特許第6397656号(P6397656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397656単一電源の多極型電界放出装置およびその駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397656
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】単一電源の多極型電界放出装置およびその駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 1/304 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   H01J1/304
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-105396(P2014-105396)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-229619(P2014-229619A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2017年5月8日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0059025
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0023415
(32)【優先日】2014年2月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】596180076
【氏名又は名称】韓國電子通信研究院
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】鄭 珍 宇
(72)【発明者】
【氏名】宋 潤 鎬
(72)【発明者】
【氏名】金 栽 佑
(72)【発明者】
【氏名】姜 俊 泰
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033411(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0074309(US,A1)
【文献】 特開昭62−097241(JP,A)
【文献】 米国特許第03521073(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のエミッタが形成されたカソード電極と、
アノード電極とカソード電極との間に形成され、前記エミッタから放出された電子が通過可能な開口部を含む1つ以上のゲート電極と、
1つ以上の分配抵抗を含み、前記分配抵抗によって電源部から印加された電圧を分圧し、前記1つ以上のゲート電極に印加する電圧分圧部と、
単一電源から形成され、前記電圧分圧部、前記カソード電極および前記アノード電極に電圧を印加する電源部とを含み、
前記カソード電極と電気的に接続され、前記カソード電極に流れるカソード電流を制御する電流制御部をさらに含み、
前記電流制御部は、
前記カソード電流を制御するための制御信号を電流スイッチング部に入力する制御信号発生部と、
前記制御信号によって前記カソード電流をオン/オフする電流スイッチング部とを含み、前記電流スイッチング部は、前記カソード電極に接続される高電圧トランジスタと、前記高電圧トランジスタに直列接続される低電圧トランジスタを含み、前記低電圧トランジスタのゲート端子には、可変抵抗を介して、前記制御信号発生部からの前記制御信号を低電圧にした信号が入力されることを特徴とする電界放出装置。
【請求項2】
前記制御信号は、
0V〜5Vの範囲の低電圧パルス信号またはDC信号であることを特徴とする、請求項に記載の電界放出装置。
【請求項3】
前記制御信号発生部は、
無線通信部を含み、前記無線通信部を介して外部から制御信号を受信し、前記電流スイッチング部に入力することを特徴とする、請求項に記載の電界放出装置。
【請求項4】
前記単一電源は負極(negative)電源であり、前記アノード電極は接地されることを特徴とする、請求項に記載の電界放出装置。
【請求項5】
前記各分配抵抗の値は、
前記ゲート電極に印加される電圧が最小保障ゲート電圧より大きいようにする第1条件、および前記電流制御部の電流制御時にカソード電圧が前記電流制御部の許容電圧より大きくないようにする第2条件をすべて満足する任意の値であることを特徴とする、請求項に記載の電界放出装置。
【請求項6】
前記各分配抵抗の値は、
前記第1条件および第2条件を満足する値の中から、その和が最大となるようにする値であることを特徴とする、請求項に記載の電界放出装置。
【請求項7】
電界放出装置の駆動方法において、
電圧分圧部の1つ以上の分配抵抗に対する抵抗値を設定するステップと、
電源部の単一電源を介して前記電圧分圧部、カソード電極およびアノード電極に電圧を印加するステップと、
前記電圧分圧部が、前記印加された電圧を分圧し、1つ以上のゲート電極に印加するステップと、
