(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような粒子検知システムにおいて、ヒータの加熱により、絶縁部材の表面に付着した煤などの付着粒子を燃焼させて除去する場合には、所定時間毎に通電するなど、間欠的にヒータへの通電が行われる。しかしながら、このように通電の間隔を予め定めてヒータへの通電を行うようにすると、ヒータ通電の間隔が長い場合や、煤の量が多かった場合には、次のヒータへの通電タイミングが来るまでに、粒子の検知性能の低下が生じてしまい、場合によっては、検知が不可能になったりすることがある。一方、ヒータ通電の間隔を短くしすぎると、ヒータでの消費電力が大きくなるという問題がある。このため、適切なタイミングでヒータ通電を行うなど、必要に応じた適切なヒータ通電を行って、付着粒子を除去できるのが好ましい。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、必要に応じた適切なヒータ通電を行って、絶縁部材の表面に付着した付着粒子を除去し、粒子の検知性能の低下を防止できる粒子検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その一態様は、被測定ガスに晒される検知部を有し、上記被測定ガス中の粒子を検知する粒子センサを備える粒子検知システムであって、上記粒子センサは、上記被測定ガスに接するガス接触表面を有する絶縁材からなり、上記被測定ガス中の上記粒子が付着することにより上記ガス接触表面の絶縁性が低下すると、上記検知部での上記粒子の検知性能の低下が生じる絶縁部材、及び、通電による発熱で、上記絶縁部材の上記ガス接触表面の少なくとも一部を加熱するヒータ部、を有し、上記粒子検知システムは、上記粒子センサからのセンサ信号により上記被測定ガス中の上記粒子の量を検知する粒子量検知部と、検知した上記粒子の量を所定期間にわたって積算した粒子量積算値を算出する積算値算出部と、上記粒子量積算値に基づいて、上記ヒータ部への通電を制御して、上記絶縁部材の上記ガス接触表面に付着した付着粒子を除去するヒータ通電制御手段と、を備える粒子検知システムである。
【0008】
この粒子検知システムでは、検知した粒子の量を所定期間にわたって積算した粒子量積算値に基づいて、ヒータ部への通電を制御する。
例えば、粒子量積算値が、所定値を超えたら、ヒータ部に通電して付着粒子を除去するようにすれば、粒子量積算値に応じて、検知した粒子の量が多い場合には早いタイミングで、検知した粒子の量が少ない場合には遅いタイミングで、それぞれ適切なタイミングでヒータ通電を行って、付着粒子を除去することができる。このため、粒子量積算値に基づいて、ヒータ部に通電することにより、必要に応じた適切なヒータ通電を行って、付着粒子を除去することができ、粒子の検知性能の低下を防止できる。
また、不必要にヒータ部に通電することがないので、省電力化を図ることができる。
【0009】
なお、粒子量積算値に基づいて、ヒータ部への通電を制御する手法としては、上述のように、粒子量積算値が所定値を超えたら、ヒータ部に通電するなど、粒子量積算値に基づいて、ヒータ部に通電するタイミングを制御する手法が挙げられる。
また、粒子量積算値に基づいて、ヒータ部に通電する通電時間の長さを制御する手法も挙げられる。具体的には、所定期間毎にヒータ部に通電する場合に、所定期間内に得られた粒子量積算値が多いほど、通電時間を長くすることで、確実に付着粒子を除去することができる。
その他、ヒータ部に印加する電力の大きさを制御する手法も挙げられる。具体的には、所定期間毎にヒータ部に通電する場合に、所定期間内に得られた粒子量積算値が多いほど、所定の通電時間にヒータ部に印加する電力を大きくすることで、付着粒子を確実に除去することができる。
【0010】
さらに、上述の粒子検知システムであって、前記積算値算出部は、前記所定期間である、前記ヒータ通電制御手段による前記ヒータ部への前回の通電以降の期間における、前記粒子の量を積算して前記粒子
量積算値を算出し、前記ヒータ通電制御手段は、上記粒子量積算値が予め定めた規定値を超えたときに、上記ヒータ部への通電を行う粒子検知システムとすると良い。
【0011】
この粒子検知システムでは、ヒータ部への前回の通電以降の粒子量積算値が規定値を超えた場合に、ヒータ部への通電を行う。これにより、適切なタイミングで付着粒子の除去を行うことができる。
【0012】
さらに、上述のいずれかの粒子検知システムであって、前記検知部は、気中放電によりイオンを生成するイオン源を含み、生成した上記イオンを前記被測定ガス中を浮遊する前記粒子に付着させ帯電させて帯電粒子とする帯電部を有し、上記イオン源は、上記気中放電を生じる放電部を含む放電電極体を有し、前記絶縁部材は、上記放電部を露出させつつ
上記放電部を除く上記放電電極体を覆い、前記ガス接触表面であり上記放電部の周囲に位置する放電部周囲表面を有し、前記ヒータ部は、上記絶縁部材の上記放電部周囲表面を加熱する粒子検知システムとすると良い。
【0013】
被測定ガスに含まれる粒子(煤など)は、気中放電を生じる放電電極体の放電部やその周囲に堆積して付着しやすい(即ち、付着粒子となりやすい)。一方、放電部やその周囲に付着粒子が付着すると、気中放電の状態が変化し、生成できるイオンの量が減少するなど、変動するため、粒子の検知性能の低下が生じることがある。
これに対し、この粒子検知システムでは、放電電極体を覆う絶縁部材の放電部周囲表面をヒータ部で加熱する。このため、この放電部周囲表面や放電部に付着した付着粒子を除去して、イオン源において気中放電を適切に生じさせることができる。これにより、粒子の検知性能の低下を防止することができる。
【0014】
さらに、上述のいずれかの粒子検知システムであって、前記粒子センサは、前記被測定ガスが流通し、接地電位とされる通気管に装着されて、前記検知部が上記通気管内を臨み、上記被測定ガスを内部に取り入れるガス取入管を有し、上記接地電位とは異なる第1電位とされ、上記検知部の一部をなす内側金具と、上記内側金具の径方向周囲を囲み、上記通気管に装着されて上記接地電位とされる筒状の外側金具と、を有し、前記絶縁部材は、上記内側金具と上記外側金具との間に介在して両者を離間しつつ電気的に絶縁する絶縁スペーサであり、前記ヒータ部は、上記絶縁スペーサの前記ガス接触表面を加熱する粒子検知システムとすると良い。
【0015】
