【実施例1】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態例について適宜図面を参照して説明する。
【0013】
図1に本発明の一実施例に係る電気掃除機の外観図を示す。電気掃除機1は、掃除機本体2と、ホース部3と接続し手元操作スイッチSW等が設けられた操作管4と、伸縮自在に設けられた延長管5と、吸口体6とで構成されている。
【0014】
掃除機本体2は、吸引力を発生させる電動送風機2a、この電動送風機2aの吸引力で集塵した塵埃を収容する集塵部2bなどを備えている。なお、本実施形態例では、いわゆるサイクロン式の電気掃除機を例に挙げて説明するが、いわゆる紙パック式の電気掃除機に適用してもよい。
【0015】
ホース部3の一端は、掃除機本体2の集塵部2bと連通するように掃除機本体2の接続口2cに接続されている。また、ホース部3の他端は、操作管4の一端に接続されている。
【0016】
操作管4は、手元操作スイッチSWなどを備えたハンドル4a、掃除機本体2から給電される図示しない給電端子などを備えている。この給電端子には、延長管5の一端に設けられる図示しない通電端子が接続される。
【0017】
操作管4の手元操作スイッチSWを操作することによって、電動送風機2aの運転と停止や強中弱の切り替え、吸口体6に設けられたモータ15(
図4参照)の運転と停止が可能となっている。
【0018】
延長管5は、外管5aと内管5bとを備え、外管5aの一端部に内管5bの一端部が挿入されている。さらに外管5aと内管5bとの内側に設けられた図示しない通風路が連通するように連結されて、延長管5は伸縮自在に構成されている。なお、
図1は、延長管5が最短の状態を図示している。
【0019】
図2に本発明の一実施例に係る寝具用吸口体の上面図と、
図3に底面図を示す。寝具用吸口体6は、上ケース7、下ケース8により外郭が構成され、これを前輪9と後輪10により支持する。下ケース8の前縁は進行方向に対して、進行の妨げにならないように丸みを付けている。上ケース7、下ケース8、前輪9、後輪10は合成樹脂で形成される。
【0020】
寝具用吸口体6の後方には、左右(幅)方向の中央部に位置して自在継手管11が接続され、自在継手管11の端子12には、ホース部3を介して本体から交流電源が供給される。この自在継手管11は、第1の接続管13と第2の接続管14を備えている。第1の接続管13は一端が寝具用吸口体6に回動可能に接続され、被掃除面に対して略水平な状態から略垂直な状態まで回動可能である。また第1の接続管13の他端は、寝具用吸口体6に対し左右方向に回動可能な第2の接続管14の一端と接続されている。第2の接続管14の他端には延長管5が接続される。この自在継手管11は、延長管5を被掃除面に対して略垂直とした状態において、その延長管5を寝具用吸口体6の左右方向に向かって倒すことができる機能を有している。このため、手元操作部4左右方向の何れかに捻ることで、寝具用吸口体6を左右方向の何れかに略90度回転させ、寝具用吸口体6の左右方向を移動方向にした掃除が可能であり、ベッドやふとんを壁際に配置した場合に、寝具用吸口体6を壁際に沿って移動することが可能となっている。
【0021】
寝具類などの掃除では、床にふとんを敷いて掃除機をかける場合や、ベッド上の寝具類を掃除する場合の他に、ベランダにふとんを干した状態で掃除する場合が考えられる。
【0022】
床にふとん敷いて掃除をする際や、ベッド上の寝具類を掃除機する際では、寝具用吸口体6を延長管5に差し込む場合や、手元操作部4に直接取り付ける場合があり、自在継手管11の可動領域が大きいほうが望ましい。
【0023】
特に、ふとんをベランダに干した状態で掃除機をする場合、ベランダの外側のふとんには、ふとんに対して自在継手管11を略水平な状態にして掃除をする必要がある。
【0024】
本実施例では、自在継手管11を備えているので、自在継手管11を被掃除面略水平まで稼動させることができる。これにより、無理な姿勢をすることなく掃除をすることが出来る。
【0025】
また、下ケース8の底面は、前輪9の最下点から20mm程度高く設定している。これは、寝具等を掃除する際、前輪9の最下点から下ケース8の底面の距離が短いと、寝具用吸口体6の前縁が寝具にのめりこみ、進まなくなるためである。
【0026】
図4を用いて、寝具用吸口体6の内部構成を説明する。下ケース8には、モータ15、カム付きギア17、カム付きギア17の両脇にばね18、カム付きギア17の回転に連動して上下に振動する振動子20および振動子ばね21が設置されており、モータカバー19により固定される。下ケース8の被掃除面には、ビータ24を取り付けるための略矩形の開口25が形成されている。ビータ24は、被掃除面側の底面に吸引口26を設け、上面が開口している略矩形の箱型形状で前面、後面と側面で形成している。下ケース8の被掃除面側から装着され、振動子20と接合する。
【0027】
