特許第6397686号(P6397686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397686
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】微粒子センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20060101AFI20180913BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   G01N15/06 D
   G01N27/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-160426(P2014-160426)
(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2016-38248(P2016-38248A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 武史
(72)【発明者】
【氏名】本村 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】大澤 敬正
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕和
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−195069(JP,A)
【文献】 特開2000−171429(JP,A)
【文献】 特開2012−118056(JP,A)
【文献】 特開2013−170950(JP,A)
【文献】 特開2011−145145(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0202943(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を含む被測定ガスが流通し、接地電位とされた金属製の通気管に装着され、
上記接地電位とは異なる第1電位とされ、上記被測定ガスを内部に取り入れるガス取入口を含むガス取入管を有する内側金具を備える
微粒子センサであって、
上記内側金具の径方向周囲を囲む筒状の金具包囲部を有し、上記通気管に装着されて上記接地電位とされる筒状の外側金具と、
上記内側金具と上記外側金具の金具包囲部との間に介在して両者を電気的に絶縁してなり、筒状で上記通気管内を流通する上記被測定ガスに接するガス接触部を有する筒状の絶縁スペーサと、を備え、
上記外側金具の金具包囲部は、
上記絶縁スペーサの上記ガス接触部よりも上記通気管の径方向内側まで突出する形態を有する
微粒子センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子センサであって、
前記外側金具の前記金具包囲部は、
前記ガス取入管の前記ガス取入口よりも前記径方向内側まで突出してなり、かつ、
上記ガス取入管の厚み方向で上記金具包囲部の外側から、上記ガス取入口の少なくとも一部を視認できる形態のガス導入窓を有する
微粒子センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の微粒子センサであって、
前記金具包囲部の前記ガス導入窓は、
前記ガス取入管の前記厚み方向で上記金具包囲部の外側から、上記ガス取入口の全体を視認できる形態を有する
微粒子センサ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の微粒子センサであって、
気中放電で発生させたイオンを、前記ガス取入管の内部に取り入れられた前記被測定ガス中に含まれる前記微粒子に付着させて帯電した帯電微粒子を生成し、前記第1電位と前記接地電位との間に上記帯電微粒子の量に応じて流れる信号電流を用いて、上記被測定ガス中の上記微粒子の量を検知する
微粒子センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含む被測定ガスが流通する金属製の通気管に装着されて用いられ、被測定ガスを内部に取り入れるガス取入口を含むガス取入管を有する内側金具を備える微粒子センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属製の通気管に装着されて用いられ、通気管内を流通する被測定ガス中に含まれる微粒子の量を検知する微粒子センサが知られている。例えば、内燃機関(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなど)の排気管に装着され、排気ガス中に含まれるススなどの微粒子の量を検知する微粒子センサなどである。より具体的には、排気管を流通する排気ガスを取り入れ、この取入ガス中の微粒子にイオンを付着させて帯電微粒子とした後、取入ガスと共に排気管へ排出する微粒子センサがある。
【0003】
このような微粒子センサは、例えば、ガス取入管を有する内側金具と外側金具と絶縁スペーサとを備える。このうち内側金具は、接地電位とは異なる第1電位とされ、ガス取入管内に排気ガスを取り入れるためのガス取入口を有する金属製の部材である。また、外側金具は、内側金具の径方向周囲を囲み、排気管に装着されて接地電位とされる筒状の部材である。また、絶縁スペーサは、内側金具と外側金具との間に介在して両者を電気的に絶縁する筒状の部材である。この絶縁スペーサは、その一部(ガス接触部)が排気管内に露出して排気管内を流通する排気ガスに接する形態を有する。このような微粒子センサは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-220423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、絶縁スペーサは、上述のように、そのガス接触部が排気管内を流通する排気ガスに接するため、排気ガス中に含まれる異物(例えばススや水滴など)がガス接触部に付着することがある。