内側金具と外側金具との間に介在する絶縁スペーサのガス接触表面に付着粒子が付着して、第1電位とされる内側金具と接地電位とされる外側金具との間の絶縁性が低下すると、第1電位と接地電位との間に漏れ電流が流れて、センサ信号である、第1電位と接地電位との間を流れる微小な信号電流(例えば数μA以下)の検知に誤差を生じ、粒子を適切に検知できなくなる。
これに対し、この粒子検知システムでは、絶縁スペーサのガス接触表面をヒータ部で加熱する。これにより、第1電位と接地電位との間に流れる漏れ電流を抑制し、センサ信号である信号電流を適切に検知することができる。このため、漏れ電流の影響によって信号電流の検知精度が低下し、粒子の検知性能が低下するのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る粒子検知システム1(以下、単にシステム1ともいう)は、
図1に示すように、センサ本体をなす粒子センサ10と、回路部200とから構成され、車両AMに搭載したエンジンENGの排気管EP(通気管)に、粒子センサ10が装着され、排気管EP内を流通する排気ガスEG(被測定ガス)中の粒子S(煤など)の量を検知する。
このシステム1は、エンジンENGを制御するエンジン制御ユニットECUとCANバスを通じて接続されている。
なお、
図2及び
図3に、システム1のうち粒子センサ10の構成を示し、
図4に、システム1のうち回路部200の構成を示す。
【0018】
まず、
図2及び
図3を参照して、粒子センサ10について説明する。
粒子センサ10は、ガス取入管25を有する内側金具20、外側金具70、第1絶縁スペーサ100、第2絶縁スペーサ110、セラミック素子120、5本の電線161,163,171,173,175等から構成される。なお、
図2において、粒子センサ10の長手方向GHのうち、ガス取入管25が配置された側(図中、下方)を先端側GSとし、これと反対側の電線161,163等が延出する側(図中、上方)を基端側GKとする。
なお、粒子センサ10のうち、内側金具20のガス取入管25及びセラミック素子120の先端側部分は、排気ガスEGに晒される検知部11をなす。
【0019】
この粒子センサ10は、接地電位PVE(車両AMのシャーシGND)とされた金属製の排気管EPに、金属製の取付用ボスBOを介して装着される(
図2参照)。これにより、外側金具70は、接地電位PVEとされる。また、内側金具20の先端側部分をなすガス取入管25が、排気管EPに設けられた取付開口EPOを通じて排気管EP内に配置される。そして、ガス取入口65c及び第1内側導入孔60cからガス取入管25内に取り入れた取入ガスEGI中の粒子Sに、イオンCPを付着させて帯電粒子SCとし、取入ガスEGIと共にガス排出口60eから排気管EPへ排出する(
図8参照)。
【0020】
このうち、内側金具20は、後述する回路部200のうち第1電位PV1とされる内側回路ケース250等に、後述する電線161,163の内側外部導体161g1,163g1を介して導通しており、接地電位PVEとは異なる第1電位PV1とされる。この内側金具20は、主体金具30と、内筒40と、内筒接続金具50と、ガス取入管25(内側プロテクタ60及び外側プロテクタ65)とから構成される。
【0021】
主体金具30は、長手方向GHに延びる円筒状でステンレス製の部材である。この主体金具30は、径方向外側に膨出する円環状のフランジ部31を有する。主体金具30の内部には、カップ状の金属カップ33が配置されている。この金属カップ33の底部には孔が形成されており、この孔に後述するセラミック素子120が挿通されている。また、主体金具30の内部には、セラミック素子120の周囲に、先端側GSから基端側GKに向けて順に、円筒状でアルミナからなるセラミックホルダ34と、滑石粉末を圧縮して構成した第1粉末充填層35及び第2粉末充填層36と、円筒状でアルミナからなるセラミックスリーブ37とが配置されている。なお、セラミックホルダ34及び第1粉末充填層35は、金属カップ33内に位置している。更に、主体金具30のうち最も基端側GKの加締部30kkは、径方向内側に加締められて、加締リング38を介してセラミックスリーブ37を先端側GSに押圧している。
【0022】
内筒40は、長手方向GHに延びる円筒状でステンレス製の部材である。内筒40の先端部は、径方向外側に突出する円環状のフランジ部41となっている。内筒40は、主体金具30の基端側部30kに外嵌され、フランジ部41をフランジ部31に重ねた状態で、基端側部30kにレーザ溶接されている。
内筒40の内部には、先端側GSから基端側GKに向けて順に、絶縁ホルダ43と、第1セパレータ44と、第2セパレータ45とが配置されている。このうち絶縁ホルダ43は、円筒状で絶縁体からなり、セラミックスリーブ37に基端側GKから当接している。この絶縁ホルダ43には、セラミック素子120が挿通されている。
また、第1セパレータ44は、絶縁体からなり、挿通孔44cを有する。この挿通孔44c内には、セラミック素子120が挿通されると共に、放電電位端子46の先端側部分が収容されている。そして、この挿通孔44c内において、セラミック素子120の後述する放電電位パッド135(
図6及び
図7参照)に、放電電位端子46が接触している。
【0023】
一方、第2セパレータ45は、絶縁体からなり、第1挿通孔45c及び第2挿通孔45dを有する。第1挿通孔45c内に収容された放電電位端子46の基端側部分と後述する放電電位リード線162の先端部とは、この第1挿通孔45c内で接続されている。また、第2挿通孔45d内には、セラミック素子120の素子基端部120kが配置されているほか、補助電位端子47、第2−1ヒータ端子48及び第2−2ヒータ端子49が互いに絶縁された状態で収容されている。そして、この第2挿通孔45d内において、セラミック素子120の補助電位パッド147に補助電位端子47が接触し、セラミック素子120の第2−1ヒータパッド156に第2−1ヒータ端子48が接触し、セラミック素子120の第2−2ヒータパッド158に第2−2ヒータ端子49が接触している(
図6及び
図7も参照)。更に、第2挿通孔45d内には、後述する補助電位リード線164、第2−1ヒータリード線174及び第2−2ヒータリード線176の先端部がそれぞれ配置されている。そして、第2挿通孔45d内において、補助電位端子47と補助電位リード線164が接続され、第2−1ヒータ端子48と第2−1ヒータリード線174が接続され、第2−2ヒータ端子49と第2−2ヒータリード線176が接続されている。
【0024】
