特許第6397749号(P6397749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397749
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】バスボード
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/12 20060101AFI20180913BHJP
   A61H 33/00 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A47K3/12
   A61H33/00 310G
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-254691(P2014-254691)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112274(P2016-112274A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】大河原 由梨
(72)【発明者】
【氏名】土井 健史
(72)【発明者】
【氏名】花井 健祥
(72)【発明者】
【氏名】石井 賢俊
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3186169(JP,U)
【文献】 実開昭60−077490(JP,U)
【文献】 特開平10−057265(JP,A)
【文献】 実開昭56−019974(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0331400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02− 4/00
A61H 33/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽側壁の上面に載置される支持基材と、
前記支持基材に回動自在に取り付けられている板状の回動部材と、そして
使用者の手により握られるグリップ部と、前記グリップ部を前記回動部材の上面に取り付けるための支柱部とから構成されているノブと
からなるバスボードにおいて、
前記グリップ部は、
使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面と、
前記グリップ部の外周部を形成する側面と、
使用者の指を掛けるための裏面であって、前記側面と前記支柱部とを連結する略平坦な面として形成された裏面とが形成されており、
前記グリップ部の裏面には、使用者の指を入れるための、断面視においてコの字状の空間が形成されていることを特徴とするバスボード。
【請求項2】
前記ノブは、平面視において略円形であることを特徴とする請求項1に記載のバスボード。
【請求項3】
前記支持面は、前記ノブの側面から中央付近へ向けて凹んだ形状を有しており、前記支持面には、前記ノブの側面から中央付近へ向けて膨らんだ底面を有する溝部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバスボード。
【請求項4】
前記ノブは、使用者の手により握られるグリップ部と、前記グリップ部を前記回動部材の上面に取り付けるための支柱部とから構成されており、そして
前記グリップ部における水平断面の最大断面積は、前記支柱部における水平断面の最大断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバスボード。
【請求項5】
前記ノブは、前記回動部材の前記前方縁部寄りの位置であって、且つ前記回動部材の左方端部寄りの位置および/または右方端部寄りの位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のバスボード。
【請求項6】
前記ノブは第1の係合手段を備えており、前記回動部材は前記回動部材の上面に複数の第2の係合手段を備えており、そして前記ノブは、前記第1の係合手段と係合させる前記第2の係合手段を選択することにより、前記ノブの取り付け位置を移動できることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のバスボード。
【請求項7】
前記ノブは、前記回動部材の上面にスライド可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のバスボード。
【請求項8】
前記支持基材は、左方側基材、右方側基材、および前記左方側基材と前記右方側基材とを連結する後方側基材とから構成されており、そして
前記回動部材は前記後方側基材に回動自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のバスボード。
【請求項9】
前記回動部材は、左右端部が中央部よりも後方へ湾曲した凹部が形成されている前方縁部を有していることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のバスボード。
【請求項10】
前記左方側基材および前記右方側基材は板状であることを特徴とする請求項又はに記載のバスボード。
【請求項11】
前記後方側基材は板状であり、そして前記左方側基材と前記右方側基材と一体的に結合されていることを特徴とする請求項10に記載のバスボード。
【請求項12】
前記支持基材は、平面視において略コの字形状を有していることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のバスボード。
【請求項13】
前記左方側基材の下面には、前記浴槽側壁の内面に当接させるためのストッパーが前記左方側基材の横幅方向にスライド自在に取り付けられており、そして
前記右方側基材の下面には、前記浴槽側壁の内面に当接させるためのストッパーが前記右方側基材の横幅方向にスライド自在に取り付けられていることを特徴とする請求項ないし12のいずれかに記載のバスボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や要介護者などの入浴を容易にするために浴槽の開口部の一部に設置されるバスボードに関し、特にバスボードの一部が回動可能であり、回動部材の上面には使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面が形成されているノブを有するバスボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人の入浴を容易にするために、浴槽の開口部の一部に設置されるバスボードが提供されている(特許文献1)。このようなバスボードは、高齢者や要介護者など使用者が入浴する際に浴槽の開口部の一部に掛け渡しておき、使用者がバスボードへ腰を掛けたままの状態で浴槽の外から中へ又は中から外へ移動できるようすることで、浴槽への出入りを容易にしたものである。
【0003】
