【実施例】
【0044】
つぎに、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実験例1)
被験者6人〔20歳代の健康な日本人男性6人〕それぞれの頭髪をモデルシャンプーおよびモデルコンディショナーで洗浄した。洗髪終了直後および洗髪終了から24時間経過時に、頭頂部の毛髪9本を根元から切断して採取した。採取された毛髪から、根元を含む長さ3cmの部分を切り出し、毛髪試料を得た。各毛髪試料をイソプロパノール1.5mLに浸漬させ、30分間振とうさせることによって各毛髪試料上に存在する脂肪酸を抽出し、分析試料を得た。
【0046】
分析試料を液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計〔ウォーターズ(Waters)社製、商品名:Acquity UPLC−Xevo G2 QTof〕に供し、毛髪上における脂肪酸の定量分析を行なった。
【0047】
用いられた分析条件は、以下のとおりである。
<使用機器など>
(1)使用カラム
ウォーターズ(Waters)社製、商品名:Acquity UPLC BEH C18 (1.7μm、内径2.1mm、長さ100mm)
(2)使用機器:
超高速液体クロマトグラフ装置〔Acquity UPLC Hclass(Waters社製)〕
四重極-飛行時間型質量分析計〔ウォーターズ(Waters)社製、商品名:Xevo G2 Q−Tof〕
(3)質量分析用ソフトウェア
ウォーターズ(Waters)社製、商品名:MassLynx
【0048】
<液体クロマトグラフィー条件>
カラム温度:40℃
移動相A: 2−プロパノール
移動相B: 50体積% 2−プロパノール水溶液
A濃度0体積%からA濃度100体積%への濃度勾配(1〜7min)(3min保持)
流量:0.3mL/min
【0049】
<質量分析条件>
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、Negative Mode
コーン電圧:30eV
コリジョンエネルギー:30eV
サンプリングレート:1sec
スキャン範囲:100−1200
【0050】
<チューンファイル>
ソース温度:120℃
脱溶媒ガス温度:450℃
コーンガス流量:50L/h
脱溶媒ガス流量:800L/h
【0051】
実験例1において、脂肪酸の種類と毛髪上における脂肪酸の存在量との関係を調べた結果を
図3に示す。図中、1はミリスチン酸、2はパルミチン酸、3はステアリン酸、4はオレイン酸を示す。また、図中、ハッチングが施されたバーは洗髪終了直後の毛髪上における脂肪酸の存在量、白色バーは洗髪終了から24時間経過時の毛髪上における脂肪酸の存在量を示す。
【0052】
図3に示された結果から、洗髪終了から24時間経過時の毛髪上における脂肪酸の存在量は、洗髪直後の毛髪上における脂肪酸の存在量と比べて、多い傾向にあることがわかる。ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸は、ヒトの頭皮脂を構成する脂肪酸である。したがって、これらの結果から、ヒトの頭皮脂に含まれる脂肪酸は、頭皮から毛髪に移動することが示唆される。
【0053】
(実験例2)
被験者6人〔20歳代の健康な日本人男性6人〕それぞれの頭髪をモデルシャンプーおよびモデルコンディショナーで洗浄した。洗髪終了直後、洗髪終了から7時間および24時間経過時に、頭頂部の毛髪6本を根元から切断して採取した。採取された毛髪から、根元を含む長さ2cmの部分を切り出し、毛髪試料を得た。各毛髪試料をイソプロパノール1.5mLに浸漬させ、30分間振とうさせることによって各毛髪試料上に存在するトリグリセリドを抽出し、分析試料を得た。
【0054】
分析試料を液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計〔ウォーターズ(Waters)社製、商品名:Acquity UPLC−Xevo G2 QTof〕に供し、毛髪上におけるトリグリセリドの定量分析を行なった。なお、分析対象のトリグリセリドとしてトリパルミチンを用いた。
【0055】
用いられた分析条件は、以下のとおりである。
<使用機器など>
(1)使用カラム
ウォーターズ(Waters)社製、商品名:Acquity UPLC BEH C8(1.7μm、内径2.1mmおよび長さ100mm)
(2)使用機器:
超高速液体クロマトグラフ装置〔Acquity UPLC Hclass(Waters社製)〕
四重極-飛行時間型質量分析計〔ウォーターズ(Waters)社製、商品名:Xevo G2 Q−Tof〕
(3)質量分析用ソフトウェア
ウォーターズ(Waters)社製、商品名:MassLynx
【0056】
<液体クロマトグラフィー条件>
カラム温度:40℃
移動相A: 2−プロパノール
移動相B: 5mMギ酸アンモニウム含有50体積%アセトニトリル溶液
A濃度50体積%からA濃度100体積%への濃度勾配(1〜7min)(3min保持)
流量:0.3mL/min
【0057】
<質量分析条件>
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、Positive Mode
コーン電圧:30eV
サンプリングレート:0.4sec
スキャン範囲:100−1200
【0058】
<チューンファイル>
ソース温度:120℃
脱溶媒ガス温度:450℃
コーンガス流量:50L/h
脱溶媒ガス流量:800L/h
【0059】
実験例2において、洗髪終了からの経過時間と毛髪上におけるトリグリセリドの存在量との関係を調べた結果を
図4に示す。
【0060】
図4に示された結果から、毛髪上におけるトリグリセリドの存在量は、洗髪終了からの時間の経過に伴い、増加していることがわかる。トリグリセリドは、ヒトの頭皮脂を構成する成分である。したがって、これらの結果から、ヒトの頭皮脂に含まれるトリグリセリドは、頭皮から毛髪に移動することが示唆される。