電流制御部が、制御信号によってカソード電極に流れるカソード電流を制御するステップであって、前記カソード電極に接続される高電圧トランジスタと、前記高電圧トランジスタに直列接続される低電圧トランジスタを含み、前記低電圧トランジスタのゲート端子には、可変抵抗を介して、前記制御信号を低電圧にした信号が入力されることを特徴とする、電界放出装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
単一駆動電源を備えた多極型電界放出装置および単一電源でその多極型電界放出装置を駆動する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界放出素子(Field Emission Device)は、一般的に、カソードに電界を印加し、カソード電極上に形成されたエミッタから電子を放出させる素子である。電界放出素子の構造は、アノードに印加された電圧を用いてカソードエミッタに電界を印加し、アノードに放出された電子を集める2極構造、あるいはゲート電極に印加された電圧でカソードから電子を放出させ、ゲートを通過した電子がアノードに印加された電圧によって加速される3極構造などがある。電子ビームを集束するなどのより多くの機能のために電極の数が追加され得るが、カソード上に形成されたエミッタに電界を印加して電子を放出させることは同様である。
【0003】
韓国公開特許第10−2010−0108720号は、電界放出装置およびその駆動方法について開示している。一般的な3極構造の電界放出素子は、電界放出電流を制御するゲート電源、および放出された電子の加速電圧を決定するアノード電源で駆動されるため、少なくとも2つの駆動電源が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0108720号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単一駆動電源で3極以上の電極を有する電界放出装置およびその電界放出装置の駆動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様にかかる電界放出装置は、1つ以上の電界エミッタが形成されたカソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に形成され、エミッタから放出された電子が通過可能な開口部を含む1つ以上のゲート電極と、1つ以上の分配抵抗を含み、その分配抵抗によって電源部から印加された電圧を分圧し、1つ以上のゲート電極に印加する電圧分圧部と、単一電源から形成され、電圧分圧部に電圧を印加する電源部とを含むことができる。
【0007】
また、電界放出装置は、カソード電極と電気的に接続され、カソード電極に流れるカソード電流を制御する電流制御部をさらに含むことができる。
【0008】
電流制御部は、カソード電流を制御するための制御信号を電流スイッチング部に入力する制御信号発生部と、その制御信号によってカソード電流をオン/オフする電流スイッチング部とを含むことができる。
【0009】
この時、制御信号は、0V〜5Vの範囲の低電圧パルス信号またはDC信号であり得る。
【0010】
電流スイッチング部は、ソース端子には前記電源が接続され、ドレイン端子にはカソード電極が接続され、ゲート端子には制御信号が入力されるトランジスタを含むことができる。
【0011】
また、電流スイッチング部は、第1トランジスタのゲート端子に接続され、第2トランジスタに入力される制御信号の電圧を調整する可変抵抗と、ソース端子に電源が接続され、ドレイン端子に第2トランジスタのソース端子が接続され、ゲート端子に可変抵抗が接続される第1トランジスタと、ソース端子に第1トランジスタのドレイン端子が接続され、ドレイン端子にカソード電極が接続され、ゲート端子に可変抵抗によって電圧調整された制御信号が入力される第2トランジスタとを含むことができる。
【0012】
この時、第1トランジスタは低電圧トランジスタであり、第2トランジスタは高電圧トランジスタであり得る。
【0013】
電圧分圧部は、電源部から印加された電圧を分圧し、制御信号発生部に印加する分配抵抗をさらに含むことができる。
【0014】
制御信号発生部は、無線通信部を含み、無線通信部を介して外部から制御信号を受信し、電流スイッチング部に入力することができる。
【0015】
この時、電界放出装置の単一電源は負極(negative)電源であり、アノード電極は接地されるとよい。
【0016】
この時、各分配抵抗の値は、ゲート電極に印加される電圧が最小保障ゲート電圧より大きいようにする第1条件、および電流制御部の電流制御時にカソード電圧が電流制御部の許容電圧より大きくないようにする第2条件をすべて満足する任意の値であり得る。
【0017】
また、各分配抵抗の値は、第1条件および第2条件を満足する値の中から、その和が最大となるようにする値であり得る。
【0018】