このような異物がガス接触部に付着すると、絶縁スペーサの絶縁性が低下して、第1電位とされる内側金具と接地電位とされる外側金具との間の絶縁性が低下し、排気ガスに含まれる微粒子の量の検知が適切に行えないおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ガス取入管を有する内側金具と外側金具との間に介在する絶縁スペーサの絶縁性が低下するのを抑制し、被測定ガス中に含まれる微粒子の量を適切に検知できる微粒子センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、微粒子を含む被測定ガスが流通し、接地電位とされた金属製の通気管に装着され、上記接地電位とは異なる第1電位とされ、上記被測定ガスを内部に取り入れるガス取入口を含むガス取入管を有する内側金具を備える微粒子センサであって、上記内側金具の径方向周囲を囲む筒状の金具包囲部を有し、上記通気管に装着されて上記接地電位とされる筒状の外側金具と、上記内側金具と上記外側金具の金具包囲部との間に介在して両者を電気的に絶縁してなり、筒状で上記通気管内を流通する上記被測定ガスに接するガス接触部を有する筒状の絶縁スペーサと、を備え、上記外側金具の金具包囲部は、上記絶縁スペーサの上記ガス接触部よりも上記通気管の径方向内側まで突出する形態を有する微粒子センサである。
【0008】
この微粒子センサでは、外側金具の金具包囲部が、絶縁スペーサのガス接触部よりも通気管の径方向内側まで突出する形態を有する。外側金具の金具包囲部をこのような形態とすると、絶縁スペーサのガス接触部に通気管内を流通する被測定ガスが直接当たり難くなるので、ガス接触部に被測定ガス中に含まれる異物(ススや水滴など)が付着するのを抑制できる。従って、この微粒子センサでは、第1電位とされるガス取入管を有する内側金具と、接地電位とされる外側金具の金具包囲部との間に介在する絶縁スペーサの絶縁性が低下するのを抑制でき、被測定ガス中に含まれる微粒子の量を適切に検知できる。
【0009】
なお、「絶縁スペーサ」は、前述のように、通気管内を流通する被測定ガスに接する部位(ガス接触部)を有する形態である。具体的には、例えば、「ガス接触部」の一部または全部が、通気管の内周面よりも径方向内側に位置する形態が挙げられる。或いは、「ガス接触部」が通気管内を臨むが、「ガス接触部」の全体が通気管の内周面よりも径方向外側に位置する形態としてもよい。
【0010】
外側金具の「金具包囲部」は、前述のように、絶縁スペーサのガス接触部よりも通気管の径方向内側まで突出する形態である。具体的には、絶縁スペーサのガス接触部よりも通気管の径方向内側に位置するが、ガス取入管のガス取入口までは達しない形態としてもよいし、或いは、ガス取入管のガス取入口を越えて、このガス取入口よりも更に通気管の径方向内側に位置する形態としてもよい。
【0011】
更に、上記の微粒子センサであって、前記外側金具の前記金具包囲部は、前記ガス取入管の前記ガス取入口よりも前記径方向内側まで突出してなり、かつ、上記ガス取入管の厚み方向で上記金具包囲部の外側から、上記ガス取入口の少なくとも一部を視認できる形態のガス導入窓を有する微粒子センサとすると良い。
【0012】
ガス取入口からガス取入管内に取り入れられる被測定ガスの量は、通気管を流通する被測定ガスの流速の影響を受け易い。このため、被測定ガスに含まれる微粒子の量の検知も、被測定ガスの流速の影響を受け易く、検知精度を向上させるのが難しい。
これに対し、上述の微粒子センサでは、外側金具の金具包囲部が、ガス取入管のガス取入口よりも通気管の径方向内側まで突出している。外側金具の金具包囲部をこのような形態とすると、通気管を流通する被測定ガスの流速が大きく変化した場合でも、ガス取入口の近傍においては、被測定ガスの流速の変化を緩和できる。このため、ガス取入口からガス取入管内に取り入れられる被測定ガスの量の変化も少なくなり、被測定ガスの取入量が安定する。従って、この微粒子センサでは、通気管を流通する被測定ガスの流速の影響を受け難くなり、被測定ガスに含まれる微粒子の量を精度良く検知できる。
【0013】
その一方で、この外側金具の金具包囲部は、ガス取入管の厚み方向で金具包囲部の外側から、ガス取入口の少なくとも一部を視認できる形態のガス導入窓を有する。このため、金具包囲部の径方向外側を流れる被測定ガスを、ガス導入窓を通じて直接、ガス取入口まで導くことができるので、通気管内を流通する被測定ガスをガス取入管内に直ちに取り入れることができる。従って、被測定ガス中の微粒子量の検知を応答性良く行うことができる。
【0014】
更に、上記の微粒子センサであって、前記金具包囲部の前記ガス導入窓は、前記ガス取入管の前記厚み方向で上記金具包囲部の外側から、記ガス取入口の全体を視認できる形態を有する微粒子センサとすると良い。
【0015】
この微粒子センサでは、外側金具のガス導入窓を、ガス取入管の厚み方向で金具包囲部の外側から、ガス取入口の全体を視認できる形態としているので、金具包囲部の径方向外側を流れる被測定ガスを、このガス導入窓を通じて、より確実にガス取入口まで導くことができる。このため、被測定ガスをガス取入管内により早く取り入れることができ、被測定ガス中の微粒子量の検知をより応答性良く行うことができる。
【0016】
更に、上記のいずれかに記載の微粒子センサであって、気中放電で発生させたイオンを、前記ガス取入管の内部に取り入れられた前記被測定ガス中に含まれる前記微粒子に付着させて帯電した帯電微粒子を生成し、前記第1電位と前記接地電位との間に上記帯電微粒子の量に応じて流れる信号電流を用いて、上記被測定ガス中の上記微粒子の量を検知する微粒子センサとすると良い。
【0017】
この微粒子センサでは、上述の帯電微粒子の量に応じて流れる信号電流を用いて被測定ガス中の微粒子の量を検知するが、微粒子の信号電流は微小となる。これに対し、本発明では、第1電位とされるガス取入管を有する内側金具と、接地電位とされる外側金具の金具包囲部との間に介在する絶縁スペーサの絶縁性の低下を抑制しているため、第1電位と接地電位との間の漏れ電流を抑制し、これらの間を流れる微小な信号電流の量を適切に検知できる。かくして、被測定ガス中に含まれる微粒子の量を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係り、微粒子検知システムの概略構成を示す説明図である。
図2】実施形態に係る微粒子センサの、排気管に取り付けた状態における平面図である。
図3】実施形態に係る微粒子センサの、排気管に取り付けた状態における縦断面図である。
図4】実施形態に係る微粒子センサの、排気管に取り付けた状態における図3の断面とは直交する縦断面における縦断面図である。
図5】実施形態に係る微粒子センサの分解斜視図である。