【0061】
(実験例3)
被験者6人〔20歳代の健康な日本人男性6人〕それぞれの頭髪をモデルシャンプーおよびモデルコンディショナーで洗浄した。洗髪終了直後、洗髪終了から24時間経過時に、頭頂部の毛髪6本を根元から切断して採取した。採取された毛髪を根元から2cm間隔で切断し、根元から0〜2cmの範囲の部分、根元から2〜4cmの範囲の部分および根元から4〜6cmの範囲の部分の3種類の毛髪試料を得た。各毛髪試料をイソプロパノール1.5mLに浸漬させ、30分間振とうさせることによって各毛髪試料上に存在するトリグリセリド、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸を抽出し、分析試料を得た。
【0062】
分析試料を液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計〔ウォーターズ(Waters)社製、商品名:Acquity UPLC−Xevo G2 QTof〕に供し、毛髪上におけるトリグリセリド、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の定量分析を行なった。トリグリセリドの定量分析および脂肪酸の定量分析を行なう際の分析条件は、前記と同様である。なお、以下においては、トリグリセリドの定量分析の結果の代表例としてトリパルミチンの定量分析の結果、飽和脂肪酸の定量分析の結果の代表例としてパルミチン酸の定量分析の結果、不飽和脂肪酸の定量分析の結果の代表例としてオレイン酸の定量分析の結果を示す。
【0063】
実験例3において、毛髪の根元からの距離と毛髪上におけるトリパルミチンの存在量との関係を調べた結果を
図5、毛髪の根元からの距離と毛髪上におけるパルミチン酸の存在量との関係を調べた結果を
図6、毛髪の根元からの距離と毛髪上におけるオレイン酸の存在量との関係を調べた結果を
図7に示す。図中、ハッチングが施されたバーは洗髪終了直後に毛髪上におけるトリパルミチン、パルミチン酸またはオレイン酸の存在量、白色バーは洗髪終了から24時間経過時の毛髪上におけるトリパルミチン、パルミチン酸またはオレイン酸の存在量を示す。
【0064】
図5に示された結果から、洗髪終了から24時間経過時において、毛髪上におけるトリパルミチンの存在量は、毛先に近くなるほど減少する傾向がみられることがわかる(実験番号2、4および6参照)。また、トリパルミチン以外のトリグリセリドについても、トリパルミチンの場合と同様の傾向が見られた。
【0065】
また、
図6に示された結果から、洗髪終了から24時間経過時において、毛髪の根元付近の部分に存在するパルミチン酸の存在量(実験番号8参照)、毛髪の中間部分に存在するパルミチン酸の存在量(実験番号10参照)および毛髪の毛先側部分に存在するパルミチン酸の存在量(実験番号11参照)は、ほぼ同じ量であることがわかる。なお、これらのパルミチン酸の存在量の間には、有意差がみられなかった。また、パルミチン酸以外の飽和脂肪酸についても、パルミチン酸の場合と同様の傾向が見られた。
【0066】
さらに、
図7に示された結果から、洗髪終了から24時間経過時において、毛髪の根元付近の部分に存在するオレイン酸の存在量(実験番号14参照)、毛髪の中間部分に存在するオレイン酸の存在量(実験番号16参照)および毛髪の毛先側部分に存在するオレイン酸の存在量(実験番号18参照)は、ほぼ同じ量であることがわかる。なお、これらのオレイン酸の存在量の間には、有意差がみられなかった。また、オレイン酸以外の不飽和脂肪酸についても、オレイン酸の場合と同様の傾向が見られた。
【0067】
これらの結果から、洗髪終了から24時間経過時において、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の存在量が毛髪の根元から毛先までほぼ一定の存在量であることから、毛髪上における飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸それぞれの量が、ほぼ飽和状態に達しており、頭皮から毛髪への飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の移動がほぼ終わっていることがわかる。これに対し、洗髪終了から24時間経過時において、毛髪上におけるトリグリセリドの存在量が毛先に近くなるほど減少していることから、毛髪上におけるトリグリセリドの量が、飽和状態に達しておらず、頭皮から毛髪への飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の移動が続いていることがわかる。したがって、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸は、トリグリセリドよりも、頭皮から毛髪に移動しやすいことが示唆される。
【0068】
(実験例4)
(1)毛の流れのくせ付け力の評価
被験者〔20歳代の健康な日本人男性20人〕の頭部全体の頭髪をモデルシャンプーおよびモデルコンディショナーで洗浄した。洗髪終了から24時間経過時に、被験者の左側頭部の頭髪のみをモデルシャンプーおよびモデルコンディショナーで洗浄した。つぎに、各被験者が、整髪剤としてモデルヘアワックス(組成:キャンデリラロウ 0.5質量%、パラフィンワックス 15質量%、ポリオキシエチレン(10)オレイルアルコールエーテル 3質量%、ステアリルアルコール 0.5質量%、流動パラフィン 10質量%、1,3−ブチレングリコール 5質量%、水酸化カリウム 適量、精製水 残部)0.5gまたはモデルヘアジェル(組成:カルボキシビニルポリマー 0.7質量%、ポリビニルピロリドン 2質量%、グリセリン 5質量%、エタノール 15質量%、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル 1質量%、エデト酸二ナトリウム 0.05質量%、精製水 残部)1.0gを用いて左側頭部の頭髪を整髪し、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する整髪剤による毛の流れのくせ付け力を評価した。