内筒接続金具50は、ステンレス製の部材で、第2セパレータ45の基端側部分を包囲しつつ、内筒40の基端部40kに外嵌され、内筒接続金具50の先端部50sが内筒40の基端部40kにレーザ溶接されている。この内筒接続金具50には、電線171を除く、4本の電線161,163,173,175がそれぞれ挿通されている。このうち、後述する三重同軸ケーブルの電線161,163の内側外部導体161g1,163g1は、この内筒接続金具50に接続されている。
【0025】
ガス取入管25は、内側プロテクタ60と外側プロテクタ65とから構成される。内側プロテクタ60は、有底円筒状でステンレス製の部材であり、外側プロテクタ65は、円筒状でステンレス製の部材である。外側プロテクタ65は、内側プロテクタ60の径方向周囲に配置されている。これら内側プロテクタ60及び外側プロテクタ65は、主体金具30の先端部30sに外嵌され、その先端部30sにレーザ溶接されている。ガス取入管25は、主体金具30から先端側GSに突出するセラミック素子120の先端側部分(後述するイオン源15)を径方向外側から包囲しており、セラミック素子120を水滴や異物から保護する一方、排気ガスEGをセラミック素子120の周囲に導く。
【0026】
外側プロテクタ65の先端側部分には、排気ガスEGを外側プロテクタ65の内部に取り入れるための矩形状のガス取入口65cが複数形成されている。また、内側プロテクタ60には、外側プロテクタ65内に取り入れた取入ガスEGIを更に内側プロテクタ60の内部に導入するため、その基端側部分に円形の第1内側導入孔60cが複数形成されている。また、内側プロテクタ60の先端側部分にも、三角形の第2内側導入孔60dが複数形成されている。更に、内側プロテクタ60の底部には、取入ガスEGIを排気管EPへ排出するための円形のガス排出口60eが形成されており、このガス排出口60eを含む先端部60sは、外側プロテクタ65の先端開口部65sから先端側GSに突出している。
【0027】
ここで、粒子センサ10の使用時における内側プロテクタ60及び外側プロテクタ65への排気ガスEGの取り入れ及び排出について説明する(
図8参照)。
図8において、排気ガスEGは、排気管EP内を、図中、左から右に向けて流通している。この排気ガスEGが、外側プロテクタ65及び内側プロテクタ60の周囲を通ると、その流速が内側プロテクタ60のガス排出口60eの外側で上昇し、いわゆるベンチュリ効果により、ガス排出口60e付近に負圧が生じる。
【0028】
すると、この負圧により内側プロテクタ60内に取り入れられた取入ガスEGIが、ガス排出口60eから排気管EPへ排出される。これと共に、外側プロテクタ65のガス取入口65c周囲の排気ガスEGが、このガス取入口65cから外側プロテクタ65内に取り入れられ、更に、内側プロテクタ60の第1内側導入孔60cを通じて、内側プロテクタ60内に取り入れられる。そして、内側プロテクタ60内の取入ガスEGIは、ガス排出口60eから排出される。このため、内側プロテクタ60内には、破線矢印で示すように、基端側GKの第1内側導入孔60cから先端側GSのガス排出口60eに向けて流れる取入ガスEGIの気流が生じる。
【0029】
次に、外側金具70について説明する。この外側金具70は、円筒状で金属からなり、内側金具20の径方向周囲を内側金具20とは離間した状態で囲むと共に、接地電位PVE(車両AMのシャーシGND)とされた排気管EPに装着されて接地電位PVEとされる。外側金具70は、取付金具80と外筒90とから構成される。
【0030】
取付金具80は、長手方向GHに延びる円筒状でステンレス製の部材である。この取付金具80は、内側金具20のうち、主体金具30及び内筒40の先端側部分の径方向周囲に、これらとは離間して配置されている。この取付金具80は、径方向外側に膨出して外形六角形状をなすフランジ部81を有する。また、取付金具80の内側には、段状をなす段状部83が設けられている。また、取付金具80のうちフランジ部81よりも先端側GSの先端側部80sの外周には、排気管EPへの固定に用いる雄ネジ(不図示)が形成されている。粒子センサ10は、この先端側部80sの雄ネジによって、排気管EPに別途固定された金属製の取付用ボスBOに取り付けられ、この取付用ボスBOを介して排気管EPに固定される。
【0031】
取付金具80と内側金具20との間には、後述する第1絶縁スペーサ100及び第2絶縁スペーサ110が配置されている。更に、取付金具80と内側金具20との間には、後述するヒータ接続金具85と、これに接続する電線171の第1−1ヒータリード線172の先端部172sが配置されている。取付金具80のうち最も基端側GKの加締部80kkは、径方向内側に加締められて、線パッキン87を介して第2絶縁スペーサ110を先端側GSに押圧している。
【0032】
外筒90は、長手方向GHに延びる筒状でステンレス製の部材である。この外筒90の先端部90sは、取付金具80の基端側部80kに外嵌され、この基端側部80kにレーザ溶接されている。外筒90のうち基端側GKに位置する小径部91の内部には、外筒接続金具95が配置され、更にその基端側GKには、フッ素ゴム製のグロメット97が配置されている。これら外筒接続金具95及びグロメット97には、後述する5本の電線161,163,171,173,175がそれぞれ挿通されている。これらのうち、後述する三重同軸ケーブルの電線161,163の外側外部導体161g2,163g2は、それぞれ外筒接続金具95に接続されている。この外筒接続金具95は、外筒90の小径部91と共に加締めによって径方向内側に縮径され、これにより外筒接続金具95及びグロメット97は、外筒90の小径部91内に固定されている。
【0033】
次に、第1絶縁スペーサ100について説明する(
図5も参照)。この第1絶縁スペーサ100は、長手方向GHに延びる円筒状で、絶縁材であるアルミナからなる絶縁部材である。第1絶縁スペーサ100は、内側金具20と外側金具70との間に介在して両者を離間しつつ電気的に絶縁する。具体的には、内側金具20のうち主体金具30及び内筒40の先端側部分と、外側金具70のうち取付金具80との間に配置されている。この第1絶縁スペーサ100は、先端側GSに位置する径小なスペーサ先端側部101と、基端側GKに位置する径大なスペーサ基端側部103と、これらの間を結ぶスペーサ中間部102とからなる。
【0034】
このうちスペーサ先端側部101の先端部は、粒子センサ10を排気管EPに装着した状態で、排気管EP内に露出し(排気管EP内を臨み)、排気管EP内を流通する排気ガスEGに接するガス接触部101sとなっている。
