【実施例】
【0038】
(実施例1)
静電チャック(静電チャックと基板との間の使用時の電位差:2kV)をホットプレス焼成法により作製した。純度99.9%以上で銅含有量が10ppm以下のアルミナ粉末(平均粒径0.6μm)中に、単極型のモリブデン電極(銅含有量30ppm)を埋設し、焼成温度;1600℃、焼成時間;2時間、プレス圧;100kg/cm
2の条件でホットプレス焼成し、φ200mm×10mm(電極から吸着面までの絶縁層厚み:0.5mm)のセラミックスからなる円板状の静電チャックを得た。その後、吸着面等の平面研削加工等を行い、吸着面にエンボスを有する静電チャックを作製した(
図1)。エンボスを構成する突起部はφ1mm、高さ15μmに、各突起部間のピッチ幅は5mmになるように作製した。
【0039】
さらに、吸着面と反対側の基体側からφ4.1mmの孔をあけ、電極を露出させた。ニッケル給電端子(φ4mm×15mm)を孔に嵌め込んで、銀ロウ材(BAg−8)にチタンを加えたロウ材を介して内部電極に接合(真空雰囲気下、820℃)した。
【0040】
次に、前洗浄工程として、作製した静電チャック10に対して、メタノールによる超音波洗浄を10分行った後、メタノールによる浸漬洗浄を30分行った。硝酸(2%)洗浄を1分、超純水による洗い流しを5分行い、乾燥機で乾燥させた。
【0041】
次に、
図3(A)に示されるように、静電チャック電極14が正極に、シリコンウエハの基板Wが負極になるようにリード線30,31で接続した後、前洗浄工程の効果を確認した。具体的には、静電チャック10に基板Wを載置し、静電チャック電極14に+1kV、基板Wに−1kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に23℃で1分間吸着させた後、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分のICP分析を行い、基板Wに付着した金属汚れの銅を分析した。
【0042】
金属成分の分析は、基板W裏面をフッ化水素酸及び過酸化水素水の混酸で処理し、その一部を分取して、蒸発乾固させた。その残渣を希フッ化水素酸と希硝酸の混酸に溶解して、定容液とした。この定溶液の銅について、ICP質量分析装置(SIIナノテクノロジー社製型式SPQ9400)を用いたICP質量分析法により分析を行った。その結果、銅の定量値は150×10
10atoms/cm
2であった。
【0043】
さらに、作製した静電チャック10の吸着面の平面度を計測した。平面度は、ものの表面の平らさを表す指標であり、JIS B 6191−1999の5.325に基づき3次元座標測定機を用いて測定した。具体的には、JISB 6191−1999の5.31の定義に基づき、被測定体の基準平面を解析プログラムによって求め、この基準平面に対する偏差を算出し平面度とした。その際、測定点は、中心点、並びに、φ50、φ100、φ150、φ190の各円周に対して4等配上の位置の点を採用した。尚、
図1の静電チャックにおいて、上記の位置にエンボスがない場合は、最も近傍にあるエンボス上で測定した。
【0044】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+2kV、基板Wに−2kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に23℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(1回目の電圧印加工程)。その後、静電チャック10の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。
【0045】
(実施例2)
実施例1の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+2kV、基板Wに−2kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に200℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(2回目の電圧印加工程)。その後、基板Wを脱着し、静電チャック10の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。
【0046】
(実施例3)
実施例1と同様の静電チャック10を作製した後、作製した静電チャック10に対して、実施例1と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた静電チャック10に対して、
図3(A)に示されるように接続した後、前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は610×10
10atoms/cm
2であった。
【0047】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、実施例1と同様の1回目の電圧印加工程を実施した。
【0048】
(実施例4)
実施例3の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+2kV、基板Wに−2kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に25℃で6時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(2回目の電圧印加工程)。
【0049】
(実施例5)
静電チャック10(静電チャックと基板との間の使用時の電位差:2kV)をプラズマ溶射法により作製した。静電チャックを銅含有量が公知のホットプレス焼成法により作製した。銅含有量が10ppm以下のアルミナ粉末(平均粒径:30μm,純度99.9%)を、φ200×10mmのアルミニウム円板に溶射して、厚さ300μmのアルミナ溶射膜を形成した。その後、吸着面等の平面研削加工等を行い、吸着面にエンボスを有するφ200×10mmの静電チャック10を作製した(
図1参照)。エンボスを構成する突起部はφ1mm、高さ30μmに、各突起部間のピッチ幅は5mmになるように作製した。
【0050】
作製した静電チャック10に対して、実施例1と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた静電チャック10に対して、