図5に示すビータ24は被掃除面から見た図である。略矩形の箱型の底面に、多数の吸引口26を設け、長手方向に複数個の大きな凹凸部27を設けている。前側から見ると
図6に示すように、大きな凹凸部27は波状に形成されている。この波状の効果により、ビータ24と被掃除面との間で吸い込む流路を形成し、ごみが吸引口26を通過し、掃除機本体1に搬送される。
【0028】
ビータ24が振動し、被掃除面を叩く方向に運動しているとき、ビータ24の底面が平らで、被掃除面に略平行な面をなしていると、ビータ24の吸引口26は、被掃除面によって同時に塞がれてしまう。ところが、本実施例のようにビータ24の底面に凹凸部27があることで、徐々に吸引口26は塞がれるため流路を確保しやすい。このため、集塵性能を高めることが出来る。また、徐々に吸引口26に被掃除面が吸い付くので、操作性を向上させる効果もある。
【0029】
ここで、ビータ24は取り外しが可能である。振動子20から立ち上がった腕部23がビータ24の中央開口部28に挿入され、腕部23の先端に設けた固定ツメ23aが中央開口部28の段差部28aに嵌合する。取り外し時は、一方の手でビータ24を押さえ、他方の手の指で固定ツメ23aを中央方向に力を加えると、中央開口部28の段差部28aから開放され、ビータ24を外すことができる。一方、取り付け時は、ビータ24の中央開口部28を振動子20の腕部23に押し込むだけで装着できる。
【0030】
このように、ビータの取り外しが工具などを用いず簡単に行うことができるので、ビータ24を外して、付着したごみや汚れを容易に取り除くことができる。またビータ24は、汚れた場合、水洗いすることが可能である。
【0031】
図7は
図2に示すA−A断面図である。ピニオンギア29とカム付きギア17は減速機を構成し、モータ15の回転を減速してカム付きギア17を駆動している。本実施の形態例では、ピニオンギア29の歯数は8、カム付きギア17の歯数は39としており減速比を約1:5としている。ピニオンギア29の歯数とカム付きギア17の歯数は互いに素の関係になっている。これは、ギアの特定の歯同士が、繰り返し当たり磨耗するのを防ぐためである。また、カム付きギア17は、上ケース7や下ケース8に使用した合成樹脂より硬いPOM(ポリアセタール)樹脂などの合成樹脂で形成される。
【0032】
カム付きギア17は回転中心に、焼入れしたステンレス製の軸(図示せず)を圧入している。軸の軸周りには、ローレット加工がされていて、圧入された後、軸が回るのを防いでいる。カム付きギア29に圧入された軸の両端には、回転を円滑にするためにワッシャ(図示せず)、軸受(図示せず)を挿入している。また、回転軸に使用しているステンレス鋼は、マルテンサイト系であるが、これはカム付きギア17にかかる衝撃荷重や繰り返し荷重のため、強度を考慮して焼入れの出来る材料を選定したためである。
【0033】
図4、
図5、
図7および
図8を用いて、吸口体6の動作を説明する。
ビータ24は、固定ツメ23aによって振動子20と固定される。
図4に示すようにビータ24のスライドリブ30は、ばねケース32のスリット31を介してばね18によって押される。ビータ24は、被掃除面の方向に力を受けて、振動子20を下方に引っ張る。振動子20は、振動子20に圧入された軸22aの軸周りに回転可能に支持された軸受22により、カム33の外周上である案内面上で支えられる。本実施の形態例では、ビータ24は、振動子20、ばね18により3点で支持される。振動子20は、略等しい両脇のばね18の略中心上に位置し、下ケース8の底面に対して水平に支持される。また、ばねは3つ以上であっても、振動子20とビータ24の固定位置を支点とするモーメントのつりあいが成り立つようにばねの位置を設置すれば、かまわない。
【0034】
モータ15からの回転は、ピニオンギア29とカム付きギア17より構成される減速機で減速されて伝達される。カム付きギア17の回転に同期して、カム33は回転する。振動子20の回転可能な軸受22は、カム33の外周上を運動する。振動子24は、被掃除面に垂直方向以外の運動を拘束されているため、
図7でカム33の上死点に軸受33が来るまで、振動子20は持ち上げられる。
【0035】
ビータ24は、振動子20に取り付けられているため、両脇のばね18を圧縮する。ビータ24は、モータ15の回転にともない、ばね18の反発力により押し下げられる。
図8に示すカム33の最下点で、軸受22が下死点まで移動し、モータ15の回転により再びビータ24は、両脇のばね18の圧縮を開始する。これを繰り返すことによって上下運動を行っている。
【0036】
ビータ24は、上下運動にともない伝達された振動を被掃除面に伝達する。伝達された運動は、被掃除面のほこりやごみを舞い上がらせる。このことにより、ごみをはく離しやすくすることができる。したがってこの状態で、吸口体が吸引を行えば集塵性能を向上させることが出来る。
【0037】
また、寝具等の被掃除面を清掃する際、被掃除面が吸い付いてしまうことがある。このような場合も、ビータ24に吸い付いたふとん等を、振動により振り払い操作力を低減させ掃除することが出来る。
