特許第6397714号(P6397714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397714
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/22 20060101AFI20180913BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20180913BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01F27/22
   H01F37/00 S
   H01F27/24 P
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-204570(P2014-204570)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2016-76535(P2016-76535A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】篠田 勝
(72)【発明者】
【氏名】小野 清人
(72)【発明者】
【氏名】山中 哲
(72)【発明者】
【氏名】北岡 幹雄
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−64318(JP,A)
【文献】 特開2011−61096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/22
H01F 27/24
H01F 37/00
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのコア部材をギャップを介して上下方向で対向配置させてなるコアに導線が巻回されてなるコイル部品が金属板からなる放熱基板上に載置されてなるコイル装置であって、
前記二つのコアの少なくとも一方はE型コア部材であり、当該E型コア部材は、左右に側面を有するとともに、前記導線が巻回される中足が上下方向に延長して形成され、
屈曲した金属板からなる第1および第2の放熱板を備え、
前記第1および第2の放熱板は、コアの上面および側面に接触するように形成されているとともに、それぞれの一方の縁端同士が間隙を介して前記コアに対して左右対称に配置されて、他方の縁端が前記放熱基板に接触している、
ことを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
請求項1において、前記コアは下方をE型コア部材としたEI型コアであることを特徴とするコイル装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記第1および第2の放熱板の前記間隙を一定の距離に保持するための手段を備えたことを特徴とするコイル装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記コアの左右幅Wと前記二つの放熱板間の前記間隙Δwとの比Δw/Wが0.3以下であることを特徴とするコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスやチョークコイルなどのコイル部品を含んで構成されるコイル装置に関する。具体的には、コイル装置における放熱技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に本発明の対象となるコイル装置1の基本構造を示した。図1(A)はコイル装置1の斜視図であり、図1(B)は(A)におけるa−a矢視断面図である。すなわちコイル4の軸を上下方向として、図示したように左右前後の各方向を規定したときに上下左右方向の縦断面を(A)に示した矢印(a−a)方向で見たときの図である。そしてこのコイル装置1は、左右に側面を有するとともに前後正面から見たときの形状がE字型をした二つのコア部材(2u、2d)を上下方向で対向配置した周知のEE型コア2と、コア2の中足3に導線が巻回されてなるコイル4とを備えたトランスなどの電子部品(以下、コイル部品10とも言う)を含んで構成されている。そしてコアの下面11が金属からなる放熱基板5に接触している。それによってコイル4に通電することで発生した熱がコア2を介して放熱基板5に導かれ、コイル部品10が冷却されるようになっている。
【0003】
ところでコイル装置を用いて構成されるDC−DCコンバーターなどの電子モジュールには小型化とともに高出力化が求められている。そしてコイル装置の高出力化は電子モジュールの高出力化に直結し、他の電子部品と比較すると実装面積が大きいコイル装置の小型化は電子モジュールの小型化に大きく寄与する。しかしながらコイル装置を高出力化したり小型化したりしようとするとコイルにて発生した熱を効率よく放熱させることが難しくなるという問題がある。
【0004】
