(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397700
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】真空バルブの圧力診断装置または真空バルブ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 33/668 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
H01H33/668 K
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-176717(P2014-176717)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-51618(P2016-51618A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】森田 歩
(72)【発明者】
【氏名】浦井 一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 賢治
【審査官】
山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−053840(JP,U)
【文献】
特開平01−059165(JP,A)
【文献】
特開昭62−116265(JP,A)
【文献】
特開昭61−019020(JP,A)
【文献】
特表2009−525583(JP,A)
【文献】
実開昭58−133236(JP,U)
【文献】
特開昭61−263015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空の真空容器と、前記真空容器内に配置されて互いに接離可能な複数の接点と、前記接点と電気的に絶縁された浮遊電位金属を配置した真空バルブの圧力診断を行う圧力診断装置であって、
複数の絶縁物を少なくとも部分的に直列に接続して構成した絶縁物群と、
複数の前記絶縁物間に接続される電位測定器を備え、
前記絶縁物群のうち、前記浮遊電位金属に近い側に位置する少なくとも一つの絶縁物の前記浮遊電位金属に対する距離が圧力診断時に短くなる様に変更され、
前記絶縁物群のうち、前記浮遊電位金属に近い側に位置する少なくとも一つの絶縁物とは異なる前記絶縁物は、圧力診断時に電位固定点に接続され、
前記電位測定器よりも前記浮遊電位金属に近い側の絶縁物のインピーダンスは、前記電位測定器よりも前記浮遊電位金属から遠い側の絶縁物のインピーダンスよりも大きく、
前記絶縁物群のうち、前記浮遊電位金属に近い側に位置する前記絶縁物は複数設けられることを特徴とする真空バルブの圧力診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空バルブの圧力診断装置であって、
前記絶縁物群及び前記絶縁物群に接続される前記電位測定器は複数設けられることを特徴とする真空バルブの圧力診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の真空バルブの圧力診断装置であって、
前記浮遊電位金属に近い側に位置する前記絶縁物の先端は、少なくとも前記浮遊電位金属に近付ける際に、前記絶縁物の比誘電率よりも低比誘電率の絶縁物で覆われていることを特徴とする真空バルブの圧力診断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の真空バルブの圧力診断装置であって、
前記浮遊電位金属に近い側に位置する前記絶縁物の先端は、常時前記絶縁物の比誘電率よりも低比誘電率の絶縁物で覆われていることを特徴とする真空バルブの圧力診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の真空バルブの圧力診断装置であって、
更に圧力診断時に前記浮遊電位金属に近い側に位置する少なくとも一つの前記絶縁物を回転させる回転駆動機構を備えることを特徴とする真空バルブの圧力診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の真空バルブの圧力診断装置であって、
圧力診断時に、前記浮遊電位金属に近い側に位置する少なくとも一つの前記絶縁物を直線上に移動させることを特徴とする真空バルブの圧力診断装置。
【請求項7】
請求項1に記載の真空バルブの圧力診断装置であって、
圧力異常を検出した場合に、前記真空バルブに対して開動作を不可とする開動作不可指令または圧力異常を警告する圧力異常警告指令を出力することを特徴とする真空バルブの圧力診断装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の真空バルブの圧力診断装置と、前記真空バルブとを備えることを特徴とする圧力診断機能を有する真空バルブ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の真空バルブ装置であって、