【0038】
図9、
図10を用いて、カム形状と振動子20の上下振動速度を説明する。
図9はカム付きギア17を前側から見たときで、振動子20の軸受22が最下点(下死点34)に位置している場合を示す。カム付きギア17の回転(回転方向は38に示すように時計回りである)に伴い、振動子20の軸受22はカム33の外周上を運動することにより、上方向に移動する。そして回転角度θ1のとき、最上位点(上死点35)となり、速度はゼロになる。回転角度θ1を過ぎると、振動子20の軸受22は下降に転じ、角度θ2回転すると最下位点(下死点36)となり、速度はゼロになる。本実施例では、カム付きギア17の1回転につき、上下運動を2回行うカム形状となっている。
【0039】
図10は、カム付きギア17の回転角と振動子20の上下方向速度を示す。ここで、速度は、上方向をプラスに、下方向をマイナスで表している。
【0040】
このとき、下死点から上死点までの回転角度θ1が、上死点から下死点までの回転角度θ2より大きいので、モータ15の回転速度が同じでも、回転角度θ1と回転角度θ2が同じ形状のカムより振動子20の下降速度が速くなるので、ビータ24のたたき効果が増加し、被掃除面からの集塵性能が向上する。また、振動子20の下降速度を速くするためにモータ15の回転速度を速くする必要がなく騒音や振動の発生が抑えられる。
【0041】
また、ビータ24が上昇する時は、ばね18を圧縮する動作のため、モータ15の負荷電流が大きくなるが、本実施例では、回転角度θ1と回転角度θ2が同じ形状のカムとモータ15の回転速度が同じ場合、振動子20の上昇速度が遅くできるので、モータの最大負荷電流を小さくすることが可能である。
【実施例2】
【0042】
図11、
図12を用いて、本発明の第2の実施例によるカム形状と振動子20の上下振動速度を説明する。以下、第1の実施例と異なる点を説明する。その他の構成は第1の実施例と同一である。
図11はカム付きギア42を前側から見たときで、振動子20の軸受22が最下点(下死点43)に位置している場合を示す。カム付きギア42の回転(回転方向は48に示すように時計回りである)に伴い、振動子20の軸受22はカム46の円周上を運動することにより、振動子20は上方向に移動する。そして回転角度θ3のとき、最上位点(上死点44)となり、速度はゼロになる。回転角度θ3を過ぎると、振動子20の軸受22は下降に転じ、角度θ4回転すると最下位点(下死点45)となり、速度はゼロになる。本実施例では、カム付きギア42の1回転につき、上下運動を2回行うカム形状となっている。
【0043】
図12は、カム付きギア42の回転角と振動子20の上下方向速度を示す。ここで、速度は、上方向をプラスに、下方向をマイナスで表している。
【0044】
このとき、下死点から上死点までの回転角度θ3が、上死点から下死点までの回転角度θ4より大きいので、回転角度θ3と回転角度θ4が同じ形状のカムで、モータ15の回転速度が同じ場合より振動子20の下降速度が速くできるので、ビータ24のたたき効果が増加し、被掃除面からの集塵性能が向上できる。また、振動子20の下降速度を速くするためにモータ15の回転速度を速くする必要がなく、騒音や振動の発生が抑えられる。
【0045】
また、ビータ24が上昇する時は、ばね18を圧縮する動作なので、モータ15の負荷電流が大きくなるが、本実施例では、モータ15の回転速度が同じ場合、回転角度θ3と回転角度θ4が同じ形状のカムより振動子20の上昇速度が遅くできるので、モータの最大負荷電流を小さくすることができる。
【0046】
また本実施例では、カム46は、角度毎に角度の2乗に比例する量を半径方向に拡大、または減少させる形状となっているため、
図12に示すように、振動子20の上昇速度および下降速度をほぼ等加速度運動にすることができ、よりスムースな上下運動が可能となり、より騒音や振動の発生が抑えられる。
【0047】
また、本実施例のようにビータ24を略箱型形状としたことにより、
図8に示すように、ビータ24が最下方位置に到達した状態でもビータ24の上面端24aは、吸口体底面8aより下側には突出しない。したがって、ビータ24と吸口体底面8aとの間にシーツ等を挟み込むことがなく、上下運動を損なうことなく掃除効率を保てる。
【0048】
以上述べたように本形態例によれば、下死点から上死点までの回転角度が、上死点から下死点までの回転角度より大きいので、下死点から上死点までの回転角度と上死点から下死点までの回転角度が同じ形状のカムに比べ、モータの回転速度が同じ場合、振動子の下降速度が速くできるので、ビータのたたき効果が増加し、被掃除面からの集塵性能が向上できるという効果がある。また、振動子の下降速度を速くするためにモータの回転速度を速くする必要がなく、騒音や振動の発生が抑えられるという効果がある。また、モータの最大負荷電流を小さくすることができるという効果も得られる。