具体的には、コイル装置の高出力化を達成するためにはコイルに流す電流を大きくすることになるが、コアの飽和磁束密度を超えるような大電流がコイルに流れてしまうとコイル装置を駆動するスイッチング素子を破壊してしまう可能性がある。そこでコイル装置のコアには磁気飽和を防止するためのギャップ(図1、符号20)が設けられている。しかし高出力化を目指せば、結局のところ、コイルの巻線にはある程度大きな電流を流してより大きな磁束密度を得ようとすることになり、高出力化に対応するコイル装置では自ずと発熱が大きなものとなる。そしてコイル装置の高出力化には熱伝導率の低い空気の層である上記のギャップが必須の構成となっている。そのため、コイル装置の高出力化と放熱効率の向上とを両立させることが難しくなる。とくに放熱基板に直接接触していない上側のコア部材は、熱源となるコイルが巻回されている中足から放熱基板までの経路が実質的に分断されているため温度が下がりにくい。加えてコイル装置の小型化を達成しようとすると放熱基板との接触面積が小さくなりさらに放熱が難しくなる。もちろん小型化によりコアの熱容量が小さくなり熱を効果的に大気放出することができない。放熱が不十分であればコイル装置が熱暴走を起こしコイル装置が機能不全となる。また電子モジュールの小型化は、コイル装置の周辺に電子部品を高密度で実装することでもあり、コイル装置周辺の電子部品が熱によって破損する可能性もある。もちろん、温度上昇を抑えるための冷却装置(ファンなど)を設置すれば電子モジュールの大型化は免れない。
【0005】
そこで以下の特許文献1には上方のコア部材の熱を放熱基板側へ案内するための構成を備えたトランス取付装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−206308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のトランス取付装置は、金属からなる平板状のヒートシンクの上方に実装されたトランスと、トランスのコア上面に載置された放熱シートと、この放熱シートを固定しつつトランス上部の熱をヒートシンクに導くためのトランス取付部材とから構成されている。トランス取付部材は、放熱シートを上方から押さえる天井部と、天井部に連続しつつコアの側面に沿うように下方に向かって屈曲して垂下する取付腕部とから構成されている。そして取付腕部の末端はヒートシンクと対面するように外方に向かって直角に屈曲した取付け部が形成されており、その取付部がヒートシンク(放熱基板)にネジ止めされる。
【0008】
しかしこの特許文献1に記載されたトランス取付装置では、コア上面の熱をその上面に接触する放熱シートとその放熱シートに接触するトランス取付部材を介してヒートシンクにまで導いていることから、熱伝導の効率が低く、高出力化に対応したコイル装置では大きな放熱効果が得られない。またトランス取付部材は、放熱シートが弾性によって厚さ方向に復元しないように放熱シートをコアの上面に押さえつける必要があるため、トランス取付部材の下端がヒートシンクにネジ止めされている。したがって実装面積が限られている場合には、トランス取付装置を基板上に実装すること自体が難しくなる。
【0009】
そこで本発明は、実装面積を大きくすることなく、効果的に放熱させることができるコイル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、二つのコア部材をギャップを介して上下方向で対向配置させてなるコアに導線が巻回されてなるコイル部品が金属板からなる放熱基板上に載置されてなるコイル装置であって、
前記二つのコアの少なくとも一方はE型コア部材であり、当該E型コア部材は、左右に側面を有するとともに、前記導線が巻回される中足が上下方向に延長して形成され、
屈曲した金属板からなる第1および第2の放熱板を備え、
前記第1および第2の放熱板は、コアの上面および側面に接触するように形成されているとともに、それぞれの一方の縁端同士が間隙を介して前記コアに対して左右対称に配置されて、他方の縁端が前記放熱基板に接触している、
ことを特徴とするコイル装置としている。
【0011】
また、前記コアが下方をE型コア部材としたEI型コアであるコイル装置とすればより好ましい。前記第1および第2の放熱板の前記間隙を一定の距離に保持するための手段を備えたことを特徴とするコイル装置としてもよい。前記コアの左右幅Wと前記二つの放熱板間の前記間隙Δwとの比Δw/Wが0.3以下であるコイル装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコイル装置によれば、実装面積を大きくすることなく、効果的に放熱させることができ、さらなる小型化や高出力化に対応することが可能となる。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一般的なコイル装置の一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施例に係るコイル装置を示す図である。
図3】上記第1の実施例に係るコイル装置の放熱特性を比較調査するために用意した各種コイル装置の構造を示す図である。
