(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る吐出器の実施形態について図面を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態の吐出器1は、内容物が収容される容器本体2の口部2aに装着される有頂筒状の装着キャップ3と、装着キャップ3に上方付勢状態で上下動可能に貫設された筒状のステム6を有するポンプ4と、ステム6の上端に装着されるとともに吐出孔5aが形成された押下ヘッド5と、を備えている。
なお、この吐出器1は、例えば粘度が100mPa・s(100cP)程度か、それ以下の内容物を吐出する吐出器として好適に利用することができる。
【0015】
吐出器1は、未使用段階では、
図1に示すようにステム6及び押下ヘッド5が下降端位置P1に位置し、かつ押下ヘッド5が後述する規制筒12に螺着して保持されることで、装着キャップ3に対する押下ヘッド5の上方移動が規制されている。一方、使用段階では、
図2に示すように、ステム6及び押下ヘッド5は上昇端位置P2に位置して、吐出操作のための待機状態を維持している。
【0016】
なお、容器本体2及び装着キャップ3は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置された状態で配設されている。本実施形態では、この共通軸を軸線Oといい、軸線Oに沿った押下ヘッド5側を上側(上方)、その反対側を下側(下方)という。また、軸線O方向から見た平面視において、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
図2に示すように、装着キャップ3は、環状の天壁部3aを有する有頂筒状に形成され、容器本体2の口部2aに螺着されている。天壁部3aは、後述するシリンダ10のフランジ部20、及び容器本体2の口部2aの上端開口縁上に配置され、シリンダ10の上方への抜けを防止している。
【0018】
ポンプ4は、上述した装着キャップ3によって容器本体2の口部2a内に挿入された状態で保持されるとともに、その内側にステム6が上方に向けて立設されたシリンダ10と、ステム6に連係するとともにシリンダ10内に上下摺動可能に嵌合されたピストン11と、シリンダ10の上端部に装着されるとともに、押下ヘッド5を下降端位置P1(
図1参照)で保持可能な規制筒12と、を備えている。
さらに、ポンプ4は、シリンダ10内に配設され、シリンダ10の下連通口10a(下端開口)を開閉する下部弁体13と、ステム6を上方に向けて付勢する付勢部材14と、下部弁体13から上方に向けて延び、ステム6内に挿通された上部弁体15と、ステム6と別体に形成されてステム6内に装着されたシール筒16と、を備えている。
【0019】
図2に示すように、シリンダ10は、装着キャップ3の内側に配設され、パッキン19を介して容器本体2の口部2aの上端開口縁上に配置される環状のフランジ部20と、フランジ部20の内周縁から下方に向けて延設された直筒部21と、直筒部21の下端縁から下方に向けて延設された吸込み筒部22と、フランジ部20の内周縁から上方に向けて延設された突出筒部23と、を備えている。
【0020】
直筒部21には、フランジ部20よりも下方に位置する部分に、直筒部21を径方向に貫通することで、容器本体2内とシリンダ10内とを連通する空気孔25が形成されている。直筒部21の下端部(吸込み筒部22との境界部分)には、径方向の内側に向けて突設された環状の下弁座部(下端開口縁)26が形成されている。なお、下弁座部26の内側が、シリンダ10内と容器本体2内とを連通させる上述した下連通口10aを構成している。
吸込み筒部22内には、容器本体2内の内容物を吸い上げるチューブ体27が嵌合されている。チューブ体27は、上端縁が下弁座部26に下方から当接している。
【0021】
規制筒12は、シリンダ10の突出筒部23に嵌合された多重筒状の内筒部30と、突出筒部23に外嵌されるとともに、上端が内筒部30の上端に連結されたねじ筒部32と、を備えている。
内筒部30は、突出筒部23に、軸線O回りの回転が規制された状態で装着されている。内筒部30内には、ステム6が挿通されており、内筒部30は、規制筒12に対するステム6及び押下ヘッド5の上下動を案内する。ねじ筒部32は、上部側よりも下部側の方が拡径した2段筒状に形成され、上部側の外周面に雄ねじ部が形成されている。
【0022】
ピストン11は、シリンダ10における直筒部21内に上下摺動可能に配設されている。ピストン11は、上端部が上方に向かうに従い漸次拡径し、下端部が下方に向かうに従い漸次拡径している。そして、ピストン11の上端及び下端は、シリンダ10における直筒部21の内周面に周方向の全周に亘って例えば液密に摺接している。
