(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2抽出部は、前記発電装置の出力電力に影響する物理量の計測値を入力とし、前記発電装置の出力電力の予測値を前記第2変動緩和電力値として出力する発電予測部である、請求項1に記載の蓄電池制御装置。
前記第1抽出部は、前記発電装置の出力電力の計測値を入力とし、当該計測値についての第1期間にわたる第1移動平均値を前記第1変動緩和電力値として算出する第1移動平均部である、請求項1に記載の蓄電池制御装置。
前記第2抽出部は、前記発電装置の出力電力の計測値を入力とし、当該計測値についての前記第1期間よりも長い第2期間にわたる第2移動平均値を前記第2変動緩和電力値として算出する第2移動平均部である、請求項7に記載の蓄電池制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
(構成例)
図1は、第1の実施形態による蓄電池制御装置4の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、蓄電池制御装置4は、蓄電池制御システム1の一構成部である。蓄電池制御システム1は、大別して、発電装置の一例としての風力発電設備2と、蓄電池3と、蓄電池制御装置4と、第1計測器51と、第2計測器52とを備える。
【0012】
風力発電設備2は、風力を利用した発電方式によって電力を発生させる。風力発電設備2は、電力系統に連系し、風力発電設備2が発生させた電力すなわち風力発電出力を、電力系統に送電する。風力発電設備2は、例えば、発電機が内蔵された風車を1台以上備えている。
【0013】
蓄電池3は、風力発電設備2に併設され、風力発電設備2とともに電力系統に接続されている。蓄電池3は、後述する充放電指令値に基づいて、電力系統に送電される風力発電出力と充放電出力との合成出力の変動幅が、電力系統との連系条件が定義する変動幅に収まるように、風力発電出力の変動を吸収する。例えば、蓄電池3は、放電出力を、風力発電出力との合成出力として電力系統に送電することによって、合成出力の変動幅が出力の低下側において大きくなることを抑制する。また、蓄電池3は、風力発電出力の一部を充電することによって、合成出力の変動幅が出力の上昇側において大きくなることを抑制する。
【0014】
蓄電池3は、例えば、複数の蓄電池によって構成される蓄電池群およびこれら蓄電池群を電力系統に連系させる電力変換器などを備える。なお、蓄電池3は、蓄電池群を備えた構成に限定されず、単一の蓄電池を備えた構成であってもよい。また、蓄電池3に備えられる電池は充放電可能な二次電池であれば特定に限定されず、例えば、リチウムイオン二次電池などである。
【0015】
第1計測器51は、風力発電設備2の出力電力を計測する。第1計測器51は、風力発電設備2の出力電力の計測値(以下、風力発電出力計測値ともいう)Pwを、蓄電池制御装置4に出力する。風力発電出力計測値Pwは、発電装置の出力電力の計測値の一例である。
【0016】
第2計測器52は、蓄電池3の充放電電力を計測し、当該計測の結果(以下、充放電電力計測値ともいう)Pbmを、後述する積分器46に出力する。
【0017】
蓄電池制御装置4は、風力発電出力の変動に応じて、充放電出力を調整する。
図1に示すように、蓄電池制御装置4は、第1抽出部の一例としての第1の一次遅れ回路41と、第2抽出部の一例としての第2の一次遅れ回路42と、傾向判断部43と、電池指令補償部44と、加算器45と、積分器46とを備える。傾向判断部43および電池指令補償部44は、例えば、これらの構成部43、44の機能を有する演算器によって具現化することができる。
【0018】
(第1の一次遅れ回路41)
第1の一次遅れ回路41は、第1の時定数T1を有する。第1の時定数T1は、例えば、20分程度の時間に相当する時定数である。
図1に示すように、第1の一次遅れ回路41の伝達関数G(s)は、例えば、1/(T1s+1)である。第1の一次遅れ回路41は、風力発電出力計測値Pwを入力とし、入力された風力発電出力計測値Pwを、伝達関数すなわち第1の時定数T1に応じた出力値(以下、第1の一次遅れ出力値ともいう)Pt1sに変換する。
【0019】
第1の一次遅れ出力値Pt1sは、第1周期変動を緩和した発電装置の出力電力を示す第1変動緩和電力値の一例である。なお、本実施形態では、第1周期変動として、例えば、20分程度の時間を変動周期とした短周期変動を扱う。第1の一次遅れ回路41は、第1の一次遅れ出力値Pt1sを電池指令補償部44に出力する。