更に絶縁物で形成される絶縁ケースまたは接地電位となる接地部位を備え、
圧力診断時以外において、前記絶縁物群と前記真空バルブとの距離は、前記絶縁物群から前記接地部位または前記絶縁ケース迄の距離よりも大きくなる様に配置されることを特徴とする真空バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空バルブの圧力診断装置または真空バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空バルブの圧力診断装置に関する従来技術として、特開昭61−263015号公報(特許文献1)がある。この公報には、「金属製の中間シールドを系統電位部材に対して絶縁して備える真空バルブの圧力上昇を検出する装置において、真空バルブに接続される系統電位部材の対地電圧波形を検出する第1の検出器と、中間シールドの対地電圧波形を検出する第2の検出器と、第1の検出器の検出波形に対する第2の検出器の検出波形の変化量から真空バルブの圧力上昇の判定信号を得る判定回路と、この判定回路の判定信号を記憶保持する記憶保持装置とを備えたことを特徴とする真空バルブの真空度低下検出装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−263015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1には、真空バルブの圧力上昇を検出する装置が記載されている。しかし、特許文献1の構成は、中間シールドの対地電圧波形を検出する分圧コンデンサが中間シールドに常時接続されているため、分圧コンデンサが非接続の場合に比べ、中間シールドの電位が接地電位に近くなる。つまり、真空バルブの主回路導体と中間シールドとの電位差が大きくなるため、各部が高電界となり、圧力に異常がない場合でも、真空バルブの主回路導体と中間シールドとの間で放電が発生し、圧力上昇として検出してしまう恐れがある。
【0005】
本発明では、信頼性を向上させた真空バルブの圧力診断装置または真空バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る真空バルブの圧力診断装置は、内部が真空の真空容器と、前記真空容器内に配置されて互いに接離可能な複数の接点と、前記接点と電気的に絶縁された浮遊電位金属を配置した真空バルブの圧力診断を行う圧力診断装置であって、複数の絶縁物を少なくとも部分的に直列に接続して構成した絶縁物群と、複数の前記絶縁物間に接続される電位測定器を備え、前記絶縁物群のうち、前記浮遊電位金属に近い側に位置する少なくとも一つの絶縁物の前記浮遊電位金属に対する距離が圧力診断時に変更され、前記絶縁物群のうち、前記浮遊電位金属に近い側に位置する少なくとも一つの絶縁物とは異なる前記絶縁物は、圧力診断時に電位固定点に接続されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る真空バルブ装置は、上記真空バルブの圧力診断装置と、前記真空バルブとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信頼性を向上させた真空バルブの圧力診断装置または真空バルブ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図9】電極間のギャップ長さが5mmのときの雰囲気圧力と放電電圧との相関を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の真空バルブの圧力診断装置または真空バルブ装置の実施例について図面を用いて説明する。尚、下記はあくまでも本発明の実施に好適な実施例であり、本発明の適用対象を限定することを意図する趣旨ではない。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の実施例1を示すものである。
図1の右側に示した真空バルブ1は、固定側の円筒絶縁材2の一端に接合された固定側端板3と、固定側端板3を気密に貫通する固定側導体4と、固定側の円筒絶縁材2の他端と可動側の円筒絶縁材5の一端に接合された浮遊電位金属6と、可動側の円筒絶縁材5の他端に接合された可動側端板7と、可動側端板7に一端が接合され、可動部の可動を許容すると共に、内部の真空を維持するための蛇腹形状のベローズ8と、ベローズ8を気密に貫通し真空を維持しながら軸方向に駆動する可動側導体9とで真空容器が構成され、内部圧力は、およそ10
-2Pa以下の真空で保たれている。
【0012】