また、バスボードは、使用者の入浴中は邪魔になることから、近年では、使用者の入浴中はバスボードを跳ね上げることができるように、バスボード本体の全部を回動させたり(特許文献2)、或いはバスボード本体の一部を回動させることができるようにしたバスボードが開発されている(特許文献3,4)。
【0004】
ところで、バスボードを使用する使用者の身体の不自由さの程度は区々であり、使用者の中にはバスボードを手摺りのように使用して浴槽の側壁を立位の状態で跨ぐ場合もある。この場合、使用者はバスボードと向き合い、バスボードの上面に手を置いて浴槽の側壁を跨ぐことになる。
【0005】
ところが、特許文献1〜4に記載されているような従来のバスボードは、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ使用者によって該バスボードが利用されることが想定されていないため、使用者の体重の一部を支えるのに適した部品が設けられていなかったり、或いは手摺りなどの部品が取り付けられていても、該部品へアクセスできる方向に制限があるために、実際には立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際に使用することができないという問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1〜3のバスボードでは、使用者が座位の状態で浴槽の外から中へ又は中から外へ容易に移動することができるように棒状の手摺りが取り付けられている。しかしながら、手摺りの形状が棒状であると、手摺りを握ることができる方向が決まってしまうため、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際には、手摺りを握るために実質的に手摺りへアクセスすることができない方向が生じてしまうという問題があった。
【0007】
さらに、バスボードを使用する使用者の身体の障害などの程度によっては、立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐことができるが、握力が十分でないために手摺りなどを十分に握ることができない使用者が存在する。このように握力が十分でない使用者の場合、手摺りを握る代わりに、自己の手の平を手摺りやバスボードに押し当てたり、或いは握り拳を手摺りやバスボードに載置することによって自己の体重の一部をバスボードに預けて浴槽の側壁を跨ぐことが多い。
【0008】
ところが、手摺りの形状が棒状であると、手の平や握り拳を押し当てる面積が小さいために安定して使用者の手の平や握り拳を支えることができないという問題があった。また、使用者の手の平や握り拳を支える面積が小さいと、手の平や握り拳に局部的に圧力が加わる結果、使用者に痛みを生じさせるという不都合もあった。さらに、使用者が、自己の手の平や握り拳をバスボードの上面に載置することにより自己の体重の一部をバスボードに預ける場合は、手の平や握り拳がバスボードの上で滑ってしまい危険であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−196452号公報
【特許文献2】特開2003−24409号公報
【特許文献3】実用新案登録第3186169号公報
【特許文献4】実用新案登録第2564437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、高齢者や要介護者などの入浴を容易にするために浴槽に設置されるバスボードであって、バスボードの一部が開閉可能であり、特に使用者が立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ場合においても、どの方向からも簡単にアクセスすることができ、そして握力が十分でない使用者であっても安全且つ容易に自己の体重の一部を預けることができるバスボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、使用者がバスボードを利用して立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際の使用態様、使用者がバスボードへ自己の体重の一部を預ける部分の位置、形状及び構造、使用者が座位の状態でバスボードを使用する際の障害などについて鋭意研究を重ねた結果、バスボードの一部を回動可能とし、回動部分の上面には使用者の手の平を支持するために略平坦な支持面が形成されているノブを配置することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、浴槽側壁の上面に載置される支持基材と、前記支持基材に回動自在に取り付けられている板状の回動部材と、そして前記回動部材の上面に取り付けられているノブとからなるバスボードにおいて、前記ノブの上面には、使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面が形成されていることを特徴とするバスボードが提供される。
【0013】
ここで、本願明細書で使用する用語について説明する。本願明細書では、「前方」とはバスボードの回動部材の自由端側に相当し、「後方」とはバスボードの回動部材の支持端側に相当する。したがって、「左方」とは回動部材の前方と後方とを結ぶ方向と直交する方向の一の端部側に相当し、「右方」とは左方の反対側に位置する他の端部側に相当する。本発明のバスボードは基本的に浴槽の片隅に寄せて固定されるため、バスボードの前方は浴槽の内側方向に相当し、バスボードの後方は浴槽の外側方向に相当する。また、バスボードの左方は浴槽の洗い場側または浴室の側壁側に相当し、バスボードの左方は浴室の側壁側または浴槽の洗い場側に相当する。
【0014】
本発明のバスボードに使用される材料は、各部品に求められる強度を有するものであれば特に制限されるものではなく、プラスチック材料、金属材料、木製材料、繊維材料又はそれらを組み合わせた複合材料などを使用することができる。ただし、浴室内は高温多湿の過酷な腐食環境であるので、耐腐食性が高く、しかも軽量であるプラスチック材料を主要材料としてバスボードへ用いることが好ましい。
【0015】
支持基材は、バスボードの腰掛け部分の一部を形成すると共に、バスボードを浴槽の側壁に固定し、そして後述する回動部材を回動自在に支持するために機能する。このため、支持基材は浴槽側壁の上面に載置できるものであれば、板状、棒状またはそれらを組み合わせた形状を有するものを使用することができる。ただし、バスボードを浴槽側壁に設置した際の安定性、浴槽側壁の上面へのダメージ回避、使用者の利便性などを考慮すると、支持基材は板状であることが好ましく、さらに浴槽側壁の上面に載置した時、平面視において浴槽側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有していることが好ましい。
【0016】
支持基材には、板状の回動部材が回動自在に取り付けられる。回動部材は前方縁部を有しており、その前方縁部の左右端部には中央部よりも後方へ湾曲した凹部が形成されていることが好ましい。さらに、回動部材の前方縁部に形成された凹部は、それぞれの外側に配置された支持基材の前方端部よりも後方へ湾曲していてもよい。本発明のバスボードは、浴槽の開口部に配置される回動部材を跳ね上げることができるので、入浴中の使用者の邪魔になることがない。