【0023】
ステム6は、ピストン11と一体に形成されている。ステム6の外径は、ピストン11の内径よりも小さく形成されている。ステム6の下端は、ピストン11における軸線O方向の中間部に径方向の内側から連結されている。シリンダ10内において、ピストン11よりも上方に位置する部分には、ステム6とシリンダ10との間に画成されるとともに上述した空気孔25に連通する環状空間70が設けられている。なお環状空間70は、外部に連通している。
【0024】
ステム6は、下端がピストン11に連結された基筒部39と、基筒部39の上端から上方に向けて延びる立ち上がり筒部43と、を備えている。
基筒部39は、下側に位置する大径部40、及び大径部40の上方に連結段部41を介して連結された小径部42を備えている。これにより、基筒部39の外周面は、下方から上方に向けて段状に縮径している。
【0025】
連結段部41は、ステム6及び押下ヘッド5が上昇端位置P2に位置している際、上述した内筒部30の下端縁に下方から接触し、規制筒12に対するステム6及び押下ヘッド5のそれ以上の上方移動を規制する。
小径部42は、規制筒12の内筒部30内に上下動可能に配置されている。
【0026】
図2及び
図3に示すように、基筒部39の内周面には、縦リブ39a、及び内径が他の部分よりも縮径した縮径部39bが設けられている。縦リブ39a及び縮径部39bは、軸線O方向にずれて配置され、縦リブ39aが縮径部39bよりも上側に位置している。
縦リブ39aは、軸線O方向に延び、周方向に間隔をあけて複数配置されている。縦リブ39aの上端は、基筒部39における連結段部41よりも上側に位置し、基筒部39の上端と同等の位置に配置されている。縦リブ39aの下端は、連結段部41よりも下側に位置し、且つ基筒部39の下端よりも上側に配置されている。
【0027】
図3に示すように、縮径部39bの上端は、縦リブ39aの下端よりも下側に位置している。縮径部39bの内周面は、縦リブ39aにおいて径方向の内側を向く頂面よりも、径方向の外側に位置している。縮径部39bの内周面には、テーパー面39cが設けられている。テーパー面39cは、縮径部39bにおける上部に形成され、下側から上側に向かうに従い漸次拡径している。なお図示の例では、縮径部39bの内周面において、テーパー面39cよりも下側に位置する部分は、軸線O方向の全長にわたって同径になっている。
【0028】
図2に示すように、基筒部39と立ち上がり筒部43との連結部分には、環状の上弁座部(弁座)46が配設されている。上弁座部46は、軸線O方向に沿う縦断面視において、径方向の内側に向かうに従い漸次、下方に向けて傾斜している。そして、上弁座部46の内側が、ステム6内と押下ヘッド5内とを連通する上連通口6aを構成している。
立ち上がり筒部43内には、上弁座部46に上方から離反可能に着座する弁体部(ボール弁)45が配設されている。弁体部45は、上弁座部46の上面に着座して上連通口6aを閉塞している。なお、ステム6のうち上弁座部46よりも上方に位置する部分、すなわち立ち上がり筒部43は、その全域(全長)に亘って内径が同等とされている。
【0029】
下部弁体13は、シリンダ10内の加圧時に、シリンダ10の下連通口10aを閉塞した状態に維持し、且つシリンダ10内の減圧時に、シリンダ10の下連通口10aを開放する逆止弁とされている。なお、下部弁体13は、軸線O回りに回転可能にシリンダ10内に支持されている。
【0030】
下部弁体13は、ステム6及び押下ヘッド5が下降端位置P1(
図1参照)に位置したときにステム6内に嵌合される有底筒状の上筒部51と、上述した下弁座部26上に配設された下環部52と、上筒部51及び下環部52を連結する連結部53と、下環部52の内側に配設され、下連通口10aを開閉する弁本体50と、を備えている。なお、図示の例において、上筒部51及び下環部52は、軸線Oと同軸状に配置されている。
【0031】
上筒部51は、下環部52よりも小径とされ、ステム6及び押下ヘッド5が下降端位置P1(
図1参照)に位置しているときに、ステム6の下端部内に離脱可能に嵌合される。上筒部51の底壁部には、軸線Oに沿って延びる軸部51aが立設されている。軸部51aの上端は、上筒部51の上端縁よりも下方に位置している。
連結部53は、軸線Oを径方向で挟んで一対配設されている。一対の連結部53は、両連結部53の間に配置され、軸線O方向に延在する仕切り壁部59を介して連結されている。
【0032】
弁本体50は、軸線Oと同軸に配置された円板状に形成され、下弁座部26に離反可能に着座して下連通口10aを閉塞している。弁本体50の外周面と、下環部52の内周面と、の間には、下環部52に対して弁本体50を弾性変位可能に連結する弾性連結片55が、周方向に間隔をあけて配設されている。