【0069】
その後、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する整髪剤による毛の流れのくせ付け力(くせ付けやすさ)を4点(基準点)とし、以下の評価基準に基づいて、各被験者が、整髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する整髪剤による毛の流れのくせ付け力を評価した。
<評価基準>
1点:洗髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力が、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力と比べて著しく低い。
2点:洗髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力が、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力と比べて低い。
3点:洗髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力が、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力と比べてやや低い。
4点:洗髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力が、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力と同程度である。
5点:洗髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力が、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力と比べてやや高い。
6点:洗髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力が、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力と比べて高い。
7点:洗髪終了から7時間経過時の右側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力が、洗髪終了直後の左側頭部の毛髪に対する毛の流れのくせ付け力と比べて著しく高い。
【0070】
なお、整髪剤の毛の流れのくせ付け力への頭皮脂の影響の評価は、下記評価方法にしたがって各被験者につけさせた官能評価スコアを、評価項目ごとに集計し、左側頭部の頭髪を用いたときの官能評価スコアの平均点(以下、「平均点a」という)と、右側頭部の頭髪を用いたときの官能評価スコアの平均点(以下、「平均点b」という)とを比較することによって行なった。毛の流れのくせ付け力に対する毛髪上の頭皮脂の影響を調べた結果を表1に示す。
【0071】
(2)べたつき、毛束感、髪型の持続性および再整髪力の評価
被験者〔20歳代の健康な日本人男性20人〕の頭部全体の頭髪をモデルシャンプーおよびモデルコンディショナーで洗浄した。洗髪終了から24時間経過時に、被験者の左側頭部の頭髪のみをモデルシャンプーおよびモデルコンディショナーで洗浄した。その後、整髪剤としてモデルヘアワックス(組成:キャンデリラロウ 0.5質量%、パラフィンワックス 15質量%、ポリオキシエチレン(10)オレイルアルコールエーテル 3質量%、ステアリルアルコール 0.5質量%、流動パラフィン 10質量%、1,3−ブチレングリコール 5質量%、水酸化カリウム 適量、精製水 残部)0.5gまたはモデルヘアジェル(組成:カルボキシビニルポリマー 0.7質量%、ポリビニルピロリドン 2質量%、グリセリン 5質量%、エタノール 15質量%、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル 1質量%、エデト酸二ナトリウム 0.05質量%、精製水 残部)1.0gを用いて、前記被験者の頭部全体の頭髪を整髪した。つぎに、被験者に、左側頭部および右側頭部それぞれの髪型を観察させ、髪のべたつきのなさ、毛束感、整髪終了から2〜3時間経過時における髪型の持続性、整髪終了から7時間経過時における髪型の持続性および再整髪力それぞれに対する頭皮脂の影響を評価させた。
【0072】
〔髪のべたつきのなさの評価方法〕
整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いを基準(4点)とし、以下の評価基準に基づいて、各被験者が、整髪終了から7時間経過時の右側頭部それぞれの頭髪のべたつきの度合いを評価した。
<評価基準>
1点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪のべたつきの度合いが、整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いと比べて著しく大きい。
2点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪のべたつきの度合いが、整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いの変化と比べて大きい。
3点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪のべたつきの度合いが、整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いの変化と比べてやや大きい。
