(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボトルでは、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るボトルは、合成樹脂材料で形成された有底筒状のボトルであって、底部の底壁部が、外周縁部に位置する接地部と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部と、を備え、前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に上方に向けて移動自在に配設され、前記可動壁部には、複数のリブがボトル軸を中心に放射状に配設され、前記リブは、上方に向けて窪む本体凹部および接続凹部を備え、前記本体凹部は、ボトル径方向に間隔をあけて複数配置され、前記接続凹部は、ボトル径方向に隣り合う前記本体凹部同士をボトル径方向に接続し、前記本体凹部の深さD1に対する前記接続凹部の深さD2の比率である深さ比率D2/D1は、2/9よりも大きく1
未満であることを特徴とする。
【0007】
この場合、深さ比率D2/D1を2/9よりも大きく1
未満とすることで、ボトル内の減圧時における可動壁部の上方への移動量を大きく確保することが可能になり、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることができる。すなわち、深さ比率D2/D1が2/9以下の場合には、ボトル内の減圧時に、可動壁部をボトル軸方向に大きく変位させることが困難になるおそれがある。なお可動壁部が、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びるような構成において、深さ比率D2/D1を2/9よりも大きく1
未満とした場合には、ボトル内の減圧時に、可動壁部をボトル軸方向に大きく変位させ、例えば可動壁部をボトル軸方向に反転状に変形させること等ができる。
また、深さ比率D2/D1を1未満とすることで、本体凹部を接続凹部よりも深く形成することができる。これにより、ボトル内が減圧状態となったときに、ボトル内の減圧吸収性能が更に向上するように、可動壁部を上方に効果的に移動させることができる。
【0010】
前記深さ比率D2/D1は、2.5/9以上5/9以下であってもよい。
【0011】
この場合、ボトル内の減圧吸収性能が確実に向上するように、可動壁部を上方に一層効果的に移動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るボトルを説明する。
本実施形態に係るボトル1は、
図1〜
図4に示されるように、口部11、肩部12、胴部13および底部14を備え、これら11〜14が、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させた状態で、この順に連設された概略構成となっている。
【0015】
以下、前記共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿って口部11側を上側、底部14側を下側という。ボトル1をボトル軸O方向から見た平面視において、ボトル軸Oに直交する方向を径方向(ボトル径方向)といい、ボトル軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0016】
ボトル1は、射出成形により有底筒状に形成されたプリフォームが、ブロー成形されて形成され、合成樹脂材料で一体に形成されている。口部11には、図示されないキャップが装着される。口部11、肩部12、胴部13および底部14はそれぞれ、ボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状となっている。
【0017】
肩部12と胴部13との接続部分には、第1環状凹溝16が全周に亘って連続して形成されている。
胴部13は筒状に形成され、ボトル軸O方向の両端部同士の間は、これら両端部より小径に形成されている。胴部13には、ボトル軸O方向に間隔をあけて複数の第2環状凹溝15が全周に亘って連続して形成されている。
【0018】
胴部13と底部14との接続部分には、第3環状凹溝20が全周に亘って連続して形成されている。
底部14は、上端開口部が胴部13の下端開口部に接続されたヒール部17と、ヒール部17の下端開口部を閉塞し、かつ外周縁部が接地部18とされた底壁部19と、を備えるカップ状に形成されている。
【0019】