図6】実施形態に係る微粒子センサにおける微粒子の取り入れ、帯電、排出の様子を模式的に示す説明図である。
図7】比較例に係る微粒子センサの、排気管に取り付けた状態における平面図である。
図8】実施例及び比較例について、排気管内を流通する排気ガスの流速と、ガス取入口から取り入れられる排気ガスの流入量、及び、ガス排出口から排出される排気ガスの流出量との関係を示すグラフである。
図9】変形形態1に係る微粒子センサの、排気管に取り付けた状態における平面図である。
図10】変形形態2に係る微粒子センサの、排気管に取り付けた状態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、微粒子センサ10を含む微粒子検知システム1の構成を示す。また、図2図5に、本実施形態に係る微粒子センサ10を示す。なお、図2図4において、微粒子センサ10の軸線方向GH(図中、上下方向)のうち、ガス取入管25が配置された側(図中、上方)を先端側GS、これと反対側のケーブル160が延出する側(図中、下方)を基端側GKとする。
微粒子検知システム1は、内燃機関(エンジン)ENGの排気管(通気管)EPを流通する排気ガス(被測定ガス)EG中に含まれる微粒子S(ススなど)の量を検知する。この微粒子検知システム1は、主として、本実施形態に係る微粒子センサ10と、回路部200と、圧送ポンプ300とから構成される(図1参照)。
【0020】
まず、微粒子センサ10について説明する(図1図5参照)。この微粒子センサ10は、接地電位PVEとされた金属製の排気管EPに装着される。具体的には、微粒子センサ10は、排気管EPのうち、取付開口EPOが設けられた取付部EPTに装着され、微粒子センサ10のうち内側金具20の先端側部分をなすガス取入管25が、取付開口EPOを通じて排気管EP内に配置される。そして、ガス取入口53hからガス取入管25内に取り入れた取入ガスEGI中の微粒子Sに、イオンCPを付着させて帯電微粒子SCとし、取入ガスEGIと共にガス排出口63hから排気管EPへ排出する。この微粒子センサ10は、ガス取入管25を有する内側金具20、針状電極体80、補助電極体90、外側金具100、第1絶縁スペーサ140、第2絶縁スペーサ150、ケーブル160等から構成される。
【0021】
このうち内側金具20は、外形円柱状で金属からなる。この内側金具20は、後述する回路部200のうち第1電位PV1とされる内側回路ケース250等に、ケーブル160の第1電位配線166を介して導通しており、接地電位PVEとは異なる第1電位PV1とされる。この内側金具20は、基端側GKから先端側GSへ順に、内筒30と、パイプホルダ40と、ノズル部材50と、混合排出部材60と、蓋部材70とから構成される。このうち、ノズル部材50、混合排出部材60及び蓋部材70が、ガス取入管25を構成する。
【0022】
内筒30は、軸線方向GHに延びる円筒状でステンレス製の部材である。この内筒30は、後述するケーブル160の先端部160sに外嵌されて、ケーブル160の第1電位配線166に加締め接続されている。また、内筒30の内部には、円柱状で絶縁性のセパレータ35が保持されている。このセパレータ35のうち、中央の貫通孔35hを除く4つの貫通孔には、後述するケーブル160の第2電位配線161、補助電位配線162、第1ヒータ接続配線163a及び第2ヒータ接続配線163bがそれぞれ挿通されている。また、この内筒30の内部のうちセパレータ35よりも基端側GKにおいて、後述するケーブル160のエアパイプ164の先端部164sが開放されている。
【0023】
パイプホルダ40は、軸線方向GHに延びるステンレス製の部材であり、内筒30の先端部に嵌め込まれ固定されて、内筒30に導通している。パイプホルダ40は、円柱状の保持部41と、この保持部41の周縁から先端側GSに延出した円筒状の筒壁部43と、保持部41から径方向外側に膨出する円環状のフランジ部45とからなる。このうち保持部41には、軸線方向GHに貫通する針状電極挿通孔41h、補助電極挿通孔41i、及び通気貫通孔41jが設けられている。針状電極挿通孔41hには、後述する針状電極体80及び針状電極絶縁パイプ85が挿通、保持されている。また、補助電極挿通孔41iには、後述する補助電極体90及び補助電極絶縁パイプ95が挿通、保持されている。一方、通気貫通孔41jは、基端側GKで内筒30の内部に連通している。
【0024】
ノズル部材50は、軸線方向GHに延びる有底円筒状でステンレス製の部材であり、パイプホルダ40の筒壁部43の先端部に嵌め込まれ固定されて、パイプホルダ40に導通している。ノズル部材50は、その底部に位置するノズル部51と、このノズル部51の周縁から先端側GSに延出した円筒状の筒壁部53とからなる。このうちノズル部51は、中央が先端側GSに向かう凹形状とされ、その中心には、微細な透孔が形成されて、ノズル51nとなっている。一方、筒壁部53には、1箇所、排気管EPの下流側に向けて開口するガス取入口53hが設けられている。このガス取入口53hは、排気管EP内を流通する排気ガスEGを、ガス取入管25内に取り入れるための開口(具体的には円孔)である。
【0025】
パイプホルダ40にノズル部材50を固定することで、パイプホルダ40の保持部41と、パイプホルダ40の筒壁部43と、ノズル部材50のノズル部51との間には、円柱状の放電空間DSが形成される。この放電空間DS内では、後述する針状電極体80の針状先端部83が先端側GSに向けて突出しており、ノズル部51の凹形状をなす対向面51tと向き合っている。
【0026】
混合排出部材60は、軸線方向GHに延びるステンレス製の部材であり、ノズル部材50の筒壁部53の先端部に嵌め込まれ固定されて、ノズル部材50に導通している。混合排出部材60は、基端側GKに位置する基端部61と、この基端部61の周縁から先端側GSに延出した円筒状の筒壁部63とからなる。このうち基端部61は、径方向内側に膨出した捕集極62により、径方向内側の空間がスリット状に狭められた形態とされている。この捕集極62には、ノズル部材50のガス取入口53hの位置に合わせて、切り欠き部62cが形成されている。この切り欠き部62cによって、ガス取入口53hから、後述する混合領域MXの円柱状混合領域MX1に連通する引き込み路HKが形成される。一方、筒壁部63には、1箇所、排気管EPの下流側に向けて開口するガス排出口63hが設けられている。このガス排出口63hは、ガス取入管25内の取入ガスEGI及び空気ARを排気管EPへ排出するための開口(具体的には円孔)である。また、この筒壁部63の先端部は、円板状でステンレス製の蓋部材70が被せられて閉塞されている。
