(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化ケイ素の単一粒子の破壊強度Ssと前記黒鉛材料の単一粒子の破壊強度Sgとの比である破壊強度比Ss/Sgは64〜84である請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池に使用される負極活物質としては、黒鉛、非晶質炭素などの炭素材料が広く用いられている。しかしながら、炭素材料からなる負極活物質を用いた場合には、LiC
6の組成までしかリチウムを挿入できず、理論容量372mAh/gが限度であるため、電池の高容量化への障害となっている。そこで、質量当たり及び体積当たりのエネルギー密度が高い負極活物質として、リチウムと合金化するケイ素ないしケイ素合金や酸化ケイ素を用いる非水電解質二次電池が開発されている。例えばケイ素はLi
4.4Siの組成までリチウムを挿入できるため、理論容量が4200mAh/gとなり、負極活物質として炭素材料を用いた場合よりも大きな容量を期待し得る。
【0003】
これらの具体例として、下記特許文献1には、負極活物質としてケイ素及び酸素を構成元素に含む材料(ただし、ケイ素に対する酸素の元素比xは、0.5≦x≦1.5である)及び黒鉛を含有するものを用いた非水電解質二次電池が開示されている。この非水電解質二次電池では、ケイ素及び酸素を構成元素に含む材料と黒鉛との合計を100質量%としたとき、ケイ素及び酸素を構成元素に含む材料の比率が3〜20質量%の負極活物質が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている非水電解質二次電池によれば、高容量で、かつ充放電に伴う体積変化の大きな酸化ケイ素を使用しつつ、その体積変化による電池特性の低下を抑制できるため、従来の非水電解質二次電池の構成を大きく変更することなく良好な電池特性も確保できる。
【0006】
しかしながら、負極活物質としてケイ素ないしケイ素合金や酸化ケイ素等を含むものを用いた場合には、充放電サイクルに伴ってこれらの負極活物質の大きな膨張・収縮が起こり、負極活物質が微粉化したり、導電性ネットワークから欠け落ちたりする。これにより、電池の容量維持率(サイクル特性)が低下するという課題が存在するので、より負極容量が大きく、かつ容量維持率が良好な非水電解質二次電池の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の非水電解質二次電池によれば、
リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な正極活物質を含む正極合剤層を備えた正極板と、
リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な負極活物質を含む負極合剤層を備えた負極板と、
セパレータと、非水電解質と、
を備え、
前記負極活物質は、
黒鉛材料とSiOx(0.5≦x<1.6)で表される酸化ケイ素との混合物であり、
前記酸化ケイ素の単一粒子の破壊強度Ssと前記黒鉛材料の単一粒子の破壊強度Sgとの比である破壊強度比Ss/Sgが60〜90である、
非水電解質二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様の非水電解質二次電池においては、負極活物質として、黒鉛だけでなく、SiOx(0.5≦x<1.6)で表される酸化ケイ素を含んでいる。このSiOxで表される酸化ケイ素は、充放電に伴う体積変化は黒鉛材料よりも大きいが、理論容量値は黒鉛材料よりも大きい。そのため、本発明の非水電解質二次電池によれば、黒鉛材料のみからなる負極活物質を用いた非水電解質二次電池よりも電池容量を大きくすることができる。
【0009】
しかも、本発明の一態様の非水電解質二次電池で使用されている負極活物質は、SiOxで表される酸化ケイ素の単一粒子の破壊強度Ssと黒鉛材料の単一粒子の破壊強度Sgとの比である破壊強度比Ss/Sgが60〜90となるように選択されている。このことは、負極活物質中の黒鉛材料は比較的柔らかいものを選択していることを示している。
【0010】
そのため、本発明の一態様の非水電解質二次電池においては、充放電に伴う酸化ケイ素の膨張・収縮が黒鉛材料より大きくても、この膨張・収縮は共存する柔らかい黒鉛材料によって吸収される。これにより、本発明の一態様の非水電解質二次電池によれば、良好な容量維持率を示す非水電解質二次電池が得られる。
【0011】