一態様によれば、電界放出装置の駆動方法において、電圧分圧部の1つ以上の分配抵抗に対する抵抗値を設定するステップと、電源部の単一電源を介して電圧分圧部に電圧を印加するステップと、電圧分圧部が、印加された電圧を分圧し、1つ以上のゲート電極に印加するステップと、電流制御部が、制御信号によってカソード電極に流れるカソード電流を制御するステップとを含むことができる。
【0019】
分配抵抗に対する抵抗値を設定するステップは、ゲート電極に印加される電圧が最小保障ゲート電圧より大きいようにする第1条件、および電流制御部の電流制御時にカソード電圧が電流制御部の許容電圧より大きくないようにする第2条件をすべて満足する値を算出するステップと、算出された値の中から、任意の値を選択するステップとを含むことができる。
【0020】
任意の値を選択するステップは、第1条件および第2条件を満足する値の中から、各分配抵抗に対する抵抗値の和が最大となるようにする値を選択することができる。
【0021】
この時、制御信号は、0V〜5Vの範囲の低電圧パルス信号またはDC信号であり得る。
【0022】
カソード電流を制御するステップは、電界放出装置の単一電源が負極(negative)電源であり、アノード電極が接地された場合、電流制御部が、外部から無線通信を介して前記制御信号を受信することができる。
【発明の効果】
【0023】
単一電圧源によって電界放出装置を3極以上駆動することができ、特に、アノードが接地される負極高電圧駆動の場合にも電流制御駆動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一般的な3極構造の電界放出装置の一例を示すものである。
図2】一実施形態にかかる電界放出装置を示すものである。
図3】他の実施形態にかかる電界放出装置を示すものである。
図4】一実施形態により電界放出装置の分配抵抗を説明するための図である。
図5図3の電界放出装置における電流制御部の一実施形態を説明するための図である。
図6図3の電界放出装置における電流制御部の他の実施形態を説明するための図である。
図7図3の電界放出装置における電流制御部のさらに他の実施形態を説明するための図である。
図8】一実施形態にかかる多極構造の電界放出装置を説明するための図である。
図9】電界放出装置の単一駆動電源を説明するための図である。
図10】電界放出装置の単一駆動電源を説明するための図である。
図11図10の電界放出装置における電流制御部を説明するための図である。
図12】一実施形態にかかる電界放出装置を駆動する方法を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
その他、実施形態の具体的な事項は詳細な説明および図面に含まれている。記載された技術の利点および特徴、そして、それらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すれば明確になる。明細書全体にわたって同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
【0026】
以下、単一電源の多極型電界放出装置およびその駆動方法の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、一般的な3極構造の電界放出装置の一例を示すものである。
【0028】
図1を参照すれば、一般的な3極構造の電界放出装置は、カソード電極110と、アノード電極120と、ゲート電極130とを含む。この時、カソード電極110にはエミッタ111が形成される。
【0029】
一般的な電界放出装置は、ゲート電極130に印加された電圧でカソード電極110上に形成されたエミッタ111に電界を印加して電子を放出させ、放出された電子は、ゲート電極のホールを通過してアノードに印加された電圧によって加速される構造を有する。
【0030】
しかし、図1の一般的な3極構造の電界放出装置は、図示のように、電界放出電流を制御するゲート電源150、および放出された電子の加速電圧を決定するアノード電源140の少なくとも2つの駆動電源が必要になる。
【0031】
図2は、一実施形態にかかる電界放出装置を示すものである。
【0032】
図2を参照すれば、一実施形態にかかる電界放出装置は、カソード電極210と、アノード電極220と、ゲート電極230と、カソード電極210上に形成されたエミッタ211と、電源部240と、電圧分圧部250とを含むことができる。
【0033】
電源部240は、単一駆動電源からなり、カソード電極210およびアノード電極220の間に電源を印加する。
【0034】
電圧分圧部250は、電源部240からカソード電極210およびアノード電極220の間に印加される電圧を分配抵抗R、Rを介して分圧し、ゲート電極230に印加する。
【0035】
したがって、電源部240の単一駆動電源で3極構造以上の電界放出装置を駆動することができ、簡単な構造の電界放出装置を構成することができる。反面、ゲートに印加された電圧の制御が相対的に難しく、電界放出電流を任意に制御しにくいことがある。
【0036】
以下、図3から図11を参照して、このようにゲートに印加された電圧の制御を容易にする電界放出装置の多様な実施形態を説明する。
【0037】