図3(A)に示されるように接続した後、実施例1と同様の前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は280×10
10atoms/cm
2であった。
【0051】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、実施例1と同様の1回目の電圧印加工程を実施した。
【0052】
(実施例6)
実施例5の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、実施例2と同様の2回目の電圧印加工程を実施した。
【0053】
(実施例7)
静電チャック(静電チャックと基板との間の使用時の電位差:2kV)をホットプレス焼成法により作製した。AlN粉末(平均粒径:0.8μm)に焼結助剤である酸化イットリウム粉末(平均粒径:4μm)を3重量%添加した混合粉末中に、単極型のモリブデン電極(銅含有量30ppm)を埋設し、焼成温度;1900℃、焼成時間;2時間、プレス圧;100kg/cm
2の条件でホットプレス焼成し、φ200mm×10mm(電極から吸着面までの絶縁層厚み:0.5mm)のセラミックスからなる円板状の静電チャックを得た。その後、吸着面等の平面研削加工等を行い、吸着面にエンボスを有する、実施例1と同じ形状の静電チャックを作製した(
図1)。
【0054】
作製した静電チャック10に対して、実施例1と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた静電チャック10に対して、
図3(A)に示されるように接続した後、実施例1と同様の前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は460×10
10atoms/cm
2であった。
【0055】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、実施例1と同様の1回目の電圧印加工程を実施した。
【0056】
(実施例8)
実施例7の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、電圧印加工程の温度を300℃にした以外は実施例2と同様の2回目の電圧印加工程を実施した。
【0057】
(実施例9)
実施例7と同様の静電チャック10を作製した後、作製した静電チャック10に対して、実施例1と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた静電チャック10に対して、
図3(A)に示されるように接続した後、実施例1と同様の前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は210×10
10atoms/cm
2であった。
【0058】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、実施例1と同様の1回目の電圧印加工程を実施した。
【0059】
(実施例10)
実施例9の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、実施例4と同様の2回目の電圧印加工程を実施した。
【0060】
(実施例11)
真空チャックを常圧焼成法により作製した。炭化珪素(平均粒径:0.7μm)に炭化硼素(平均粒径:0.8μm)を0.5重量%、カーボンブラック(平均粒径:0.01μm)を2重量%、PVBバインダーを添加した原料粉末をポットミル混合して乾燥させ、セラミックスの原料混合粉末を作製した。混合粉末を150MPaでCIP成形し、円板状成形体を得た。得られた円板状成形体を、焼成温度;2100℃、焼成時間;6時間、常圧焼成し、φ200mm×4mmのセラミックスからなる円板を得た。その後、円板に対して、中心部にφ2mmの吸引孔24を設けるとともに、溝の幅が1mm、深さが1mmの同心円状の円環溝26a,26b,26cと、溝の幅が1mm、深さが1mmの、吸引孔24の位置で直交する2本の線溝28a,28bとを、研削加工により吸着面に形成し、真空チャック20を作製した。尚、円環溝26a,26b,26cはそれぞれ、φ60mm、φ120mm、φ180mmとなるように設けた。
【0061】
炭化珪素は体積抵抗率が1.0×10
6Ω・cmであることから、直流電圧を印加するための電極(正極)として真空チャック20の基体22を用いた。
【0062】
作製した真空チャック20に対して、実施例1と同様の前洗浄工程を実施した。次に、
図3(B)に示されるように、前洗浄工程が行われた真空チャック20が正極に、基板Wが負極になるようにリード線で接続した後、前洗浄工程の効果を確認した。具体的には、真空チャック20に基板Wを載置し、吸引孔24の吸引圧が30kPaになるように真空ポンプで真空状態を形成し、真空チャック20に+1.5kV、基板Wに−1.5kVの直流電圧を印加して、基板Wを真空チャック20の吸着面に30℃で1分間吸着させた後、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分のICP分析を行い、基板Wに付着した金属汚れの銅を分析した。その結果、銅の定量値は1200×10
10atoms/cm
2であった。
【0063】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された真空チャック20に新たな基板Wを載置し、吸引孔24の吸引圧が30kPaになるように真空ポンプで真空状態を形成して基板Wを真空チャック20に吸着し、真空チャック20に+5kV、基板Wに−5kVの直流電圧を印加して、基板Wを真空チャック20に30℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(1回目の電圧印加工程)。その後、基板Wを脱着し、真空チャック20の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。
【0064】
(実施例12)
実施例11の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された真空チャック20に新たな基板Wを載置し、真空チャック20に+5kV、基板Wに−5kVの直流電圧を印加して、基板Wを真空チャック20に200℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(2回目の電圧印加工程)。