なお、破壊強度比Ss/Sgが60未満の場合には、黒鉛材料の破壊強度Sgが高くなりすぎ、酸化ケイ素の膨張・収縮を黒鉛材料が吸収できなくなるので、容量維持率が低下する。破壊強度比Ss/Sgが90を超えると、黒鉛材料が潰れ過ぎて酸化ケイ素との導電性ネットワーク構造を維持できなくなるため、同様に容量維持率が低下する。より好ましい破壊強度比Ss/Sgは、64〜84である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について各実験例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各実験例は、本発明の技術思想を具体化するために例示するものであり、本発明をこれらの実験例に限定することを意図するのものではない。本発明は、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも適用し得る。
【0014】
まず、各実験例に共通する非水電解質二次電池の構成について具体的に説明する。
[正極板の作製]
正極板は、以下のようにして作製した。炭酸コバルト(CoCO
3)の合成時に、コバルトに対して0.1mol%のジルコニウムと、それぞれ1mol%のマグネシウムとアルミニウムとを共沈させ、これを熱分解反応させて、ジルコニウム・マグネシウム・アルミニウム含有四酸化三コバルトを得た。これにリチウム源としての炭酸リチウム(Li
2CO
3)を混合し、850℃で20時間焼成して、ジルコニウム・マグネシウム・アルミニウム含有リチウムコバルト複合酸化物(LiCo
0.979Zr
0.001Mg
0.01Al
0.01O
2)を得た。
【0015】
正極活物質として上記のようにして合成したジルコニウム・マグネシウム・アルミニウム含有リチウムコバルト複合酸化物粉末を95質量部、導電剤としての炭素材料粉末を2.5質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)粉末を2.5質量部となるように混合し、これをN−メチルピロリドン(NMP)溶媒と混合して正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム製の正極芯体の両面にドクターブレード法により塗布した。その後、乾燥してNMPを除去した後、圧縮ローラーを用いて圧延し、所定サイズに裁断してアルミニウム製の正極芯体の両面に正極合剤層を有する正極板を作製した。
【0016】
[負極板の作製]
(酸化ケイ素負極活物質の調製)
金属ケイ素と別途作製した二酸化ケイ素とを混合し、減圧熱処理を行ない、組成がSiO(SiOxにおいてx=1に対応)の酸化ケイ素を得た。次いで、この酸化ケイ素を粉砕・分級して粒度を調整した後、約1000℃に昇温し、アルゴン雰囲気下でCVD法によりこの粒子の表面を炭素材料で被覆した。その際、炭素材料の被覆量は、炭素材料を含めた酸化ケイ素の全量の5質量%となるようにした。これを解砕・分級し、表面が炭素材料で被覆された組成がSiOで表され、平均粒径が10μmの酸化ケイ素からなる負極活物質を調製した。
【0017】
(黒鉛負極活物質の調製)
黒鉛材料としては、人造黒鉛(I)、天然黒鉛(II)及び人造黒鉛と天然黒鉛の複合黒鉛(III)を用いた。人造黒鉛(I)は、主原料となるコークスを成型した後に焼成し、所定サイズに粉砕、篩い分けすることにより調製した。天然黒鉛(II)は、主原料となる鱗片状の天然黒鉛を球形化し、篩い分けすることにより調製した。
【0018】
複合黒鉛(III)は、人造黒鉛前駆体であるコークスに対し、それと同程度の粒子径を有する球形化天然黒鉛を均一に混合し、それ以降は人造黒鉛(I)の場合と同様にして調製した。複合黒鉛(III)の破壊強度は人造黒鉛前駆体であるコークスに対する球形化天然黒鉛の含有割合を変化させることにより調整した。複合黒鉛(III)の原料が均一に複合化され、単一粒子(凝集体)として存在しているかどうかは、SEM(走査型電子顕微鏡)観察を行うことで確認した。
【0019】
なお、酸化ケイ素及び黒鉛材料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2000A)を用い、水を分散媒に用い、屈折率は1.70−0.01iとして求めた。平均粒子径は、体積基準での積算粒子量が50%となる粒子径(D
50)とした。
【0020】
(破壊強度比の測定)
SiOで表される酸化ケイ素と黒鉛材料の破壊強度比は、酸化ケイ素材料の単一粒子の破壊強度Ssを黒鉛材料の単一粒子の破壊強度Sgとの比、Ss/Sgで求めた。単一粒子の破壊強度は、測定装置として株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機(MCT−W201)を用い、以下のようにして測定した。