【0027】
ノズル部材50に混合排出部材60を固定することで、ノズル部材50のノズル部51と、ノズル部材50の筒壁部53と、混合排出部材60の基端部61との間には、円柱状混合領域MX1をなす円柱状の空間が形成される。一方、混合排出部材60の基端部61の捕集極62で構成されるスリット状の内部空間は、スリット状混合領域MX2をなし、円柱状混合領域MX1とスリット状混合領域MX2によって混合領域MXが形成される。スリット状混合領域MX2内には、後述する補助電極体90の補助電極部93が基端側GKに向けて突出している。また、混合排出部材60の基端部61と、混合排出部材60の筒壁部63と、蓋部材70との間の円柱状の空間は、ガス排出路EXをなす。このガス排出路EXは、混合領域MXのスリット状混合領域MX2と連通している。このガス排出路EX内には、後述する補助電極体90の曲げ返し部92が配置されている。
【0028】
次に、針状電極体80について説明する。この針状電極体80は、タングステン線からなり、直棒状の延出部81と、その先端部分に位置し、針状に尖った形状とされた第2放電電極をなす針状先端部83とからなる。このうち延出部81の基端部は、セパレータ35内で、後述するケーブル160の第2電位配線161に接続されている。また、延出部81は、その径方向周囲を絶縁セラミックからなる円筒状の針状電極絶縁パイプ85で被覆されている。そして、これら針状電極体80の延出部81及び針状電極絶縁パイプ85は、パイプホルダ40の保持部41の針状電極挿通孔41h内に挿通されて、保持部41に保持されている。一方、針状電極体80の針状先端部83は、前述のように、放電空間DS内で、先端側GSに向けて突出し、ノズル部51の対向面51tと向き合っている。
【0029】
次に、補助電極体90について説明する。この補助電極体90は、ステンレス線からなり、直棒状の延出部91と、その先端側GSでU字状に曲げ返された曲げ返し部92と、曲げ返し部92から基端側GKに延びる共に、先端が針状に尖った形状とされ補助電極をなす補助電極部93とからなる。このうち延出部91の基端部は、セパレータ35内で、後述するケーブル160の補助電位配線162に接続されている。また、延出部91は、その周囲をヒータ付きの補助電極絶縁パイプ95で被覆されている。そして、これら補助電極体90の延出部91及び補助電極絶縁パイプ95は、パイプホルダ40の保持部41の補助電極挿通孔41i内に挿通されて、保持部41に保持されている。一方、曲げ返し部92は、前述のように、ガス排出路EX内に配置されている。他方、補助電極部93は、混合領域MXのスリット状混合領域MX2内で、基端側GKに向けて突出している。
【0030】
補助電極絶縁パイプ95には、タングステンからなるヒータ96が埋設されており、補助電極絶縁パイプ95の基端部には、ヒータ96の2つのヒータ端子96a,96bが形成されている。これらのヒータ端子96a,96bは、セパレータ35内からセパレータ35よりも先端側GSに延びるヒータ接続端子170a,170bに接続されている。更に、これらのヒータ接続端子170a,170bは、セパレータ35内で、後述するケーブル160の第1ヒータ接続配線163a及び第2ヒータ接続配線163bに接続されている。
【0031】
次に、外側金具100について説明する。この外側金具100は、円筒状で金属からなり、内側金具20の径方向周囲を内側金具20とは離間した状態で囲むと共に、接地電位PVEとされた排気管EPに装着されて接地電位PVEとされる。外側金具100は、主体金具110と、栓金具120と、外筒130とから構成される。
【0032】
主体金具110は、軸線方向GHに延びる筒状でステンレス製の部材である。この主体金具110は、内側金具20のうち主にパイプホルダ40の径方向周囲に、パイプホルダ40とは離間して配置されている。主体金具110は、本体部111とフランジ部113と金具包囲部115とからなる。このうち本体部111は、円筒状をなし、自身の内部に軸線方向GHに貫通する収容孔111hを有する。また、この本体部111の基端部は、その内周に雌ネジが形成された雌ネジ部112となっている。また、フランジ部113は、本体部111の先端から径方向外側に張り出した長円板形状を有する。このフランジ部113には、2つのボルト貫通孔113hが形成されている。
【0033】
一方、金具包囲部115は、円筒状をなし、フランジ部113から先端側GSに突出している。具体的には、金具包囲部115は、後述する第1絶縁スペーサ140のガス接触部141よりも先端側GS(排気管EPの径方向内側CS)まで、更には、ガス取入管25のガス取入口53hよりも先端側GS(径方向内側CS)まで突出している。この金具包囲部115には、ガス導入窓115hが形成されている。このガス導入窓115hは、ガス取入管25の厚み方向DH(ガス取入管25の径方向)で金具包囲部115の外側から、ガス取入口53hの全体を視認できる形態とされている(図2参照)。具体的には、ガス導入窓115hは、金具包囲部115の先端側GS(図2中、上方)に開口する平面視U字状の切り欠きからなる。
【0034】
栓金具120は、軸線方向GHに延びる筒状でステンレス製の部材である。この栓金具120は、その外周に雄ネジが形成された雄ネジ部121を有し、この雄ネジ部121が、主体金具110の雌ネジ部112に螺合することで、栓金具120が主体金具110に接続、導通されている。また、栓金具120は、内側金具20のうち主に内筒30の径方向周囲に、内筒30とは離間して配置されている。また、栓金具120は、雄ネジ部121よりも先端側GSに、雄ネジ部121より小径な先端押圧部123を有する。一方、雄ネジ部121より基端側GKに、径方向外側に向けてフランジ状に張り出して、外周が六角形状とされた六角部125を有する。
【0035】
栓金具120の雄ネジ部121を主体金具110の雌ネジ部112に螺入すると、栓金具120が先端側GSに進み、その先端押圧部123が、後述する第2絶縁スペーサ150を先端側GSに押圧する。すると、この第2絶縁スペーサ150は、パイプホルダ40のフランジ部45を先端側GSに向けて押圧する。更に、このフランジ部45は、後述する第1絶縁スペーサ140を先端側GSに向けて押圧する。第1絶縁スペーサ140は、板パッキン118を介して主体金具110の本体部111の収容孔111hに係合する。これにより、栓金具120と共に、内側金具20のパイプホルダ40、第1絶縁スペーサ140、第2絶縁スペーサ150、及び板パッキン118が、主体金具110に保持され、一体化される。