4点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪のべたつきの度合いが、整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いと同程度である。
5点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪のべたつきの度合いが、整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いと比べてやや少ない。
6点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪のべたつきの度合いが、整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いと比べて少ない。
7点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪のべたつきの度合いが、整髪終了直後の左側頭部の頭髪のべたつきの度合いと比べて著しく少ない。
【0073】
〔毛束感の評価方法〕
左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化を基準(4点)とし、以下の評価基準に基づいて、以下の評価基準に基づいて、各被験者が、右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化を評価した。
<評価基準>
1点:右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化が、左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化と比べて著しく大きい。
2点:右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化が、左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化と比べて大きい。
3点:右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化が、左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化と比べてやや大きい。
4点:右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化が、左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化と同程度である。
5点:右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化が、左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化と比べてやや小さい。
6点:右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化が、左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化と比べて小さい。
7点:右側頭部の頭髪の毛束の形状の変化が、左側頭部の頭髪の毛束の形状の変化と比べて著しく小さい。
【0074】
〔整髪終了から2〜3時間経過時における髪型の持続性の評価方法〕
整髪終了から2〜3時間経過時の左側頭部の全体的な髪型の変化を基準(4点)とし、以下の評価基準に基づいて、各被験者が、右側頭部の髪型の変化を評価した。
<評価基準>
1点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて著しく大きい。
2点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて大きい。
3点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べてやや大きい。
4点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と同程度である。
5点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べてやや小さい。
6点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて小さい。
7点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて著しく小さい。
【0075】
〔整髪終了から7時間経過時における髪型の持続性の評価方法〕
整髪終了から7時間経過時の左側頭部の全体的な髪型の変化を基準(4点)とし、以下の評価基準に基づいて、各被験者が、右側頭部の髪型の変化を評価した。
<評価基準>
1点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて著しく大きい。
2点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて大きい。
3点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べてやや大きい。
4点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と同程度である。
5点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べてやや小さい。
6点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて小さい。
