特許第6397639号(P6397639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ FDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000004
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000005
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000006
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000007
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000008
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000009
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000010
  • 特許6397639-筒型電池及び筒型電池の製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397639
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】筒型電池及び筒型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/08 20060101AFI20180913BHJP
   H01M 6/08 20060101ALI20180913BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01M2/08 Q
   H01M6/08 A
   H01M6/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-50081(P2014-50081)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-176655(P2015-176655A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 龍也
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀典
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−119153(JP,A)
【文献】 特表2016−517145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/08
H01M 6/02
H01M 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方を底とした有底円筒状の電池缶内に、環状の正極合剤と、当該正極合剤の内側に配置される有底円筒状のセパレータと、当該セパレータの内側に配置される負極ゲルとが収納されているとともに、前記電池缶の開口に負極端子板が封口ガスケットを介して嵌着されてなる筒型電池であって、
前記封口ガスケットは、略円盤状に一体的に成形された樹脂からなり、前記円盤の中心にて上下方向に中空円筒状に突設されているボス部を有し、
棒状の胴部の上端に胴部よりも拡径された頭部が形成された集電子を有し
前記集電子は、前記頭部の上面が前記負極端子板の下面に固設され、前記胴部が、前記ボス部が有する貫通孔に圧入状態で貫通挿入され
前記ボス部の上面に、前記貫通孔の周囲が凹状に形成されてなる封止剤貯留部を備え、
前記頭部の下面がボス部の上面に密接し
前記封止貯留部は、前記ボス部の前記貫通孔内周端縁部と、前記頭部下面と、前記集電子外周面とによって画成される空間として形成され
前記封止剤貯留部に、前記集電子と前記貫通孔内周面との間を液密に封止するための封止剤が充填され、
前記集電子の前記胴部において、前記ボス部に挿入されている長さにわたり、当該ボス部の内周面と当該胴部との境界面に前記封止剤による封止層が形成されている、
ことを特徴とする筒型電池。
【請求項2】
前記封止剤貯留部は、略環状の空間として形成されることを特徴とする、請求項1記載の筒型電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の筒型電池の製造方法であって、