(1)試料を測定装置の下部加圧版(SKS平板)上に散布する。
(2)光学顕微鏡にて平均粒子径と近い目的サイズの粒子を選択する。
(3)上部加圧子として直径50μmのダイヤモンド製フラット圧子を用い、この上部加圧子と下部加圧板との間に1粒子のみが存在するようにする。
(4)上部加圧子をゆっくり下降させ、試料に接触した時点(下降速度が変化する)から一定の加速度で荷重を加えていく。
(5)荷重と試料の変形量との関係を測定し、試料の変形量が急激に変化した点(荷重−変形量のプロファイルの変極点)を破壊点とし、そのときの荷重と粒子径から、以下の式に基づいて破壊強度を算出する。破壊強度は、5回測定を行って平均値により求める。
St=2.8P/πd
2
St:破壊強度[N/mm
2又はMPa]
P :荷重[N]
d :粒子径[mm]
【0021】
(負極合剤層の形成)
上述のようにして調製されたSiOで表される酸化ケイ素と平均粒径22μmの黒鉛とを、それぞれ下記表1に示した配合割合となるように秤量・混合して負極活物質として用いた。次いで、この負極活物質と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)とを、質量比で97.0:1.5:1.5となるように水中で混合し、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを、厚さ8μmの銅箔からなる負極芯体の両面にドクターブレード法により塗布した。次いで、これを乾燥して水分を除去した後、圧縮ローラーを用いて所定厚さに圧延し、所定サイズに裁断して負極芯体の両面に負極合剤層を有する負極板を作製した。
【0022】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、25℃において、体積比で30:60:10の割合で混合した後、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LIPF
6)を濃度が1mol/Lとなるように溶解した。さらに、ビニレンカーボネート(VC)を非水電解液全体に対して2.0質量%、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を1.0質量%となるように添加して溶解させ、非水電解液を調製した。
【0023】
[電池の作製]
上記のようにして作製した正極板及び負極板を、ポリエチレン製微多孔質膜からなるセパレータを介して巻回し、最外周にポリプロピレン製のテープを張り付けて円筒状の巻回電極体を作製し、プレスして偏平状の巻回電極体(図示省略)を作製した。次いで、正極板に正極集電タブを、負極板に負極集電タブを、それぞれ溶接することにより取り付けた。
【0024】
ここで、
図1を用いて各実験例に共通するラミネート型非水電解質二次電池の構成について説明する。樹脂層(ポリプロピレン)/接着剤層/アルミニウム合金層/接着剤層/樹脂層(ポリプロピレン)の5層構造から成るシート状のアルミラミネート材を用意し、このアルミラミネート材を折り返して底部を形成し、カップ状の電極体収納空間を有するラミネート外装体11を作製した。次いで、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、ラミネート外装体11の内部に偏平状の巻回電極体を非水電解液とともに収容し、ラミネート外装体11の溶着封止部12から、偏平状の巻回電極体の正極板及び負極板にそれぞれ接続されている正極集電タブ13及び負極集電タブ14を突出させた。
【0025】
この後、ラミネート外装体11を減圧してセパレータ内部に非水電解液を含浸させ、ラミネート外装体11の開口部を溶着封止部12において封止した。なお、ラミネート外装体11において、正極集電タブ13及び負極集電タブ14とラミネート外装体11との間には、正極集電タブ13及び負極集電タブ14とラミネート外装体11との間の密着性向上及び正極集電タブ13及び負極集電タブ14とラミネート外装体11を構成するアルミニム合金層との間の短絡を防止するため、それぞれ正極集電タブ樹脂15、負極集電タブ樹脂16を配置した。得られた各実験例に共通するラミネート型非水電解質二次電池10は、高さ62mm、幅35mm、厚み3.6mm(溶着封止部12のサイズを除く)であり、設計容量は充電終止電圧4.4Vで、800mAhである。
【0026】
次に、各実験例の非水電解質二次電池について、それぞれの相違する構成について説明する。
[実験例1〜6]