【0017】
また、回動部材の前方縁部が、その左右端部において中央部よりも後方へ湾曲した凹部を有していると、使用者は腰を屈めたり或いは身体を後ろ向きに捻って目視することなく、手の平の感触等によって回動部材の左右端部の位置(凹部)を確認することができる。また、凹部が、使用者の手の平が納まる大きさに切り欠かれていると、使用者は、回動部材を開閉する時、手の平が自然と回動部材の凹部へ誘導されるので、回動部材と浴槽側壁との間または回動部材と支持基材との間に手を挟まれることなく安全に回動部材を開閉することができる。
【0018】
このため、バスボードの左方側基材および右方側基材の内側には、回動部材を閉じた時に下方から支持するための左方棚部および右方棚部が内側に向けて突設されている。また、左方棚部の前方縁部は、回動部材を閉じた時、回動部材の凹部における前方縁部と面一となるか又は後方に位置するように配置されており、そして右方側基材の前方縁部は、回動部材を閉じた時、回動部材の凹部における前方縁部と面一となるか又は後方に位置するように配置される。
【0019】
特に回動部材を閉じた時、左方棚部の前方縁部および右方棚部の前方縁部が、それぞれに回動部材の凹部よりも後方に位置するように配置されていると、回動部材を掴む使用者の手が、凹部において回動部材の裏面へまで回りこんでいる場合であっても、使用者の手が回動部材と左方棚部との間、回動部材と右方棚部との間に挟み込まれるのを効果的に防止することができる。
【0020】
本発明のバスボードでは、回動部材の上面に、使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面が形成されているノブが取り付けられている。
【0021】
バスボードは、本来、浴槽の開口部の一部に掛け渡しておき、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人がバスボードへ腰を掛けたままの状態で浴槽の外から中へ又は中から外へ移動するために使用される。しかしながら、使用者の身体の不自由さの程度は区々であり、使用者の中にはバスボードを手摺りのように使用して浴槽の側壁を立位の状態で跨ぐ場合もある。この場合、使用者はバスボードと向き合い、バスボードの上面に手を置いて浴槽の側壁を跨ぐことになる。このため、バスボードの上面にノブを設けておくと、使用者はノブに手を添えることで自己の体重の一部を確実にバスボードへ預けることができるようになるので、安全且つ容易に立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐことができるようになる。
【0022】
このため、ノブの上面には略平坦な支持面が形成されていることが好ましい。高齢者や要介護者などは十分な握力を有していない場合が多いので、ノブの上面に略平坦な支持面を設けておくと、使用者はノブの支持面に手の平、手の甲または握り拳を置いて或いはノブを軽く握るだけで、手を滑らせることなく自己の体重の一部をバスボードへ預けることができるようになる。この結果、使用者はより安全且つより簡単に立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐことができるようになる。このため、ノブは平面視において略円形であることが好ましい。ノブの上面の形状やノブ全体の形状を平面視において略円形とすることにより、使用者はどの方向からも簡単にノブへアクセスすることができるようになり、場所を選ばず、自己の体重の一部をバスボードへ預けることができるようになる。
【0023】
また、ノブの支持面には、使用者の手の平、手の甲または握り拳を安定して支え易くするために、側面から中央に掛けて凹んだ凹部が形成されていてもよい。また、ノブの支持面に水分が溜まるのを嫌う場合は、側面から中央へ向けて膨らんだ凸部が形成されていてもよい。
【0024】
ノブの支持面を、側面から中央付近へ向けて凹んだ形状とした場合は、ノブの支持面に水分が溜まるのを防止するための排水孔や排水溝を設けることが好ましい。特にノブの支持面に排水溝を設けた場合は、側面から中央付近へ向けて膨らんだ底面を有する溝部を少なくとも1つ設けることが好ましい。この場合、ノブの支持面に溜まった水分は溝部へ誘導され、そして支持面に溜まった水分は溝部を介してノブの中央付近から側面の開口へ排水される。また、溝部は、使用者がノブの支持面に手の平、手の甲または握り拳を置いた時、それらが支持面上で滑るのを防止するためにも機能する。このため、溝部はノブの支持面に格子状または放射状等に複数設けてもよい。
【0025】
ノブは、使用者の手によりアクセスされるグリップ部と、グリップ部を回動部材の上面に取り付けるための支柱部とから構成されており、そしてグリップ部における水平断面の最大断面積は、支柱部における水平断面の最大断面積よりも大きいことが好ましい。この場合、上述のノブの上面に形成された支持面は、グリップ部の上面と一致している。
【0026】
ノブをグリップ部と支柱部から構成し、そしてグリップにおける水平断面の最大断面積を支柱部における水平断面の最大断面積よりも大きくすると、握力の十分でない使用者であってもグリップ部の裏面に簡単に指を引っ掛けることができるので、より安定した状態で自己の体重の一部をグリップ部へ預けることができるようになる。
【0027】
また、本発明のバスボードでは、グリップ部は1つの支柱部を介してバスボードの上面に取り付けられていることが好ましい。グリップ部を1つの支柱部で支えると、使用者はグリップ部へアクセスする位置を選ぶことなく、どの方向からもより簡単にグリップ部を掴んだり或いはグリップ部の上に握り拳などを置いて、自己の体重の一部をグリップ部へ預けることができると共に、ノブ全体の強度も向上し、使用者による安全な使用が保証される。
【0028】
また、グリップ部の外周部には、使用者が指を掛けるための略同一幅の側面を設け、そしてグリップ部の側面は連続した曲面によって支持面と連結させることが好ましい。グリップ部の外周部に略同一幅の側面が形成されていると、使用者はどの方向からでもグリップ部を容易に掴むことができるようになり、また、グリップ部の側面が連続した曲面によって支持面と連結されていると、使用者の手の平に対するグリップ部のフィット性も向上する。このため、グリップ部の側面は略同一幅を有していれば、側面視において略平坦な形状を有していても又は外側へやや膨らんだ形状を有していてもよい。
【0029】
ノブは、バスボードの回動部材の前方縁部寄りの位置であって、且つ回動部材の左方端部寄りの位置および/または右方端部寄りの位置に取り付けられていることが好ましい。例えば使用者がバスボードを主に座位の状態で移動するために使用するのであれば、ノブは回動部材の前方縁部寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置に取り付けられているのが好ましく、例えば使用者がバスボードを主に手を置いて立位の状態で使用するのであれば、ノブは回動部材の前方縁部寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置または前方縁部寄りの位置であって洗い場側の位置とその反対側の位置に取り付けられているのが好ましい。