図3は、他の実施形態にかかる電界放出装置を示すものである。図4は、一実施形態により電界放出装置の分配抵抗を説明するための図である。
【0038】
図3を参照すれば、電界放出装置は、カソード電極210と、アノード電極220と、ゲート電極230と、カソード電極210上に形成されたエミッタ211と、電源部240と、電圧分圧部250とを含むことができる。また、ゲートに印加された電圧の制御を容易にするための電流制御部260をさらに含むことができる。
【0039】
電源部240の単一駆動電源からの電圧Vは、カソード電極210およびアノード電極220の間に印加される。
【0040】
電圧分圧部250は、分配抵抗RおよびRを介して印加された電圧Vを分圧し、ゲート電極230に印加する。この時、アノード電極220に印加されたアノード電圧Vと、ゲート電極230に印加されたゲート電圧Vは、下記の数式1の通りである。
【数1】
【0041】
すなわち、ゲート電圧Vは、直列抵抗R+Rを流れる電流から、ゲートに漏洩する電流Iを差し引いた電流によるRの電圧降下として定義される。
【0042】
仮に、アノード電極220およびゲート電極230に印加されたアノード電圧Vとゲート電圧Vが時間に応じて一定であれば、カソード電極210上のエミッタ211から放出される電子ビームの量すなわち、カソード電流は、カソードに直列に接続された電流制御部260の制御によって決定できる。
【0043】
例えば、電界放出が起こる時、カソードに放出された電子ビームが100%アノード電極220に到達する場合、ゲート電極230のリーク電流はないことから、この時のゲート電圧Vは、下記の数式2の通りである。
【数2】
【0044】
しかし、一般的に、ゲート電極230のリーク電流が存在するため、実際に、ゲート電極230には数式2のように最大に印加可能なゲート電圧Vよりは低い電圧が印加される。したがって、電界放出に十分なゲート電圧を印加するためには、電圧分圧部250の分配抵抗RおよびRを電界放出装置に好適に予め設定する必要がある。
【0045】
図4は、一実施形態により電界放出装置の分配抵抗を説明するための図であり、図4を参照して、電界放出装置に適した分配抵抗の値を決定する方法を説明する。
【0046】
まず、最小保障ゲート電圧がVgmin、最大ゲートリーク電流がIgmax、カソード電極210に接続された電流制御部260の許容電圧がV、電界放出が始まるゲート電圧がVの時、下記の数式3から5の関係式が成立する。
【数3】
【数4】
【数5】
【0047】
ここで、Iは、R+Rの関数である。数式3は、分配抵抗に流れる電流は最大ゲートリーク電流Igmaxより大きくなければならない条件で誘導され、数式4は、ゲートに印加される電圧が最小保障ゲート電圧Vgminより大きくなければならない条件で誘導され、数式5は、電流制御部260による電流制御時にカソード電極210に印加されるカソード電圧が電流制御部260の許容電圧V以上上昇しないようにする条件で誘導されるとよい。
【0048】
この時、数式4の第1条件と数式5の第2条件をすべて満足する任意の値を分配抵抗値として決定することができる。すなわち、図4に示されたグラフにおいて、斜線領域が第1条件と第2条件をすべて満足する領域となり、斜線領域から任意のRおよびRを選択して電界放出装置に設定する分配抵抗値に決定することができる。
【0049】
しかし、分配抵抗によって電流リークが生じるため、分配抵抗値は、R+Rの値が最も大きい抵抗値すなわち、図4のグラフ上で2つの関数が交差する地点の抵抗値を選択することが好ましい。下記の数式6および数式7により、図4のグラフ上で交差する地点に相当するA地点のR+Rの値と、B地点に相当するR値をそれぞれ求めることができる。ここで、数式6は、数式4と数式5が互いに同じであるという条件によって誘導することができ、数式7は、数式4から誘導することができる。
【数6】
【数7】
【0050】
例えば、Vが5kV、最大電界放出電流が4mA、ゲートリーク電流が10%すなわち、0.4mAであり、最小保障ゲート電圧が2k、電界放出開始電圧が500Vの電界放出装置を駆動するとする時、電流制御部260の許容電圧が2.5kVであれば、分配抵抗値は、数式6および数式7から、Rは約1.67MΩ、Rは約2.49MΩに決定できる。
【0051】
このように、数式6および数式7によって分配抵抗値を決定し、決定された分配抵抗値に設定する場合、電界放出装置で所望の駆動特性が得られる。
【0052】
図5は、図3の電界放出装置における電流制御部の一実施形態を説明するための図である。
【0053】
図5を参照すれば、本実施形態にかかる電界放出装置は、同様に、カソード電極210と、アノード電極220と、ゲート電極230と、カソード電極210上に形成されたエミッタ211と、電源部240と、電圧分圧部250と、電流制御部260とを含むことができる。以下、前述した電界放出装置の構成と重複する構成に関する詳細な説明は省略する。
【0054】
この時、電流制御部260は、図示のように、制御信号発生部261と、電流スイッチング部262とを含むことができる。
【0055】