実験例1の電池においては、負極活物質として、SiOで表される酸化ケイ素を含有せず、複合黒鉛のみからなるものを用いた。実験例2〜6の電池においては、SiOで表される酸化ケイ素の含有率を3質量%一定とし、破壊強度比(Ss/Sg)を57(実験例2)、65(実験例3)、79(実験例4)、84(実験例5)及び93(実験例6)と変化させた。
【0027】
[実験例7〜10]
実験例7〜10の電池においては、SiOで表される酸化ケイ素の含有率を5質量%一定とし、破壊強度比(Ss/Sg)を57(実験例7)、65(実験例8)、79(実験例9)及び84(実験例10)と変化させた。
【0028】
[実験例11〜13]
実験例11及び12の電池においては、SiOで表される酸化ケイ素の含有率を10質量%一定とし、破壊強度比(Ss/Sg)を57(実験例11)及び79(実験例12)と変化させた。さらに、実験例13の電池においては、SiOで表される酸化ケイ素の含有率を15質量%、破壊強度比(Ss/Sg)を79となるようにした。
【0029】
[25℃サイクル容量維持率の測定]
実験例1〜13のそれぞれの非水電解質二次電池を、25℃において、1It=800mAの定電流で電池電圧が4.4Vとなるまで充電した後、4.4Vの定電圧で電流が40mAに収束するまで充電した。次いで、1It=800mAの定電流で電池電圧が2.5Vになるまで放電し、その際に流れた電流を1サイクル目の放電容量として求めた。この充放電サイクルを繰り返し、300サイクル目の放電容量を求め、以下の計算式により300サイクル後の容量維持率として求めた。
300サイクル後の容量維持率(%)
=(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0030】
実験例1〜13の300サイクル後の容量維持率の測定結果を、負極活物質中の黒鉛の種類、負極活物質中のSiOで表される酸化ケイ素の含有率及び破壊強度比(Ss/Sg)表1に纏めて示した。さらに、酸化ケイ素の含有率が3質量%である実験例2〜6の測定結果を、横軸を破壊強度比(Ss/Sg)とし、縦軸を容量維持率として表したグラフを
図2に示した。
【0032】
表1に示した実験例1〜5の測定結果から以下のことがわかる。すなわち、負極活物質中の酸化ケイ素の含有率が3質量%の場合、破壊強度比(Ss/Sg)が65〜84(実験例3〜5)の電池は、負極活物質が黒鉛のみからなる実験例1の電池よりも良好な容量維持率が得られている。しかし、破壊強度比が57(実験例2)及び93(実験例6)の電池の場合は、いずれも実験例1の電池よりも容量維持率が低下している。
【0033】
ここで、
図2のグラフを参照すると、負極活物質中の酸化ケイ素の含有率が3質量%の場合、破壊強度比が60〜90であれば、少なくとも負極活物質が黒鉛のみからなる実験例1の電池と同等ないしより優れた容量維持率が得られることがわかる。より好ましい破壊強度比は65〜84であると認められ、この範囲内であれば容量維持率は実施例1の電池よりも良好な結果が得られることがわかる。
【0034】
負極活物質中の酸化ケイ素の含有率が5質量%の場合、破壊強度比が65〜84(実験例8〜10)の電池は、実験例1の電池よりも良好な容量維持率が得られている。しかし、破壊強度比が57(実験例7)の電池の場合は、実験例1の電池よりも容量維持率が低下している。
【0035】
負極活物質中の酸化ケイ素の含有率が10質量%の場合、破壊強度比が79(実験例12)の電池は、実験例1の電池よりも良好な容量維持率が得られている。それに対し、破壊強度比が57(実験例11)の電池の場合は、実験例1の電池よりも容量維持率が低下している。負極活物質中の酸化ケイ素の含有率が15質量%の場合、破壊強度比が79(実験例13)の電池であっても、実験例1の電池よりも容量維持率が低下している。
【0036】
以上の実験例1〜13の測定結果を総合的に勘案すると、負極活物質中の酸化ケイ素の含有率が実際に測定した3〜10質量%の範囲内では、破壊強度比が60〜90の範囲内であれば、負極活物質が黒鉛のみからなる場合と同等ないしそれ以上の優れた容量維持率を達成することができることがわかる。また、破壊強度比が79であり、負極合剤中の酸化ケイ素の含有率が3質量%である実験例3及び5質量%である実験例9の結果を外挿すると、少なくとも負極活物質中の酸化ケイ素の含有率が1質量%以上であれば、容量維持率の向上効果が奏されると考えられる。したがって、好ましい負極活物質中の酸化ケイ素の含有率は1〜10質量%であると考えられる。
【0037】