【0020】
(第2の一次遅れ回路42)
第2の一次遅れ回路42は、第1の時定数T1よりも大きい第2の時定数T2を有する。第2の時定数T2は、例えば、5時間程度あるいは6時間程度の時間に相当する時定数である。
図1に示すように、第2の一次遅れ回路42の伝達関数G(s)は、例えば、1/(T2s+1)である。第2の一次遅れ回路42は、風力発電出力計測値Pwを入力とし、入力された風力発電出力計測値Pwを、伝達関数すなわち第2の時定数T2に応じた出力値(以下、第2の一次遅れ出力値ともいう)Pt2sに変換する。
【0021】
第2の一次遅れ出力値Pt2sは、第1周期変動よりも変動周期が長い第2周期変動を緩和した発電装置の出力電力を示す第2変動緩和電力値の一例である。なお、本実施形態では、第2周期変動として、例えば、6時間程度の時間を変動周期とした長周期変動を扱う。第2の一次遅れ回路42は、第2の一次遅れ出力値Pt2sを傾向判断部43に出力する。
【0022】
(傾向判断部43)
傾向判断部43は、第2の一次遅れ出力値Pt2sを入力とする。傾向判断部43は、入力された第2の一次遅れ出力値Pt2sの変化量に基づいて、長周期変動の傾向を判断する。そして、傾向判断部43は、長周期変動の傾向を示す傾向判断値の一例として、フラグVflagを算出する。
【0023】
ここで、Vflagは、風力発電出力の長周期変動の変動方向を示す。傾向判断部43は、長周期変動の変動方向が、低下方向であると判断したときは、Vflagの算出値を“−1”にする。傾向判断部43は、長周期変動の変動方向が、上昇方向であると判断したときは、Vflagの算出値を“+1”にする。傾向判断部43は、長周期変動の変動方向が、低下方向とも上昇方向ともいえないと判断したときは、Vflagの算出値を“0”にする。傾向判断部43は、算出されたVflagを電池指令補償部44に出力する。
【0024】
(電池指令補償部44)
電池指令補償部44は、蓄電池制御装置4から蓄電池3に対して出力される充放電指令値を、充放電指令値の生成前に事前に補償する。電池指令補償部44は、第1の一次遅れ出力値Pt1sを、第2の一次遅れ出力値Pt2sの変化量に基づく補償値によって補償することで、充放電指令値を事前に補償する。
【0025】
具体的には、電池指令補償部44は、第1の一次遅れ出力値Pt1sを、風力発電出力と充放電出力との合成出力値の仮目標値とする。また、電池指令補償部44は、傾向判断部43から入力されたVflagに基づいて、ゲインを算出する。ゲインは、補償値の一例である。電池指令補償部44は、算出されたゲインを、仮目標値である第1の一次遅れ出力値Pt1sに対して加えたり減じたりすることで、風力発電出力と充放電出力との合成出力値の目標値(以下、合成出力目標値ともいう)Ptを算出する。
【0026】
合成出力目標値Ptは、風力発電出力計測値Pwの短周期変動成分を第1の一次遅れ回路41によって鈍らせることで得られた仮目標値Pt1sを、長周期変動の変動方向に応じて修正した値である。このような合成出力目標値Ptは、風力発電出力の短周期変動に加えて、長周期変動の変動方向をも考慮して、風力発電出力と充放電出力との合成出力値の軌道が、上昇側および低下側のいずれにも偏らないように調整した値である。蓄電池制御装置4は、このような合成出力目標値Ptを達成するように後述の充放電指令値Pbを蓄電池3に出力することで、充電方向および放電方向への偏りが少ない充放電出力を得ることができる。
【0027】
電池指令補償部44は、Vflagおよび後述する積分器46による充放電電力計測値Pbmの積分値に応じて、第1の一次遅れ出力値Pt1sの補償方法を変更可能である。補償方法は、例えば、ゲインをどのような値にするのか、第1の一次遅れ出力値Pt1sに対してゲインの加算および減算のいずれを実行するのか、または、第1の一次遅れ出力値Pt1sの補償の実行の有無などである。これにより、電池指令補償部44は、蓄電池3の実際の充放電出力の状態を考慮した合成出力目標値Ptを算出することができる。この結果、蓄電池制御装置4は、充電方向および放電方向への偏りが更に少ない充放電出力を得ることができる。
【0028】
(加算器45)