ヒール部17には、第3環状凹溝20と同じ深さの第4環状凹溝31が全周に亘って連続して形成されている。ヒール部17のうち、接地部18に径方向の外側から連なるヒール下端部27は、該ヒール下端部27に上方から連なるとともに前記第4環状凹溝31が形成された上ヒール部28より、小径に形成されている。ヒール下端部27と上ヒール部28との連結部分29は、上方から下方に向かうに従い漸次縮径している。なお上ヒール部28は、胴部13のボトル軸O方向の両端部とともに、ボトル1の最大外径部となっている。
【0020】
ヒール部17の外周面、および胴部13の下端部の外周面に凹凸部17aが形成されている。これにより、充填工程において、ボトル1を多数本連立させて搬送している際に、隣り合うボトル1のヒール部17の外周面同士、および胴部13の下端部の外周面同士が互いに密接し合い滑り難くなることが抑えられ、いわゆるブロッキングの発生が抑制される。なお、図示の例では、第3環状凹溝20の表面および第4環状凹溝31の表面にも凹凸部17aが形成されている。
【0021】
底壁部19は、
図3に示すように、接地部18に径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部21と、立ち上がり周壁部21の上端部から径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部22と、可動壁部22の径方向の内端部に連なる底中央部30と、を備えている。可動壁部22および底中央部30は、立ち上がり周壁部21の径方向の内側に配置され、立ち上がり周壁部21の上端開口部を閉塞している。
【0022】
立ち上がり周壁部21は、下方から上方に向かうに従い漸次縮径している。
可動壁部22は、下方に向けて突の曲面状に形成されるとともに、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次下方に向けて延在している。可動壁部22と立ち上がり周壁部21とは上方に向けて突の曲面部25を介して連結されている。可動壁部22は、陥没周壁部23を上方に向けて移動させるように、曲面部(立ち上がり周壁部との接続部分)25を中心に回動自在となっている。
【0023】
底中央部30は、ボトル軸O上に配置され、可動壁部22の径方向の内側に位置している。底中央部30は、可動壁部22の径方向の内端部によって可動壁部22の径方向の内側に形成される開口を閉塞している。底中央部30においてボトル軸O上に位置する部分は、可動壁部22の径方向の内端部よりも上側に位置している。本実施形態における底中央部30は、可動壁部22の径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部23と、陥没周壁部23の上端部にボトル軸Oと同軸に配置された頂壁24と、を備えている。
【0024】
陥没周壁部23は、ボトル軸Oと同軸に配設されるとともに、上方から下方に向かうに従い漸次拡径している。陥没周壁部23の上端部には、前記頂壁24が接続されており、陥没周壁部23および頂壁24の全体で有頂筒状をなしている。陥没周壁部23は、横断面視円形状に形成されている。頂壁24は、ボトル軸Oと同軸に配置された円板状に形成されている。
【0025】
陥没周壁部23は、径方向の内側に向けて突の曲面状に形成された湾曲壁部23aと、上方から下方に向かうに従い漸次拡径する傾斜壁部23cと、を備えている。湾曲壁部23aの上端は頂壁24に連設されている。湾曲壁部23aの下端は、屈曲部23bを介して傾斜壁部23cに連設されている。傾斜壁部23cの下端は、環状の可動壁部22の径方向における内端部に連設されている。
【0026】
図2に示すように、前記可動壁部22には、複数のリブ26がボトル軸Oを中心に放射状に配設されている。各リブ26は、径方向に沿って真っ直ぐに延びている。複数のリブ26は、周方向に沿って等間隔に配設されている。本実施形態では、リブ26は、可動壁部22に限定して配置されていて、前記平面視において、底中央部30を径方向の外側から囲うように配置されている。
【0027】
リブ26は、可動壁部22から上方に向けて窪む本体凹部26aおよび接続凹部26bを備えている。
図3および
図4に示すように、本体凹部26aは、径方向に間隔をあけて複数、図示の例では5つ配置されている。本体凹部26aの内面は、上側に向けて凸となる球面状に形成されている。
【0028】
接続凹部26bは、径方向に隣り合う本体凹部26a同士を径方向に接続している。接続凹部26bの内面は、リブ26を通るボトル1の縦断面視において、下側に向けて凸となる凸曲面状に形成されている。前記縦断面視において、接続凹部26bの内面は、径方向に隣り合う本体凹部26aの内面同士を、径方向に段差なく滑らかに接続している。これにより、リブ26は、前記縦断面視において、ボトル軸O方向に交互に凸となる波形状に形成される。