【0030】
使用者がバスボードを使って立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ時は、使用者はバスボードと向き合い、バスボードのノブに手を置いて浴槽の側壁を跨ぐことになる。このため、ノブが、バスボードの回動部材の前方縁部寄りの位置であって、且つ回動部材の左方端部寄りの位置および/または右方端部寄りの位置に取り付けられていると、使用者は簡単にノブへアクセスすることができ、自己の身体を支えることができるようになる。また、使用者がバスボードへ腰を掛けたままの状態で浴槽へ出入りしようとする際も、使用者はノブを利用して自己の身体を簡単に移動することができるようになる。
【0031】
さらに、ノブが回動部材の前方縁部寄りの位置に配置されていると、ノブが洗い場側に取り付けられている場合においても、バスボード上に腰をかけた使用者は膝を少し持ち上げるだけで浴槽の側壁と一緒にノブの上を乗り越えることができるので、ノブは、使用者が座位の状態で浴槽へ出入りしようとする際の障害となることもない。また、ノブは支持基材ではなく、回動部材へ取り付けられるので、ノブを利用することにより回動部材の開閉が容易となる。また、回動部材の前方縁部は回動軸から離れているので、使用者はノブが回動軸付近に取り付けられている場合に比べて小さな力で回動部材を開閉することができるようになる。
【0032】
本発明のバスボードでは、使用者の体格等に合わせて、バスボード上でのノブの取り付け位置を変更/移動できるようにしておくことが好ましい。このため、ノブには、例えば雄ネジのような第1の係合手段を設け、回動部材の上面には、例えば雌ネジ(ネジ孔)のような第2の係合手段を複数個配設し、そして第1の係合手段と係合させる第2の係合手段を選択することにより、ノブの取り付け位置を変更/移動できるようすることができる。
【0033】
また、ノブは、回動部材の上面にスライド可能に取り付けることによって、ノブの取り付け位置を無段階で連続的に変更/移動できるようすることもできる。この場合、ノブのスライド機構は、回動部材の上面においてノブをスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、特許文献1〜3に記載されているストッパーのスライド機構をノブのスライド機構として転用することも可能である。
【0034】
本発明において、上述したような特殊なノブが取り付けられた回動部材を回動自在に支持し、そしてバスボードを浴槽の開口部の一部に固定するために機能する支持基材は、浴槽側壁の上面形状に沿うように配置できる形状を有していることが好ましく、そのため支持基材は、少なくとも浴槽の左方側壁に載置される左方側基材と、右方側壁に載置される右方側基材とを備えていてもよい。この場合、左方側基材および右方側基材は、浴槽側壁の上面に載置した時、平面視において浴槽の左方側壁の上面および右方側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有していることが好ましい。
【0035】
一般に浴室の側壁に設けられた手摺りは、浴槽の蓋の取り付け/取り外し或いは開け閉めを容易にするため、浴槽側壁の上面を越えて浴室の側壁から浴槽側壁の内側まで突出させて設置されることが殆どない。このため、バスボードを浴槽側壁の上面に載置した時、支持基材、または左方側基材と右方側基材が平面視において浴槽側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有していると、その内側に配置されるバスボードの回動部材は、浴槽側壁に隣接する浴室側壁に取り付けられた手摺りと干渉することなく、自由に開閉することができるようになる。また、支持基材、または左方側基材と右方側基材が浴槽側壁の上面を覆うことができる幅を有していると、回動部材は浴槽側壁の上面と当接することがなくなるので、繰り返し開閉しても浴槽側壁の上面を傷付けることもなくなる。
【0036】
左方側基材と右方側基材は、バスボードを浴槽へ取り付けた時の剛性を向上させるため、後方側基材によって相互に連結されていることが好ましい。すなわち、浴槽側壁の片隅の上面は、通常、コの字形又はU字形の形状を有しているため、左方側基材および右方側基材も浴槽側壁の上面形状に合わせて、後方側基材によって略コの字形または略U字形を形成するように連結されることが好ましい。
【0037】
また、左方側基材と右方側基材を後方支持基材を介して連結した場合、左方側基材、右方側基材および後方側基材の各基材は、浴槽側壁の上面に載置できるものであれば、それぞれに板状、棒状またはそれらを組み合わせた形状を有するものを選択することができる。例えば、プラスチック材料からなる板状の左方側基材と右方側基材を、金属材料からなる棒状の後方側基材によって連結して支持基材を構成することができる。例えば、板状の左方側基材と右方側基材を板状の後方側基材によって連結することで、同じプラスチック材料からなる支持基材として一体成形することもできる。
【0038】
なお、後方側基材は左方側基材および右方側基材とは異なり、主に左方側基材と右方側基材を連結することによって支持基材の強度を向上させるために機能するものであるので、平面視において、必ずしも浴槽の後方側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有している必要はない。
【0039】
一方、支持基材に回動自在に取り付けられる回動部材は、前方縁部の他、さらに前方縁部と略直行する向きに、互いに対向する略直線状の左方縁部と右方縁部を備えていることが好ましい。バスボードの支持基材、または左方側基材と右方側基材が浴槽側壁の上面を覆うことができる幅を有していると、回動部材の左方縁部および右方縁部は支持基材の内縁に沿うように形成されるので、回動部材を閉じた時、回動部材の左方縁部および右方縁部が支持基材の内側に配置されるように取り付けられる。このため、回動部材の左方縁部および右方縁部は、浴槽側壁に隣接する浴室側壁に取り付けられた手摺りと干渉することなく、回動部材を自由に開閉することができるようになる。
【0040】
また、バスボードの回動部材は、バスボードを浴槽側壁の上面に取り付けた時、平面視において浴槽側壁の左方側壁の上面及び/又は右方側壁の上面と重なり合わない位置に配置することもできる。一般に浴室の側壁に設けられた手摺りは、蓋の開け閉めを容易にするため、浴槽側壁の上面を越えて浴室の側壁から浴槽側壁の内側まで突出させて設置されることが殆どない。このため、バスボードを浴槽側壁の上面に取り付けた時、回動部材を平面視において浴槽側壁の左方側壁の上面及び/又は右方側壁の上面と重なり合わない位置に配置すると、回動部材は、浴槽側壁に隣接する浴室側壁に取り付けられた手摺りと干渉することなく、自由に開閉することができるようになる。また、回動部材は浴槽側壁の上面と当接することがなくなるので、繰り返し開閉しても浴槽側壁の上面を傷付けることもなくなる。