図1に示すように、加算器45は、電池指令補償部44が第1の一次遅れ出力値Pt1sに基づいて算出した合成出力目標値Ptと、風力発電出力計測値Pwとを入力とする。加算器45は、入力された合成出力目標値Ptから、入力された風力発電出力計測値Pwを減じることで、充放電指令値Pbを算出する。そして、加算器45は、算出された充放電指令値Pbを、蓄電池3に出力する。
【0029】
(積分器46)
図1に示すように、積分器46は、第2計測器52から出力された充放電電力計測値Pbmを入力とし、充放電電力計測値Pbmの積分値Intgを算出する。積分器46は、算出された積分値Intgを、電池指令補償部44に出力する。積分器46の1回の積分期間は、予め定められた一定の期間であってもよい。積分器46の1回の積分期間は、電池指令補償部44が合成出力目標値Ptを算出する周期よりも短い期間であればよい。
【0030】
(動作例)
次に、蓄電池制御装置4の動作例について説明する。以下に説明する動作例は、蓄電池制御方法の一実施形態でもある。なお、初期状態において、蓄電池制御装置4は、充放電指令値Pbによる蓄電池3の充放電制御を開始しており、積分器46は、充放電電力計測値Pbmの積分値を算出していることとする。
【0031】
先ず、第1の一次遅れ回路41は、第1計測器51から入力された風力発電出力計測値Pwに基づいて、第1の一次遅れ出力値Pt1sを抽出し、抽出した第1の一次遅れ出力値Pt1sを電池指令補償部44に出力する。
【0032】
このとき、第2の一次遅れ回路42は、第1計測器51から入力された風力発電出力計測値Pwに基づいて、第2の一次遅れ出力値Pt2sを抽出し、抽出した第2の一次遅れ出力値Pt2sを傾向判断部43に出力する。
【0033】
次に、傾向判断部43は、第2の一次遅れ出力値Pt2sに基づいて、Vflagを算出する。ここで、
図2は、第1の実施形態による蓄電池制御装置4の動作の一例を示すフローチャートである。
図2には、Vflagの算出過程が例示されている。
【0034】
図2に示すように、傾向判断部43は、先ず、第1のステップ(S1)において、第2の一次遅れ出力値Pt2sの瞬時値Pt2s(t)から、第2の一次遅れ出力値Pt2sの初期値Pt2s(0)を減じる。以下、第1のステップ(S1)において算出された瞬時値Pt2s(t)と初期値Pt2s(0)との差分を、変化量Pt2s(t)−Pt2s(0)ともいう。
【0035】
次いで、傾向判断部43は、第2のステップ(S2)において、第1のステップ(S1)で算出された変化量Pt2s(t)−Pt2s(0)が、第1の閾値Th1(例えば、正値)より大きいか否かを判定する。そして、第2のステップ(S2)において肯定的な判定結果が得られた場合には、第3のステップ(S3)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、第4のステップ(S4)に進む。
【0036】
ここで、第3のステップ(S3)に進んだ場合には、傾向判断部43は、Vflagの算出値を“1”にする。この値は、風力発電出力の長周期変動の上昇傾向を示す。
【0037】
一方、第4のステップ(S4)に進んだ場合には、傾向判断部43は、変化量Pt2s(t)−Pt2s(0)が、第2の閾値Th2(例えば、負値)より小さいか否かを判定する。そして、第4のステップ(S4)において肯定的な判定結果が得られた場合には、第5のステップ(S5)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、第6のステップ(S6)に進む。
【0038】
ここで、第5のステップ(S5)に進んだ場合には、傾向判断部43は、Vflagの算出値を“−1”にする。この値は、風力発電出力の長周期変動の低下傾向を示す。
【0039】
一方、第6のステップ(S6)に進んだ場合には、傾向判断部43は、Vflagの算出値を“0”にする。この値は、風力発電出力の長周期変動に明らかな傾向がないことを示す。
【0040】
傾向判断部43は、以上のようにして算出したVflagを、電池指令補償部44に出力する。
【0041】
次に、電池指令補償部44は、第1の一次遅れ回路41から入力された第1の一次遅れ出力値Pt1sと、傾向判断部43から入力されたVflagと、積分器46から入力された積分値Intgとに基づいて、合成出力目標値Ptを算出する。
【0042】