図4】上記第1の実施例に係るコイル装置を構成する二つの放熱板の間隔と放熱効果との関係を示す図である。
図5】本発明の第2の実施例に係るコイル装置を示す図である。
図6】本発明のその他の実施例に係るコイル装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例について、以下に添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一または類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。図面によっては説明に際して不要な符号を省略することもある。
【0015】
===第1の実施例===
本発明の実施例に係るコイル装置は、放熱基板とトランスなどのコイル部品とから構成され、例えば、DC−DCコンバーターなどの電子モジュールの回路基板上に実装される。もちろん放熱基板が回路基板上に組み込まれていてもよい。いずれにしても、コイル部品を構成するコアが放熱基板に接触した状態で固定されている構造を有している。
【0016】
<構造>
図2は本発明の第1の実施例に係るコイル装置1aを示す図である。図2(A)はこのコイル装置1aの斜視図であり、図2(B)は(A)におけるb−b矢視断面図である。ここで図中に示したように上下左右前後の各方向を規定すると、このコイル装置1aは図1に示した従来のコイル装置1と同様に、EE型のコア2の中足3に導線が巻回されてなるコイル部品10を放熱基板5上に載置した構造を基本としている。しかしこのコイル装置1aでは、従来のコイル装置1に対し、コア2の上面12側の熱を下面11側の放熱基板5に効果的に導いたり、効率よく大気放出させたりするための構造を備えている点が異なっている。
【0017】
具体的には、前後方向の幅がコア2の前後長(以下、奥行きD)と同じ平板状の金属を屈曲させてなる放熱板(30L、30R)がコア2の上面12と左右の側面(13L、13R)に接触している。放熱板(30L、30R)は、二つのL字状の金属板(以下、L字型放熱板(30L、30R)とも言う)によって構成されており、この二つのL字型放熱板(30L、30R)は、それぞれの一端(31L、31R)がコア2の上面12で対向している。そして二つのL字型放熱板(30L、30R)はそれぞれの一端(31L、31R)から左方あるいは右方に向けて延長しつつ、上面13の端部で鉛直下方に屈曲して側面(13L、13R)の下端にまで至り、他端(32L、32R)が放熱基板5の上面6に接触している。そして第1の実施例に係るコイル装置1の放熱性能を確認するために、放熱板の有無や放熱板の形状などが異なる各種コイル装置をサンプルとし、各サンプルのコイル4に通電してコイル部品10を発熱させた。そしてコア2の温度を調べた。
【0018】
<サンプル>
各サンプルはいずれも同じコアを用いて構成されている。ここで図2に基づいて各サンプルに共通のコア2の概略について説明すると、フェライトからなるコア2は上述したようにEE型であり、当該コア2には間隙G=0.2mmのギャップ20が設けられている。ここでは二つのE型コア部材(2u、2d)をPETなどからなるフィルムを介して上下方向に対向配置することでギャップ20を形成している。またコア2の外形は、左右幅W=48.9mm、前後の奥行きD=34.0mm、上下高H=24.4mmのサイズを有している。
【0019】
図3は放熱特性を調べるために用意した各種サンプルの構造を示しており、ここでは図2(A)におけるb−b矢視断面に対応する図によって各種サンプルの構造を示している。用意したサンプルは放熱板の有無や放熱板の形状によって4タイプに分類されており、図3(A)は放熱板を設けないタイプのサンプルs1であり、図1に示した従来のコイル装置1に対応している。図3(B)はコア2の上面12の全面に矩形平板状の放熱板30aを配置したタイプのサンプルs2である。図3(C)に示したサンプルs3はコア2の上面12と側面(13L、13R)に接触するように一体的に形成されたコの字型の放熱板30bを用いたタイプであり、この放熱板30bの二つの下端(32L、32R)は放熱基板5の上面6に接触している。そして図3(D)は二つのL字型放熱板(30L、30R)を対向配置したタイプのサンプルs4であり、第1の実施例に係るコイル装置1aもこのタイプに属する。なおこの図3(D)に示したタイプのサンプルs4として、二つのL字型放熱板間(30L−30R)の距離Δwが5mm、10mm、15mm、20mmとなる4種類(以下、サンプルs4a、s4b、s4c、s4dとする)を用意した。すなわち4タイプ7種類のサンプルを用意した。またサンプルs2〜s4に用いた放熱板(30a、30b、30L、30R)は厚さ1mmのアルミニウム板である。
【0020】
<放熱性能>