【0036】
外筒130は、軸線方向GHに延びる円筒状でステンレス製の部材である。この外筒130の先端部は、栓金具120の基端部に全周にわたりレーザ溶接され、栓金具120に導通している。この外筒130は、内側金具20のうち内筒30の基端側部分、及び後述するケーブル160の先端部160sの径方向周囲に、内筒30とは離間して配置されている。また、外筒130の基端部131は、その外形が先端側GSよりも縮径されて、ケーブル160に加締め固定されている。これにより、外筒130の基端部131は、後述するケーブル160の最も外周の第3絶縁体層169を貫通して、その内側の接地電位配線168に接続、導通している。また、外筒130とケーブル160との間には、円筒状で絶縁ゴムからなるグロメット135が介在している。
【0037】
次に、第1絶縁スペーサ140について説明する。この第1絶縁スペーサ140は、軸線方向GHに延びる円筒状でアルミナ製の部材である。第1絶縁スペーサ140は、内側金具20と外側金具100との間に介在して両者を電気的に絶縁する。具体的には、内側金具20のパイプホルダ40の保持部41のうち、フランジ部45よりも先端側部分と、外側金具100のうち主体金具110との間に配置されている。
【0038】
この第1絶縁スペーサ140の先端側部分は、微粒子センサ10を排気管EPに装着した状態で、排気管EP内に露出し(排気管EP内を臨み)、排気管EP内を流通する排気ガスEGに接するガス接触部141とされている。このガス接触部141は、その先端に位置して先端側GS(排気管EPの径方向内側CS)を向くC環状の内側端面141sを有する。前述したように、外側金具100の主体金具110の金具包囲部115は、この第1絶縁スペーサ140のガス接触部141よりも先端側GS(径方向内側CS)まで突出している。従って、第1絶縁スペーサ140は、ガス接触部141を含め、軸線方向GH(排気管EPの径方向CH)の全体が、外側金具100の主体金具110に囲まれている。このため、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141に、排気管EP内を流通する排気ガスEGが直接当たり難い。
【0039】
次に、第2絶縁スペーサ150について説明する。この第2絶縁スペーサ150は、軸線方向GHに延びる筒状でアルミナ製の部材である。この第2絶縁スペーサ150は、第1絶縁スペーサ140と共に、内側金具20と外側金具100との間に介在して両者を電気的に絶縁する。具体的には、第2絶縁スペーサ150は、内側金具20のパイプホルダ40の保持部41のうち、フランジ部45よりも基端側部分と、外側金具100のうち主体金具110との間に配置されている。
【0040】
微粒子センサ10の排気管EPへの取付けに当たっては、排気管EPのうち取付部EPTの取付開口EPOから、内側金具20のガス取入管25を排気管EP内に挿入すると共に、取付開口EPOに隣在して設けられたスタッドボルトEPBを、フランジ部113のボルト貫通孔113hに挿通し、ナットEPNで締結する。これにより、微粒子センサ10が排気管EPの取付部EPTに固定されると共に、外側金具100が排気管EPと同じ接地電位PVEとされる。なお、主体金具110のフランジ部113の先端面113sのうち、収容孔111hの周囲には、円環状のガスケット保持溝117が形成されており、排気管EPの取付部EPTと主体金具110とは、このガスケット保持溝117内に配置された銅製のガスケット119を介して気密に結合する。
【0041】
次に、ケーブル160について説明する。このケーブル160の中心部分には、銅線からなる第2電位配線161、補助電位配線162、第1ヒータ接続配線163a及び第2ヒータ接続配線163bと、樹脂からなる中空のエアパイプ164が配置されている。そして、これらの径方向周囲は、樹脂からなる第1絶縁体層165で被覆されている。更に、この第1絶縁体層165の径方向周囲は、銅細線を編んだ編組からなる第1電位配線166で包囲され、その径方向周囲は、樹脂からなる第2絶縁体層167で被覆されている。更に、この第2絶縁体層167の径方向周囲は、銅細線を編んだ編組からなる接地電位配線168で包囲され、その径方向周囲は、樹脂からなる第3絶縁体層169で被覆されている。
【0042】
ケーブル160の第2電位配線161は、前述のように、針状電極体80の延出部81に接続されている。また、補助電位配線162は、補助電極体90の延出部91に接続されている。また、第1ヒータ接続配線163aは、ヒータ接続端子170aを介してヒータ96の一方のヒータ端子96aに接続され、第2ヒータ接続配線163bは、ヒータ接続端子170bを介してヒータ96の他方のヒータ端子96bに接続されている。また、第1電位配線166は、内筒30に加締め接続されている。また、接地電位配線168は、外筒130の基端部131に加締め接続されている。また、エアパイプ164の先端部164sは、前述のように、内筒30内で開放されているので、先端部164sから放出された空気(圧縮空気)ARは、セパレータ35の貫通孔35h、パイプホルダ40の保持部41の通気貫通孔41jを通じて、放電空間DS内に流通する。
【0043】
次に、回路部200について説明する(図1参照)。この回路部200は、排気管EP外で、微粒子センサ10のケーブル160に接続されており、微粒子センサ10を駆動すると共に、後述する信号電流Isを検知する回路を有する。回路部200は、イオン源電源回路210と、補助電極電源回路240と、信号電流検知回路230及びヒータ通電回路226を含む計測制御回路220とを有する。
【0044】
イオン源電源回路210は、第1電位PV1とされる第1出力端211と、第2電位PV2とされる第2出力端212とを有する。第2電位PV2は、第1電位PV1に対して、正の高電位とされる。
補助電極電源回路240は、第1電位PV1とされる補助第1出力端241と、補助電極電位PV3とされる補助第2出力端242とを有する。この補助電極電位PV3は、第1電位PV1に対して、正の直流高電位であるが、第2電位PV2のピーク電位よりも低い電位とされる。
【0045】
