特許第6397729号(P6397729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397729バックゲージ装置及びバックゲージ装置の位置決め方法並びにプレスブレーキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397729
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】バックゲージ装置及びバックゲージ装置の位置決め方法並びにプレスブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
   B21D5/02 X
   B21D5/02 M
   B21D5/02 P
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-228579(P2014-228579)
(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-180508(P2015-180508A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-44578(P2014-44578)
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠
(72)【発明者】
【氏名】秋山 祥吾
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0048088(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0097940(US,A1)
【文献】 実開昭63−011120(JP,U)
【文献】 米国特許第05526672(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスブレーキにおけるバックゲージ装置であって、バックゲージ装置におけるスライド本体に、ワーク突当て面を備えたワーク突当て部材を前後動自在に備えると共に前方向へ付勢して備え、前記ワーク突当て部材を前記スライド本体に一体的に固定自在かつ前記付勢力以上の押圧力でもって前記ワーク突当て部材が後方向へ押圧されたときに固定を解除自在な固定手段を前記スライド本体に備えていることを特徴とするバックゲージ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバックゲージ装置において、前記固定手段は、前記スライド本体に備えられたロックレバーを備え、このロックレバーの一端側に、当該ロックレバーを前記スライド本体に磁着固定自在な磁石を備え、前記磁着固定を解除するために前記ロックレバーの他端側を押圧する押圧部材を、前記ワーク突当て部材に備えていることを特徴とするバックゲージ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のバックゲージ装置において、前記磁石は電磁石又は永久磁石であって、磁着力を調節可能な構成であることを特徴とするバックゲージ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のバックゲージ装置において、前記固定手段は、前記スライド本体に備えられたロックレバーを備え、このロックレバーの一端側に、当該ロックレバーを前記スライド本体に吸着固定自在な吸着手段を備え、前記吸着固定を解除するために前記ロックレバーの他端側を押圧する押圧部材を前記ワーク突当て部材に備えていることを特徴とするバックゲージ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のバックゲージ装置において、前記付勢力に抗して前記ワーク突当て部材が後方向へ移動したことを検出するための検出手段を前記スライド本体に備えていることを特徴とするバックゲージ装置。
【請求項6】
請求項2,3又は4を引用した請求項5に記載のバックゲージ装置において、前記検出手段は、前記ロックレバーが上方向又は左右方向へ回転したことを検出するセンサであって前記スライド本体に備えられていることを特徴とするバックゲージ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のバックゲージ装置において、前記センサは、前記スライド本体に形成した穴内に配置した第1ロック片と第2ロック片に支持されており、前記第1ロック片と第2ロック片の接合面は前記穴の軸心に対して傾斜してあることを特徴とするバックゲージ装置。
【請求項8】