【0065】
(実施例13)
銅含有量が10ppm以下の合成石英ガラス(純度:99.99%以上)の円板(φ200mm×4mm)に対して、中心部にφ10mmの吸引孔24を設けるとともに、溝の幅が1mm、深さが1mmの同心円状の円環溝26a,26b,26cと、溝の幅が1mm、深さが1mmの、吸引孔24の位置で直交する2本の線溝28a,28bとを、研削加工により吸着面に形成し、真空チャック20’を作製した。尚、円環溝26a,26b,26cはそれぞれ、φ60mm、φ120mm、φ180mmとなるように設けた。その後、作製した真空チャック20’に対して、実施例1と同様の前洗浄工程を実施した。
【0066】
合成石英ガラスの体積抵抗率は1.0×10
17Ω・cmであることから、直流電圧を印加するために、
図3(C)に示されるように、前洗浄工程が行われた真空チャック20’の吸着面と反対側の裏面に、基板Wと同じシリコンウエハの基板W’を配置し、基板W’が正極になるようにリード線31で接続し、基板Wが負極になるようにリード線30で接続した後、前洗浄工程の効果を確認した。具体的には、真空チャック20’に基板Wを載置し、吸引孔24の吸引圧が30kPaになるように真空ポンプで真空状態を形成し、真空チャック20’に+1.5kV、基板Wに−1.5kVの直流電圧を印加して、基板Wを真空チャック20’の吸着面に30℃で1分間吸着させた後、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分のICP分析を行い、基板Wに付着した金属汚れの銅を分析した。その結果、銅の定量値は890×10
10atoms/cm
2であった。
【0067】
次に、実施例13の前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された真空チャック20’に新たな基板Wを載置し、基板W’に+5kV、基板Wに−5kVの直流電圧を印加して、基板Wを真空チャック20’に30℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(1回目の電圧印加工程)。その後、基板Wを脱着し、真空チャック20’の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。
【0068】
(実施例14)
実施例13の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された真空チャック20’に新たな基板Wを載置し、基板W’に+5kV、基板Wに−5kVの直流電圧を印加して、基板Wを真空チャック20に200℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(2回目の電圧印加工程)。
【0069】
(比較例1)
実施例7と同様の条件で、静電チャック10を作製した後、実施例7と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた静電チャック10に対して、
図3(A)に示されるように接続した後、前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は510×10
10atoms/cm
2であった。
【0070】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+2kV、基板Wに−2kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に13℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(1回目の電圧印加工程)。その後、基板Wを脱着し、静電チャック10の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。
【0071】
(比較例2)
比較例1の1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+2kV、基板Wに−2kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に16℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(2回目の電圧印加工程)。その後、基板Wを脱着し、静電チャック10の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。平面度は8μm、銅の定量値は10×10
10atoms/cm
2であった。
【0072】
2回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+2kV、基板Wに−2kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に350℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(3回目の電圧印加工程)。
【0073】
(比較例3)
実施例7と同様の条件で、静電チャック10を作製した後、実施例1と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた静電チャック10に対して、
図3(A)に示されるように接続した後、前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は360×10
10atoms/cm
2であった。
【0074】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+1.5kV、基板Wに−1.5kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に40℃で6時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(1回目の電圧印加工程)。
【0075】
(比較例4)
1回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+5kV、基板Wに−5kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に40℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた(2回目の電圧印加工程)。その後、基板Wを脱着し、静電チャック10の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。平面度は4μm、銅の定量値は2×10