前記ボス部に前記集電子を挿入する際に、前記集電子外周部の前記頭部と前記ボス部上面との間の領域の少なくとも一部に前記封止剤を環状に塗布した後、前記ボス部上面前記頭部下面を一時的に圧接する工程を含み、
当該圧接する工程では、前記ボス部の上面を押圧変形させて沈み込ませることで、前記封止剤を前記集電子外周面と前記ボス部の前記貫通孔内周面との間に供給する、
ことを特徴とする筒型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型電池及び筒型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筒型電池は、アルカリ電池等の一次電池として各種電気機器に広く使用されている。従来の一般的な筒型電池の構成例が、特許文献1(特開2013−54859)に示されている。この構成の詳細については、本願発明の実施形態に関して後述するが、概略有底円筒状の正極缶と、その内部に環状に配置されている正極合剤を有し、正極合剤の内側にはセパレータを介してゲル状負極合剤が充填されている。正極合剤内には、正極缶の開口側から棒状の集電子が挿入されるが、その集電子には負極端子板が固設されている。集電子には液漏れ等を防ぐとともに、電池の内圧が上昇した場合にこれを逃がして破裂を防ぐための封口ガスケットが嵌められる。具体的には、封口ガスケットは略円筒状のボス部とボス部から円盤状に展開する円盤部を備える。筒型電池の組み立てにあたっては、集電子を封口ガスケットのボス部に貫通させ、集電子をゲル状負極合剤内に差し込んだ状態で、封口ガスケット及び負極端子板をともに正極缶の開口縁でかしめつけて完成する。
【0003】
封口ガスケットによる電池内部のシール性を確保するために、前記集電子は前記封口ガスケットのボス部に設けられている貫通孔に締まりばめ状態となるように圧入される。さらに、ボス部の端面と集電子頭部表面との境界面における封止性を高めるために、その境界面に封止剤を介在させるようにしている。この場合、封止剤は上記した電池組み立て時に集電子の外周表面に塗布される。集電子を封口ガスケットの貫通孔に挿通させると、集電子がボス部に圧入される際に封止剤はボス部の貫通孔内周縁によって上方へとかき取られていき、ボス部上面と集電子頭部との間に溜まって両者の境界面を封止するようになる。この場合、集電子の外周面と貫通孔内周面との間には、前記のかき取りにより封止剤はほとんど残留しないこととなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−54859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上説明したような、特許文献1に例示されているもの等の従来の筒型電池では、ボス部と集電子との間に封止剤が介在しないため、調達部品の問題、製造工程における問題等に起因して、封口ガスケットのボス部貫通孔内面、あるいは集電子外周面に傷が生じている場合、あるいは経時的にボス部と集電子との嵌め合い状態が緩んでくると、集電子をボス部に圧入したことによる封止効果が薄れてきて、電池内部の電解液がボス部と集電子との間の微小な隙間を通って外部に至り液漏れ状態となるおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、筒型電池において、より効果的に液漏れを防止する事が可能な筒型電池及び筒型電池の製造方法を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の、及び他の問題点を解決するために、本発明の一つの態様は、下方を底とした有底円筒状の電池缶内に、環状の正極合剤と、当該正極合剤の内側に配置される有底円筒状のセパレータと、当該セパレータの内側に配置される負極ゲルとが収納されているとともに、前記電池缶の開口に負極端子板が封口ガスケットを介して嵌着されてなる筒型電池であって、
前記封口ガスケットは、略円盤状に一体的に成形された樹脂からなり、前記円盤の中心にて上下方向に中空円筒状に突設されているボス部を有し、
棒状の胴部の上端に胴部よりも拡径された頭部が形成された集電子を有し
前記集電子は、前記頭部の上面が前記負極端子板の下面に固設され、前記胴部が、前記ボス部が有する貫通孔に圧入状態で貫通挿入され
前記ボス部の上面に、前記貫通孔の周囲が凹状に形成されてなる封止剤貯留部を備え、
前記頭部の下面がボス部の上面に密接し
前記封止貯留部は、前記ボス部の前記貫通孔内周端縁部と、前記頭部下面と、前記集電子外周面とによって画成される空間として形成され
