(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397752
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】鋼管柱曲げ試験方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/20 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
G01N3/20
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-257371(P2014-257371)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118433(P2016-118433A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】青木 広之
(72)【発明者】
【氏名】中川 三千秋
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−002527(JP,A)
【文献】
特開平05−149852(JP,A)
【文献】
特開2001−30032(JP,A)
【文献】
山下 亮 ほか,細径柱,低荷重自立柱の設計技術,NTT技術ジャーナル,2011年 3月,vol.23, No.3,76−79頁,URL,http://www.ntt.co.jp/journal/1103/files/jn201103076.pdf
【文献】
パンザーマスト,2014年10月,表紙,第32頁,裏表紙,URL,entryname=dl_pole&entryid=00002&field=00000077&/C281.pdf
【文献】
「つくばフォーラム2012」開催報告,2013年 2月,URL,http://www.ntt.co.jp/journal/1302/files/jn201302060.pdf
【文献】
「つくばフォーラム2013」開催報告,2014年 1月,URL,http://www.ntt-group.cn/journal/1401/files/jn201401065.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験すべき鋼管柱の基端を固定し、前記鋼管柱の先端に前記鋼管柱と直角に固定されたワイヤーを滑車を介して油圧シリンダーにより水平方向に引っ張り、かくして、前記鋼管柱を前記基端を支点として水平方向に変形させることを特徴とする鋼管柱曲げ試験方法。
【請求項2】
前記鋼管柱は、テーパー管であることを特徴とする、請求項1に記載の鋼管柱曲げ試験方法。
【請求項3】
前記鋼管柱を支持する中間支持梁を設けることを特徴とする、請求項1または2に記載の鋼管柱曲げ試験方法。
【請求項4】
基台と、前記基台上に水平に固定された主梁と、前記基台上に固定された、試験すべき鋼管柱の基端を、前記主梁に対して傾斜して固定する固定台と、前記基台上に固定された油圧シリンダーと、一端が前記鋼管柱の先端に、前記鋼管柱と直角に、前記主梁に取り付けられた滑車を介して固定され、他端が前記油圧シリンダーに接続されたワイヤーとを備え、前記油圧シリンダーにより前記ワイヤーを水平方向に引っ張ることによって、前記鋼管柱を前記基端を支点として水平方向に変形させることを特徴とする鋼管柱曲げ試験装置。
【請求項5】
前記鋼管柱は、テーパー管であることを特徴とする、請求項4に記載の鋼管柱曲げ試験装置。
【請求項6】
前記鋼管柱と前記主梁との間に、前記鋼管柱を支持する中間支持梁が設けられていることを特徴とする、請求項4または5に記載の鋼管柱曲げ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼管柱曲げ試験方法および装置、特に、試験場所が限定されず、鋼管柱の変形状況を容易に把握することができ、しかも、安全かつ確実に試験を行うことができる、鋼管柱曲げ試験方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管柱は、要求性能として、設計荷重まで載荷したとき、塗装を含め鋼管柱全体に座屈などの異常がないこと、破壊時の荷重は設計荷重の2倍以上であること、及び設計荷重載荷時の鋼管柱のたわみ量(tanθ)は、0.07以下であることが求められている。この要求性能を確認する方法としての強度試験は、鋼管柱の曲げ試験により行われる。
【0003】
鋼管柱の従来の曲げ試験装置の一例を、図面を参照しながら説明する。以下、この試験装置を従来曲げ試験装置という。
【0004】
図2は、従来曲げ試験装置を示す概略断面図である。
【0005】
図2に示すように、従来曲げ試験装置は、地下に掘られたピット11と、ピット11の一端側の地上に設置された、試験すべき鋼管柱12の基部12aを固定する固定台13と、ピット11の他端側の地上に設置された油圧シリンダー14と、ピット11内に設置された滑車15と、油圧シリンダー14側の地上に設置された滑車16と、一端が鋼管柱12の先端12bに固定され、他端が滑車15および滑車16を介して油圧シリンダー14に接続されたワイヤー17とを備えている。
【0006】
従来曲げ試験装置により鋼管柱12の曲げ試験を行うには、鋼管柱12の基部12aを固定台13に水平に固定し、ワイヤー17の一端を鋼管柱12の先端12bに固定し、ワイヤー17の他端を滑車15および滑車16を介して油圧シリンダー14に接続する。
【0007】
次いで、油圧シリンダー14によりワイヤー17を設計荷重まで引っ張り、載荷して、鋼管柱12を基部12aを支点として下方に湾曲させる。
【0008】
そして、油圧シリンダー14による荷重を除き、除荷時の鋼管柱12の残留たわみ量を測定して、鋼管柱12の変形状況を把握する。すなわち、残留たわみ量がほぼなく、座屈等の異常が確認されなかった場合には、鋼管柱12は、所定の強度を有しているものと判断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来曲げ試験装置によれば、鋼管柱12の強度を試験することはできるが、以下のような問題があった。
(a)曲げ試験装置が地面に固定され、しかも、地下に掘られたピット11を使用するので、試験装置を他の場所に移動することができない。従って、試験場所が限定される。
(b)除荷時の鋼管柱12の残留たわみ量を測定して、鋼管柱12の変形状況を把握するが、鋼管柱12は、鉛直方向に変形するので、鋼管柱12の変形状況を把握しにくい。