請求項3に記載のバックゲージ装置を備えたプレスブレーキにおいてのバックゲージ装置の位置決め方法であって、前記バックゲージ装置の前進位置決め時には前記磁石の磁着力を弱い状態に保持して前進位置決めを行い、前記バックゲージ装置の位置決め後には前記磁石の磁着力を強力な状態に保持することを特徴とするバックゲージ装置の位置決め方法。
【請求項9】
請求項3に記載のバックゲージ装置を備えたプレスブレーキであって、前記バックゲージ装置の前後動を制御するための制御装置を備え、この制御装置は、バックゲージ装置の前進動作を検知する前進動作検知手段を備え、この前進動作検知手段によって前記バックゲージ装置の前進停止を検出したときに、前記磁石の磁着力を強力な状態に制御する固定力制御手段を備えていることを特徴とするプレスブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキにおけるバックゲージ装置及びバックゲージ装置の位置決め方法並びにプレスブレーキに係り、さらに詳細には、バックゲージ装置を前後動して前後方向の位置決めを行うときに、障害物に当接したことを検知することのできるバックゲージ装置及びバックゲージ装置の位置決め方法並びにプレスブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレスブレーキによって板状のワークの折曲げ加工を行う場合、バックゲージ装置を前後方向に移動位置決めした後に、バックゲージ装置に備えたワーク突当て部材に対してワークの後端部を当接位置決めしている。上述のようにワークの位置決めを行った後に、プレスブレーキに備えた上下の金型によってワークの折曲げ加工を行っている。
【0003】
ところで、前述のようにバックゲージ装置を前後動して位置決めを行うとき、位置決め前のワークにバックゲージ装置が当接することがある。また、バックゲージ装置が下型に近接すると、場合によっては、バックゲージ装置と下型との間に作業者の手等を挟み込むおそれがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−253753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の構成においては、バックゲージ装置の前後方向の位置決めを行うに際し、バックゲージ装置が下型に対して予め設定した所定距離に近接すると、バックゲージ装置を一時停止、又は微速移動にする。そして、その後にバックゲージ装置の前後方向の位置決めを行っている。したがって、生産性の向上を図るには問題があり、さらなる改良が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、プレスブレーキにおけるバックゲージ装置であって、バックゲージ装置におけるスライド本体に、ワーク突当て面を備えたワーク突当て部材を前後動自在に備えると共に前方向へ付勢して備え、前記ワーク突当て部材を前記スライド本体に一体的に固定自在かつ前記付勢力以上の押圧力でもって前記ワーク突当て部材が後方向へ押圧されたときに固定を解除自在な固定手段を前記スライド本体に備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記バックゲージ装置において、前記固定手段は、前記スライド本体に備えられたロックレバーを備え、このロックレバーの一端側に、当該ロックレバーを前記スライド本体に磁着固定自在な磁石を備え、前記磁着固定を解除するために前記ロックレバーの他端側を押圧する押圧部材を、前記ワーク突当て部材に備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記バックゲージ装置において、前記磁石は電磁石又は永久磁石であって、磁着力を調節可能な構成であることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記バックゲージ装置において、前記固定手段は、前記スライド本体に備えられたロックレバーを備え、このロックレバーの一端側に、当該ロックレバーを前記スライド本体に吸着固定自在な吸着手段を備え、前記吸着固定を解除するために前記ロックレバーの他端側を押圧する押圧部材を前記ワーク突当て部材に備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記バックゲージ装置において、前記付勢力に抗して前記ワーク突当て部材が後方向へ移動したことを検出するための検出手段を前記スライド本体に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記バックゲージ装置において、前記検出手段は、前記ロックレバーが上方向又は左右方向へ回転したことを検出するセンサであって前記スライド本体に備えられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記バックゲージ装置において、前記センサは、前記スライド本体に形成した穴内に配置した第1ロック片と第2ロック片に支持されており、前記第1ロック片と第2ロック片の接合面は前記穴の軸心に対して傾斜してあることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記バックゲージ装置を備えたプレスブレーキにおいてのバックゲージ装置の位置決め方法であって、前記バックゲージ装置の前進位置決め時には前記磁石の磁着力を弱い状態に保持して前進位置決めを行い、前記バックゲージ装置の位置決め後には前記磁石の磁着力を強力な状態に保持することを特徴とするものである。
