する。なお、複数のしきい値を設定しておき、重み付け値W
iを段階的に変更するようにしてもよい。また、温度検出部40より入力される温度から重み受け値W
iを線形的に算出する算出式を設定しておき、当該算出式の算出結果を設定するようにしてもよい。
【0094】
第2実施形態によると、インバータ装置Aのインバータ回路2に負担がかかりすぎてインバータ回路2の温度が高くなった場合、重み付け値W
iが小さい値に変更される。これにより、当該インバータ装置Aが補償する無効電力が減少され、その分の無効電力の補償を他のインバータ装置Aが負担する。したがって、当該インバータ装置Aのインバータ回路2の負担が軽減される。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0095】
図11は、第3実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。
図11(a)は、第3実施形態に係るインバータ装置Aの制御回路3のみを記載しており、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(
図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第3実施形態に係るインバータ装置Aは、日時や時刻によって重み付け値W
iを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。
図11(a)に示すように、第3実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に時計部42および重み付け値設定部41’をさらに備えている。
【0096】
時計部42は、日付および時刻(以下では、合わせて「日時」とする))を重み付け値設定部41’に出力する。
【0097】
重み付け値設定部41’は、時計部42より入力される日時に応じた重み付け値W
iを重み付け部38に設定する。太陽の位置は時刻によって変化するので、建物などの影がかかる領域は時刻によって変化する。また、太陽の軌道は日付によって変化する(例えば、夏至と冬至で太陽の軌道は大きく異なる)ので、建物などの影がかかる領域は日付によっても変化する。インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルに影がかかる場合、当該太陽電池パネルで発電される電力は小さくなる。この場合、インバータ装置Aの容量に対して余裕があるので、多くの無効電力を補償させるようにしてもよい。本実施形態では、影がかかる太陽電池パネルをあらかじめ調査しておき、影がかかる太陽電池パネルが接続されているインバータ装置Aの重み付け値W
iを、影がかかる日時に大きい値に切り替えるようにしている。また、影がかかる面積が大きいほど重み付け値W
iを大きくするようにしている。具体的には、重み付け値設定部41’は、
図11(b)に示す重み付け値W
iのテーブルをメモリに記憶してあり、時計部42より入力される日時に対応する重み付け値W
iを読み出して設定する。
図11(b)においては、1月の9:00〜12:00に太陽電池パネルに影がかかるので、この日時に通常より大きな値が設定されている。なお、重み付け値W
iは、日付に関係なく時刻によってのみ変更するようにしてもよいし、時刻に関係なく日付によってのみ変更するようにしてもよい。
【0098】
第3実施形態によると、インバータ装置Aに接続されている太陽電池パネルに影がかかる日時においては、重み付け値W
iが大きい値に変更され、通常より多くの無効電力を補償させることができる。また、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0099】
図12は、第4実施形態に係るインバータ装置Aを説明するための図である。
図12においては、制御回路3のうち第1実施形態に係る制御回路3(
図1参照)と共通する部分の記載を省略している。第4実施形態に係るインバータ装置Aは、インバータ回路2の出力有効電力に応じて重み付け値W
iを変更する点で、第1実施形態に係るインバータ装置Aと異なる。
図12に示すように、第4実施形態に係るインバータ装置Aは、制御回路3に有効電力算出部43および重み付け値設定部41”をさらに備えている。
【0100】
有効電力算出部43は、インバータ回路2の出力有効電力Pを算出するものであり、電流センサ4より入力される電流信号Iu,Iv,Iwと、電圧センサ5より入力される、三相の連系点電圧の瞬時値をディジタル変換した電圧信号Vu,Vv,Vwとから出力有効電力Pを算出する。有効電力算出部43は、算出した出力有効電力Pを重み付け値設定部41”に出力する。
【0101】
重み付け値設定部41”は、有効電力算出部43より入力される出力有効電力Pに応じた重み付け値W
iを重み付け部38に設定する。出力有効電力Pが大きい場合、インバータ装置Aの容量に対して余裕がないので、本実施形態においては、補償する無効電力を少なくするようにしている。すなわち、重み付け値設定部41”は、有効電力算出部43より入力される出力有効電力Pをあらかじめ設定しているしきい値と比較し、出力有効電力Pがしきい値より大きい場合に重み付け値W
iを小さい値に変更する。なお、複数のしきい値を設定しておき、重み付け値W
iを段階的に変更するようにしてもよい。また、出力有効電力Pから重み受け値W
iを線形的に算出する算出式を設定しておき、当該算出式の算出結果を設定するようにしてもよい。
【0102】
第4実施形態によると、インバータ装置Aの出力有効電力Pが大きい場合、重み付け値W
iが小さい値に変更される。これにより、当該インバータ装置Aが補償する無効電力が減少され、その分の無効電力の補償を他のインバータ装置Aが負担する。したがって、当該インバータ装置Aのインバータ回路2の負担が軽減される。また、第4実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0103】
上記第4実施形態においては、インバータ装置Aの出力有効電力Pが大きいと重み付け値W
iを小さくする場合について説明したが、これに限られない。逆に、出力有効電力Pが大きくなるのに応じて重み付け値W
iを大きくして、出力無効電力も大きくするようにし、各インバータ装置Aの力率を合わせるようにしてもよい。
【0104】
本発明に係る制御回路、インバータ装置、電力システム、および、制御方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る制御回路、インバータ装置、電力システム、および、制御方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。