【0029】
各本体凹部26aは、それぞれ同形同大に形成され、径方向に沿って等間隔に配置されている。複数のリブ26それぞれにおいて、複数の本体凹部26aが配設されている径方向に沿う各位置は互いに同等になっている。各接続凹部26bは、それぞれ同形同大に形成され、径方向に沿って等間隔に配置されている。複数のリブ26それぞれにおいて、複数の接続凹部26bが配設されている径方向に沿う各位置は互いに同等になっている。
【0030】
そして本実施形態では、本体凹部26aの深さD1に対する接続凹部26bの深さD2の比率である深さ比率D2/D1は、2/9よりも大きく1以下である。さらに図示の例では、深さ比率D2/D1は1未満であり、より具体的には、深さ比率D2/D1は、2.5/9以上5/9以下である。
【0031】
このように構成されたボトル1内が減圧状態になると、底壁部19の曲面部25を中心にして可動壁部22が上方に向かって回動することで、可動壁部22は、陥没周壁部23(底中央部30)を上方に向けて持ち上げるように移動する。すなわち、減圧時にボトル1の底壁部19を積極的に変形させることで、胴部13等の変形を伴うことなく、ボトル1の内圧変化(減圧)を吸収することができる。
【0032】
なお本実施形態では、立ち上がり周壁部21と可動壁部22との接続部分が、上方に向けて突の曲面部25に形成されているので、立ち上がり周壁部21の上端部を中心にして可動壁部22を移動(回動)させ易くすることができる。また、底壁部19の可動壁部22に複数のリブ26が形成され、可動壁部22の表面積が増加されているので、可動壁部22における受圧面積を増加させ、可動壁部22をボトル1の内圧変化に速やかに対応して変形させ易くすることができる。
【0033】
ここで本願発明者は、鋭意検討した結果、前述の深さ比率D2/D1を調整することで、ボトル1内の減圧吸収性能を向上させることができることを見出した。この知見を見出すにあたり、本願発明者は、深さ比率D2/D1を互いに異ならせた複数のボトル1それぞれにおける減圧吸収性能について解析した。
【0034】
本解析では、比較例1〜3および実施例1〜6の9種類のボトル1を対象とした。いずれのボトル1も、リブ26の形態を除いては前記実施形態と同様の構成であり、内容量が350ml、ボトル高さが155.58mm、ボトル径が66mm、重量が21gのボトル1である。
比較例1〜3および実施例1〜6の各ボトル1では、以下の表1に示すようにリブ26の形態を異ならせた。なお表1には、解析結果も併記している。
【0036】
比較例1のボトル1では、底壁部19にリブ26が形成されていない構成とした。比較例2のボトル1では、リブ26に接続凹部26bが備えられていない構成とした。そのため表1では、比較例1の本体凹部26aの深さD1および接続凹部26bの深さD2、並びに比較例2の接続凹部26bの深さD2をいずれも0と記載した。
【0037】
また実施例6のボトル1では、本体凹部26aの深さD1と接続凹部26bの深さD2とを同一にした。実施例6のボトル1では、リブ26は、径方向の位置によらず深さが等しい溝状に形成されていて、リブ26の底面は、前記縦断面視において、径方向に直線状に延びている。なお、比較例2、3および実施例1〜5の各ボトル1において、本体凹部26aの深さD1は、本体凹部26aの内面の曲率半径と等しくなっている。
【0038】
表1に示すように、本解析では、比較例2、3および実施例1〜6の各ボトル1において、本体凹部26aの深さD1は変化させずに、接続凹部26bの深さD2を変化させることで、深さ比率D2/D1を調整した。
これらの各ボトル1において、減圧強度を20kPaとしたときの可動壁部22の底壁部19中心の変位量、吸収容量について比較した。ここで、底壁部19中心の変位量とは、底壁部19においてボトル軸O上に位置する部分の上方に向けた変位量である。
【0039】
これらの解析結果は、表1の項目名「底壁部中心の変位量(mm)」、「吸収容量(ml)」の各行にそれぞれ記載した。吸収容量の結果については、更に
図5にグラフにして示す。
図5に示すグラフに示される複数のプロットのうち、最も左側にあるものは、比較例1の結果を示していて、それ以外のものは、左側から右側に向けて順に、比較例2、3、実施例1、2、3、4、5、6それぞれの結果を示している。
【0040】
以上の解析結果から、実施例1〜6のボトル1では、表1の項目名「底壁部中心の変位量(mm)」の行に示されるように、可動壁部22が大きく変形することが確認され、具体的には、いずれも底壁部19中心の変位量が5.0mm以上となっている。なおこれらの各ボトル1では、いずれも可動壁部22が反転状に変形した。
【0041】