前記封止剤貯留部に、前記集電子と前記貫通孔内周面との間を液密に封止するための封止剤が充填され、
前記集電子の前記胴部において、前記ボス部に挿入されている長さにわたり、当該ボス部の内周面と当該胴部との境界面に前記封止剤による封止層が形成されている、
ことを特徴とする。また、前記封止剤貯留部が、略環状の空間として形成される筒型電池とすることもできる。
【0008】
また、本発明の他の態様は、上記筒型電池の製造方法であって、
前記ボス部に前記集電子を挿入する際に、前記集電子外周部の前記頭部と前記ボス部上面との間の領域の少なくとも一部に前記封止剤を環状に塗布した後、前記ボス部上面前記頭部下面を一時的に圧接する工程を含み、
当該圧接する工程では、前記ボス部の上面を押圧変形させて沈み込ませることで、前記封止剤を前記集電子外周面と前記ボス部の前記貫通孔内周面との間に供給する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、筒型電池において、より効果的に液漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る筒型アルカリ電池の集電子51と封口ガスケットボス部71との係合部の構成を例示する部分拡大断面図である。
図2A図2Aは、図1に例示する構成を有する筒型アルカリ電池の組み立て手順を示す模式図である。
図2B図2Bは、図1に例示する構成を有する筒型アルカリ電池の組み立て手順を示す模式図である。
図2C図2Cは、図1に例示する構成を有する筒型アルカリ電池の組み立て手順を示す模式図である。
図3A図3Aは、本発明の他の実施形態に係る、図1に例示する筒型アルカリ電池の集電子51と封口ガスケットボス部71との係合部の構成例を示す部分拡大断面図である。
図3B図3Bは、本発明の他の実施形態に係る、図1に例示する筒型アルカリ電池の集電子51と封口ガスケットボス部71との係合部の構成例を示す部分拡大断面図である。
図3C図3Cは、本発明の他の実施形態に係る、図1に例示する筒型アルカリ電池の集電子51と封口ガスケットボス部71との係合部の構成例を示す部分拡大断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る筒型アルカリ電池の全体構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を更に具体的に説明する。なお、本発明は、それらの実施形態に限定されるものではない。
【0012】
まず、図4に、本実施形態に係る筒型アルカリ電池1の構成例を示す縦断面図を示している。このアルカリ電池1は、LR6タイプ(単3形)の電池である。
【0013】
図4に示されるように、アルカリ電池1は、有底筒状の正極缶10(電池缶)と、その正極缶10の内面に沿って嵌着されたリング状の正極合剤20と、正極合剤20の内側に挿入される有底筒状のセパレータ30と、正極缶10の中心部となるセパレータ30の中空部に配置されるゲル状負極合剤40と、正極缶10の開口部10aに装着される封口体50とを備える。
【0014】
正極缶10は、例えばニッケルメッキ鋼板を有底筒状にプレス成形することによって形成され、その底部の中央に正極端子12が突設されている。正極合剤20は、例えば電解二酸化マンガン、黒鉛、水酸化カリウム、及びバインダを混合した正極合剤粉を整粒した後、これを円筒状にプレス成形することで作製される。
【0015】
セパレータ30は、正極合剤20とゲル状負極合剤40との間を電気的に分離する絶縁材料であり、ビニロン・レーヨン不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布などのセパレータ原紙を円筒状に巻回し、重なり合う部分を熱融着させることで作製される。
【0016】
ゲル状負極合剤40は、水と酸化亜鉛と水酸化カリウムとを混ぜて溶解し、ポリアクリル酸などのゲル化剤と亜鉛粉とを混合することで作製される。
【0017】
封口体50は、負極端子板60、負極集電子51(以下「集電子51」)、及び封口ガスケット70を備えて構成されている。正極缶10の開口部10a付近には、封口体50を載置するためのビード部11が形成されている。そして、そのビード部11上に封口体50を載置した状態で、正極缶10の開口部10aにカール及び絞り加工を施すことにより、正極缶10が封口されている。言い換えると、アルカリ電池1の正極缶10は、開口部10aを径方向(横断方向)に収縮させてかしめることにより封口されている。