上述した4タイプ7種類のサンプル(s1〜s3、s4a〜s4d)に対し、同じ条件でコイル4に通電してコア2を発熱させた。なおトランスのコアの損失には温度依存性があり、コイルの条件を等しくしても、その温度上昇の程度により発熱量が変化してしまう。発熱量の変動による差をなくし、コア構成による放熱性の違いのみを比較するために、いずれのサンプル、いずれの上昇温度においても発熱量を一定となるように印加する電流の大きさを調整している。そして図2図4に示したように、コア2の上面12において中足3の直上の位置(以下、測定点Pともいう)の温度を測定した。測定点Pはいずれのサンプルにおいても、そのサンプルにおける最大温度となっている。そしてコア2へ与える発熱量は各サンプルに共通で、ここでは放熱板がないサンプルs1の測定点Pでの温度が50℃となるときの通電条件を採用した。以下の表1に各サンプルs1〜s3、s4a〜s4dにおける測定点Pでの温度を示した。
【0021】
【表1】
表1に示したように、放熱板のない従来のコイル装置1であるサンプルs1に対し、放熱板(30a、30b、30L、30R)を備えたサンプル(s2、s3、s4a〜s4d)の方が放熱効果が高いことが確認できた。またコア2の上面12にのみに配置されたサンプルs2よりも放熱板(30b、30L、30R)がコア2の上面12と側面(13L、13R)に接触しているサンプル(s3、s4a〜s4d)の方が放熱効果が高かった。
【0022】
さらに二つのL字型放熱板(30L、30R)を備えたサンプル(s4a〜s4d)のうちサンプル(s4a〜s4c)は、放熱板30bがコア2の上面12と側面(13L、13R)の全面に接触しているサンプルs3よりも放熱効果が高かった。これはサンプルs3の放熱板30bは下方に開口する「コ」の字形状を有して一体的に形成されており、コア2が発熱したときにコア2と放熱板30bとが互いに追従しあいながら一体的に熱変形することができなかったためと思われる。すなわちコア2の上面12や側面(13L、13R)と放熱板30bとの接触状態が維持されずコア2から放熱板30bへの熱伝導効率が低下したためと考えることができる。
【0023】
一方、二つのL字型放熱板(30L、30R)を間隙Δwを介してコア2の左右に対向配置させたサンプルs4(s4a〜s4d)ではコア2の熱変形に対して二つの放熱板(30L、30R)が個別に追従することができ、放熱板(30L、30R)とコア2の表面との接触が維持される。そして二つの放熱板(30L、30R)の間隙Δwが5、10、15mmのサンプル(s4a〜s4c)では、コア2の熱が効率よくL字型放熱板(30L、30R)に伝わり、結果としてコア2の上面12の熱が効果的に放熱基板5へ導かれ、かつ上下双方のコア部材(2u、sd)の熱も効果的に大気放出されたものと思われる。なお二つのL字型放熱板(30L、30R)の間隙Δwが20mmのサンプルs4dでは、間隙Δwが広すぎたためコア上面12から放熱板(30L、30R)への熱伝導効率が悪化したため、サンプルs3よりも放熱効果が低くなったものと思われる。
【0024】
<放熱板の間隙Δwについて>
上述したように二つのL字型放熱板(30L、30R)を間隙Δwを介してコア2の左右に対向配置させることでコア2に発生した熱を効果的に放熱させることができる。しかし間隙Δwが広すぎると放熱効果が低減することから、コア2の幅Wに応じてこの間隙Δwの値を適切に設定する必要がある。その一方で、間隙Δwを設定するための何らかの指標があれば、コア2の幅Wが異なるコイル装置1aに応じてその都度間隙Δwを最適化する作業が不要となる。そこでコア2の幅Wに対する間隙Δwの比率(Δw/W)と上記測定点Pにおける温度との関係を調べてみた。図4に当該関係をグラフにして示した。
【0025】
図4に示したように、二つのL字型放熱板間(30L―30R)の間隙Δwとコア2の幅Wとの比Δw/Wが0.3以下であれば、間隙Δw=0となるコの字型の放熱板30bを用いたサンプルs3よりも確実に放熱効果を高めることができると言える。したがって、温度を厳密に制御する必要がなければ、コア2の幅Wに対する二つの放熱板間の間隙Δwの割合Δw/Wを0.3以下に設定しておけばよい。
【0026】
===第2の実施例===
ところでコイル装置の熱源はコイルの導線である。そしてその導線からの熱がコアの中足に伝わることでコイル装置の温度が上昇する。上記第1の実施例に係るコイル装置1aではEE型コア2を用いていたため、中足3が上下方向の中央でギャップ20により分断されていた。すなわち中足3の下側に巻回されている導線にて発生した熱については、熱容量が大きな放熱基板5に直接伝達して効果的に放熱されるが、中足3の上下中央から上側に巻回されている導線にて発生した熱は、上側のE型コア部材2uから放熱板(30L、30R)に伝達された上で大気放出されたり、放熱板(30L、30R)から放熱基板5に至る経路によって放熱されたりすることになる。したがってコイル4の導線の全てが一体的な中足3に巻回されるEI型コアを用いれば、中足3の全領域で放熱基板5へ直接放熱される経路が確保されることになり、より大きな放熱効果が得られるはずである。そこで本発明の第2の実施例として、EI型コアと二つのL字型放熱板を備えたコイル装置を挙げる。図5に第2の実施例に係るコイル装置1bの概略構造を示した。図5(A)は当該コイル装置1bの斜視図であり、図5(B)は(A)におけるc−c矢視断面図である。この図5に示したように、第2の実施例に係るコイル装置1bは、I型コア部材102uの下方にE型コア部材102dを配置したEI型コア102を備え、E型コア部材102dの中足3に導線が巻回されてコイル4形成されている。また第1の実施例と同様にコア102の奥行きDと同じ前後幅を有する二つのL字型放熱板(30L、30R)がコア102の上面12にて対向するようにコア102の左右に配置されている。