(c)鋼管柱12のたわみ量の測定は、ピット11に直尺を測定毎に当てて行うが、測定時にピット11内に転落するおそれがあり、危険が伴う。
(d)鋼管柱12に座屈が生じた場合、座屈箇所は、鋼管柱12が鉛直方向に変形するので、鋼管柱12の下面に生じる。このために、座屈箇所を確認しづらい。
【0010】
従って、この発明の目的は、試験場所が限定されず、鋼管柱の変形状況を容易に把握することができ、しかも、安全かつ確実に試験を行うことができる、鋼管柱の曲げ試験方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明は、試験すべき鋼管柱の基端を固定し、前記鋼管柱の先端に
前記鋼管柱と直角に固定されたワイヤーを滑車を介して油圧シリンダーにより水平方向に引っ張り、かくして、前記鋼管柱を前記基端を支点として水平方向に変形させることに特徴を有するものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記鋼管柱は、テーパー管であることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記鋼管柱を支持する中間支持梁を設けることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、基台と、前記基台上に水平に固定された主梁と、前記基台上に固定された、試験すべき鋼管柱の基端を、前記主梁に対して傾斜して固定する固定台と、前記基台上に固定された油圧シリンダーと、一端が前記鋼管柱の先端に、
前記鋼管柱と直角に、前記主梁に取り付けられた滑車を介して固定され、他端が前記油圧シリンダーに接続されたワイヤーとを備え、前記油圧シリンダーにより前記ワイヤーを
水平方向に引っ張ることによって、前記鋼管柱を前記基端を支点として水平方向に変形させることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記鋼管柱は、テーパー管であることに特徴を有するものである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記鋼管柱と前記主梁との間に、前記鋼管柱を支持する中間支持梁が設けられていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、従来曲げ試験装置のように、地下にピットを掘る必要がないので、試験装置を他の場所に容易に移動することができる。従って、試験場所が限定されない。
【0019】
また、この発明によれば、鋼管柱は、水平方向に変形するので、鋼管柱の変形状況を容易に把握することができる。
【0020】
また、この発明によれば、鋼管柱に座屈が生じた場合、座屈箇所は、鋼管柱が水平方向に変形するので、鋼管柱の側面に生じる。このために、座屈箇所が確認しやすい。
【0021】
また、この発明によれば、従来曲げ試験装置のように、ピットを使用しないので、鋼管柱のたわみ量の測定が安全に行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の鋼管柱曲げ試験装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の鋼管柱曲げ試験装置の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、この発明の鋼管柱曲げ試験装置を示す平面図である。
【0025】
図1において、1a、1b、1cは、基台、2は、基台1a、1b、1c上に水平に固定された主梁、3は、基台1a、1b上に固定された固定台である。固定台3は、試験すべき鋼管柱4の基端4aを、主梁2に対して傾斜して固定する。傾斜角度を図中、(θ)で示す。鋼管柱4は、テーパー管からなり、大径側の基端4aが固定台3に固定される。
【0026】
固定台3は、開閉自在な半円筒形状の上部固定部材および下部固定部材からなっている。下部固定部材上に鋼管柱4の基端4aを載置し、上部固定部材を閉じることによって、鋼管柱4は、水平に固定される。
【0027】
5は、基台1a、1b上に固定された油圧シリンダー、6は、ワイヤーである。ワイヤー6の一端は、鋼管柱4の先端4bに、主梁2に取り付けられた滑車7を介して鋼管柱4と直角に固定され、ワイヤー6の他端は、油圧シリンダー5に接続されている。8は、ワイヤー6の途中に設置されたロードセルであり、ワイヤー6の引張荷重を測定する。
【0028】
9は、鋼管柱4と主梁2との間に亘って設けられた中間支持梁であり、鋼管柱4は、中間支持梁9に沿って変形する。
【0029】
このように構成されている、この発明の鋼管柱曲げ試験装置によれば、以下のようにして、鋼管柱4の曲げ試験が行われる。
【0030】
鋼管柱4の基端4aを固定台3に固定する。次いで、鋼管柱4の先端4bにワイヤー6の一端を固定し、ワイヤー6の他端を滑車7を介して油圧シリンダー5に接続する。
【0031】
次いで、油圧シリンダー5によりワイヤー6を設計荷重まで引っ張り、載荷して、鋼管柱4を基部4aを支点として水平に湾曲させる。設計荷重は、ロードセル8によって測定する。
【0032】
そして、油圧シリンダー5による荷重を除き、除荷時の鋼管柱4の残留たわみ量を測定して、鋼管柱4の変形状況を把握する。すなわち、残留たわみ量がほぼなく、座屈等の異常が確認されなかった場合には、鋼管柱2は、所定の強度を有しているものと判断する。
【0033】
この発明によれば、従来曲げ試験装置のように、地下にピットを掘る必要がないので、試験装置を他の場所に容易に移動することができる。従って、試験場所が限定されない。
【0034】
また、この発明によれば、鋼管柱4は、水平方向に変形するので、鋼管柱4の変形状況を容易に把握することができる。
【0035】
また、この発明によれば、鋼管柱4に座屈が生じた場合、座屈箇所は、鋼管柱4が水平方向に変形するので、鋼管柱4の側面に生じる。このために、座屈箇所が確認しやすい。
【0036】
また、この発明によれば、従来曲げ試験装置のように、ピットを使用しないので、鋼管柱4のたわみ量の測定が安全に行える。
【符号の説明】
【0037】
1aから1c:基台
2:主梁
3:固定台
4:鋼管柱
4a:基端
4b:先端
5:油圧シリンダー
6:ワイヤー
7:滑車
8:ロードセル
9:中間支持梁
11:ピット
12:鋼管柱
12a:基端
12b:先端
13:固定台
14:油圧シリンダー
15:滑車
16:滑車
17:ワイヤー