7点:右側頭部の髪型の変化が、左側頭部の髪型の変化と比べて著しく小さい。
【0076】
〔再整髪力の評価方法〕
整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力を基準(4点)とし、以下の評価基準に基づいて、各被験者が、整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力を評価した。
<評価基準>
1点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力が、整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力と比べて著しく低い。
2点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力が、整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力と比べて低い。
3点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力が、整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力と比べてやや低い。
4点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力が、整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力と同程度である。
5点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力が、整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力と比べてやや大きい。
6点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力が、整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力と比べて大きい。
7点:整髪終了から7時間経過時の右側頭部の頭髪に対する再整髪力が、整髪直後の左側頭部の頭髪に対する整髪力と比べて著しく大きい。
【0077】
なお、髪のべたつきのなさ、毛束感、整髪終了から2〜3時間経過時における髪型の持続性、整髪終了から7時間経過時における髪型の持続性および再整髪力それぞれに対する頭皮脂の影響の評価は、下記評価方法にしたがって各被験者につけさせた官能評価スコアを、評価項目ごとに集計し、左側頭部の頭髪を用いたときの
官能評価スコアの平均点(以下、「平均点a」という)と、右側頭部の頭髪を用いたときの官能評価スコアの平均点(以下、「平均点b」という)とを比較することによって行なった。
【0078】
髪のべたつきのなさ、毛束感、整髪終了から2〜3時間経過時における髪型の持続性、整髪終了から7時間経過時における髪型の持続性および再整髪力それぞれに対する毛髪上の頭皮脂の影響を調べた結果を表1に示す。
【0079】
表1における評価基準は、以下のとおりである。
<評価基準>
「A」: 〔平均点b−平均点a〕の値が0.5未満である(評価項目の整髪性能に対する影響がほぼない)。
「B」: 〔平均点b−平均点a〕の値が0.5以上1未満である(評価項目の整髪性能に対する影響がある)。
「C」: 〔平均点b−平均点a〕の値が1以上である(評価項目の整髪性能に対する影響が大きい)。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示された結果から、頭皮脂は、モデルヘアワックスの「毛の流れのくせ付け力」、「毛束感」、「整髪終了から2〜3時間経過時における髪型の持続性」、「整髪終了から7時間経過時における髪型の持続性」および「再整髪力」に対して影響を及ぼすことがわかる。また、頭皮脂は、モデルヘアジェルの「毛の流れのくせ付け力」、「髪のべたつきのなさ」、「毛束感」、「整髪終了から2〜3時間経過時における髪型の持続性」および「整髪終了から7時間経過時における髪型の持続性」に対して影響を及ぼすことがわかる。したがって、これらの結果から、頭皮脂は、整髪剤の整髪性能に影響を及ぼすことがわかる。
【0082】
(実施例1)
図1に示される頭部モデル1を構築した。
図1に示される頭部モデル1は、基材11と当該基材11上に設けられた毛穴部11aに植え込まれたヒトの毛髪からなる毛髪12からなる毛束13とを有する頭部モデル本体10と、毛束13を構成する毛髪12の根元に皮脂などの頭皮脂成分Sを供給する頭皮脂成分供給部20とから構成されている。基材11は、ポリプロピレン製シート(大きさ:3cm×3cm)である。毛穴部11aは、基材11の上面に2mm間隔で設けられている。1個の毛穴部11aには、3本の毛髪12(図中、12a〜12c)が植え込まれている。基材11に植え込まれたすべての毛髪12のキューティクル(図中、12a1、12b1および12c1)は、その方向がヒトの頭髪におけるキューティクルの方向と同様に根元から毛先に向かう方向となるように配置されている。また、毛髪12は、有効長さが10cmとなり、かつ基材に対する毛髪の角度が90°となるように、毛穴部11aに植え込まれている。頭皮脂成分供給部20は、頭皮脂成分Sを貯留する容器からなる。
【0083】
(実施例2)
頭部モデル1の頭皮脂成分供給部20を構成する容器(直径:10cmおよび高さ:1cmのシャーレ)内に、蛍光脂質プローブ(インビトロジェン社製、商品名:Bodipy 493/503)1mgと、頭皮脂成分Sとして表2に示される組成を有する疑似頭皮脂20gとを入れた。つぎに、頭部モデル本体10の基材11の底面が疑似頭皮脂に接触するように頭部モデル本体10を頭皮脂成分供給部20にセットした。得られた頭部モデル1を38℃に保たれた恒温槽内に静置した。
【0084】