【0027】
つぎにこの第2の実施例に係るコイル装置1bの放熱特性を調べるために、EI型コア102を用いつつ、二つのL字型放熱板間(30L−30R)の間隙Δwを5mm、10mm、15mm、および20mmとした4種類のサンプル(以下、サンプルs5a〜s5dとする)を用意し、各サンプルs5a〜s5dにおける上記測定点Pでの温度を調べた。もちろんコイル4の外形や形状、およびコア2に与える発熱量は表1に示した各サンプル(s1〜s3、s4a〜s4d)と同じとした。
【0028】
表2にサンプル(s5a〜s5d)における測定点Pでの温度を示した。
【0029】
【表2】
表2に示したように、EE型のコアを用いたサンプル(s4a〜s4d)に対し、EI型のコア102を用いたサンプル(s5a〜s5d)の方が総じて7℃程度温度を低下させることができ、コア102をEI型とすることでより高い放熱効果が得られることが確認できた。
【0030】
===その他の実施例===
第1および第2の実施例に係るコイル装置(1a、1b)では、二つのL字型放熱板(30L、30R)を間隙Δwを介して対向配置させていた。しかしコア(2、102)の温度はコイル4への通電条件に応じて上昇したり降下したりするため、コア(2、102)は熱膨張と熱収縮とを繰り返す。しかも急激に冷却されれば短時間で大きく収縮する。したがってコイル装置は、コアが不規則に膨張したり収縮したりする場合にも対応できるような放熱構造を備えている方がより好ましい。そこでコアの左右に離間して配置される二つの放熱板の間隙Δwを常に一定に保持する手段を設けることが考えられる。図6にその手段を備えたコイル装置1cの一例を示した。
【0031】
図6に例示したコイル装置1cでは二つの放熱板(130L、130R)がコア2の上面12から上方に屈曲するクランク状に形成され、この二つの放熱板(130L、130R)の上方の端部(133L、133R)が左右方向で対面している。またコイル4に通電する前、すなわち発熱が生じる前の初期状態では、二つの放熱板(130L、130R)の端部間(133L−133R)が間隙Δwを隔てて離間しているとともに、互いに対面し合う二つの放熱板(130L、130R)の端部同士(133L―133R)がボルト134などによって固定されている。そしてこのような構造を備えたコイル装置1cでは、コア2が膨張と収縮を繰り返したとしても、コイル4が通電状態にあればコア2は初期状態に対して熱膨張しており、二つの放熱板(130L、130R)は互いに近接する方向に付勢される。それによってコア2と放熱板(130L、130R)との接触状態が確実に維持される。
【0032】
上記各実施例に係るコイル装置(1a〜1c)において、放熱板(30L、30R、130L、130R)の下端(32L、32R)は放熱基板5に接触させていただけであるが、実装面積に余裕があるのであれば、ネジ止めなどによって放熱板(30L、30R、130L、130R)の下端(32L、32R)側を放熱基板5に固定してもよい。いずれにしても、二つの放熱板(30L、30R、130L、130R)が間隙Δwを介してコア2に対して左右対称に配置されつつ、コア2の上面12と側面(13L、13R)、および放熱基板5に接触していればよい。
【0033】
上記第1および第2の実施例を含め、放熱効果を調べるために用意した各サンプルは、放熱板(30a、30b、30L、30R)をコア(2、102)に載置して放熱板(30a、30b、30L、30R)の自重によって固定していた。しかし上記各実施例に係るコイル装置(1a〜1c)を実用に供する際には、放熱板(30a、30b、30L、30R、130L、130R)の脱落を防止するために、接着剤などを用いて放熱板(30a、30b、30L、30R、130L、130R)をコア(2、102)に対して固定しておくことも考えられる。もちろんコア(2、102)から放熱板(30a、30b、30L、30R、130L、130R)への熱伝導を阻害しないように、接着剤などが放熱板(30a、30b、30L、30R、130L、130R)とコア(2、102)の表面との間に介在しないようにする必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、小型大出力のDC−DCコンバーターなどに好適である。
【符号の説明】
【0035】
1,1a〜1c コイル装置、2,102 コア、
2u,2d,102u,102d コア部材、3 コアの中足、4 コイル、
5 放熱基板、10 コイル部品、20 ギャップ、
30a,30b,30L,30R,130L,130R 放熱板
図1
図2
図3
図4
図5
図6