【0014】
また、前記バックゲージ装置を備えたプレスブレーキであって、前記バックゲージ装置の前後動を制御するための制御装置を備え、この制御装置は、バックゲージ装置の前進動作を検知する前進動作検知手段を備え、この前進動作検知手段によって前記バックゲージ装置の前進停止を検出したときに、前記磁石の磁着力を強力な状態に制御する固定力制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バックゲージ装置に備えたスライド本体に、ワーク突当て部材を前後動自在に備えると共に前方向へ付勢して備え、ワーク突当て部材をスライド本体に固定自在かつワーク突当て部材が所定の押圧力以上の押圧力でもって後方向へ押圧されたときに固定を解除自在な固定手段を備えた構成である。したがって、バックゲージ装置の前後方向の移動位置に拘りなく、ワーク突当て部材が障害物に当接し固定手段の固定が解除されると、付勢手段の付勢力に抗してワーク当接部材が相対的に後方向へ移動されることになる。よって障害物を保持している作業者は、障害物にバックゲージ装置が当接したことを知ることができ、次の対処を容易に行い得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るバックゲージ装置の主要な構成を示す断面説明図である。
図2】固定手段の固定を解除した状態を示す断面説明図である。
図3】固定手段の別実施形態を示す説明図である。
図4】ロックレバーとセンサとの関係を示す動作説明図である。
図5】当接を検知するセンサの別実施形態の説明図である。
図6】制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るバックゲージ装置について説明するに、バックゲージ装置を備えたプレスブレーキの全体的構成は既によく知られた構成であるから、プレスブレーキの全体的構成についての説明は省略する。
【0018】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るバックゲージ装置1は、プレスブレーキ(図示省略)に備えた下型3に対して前後方向(Y軸方向)及び左右方向(X軸方向)へ移動位置決め自在に備えられている。すなわち、プレスブレーキには、前後方向に長い左右一対のガイド部材5が備えられており、このガイド部材5には左右方向に長いストレッチ7の左右両端側が前後動自在に支持されている。そして、前記ストレッチ7に備えた左右方向のガイド部材9には、バックゲージ装置1におけるスライド本体11が左右方向へ移動自在に支持されている。
【0019】
なお、前記ストレッチ7の前後方向への移動位置決めは、既知のように、サーボモータ(図示省略)によって回転されるボールネジ機構やリニアモータなどによって行われるものである。また、前記スライド本体11の左右方向への移動位置決めは、同様にボールネジ機構やリニアモータなどによって行われるものである。前記ストレッチ7を前後方向に移動位置決めする構成及び前記スライド本体11を左右方向に移動位置決めする構成は、既によく知られた構成であるから、バックゲージ装置1を前後左右方向(Y、X軸方向)へ移動位置決めする構成についての詳細な説明は省略する。
【0020】
前記バックゲージ装置1における前記スライド本体11には、ワークWの後端部を突当て自在のワーク突当て面13Aを備えたワーク突当て部材13が前後動自在に備えられている。そして、上記ワーク突当て部材13と前記スライド本体11との間には、ワーク突当て部材13を前方向(図1において左方向)へ押圧付勢する、例えばコイルスプリングなどのごとき弾性部材などから構成された押圧付勢手段15が備えられている。なお、前記押圧付勢手段15の付勢力によって前記ワーク突当て部材13がスライド本体11から前側へ離脱することを防止するためのストッパ(図示省略)が備えられている。
【0021】