その真空容器の内部には、固定側導体4の端部に接続された固定側電極10(接点の一つ)と、可動側導体9の端部に接続された可動側電極11(接点の一つ)が配置され、可動側導体9は、図示しない操作用絶縁ロッド、及び電極対に接触荷重を加えるワイプ機構と連結された操作器と接続され、軸方向の駆動が可能となっている。これにより、固定側電極10と可動側電極11の接離、即ち、真空バルブの開状態と閉状態を切り替えている。
【0013】
また、
図1の左側に示した圧力診断装置12は、インピーダンスが異なる複数の絶縁物、ここでは絶縁物13と絶縁物14を直列に接続して構成した絶縁物群と、絶縁物間に接続された電位測定器15とで構成される。尚、複数の絶縁物は少なくとも部分的に直列に接続されていれば足りる。絶縁物14の一端と電位測定器15の一端は、電位固定点に接続され、絶縁物14の両端に発生する電圧を電位測定器15にて測定できる。本実施例では電位固定点は接地電位であるが、診断時に電位が特定できれば接地には限られない。そして、浮遊電位金属6に近い側の絶縁物13のインピーダンスを浮遊電位金属6に遠い側の絶縁物14よりも(著しく)大きくしている。尚、本実施例においてはインピーダンスが異なる複数の絶縁物を用いているが、必ずしもインピーダンスを異ならせる必要はない。但し、電位測定器15よりも浮遊電位金属に近い側の絶縁物のインピーダンスを、電位測定器15よりも浮遊電位金属から遠い側の絶縁物のインピーダンスよりも大きくすることで、電位測定器15に加わる電圧を小さくでき(例えば、数十kVの運転電圧に対して、数ボルト程度など)、電位測定器15を簡素な構成とすることが可能になる。
【0014】
次に真空バルブ1の圧力劣化、すなわち真空容器内部の圧力が上昇した場合について説明する。真空容器内部の圧力上昇は、一般的に真空容器外部からのガス透過、真空容器の内部部材からのガス放出、ベローズや接合部などに稀に発生するピンホールなどが主要因で発生し、
図9のパッシェンカーブに示されるように、およそ10
-1Pa以上になると絶縁性能が急激に低下し始める。
【0015】
真空バルブ1を搭載した開閉装置が通常運転状態にあるときに真空バルブに圧力上昇が生じて絶縁性能が低下すると、固定側導体4、固定側電極10、可動側導体9、可動側電極11から成る主回路と、この主回路とは電気的に絶縁されている浮遊電位金属6の間で放電が発生する。
【0016】
ここで真空バルブ1に圧力上昇が発生しない通常運転時の浮遊電位金属6の電位は、運転電圧と、真空バルブ構造と、真空バルブ周囲の固定電位部材の配置などによりおよそ決定されるが、真空バルブ1の主回路と浮遊電位金属6間で放電が発生した場合は、浮遊電位金属6の電位は通常運転時の電位に放電パルスが重畳された電位となる。さらに圧力が上昇すると増加した放電パルスが重畳され、最終的に浮遊電位金属6の電位は運転電圧に程近い状態まで上昇する。
【0017】
本実施例では、上述した真空バルブ1と圧力診断装置12において、圧力診断時には真空バルブ1の浮遊電位金属6と浮遊電位金属6に最も近い側の絶縁物13の距離を変更(圧力診断時以外と比較して距離が短くなる様に変更)して真空バルブの圧力診断を実施する。このように実施される真空バルブの圧力診断装置は、浮遊電位金属6の電位を通常運転時の電位以下に意図的に低下することができる。この結果、主回路と浮遊電位金属6の間の電位差が大きくなり、主回路と浮遊電位金属6間の各部が高電界となる。この状態は、圧力診断をしていない状態に比べ、主回路と浮遊電位金属6間での放電が発生し易い環境となるため、真空バルブ1に圧力上昇が生じた場合、感度良く放電を誘発することができる。放電が発生した場合、浮遊電位金属6の電位は通常運転時の電位に放電パルスが重畳された電位となり、この電位変化を圧力診断装置12の絶縁物13と絶縁物14間に接続された電位測定器15により測定した電圧値により検出することができる。
【0018】
上述した真空バルブの圧力診断装置によると、通常運転時における真空バルブの絶縁要求を緩和することができるため、真空バルブ、または真空バルブを搭載した開閉装置を小形化できる。
【0019】
なお、真空バルブが開状態であるときに真空バルブの圧力診断を実施した場合で、真空バルブ1に圧力上昇が生じている状態であったときは、真空バルブの電源側となる一方の主回路から負荷側となる他方の主回路に放電する問題があるため、真空バルブの圧力診断を真空バルブが閉状態のときにのみ圧力診断を実施することで、地絡事故を防止できる安全性と信頼性を向上させた真空バルブの圧力診断装置を提供することができる。
【0020】
本実施例によれば、圧力診断時に真空バルブ1の浮遊電位金属6と浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13の距離を変更して真空バルブの圧力診断を実施している。真空バルブの圧力診断装置としては、例えば次の様な利点が考えら得る。即ち、通常の使用時には放電が未だ生じていない状況で放電を誘発できるので、圧力変化を事故が生ずる前に把握することが可能になる。よって、圧力診断精度を高めることが可能になるため、信頼性向上が期待できる。