【0018】
封口体50は、真鍮を用いて棒状に形成された胴部(後出の図1等において符号51bで示す。)を有する集電子51をその基端側の頭部(後出の図1等において符号51aで示す。)で負極端子板60の裏面に抵抗溶接するとともに、集電子51の頭部51aと胴部51bとの接続部分である首部に封口ガスケット70を嵌着することによって形成されている。集電子51の先端側は、ゲル状負極合剤40の中に挿入されている。
【0019】
負極端子板60は、正極缶10と同じくニッケルメッキ鋼板をプレス成形することによって作製され、封口ガスケット70を介して正極缶10の開口部10aを封止している。負極端子板60は、円形皿状に形成され、その外縁部60aはほぼ直角に折り曲げられている。負極端子板60の外周つば状の部位には、複数のガス抜き穴61が設けられている。
【0020】
封口ガスケット70は、樹脂材料を用いて射出成形された樹脂成形品である。封口ガスケット70の形成材料としては、6,12ナイロン樹脂、6,10ナイロン樹脂、6,6ナイロン樹脂などのポリアミド樹脂が好適に用いられる。封口ガスケット70は、中心部に配置されている筒状のボス部71と、ボス部71から径方向外方に展開するように設けられている環状の円盤部72とを備える。ボス部71の中心部には貫通孔が設けられ、集電子51が締まりばめ状態で挿通されている。封口ガスケット70は、電極ショート等によりガスが発生してアルカリ電池1内部の圧力が高まった場合に、例えば円盤部72とボス部71との薄い接続部分において、あらかじめ設定した所定の圧力値付近で破断するように構成されている。これにより、高まった電池内圧は、発生したガスが破断部から負極端子板60のガス抜き穴61を通じて外気に放出されることにより低減され、アルカリ電池1の破裂は防止される。
【0021】
次に、以上説明した筒型アルカリ電池1の全体構成例を前提として、本発明の一実施形態に係る筒型アルカリ電池1の本発明と関連する部分について説明する。図1に、本発明の一実施形態に係る筒型アルカリ電池1の集電子51と封口ガスケットボス部71との係合部の構成を例示する部分拡大断面図を示している。図1において、図4に図示した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付して示し、詳細な説明は省略する。これは以下の明細書中において同様とする。
【0022】
図1に例示する部分拡大断面図には、本発明の実施形態による筒型アルカリ電池1の集電子51と封口ガスケット70との組み付け関係が例示されている。集電子51は、前述のように、円形横断面を有する棒状の胴部51bと、胴部51bよりも大なる直径を有して胴部51bと同心にその一端部に一体的に形成されている肉厚円盤状の頭部51aとから構成されている。封口ガスケット70は貫通孔が設けられた略円筒状のボス部71を有し、集電子51は、頭部51aがボス部71の上面72に当接する状態となるようにボス部71に差し込まれている。
【0023】
集電子51の胴部51bの直径は、ボス部71の内周面74によって画成される貫通孔の内径よりも大で、ボス部71の貫通孔に胴部51bが圧入されて締まりばめの関係となるように設定されている。これは、ボス部71の内周面74と集電子51の胴部51bとの境界面に空隙が生じ、封口ガスケット70によって封止されているゲル状負極合剤40が前記境界面を通じて外部に漏出することを防ぐためである。本実施形態では、さらにこの境界面を少なくとも液密に封止するための封止層を形成するようにしている。封止層は、境界面に介在する封止剤によって形成される。
【0024】
封止層を形成するための具体的な構成例について以下説明する。図1に例示するように、ボス部71の上面72側の貫通孔内周端周縁部(開口周縁部)には貫通孔内方に凸なR部が設けられている。R部の寸法は、集電子51の頭部51aがボス部71の上面72と密接することが可能となるように設定する。その場合、集電子51の胴部51bをボス部71の貫通孔に挿通させてボス部71の上面72が集電子51の頭部51a表面と密接するようにすると、前記R部が形成されているために、ボス部71の貫通孔内周端縁部と、集電子51の頭部51a表面と、集電子51の胴部51b外周面とによって画成される略環状の空間73が画成される。本実施形態では、この空間73を、ボス部71の内周面74と集電子51の胴部51bとの境界面に封止剤を圧入して適切な封止層を形成するために用いている。以下、この空間73を「封止剤貯留部73」という。