【0041】
回動部材の回動手段は蝶番、ボールジョイントなど周知技術を採用することができ、特に制限はない。また、回動部材は支持基材の中の後方側基材へ取り付けてもよく、或いは回動部材をその両側から左方側基材と右方側基材によって挟み込むように左方側基材と右方側基材へ回動可能に支持させてもよい。
【0042】
本発明のバスボードは、左方側基材の下面に、左方側基材の横幅方向にスライド自在であり、且つ浴槽側壁の内面に当接させることができる左方ストッパーと、そして右方側基材の下面に、右方側基材の横幅方向にスライド自在であり、且つ浴槽側壁の内面に当接させることができる右方ストッパーを備えていることが好ましい。
【0043】
ストッパーは、左方側基材の下面または右方側基材の下面において横幅方向にスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、特許文献1〜3に記載されているストッパーを本発明のバスボードのストッパーとして転用することができる。本発明のバスボードでは、左方ストッパーおよび右方ストッパーを浴槽側壁の内面に当接させることにより、両ストッパーの摩擦力によってバスボードの支持基材を浴槽の側壁へ簡単且つ強固に取り付けることができる。
【0044】
本発明のバスボードでは、回動部材の上面は、回動部材を閉じた時、支持基材の上面と略面一となるように形成されていることが好ましい。
【0045】
回動部材を閉じた時、支持基材の上面と回動部材の上面が略面一となるように形成されていること、使用者は臀部をバスボードの上面から離間させることなく、浴槽の外から中へ又は中から外へスムーズに移動することができるので、浴槽への出入りがより安全且つ容易になる。
【発明の効果】
【0046】
本発明のバスボードによれば、特殊な形状を有するノブがバスボードの回動部材の上面に取り付けられているので、使用者はどの方向からもノブへ簡単にアクセスすることができ、そして握力が十分でない使用者であってもノブに手を添えることで自己の体重の一部を確実にバスボードへ預けることができるので、使用者は安全且つ容易に立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐことができるようになる。
【0047】
本発明のバスボードによれば、回動部材の前方縁部には、左右端部が中央部よりも後方へ湾曲した凹部が形成されているので、使用者は腰を屈めたり或いは身体を後ろ向きに捻って目視することなく、手の平の感触等によって回動部材の左右端部の位置(凹部)を確認することができ、また回動部材と浴槽側壁との間または回動部材と支持基材との間に手を挟まれることなく安全に回動部材を開閉することができる。
【0048】
本発明のバスボードによれば、支持基材が浴槽側壁の上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有しているか、或いはバスボードの回動部材が浴槽側壁の上面と重なり合わない位置に配置されているので、浴室の側壁に手摺りが設けられているような浴槽においてもバスボードの回動部材を開閉させることができ、また繰り返し開閉しても浴槽側壁の上面を傷付けることもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】浴槽へ取り付けられた状態の本発明の一実施形態に係るバスボードを示した斜視図である。
図2図1に示されたバスボードの回動部材を跳ね上げた様態を示した斜視図である。
図3】浴槽へ取り付けられた状態の本発明の他の実施形態に係るバスボードを示した斜視図である。
図4図1に示されたバスボードの裏面を示した斜視図である。
図5図1に示されたバスボードの取り付け状態を示した側面図である。
図6図1に示されたバスボードのノブ周辺を部分的に拡大した斜視図である。
図7図6に示されたノブをX−X断面で切り取った断面図である。
図8】使用者が立位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際のバスボードの使用態様を示した斜視図である。
図9】支持面に溝部が形成されているノブ周辺を部分的に拡大した斜視図である。
図10図9に示されたノブをY−Y断面で切り取った断面図である。
図11】使用者が座位の状態で浴槽の側壁を跨ぐ際のバスボードの使用態様を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の一実施形態に係るバスボードについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0051】
図1には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の一実施形態に係るバスボード1が示されている。図2には、図1に示されたバスボード1の回動部材4を跳ね上げた様態が示されている。図3には、浴槽2へ取り付けられた状態の本発明の他の実施形態に係るバスボード1’が示されている。図1,2において、「前方」とは左下斜め方向を意味し、「後方」とは右上斜め方向を意味する。したがって、「左方」とは右下斜め方向、すなわち浴槽2の手前側(洗い場側)を意味し、「右方」とは左上斜め方向、すなわち浴槽2の奥側(浴室の側壁側)を意味する。
【0052】
図1,2に示されているように、本実施形態に係るバスボード1は浴槽側壁20の上面21に載置される板状の支持基材3と、支持基材3に内側に配置され且つ支持基材3に回動自在に取り付けられている板状の回動部材4と、そして回動部材4の上面に取り付けられたノブ5から構成されている。
【0053】
また、バスボード1に使用される材料は、各部品に求められる強度を有するものであれば特に制限されるものではないが、浴室内は高温多湿の過酷な腐食環境であるので、耐腐食性が高く、しかも軽量であるプラスチック材料が主要材料として用いられている。
【0054】
支持基材3は、バスボード1の腰掛け部分の一部を形成すると共に、バスボード1を浴槽2の側壁20に固定し、そして後述する回動部材4を回動自在に支持するために機能する。このため、支持基材3は浴槽側壁20の上面21に載置できるものであれば、板状、棒状またはそれらを組み合わせた形状を有するものを使用することができる。ただし、本実施形態では、バスボード1を浴槽側壁20に設置した際の安定性、浴槽側壁20の上面21へのダメージ回避、使用者の利便性などを考慮して、板状の支持基材3が用いられている。
【0055】
支持基材3は、浴槽2の左方側壁22aの上面に載置される板状の左方側基材31aと、浴槽2の右方側壁22bの上面に載置される板状の右方側基材31bと、そして浴槽2の後方側壁22cの上面に載置される板状の後方側基材31cを含んでおり、全体として、平面視において略コの字形を形成するように一体成形されている。このため、本実施形態に係る支持基材3は浴槽側壁20の上面21の形状に沿うように配置することができるため、浴槽2へ取り付けた際の安定性が高く、極めて高い剛性を有する。
【0056】