【0021】
更に本実施例に係る圧力診断装置を備えた真空バルブ装置に関して言えば、圧力診断精度が高まるので、特に真空圧力に関して高信頼性の真空バルブ装置の提供が可能になる。加えて、診断時に真空バルブ1の浮遊電位金属6と浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13の距離を変更する様にしており、診断時以外には真空バルブ1の浮遊電位金属6と浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13の距離を離しておくことで、診断時以外における絶縁特性低下は生じさせない。この意味合いにおいても絶縁信頼性の向上が期待できる。
【実施例2】
【0022】
図2は本発明の実施例2を示すものである。実施例1と同様の部分については説明を省略する。本実施例での圧力診断装置16は、絶縁物群は浮遊電位金属に近い側で分岐しており、浮遊電位金属6に近い側の絶縁物は複数設けられる。そして、浮遊電位金属6に近いそれぞれの絶縁物はインピーダンスが異なる複数の絶縁物は部分的に直列に接続された構造になっている。具体的には、絶縁物17の一端にインピーダンスが異なる絶縁物18と絶縁物19を接続して構成した絶縁物群と、絶縁物間に接続された電位測定器とで圧力診断装置が構成されている。本実施例においては、特に簡便な説明のために、浮遊電位金属6に近い側の絶縁物は絶縁物18と絶縁物19の2つが存在する場合を例にして説明しているが、2つよりも多い場合を排除するものではない。
【0023】
本実施例では、真空バルブ1の通常運転時に真空バルブの浮遊電位金属6と浮遊電位金属6に近い側の絶縁物(絶縁物18もしくは絶縁物19)の少なくとも一方の距離を変更して真空バルブの圧力診断を実施する。このように実施される真空バルブの圧力診断装置においても、実施例1と同様に浮遊電位金属6の電位を通常運転時の電位以下に意図的に低下することができる。更に本実施例では、インピーダンスの異なる絶縁物18と絶縁物19を切り替えることで、浮遊電位金属6の電位の低下幅を変更することができる。その結果、実施例1より例えば感度良く放電を検出できるため、信頼性の高い真空バルブの圧力診断装置を提供することも可能になる。
【実施例3】
【0024】
図3は本発明の実施例3を示すものである。実施例1及び実施例2と同様の部分については説明を省略する。本実施例での圧力診断装置は、実施例2の絶縁物群と電位測定器で構成する圧力診断装置を複数設けている。ここでは簡便な説明のために、圧力診断装置20と圧力診断装置24の2つを設ける場合について説明しているが、2つに限られるものではない。本実施例においても浮遊電位金属6に近い側の絶縁物は複数設けられる。浮遊電位金属6に近いそれぞれの絶縁物は異なるインピーダンスを有している。
【0025】
本実施例では、真空バルブの通常運転時に真空バルブの浮遊電位金属6と浮遊電位金属6に最も近い側の絶縁物22、絶縁物23、絶縁物26、絶縁物27のいずれかの絶縁物の距離を変更して真空バルブの圧力診断を実施する。このように構成される真空バルブの圧力診断装置は、実施例2より浮遊電位金属の電位の低下幅を更に大きく、または細かに変更することができる。その結果、実施例2に比べさらに感度良く放電を検出できるため、一層信頼性の高い真空バルブの圧力診断装置を提供することができる。
【実施例4】
【0026】
図4は本発明の実施例4を示すものであり、圧力診断装置12の側面図を示している。実施例1と同様の部分については説明を省略する。本実施例での圧力診断装置12は、浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13の先端(浮遊電位金属6に近い側の先端)が絶縁物13の比誘電率よりも低い比誘電率の絶縁物28で覆われた構造になっている。
【0027】
このように構成される本実施例では、圧力診断時の浮遊電位金属6と絶縁物13間の電界を緩和できる。特に浮遊電位金属6と絶縁物28が接触した場合、接触部、即ち金属、絶縁物、気体で構成され絶縁の弱点と懸念される三重点の電界を緩和することができる。その結果、圧力診断装置12の浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13の長さを短くすることができるため、小形な圧力診断装置を提供することができる。
【0028】
なお、浮遊電位金属に近い側に位置する絶縁物の先端を覆う絶縁物は、常時覆っていなくても、圧力診断時(特に接触時)に浮遊電位金属に近い側に位置する絶縁物の先端を覆っていればよい。具体的には、少なくとも浮遊電位金属に近付ける際に覆っていれば良い。勿論、常時覆う様に構成しても良い。
【実施例5】
【0029】