【0025】
次に、上記の構成を有する筒型アルカリ電池1において、前記の封止層を形成するために採用される組み立て手順の例を説明する。図2A図2Cに、封止層の形成に関連する組み立て手順例を模式的に示している。図2Aに示すように、頭部51aが負極端子板60に固設されている集電子51の胴部51bの周囲を実質的に一周するように封止剤Sを塗っておく。封止剤Sを塗る部位は、集電子51の頭部51aから胴部51bの先端に向かって、封口ガスケット70が有するボス部71の長さの範囲内とすることが適当である。これは、ボス部71の内周面74と集電子51の胴部51bとの間に封止層を形成するためである。胴部51bに塗る封止剤Sの量は、封止剤貯留部73の容積と、ボス部71の内周面74と集電子51の胴部51bとの間に形成すべき封止層の厚さ及び面積から理論的に算出される所要体積を満足するように設定すればよい。要は、封止剤貯留部73の容積を勘案して、ボス部71の内周面74と集電子51の胴部51bとの間を少なくとも液密に封止するに足るだけの封止剤Sを塗布すればよく、この技術思想に基づいて封止剤Sの塗布量及び封止剤貯留部73の断面形状、寸法は適宜に決定することができるものである。
【0026】
次に、図2Bに例示するように、図2Aの状態から集電子51の胴部51bをボス部71の貫通孔に挿通させていく。そして、図示のように、ボス部71の上面72を集電子51の頭部51a表面に対して一時的に圧接させる。言い換えれば、頭部51aがボス部71の上面72に当接した後、さらに適宜の深さだけ頭部51aがボス部71の上面72を押圧変形させて沈み込むようにする。このとき、集電子51の胴部51b周囲に塗布されていた封止剤Sは、ボス部71の貫通孔内周面74が胴部51bの外周面に密接しながら上方に摺動していく過程で封止剤貯留部73内に集積される。そして、集電子51の頭部51aがボス部71の上面72に沈み込むように押し込まれる際に、封止剤貯留部73内に貯められていた封止剤Sはボス部71の貫通孔内周面74と集電子51の胴部51b外周面との間に圧入されて封止層を形成する。封止剤貯留部73内の封止剤Sは同時に集電子51の頭部51aとボス部71の上面72との間も埋めるように外方へ広がる。
【0027】
次いで、図2Cに例示するように、ボス部71をわずかに集電子51の胴部51b先端方向へ戻し、集電子51の頭部51aとボス部71の上面72がほぼ当接する位置となるようにする。以上の組み立て手順例によれば、封口ガスケット70のボス部71内周面74と集電子51の胴部51b外周面との間、及び集電子51の頭部51aとボス部71の上面72との間は液密状態となるように適切に封止される。
【0028】
なお、以上の実施形態では、ボス部71の貫通孔開口周縁に貫通孔内方に凸なR部を設ける構成を例示したが、内方に凸なR部に代えて、図3Aに例示するように、貫通孔開口周縁に面取り部を設ける構成、図3Bに例示するように、貫通孔内方貫通孔開口周縁に適宜の寸法の座ぐり部を設ける構成(この場合、封止剤貯留部73の断面形状は矩形である。)、あるいは貫通孔開口周縁に貫通孔内方に凹なR部を設ける構成を採用して封止剤貯留部73を形成するようにしてもよい。その場合も、前記の技術思想にしたがって封止剤貯留部73が適切な容積となるように、形状と寸法を決定することができる。また、ボス部71の貫通孔開口周縁を上記以外の適宜の形状に加工することも自由である。
【0029】
次に、本実施形態に係るLR6タイプ(単3形)筒型アルカリ電池1において、図1に例示したボス部71の貫通孔内方に凸なR部を設けた場合の封止層形成の効果について、R部の寸法を変えて試験した結果を説明する。表1に示すように、R部の半径Rを0.1mmから0.9mmまで、0.1mmピッチで変えて、集電子51の胴部51bとボス部71の貫通孔内周面74との境界面の封止剤Sの塗布状態を調べた。調査の手法としては、それぞれ封口ガスケット70のボス部71と封口体50の集電子51とを前記の手順で組み付けた後、ボス部71を切り開いて境界面の封止剤塗布状態を調べることとした。なお、表1において、断面積は、対応するRの値に対する図1の網掛け部の断面積を、ボス部上面貫通孔開口直径(図1の符号φ)は、ボス部71の上面72における開口直径、言い換えれば、上面72において平面から貫通孔側の曲面に移行開始する境界点が描く円の直径を示しており、対応するRの値が大となれば同様に大となる。なお、試験に用いたLR6タイプ(単3形)筒型アルカリ電池では、集電子51の胴部51bの直径は1.3mm、頭部51aの直径(図1の符号φ)は2.8mmである。