【表2】
【0085】
疑似頭皮脂との接触開始から3時間経過時に、頭部モデル1の毛髪12の束の根元から1〜7cmの部分を2cm間隔で切断し、根元からの距離が異なる3種類の毛束試料を得た。また、疑似頭皮脂との接触開始から24時間経過時に、頭部モデル1の毛髪12の束の根元から1〜7cmの部分を2cm間隔で切断し、根元からの距離が異なる3種類の毛束試料を得た。つぎに、得られた毛束試料から、エタノールを用いて蛍光標識疑似頭皮脂を抽出し、分析試料を得た。
【0086】
蛍光分光光度計〔(株)日立製作所製、商品名:Fluorescence Spectrophotometer F−7000〕を用いて、分析試料中の蛍光標識疑似頭皮脂に基づく蛍光強度を測定した。前記蛍光強度を用い、毛髪上における疑似頭皮脂の存在量を算出した。実施例2において、毛髪の根元からの距離と毛髪上における疑似頭皮脂の存在量との関係を調べた結果を
図8に示す。図中、ハッチングが施されたバーは疑似頭皮脂との接触開始から3時間経過時の毛髪上における疑似頭皮脂の存在量、白色バーは疑似頭皮脂との接触開始から24時間経過時の毛髪上における疑似頭皮脂の存在量を示す。
【0087】
図8に示された結果から、疑似頭皮脂との接触開始から24時間経過時の毛髪上における疑似頭皮脂の存在量は、疑似頭皮脂との接触開始から3時間経過時の毛髪上における疑似頭皮脂の存在量と比べて、多いことがわかる。また、
図8に示された結果から、疑似頭皮脂との接触開始から24時間経過時の毛髪および疑似頭皮脂との接触開始から3時間経過時の毛髪のいずれにもおいても、根元からの距離が離れるほど疑似頭皮脂の量が少なくなることがわかる。したがって、これらの結果から、本発明の頭部モデルによれば、人頭の毛髪上における頭皮脂成分の量の経時的な変化および毛髪の根元からの距離による頭皮脂成分の量の違いを再現することができることがわかる。
【0088】
(実施例3)
頭部モデル1の頭皮脂成分供給部20を構成する容器(直径:10cmおよび高さ:1cmのシャーレ)内に、蛍光脂質プローブ(インビトロジェン社製、商品名:Bodipy 493/503)1mgと、頭皮脂成分Sとして表1に示される組成を有する疑似頭皮脂20gまたはオレイン酸20gとを入れた。つぎに、頭部モデル本体10の基材11の底面が疑似頭皮脂またはオレイン酸(頭皮脂成分S参照)に接触するように頭部モデル本体10を頭皮脂成分供給部20にセットした。得られた頭部モデル1を38℃に保たれた恒温槽内に静置した。
【0089】
疑似頭皮脂またはオレイン酸との接触開始から24時間経過時に、頭部モデル1の毛髪12の束の根元から1〜7cmの部分を2cm間隔で切断し、根元からの距離が異なる3種類の毛束試料を得た。つぎに、得られた毛束試料から、エタノールを用いて蛍光標識疑似頭皮脂または蛍光標識オレイン酸を抽出し、分析試料を得た。
【0090】
蛍光分光光度計〔(株)日立製作所製、商品名:Fluorescence Spectrophotometer F−7000〕を用いて、分析試料中の蛍光標識疑似頭皮脂または蛍光標識オレイン酸に基づく蛍光強度を測定した。前記蛍光強度を用い、毛髪上における疑似頭皮脂またはオレイン酸の存在量を算出した。実施例3において、毛髪の根元からの距離と毛髪上における疑似頭皮脂またはオレイン酸の存在量との関係を調べた結果を
図9に示す。図中、ハッチングが施されたバーは毛髪上における疑似頭皮脂の存在量、白色バーは毛髪上におけるオレイン酸の存在量を示す。
【0091】
図9に示された結果から、根元からの1〜3cmの部分、根元から3〜5cmの部分および根元から5〜7cmの部分それぞれにおけるオレイン酸の存在量は、根元からの1〜3cmの部分、根元から3〜5cmの部分および根元から5〜7cmの部分それぞれにおける疑似頭皮脂の存在量と比べて多いことから、オレイン酸は、疑似頭皮脂よりも速く毛髪に移動することがわかる。したがって、これらの結果から、本発明の頭部モデルによれば、頭皮脂成分の種類による毛髪への移動挙動の違いを評価することができることがわかる。
【0092】
(実施例4)
頭部モデル1の毛髪12にモデルヘアワックス(組成:キャンデリラロウ 0.5質量%、パラフィンワックス 15質量%、ポリオキシエチレン(10)オレイルアルコールエーテル 3質量%、ステアリルアルコール 0.5質量%、流動パラフィン 10質量%、1,3−ブチレングリコール 5質量%、水酸化カリウム 適量、精製水 残部)、モデルヘアジェル(組成:カルボキシビニルポリマー 0.7質量%、ポリビニルピロリドン 2質量%、グリセリン 5質量%、エタノール 15質量%、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル 1質量%、エデト酸二ナトリウム 0.05質量%、精製水 残部)、モデルヘアミスト(組成:エタノール 10質量%、ポリエチレングリコール1000 2質量%、ポリエチレングリコール4000 5質量%、ソルビトール 5質量%、マルチトール 5質量%、(ビニルピロリドン/VA)コポリマー 1質量%、精製水 残部)、またはモデルパウダー配合スタイリング剤(組成:シリカ 1質量%、キサンタンガム 0.5質量%、ラポナイト 1質量%、ポリオキシエチレンソルビット 5質量%、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリン 5質量%、精製水 残部)を塗布し整髪した。また、頭部モデル1の頭皮脂成分供給部20を構成する容器(直径:10cmおよび高さ:1cmのシャーレ)内に、頭皮脂成分Sとして疑似頭皮脂20gを入れた。
【0093】