制御信号発生部261は、カソード電極210に流れるカソード電流を制御するための制御信号を電流スイッチング部262に入力する。この時、制御信号は、0V〜5Vの範囲の低電圧パルス信号またはDC信号であり得る。
【0056】
電流スイッチング部262は、制御信号発生部261から入力される制御信号によってカソード電流をオン/オフ制御することができる。
【0057】
電流スイッチング部262は、電界効果トランジスタTRを含み、電界効果トランジスタTRを用いてカソード電流を制御することができる。この時、トランジスタTRは、高電圧に耐えられる高電圧MOSFETであり得、ソース端子Sには電源部240の単一駆動電源が接続され、ドレイン端子Dにはカソード電極210が接続され、ゲート端子Gには制御信号発生部261に接続されて制御信号が入力される。
【0058】
図6は、図3の電界放出装置における電流制御部の他の実施形態を説明するための図である。
【0059】
図6に示されるように、本実施形態にかかる電界放出装置は、カソード電極210と、アノード電極220と、ゲート電極230と、カソード電極210上に形成されたエミッタ211と、電源部240と、電圧分圧部250と、電流制御部260とを含むことができる。以下、前述した電界放出装置の構成と重複する構成に関する詳細な説明は省略する。
【0060】
図6を参照すれば、電界放出装置の電流制御部260は、制御信号発生部261と、電流スイッチング部262とを含み、この時、電流スイッチング部262は、2つのトランジスタすなわち、第1トランジスタTR1および第2トランジスタTR2と、可変抵抗VRとを含むことができ、2つのトランジスタTR1、TR2を用いて電流制御特性を高めることができる。
【0061】
ここで、第1トランジスタTR1は、電流制御特性の良い低電圧MOSFETであり得、ソース端子Sに電源部240の単一駆動電源が接続され、ドレイン端子Dに第2トランジスタTR2のソース端子Sが接続され、ゲート端子Gに可変抵抗VRが接続されるとよい。第1トランジスタTR1は、ゲート端子Gに接続された可変抵抗VRを介して制御信号発生部261から入力された制御信号より相対的に低い低電圧の信号が入力されるようにすることで、カソード電流を制御することができる。
【0062】
また、第2トランジスタTR2は、カソード電圧が上昇する時、高電圧に耐えられる高電圧MOSFETであり得、ソース端子Sには第1トランジスタTR1のドレイン端子Dが接続され、ドレイン端子Dにはカソード電極210が接続され、ゲート端子Gには可変抵抗によって電圧調整された制御信号が入力される。
【0063】
図7は、図3の電界放出装置における電流制御部のさらに他の実施形態を説明するための図である。
【0064】
図7を参照すれば、本実施形態にかかる電界放出装置は、カソード電極210と、アノード電極220と、ゲート電極230と、カソード電極210上に形成されたエミッタ211と、電源部240と、電圧分圧部250と、電流制御部260とを含むことができる。電流制御部260は、制御信号発生部261と、電流スイッチング部262とを含むことができ、電流スイッチング部262は、1つ以上のトランジスタTR1、TR2と、可変抵抗VRとを含むことができる。以下、前述した電界放出装置の構成と重複する構成に関する詳細な説明は省略する。
【0065】
電流制御部260の制御信号発生部261は、電源部240の単一駆動電源でない他の外部電源やバッテリなどから電源を受けることが可能である。また、図7に示されるように、電圧分圧部250は、分配抵抗Rをさらに含むことができ、追加された分配抵抗Rを介して電源部240の単一駆動電源から印加された電圧を分圧し、制御信号発生部261に印加することも可能である。
【0066】
この時、図示しないが、制御信号発生部261は、ゲートリーク電流による電圧変動でも安定した電圧供給が可能となるように電圧レギュレータをさらに含むことができる。
【0067】
図8は、一実施形態にかかる多極構造の電界放出装置を説明するための図である。
【0068】
図8を参照すれば、電界放出装置は、カソード電極310と、アノード電極320と、カソード電極310上に形成されたエミッタ311と、電源部340と、電圧分圧部350と、電流制御部360とを含むことができる。以下、先に説明した構成と同一の構成に関する詳細な説明は省略する。
【0069】
また、本実施形態にかかる電界放出装置は、2つ以上のゲート電極330a、330b、…、330nを含むことができる。また、電源部340の単一駆動電源から印加される電源を分圧し、2つ以上のゲート電極330a、330b、…、330nに印加するための2つ以上の分配抵抗R、R、…、Rを含むことができる。
【0070】
本実施形態にかかる多極構造の電界放出装置も、先に説明した3極構造の分配抵抗値を決定する方法と同じ原理で分配抵抗値を求めることができ、その求められた分配抵抗値を設定することにより、所望の駆動特性が得られる。
【0071】
図9および図10は、電界放出装置の単一駆動電源を説明するための図である。
【0072】