本実施形態に係る左方側基材31a、右方側基材31bおよび後方側基材31cは、浴槽側壁20の上面21に載置した時、平面視においてそれぞれに浴槽2の左方側壁22aの上面、右方側壁22bの上面、後方側壁22cの上面を隠すように完全に覆うことができる幅を有している。一方、近年では図1,2に示されているように、浴槽2に隣接した浴室の側壁に手摺り6が設けられていることが多いが、浴槽2の蓋の取り付け/取り外し或いは開け閉めを容易にするため、手摺り6が浴槽側壁20の上面21を越えて浴室の側壁から浴槽側壁20の内側まで突出させて設置されることは殆どない。このため、本実施形態に係るバスボード1では、支持基材3の内側に配置される回動部材4は、浴室の側壁に取り付けられた手摺り6と干渉することなく、自由に開閉することができる。また、回動部材4が浴槽側壁20の上面21と直接当接することもなくなるので、回動部材4を繰り返し開閉しても浴槽側壁20の上面21を傷付けることがない。
【0057】
本実施形態に係る回動部材4は略四角形状を有する板状の部材であって、それぞれの端部には、中央部よりも左右端部が後方へ湾曲した凹部41a,41bを有する前方縁部40と、前方縁部40に対向する略直線状の後方縁部42cと、前方縁部40および後方縁部42cと略直角に隣接し、そして互いに対向する略直線状の左方縁部42aと略直線状の右方縁部42bが形成されている(図2)。さらに、回動部材4の前方縁部40に形成された凹部41a,41bは、それぞれの外側に配置されている左方側基材31aの前方端部および右方側基材31bの前方端部よりも後方へ湾曲している(図2)。本実施形態に係るバスボード1は、浴槽2の開口部に配置された回動部材4を跳ね上げることができるので、入浴中の使用者の邪魔になることがない。
【0058】
前方縁部40は回動部材4の自由端であり、その他の後方縁部42c、左方縁部42aおよび右方縁部42bは、回動部材4を閉じた時、それぞれに支持基材3の後方側基材31c、左方側基材31aおよび右方側基材31bと接するようにそれらの内側に配置される(図1)。このため、回動部材4は、バスボード1を浴槽側壁20の上面21に取り付けた時、平面視において浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置される。
【0059】
また、他の実施形態に係るバスボード1’では、回動部材4’は、バスボード1’を浴槽側壁20の上面21に取り付けた時、図3に示されるように、平面視において浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置されていれば、閉じた時、左方縁部42a’および右方縁部42b’が、それぞれに支持基材3’の左方側基材31a’および右方側基材31b’と接するようにそれらの内側に配置されていてもよい。この実施形態の場合は、左方側基材31a’と右方側基材31b’とを連結する後方側基材31c’は、回動部材4’を閉じた時、回動部材4’の下部に隠れるように配置されている。
【0060】
ところが、上述したように、浴槽2に隣接した浴室の側壁に設けられる手摺り6が浴槽側壁20の上面21を越えて浴室の側壁から浴槽側壁20の内側まで突出させて設置されることは殆どないので、支持基材3の内側で、浴槽側壁20の左方側壁22aの上面および右方側壁22bの上面と重なり合わない位置に配置された回動部材4は、浴室の側壁に取り付けられた手摺り6と干渉することなく、自由に開閉することができる。また、回動部材4が浴槽側壁20の上面21と直接当接することもなくなるので、回動部材4を繰り返し開閉しても浴槽側壁20の上面21を傷付けることがない。
【0061】
また、回動部材4の前方縁部40には、その左右端部が中央部よりも後方へ湾曲した把持部(凹部)41a,41bが形成されている。より詳細に説明すると、支持基材3に回動可能に取り付けられた回動部材4の前方縁部40の左方縁部42a側には、回動部材4の前方縁部40の中央部および左方側基材31aの前方端部よりも後方へ凹んだ(湾曲した)、使用者の手の平で掴むための左方把持部(凹部)41aが形成されており、そして回動部材4の前方縁部40の右方縁部42b側には、回動部材4の前方縁部40の中央部および右方側基材31bの前方端部よりも後方へ凹んだ(湾曲した)、使用者の手の平で掴むための右方把持部(凹部)41bが形成されている。
【0062】
このため、本実施形態に係るバスボード1では、使用者は、バスボード1に腰をかけている時や或いはバスボード1に背中を向けている時であっても、腰を屈めたり若しくは身体を後ろ向きに捻って目視することなく、手の平の感触等によって回動部材4の前方縁部40に設けられた左方把持部(凹部)41aおよび右方把持部(凹部)41bの位置を確認することができる。また、左方把持部(凹部)41aおよび右方把持部(凹部)41bは使用者の手の平が納まる大きさに切り欠かれているので、使用者は、回動部材4を開閉する時、使用者の手の平が自然と回動部材4の左方把持部(凹部)41aまたは右方把持部(凹部)41bへ誘導されて、回動部材4と浴槽側壁20との間または回動部材4と支持基材3との間などに手を挟まれることなく安全に回動部材4を開閉することができる。
【0063】
また、図1に示されているように、バスボード1の左方側基材31aの内側、すなわち左方側基材31aの回動部材4側には、回動部材4を下方から支持するための左方棚部30aが突設されており、左方棚部30aの前方端部301aは、回動部材4を閉じた時、回動部材4の左方把持部(凹部)41aの縁部よりも後方に位置するように配置される。また、バスボード1の右方側基材31bの内側、すなわち右方側基材31bの回動部材4側には、回動部材4を下方から支持するための右方棚部30bが突設されており、右方棚部30bの前方端部301bは、回動部材4を閉じた時、回動部材4の右方把持部(凹部)41bの縁部よりも後方に位置するように配置される。
【0064】
このため、本実施形態に係るバスボード1では、回動部材4を掴む使用者の手が、左方把持部(凹部)41a、右方把持部(凹部)41bにおいて回動部材4の裏面へまで回りこんでいる場合であっても、使用者の手が回動部材4と左方棚部30aとの間、回動部材4と右方棚部30bとの間に挟み込まれるのを効果的に防止することができる。
【0065】
さらに、本実施形態に係るバスボード1では、左方棚部30aの支持面300aは左方側基材31aの上面より下方に形成されており、そして右方棚部30bの支持面300bは右方側基材31bの上面より下方に形成されている。左方棚部30aの支持面300aおよび右方棚部30bの支持面300bが左方側基材31aおよび右方側基材31bの上面より下方に形成されていると、回動部材4の厚みは棚部30a,30bの支持面300a,300bと支持基材3の上面との間に形成された段差部分の中に収容されるので、回動部材4を閉じた時、回動部材4の上面と支持基材3の上面を略面一にすることができる。
【0066】
また、回動部材4を閉じた時、回動部材4の上面と支持基材3の上面が略面一となるように形成されていると、使用者は臀部をバスボード1の上面から離間させることなく、浴槽2の外から中へ又は中から外へスムーズに移動することができるので、浴槽2への出入りがより安全且つ容易になる。
【0067】