合成出力目標値Ptの算出にあたり、電池指令補償部44は、Vflagおよび積分値Intgに応じて、第1の一次遅れ出力値Pt1sの補償方法を変更する。
【0043】
例えば、以下の数式(1)に示すように、Vflagが、風力発電出力の長周期変動の低下傾向を示し、かつ、以下の数式(2)に示すように、積分値Intgが、充放電出力の放電方向への偏りを示す場合がある。
【0044】
Vflag=−1 (1)
|max(Intg)|−|min(Intg)|<Th_Intg1 (2)
【0045】
但し、数式(2)において、|max(Intg)|は、積分値Intgの最大値の絶対値であり、|min(Intg)|は、積分値Intgの最小値の絶対値である。また、Th_Intg1は、積分値Intgの第1の閾値であり、例えば、正値である。
【0046】
このような数式(1)および(2)が満足される場合、電池指令補償部44は、以下の数式(3)に示すように、合成出力目標値Ptを小さい方向に調整する。
【0048】
但し、数式(3)において、G1は、第1のゲインである。第1のゲインG1は、例えば、第1の一次遅れ出力値Pt1sと第2の一次遅れ出力値Pt2sとの差分に比例した値であってもよく、または、定数であってもよい。
【0049】
一方、以下の数式(4)に示すように、Vflagが、風力発電出力の長周期変動の上昇傾向を示し、かつ、以下の数式(5)に示すように、積分値Intgが、充放電出力の充電方向への偏りを示す場合がある。
【0050】
Vflag=1 (4)
|max(Intg)|−|min(Intg)|>Th_Intg2 (5)
【0051】
但し、数式(5)において、Th_Intg2は、積分値Intgの第2の閾値であり、例えば、正値である。Th_Intg2は、Th_Intg1に一致してもよく、または、Th_Intg1と異なってもよい。
【0052】
このような数式(4)および(5)が満足される場合、電池指令補償部44は、以下の数式(6)に示すように、合成出力目標値Ptを大きい方向に調整する。
【0054】
但し、数式(6)において、G2は、第2のゲインである。第2のゲインG2は、例えば、第1の一次遅れ出力値Pt1sと第2の一次遅れ出力値Pt2sとの差分に比例した値であってもよく、または、定数であってもよい。
【0055】
また、数式(1)および(2)が満足されず、さらに、数式(4)および(5)も満足されない場合がある。この場合、電池指令補償部44は、合成出力目標値Ptを調整しない。すなわち、電池指令補償部44は、第1の一次遅れ出力値Pt1sを、そのまま合成出力目標値Ptとする。
【0056】
電池指令補償部44は、以上のようにして算出された合成出力目標値Ptを、加算器45に出力する。
【0057】
次に、加算器45は、電池指令補償部44から入力された合成出力目標値Ptから、第1計測器51から入力された風力発電出力計測値Pwを減じて、充放電指令値Pbを算出する。そして、加算器45は、算出された充放電指令値Pbを、蓄電池3に出力する。
【0058】
そして、蓄電池3は、充放電指令値Pbに基づいた充放電を行う。
【0059】
図3は、第1の実施形態による蓄電池制御装置4の動作の一例を示す第1のタイムチャートである。
図3は、上述の数式(1)〜(3)が適用される場合のタイムチャートを示す。
【0060】
具体的には、
図3Aは、風力発電出力計測値Pw、第1の一次遅れ出力値Pt1s、第2の一次遅れ出力値Pt2sおよび合成出力目標値Ptのタイムチャートである。なお、
図3Aの縦軸には“発電出力”がとられているが、これは、
図3Aの各パラメータPw、Pt1s、Pt2s、Ptが、風力発電出力を示す値Pwまたは風力発電出力を基準とした出力を示す値Pt1s、Pt2s、Ptであることを意味する。
図3Bは、充放電指令値Pbのタイムチャートである。なお、
図3Bには、第1の一次遅れ出力値Pt1sをそのまま合成出力目標値にする場合の充放電指令値Pbt1sのタイムチャートが併記されている。この充放電指令値Pbt1sは、風力発電出力の長周期変動が低下傾向の状況下で短周期変動の緩和に特化した充放電を行う場合の充放電指令値Pbt1sである。
図3Bの縦軸には“充放電出力”がとられているが、これは、
図3Bの各パラメータPb、Pbt1sが、蓄電池3の充放電出力を示す値であることを意味する。また、
図3Cは、蓄電池3の充放電量Ebのタイムチャートである。なお、