【0033】
付勢部材14は、下部弁体13の上述した連結部53に外挿され、ステム6を上方に向けて付勢している。具体的に、付勢部材14は、ピストン11の基筒部39と、下部弁体13における下環部52の上端面と、の間に介在し、ステム6及び下部弁体13を軸線O方向で互いに離間させる方向に付勢する。
【0034】
上部弁体15は、下部弁体13とは別体に形成され、下部弁体13の上述した上筒部51内から上方に向けて突出している。上部弁体15は、上筒部51内に装着された被着部80と、被着部80から上方に向けて突出する棒状部81と、を備えている。被着部80は、有頂筒状に形成され、上筒部51の内側に嵌合されているとともに、軸部51aの外側に嵌合されている。
【0035】
棒状部81の上端部には、膨出部(被シール部)81aが形成されている。膨出部81aは、棒状部81の外周面が径方向の外側に膨出しており、棒状部81の全周にわたって形成されている。図示の例では膨出部81aは、軸線O方向に沿う縦断面視において、径方向の外側に向けて突となる三角形状に形成されている。これにより、膨出部81aは軸線O方向の上下両側から軸線O方向の中央に向かうに従い漸次拡径している。
【0036】
シール筒16は、ステム6内に嵌合される本体部90と、本体部90から径方向の内側に向けて突出する弾性リング91と、を備え、これら本体部90及び弾性リング91が例えばポリエチレンなどの樹脂材料によって一体に形成されることで構成されている。シール筒16の硬度は、ステム6及び上部弁体15の各硬度よりも低い。
【0037】
本体部90の上端は、ステム6における縦リブ39aの下端に当接し、本体部90の下端は、縮径部39bの上端よりも下側に位置し、かつ縮径部39bの下端よりも上側に位置している。図示の例では、本体部90の外周面には、下側に向けて開口する嵌合凹部90aが形成されていて、縮径部39bは、嵌合凹部90a内に嵌合されている。嵌合凹部90aは、周方向の全周にわたって延びる周溝状に形成されている。
【0038】
本体部90の外周面には、さらに案内面90bが形成されている。案内面90bは、本体部90の外周面において嵌合凹部90aよりも上側に位置する部分に形成されている。案内面90bは、周方向の全周にわたって延び、下側から上側に向かうに従い漸次、縮径している。案内面90bは、軸線O方向に沿う縦断面視において、軸線Oに対して傾斜している。案内面90bの上端は、本体部90の上端に到達している。
【0039】
弾性リング91は、本体部90の下端に設けられ、径方向に弾性変形可能に形成されている。図示の例では、弾性リング91の内周縁部には、軸線O方向に延びる補助シール片91aが設けられている。補助シール片91aは、軸線Oと同軸の筒状に形成され、本体部90よりも軸線O方向の長さが短い。
【0040】
シール筒16は、ステム6及び押下ヘッド5が上昇端位置P2に位置するときに、上部弁体15に、外側から離脱自在に嵌合する。図示の例では、シール筒16の弾性リング91が、上部弁体15の膨出部81aに対して、下方に向けて離反可能に液密に嵌合している。このとき弾性リング91は、径方向に弾性変形した状態で膨出部81aに嵌合している。本実施形態では、弾性リング91における補助シール片91aが、膨出部81aの軸線O方向の中央部に下側から当接することで径方向に弾性変形している。
【0041】
なおシール筒16は、ステム6に下側から挿入されることでステム6内に嵌合されている。シール筒16をステム6内に嵌合するときには、本体部90の案内面90bにステム6における縮径部39bの下端上を摺動させ、本体部90の外周面において嵌合凹部90aよりも上側に位置する部分に、縮径部39bを上側に乗り越えさせることで嵌合凹部90a内に縮径部39bを嵌合させる。
【0042】
ポンプ4のうち、上弁座部46と下弁座部26との間は、内容物が収容される収容室Rとされている。収容室Rは、ステム6の基筒部39、ピストン11、シリンダ10の直筒部21の各内部に亘って延在している。
ポンプ4では、上述した下部弁体13を具備していることで、シリンダ10内の加圧時に、収容室R内の内容物が下連通口10aを通して容器本体2内に戻ることが規制され、かつシリンダ10内の減圧時に、容器本体2内の内容物が下連通口10aを通して収容室R内に流入することが許容されている。
【0043】
押下ヘッド5は、
図2及び
図4に示すように、頂壁部60a及び周壁部60bを有する有頂筒状の本体筒部60と、ステム6の上端に装着された装着筒61と、本体筒部60から径方向の外側に突出するとともに、その先端に吐出孔5aが形成されたノズル筒62と、ステム6内とノズル筒62内とを連通する連通筒63と、を備えている。なお、本体筒部60は軸線Oと同軸に配設されている。