計測制御回路220のうち信号電流検知回路230は、第1電位PV1とされる信号入力端231と、接地電位PVEとされる接地入力端232とを有する。この信号電流検知回路230は、後述する信号電流Isを検知する回路である。また、計測制御回路220のうちヒータ通電回路226は、PWM制御により補助電極絶縁パイプ95のヒータ96に通電してこれを加熱する回路であり、ケーブル160の第1ヒータ接続配線163aに接続される第1ヒータ通電端226aと、ケーブル160の第2ヒータ接続配線163bに接続される第2ヒータ通電端226bとを有する。
【0046】
回路部200において、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240は、第1電位PV1とされる内側回路ケース250に包囲されている。また、この内側回路ケース250は、絶縁トランス270の二次側鉄心271Bを収容して包囲すると共に、ケーブル160の第1電位配線166に導通している。絶縁トランス270は、その鉄心271が、一次側コイル272を捲回した一次側鉄心271Aと、電源回路側コイル273及び補助電極電源側コイル274を捲回した二次側鉄心271Bとに、分離して構成される。このうち一次側鉄心271Aは、接地電位PVEに導通し、二次側鉄心271Bは、第1電位PV1に導通している。
更に、イオン源電源回路210、補助電極電源回路240、内側回路ケース250、及び計測制御回路220は、接地電位PVEとされる外側回路ケース260に包囲されている。また、この外側回路ケース260は、絶縁トランス270の一次側鉄心271Aを収容して包囲すると共に、ケーブル160の接地電位配線168に導通している。
【0047】
計測制御回路220は、レギュレータ電源PSを内蔵している。このレギュレータ電源PSは、電源配線BCを通じて外部のバッテリBTで駆動される。レギュレータ電源PSを通じて計測制御回路220に入力された電力の一部は、絶縁トランス270を介して、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240に分配される。また、計測制御回路220は、マイクロプロセッサ202を有し、通信線CCを介して内燃機関ENGを制御する制御ユニットECUと通信可能となっており、前述した信号電流検知回路230の測定結果(信号電流Isの大きさ)などの信号を、制御ユニットECUに送信可能となっている。
【0048】
圧送ポンプ300は、圧縮空気ARを生成する圧縮空気源である。具体的には、圧送ポンプ300は、自身の周囲の大気(空気)を取り込んで、先端部分が外側回路ケース260及び内側回路ケース250内に差し込まれた送気パイプ310を通じて、ケーブル160のエアパイプ164に清浄な圧縮空気ARを圧送する。
【0049】
次いで、微粒子検知システム1の電気的機能及び動作について説明する(図6参照)。なお、図6は、微粒子検知システム1の電気的機能及び動作を理解容易のため模式的に示したものであり、他の図面等に記載の形態等と異なる部分が存在する。
針状電極体80は、ケーブル160の第2電位配線161を介して、イオン源電源回路210の第2出力端212に接続、導通しており、第2電位PV2とされる。一方、補助電極体90は、ケーブル160の補助電位配線162を介して、補助電極電源回路240の補助第2出力端242に接続、導通しており、補助電極電位PV3とされる。更に、内側金具20は、ケーブル160の第1電位配線166を介して、内側回路ケース250等に接続、導通しており、第1電位PV1とされる。加えて、外側金具100は、ケーブル160の接地電位配線168を介して、外側回路ケース260等に接続、導通しており、接地電位PVEとされる。
【0050】
従って、第1電位PV1とされる内側金具20のガス取入管25のノズル部51(対向面51t)と、これよりも正の高電位である第2電位PV2とされる針状先端部83との間では、気中放電(コロナ放電)が生じる。具体的には、正極となる針状先端部83の周りにコロナが発生する正針コロナPCを生じ、その雰囲気をなす大気(空気)のN2,O2等が電離等して、N3+,O2+等の正のイオンCPが発生する。一方で、エアパイプ164の先端部164sから放出された空気(圧縮空気)ARが、放電空間DS内に供給される。このため、発生したイオンCPの一部は、空気ARと共に、ノズル部51のノズル51nから混合領域MXに噴射される。
【0051】
空気ARが混合領域MXの円柱状混合領域MX1に噴射されると、この円柱状混合領域MX1の気圧が低下するため、ガス取入口53hから排気ガスEGが引き込み路HKを通じて、円柱状混合領域MX1に取り入れられる。この取入ガスEGIは、空気ARと混合され、混合領域MXのスリット状混合領域MX2及び排出路EXを経由して、ガス排出口63hから排出される。
【0052】
その際、排気ガスEG中にススなどの微粒子Sが含まれていた場合、この微粒子Sも混合領域MX内に取り入れられる。ところで、噴射された空気ARには、イオンCPが含まれている。このため、取り入れられた微粒子Sは、イオンCPが付着して、正に帯電した帯電微粒子SCとなり、この状態で、混合領域MX及び排出路EXを通って、ガス排出口63hから、空気ARと共に排出される。一方、混合領域MXに噴射されたイオンCPのうち、微粒子Sに付着しなかった浮遊イオンCPFは、補助電極体90の補助電極部93から斥力を受け、捕集極62をなす混合排出部材60に付着し、排出されない。
【0053】
前述の気中放電に伴って、イオン源電源回路210の第2出力端212から針状先端部83に、放電電流Idが供給される。この放電電流Idの多くは、ノズル部51に受電電流Ijとして流れ込み、イオン源電源回路210の第1出力端211へと流れる。一方、捕集極62で捕集された浮遊イオンCPFの電荷に起因する捕集電流Ihも、イオン源電源回路210の第1出力端211へと流れる。つまり、イオン源電源回路210の第1出力端211には受電電流Ijと捕集電流Ihの和である受電捕集電流Ijh(=Ij+Ih)が流れ込む。
【0054】
但し、この受電捕集電流Ijhは、帯電微粒子SCに付着して排出された排出イオンCPHの電荷に対応する電流分だけ、放電電流Idよりも小さい値となる。このため、放電電流Idと受電捕集電流Ijhとの差分(放電電流Id−受電捕集電流Ijh)に相当する信号電流Isが、第1電位PV1と接地電位PVEの間を流れてバランスする。従って、この帯電微粒子SCにより排出された排出イオンCPHの電荷量に対応する信号電流Isを信号電流検知回路230で検知することにより、排気ガスEG中の微粒子Sの量を検知できる。