また、スペーサ中間部102は、先端側GSを向く外側段面102sと、基端側GKを向く内側段面102kとを有する。これら外側段面102s及び内側段面102kは、いずれも第1絶縁スペーサ100の周方向に延びる円環状をなす。外側段面102sは、取付金具80の段状部83に、基端側GKから全周にわたり当接している。一方、内側段面102kには、主体金具30のフランジ部31が基端側GKから当接している。
【0035】
この第1絶縁スペーサ100は、ガス接触部101sを加熱するスペーサ用ヒータ105を、第1絶縁スペーサ100の内部に有する。具体的には、このスペーサ用ヒータ105は、タングステンからなる発熱抵抗体106と、この発熱抵抗体106の両端に導通する一対の第1−1ヒータ端子107及び第1−2ヒータ端子108とを有する。このうち発熱抵抗体106は、スペーサ先端側部101の部材内部に、蛇行状をなしながら全周にわたり形成されている。また、第1−1ヒータ端子107は、スペーサ中間部102の外側段面102sに形成されており、取付金具80に導通している。具体的には、この第1−1ヒータ端子107は、外側段面102sの全面に、第1絶縁スペーサ100の周方向に延びる円環状に形成されており、全周にわたり取付金具80の段状部83に当接している。
【0036】
一方、第1−2ヒータ端子108は、スペーサ基端側部103の内周面103nの基端側部分に、第1絶縁スペーサ100の周方向に延びる円筒状に形成されている。スペーサ基端側部103の径方向内側には、円筒状のヒータ接続金具85が配置されており、スペーサ基端側部103の内周面103nの第1−2ヒータ端子108に接触している。このヒータ接続金具85には、後述する電線171の第1−1ヒータリード線172の先端部172sが接続されている。この電線171は、ヒータ接続金具85から、内側金具20と外側金具70との間を基端側GKに延び、更に外側金具70の外部に延出している。
【0037】
次に、第2絶縁スペーサ110について説明する。この第2絶縁スペーサ110は、長手方向GHに延びる筒状でアルミナ製の部材である。第2絶縁スペーサ110は、内側金具20と外側金具70との間に介在して両者を離間しつつ電気的に絶縁する。具体的には、第2絶縁スペーサ110は、内側金具20のうち内筒40の先端側部分と、外側金具70のうち取付金具80との間に配置されている。この第2絶縁スペーサ110は、先端側GSに位置する先端側部111と、基端側GKに位置する基端側部113とからなる。
【0038】
このうち先端側部111は、基端側部113よりも外径が小さく肉薄とされている。この先端側部111は、第1絶縁スペーサ100のスペーサ基端側部103と内筒40との間に配置されている。また、この先端側部111の外周面111mには、第2絶縁スペーサ110の周方向に延びる凹溝111vが全周にわたり形成されており、この凹溝111vには、前述のヒータ接続金具85が配置されている。一方、基端側部113は、第1絶縁スペーサ100のスペーサ基端側部103よりも基端側GKに位置し、取付金具80と内筒40との間に配置されている。
【0039】
前述のように、取付金具80の加締部80kkは、線パッキン87を介して第2絶縁スペーサ110を先端側GSに押圧している。これにより、第2絶縁スペーサ110の先端側部111は、内筒40のフランジ部41及び主体金具30のフランジ部31を先端側GSに押圧する。更にこれらのフランジ部41,31は、第1絶縁スペーサ100のスペーサ中間部102を先端側GSに押圧して、このスペーサ中間部102が、取付金具80の段状部83に係合する。かくして、第1絶縁スペーサ100及び第2絶縁スペーサ110が、内側金具20(主体金具30及び内筒40の先端側部分)と外側金具70(取付金具80)との間に固定されている。
【0040】
次に、セラミック素子120について説明する(
図6,
図7も参照)。このセラミック素子120は、長手方向GHに延びる板状で、絶縁材であるアルミナからなるセラミック基体121(絶縁部材)を有しており、このセラミック基体121内に、放電電極体130、補助電極体140及び素子用ヒータ150が埋設されて一体焼結されている。具体的には、セラミック基体121は、アルミナグリーンシート由来のアルミナからなる3つのセラミック層122,123,124を積層してなり、これらの層間には印刷により形成されたアルミナからなる2つの絶縁被覆層125,126がそれぞれ介在している。このうちセラミック層122及び絶縁被覆層125は、セラミック層123,124及び絶縁被覆層126よりも、先端側GS及び基端側GKでそれぞれ長手方向GHに短くされている。そして、絶縁被覆層125とセラミック層123の間に放電電極体130が配置されている。また、セラミック層123と絶縁被覆層126の間に補助電極体140が配置され、絶縁被覆層126とセラミック層124の間に素子用ヒータ150が配置されている。
【0041】
放電電極体130は、長手方向GHに延びる形態を有しており、先端側GSに位置する針状の針状電極部131と、基端側GKに位置する放電電位パッド135と、これらの間を結ぶリード部133とからなる。針状電極部131は、白金線からなる。一方、リード部133及び放電電位パッド135は、パターン印刷されたタングステンからなる。放電電極体130のうち、針状電極部131の基端側部131kとリード部133の全体は、セラミック基体121内に埋設されている。一方、針状電極部131のうち先端側部131sは、セラミック基体121のうち、セラミック層122よりも先端側GSで、セラミック基体121から突出している。これにより、この針状電極部131の先端側部131sを含むセラミック素子120の先端側部分は、コロナ放電(後述する)によりイオンCPを生成するイオン源15をなしている。また、このイオン源15において、針状電極部131の先端側部131sのうち、先端の針状先端部131ssが、コロナ放電(気中放電)を生じる放電部であり、後述するように、この針状先端部131ssと内側プロテクタ60との間でコロナ放電(気中放電)を生じ、イオンCPを生成する。
なお、セラミック基体121の先端側部分の表面は、ガス取入管25(内側プロテクタ60及び外側プロテクタ65)内に取り入れた排気ガスEGに接するガス接触表面121sとなっている(
図8参照)。
また、放電電位パッド135は、セラミック基体121のうち、セラミック層122よりも基端側GKで露出している。この放電電位パッド135には、前述したように、第1セパレータ44の挿通孔44c内で放電電位端子46が接触する。
【0042】