図3Cには、第1の一次遅れ出力値Pt1sをそのまま合成出力目標値にする場合の充放電量Ebt1sのタイムチャートが併記されている。この充放電量Ebt1sは、風力発電出力の長周期変動が低下傾向の状況下で短周期変動の緩和に特化した充放電を行う場合の充放電量Ebt1sである。
【0061】
図3Aに示すように、時刻tのときの第2の一次遅れ出力値Pt2sの瞬時値Pt2s(t)は、初期値Pt2s(0)に対する変化が負となる。このため、Vflagの値は、風力発電出力の長周期変動の低下傾向を示す値“−1”、すなわち、上述の数式(1)を満足する値となる。また、このとき、図示はしないが、充放電電力計測値Pbmの積分値Intgは、最大値が0で、最小値はMinIntg(t)である。このため、積分値Intgの最大値の絶対値から、積分値Intgの最小値の絶対値を減じた値は、負値となり、上述の数式(2)を満足する。
【0062】
したがって、
図3Aに示すように、ゲインは、第1のゲインG1となる。また、数式(3)に示したように、合成出力目標値Ptは、第1の一次遅れ出力値Pt1sから第1のゲインG1を減じた値になる。
【0063】
ここで、
図3Aに示すように、風力発電出力計測値Pwすなわち風力発電出力は、穏やかに低下する場合においても、不規則な風速変動の影響によって、周期的な上昇すなわち短周期変動を繰り返しながら低下する。第1の一次遅れ回路41は、このような風力発電出力計測値Pwの周期的な上昇を鈍らせて第1の一次遅れ出力値Pt1sを得る。
図3Aに示すように、第1の一次遅れ出力値Pt1sの軌道は、風力発電出力計測値Pwの周期的な上昇の繰り返しにともなって、上昇側に近付く、即ち、第1の一次遅れ出力値Pt1sの軌道の低下の傾きが小さくなっていく。
【0064】
従って、仮に、第1の一次遅れ出力値Pt1sをそのまま合成出力目標値とする場合には、合成出力目標値の軌道は、第1の一次遅れ出力値Pt1sの軌道をそのまま反映する。すなわち、合成出力目標値の軌道は、風力発電出力計測値Pwの周期的な上昇の繰り返しにともなって、上昇側に近付いていく。この場合には、
図3Bに示すように、蓄電池3に出力される充放電指令値Pbt1sは、上昇側に近付いていく合成出力目標値を達成するために、電力系統への送電を増加させるようにはたらく充放電指令値Pbt1sとなる。すなわち、充放電指令値Pbt1sは、放電側(
図3Bにおける負側)に偏った充放電カーブを呈する。この結果、
図3Cに示すように、蓄電池3の充放電量Ebt1sは、放電側(
図3Cにおける負側)において大きくなる。
【0065】
これに対して、電池指令補償部44が算出する合成出力目標値Ptは、第1の一次遅れ出力値Pt1sの軌道が風力発電出力計測値Pwの周期的な上昇の繰り返しにともなって上昇側に近付くことを考慮した合成出力目標値Ptである。すなわち、合成出力目標値Ptは、第1の一次遅れ出力値Pt1sから第1のゲインG1を減じた値である。このような合成出力目標値Ptに基づいて加算器45が算出する充放電指令値Pbは、
図3Bに示すように、充放電出力値0を中心として、充電側および放電側にバランスよく変動する充放電カーブを呈する。蓄電池制御装置4は、このような放電側への偏りが少ない充放電指令値Pbによって蓄電池3を充放電制御する。これにより、
図3Cに示すように、蓄電池3の充放電量Ebは、放電側において十分に小さく抑えられる。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、風力発電出力の長周期変動が低下傾向にある場合、合成出力目標値Ptを低下させることで、充放電出力の放電側への偏りを緩和することができる。また、充放電電力計測値Pbmの積分値Intgに基づいて、実際の充放電出力の状態が放電側への偏りを示すことを判断したうえで低めの合成出力目標値Ptを算出するので、充放電出力の偏りを更に有効に緩和することができる。
【0067】
図4は、第1の実施形態による蓄電池制御装置4の動作の一例を示す第2のタイムチャートである。
図4は、上述の数式(4)〜(6)が適用される場合のタイムチャートを示す。
【0068】
より具体的には、
図4Aは、
図3Aと同様に、風力発電出力計測値Pw、第1の一次遅れ出力値Pt1s、第2の一次遅れ出力値Pt2sおよび合成出力目標値Ptのタイムチャートを示す。
図4Bは、充放電指令値Pbのタイムチャートを示す。また、
図4Bは、風力発電出力の長周期変動が上昇傾向の状況下で短周期変動の緩和に特化した充放電を行う場合の充放電指令値Pbt1sのタイムチャートを示す。