前記スライド本体11には、前記押圧付勢手段15の付勢力に抗して前記ワーク突当て部材13が後方向へ移動することを防止すべく、前記ワーク突当て部材13をスライド本体11に一体的に固定自在な固定手段17が備えられている。より詳細には、前記スライド本体11には枢軸19を介してL字形状の回動レバー(ロックレバー)21が回動自在に備えられている。このロックレバー(回動レバー)21の一端側には、前記スライド本体11の一部11Aを磁着自在な磁石23が備えられている。したがって、ロックレバー21は、磁石23の作用によって、常態においては磁着固定された状態にある。
【0022】
そして、前記磁着固定を解除するために、前記ロックレバー21の他端側を後方向へ押圧するための棒状の押圧部材25が前記ワーク突当て部材13に一体的に備えられている。より詳細には、前記押圧付勢手段15によって前記ワーク突当て部材13が最前進位置へ押圧されているときに、前記押圧部材25の後端は前記ロックレバー21の他端側に当接した状態にある。
【0023】
したがって、前記押圧付勢手段15の付勢力に抗してワーク突当て部材13が後方向へ押圧され、かつ前記磁石23による磁着固定を解除する押圧力になると、前記磁石23による磁着固定が解除される(図2参照)。そして、上述のように磁着固定が解除された後に、前記ワーク突当て部材13がさらに後方向へ相対的に押圧移動されると、押圧付勢手段15が次第に圧縮されることになる。
【0024】
前記構成において、バックゲージ装置1を前方向(図1、2において左方向)へ移動して、バックゲージ装置1の前後方向の移動位置決めを行うとき、例えば下型3上に単に載置してあるワークWや前記下型3の後側に位置する作業者の手等の障害物にワーク突当て部材13が当接すると、ワーク突当て部材13は相対的に後側へ押圧されることになる。そして、前記バックゲージ装置1をさらに前方向へ移動すると、前記障害物をさらに強力に前方向へ押圧することになる。
【0025】
ここで、前記障害物を押圧する力が予め設定された所定の大きさの力、例えば150Nになったときに前記磁石23による磁着固定が解除されるように予め設定しておくことにより、障害物を押圧する力が所定の大きさの力(150N)になると、磁石23による磁着固定が解除されることになる。換言すれば、ワーク突当て部材13を相対的に後方向へ押圧する力が予め設定した大きさになるまでは、前記ワーク突当て部材13は不動状態に保持される。
【0026】
したがって、安全性の向上を図ることができると共に、ワークWをワーク突当て面13Aに当接して位置決めするとき、ワークWの当接によってワーク突当て部材13が後方向に移動するようなことはなく、ワークWの位置決めを正確に行うことができるものである。
【0027】
バックゲージ装置1の前後動時に、ワーク突当て部材13が障害物に当接して前記磁石23による磁着固定が解除されると、前記ワーク突当て部材13を前方向へ押圧する力は、押圧付勢手段15による付勢力となるものであって、例えば50Nとなり、急激に小さくなるものである。上述のように、磁石23による磁着固定が解除された後に、前記ワーク突当て部材13が相対的に後方向へ移動されると、前記押圧付勢手段15が次第に圧縮される形態となり、前記障害物を押圧する力が次第に大きくなるものである。
【0028】
以上のごとき説明より理解されるように、バックゲージ装置1の前後動時に、例えば作業者の手や作業者が保持しているワークW等の障害物にワーク突当て部材13が前進して当接すると、最初は所定の大きさの力でもって障害物を押圧し、磁石23による磁着固定が解除されると、前記障害物を押圧する力が小さな押圧力に切換わる。したがって、作業者は、手やワークW等の障害物を前方向へ押圧する力が大きい力から急激に小さな力に切換わるので、バックゲージ装置1におけるワーク突当て部材13が障害物に当接したことを容易に知ることができ、安全性の向上を図ることができると共に、次の対処を容易に行い得るものである。
【0029】
なお、前記磁石23による磁着固定が解除されたことを検知する検出手段、すなわちロックレバー21が回動されたことを検知するセンサ、又は押圧付勢手段15による押圧力に抗してワーク突当て部材13が相対的に後方向へ移動したことを検出するセンサを備えることにより、前記ワーク突当て部材13が障害物に当接し、固定手段17の固定が解除されたことを検知することができる。したがって、前記検出手段によって固定手段17の固定が解除されたことを検知したときに、前記ワーク突当て部材13の前進動作を直ちに停止する構成とすることも可能である。
【0030】
以上のごとき説明から理解されるように、ワーク突当て部材13は、磁石23による磁着固定を利用して固定するものであるから、ワークWを突当ててワークWの位置決めを行うとき、ワーク突当て部材13はワークWによって押圧されて移動するようなことがなく、ワークWの位置決めを正確に行うことができるものである。また、前記ワーク突当て部材13が下型3に近接したようなときであっても、ワーク突当て部材13を一時停止したり微速移動に切換える必要がなく、かつ障害物が下型3とワーク突当て部材13とによって挟み込まれるようなことがないものである。したがって、安全性の向上を図り、かつワークWの位置決め動作を迅速に行い得ることとなり、能率向上を図ることができるものである。