なお、各実験例においては、酸化ケイ素として組成がSiO(SiOxにおいてx=1に対応)の物を使用したが、0.5≦x<1.6の範囲内であれば同様に良好な効果を奏する。xが0.5未満の場合には、Si成分が多くなるため、充放電に伴う膨張・収縮が大きくなるために、容量維持率が低下する。xが1.6以上の場合には、SiO
2成分が多くなるため、負極容量の増大効果が低下する。
【0038】
また、各実験例においては、黒鉛として平均粒径が22μmのものを使用したが、黒鉛の平均粒径は18〜22μmの範囲内であれば同様に良好な効果を奏する。同じく負極合剤中のCMC添加量及びSBR添加量をそれぞれ全負極合剤の1.5質量%となるようにした例を示したが、それぞれ0.5〜2質量%の範囲内であれば同様に良好な効果を奏する。同じく非電解液全量に対して、VCの添加量を2.0質量%及びFECの添加量を1.0質量%とした例を示したが、VCの添加量は1〜5質量%、FECの添加量は0.5〜5質量%の範囲内であれば同様に良好な効果を奏する。さらに、SiOで表される酸化ケイ素の表面を被覆している炭素材料の被覆量を、この炭素材料を含めた酸化ケイ素の全量の5質量%とした例を示したが、1質量%以上10質量%以下とすれば同様に良好な効果を奏する。
【0039】
また、各実験例においては、正極活物質として組成がLiCo
0.979Zr
0.001Mg
0.01Al
0.01O
2であるジルコニウム・マグネシウム・アルミニウム含有リチウムコバルト複合酸化物を使用した例を示した。しかしながら、本発明においては、ジルコニウム、マグネシウム及びアルミニウム等の異種金属元素の含有量が異なる他の組成のものだけでなく、公知のリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物を用いることができる。このリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物としては、例えば、LiMO
2(ただし、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物(すなわち、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
yCo
1−yO
2(y=0.01〜0.99)、LiMnO
2、LiCo
xMn
yNi
zO
2(x+y+z=1)等)や、LiMn
2O
4、LiFePO
4等を一種単独又はこれらから複数種を混合したものを用いることができる。
【0040】
本発明の非水電解質二次電池で使用し得る非水電解液における非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル;γ−ブチロラクトン(γ−BL)、γ−バレロラクトン(γ−VL)等の環状カルボン酸エステル;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)等の鎖状炭酸エステル;フッ素化された鎖状炭酸エステル;ピバリン酸メチルや、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネート等の鎖状カルボン酸エステル;N,N'−ジメチルホルムアミドや、N−メチルオキサゾリジノン等のアミド化合物;スルホラン等の硫黄化合物;テトラフルオロ硼酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム等の常温溶融塩等を用いることができる。また、これらを2種以上混合して用いるようにしてもよい。
【0041】
本発明の非水電解質二次電池で使用し得る非水電解液における非水溶媒中に溶解させる電解質塩としては、非水電解質二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4、Li
2B
10Cl
10、Li
2B
12Cl
12等を一種単独又はこれらから複数種を混合したものを用いることができる。これらの中でも、LiPF
6が特に好ましい。また、非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.8〜1.5mol/Lとするのが好ましい。
【0042】
本発明の非水電解質二次電池の非水電解液中には、電極の安定化用化合物として、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、無水コハク酸(SUCAH)、無水マレイン酸(MAAH)、グリコール酸無水物、エチレンサルファイト(ES)、ジビニルスルホン(VS)、ビニルアセテート(VA)、ビニルピバレート(VP)、カテコールカーボネート、ビフェニル(BP)等を添加するようにしてもよい。これらの化合物は、2種以上を適宜に混合して用いるようにしてもよい。