なお、本実施形態の微粒子センサ10は、補助電極絶縁パイプ95にヒータ96を備えるので、補助電極絶縁パイプ95及び第1絶縁スペーサ140を加熱できる。これにより、補助電極絶縁パイプ95及び第1絶縁スペーサ140に付着したススを除去(蒸発、焼き飛ばし)し、これらの絶縁性を回復或いは維持させることができる。
このように、微粒子センサ10は、気中放電で発生させたイオンCPを、ガス取入管25の内部に取り入れられた排気ガスEG中に含まれる微粒子Sに付着させて帯電した帯電微粒子SCを生成し、第1電位PV1と接地電位PVEとの間に、帯電微粒子SCの量に応じて流れる信号電流Isを用いて排気ガスEG中の微粒子Sの量を検知する。
【0055】
以上で説明したように、本実施形態の微粒子センサ10では、外側金具100(主体金具110)の金具包囲部115が、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141よりも先端側GS(排気管EPの径方向内側CS)まで突出する形態を有する。外側金具100の金具包囲部115をこのような形態とすると、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141に排気管EP内を流通する排気ガスEGが直接当たり難くなるので、ガス接触部141に排気ガスEG中に含まれる異物(ススや水滴など)が付着するのを抑制できる。従って、この微粒子センサ10では、第1電位PV1とされるガス取入管25を有する内側金具20と、接地電位PVEとされる外側金具100の金具包囲部115との間に介在する第1絶縁スペーサ140の絶縁性が低下するのを抑制でき、排気ガスEG中に含まれる微粒子Sの量を適切に検知できる。
【0056】
ところで、ガス取入口53hからガス取入管25内に取り入れられる排気ガスEGの量は、排気管EPを流通する排気ガスEGの流速の影響を受け易い。このため、排気ガスEGに含まれる微粒子Sの量の検知も、排気ガスEGの流速の影響を受け易く、検知精度を向上させるのが難しい。
これに対し、本実施形態の微粒子センサ10では、外側金具100の金具包囲部115が、ガス取入管25のガス取入口53hよりも先端側GS(排気管EPの径方向内側CS)まで突出している。外側金具100の金具包囲部115をこのような形態とすると、排気管EPを流通する排気ガスEGの流速が大きく変化した場合でも、ガス取入口53hの近傍においては、排気ガスEGの流速の変化を緩和できる。このため、ガス取入口53hからガス取入管25内に取り入れられる排気ガスEGの量の変化も少なくなり、排気ガスEGの取入量が安定する。従って、この微粒子センサ10では、排気管EPを流通する排気ガスEGの流速の影響を受け難くなり、排気ガスEGに含まれる微粒子Sの量を精度良く検知できる。
【0057】
その一方で、この外側金具100の金具包囲部115は、ガス取入管25の厚み方向DHで金具包囲部115の外側から、ガス取入口53hの少なくとも一部、本実施形態ではガス取入口53hの全体を視認できる形態のガス導入窓115hを有する。このため、金具包囲部115の径方向外側を流れる排気ガスEGを、ガス導入窓115hを通じて直接、ガス取入口53hまで導くことができるので、排気管EP内を流通する排気ガスEGをガス取入管25内に直ちに取り入れることができる。従って、排気ガスEG中の微粒子S量の検知を特に応答性良く行うことができる。
【0058】
特にこの微粒子センサ10では、信号電流Isが微小となるが、第1電位PV1とされるガス取入管25を有する内側金具20と、接地電位PVEとされる外側金具100の金具包囲部115との間に介在する第1絶縁スペーサ140の絶縁性の低下を抑制しているため、第1電位PV1と接地電位PVEとの間の漏れ電流を抑制し、これらの間を流れる微小な信号電流Isの量を適切に検知できる。かくして、排気ガスEG中に含まれる微粒子Sの量を適切に検知することができる。
【0059】
(実施例及び比較例)
次いで、本発明の効果を検証するために行った試験の結果について説明する。まず、実施例として、上述の実施形態に係る微粒子センサ10を用意した(図2参照)。この微粒子センサ10では、前述のように、外側金具100(主体金具110)の金具包囲部115が、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141よりも先端側GS(排気管EPの径方向内側CS)まで突出し、更にはガス取入口53hよりも先端側GS(径方向内側CS)まで突出する形態を有する。
【0060】
一方、比較例として、図7に示す微粒子センサ901を用意した。この微粒子センサ901では、外側金具900の主体金具910に金具包囲部を設けないで、外側金具900(主体金具910)を、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141の内側端面141sよりも基端側GK(排気管EPの径方向外側CK)に位置する形態とした。それ以外は、実施形態の微粒子センサ10と同様とした。
【0061】
次に、これら実施例及び比較例の微粒子センサ10,901をそれぞれ排気管EPに装着して、排気管EP内を流れる排気ガスEGの流速(以下、単に「流速」とも言う)と、ガス取入口53hからガス取入管25内に取り入れられる排気ガスEGの流入量(以下、単に「流入量」とも言う)、及び、ガス排出口63hから排出される排気ガスEGの流出量(以下、単に「流出量」とも言う)との関係を調査した。その結果を図8に示す。なお、流出量は、流入量に、ノズル部材50のノズル51nから噴射された空気(圧縮空気)ARの量を加えた値となる。
【0062】
図8から明らかなように、比較例の微粒子センサ901では、排気ガスEGの流速の影響を受けて、排気ガスEGの流入量及び流出量が大きく変化することが判る。具体的には、排気ガスEGの流速が早くなるほど、排気ガスEGの流入量が大きく減少し、また、排気ガスEGの流出量も大きく減少することが判る。
これに対し、実施例の微粒子センサ10では、排気ガスEGの流速が変化しても、排気ガスEGの流入量及び流出量が殆ど変化せず、排気ガスEGの流速の影響を受け難いことが判る。これは、外側金具100の金具包囲部115が、ガス取入管25のガス取入口53hよりも先端側GS(径方向内側CS)まで突出しているために、排気ガスEGの流速が大きく変化しても、ガス取入口53hの近傍においては、排気ガスEGの流速の変化を緩和できる。このため、排気ガスEGの流入量及び流出量が安定すると考えられる。