図9および図10は、カソード電極410、510と、アノード電極420、520と、1つ以上のゲート電極430a〜430n、530a〜530nと、電源部440、540と、電圧分圧部450、550と、電流制御部460、560とを含むことができる。また、カソード電極410、510にはエミッタ411、511が形成できる。以下、前述した電界放出装置と重複する構成に関する詳細な説明は省略する。
【0073】
図9および図10を参照すれば、電界放出装置は、図9に示されるように、電源部440の単一駆動電源は正極(positive)電源になるとよい。すなわち、カソード電極410が接地されると(CG)、アノード電極420は正極高電圧になり、正極電圧源によって駆動される。
【0074】
また、図10に示されるように、電源部540の単一駆動電源は負極(negative)電源になるとよい。すなわち、図示のように、アノード電極520が接地されると(AG)、カソード電極510が負極高電圧になり、このような負極駆動は、アノード電極520が接地されるX−Rayソースなどに有用に応用可能である。
【0075】
図11は、図10の電界放出装置における電流制御部を説明するための図である。
【0076】
図11の電界放出装置は、図示のように、カソード電極510と、アノード電極520と、ゲート電極530と、電源部540と、電圧分圧部550と、電流制御部560とを含むことができる。また、カソード電極510にはエミッタ511が形成できる。以下、重複する構成に関する詳細な説明は省略する。
【0077】
電流制御部560の制御信号発生部561は、図示しない無線通信部をさらに含むことができる。無線通信部は、無線通信を介して外部から制御信号CSを受信することができる。制御信号発生部561は、無線通信部が外部から制御信号CSを受信すると、電流スイッチング部562に入力してカソード電流を制御できるようにする。この時、図示のように、電流スイッチング部562は、1つ以上のトランジスタTR1、TR2、または可変抵抗VRを含むことができる。
【0078】
これにより、アノード電極520が接地され、電源部540の単一駆動電源が負極高電圧になる場合、絶縁などの問題により外部制御信号を直接受信しにくい問題を解決することができる。
【0079】
図12は、一実施形態にかかる単一駆動電源を備えた多極構造の電界放出装置を駆動する方法を示すものである。
【0080】
図12を参照して、単一駆動電源を備えた多極構造の電界放出装置を駆動する方法を説明する。
【0081】
まず、電界放出装置の電圧分圧部に含まれた分配抵抗の値が予め設定される(ステップ710)。この時、分配抵抗の値は、先に説明した数式によって決定できる。
【0082】
すなわち、ステップ710は、ゲート電極に印加される電圧が最小保障ゲート電圧より大きいようにする数式4の第1条件、および電流制御部の電流制御時にカソード電圧が電流制御部の許容電圧より大きくないようにする数式5の第2条件をすべて満足する値を算出するステップと、算出された値の中から、任意の値を選択するステップとを含むことができる。この時、値を選択するステップは、第1条件および第2条件を満足する値の中から、各分配抵抗に対する抵抗値の和が最大となるようにする任意の値を選択することができる。
【0083】
次に、電源部の単一駆動電源を介して電圧分圧部に電源が印加されると(ステップ720)、電圧分圧部は、分配抵抗を介して印加された電圧を分圧し、1つ以上のゲート電極に印加する(ステップ730)。
【0084】
次に、電流制御部が、外部から入力される制御信号によってカソード電極に流れるカソード電流を制御する(ステップ740)。この時、電流制御部は、先に詳細に説明したように、制御信号発生部と、制御信号によってカソード電流を制御する1つ以上のトランジスタを含む電流スイッチング部とを介してカソード電流を制御することができる。また、制御信号は、0V〜5Vの範囲の低電圧パルス信号またはDC信号であり得る。
【0085】
また、ステップ740は、電界放出装置の単一電源が負極(negative)電源であり、アノード電極が接地された場合、電流制御部が、外部から無線通信を介して制御信号を受信し、受信された制御信号によってカソード電流を制御することができる。
【0086】
本実施形態の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。そのため、以上に述べた実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0087】
210、310、410、510:カソード電極
211、311、411、511:エミッタ
220、320、420、520:アノード電極
230、330a〜330n、430a〜430n、530、530a〜530n:ゲート電極
240、340、440、540:電源部
250、350、450、550:電圧分圧部
260、360、460、560:電流制御部
261、561:制御信号発生部
262、562:電流スイッチング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12