10atoms/cm
2であった。
【0076】
2回目の電圧印加工程後、基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、40℃で、静電チャック電極14に+7.5kV、基板Wに−7.5kVの直流電圧を印加した。印加した瞬間、基板Wと静電チャック10との間で放電が生じたので、電圧印加工程を終了した。
【0077】
(比較例5)
実施例11と同様の条件で、真空チャック20を作製した後、実施例11と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた真空チャック20に対して、
図3(B)に示されるように接続した後、前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は930×10
10atoms/cm
2であった。
【0078】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された真空チャック20に新たな基板Wを載置した状態のまま、真空吸着することなく、真空チャック20に+5kV、基板Wに−5kVの直流電圧を印加して、基板Wを真空チャック20に40℃で1時間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた。その後、基板Wを脱着し、真空チャック20の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。
【0079】
(比較例6)
実施例7と同様の条件で、静電チャック10を作製した後、実施例7と同様の前洗浄工程を実施した。そして、前洗浄工程が行われた静電チャック10に対して、
図3(A)に示されるように接続した後、前洗浄工程の効果をICP質量分析法により確認した結果、銅の定量値は460×10
10atoms/cm
2であった。
【0080】
次に、前洗浄工程の効果を確認するために基板Wが脱着された静電チャック10に新たな基板Wを載置し、静電チャック電極14に+2kV、基板Wに−2kVの直流電圧を印加して、基板Wを静電チャック10に23℃で30分間吸着させて、基板Wに付着した金属汚れの銅を移動させて付着させた。その後、基板Wを脱着し、静電チャック10の吸着面の平面度を計測するとともに、脱着した基板Wの裏面に対して、金属成分の分析(ICP分析)を行った。
【0081】
[結果]
実施例1〜14及び比較例1〜6の各電圧印加工程に対する当該工程実施後の工程ICP分析結果、当該工程実施前後の平面度及びその変化量(絶対値)を表1に示す。表中、印加した直流電圧の差の絶対値(電位差)、電圧印加時間,温度を示し、“*”は本実施形態の好適数値範囲外の値であることを示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例1、3、5、7、9、11、13、及び、比較例1、3、5、6の前洗浄工程の効果を確認するために行ったICP分析により分析された銅の定量値は、150×10
10〜1200
10atoms/cm
2の範囲で一定化しなかった。すなわち、前洗浄工程の洗浄は液体を用いた洗浄であることから、金属汚れを効果的に除去することが困難であり、また一定化しなかった。
【0084】
これに対して、表1の実施例1〜14から、前洗浄工程後、基板を基板保持部材(静電チャック10,真空チャック20,20’)に吸着させながら、基板Wと、基板保持部材又は基板保持部材裏面に設けた基板W’とに、基板Wより、基板保持部材又は基板保持部材裏面の基板W’が高電位になるように、印加した直流電圧の差の絶対値が4kV〜10kV、15〜300℃の範囲の温度で1〜6時間、直流電圧を印加する電圧印加工程を実施することによって、金属汚れの金属を付着させた基板を基板保持部材から取り除き、銅の定量値を10×10
10atoms/cm
2以下に低減した。
【0085】
すなわち、基板保持部材に付着した金属汚れの残存を抑制できたことがわかる。また、平面度の変化も最大4μmであり、寸法精度の低下を防止できたことがわかる。
【0086】
また、電圧印加工程での温度が200℃以上である場合(実施例2,6,8,12,14)、銅の定量値は、0.4×10
10atoms/cm
2以下に低減することができた。
【0087】
電圧印加工程での温度が15℃未満である場合(比較例1)、静電チャック10に付着した金属汚れを形成する金属の静電チャックから基板Wへの移動が不十分となり、銅の定量値が480×10
10atoms/cm
2となった。
【0088】
電圧印加工程での温度が300℃を超えた場合(比較例2)、銅の定量値が0.6×10
10atoms/cm
2となったが、静電チャック10に生じた寸法変化による平面度の変化量が26μmとなり、静電チャック10の寸法精度を低下させた。
【0089】
電圧印加工程での電位差が4kV未満である場合(比較例3)、静電チャック10に付着した金属汚れを形成する金属の静電チャックから基板Wへの移動が不十分となり、銅の定量値が340×10
10atoms/cm
2となった。
【0090】
電圧印加工程での電位差が10kVを超えた場合(比較例4)、電位差15kVの電圧を印加した瞬間、静電チャック10と基板との間で放電が発生し、放電が発生した基板表面部分と静電チャック表面部分に焦げ跡がつき、損傷した。
【0091】
電圧印加工程において、基板を基板保持部材に載置したまま吸着させなかった場合(比較例5)、すなわち、基板を真空チャック吸着面に載置したのみで、真空吸着しなかった場合、銅の定量値が720×10
10atoms/cm
2となった。これは、基板自体が極僅かな反りを有していることと、真空チャック吸着面が完全な平面ではないことから、基板を真空チャックに吸着しないまま電圧印加工程を実施すると、真空チャックと基板との間で接触しない隙間部分が発生するため、真空チャックに付着した金属汚れを形成する金属の真空チャックから基板Wへの移動が不十分となった。
【0092】
さらに、電圧印加工程で電圧印加時間が1時間未満の場合(比較例6)、静電チャックに付着した金属汚れを形成する金属の静電チャックから基板Wへの移動が不十分となり、銅の定量値が120×10
10atoms/cm
2となった。