このように、比較例の微粒子センサ901に比して、実施例の微粒子センサ10では、排気ガスEGの流速の影響を受け難いので、排気ガスEG中の微粒子Sの量を精度良く検知できる。
【0063】
(変形形態1)
次いで、変形形態1に係る微粒子センサ401について説明する(図9参照)。この微粒子センサ401では、外側金具400の形態が、実施形態に係る微粒子センサ10の外側金具100と異なる。具体的には、本変形形態1では、外側金具400のうち、主体金具410の金具包囲部415の軸線方向GH(排気管EPの径方向CH)の寸法が、実施形態の金具包囲部115よりも短くされており、金具包囲部415がガス取入口53hよりも基端側GK(径方向外側CK)に位置している。
【0064】
但し、この外側金具400の金具包囲部415でも、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141よりも先端側GS(径方向内側CS)まで突出している。このため、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141に排気ガスEG中の異物が付着するのを抑制できる。従って、この微粒子センサ401も、第1絶縁スペーサ140の絶縁性が低下するのを抑制でき、排気ガスEG中に含まれる微粒子Sの量を適切に検知できる。
【0065】
(変形形態2)
次いで、変形形態2に係る微粒子センサ501について説明する(図10参照)。この微粒子センサ501では、外側金具500の形態が、実施形態に係る微粒子センサ10の外側金具100と異なる。具体的には、本変形形態2では、外側金具500のうち、主体金具510の金具包囲部515の軸線方向GH(排気管EPの径方向CH)の寸法が、実施形態の金具包囲部115よりも長くされており、金具包囲部515がガス排出口63hよりも先端側GS(径方向内側CS)まで突出している。
【0066】
但し、実施形態に係る微粒子センサ10と同様に、この金具包囲部515に設けられた平面視U字状の切り欠きからなるガス導入窓515hは、ガス取入管25の厚み方向DHで金具包囲部515の外側から、ガス取入口53hの全体を視認できる形態とされている。加えて、このガス導入窓515hは、ガス取入管25の厚み方向DHで金具包囲部515の外側から、ガス排出口63hの全体を視認できる形態とされている。
【0067】
この外側金具500の金具包囲部515でも、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141よりも先端側GS(径方向内側CS)まで突出しているため、第1絶縁スペーサ140のガス接触部141に排気ガスEG中の異物が付着するのを抑制できる。従って、この微粒子センサ501も、第1絶縁スペーサ140の絶縁性が低下するのを抑制でき、排気ガスEG中に含まれる微粒子Sの量を適切に検知できる。
更に、実施形態に係る微粒子センサ10と同様に、外側金具500の金具包囲部515は、ガス取入管25のガス取入口53hよりも先端側GS(排気管EPの径方向内側CS)まで突出している。このため、この微粒子センサ501も、排気管EPを流通する排気ガスEGの流速の影響を受け難くなり、排気ガスEGに含まれる微粒子Sの量を精度良く検知できる。また、実施形態に係る微粒子センサ10と同様に、ガス導入窓115hは、ガス取入管25の厚み方向DHで金具包囲部515の外側から、ガス取入口53hの全体を視認できる形態とされている。このため、この微粒子センサ501も、排気ガスEG中の微粒子S量の検知を特に応答性良く行うことができる。
【0068】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態等では、ガス導入窓115h,515hの形態を、平面視U字状の切り欠きとしたが、これに限られない。例えば、ガス導入窓115h,515hに代えて、ガス導入窓を円状、楕円状、矩形状など貫通孔とすることもできる。
【0069】
また、実施形態及び変形形態2では、ガス導入窓115h,515hを、ガス取入管25の厚み方向DHで金具包囲部115,515の外側から、ガス取入口53hの全体を視認できる形態としたが、これに限られない。ガス導入窓を、ガス取入管25の厚み方向DHで金具包囲部115,515の外側から、ガス取入口53hの一部のみを視認できる形態としてもよい。この場合でも、金具包囲部115,515の径方向外側を流れる排気ガスEGを、ガス導入窓を通じて直接、ガス取入口53hまで導くことができるので、排気ガスEGをガス取入管25内に直ちに取り入れることができる。
【0070】
また、実施形態等では、微粒子Sを検知するために、放電空間DSでイオンCPを発生させ、このイオンCPを混合領域MXで微粒子Sと混合させた。しかし、微粒子センサの構成は、これに限られない。混合領域MXでイオンCPを発生させ、微粒子Sと混合するようにしてもよい。例えば、第2電位PV2される放電電極体を混合領域MXに配置し、内側金具20との間でコロナ放電を発生させる構成としてもよい。
更に、実施形態等では、圧送ポンプ300を用いて混合領域MX内に圧縮空気ARを噴射するようにした。しかし、圧送ポンプ300及び圧縮空気ARを用いず、混合領域MXに、排気ガス(被測定ガス)EGのみ供給される構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 微粒子検知システム
10,401,501 微粒子センサ
20 内側金具
25 ガス取入管
50 ノズル部材
53h ガス取入口
60 混合排出部材
63h ガス排出口
100,400,500 外側金具
110,410,510 主体金具
115,415,515 金具包囲部
115h,515h ガス導入窓
140 第1絶縁スペーサ
141 ガス接触部
141s 内側端面
CH (排気管の)径方向
CS 径方向内側
CK 径方向外側
DH (ガス取入管の)厚み方向
EP 排気管(通気管)
EG 排気ガス(被測定ガス)
EGI 取入ガス
S 微粒子
SC 帯電微粒子
CP イオン
PVE 接地電位
PV1 第1電位
Is 信号電流
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10