補助電極体140は、長手方向GHに延びる形態を有しており、パターン印刷により形成されて、その全体がセラミック基体121内に埋設されている。この補助電極体140は、先端側GSに位置し、矩形状をなす補助電極部141と、この補助電極部141に接続し基端側GKに延びるリード部143とからなる。リード部143の基端部143kは、絶縁被覆層126の貫通孔126cを通じて、セラミック層124の一方の主面124aに形成された導通パターン145に接続している。更に、この導通パターン145は、セラミック層124に貫通形成されたスルーホール導体146を通じて、セラミック層124の他方の主面124bに形成された補助電位パッド147に接続している。この補助電位パッド147には、前述したように、第2セパレータ45の第2挿通孔45d内で補助電位端子47が接触する。
【0043】
素子用ヒータ150は、パターン印刷により形成されて、その全体がセラミック基体121内に埋設されている。素子用ヒータ150は、先端側GSに位置しこのセラミック素子120を加熱する発熱抵抗体151と、この発熱抵抗体151の両端に接続し基端側GKに延びる一対のヒータリード部152,153とからなる。一方のヒータリード部152の基端部152kは、セラミック層124に貫通形成されたスルーホール導体155を介して、セラミック層124の他方の主面124bに形成された第2−1ヒータパッド156に接続している。この第2−1ヒータパッド156には、前述したように、第2セパレータ45の第2挿通孔45d内で第2−1ヒータ端子48が接触する。また、他方のヒータリード部153の基端部153kは、セラミック層124に貫通形成されたスルーホール導体157を介して、セラミック層124の他方の主面124bに形成された第2−2ヒータパッド158に接続している。この第2−2ヒータパッド158には、前述したように、第2セパレータ45の第2挿通孔45d内で第2−2ヒータ端子49が接触する。
【0044】
次に、電線161,163,171,173,175について説明する。これら5本の電線のうち、2本の電線161,163は、三重同軸ケーブル(トライアキシャルケーブル)であり、残り3本の電線171,173,175は、細径で単芯の絶縁電線である。
このうち電線161は、芯線(中心導体)として放電電位リード線162を有し、この放電電位リード線162は、前述のように、第2セパレータ45の第1挿通孔45c内で放電電位端子46に接続している。また、電線163は、芯線(中心導体)として補助電位リード線164を有し、この補助電位リード線164は、第2セパレータ45の第2挿通孔45d内で補助電位端子47に接続している。また、これらの電線161,163の同軸二重の外部導体のうち、内側の内側外部導体161g1,163g1は、内側金具20の内筒接続金具50に接続しており、第1電位PV1とされる。一方、外側の外側外部導体161g2,163g2は、外側金具70に導通する外筒接続金具95に接続しており、接地電位PVEとされる。
【0045】
また、電線171は、芯線として第1−1ヒータリード線172を有する。この第1−1ヒータリード線172は、前述のように、取付金具80の内部でヒータ接続金具85に接続している。また、電線173は、芯線として第2−1ヒータリード線174を有する。この第2−1ヒータリード線174は、第2セパレータ45の第2挿通孔45d内で第2−1ヒータ端子48に接続している。また、電線175は、芯線として第2−2ヒータリード線176を有する。この第2−2ヒータリード線176は、第2セパレータ45の第2挿通孔45d内で第2−2ヒータ端子49に接続している。
【0046】
次に、回路部200について説明する(
図4参照)。この回路部200は、粒子センサ10の電線161,163,171,173,175に接続されており、粒子センサ10を駆動すると共に、後述する信号電流Isを検知する回路を有する。回路部200は、イオン源電源回路210と、補助電極電源回路240と、計測制御回路220とを有する。
【0047】
このうちイオン源電源回路210は、第1電位PV1とされる第1出力端211と、第2電位PV2とされる第2出力端212とを有する。第2電位PV2は、第1電位PV1に対して、正の高電位とされる。
補助電極電源回路240は、第1電位PV1とされる補助第1出力端241と、補助電極電位PV3とされる補助第2出力端242とを有する。この補助電極電位PV3は、第1電位PV1に対して、正の直流高電位であるが、第2電位PV2のピーク電位よりも低い電位とされる。
【0048】
計測制御回路220は、信号電流検知回路230と、第1ヒータ通電回路223と、第2ヒータ通電回路225とを有する。このうち信号電流検知回路230は、第1電位PV1とされる信号入力端231と、接地電位PVEとされる接地入力端232とを有する。なお、接地電位PVEと第1電位PV1とは、互いに絶縁されており、信号電流検知回路230は、信号入力端231(第1電位PV1)と接地入力端232(接地電位PVE)との間を流れる信号電流Isを検知する回路である。
【0049】
また、第1ヒータ通電回路223は、PWM制御により第1絶縁スペーサ100のスペーサ用ヒータ105に通電してこれを加熱する回路であり、電線171の第1−1ヒータリード線172に接続される第1−1ヒータ通電端223aと、接地電位PVEとされる第1−2ヒータ通電端223bとを有する。
【0050】
なお、スペーサ用ヒータ105の第1−1ヒータ端子107は、ヒータ接続金具85及び電線171の第1−1ヒータリード線172を介して、第1ヒータ通電回路223の第1−1ヒータ通電端223aに導通している。また、スペーサ用ヒータ105の第1−2ヒータ端子108は、外側金具70及び外筒接続金具95を介して、接地電位PVEとされる第1ヒータ通電回路223の第1−2ヒータ通電端223bに導通している。
【0051】
このため、第1ヒータ通電回路223から、スペーサ用ヒータ105の第1−1ヒータ端子107と第1−2ヒータ端子108との間に所定のヒータ通電電圧を印加すると、スペーサ用ヒータ105の発熱抵抗体106が通電により発熱する。これにより、第1絶縁スペーサ100のスペーサ先端側部101を加熱して、スペーサ先端側部101のガス接触部101sに付着した煤(粒子S)からなる付着粒子SA(
図2参照)を燃焼させて除去する。
【0052】
また、第2ヒータ通電回路225は、PWM制御によりセラミック素子120の素子用ヒータ150に通電してこれを加熱する回路であり、電線173の第2−1ヒータリード線174に接続される第2−1ヒータ通電端225aと、電線175の第2−2ヒータリード線176に接続されて接地電位PVEとされる第2−2ヒータ通電端225bとを有する。