図4Cは、蓄電池3の充放電量Ebのタイムチャートを示す。また、
図4Cは、風力発電出力の長周期変動が上昇傾向の状況下で短周期変動の緩和に特化した充放電を行う場合の充放電量Ebt1sのタイムチャートを示す。
【0069】
図4Aに示すように、時刻tのときの第2の一次遅れ出力値Pt2sの瞬時値Pt2s(t)は、初期値Pt2s(0)に対する変化が正となる。このため、Vflagの値は、風力発電出力の長周期変動の上昇傾向を示す値“+1”、すなわち、上述の数式(4)を満足する値となる。また、このとき、図示はしないが、充放電電力計測値Pbmの積分値Intgは、最大値がMaxIntg(t)で、最小値は0である。これにより、積分値Intgの最大値の絶対値から、積分値Intgの最小値の絶対値を減じた値は、上述の数式(5)を満足する。
【0070】
したがって、
図4Aに示すように、ゲインは、第2のゲインG2となる。また、数式(6)に示したように、合成出力目標値Ptは、第1の一次遅れ出力値Pt1sに、第2のゲインG2を加えた値になる。
【0071】
ここで、
図4Aに示すように、風力発電出力計測値Pwすなわち風力発電出力は、穏やかに上昇する場合においても、不規則な風速変動の影響によって、周期的な低下すなわち短周期変動を繰り返しながら上昇する。第1の一次遅れ回路41は、このような風力発電出力計測値Pwの周期的な低下を鈍らせて第1の一次遅れ出力値Pt1sを得る。
図4Aに示すように、第1の一次遅れ出力値Pt1sの軌道は、風力発電出力計測値Pwの周期的な低下の繰り返しにともなって、低下側に近付く、即ち、第1の一次遅れ出力値Pt1sの軌道の上昇の傾きが小さくなっていく。
【0072】
従って、仮に、第1の一次遅れ出力値Pt1sをそのまま合成出力目標値とする場合には、合成出力目標値の軌道は、風力発電出力計測値Pwの周期的な低下の繰り返しにともなって低下側に近付いていく。この場合、
図4Bに示すように、蓄電池3に出力される充放電指令値Pbt1sは、低下側に近付いていく合成出力目標値を達成するために、電力系統への送電を減少させるようにはたらく充放電指令値Pbt1sとなる。すなわち、充放電指令値Pbt1sは、充電側(
図4Bにおける正側)に偏った充放電カーブを呈する。この結果、
図4Cに示すように、蓄電池3の充放電量Ebt1sは、充電側(
図4Cにおける正側)において大きくなる。
【0073】
これに対して、電池指令補償部44が算出する合成出力目標値Ptは、第1の一次遅れ出力値Pt1sの軌道が風力発電出力計測値Pwの周期的な低下の繰り返しにともなって低下側に近付くことを考慮した合成出力目標値Ptである。すなわち、合成出力目標値Ptは、第1の一次遅れ出力値Pt1sに第2のゲインG2を加えた値である。このような合成出力目標値Ptに基づいて加算器45が算出する充放電指令値Pbは、
図4Bに示すように、充放電出力0を中心として、充電側および放電側にバランスよく変動する充放電カーブを呈する。蓄電池制御装置4は、このような充電側への偏りが少ない充放電指令値Pbによって蓄電池3を充放電制御する。これにより、
図4Cに示すように、蓄電池3の充放電量Ebは、充電側において十分に小さく抑えられる。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、風力発電出力の長周期変動が上昇傾向にある場合、合成出力目標値Ptを上昇させることで、充放電出力の充電側への偏りを緩和することができる。また、充放電電力計測値Pbmの積分値Intgに基づいて、実際の充放電出力の状態が充電側への偏りを示すことを判断したうえで高めの合成出力目標値Ptを算出するので、充放電出力の偏りを更に有効に緩和することができる。
【0075】
また、充放電量の最大値は、合成出力値の平準化に要する必要蓄電池容量と考えることができる。
図3Cおよび
図4Cによれば、本実施形態における必要蓄電池容量Ebmaxは、短周期変動の緩和に特化した充放電を行う場合の必要蓄電池容量Ebt1smaxに比べて小さいことが分かる。したがって、本実施形態によれば、蓄電池3の容量を低減することができる。これにともなって、容量が小さい安価な蓄電池3を用いることができ、合成出力値の平準化に要するコストを削減することができる。
【0076】