ここで、比較例3のボトル1における深さ比率D2/D1は2/9(22.2%)となっていて、実施例6のボトル1における深さ比率D2/D1は1(100%)となっている。よって本解析より、深さ比率D2/D1が、2/9よりも大きく1以下であることで、ボトル1内の減圧時における可動壁部22の上方への移動量を大きく確保することができることが確認された。
【0042】
また、表1の項目名「吸収容量」の行、および
図5のグラフに示されるように、実施例1〜4のボトル1では、吸収容量が10.0ml以上確保されていることが確認された。
ここで、実施例1のボトル1における深さ比率D2/D1は2.5/9(27.8%)となっていて、実施例4のボトル1における深さ比率D2/D1は5/9(55.6%)となっている。よって本解析より、深さ比率D2/D1が、2.5/9以上5/9以下であることで、十分な吸収容量を確保できることが確認された。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るボトル1によれば、深さ比率D2/D1を2/9よりも大きく1以下とすることで、ボトル1内の減圧時における可動壁部22の上方への移動量を大きく確保することが可能になり、ボトル1内の減圧吸収性能を向上させることができる。すなわち、深さ比率D2/D1が2/9以下の場合には、ボトル1内の減圧時に、可動壁部22をボトル軸O方向に大きく変位させることが困難になるおそれがある。
【0044】
なお本実施形態のように、可動壁部22が、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、下方に向けて延びるような構成において、深さ比率D2/D1を2/9よりも大きく1以下とした場合には、ボトル1内の減圧時に、可動壁部22をボトル軸O方向に大きく変位させ、例えば可動壁部22をボトル軸O方向に反転状に変形させること等ができる。
【0045】
また、深さ比率D2/D1を1未満とした場合には、本体凹部26aを接続凹部26bよりも深く形成することができる。これにより、ボトル1内が減圧状態となったときに、ボトル1内の減圧吸収性能が更に向上するように、可動壁部22を上方に効果的に移動させることができる。
さらに、深さ比率D2/D1を、2.5/9以上5/9以下にした場合には、ボトル1内の減圧吸収性能が確実に向上するように、可動壁部22を上方に一層効果的に移動させることができる。
【0046】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0047】
前記実施形態では、底中央部30が、陥没周壁部23および頂壁24を備えているが、本発明はこれに限られない。例えば前記底中央部30が、平面視において円形状をなす平板状であってもよい。さらに前記底中央部30が、前記縦断面視において、ボトル軸O方向に突をなす湾曲板状であってもよい。
【0048】
また前記実施形態では、接続凹部26bの内面が、前記縦断面視において凸曲面状に形成されているが、本発明はこれに限られない。例えば、接続凹部26bの内面が、前記縦断面視において凹曲面状に形成されていたり、平面状に形成されていたりしてもよい。
【0049】
また、立ち上がり周壁部21を、例えばボトル軸O方向に沿って平行に延ばす等、適宜変更してもよい。
また、可動壁部22を、例えば径方向に沿って平行に突出させたり、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次上方に向けて延在させたり等、適宜変更してもよい。
さらに、前記実施形態では、陥没周壁部23が、上方から下方に向かうに従い漸次拡径しているが、本発明はこれに限られず、例えば陥没周壁部23を、ボトル軸O方向の全長にわたって同径にする等、適宜変更してもよい。
さらに、凹凸部17aを形成しなくてもよい。
【0050】
また、ボトル1を形成する合成樹脂材料は、例えばポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリエステル等、またはこれらのブレンド材料等、適宜変更してもよい。
さらに、ボトル1は単層構造体に限らず中間層を有する積層構造体としてもよい。この中間層としては、例えばガスバリア性を有する樹脂材料からなる層、再生材からなる層、若しくは酸素吸収性を有する樹脂材料からなる層等が挙げられる。
また、前記実施形態では、肩部12、胴部13および底部14のそれぞれのボトル軸Oに直交する横断面視形状を円形状としたが、これに限らず例えば、多角形状にする等適宜変更してもよい。
【0051】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。