【0031】
ところで、本発明は、前述したごとき実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能である。例えば、前記固定手段17における磁石23に代えて、図3に示すように、ロックレバー21に吸盤などのごとき吸着手段27を備えた構成とすることも可能である。この構成においても前述した実施形態と同様の効果を奏し得るものである。
【0032】
また、固定手段の構成としては、前記押圧部材25の後端部を、例えばエアシリンダなどの流体圧機構において前後動自在なピストンロッド等の作動杆に当接する。そして、前記押圧部材25の後方向への押圧力が予め設定した所定の押圧力となり、前記エアシリンダ内の圧力が予め設定した所定圧になったときに、例えばリリーフ弁等によってエアシリンダ内のエアを外部へ流出する構成とすることも可能である。
【0033】
すなわち、前記固定手段17の構成としては種々の構成が採用可能なものである。
【0034】
また、前記構成においては、固定手段17におけるロックレバー21は上下方向に回動する場合について例示したが、上記ロックレバー21を水平に回動する構成とすることも可能である。
【0035】
図4は、前記ロックレバー21の部分の第2の実施形態を示すものである。この実施形態においては、前記スライド本体11の前側部分11Bに備えたリニアガイド等のごときガイド部材31によって前記押圧部材25が前後動自在に案内支持されている。そして、この押圧部材25の後端部には、前記ロックレバー21を押圧するプッシャー33が一体的に備えられている。
【0036】
前記ロックレバー21にはボルト等のごとき固定具35によって回転レバー37が一体的に取付けてある。この回転レバー37の先端側(自由端側)は撓み易いように、適宜に屈曲してある。そして、この回転レバー37の先端側と対向した位置には、前記ロックレバー21が枢軸19の回りに回動されたことを検出する近接センサなどのごときセンサ39が備えられている。
【0037】
より詳細には、前記センサ39は外周面にねじ部を備えた棒状の構成であって、前記スライド本体11に形成した前後方向の穴41内に配置した第1ロック片43に螺着支持されている。この第1ロック片43には穴41の軸心に対して傾斜した傾斜面(接合面)45が形成してあり、この接合面(傾斜面)45には、前記センサ39を挿入した支持穴47Hを備えた第2ロック片47の接合面(傾斜面)が接合してある。
【0038】
上記構成より、センサ39に締付ナット49を螺合して第2ロック片47を締付けると、第1,第2のロック片43,47は傾斜した接合面に沿って相対的に位置ずれを生じることになる。したがって、第1,第2のロック片43,47は穴41の内周面を押圧することとなって穴41内に固定されるものである。よって、上記構成によれば、センサ39の着脱を容易に行い得るものである。
【0039】
前記穴41内に固定されたセンサ39と前記ロックレバー21に取付けた前記回転レバー37は、図4(A)に示すように近接した状態にある。この状態において、バックゲージ装置1を前方向(下型3に近接する方向)へ移動しての位置決め動作時に、前記ワーク突当て部材13が障害物に当接し、押圧付勢手段15の付勢力に抗して相対的に後方向に移動されると、図4(B)に示すように、磁石23による磁着固定が解除されると同時に、前記回転レバー37が上方向に回動されることになる。
【0040】
上述のように、回転レバー37が上方向に回動されると、回転レバー37がセンサ39から離反するので、ワーク突当て部材13が障害物に当接したものとして検出することができる。したがって、回動レバー37が回動したことを、センサ39によって検出したときに、バックゲージ装置1の前方向への移動を直ちに停止することにより、安全性の向上を図ることができるものである。
【0041】
図5は、前記スライド本体11における前側部分11Bにセンサ39を取付けた場合の構成を示すものである。すなわち、この実施形態においては、前記前側部分11Bに一体的に備えたセンサブラケット51に前記センサ39を後向きに備えた構成である。そして、前記押圧部材25の一部に、前記センサ39と対向してドグ53を備えた構成である。
【0042】
上記構成によれば、ワーク突当て部材13が障害物に当接して押圧部材25が相対的に後方向(図5において右方向)へ移動されると、ドグ53がセンサ39から離れることとなる。したがって、前記ワーク突当て部材13が障害物に当接したこととして検出できる。よって、この検出時に、バックゲージ装置1の前方向への移動を直ちに停止して安全性の向上を図ることができるものである。