以上述べたように、本実施形態によれば、発電装置から電力系統に送電される電力を蓄電池によって平準化する際における蓄電池の充放電出力の偏りを緩和し、ひいては、蓄電池の容量の低減を図ることができる。
【0077】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態の説明にあたり、第1の実施形態に対応する構成部については同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0078】
図5は、第2の実施形態による蓄電池制御装置4の構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施形態において、第2抽出部は、発電予測部47である。
【0079】
(発電予測部47)
発電予測部47は、風力発電設備2における発電機の周辺に設置された風速計6の計測値Vwを入力とする。風速計6の計測値Vwは、発電装置の出力電力に影響する物理量の計測値の一例である。発電予測部47は、入力された風速計6の計測値Vwに基づいて、風力発電出力の予測値(以下、風力発電出力予測値ともいう)Pw_fを算出する。風力発電出力予測値Pw_fは、第2変動緩和電力値の一例である。発電予測部47は、例えば、発電予測部47の機能を有する演算器によって具現化することができる。
【0080】
発電予測部47は、統計モデルおよび数値気象モデルの少なくとも一方によって、風力発電出力予測値Pw_fを算出する。統計モデルは、トレンドモデルやカルマンフィルタなどであってもよい。数値気象モデルは、風況モデルなどであってもよい。
【0081】
発電予測部47は、算出された風力発電出力予測値Pw_fを、傾向判断部43に出力する。傾向判断部43は、風力発電出力予測値Pw_fの変化量に基づいて、風力発電出力の長周期変動の傾向を判断し、判断結果に応じたVflagを出力する。
【0082】
本実施形態において適用される第1のゲインG1または第2のゲインG2もしくはこれらの双方は、第1の一次遅れ出力値Pt1sと風力発電出力予測値Pw_fとの差分に比例した値であってもよく、または、定数であってもよい。
【0083】
第2の実施形態のその他の構成は、第1の実施形態の対応する構成と同様でよい。
【0084】
図6は、第2の実施形態による蓄電池制御装置4の動作の一例を示すタイムチャートである。
図6は、風力発電出力の長周期変動が低下傾向を示す場合のタイムチャートである。すなわち、
図6Aは、風力発電出力計測値Pw、第1の一次遅れ出力値Pt1s、風力発電出力予測値Pw_fおよび合成出力目標値Ptのタイムチャートを示す。
図6Bは、充放電指令値Pbのタイムチャートを示す。また、
図6Bは、風力発電出力の長周期変動が低下傾向の状況下で短周期変動の緩和に特化した充放電を行う場合の充放電指令値Pbt1sのタイムチャートを示す。
図6Cは、蓄電池3の充放電量Ebのタイムチャートを示す。また、
図6Cは、風力発電出力の長周期変動が低下傾向の状況下で短周期変動の緩和に特化した充放電を行う場合の充放電量Ebt1sのタイムチャートを示す。
【0085】
図6Aに示すように、蓄電池制御装置4は、風力発電出力の長周期変動が低下傾向であれば、風力発電出力予測値Pw_fおよび積分値Intgに基づいて算出された第1のゲインG1によって、合成出力目標値Ptを低めにとる。また、図示はしないが、蓄電池制御装置4は、風力発電出力の長周期変動が上昇傾向であれば、風力発電出力予測値Pw_fおよび積分値Intgに基づいて算出された第2のゲインG2によって、合成出力目標値Ptを高めにとる。したがって、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0086】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態の説明にあたり、第1の実施形態に対応する構成部については同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0087】
図7は、第3の実施形態による蓄電池制御装置4の構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態において、第1抽出部は、第1移動平均部48である。また、第2抽出部は、第2移動平均部49である。第1移動平均部48および第2移動平均部49は、例えば、これらの構成部48、49の機能を有する演算器によって具現化することができる。