【0053】
なお、素子用ヒータ150の第2−1ヒータパッド156は、第2−1ヒータ端子48及び電線173の第2−1ヒータリード線174を介して、第2ヒータ通電回路225の第2−1ヒータ通電端225aに導通している。また、素子用ヒータ150の第2−2ヒータパッド158は、第2−2ヒータ端子49及び電線175の第2−2ヒータリード線176を介して、第2ヒータ通電回路225の第2−2ヒータ通電端225bに導通している。
【0054】
このため、第2ヒータ通電回路225から、素子用ヒータ150の第2−1ヒータパッド156と第2−2ヒータパッド158との間に所定のヒータ通電電圧を印加すると、素子用ヒータ150の発熱抵抗体151が通電により発熱する。これにより、セラミック素子120(セラミック基体121のガス接触表面121sのうち、針状電極部131の針状先端部131ss(放電部)の周囲に位置する放電部周囲表面121ss)を加熱して、セラミック素子120(セラミック基体121の放電部周囲表面121ssや針状電極部131の針状先端部131ss)に付着した煤(粒子S)からなる付着粒子SA(
図9参照)を燃焼させて除去する。
【0055】
また、回路部200において、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240は、第1電位PV1とされる内側回路ケース250に包囲されている。また、この内側回路ケース250は、絶縁トランス270の二次側鉄心271bを収容して包囲すると共に、電線161,163のうち、第1電位PV1とされる内側外部導体161g1,163g1に導通している。絶縁トランス270は、その鉄心271が、一次側コイル272を捲回した一次側鉄心271aと、電源回路側コイル273及び補助電極電源側コイル274を捲回した二次側鉄心271bとに、分離して構成される。このうち一次側鉄心271aは、接地電位PVEに導通し、二次側鉄心271bは、第1電位PV1に導通している。
【0056】
更に、イオン源電源回路210、補助電極電源回路240、内側回路ケース250、及び計測制御回路220は、接地電位PVEとされる外側回路ケース260に包囲されている。また、この外側回路ケース260は、絶縁トランス270の一次側鉄心271aを収容して包囲すると共に、電線161,163のうち、接地電位PVEとされる外側外部導体161g2,163g2に導通している。
【0057】
計測制御回路220は、レギュレータ電源PSを内蔵している。このレギュレータ電源PSは、電源配線BCを通じて外部のバッテリBTで駆動される。レギュレータ電源PSを通じて計測制御回路220に入力された電力の一部は、絶縁トランス270を介して、イオン源電源回路210及び補助電極電源回路240に分配される。また、計測制御回路220は、マイクロプロセッサ221を有し、通信線CCを介して(具体的には、
図1に示すようにCANバスを通じて)エンジン制御ユニットECU(以下、単にECUともいう)と通信可能となっており、前述した信号電流検知回路230の測定結果(信号電流Isの大きさ)などの信号を、ECUに送信可能となっている。
【0058】
次いで、粒子検知システム1の電気的機能及び動作について説明する(
図8,
図4参照)。セラミック素子120の放電電極体130は、電線161の放電電位リード線162を介して、イオン源電源回路210の第2出力端212に接続、導通しており、第2電位PV2とされる。一方、セラミック素子120の補助電極体140は、電線163の補助電位リード線164を介して、補助電極電源回路240の補助第2出力端242に接続、導通しており、補助電極電位PV3とされる。更に、内側金具20は、電線161,163の内側外部導体161g1,163g1を介して、内側回路ケース250等に接続、導通しており、第1電位PV1とされる。加えて、外側金具70は、電線161,163の外側外部導体161g2,163g2を介して、外側回路ケース260等に接続、導通しており、接地電位PVEとされる。
【0059】
ここで、放電電極体130の針状電極部131に、回路部200のイオン源電源回路210から、電線161の放電電位リード線162、放電電位端子46、及び放電電位パッド135を通じて、正の高電圧(例えば、1〜2kV)の第2電位PV2を印加する。すると、この針状電極部131の針状先端部131ssと、第1電位PV1とされた内側プロテクタ60との間で、気中放電、具体的にはコロナ放電を生じ、針状先端部131ssの周囲でイオンCPが生成される。前述したように、ガス取入管25の作用により、内側プロテクタ60内には、排気ガスEGが取り入れられ、セラミック素子120付近において、基端側GKから先端側GSに向かう取入ガスEGIの気流が生じている。このため、生成されたイオンCPは、取入ガスEGI中の粒子Sに付着する。これにより、粒子Sは、正に帯電した帯電粒子SCとなって、取入ガスEGIと共に、ガス排出口60eに向けて流れ、排気管EPへ排出される。
【0060】
一方、補助電極体140の補助電極部141には、回路部200の補助電極電源回路240から、電線163の補助電位リード線164、補助電位端子47、及び補助電位パッド147を通じて、所定の電位(例えば、100〜200Vの正の直流電位)とされた補助電極電位PV3を印加する。これにより、生成したイオンCPのうち、粒子Sに付着しなかった浮遊イオンCPFに、補助電極部141からその径方向外側の内側プロテクタ60(捕集極)に向かう斥力を与える。そして、浮遊イオンCPFを、捕集極(内側プロテクタ60)の各部に付着させて捕集を補助する。かくして、確実に浮遊イオンCPFを捕集することができ、浮遊イオンCPFまでもがガス排出口60eから排出されるのを防止する。
【0061】
そして、この粒子検知システム1では、ガス排出口60eから排出された帯電粒子SCに付着していた排出イオンCPHの電荷量に対応するセンサ信号である信号電流Isを、信号電流検知回路230で検知する。これにより、排気ガスEG中に含まれる粒子Sの量(濃度)を検知できる。
【0062】
なお,本実施形態では、
図8において破線で示すように、粒子センサ10の検知部11のうち、イオン源15をなすセラミック素子120の先端側部分、及び、このイオン源15の周囲に位置する内側プロテクタ60、並びに、これらイオン源15及び内側プロテクタ60の間の空間VOが、イオンCPを排気ガスEG中を浮遊する粒子Sに付着させ帯電させて帯電粒子SCとする帯電部12である(