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、Rの値が0.2mm〜0.7mmの範囲では、封口ガスケット70のボス部71内周面74と集電子51の胴部51b外周面との境界面は適切に封止剤Sが塗布された状態であって、適切な封止状態が得られていることがわかった。一方、Rの値が0.1mmであった場合は境界面の封止剤塗布状態が適切でなかったが、これは、Rの値が小さすぎて封止剤貯留部73の容積が適切に確保できなかったため、境界面に十分な封止剤Sを供給することができなかったことが原因と考えられる。また、Rの値が0.8mm、0.9mmであった場合にも、境界面の封止剤塗布状態が適切でなかったと判定されたが、これは、対応するボス部上面貫通孔開口直径からも明らかなように、Rの値が大きすぎて当該開口直径が集電子51の頭部51aの直径より大となり、封止剤Sが頭部51aとボス部上面72との間隙から漏出したことが原因と考えられる。
【0032】
次に、表1の場合と同様のLR6タイプ(単3形)筒型アルカリ電池1において、図3Aに例示したボス部71の貫通孔内方に面取り部を設けた場合の封止層形成の効果について、面取り寸法を変えて試験した結果について説明する。表2に示すように、面取り寸法Cを0.1mmから0.9mmまで、0.1mmピッチで変えて、集電子51の胴部51bとボス部71の貫通孔内周面74との境界面の封止剤Sの塗布状態を調べた。調査の手法も表1の場合と同様である。なお、表2において、断面積は表1と同様であるが、ボス部上面貫通孔開口直径は、ボス部71の上面72における開口直径、言い換えれば、上面72において平面から面取り部の斜面に移行開始する境界点が描く円の直径を示しており、対応するCの値が大となれば同様に大となる。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示すように、試験結果は表1の場合と同傾向であり、Cの値が0.2mm〜0.7mmの範囲では、封口ガスケット70のボス部71内周面74と集電子51の胴部51b外周面との境界面は適切に封止剤Sが塗布された状態であって、適切な封止状態が得られていることがわかった。一方、Cの値が0.1mmであった場合は境界面の封止剤塗布状態が適切でなかったが、これは、Cの値が小さすぎて封止剤貯留部73の容積が適切に確保できなかったため、境界面に十分な封止剤Sを供給することができなかったことが原因と考えられる。また、Cの値が0.8mm、0.9mmであった場合にも、境界面の封止剤塗布状態が適切でなかったと判定されたが、これは、対応するボス部上面貫通孔開口直径からも明らかなように、Cの値が大きすぎて当該開口直径が集電子頭部51aの直径より大となり、封止剤Sが頭部51aとボス部上面72との間隙から漏出したことが原因と考えられる。
【0035】
なお、図3B図3Cに例示したような、封止剤貯留部73の断面形状が異なる構成の筒型電池にあっても、その断面積の条件が表1、表2の結果と合致するように断面形状及び寸法を決定することにより、同様の効果を得ることができるものである。
【0036】
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る筒型アルカリ電池1によれば、集電子51と封口ガスケット70のボス部72との間を、封止剤Sによって形成された封止層をもって適切に封止することが可能となり、電池の液漏れを効果的に防止することが可能となる。
【0037】
なお、本発明の実施形態について、LR6タイプ(単3形)筒型(円筒形)アルカリ電池1を例にとって説明したが、本発明は、アルカリ電池以外の形式の電池にも適宜適用することができる。また、適用する電池の容量タイプはLR6タイプ(単3形)以外であってもよく、その場合には集電子51の寸法に合わせて適宜封止剤貯留部73の断面形状、寸法を変更すれば、同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 筒型アルカリ電池 10 正極缶 10a 開口部
20 正極合剤 30 セパレータ 40 ゲル状負極合剤
50 封口体 51 負極集電子 51a 頭部 51b 胴部
60 負極端子板 70 封口ガスケット 71 ボス部
72 円盤部 73 封止剤貯留部 74 ボス部内周面
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4