つぎに、頭部モデル本体10の基材11の底面が疑似頭皮脂(頭皮脂成分S参照)に接触するように頭部モデル本体10を頭皮脂成分供給部20にセットした。得られた頭部モデル1を相対湿度80%で35℃に保たれた恒温恒湿槽内に静置し、静置開始直後の頭部モデル1の毛束13の形状と、静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13の形状とを観察した。下記評価基準にしたがって、モデルヘアワックス、モデルヘアジェル、モデルヘアミストまたはモデルパウダー配合スタイリング剤の整髪性能に対する疑似頭皮脂の影響を評価した。その結果を表3に示す。
【0094】
<評価基準>
A: 静置開始直後の頭部モデル1の毛束13の形状と、静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13の形状との間の変化が見られない。
B: 静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13への疑似頭皮脂が見られないが、毛束13がわずかに垂れ下がっている。
C: 静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13に疑似頭皮脂がわずかに付着しており、毛束13が垂れ下がっている。
D: 静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13全体に疑似頭皮脂がべっとり付着しており、毛束13が垂れ下がっている。
【0095】
【表3】
【0096】
表3に示された結果から、モデルパウダー配合スタイリング剤を用いて整髪を行なった場合には、静置開始直後の頭部モデル1の毛束13の形状と、静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13の形状との間の変化が見られないことがわかる。これに対し、表3に示された結果から、モデルヘアワックスおよびモデルヘアミストを用いて整髪を行なった場合には、静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13全体に疑似頭皮脂がべっとり付着しており、毛束13が垂れ下がっていることがわかる。また、表3に示された結果から、モデルヘアジェルを用いて整髪を行なった場合には、静置開始から7時間経過時の頭部モデル1の毛束13に疑似頭皮脂がわずかに付着しており、毛束13が垂れ下がっていることがわかる。
【0097】
従来、整髪剤のセット力の評価には、被験者の頭部または毛束が用いられている。髪質、頭皮の性質などには個人差があることから、被験者の頭部を用いた整髪剤のセット力の評価方法には、評価結果のぶれが生じやすいという欠点がある。また、毛束を用いたセット力の評価は、整髪剤によって毛束を固め、当該折損強度をレオメーターなどで測定することによって行なわれている。しかし、ヘアワックスは、髪型のキープ力を有するが、毛髪を固めることができない整髪剤であることから、毛束を用いたセット力の評価方法には、毛束を固めて折損強度を測定することができないないという欠点がある。さらに、毛束は、キューティクルの向きや、頭皮からの生え際が考慮されていないため、ヒトの頭部を十分に再現することができない。そのため、毛束を用いた整髪剤の整髪性能の評価方法には、毛の流れおよび立ち上がりが求められるヘアワックスなどの整髪性能を評価することができないという欠点がある。
【0098】
これに対し、頭部モデル1は、キューティクル(
図1中、12a1、12b1および12c1)の向きがヒトの頭部におけるキューティクルの向きと同じ方向であり、かつヒトの頭部と同様に1〜3本の毛髪12が毛穴部11aに植え込まれているため、毛束と比べて、ヒトの毛髪を含む頭部の構造、ヒトの頭部における頭皮脂成分の移動挙動などをより的確に再現することができる。したがって、本発明の頭部モデルによれば、ヒトの頭部の形状、ヒトの頭部における頭皮脂成分の移動挙動などをより的確に再現しながら、種々の条件下に、種々の整髪剤の整髪性能、当該整髪剤の整髪性能に対する頭皮脂成分の影響などを評価することができる。
【0099】
(実施例5)
頭部モデル1の毛髪12にモデルヘアワックス(組成:キャンデリラロウ 0.5質量%、パラフィンワックス 15質量%、ポリオキシエチレン(10)オレイルアルコールエーテル 3質量%、ステアリルアルコール 0.5質量%、流動パラフィン 10質量%、1,3−ブチレングリコール 5質量%、水酸化カリウム 適量、精製水 残部)、モデルヘアジェル(組成:カルボキシビニルポリマー 0.7質量%、ポリビニルピロリドン 2質量%、グリセリン 5質量%、エタノール 15質量%、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル 1質量%、エデト酸二ナトリウム 0.05質量%、精製水 残部)またはモデルパウダー配合スタイリング剤(組成:シリカ 1質量%、キサンタンガム 0.5質量%、ラポナイト 1質量%、ポリオキシエチレンソルビット 5質量%、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリン 5質量%、精製水 残部)を塗布し整髪した。また、頭部モデル1の頭皮脂成分供給部20を構成する容器(直径:10cmおよび高さ:1cmのシャーレ)内に、頭皮脂成分Sとして疑似頭皮脂20gを入れた。
【0100】
つぎに、頭部モデル本体10の基材11の底面が疑似頭皮脂(頭皮脂成分S参照)に接触するように頭部モデル本体10を頭皮脂成分供給部20に設置し、設置開始から24時間経過時の頭部モデル1の毛束13の形状を観察した。実施例5において、頭皮脂成分供給部に頭部モデル本体を設置した直後の頭部モデルの毛束の形状を観察した結果を
図10(a)、頭皮脂成分供給部に頭部モデル本体を設置したときから24時間経過したときの頭部モデルの毛束の形状を観察した結果を
図10(b)に示す。図中、S1はモデルヘアワックスが塗布された毛束の形状、S2はモデルヘアジェルが塗布された毛束の形状、S3はモデルパウダー配合スタイリング剤が塗布された毛束の形状を示す。
【0101】