図8参照)。即ち、本実施形態では、検知部11は、イオン源15を含む帯電部12を有している。
【0063】
ところで、排気ガスEGに含まれる煤である粒子Sは、イオン源15をなすセラミック素子120のうち、コロナ放電を生じる放電電極体130の針状電極部131(特に針状電極部131の針状先端部131ssの周囲)等に堆積して付着しやすい(付着粒子SAとなりやすい)。そして、この付着粒子SAを除去するには、素子用ヒータ150でセラミック素子120のうち、針状先端部131ssの周囲に位置するセラミック基体121の放電部周囲表面121ssを、付着粒子SAが燃える温度に昇温して、セラミック素子120(セラミック基体121の放電部周囲表面121ssや針状電極部131の針状先端部131ss)に付着した付着粒子SAを、定期的に燃焼させて除去する必要がある(
図9参照)。
【0064】
また、第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sに煤(粒子S)からなる付着粒子SAが付着して、第1電位PV1とされる内側金具20と接地電位PVEとされる外側金具70との間の絶縁性が低下すると、数μA以下となる微小な信号電流Isの検知に誤差を生じ、粒子Sを適切に検知できなくなる。このため、スペーサ用ヒータ105に通電して、第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sを加熱し昇温させることにより、第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sに付着した煤(粒子S)からなる付着粒子SAを、定期的に燃焼させて除去する必要がある(
図2参照)。
【0065】
なお、セラミック基体121の放電部周囲表面121ss及び第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sに付着した付着粒子SAを燃焼させて除去するにあたっては、所定時間毎に通電するなど、通電の間隔を予め定めて素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105に通電することが考えられる。しかしながら、このように通電の間隔を予め定めてヒータ通電を行うようにすると、ヒータ通電の間隔が長い場合や、煤(粒子S)の量が多かった場合には、次の通電タイミングが来るまでに、粒子Sの検知性能の低下が生じることがある。一方、ヒータ通電の間隔を短くしすぎると、消費電力が大きくなるという問題がある。
【0066】
そこで、本実施形態のシステム1では、検知した粒子Sの量を所定期間Tdにわたって積算した粒子量積算値MS(後述する)に基づいて、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105への通電を制御する。
具体的には、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105への前回の通電以降の粒子量積算値MSが予め定めた規定値RSを超えた場合に、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105への通電を行う。即ち、本実施形態では、前回の通電以降の期間を粒子量積算値MSを算出する所定期間Tdとし、粒子量積算値MSに基づいて、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105に通電するタイミングを制御する。
これにより、検知した粒子Sの量が多い場合には早いタイミングで、検知した粒子Sの量が少ない場合には遅いタイミングで、それぞれ適切なタイミングでヒータ通電を行って、付着粒子SAを除去することができる。
【0067】
以下、本実施形態のシステム1のうち、粒子検知及びヒータ通電の処理を実行するマイクロプロセッサ221の動作について、
図10に示すフローチャートを参照して説明する。
エンジンENGのキースイッチ(図示しない)がONにされると、本システム1(計測制御回路220のマイクロプロセッサ221)が起動され、まず、ステップS1で、粒子検知及びヒータ通電に必要な初期設定がなされる。その後、ステップS2において、ECUからの粒子検知開始の指示信号ST(
図4参照)の有無を検知する。
【0068】
ECUからの粒子検知開始の指示信号STが無い場合(No)には、ステップS2を繰り返して、ECUからの粒子検知開始の指示信号STの入力を待つ。そして、ECUからの粒子検知開始の指示信号STを検知した場合(Yes)には、ステップS3に進む。
【0069】
ステップS3では、イオン源電源回路210で生成した高電圧をイオン源15(セラミック素子120の放電電極体130)に印加して、コロナ放電によりイオンCPを生成し、排出イオンCPHの電荷量に対応する信号電流Isを信号電流検知回路230で検知するなど、所定の粒子検知の処理を行って、排気ガスEG(被測定ガス)中の粒子Sの量を検知する。
【0070】
続くステップS4では、検知した粒子Sの量を積算した粒子量積算値MSを算出する。粒子量積算値MSは、後述するステップS7でクリアされる。このため、前回のヒータ通電以降の期間(=所定期間Td)における、粒子Sの量の積算値が、粒子量積算値MSとなる。
【0071】
次いで、ステップS5では、粒子量積算値MSが予め定めた規定値RSを超えたか否かを判定する。粒子量積算値MSが規定値RSを超えていないとき(No)は、セラミック基体121の放電部周囲表面121ss及び第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sへの付着粒子SAの付着による粒子Sの検知性能の低下はまだ生じない状態である。このため、ヒータ通電を行わず、ステップS6及びステップS7をスキップして、ステップS8に進む。一方、粒子量積算値MSが規定値RSを超えたとき(Yes)は、粒子Sの検知性能の低下が近い状態であり、ヒータ通電を行うため、ステップS6に進む。
【0072】
ステップS6では、所定の通電時間Teにわたり、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105に通電する。なお、通電時間Teは、粒子量積算値MSが規定値RSを超えたときに、ヒータ通電を行って、セラミック基体121の放電部周囲表面121ss及び第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sに付着した付着粒子SAを燃焼除去することが可能な時間に設定してある。これにより、適切なタイミングでヒータ通電を行って、セラミック基体121の放電部周囲表面121ss及び第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sに付着した付着粒子SAを燃焼させて除去する。