【0043】
ところで、前記構成において、前記固定手段17における前記磁石23を電磁石によって構成し、電流を制御することによって磁着固定における固定力(磁着力)の強弱を制御できるものである。したがって、プレスブレーキ(図示省略)において前記バックゲージ装置1の前後動作を制御するための制御装置55(図6参照)を備えることになり、バックゲージ装置1の前後動作に関連して前記電磁石23による磁着固定の強弱を制御することができるものである。
【0044】
すなわち、前記制御装置55は、例えばコンピュータから構成してあってCPU57を備えている。また、制御装置55は、前記バックゲージ装置1の前後動作を検知する前後動作検知手段59を備えている。この前後動作検知手段59は、前記バックゲージ装置1を前後動するためのサーボモータ(図示省略)に備えた例えばロータリエンコーダからのパルスを計数するパルス計数手段などによって構成することができる。この構成においては、予め設定した所定時間内にパルスを計数しなくなったときに、バックゲージ装置1の前後動作が停止したものとして検出することができる。また、前記サーボモータに対する動作信号の入力が零になった場合に、バックゲージ装置1の前後動が停止したものとして検出することができるものである。すなわち、前後動作検知手段59の構成としては種々の構成を採用することができるものである。
【0045】
また、前記制御装置55には、前記電磁石23による磁着固定の強弱を制御するための固定力制御手段61が備えられている。この固定力制御手段61は、前記電磁石23に流す電流値を制御する機能を有するものであって、前記バックゲージ装置1を前方向へ移動し位置決めする際には、前記電磁石23による磁着固定を弱い固定状態に制御する。そして、前記前後動作検知手段59がバックゲージ装置1の前方向への移動が停止したことを検知したときには、前記電磁石23による磁着固定を強力な固定状態に制御する機能を有するものである。
【0046】
既に理解されるように、固定力制御手段61の制御によって電磁石23による磁着固定力の強弱を制御することができるものである。したがって、前記バックゲージ装置1の前進位置決め時には、固定手段17における前記電磁石23の磁着固定を弱い状態に保持して前進位置決めを行うことができる。そして、バックゲージ装置1の位置決めが行われて、バックゲージ装置1の前進動作が停止されたことを前記前後動作検知手段59によって検出したときに、前記固定手段17としての前記電磁石23の磁着固定を強力な状態に保持することができるものである。
【0047】
すなわち、前記電磁石23による磁着固定を弱い状態に保持して、バックゲージ装置1を前進位置決めするとき、ワーク突当て部材13が障害物に当接したときには、前記電磁石23による磁着固定を弱い力でもって直ちに解除することができる。したがって、センサ39によって前記当接を直ちに検知して、バックゲージ装置1の前進動作を直ちに停止することができる。よって安全性の向上を図ることができる。
【0048】
そして、バックゲージ装置1の位置決め終了後には前記電磁石23による磁着固定を強力な状態に保持することができる。したがって、バックゲージ装置1の位置決め後、ワーク突当て部材13にワークを当接したとき、このワークの当接によってワーク突当て部材13が安易に動くことを抑制することができる。よって、バックゲージ装置1の位置決め後に、ワーク突当て部材13に対してワークを当接し位置決めすることを容易、確実に行い得るものである。
【0049】
なお、本発明は、前述したごとき構成に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能なものである。例えば、前記磁石23として永久磁石を採用した場合には、磁石23とスライド本体11の一部1Aとの間に、非磁性体の適宜厚さのスペーサを介在して、又は磁石23と前記一部1Aとの間隔を調節可能な構成として、磁石23による磁着固定の固定力を調節する構成とすることも可能である。
【0050】
また、前記磁石23による磁着固定を解除する構成としては、前記一部1Aに対して磁石23を相対的に位置をずらす構成とすることも可能なものである。
【符号の説明】
【0051】
1 バックゲージ装置
11 スライド本体
11A 一部
13 ワーク突当て部材
13A ワーク突当て面
15 押圧付勢手段
17 固定手段
21 ロックレバー(回転レバー)
23 磁石
25 押圧部材
27 吸着手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6