図10(a)および
図10(b)に示された結果から、モデルヘアワックス(図中、S1参照)およびモデルヘアジェル(図中、S2参照)を用いた場合、頭皮脂成分供給部20に頭部モデル本体10を設置したときから24時間経過時の頭部モデル1の毛束13〔
図10(b)参照〕は、頭皮脂成分供給部20に頭部モデル本体10を設置した直後の頭部モデル1の毛束13〔
図10(a)参照〕と比べて髪型が顕著に崩れており、しかも毛髪に疑似頭皮脂が付着し、べたついていることがわかる。これに対し、モデルパウダー配合スタイリング剤を用いた場合(図中、S3参照)、頭皮脂成分供給部20に頭部モデル本体10を設置したときから24時間経過時の頭部モデル1の毛束13〔
図10(b)参照〕は、頭皮脂成分供給部20に頭部モデル本体10を設置した直後の頭部モデル1の毛束13〔
図10(a)参照〕と比べて髪型がやや崩れる傾向が見られるが、毛髪への疑似頭皮脂の付着は見られず、しかもモデルヘアワックスおよびモデルヘアジェルを用いた場合の髪型の崩れ度合いと比べて小さいことがわかる。これらの結果から、本発明の頭部モデルによれば、整髪剤の種類による整髪性能の違いを評価することができることがわかる。また、環境条件を厳しくすることにより、整髪性能の経時的変化に対する促進試験が可能であることがわかる。
【0102】
(実施例6)
図2に示される頭部モデル2を構築した。
図2に示される頭部モデル2は、基材11と当該基材11上に設けられた毛穴部11aに植え込まれたヒトの毛髪からなる毛髪12からなる毛束13とを有する頭部モデル本体10と、毛束13を構成する毛髪12の根元に皮脂などの頭皮脂成分Sを供給する頭皮脂成分供給部20と、毛束13を束ねる拘束具15とから構成されている。基材11は、塩化ビニル製シート(大きさ:3cm×3cm)である。毛穴部11aは、基材11の上面に2mm間隔で設けられている。1個の毛穴部11aには、3本の毛髪12(図中、12a〜12c)が植え込まれている。基材11に植え込まれたすべての毛髪12のキューティクル(図中、12a1、12b1および12c1)は、その方向がヒトの頭髪におけるキューティクルの方向と同様に根元から毛先に向かう方向となるように配置されている。また、毛髪12は、有効長さが10cmとなり、かつ基材に対する毛髪の角度が90°となるように、毛穴部11aに植え込まれている。頭皮脂成分供給部20は、頭皮脂成分Sを貯留する容器からなる。拘束具15は、毛束13の毛髪12の根元から5cmの位置(毛束13の毛髪12の長手方向中間部位)で毛束13を束ねるように配置されている。
【0103】
(実施例7)
図2に示される頭部モデル2の頭皮脂成分供給部20を構成する容器(直径:10cmおよび高さ:1cmのシャーレ)内に、蛍光脂質プローブ(インビトロジェン社製、商品名:Bodipy 493/503)1mgと、頭皮脂成分Sとして表1に示される組成を有する疑似頭皮脂20gまたはオレイン酸20gとを入れた。つぎに、頭部モデル本体10の基材11の底面が疑似頭皮脂またはオレイン酸(頭皮脂成分S参照)に接触するように頭部モデル本体10を頭皮脂成分供給部20にセットした。得られた頭部モデル2を50、70または90%の相対湿度で、かつ40℃の温度に保たれた恒温槽内に静置した。
【0104】
疑似頭皮脂またはオレイン酸との接触開始から24時間経過時に、頭部モデル2の毛髪12の束の根元から1cmの部分で切断し、毛束試料を得た。つぎに、得られた毛束試料から、エタノールを用いて蛍光標識疑似頭皮脂または蛍光標識オレイン酸を抽出し、分析試料を得た。
【0105】
蛍光分光光度計〔(株)日立製作所製、商品名:Fluorescence Spectrophotometer F−7000〕を用いて、分析試料中の蛍光標識疑似頭皮脂または蛍光標識オレイン酸に基づく蛍光強度を測定した。前記蛍光強度を用い、毛髪上における疑似頭皮脂またはオレイン酸の存在量を算出した。実施例7において、相対湿度と毛髪上におけるオレイン酸の存在量との関係を調べた結果を
図11(a)、相対湿度と毛髪上における疑似頭皮脂の存在量との関係を調べた結果を
図11(b)に示す。
【0106】
図11に示された結果から、毛髪上におけるオレイン酸の存在量および毛髪上における疑似頭皮脂の存在量は、相対湿度が高いほど多いことから、相対湿度が高いほど、毛髪へのオレイン酸および疑似頭皮脂それぞれの移行が促進されることがわかる。したがって、これらの結果から、本発明の頭部モデルによれば、ヒトの頭部の形状、ヒトの頭部における頭皮脂成分の移動挙動などをより的確に再現しながら、環境湿度による頭皮脂成分の移動挙動の影響を反映させ、種々の整髪剤の整髪性能、当該整髪剤の整髪性能に対する頭皮脂成分の影響などを評価することができることが示唆される。さらに、これらの結果から、相対湿度を高くすることにより、頭皮脂成分の種類による毛髪への移動挙動の違いを迅速に評価することができることが示唆される。また、拘束具15を有する
図12に示される頭部モデル2によれば、拘束具15を有しない
図1に示される頭部モデル1に比べ、毛束13内における頭皮脂成分Sの移行量のばらつきの発生をより一層抑制することができた。したがって、頭部モデル2によれば、毛髪上における頭皮脂成分Sの存在量の測定誤差を効果的に抑制することができることが示唆される。
【0107】
以上説明したように、本発明の整髪剤の整髪性能の評価方法および整髪剤の整髪性能の評価用頭部モデルによれば、ヒトの頭部の形状、ヒトの頭部における頭皮脂成分の移動挙動などをより的確に再現しながら、種々の条件下に、種々の整髪剤の整髪性能、当該整髪剤の整髪性能に対する頭皮脂成分の影響などを評価することができることから、例えば、整髪剤の候補物質のスクリーニング、整髪剤の整髪性能の評価、頭皮脂成分の影響が少ない優れた整髪性能を有する整髪剤の開発、整髪性能に影響を与える成分の解析などに好適に用いられることが期待されるものである。