本実施形態に係るバスボード1では、回動部材4の前方縁部40の中央部、左方側基材31aの前方端部および右方側基材31bの前方端部は、回動部材4を閉じた時、略直線上に並ぶように配置される(図1,3及び4)。このように、回動部材4の左方把持部(凹部)41aおよび右方把持部(凹部)41b以外の前方縁部40と左方側基材31aおよび右方側基材31bの前方端部が略直線上に並ぶように配置されていると、矩形状の汎用の浴槽用の蓋を密接させて容易に並べることができるようになるので、バスボード1を浴槽2の蓋の一部としても使用することができるようになる。
【0068】
なお、回動部材4の回動手段は蝶番、ボールジョイントなど周知技術を採用することができ、特に制限はない。また、回動部材4は支持基材3の中の後方側基材31cへ取り付けてもよく、或いは回動部材4をその両側から左方側基材31aと右方側基材31bによって挟み込むように左方側基材31aと右方側基材31bへ回動可能に支持させてもよい。本実施形態の場合は、図示しないが、回動板部材4の左方縁部42aおよび右方縁部42bの後方縁部42c付近のそれぞれに回動軸が突設されている。そして支持基材3の左方側基材31aおよび右方側基材31bには、それぞれに左方縁部42aの回動軸および右方縁部42bの回動軸を支持するための軸受け部が設けられており、回動軸を軸受け部に嵌合させることにより、回動部材4は支持基材3に回動可能に支持される。
【0069】
図4には、本実施形態に係るバスボード1の裏面が示されている。支持基材3の左方側基材31aの下面には、左方側基材31aの横幅方向にスライド自在であり且つ浴槽2の左方側壁22aの内面に当接させることができる左方ストッパー7と、そして右方側基材31bの下面には、右方側基材31bの横幅方向にスライド自在であり且つ浴槽2の右方側壁22bの内面に当接させることができる右方ストッパー7が設けられている。左方ストッパー7と右方ストッパー7は同じ形状、構造を有しており、外周部にゴムなどの弾性樹脂からなる滑り止めラバーが被着された円柱形状を有している。
【0070】
本実施形態では、左方側基材31aの裏面および右方側基材31bの裏面には、横幅方向に一定の横幅を有する左方スリット32aおよび右方スリット32bが設けられており、各スリット32a,32bの中には、スリット32a,32bの横幅より大きな四辺を有する矩形状のアンカープレート70が埋め込まれており、そしてアンカープレート70にはスリット32a,32bの外部へ向けて雄ネジ(図示せず)が固着されている。
【0071】
一方、図示しないが、左方ストッパー7および右方ストッパー7の内部には雌ネジが形成されているので、ストッパー7の雌ネジをアンカープレート70に固着された雄ネジに螺合させて締め付けることにより、左方ストッパー7および右方ストッパー7をバスボード1の裏面の所定の位置に固定することができる。また、ストッパー7を回転させることにより、ストッパー7の雌ネジとアンカープレート70の雄ネジの螺合を緩めると、左方ストッパー7および右方ストッパー7は、それぞれにバスボード1の裏面に形成された左方スリット32aおよび右方スリット32bの中をスライドさせることができる。
【0072】
この結果、左方ストッパー7および右方ストッパー7は、図5における想像線に示すように、それぞれに左方側基材31aおよび右方側基材31bの横幅方向に摺動および固定が可能となり、左方ストッパー7および右方ストッパー7のそれぞれを浴槽2の相互に対向する左方側壁22aの内面および右方側壁22bの内面へ当接させることにより、バスボード1の水平方向への移動を拘束させることができる。
【0073】
なお、ストッパー7は、左方側基材31aの下面または右方側基材31bの下面において横幅方向にスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、特許文献1〜3に記載されているストッパーを本実施形態に係るバスボード1のストッパー7として転用することができる。
【0074】
図6には、本実施形態に係るバスボード1のノブ5の周辺を部分的に拡大した斜視図が示されている。図7には、図6に示されたノブ5をX−X断面で切り取った断面図が示されている。さらに、図8には、使用者が立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ際のバスボード1の使用態様が示されている。図1,6及び9を参照して理解されるように、本実施形態に係るバスボード1は、回動部材4の上面に、使用者の手の平を支持するための略平坦な支持面50が形成されているノブ5を備えている。
【0075】
バスボード1は、本来、浴槽2の開口部の一部に掛け渡しておき、高齢者や要介護者などの身体の不自由な人がバスボード1へ腰を掛けたままの状態で浴槽2の外から中へ又は中から外へ移動するために使用される。しかしながら、使用者の身体の不自由さの程度は区々であり、図8に示されているように、使用者の中にはバスボード1を手摺りのように使用して浴槽2の側壁20を立位の状態で跨ぐ場合もある。この場合、使用者はバスボード1と向き合い、バスボード1の上面に手を置いて浴槽2の側壁20を跨ぐことになる。このため、バスボード1の上面にノブ5を設けておくと、使用者はノブ5に手を添えることで自己の体重の一部を確実にバスボード1へ預けることができるようになるので、安全且つ容易に立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐことができるようになる。
【0076】
このため、本実施形態に係るノブ5の上面には略平坦な支持面50が形成されている。高齢者や要介護者などは十分な握力を有していない場合が多いので、ノブ5の上面に略平坦な支持面50を設けておくと、使用者はノブ5の支持面50に手の平、手の甲または握り拳を置いて或いはノブ5を軽く握るだけで、手を滑らせることなく自己の体重の一部をバスボード1へ預けることができるようになる。この結果、使用者はより安全且つより簡単に立位の状態で浴槽2の側壁を跨ぐことができるようになる。このため、本実施形態のノブ5は平面視において略円形を有している。ノブ5の上面の形状およびノブ5の全体の形状を平面視において略円形とすることにより、使用者はどの方向からも簡単にノブ5へアクセスすることができるようになり、場所を選ばず、自己の体重の一部をバスボード1へ預けることができるようになる。
【0077】
なお、本実施形態に係るノブ5の支持面50では、支持面50に水分が溜まり難くなるようにするため、ノブ5の側面55から中央へ向けて僅かに膨らんだ凸部が形成されている(図7)。しかしながら、使用者の手の平、手の甲または握り拳を安定して支え易くすることを重視する場合は、図9及び10に示されているように、ノブ5の側面55からに中央に掛けて凹んだ凹部が形成されていてもよい。
【0078】