図5は本発明の実施例5を示すものである。実施例1と同様の部分については説明を省略する。本実施例での圧力診断装置12は、圧力診断時に、浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13の浮遊電位金属6に対する距離の可変手段として、回転駆動機構を備える場合について説明している。具体的には、浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13について、浮遊電位金属6に遠い側における端部側に回転中心29を設けて支持し、この回転中心29の周囲を円弧運動させて絶縁物13を回転させることにより、浮遊電位金属6との距離を変化させている。
【0030】
このように構成される真空バルブの圧力診断装置は、絶縁物13が回転して浮遊電位金属6に近づくと、絶縁物13と浮遊電位金属6間の空間静電容量が大きくなる、即ちインピーダンスが小さくなる。つまり、絶縁物13の回転角度により浮遊電位金属6の電位の低下幅を変化することができる。その結果、真空バルブ内の放電を感度良く検出できるため、信頼性の高い真空バルブの圧力診断装置を提供することができる。
【実施例6】
【0031】
図6は本発明の実施例6を示すものである。実施例1と同様の部分については説明を省略する。本実施例での圧力診断装置12は、圧力診断時に、浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13の浮遊電位金属6に対する距離の可変手段として、直線駆動機構を備える場合について説明している。具体的には、浮遊電位金属6に近い側に位置する絶縁物13を直線上に移動させることにより、浮遊電位金属13との距離を変化させている。直線上に移動するのは絶縁物13のみでなくても、圧力診断装置全体を移動するものでもよい。
【0032】
このように構成される真空バルブの圧力診断装置は、実施例5と同様の効果を得ることができ、信頼性の高い真空バルブの圧力診断装置を提供することができる。
【実施例7】
【0033】
図7は本発明の実施例7を示すものである。実施例1と同様な部分については説明を省略する。本発明での圧力診断装置は、電位測定器15に圧力異常判定器30が接続されている。また、この圧力異常判定器30は、真空バルブを搭載した開閉装置の制御器31と有線、または無線で情報通信できるようになっている。圧力異常判定器30が圧力異常を検出した場合に、真空バルブの開動作を不可とする開動作不可指令、または圧力異常を警告する圧力異常警告指令を開閉装置の制御器31に出力する。尚、真空バルブへの通信手段は、圧力異常判定器自体が備えていなくても良く、圧力異常判定器による判定結果に基づいて別の手段が通信を行う様にすることも可能である。
【0034】
このように構成される本実施例では、地絡事故を防止できる安全性と信頼性を向上させた真空バルブの圧力診断装置を提供することができる。
【0035】
真空バルブに圧力異常が生じていたときに開動作した場合、電極間で放電が発生し、地絡事故を引き起こす問題があるため、真空バルブの圧力異常を検出した場合に、真空バルブの開動作を不可とする開動作不可指令、または圧力異常を警告する圧力異常警告指令を出力することで、地絡事故を防止できる安全性と信頼性を向上させた真空バルブの圧力診断装置を提供することができる。
【実施例8】
【0036】
図8は本発明の実施例8を示すものである。実施例1と同様な部分については説明を省略する。真空バルブの周囲には、エポキシなどの樹脂素材で作られた絶縁部材32(絶縁ケース)、もしくは接地電位の接地部材32が配置されている場合がある。この各々の部材32と真空バルブは、運転電圧で決定される所定の絶縁性能を確保できる距離にて配置されている。本発明での圧力診断装置は、圧力診断時以外において、前記絶縁物群と前記真空バルブとの距離は、前記絶縁物群から前記接地部位または前記絶縁ケース迄の距離よりも大きくなる様に配置されている。
【0037】
このように構成される本実施例では、通常運転時における真空バルブの絶縁性能を安定に保持することができる真空バルブの圧力診断装置を提供することができる。
【0038】
(真空バルブの周囲に配置されている絶縁部材または接地部材よりも真空バルブに対して遠い位置に配置した)圧力診断装置が動き、圧力診断装置と真空バルブの距離が多少変化したとしても、真空バルブの浮遊電位金属6の電位は、真空バルブ周囲部材により決定されているため、電位変化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…真空バルブ、2…固定側円筒絶縁筒、3…固定側端板、4…固定側導体、5…可動側円筒絶縁筒、6…浮遊電位金属、7…可動側端板、8…ベローズ、9…可動側導体、10…固定側電極、11…可動側電極、12、16、20、24…圧力診断装置、13、14、17、18、19、21、22、23、25、26、27…絶縁物、15…電位測定器、28…絶縁物、29…回転中心、30…圧力異常判定器、31…開閉装置の制御器、32…絶縁部材または接地部材