そして、通電時間Teにわたるヒータ通電が終了すると、ステップS7に進み、粒子量積算値MSをクリアする。
【0073】
次いで、ステップS8では、ヒータ通電をエンジンENGのキースイッチがOFFになったか否かを判断する。そして、エンジンENGのキースイッチがOFFになっていない場合(No)には、ステップS3に戻り、粒子検知の処理を継続する。一方、エンジンENGのキースイッチがOFFになった場合(Yes)には、粒子検知及びヒータ通電の処理を終了する。
【0074】
本実施形態において、セラミック素子120のセラミック基体121が絶縁部材に相当し、第1絶縁スペーサ100が絶縁部材及び絶縁スペーサに相当する。また、セラミック素子120が有する素子用ヒータ150及び第1絶縁スペーサ100が有するスペーサ用ヒータ105がヒータ部に相当する。さらに、放電部周囲表面121ssを含むセラミック基体121のガス接触表面121s及び第1絶縁スペーサ100のガス接触部101sが、ガス接触表面に相当する。
また、信号電流Isがセンサ信号に相当し、計測制御回路220の信号電流検知回路230及びステップS3を実行しているマイクロプロセッサ221が、粒子量検知部に相当する。また、ステップS4を実行しているマイクロプロセッサ221が、積算値算出部に相当する。
また、計測制御回路220の第2ヒータ通電回路225及び第1ヒータ通電回路223並びにステップS6を実行しているマイクロプロセッサ221が、ヒータ通電制御手段に相当する。
【0075】
このように、本実施形態のシステム1では、検知した粒子Sの量を所定期間Tdにわたって積算した粒子量積算値MSに基づいて、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105(ヒータ部)への通電を制御する。
具体的には、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105への前回の通電以降の粒子量積算値MSが規定値RSを超えた場合に、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105への通電を行う(所定期間Td=前回の通電以降の期間)。これにより、適切なタイミングで付着粒子SAの除去を行うことができ、粒子Sの検知性能の低下を防止できる。
また、不必要に素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105に通電することがないので、省電力化を図ることができる。
【0076】
さらに、本実施形態のシステム1では、セラミック素子120のうち、放電電極体130を覆うセラミック基体121(絶縁部材)の放電部周囲表面121ssを素子用ヒータ150(ヒータ部)で加熱する。このため、このセラミック基体121の放電部周囲表面121ssや針状電極部131の針状先端部131ss(放電部)に付着した付着粒子SAを除去して、イオン源15において気中放電を適切に生じさせることができる。これにより、粒子Sの検知性能の低下を防止することができる。
【0077】
さらに、本実施形態のシステム1では、第1電位PV1とされる内側金具20と接地電位PVEとされる外側金具70との間に介在する第1絶縁スペーサ100(絶縁部材,絶縁スペーサ)のガス接触部101s(ガス接触表面)をスペーサ用ヒータ105(ヒータ部)で加熱する。
これにより、第1電位PV1と接地電位PVEとの間に流れる漏れ電流を抑制し、センサ信号である信号電流Isを適切に検知することができる。このため、漏れ電流の影響によって信号電流Isの検知精度が低下し、粒子Sの検知性能が低下するのを防止することができる。
【0078】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、排気ガスEG(被測定ガス)に晒される検知部11が、気中放電によりイオンCPを生成するイオン源15を含む帯電部12を有する粒子検知システムに適用した例を示した。しかし、粒子センサの検知部はこれに限られない。例えば、電極の表面上に粒子を付着させて、電極に高電圧を印加することにより、粒子Sを帯電した帯電粒子SCとする帯電部を検知部に有する粒子センサを備える粒子検知システムに適用しても良い(特許文献2,3参照)。この場合、ヒータ部としては、例えば、粒子が付着する帯電部の電極間を絶縁する絶縁部材を加熱するものが挙げられる。
【0079】
また、実施形態では、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105への前回の通電以降の期間を粒子量積算値MSを算出する所定期間Tdとし、この前回の通電以降の粒子量積算値MSが規定値RSを超えた場合に、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105への通電を行った。即ち、実施形態では、粒子量積算値MSに基づいて、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105に通電するタイミングを制御した。しかし、粒子量積算値MSに基づいて、ヒータ部(素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105)への通電を制御する手法はこれに限られない。
【0080】
例えば、所定期間Td毎にヒータ部に通電する場合に、所定期間Td内に得られた粒子量積算値MSが多いほど、通電時間Teを長くするなど、粒子量積算値MSに基づいて、ヒータ部に通電する通電時間Teの長さを制御するようにしても良い。
また、所定期間Td毎にヒータ部に通電する場合に、所定期間Td内に得られた粒子量積算値MSが多いほど、所定の通電時間Teにヒータ部に印加する電力を大きくするなど、粒子量積算値MSに基づいて、ヒータ部に印加する電力の大きさを制御するようにしても良い。
【0081】
また、実施形態では、粒子量積算値MSが規定値RSを超えたときに、素子用ヒータ150及びスペーサ用ヒータ105に同時に通電したが、例えば、2通りの粒子量積算値を設けて、それぞれ別々の規定値と比較することにより、素子用ヒータ150とスペーサ用ヒータ105とを、別々に通電するようにしても良い。