ノブ5の支持面50を、側面55から中央付近へ向けて凹んだ形状とした場合、ノブ5の支持面50には、図9及び10に示されているように、側面55から中央付近へ向けて膨らんだ底面52を有する溝部51が設けられる。この場合、ノブ5の支持面50に溜まった水分は溝部51へ誘導され、そして支持面50に溜まった水分は溝部51を介してノブ5の中央付近から側面55の開口へ排水される。また、溝部51は、使用者がノブ5の支持面50に手の平、手の甲または握り拳を置いた時、それらが支持面50の上で滑るのを防止するためにも機能する。このため、本実施形態に係る溝部51はノブ5の支持面50の略中央で直交するように放射状に複数設けられている。
【0079】
本実施形態に係るノブ5は、図7及び10に示されているように、使用者の手によりアクセスされるグリップ部53と、グリップ部53を回動部材4の上面に取り付けるための支柱部54とから構成されており、そしてグリップ部53における水平断面の最大断面積は、支柱部54における水平断面の最大断面積よりも大きくなっている。すなわち、ノブ5の上面に形成された上述の支持面50は、グリップ部53の上面と一致している。このため、本実施形態に係るバスボード1では、握力の十分でない使用者であってもグリップ部53の裏面に簡単に指を引っ掛けることができるので、より安定した状態で自己の体重の一部をグリップ部53へ預けることができるようになる。
【0080】
なお、本実施形態に係るバスボード1では、グリップ部53は1つの支柱部54を介してバスボード1の上面に取り付けられている。このため、本実施形態に係るバスボード1では、使用者はグリップ部53へアクセスする位置を選ぶことなく、どの方向からもより簡単にグリップ部53を掴んだり或いはグリップ部53の上に握り拳などを置いて、自己の体重の一部をグリップ部53へ預けることができると共に、ノブ5全体の強度も向上し、使用者による安全な使用が保証される。
【0081】
また、本実施形態に係るバスボード1では、グリップ部53の外周部には、使用者が指を掛けるための略同一幅の側面55が設けられており、そしてグリップ部53の側面55は連続した曲面によって支持面50と連結されている(図7,10)。このため、本実施形態に係るバスボード1では、使用者はどの方向からでもグリップ部53を容易に掴むことができるようになり、また、グリップ部53の側面55が連続した曲面によって支持面50と連結されているので、使用者の手の平に対するグリップ部53のフィット性も向上する。このため、グリップ部53の側面55は略同一幅を有していれば、本実施形態のように、側面視において略平坦な面を形成していても又は外側へ多少膨らんだ面を形成していてもよい。
【0082】
本実施形態に係るノブ5は、バスボード1の回動部材4の前方縁部40寄りの位置であって、且つ回動部材4の右方端部寄りの位置、すなわち支持基材3の右方側基材31b寄りの位置に取り付けられている(図1,3)。ノブ5は、例えば使用者がバスボード1を主に座位の状態で移動するために使用するのであれば、回動部材4の前方縁部40寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置に取り付けられているのが好ましく、例えば使用者がバスボードを主に手を置いて立位の状態で使用するのであれば、回動部材4の前方縁部40寄りの位置であって洗い場側とは反対側の位置または前方縁部40寄りの位置であって洗い場側の位置およびその反対側の位置に取り付けられているのが好ましい(図1,3)。
【0083】
使用者がバスボード1を使って立位の状態で浴槽2の側壁20を跨ぐ時は、使用者はバスボード1と向き合い、バスボード1のノブ5に手を掛けて浴槽2の側壁20を跨ぐことになる。このため、ノブ5が、上述のようにバスボード1の回動部材4の所定の位置に取り付けられていると、使用者は簡単にノブ5へアクセスすることができ、自己の身体を支えることができるようになる。また、図11に示されるように、使用者がバスボード1へ腰を掛けたままの状態で浴槽2へ出入りしようとする際も、使用者はノブ5を利用して自己の身体を簡単に移動することができるようになる。
【0084】
さらに、ノブ5が回動部材4の前方縁部40寄りの位置に配置されていると、ノブ5が洗い場側に取り付けられている場合においても、バスボード1上に腰をかけた使用者は膝を少し持ち上げるだけで浴槽2の側壁20と一緒にノブ5の上を乗り越えることができるので、ノブ5は、使用者が座位の状態で浴槽2へ出入りしようとする際の障害となることもない。また、ノブ5は支持基材3ではなく、回動部材4へ取り付けられるので、ノブ5を利用することにより回動部材4の開閉が容易となる。また、回動部材4の前方縁部40は回動軸から離れているので、使用者はノブ5が回動軸付近に取り付けられている場合に比べて小さな力で回動部材4を開閉することができるようになる。
【0085】
このように、ノブ5の取り付け位置は、使用者によるバスボード1の使用態様や使用者の好みに応じて、バスボード1の回動部材4の前方縁部40寄りの位置であって、且つ回動部材4の左方端部寄りの位置および/または右方端部寄りの位置、すなわち支持基材3の左方側基材31a寄りの位置および/または右方側基材31b寄りの位置を選択することができる。
【0086】
本実施形態に係るバスボード1では、ノブ5の下部には雄ネジからなる第1の係合手段(図示せず)が設けられており、回動部材4の上面には、雌ネジ(ネジ孔)35からなる第2の係合手段(図1,5,8)が複数個配設されている。このため、ノブ5は、使用者の体格等に合わせて第1の係合手段と係合させる第2の係合手段を選択することにより、任意の取り付け位置へ変更/移動することができる。
【0087】
また、図示しないが、ノブ5は、回動部材4の上面にスライド可能に取り付けることによって、ノブ5の取り付け位置を無段階で連続的に変更/移動できるようすることもできる。この場合、ノブ5のスライド機構は、回動部材4の上面においてノブ5をスライド自在に移動させることができ、所定の位置で固定できるものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、上述した本実施形態に係るストッパー7のスライド機構や、または特許文献1〜3に記載されているストッパーのスライド機構をノブ5のスライド機構として転用することも可能である。
【符号の説明】
【0088】
1,1’・・・バスボード
2・・・・浴槽
20・・・浴槽側壁
21・・・上面
22a・・・左方側壁
22b・・・右方側壁
22c・・・後方側壁
3,3’・・・支持基材
30a・・・左方棚部
30b・・・右方棚部
300a,300b・・・支持面
301a,301b・・・前方端部
31a,31a’・・・左方側基材
31b,31b’・・・右方側基材
31c,31c’・・・後方側基材
32a・・・左方スリット
32b・・・右方スリット
35・・・雌ネジ(ネジ孔)
4,4’・・・回動部材
40・・・前方縁部
41a・・・左方把持部(凹部)
41b・・・右方把持部(凹部)
42a,42a’・・・左方縁部
42b,42b’・・・右方縁部
42c・・・後方縁部
5,5’・・・ノブ
50,50’・・・支持面
51・・・溝部
52・・・底面
53,53’・・・グリップ部
54,54’・・・支柱部
55,55’・・・側面
6・・・・手摺り
7・・・・ストッパー
70・・・アンカープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11