【0088】
(第1移動平均部48)
第1移動平均部48は、風力発電出力計測値Pwを入力とする。第1移動平均部48は、入力された風力発電出力計測値Pwについての第1期間にわたる第1移動平均値Pma1を算出する。第1移動平均値Pma1は、第1変動緩和電力値の一例である。第1期間は、例えば、風力発電出力の短周期変動の変動周期に相当する期間である。第1期間は、例えば、20分程度であってもよい。第1移動平均部48は、算出された第1移動平均値Pma1を、電池指令補償部44に出力する。
【0089】
(第2移動平均部49)
第2移動平均部49は、風力発電出力計測値Pwを入力とする。第2移動平均部49は、入力された風力発電出力計測値Pwについての第2期間にわたる第2移動平均値Pma2を算出する。第2移動平均値Pma2は、第2変動緩和電力値の一例である。第2期間は、例えば、風力発電出力の長周期変動の変動周期に相当する期間である。第2期間は、例えば、5〜6時間程度であってもよい。第2移動平均部49は、算出された第2移動平均値Pma2を、傾向判断部43に出力する。
【0090】
傾向判断部43は、第2移動平均値Pma2の変化量に基づいてフラグVflagを算出する。電池指令補償部44は、第1移動平均値Pma1を、第2移動平均値Pma2に基づくVflagによって補償する。
【0091】
本実施形態において適用される第1のゲインG1または第2のゲインG2もしくはこれらの双方は、第1移動平均値Pma1sと第2移動平均値Pma2との差分に比例した値であってもよく、または、定数であってもよい。
【0092】
第3の実施形態のその他の構成は、第1の実施形態の対応する構成と同様でよい。本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
上述した第1〜第3の実施形態は、これらを適宜組み合わせてもよい。例えば、第1抽出部を第1の一次遅れ回路41とし、第2抽出部を第2移動平均部49としてもよい。また、第1抽出部を第1移動平均値Pma1とし、第2抽出部を発電予測部47または第2の一次遅れ回路42としてもよい。
【0094】
また、蓄電池制御装置は、第1抽出部および第2抽出部に加えて、第3の抽出部を備えてもよい。第3の抽出部は、発電装置の出力電力の計測値または発電出力に関する計測値に基づいて、第1周期変動よりも変動周期が長く第2周期変動よりも変動期間が短い第3周期変動を緩和した出力電力を示す第3変動緩和電力値を抽出すればよい。この場合、電池指令補償部は、第1変動緩和電力値を、第2変動緩和電力値の変化量に基づく第1の補償値と、第3変動緩和電力値の変化量に基づく第2の補償値とによって補償することにより、充放電指令値を補償すればよい。抽出部の個数は、考慮すべき周期変動の数に応じた任意の個数とすることができる。
【0095】
さらに、本実施形態は、風力発電以外の再生可能エネルギーに適用してもよい。
【0096】
(変形例)
第1〜第3の実施形態においては、充放電指令値Pbを充放電指令値Pbの生成前に事前に補償しているが、
図8に示すように、充放電指令値Pbt1sを充放電指令値Pbt1sの生成後に事後的に補償してもよい。
図8に示される蓄電池制御装置4は、第1の実施形態に示した加算器45の替わりに、第2加算器451を備えている。第2加算器451は、第1の一次遅れ出力値Pt1sと風力発電出力計測値Pwとを入力とし、第1の一次遅れ出力値Pt1sから風力発電出力計測値Pwを減じることで、補償前の充放電指令値Pbt1sを算出する。第2加算器451は、算出された補償前の充放電指令値Pbt1sを電池指令補償部44に出力する。電池指令補償部44は、Vflagおよび積分値Intgに基づいて算出されたゲインを、補償前の充放電指令値Pbt1sに対して加算または減算することで、補償後の充放電指令値Pbを算出する。電池指令補償部44は、算出した充放電指令値Pbを、蓄電池3に出力する。
図8の構成においても、長周期変動の変動方向および充放電出力の状態を考慮したゲインを用いるので、第1〜第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、
図8の構成は、第2および第3の実施形態との組み合わせも可能である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。