【0044】
本体筒部60における周壁部60bの下端の内周面には、規制筒12のねじ筒部32の雄ねじ部に対応する雌ねじ部が形成されている。これにより、本体筒部60は下降端位置P1(
図1参照)において規制筒12に螺着されるとともに、上昇端位置P2において規制筒12との螺着が解除される。
【0045】
連通筒63は、本体筒部60における頂壁部60aから下方に向けて延設され、本体筒部60内に配置されている。なお、連通筒63は軸線Oと同軸に配設されている。連通筒63の内径は、ステム6における立ち上がり筒部43の内径よりも拡径している。なお、上記ノズル筒62は、本体筒部60の周壁部60bの内側に入り込んでおり、連通筒63に対して一体に接続されている。これにより、ノズル筒62内と連通筒63内とは互いに連通している。
【0046】
装着筒61は、連通筒63の下端部からさらに下方に向けて延びるように形成され、ステム6における立ち上がり筒部43に外嵌されている。これにより、装着筒61は、連通筒63と一体に形成され、軸線Oと同軸に配設されている。また、ステム6内とノズル筒62内とが、連通筒63内を通じて互いに連通する。
なお、装着筒61は、本体筒部60よりも下方に突出している。また、装着筒61の外径は、ステム6における小径部42の外径と同等とされている。さらに、連通筒63と本体筒部60の周壁部60bとの間には、軸線O方向及び径方向の両側に沿って延在する補強壁部65が、周方向に間隔をあけて複数配設されている。この補強壁部65によって、本体筒部60の周壁部60bと連通筒63とがより強固に連結され、押下ヘッド5の姿勢が安定する。
【0047】
連通筒63内には、ステム6における立ち上がり筒部43内に配置された弁体部45の上方移動を規制する規制リブ66が配置されている。規制リブ66は、本体筒部60における頂壁部60aから下方に向けて突出するように形成され、その下端部は立ち上がり筒部43の上端開口縁と同等の高さ位置している。
【0048】
図示の例では、規制リブ66は、軸線O方向に長い縦リブ状に形成され、連通筒63の内周面のうち軸線Oを挟んでノズル筒62とは径方向の反対側に位置する部分にも一体に接続されている。この際、規制リブ66は、径方向に沿った横幅が立ち上がり筒部43の内径の半分程度の長さとなるように形成されている。これにより、弁体部45が立ち上がり筒部43内を上方移動した際に、確実に規制リブ66の下端部に弁体部45を接触させることができ、弁体部45のそれ以上の上方移動を規制することができる。そのため、弁体部45を立ち上がり筒部43内に留まらせることができる。
【0049】
なお、規制リブ66は、連通筒63内において軸線Oを挟んでノズル筒62とは径方向の反対側に配置されているので、ノズル筒62内に向かう内容物の流れが規制リブ66によって阻害されることはない。また、規制リブ66は縦リブ状に形成されている場合に限定されるものではない。例えば、突起状や棒状に規制リブ66を形成しても構わない。
【0050】
次に、上述した吐出器1を使用する場合について説明する。
吐出器1を使用するにあたって、まず押下ヘッド5及びステム6を
図1に示す下降端位置P1から
図2に示す上昇端位置P2に移行させる。具体的には、押下ヘッド5を周方向の一端側(押下ヘッド5と規制筒12との螺着を解除する方向)に向けて回転させ、押下ヘッド5の規制筒12に対する螺着を解除する。なお、上述したように押下ヘッド5内にはステム6の上端部が嵌合され、さらにステム6の下端部内には下部弁体13の上筒部51が嵌合されているため、押下ヘッド5の回転に伴い、ステム6や下部弁体13も一体に回転する。
【0051】
規制筒12に対する押下ヘッド5の螺着を解除する過程において、押下ヘッド5やステム6は周方向に回転しながら規制筒12に対して上昇する。そして、押下ヘッド5の規制筒12に対する螺着が解除され、押下ヘッド5が規制筒12から離脱すると、付勢部材14の上方付勢力(弾性復元力)により、ピストン11、ステム6及び押下ヘッド5が一体的に上方に向けて押し上げられる。これにより、
図2に示すように、ステム6及び押下ヘッド5を上昇端位置P2に移動させて、押下ヘッド5を吐出操作可能な待機状態に移行させることができる。
【0052】
なお、ピストン11の上方移動に伴って、ステム6の連結段部41が規制筒12における内筒部30の下端縁に対して下方から当接する。これにより、ピストン11のそれ以上の上方移動を規制することができ、ステム6及び押下ヘッド5を予め設定された上昇端位置P2に正確に位置させることができる。
【0053】
また、上述した過程において、ピストン11がシリンダ10(直筒部21)の内周面上を上方に向けて摺動することで、収容室R内が減圧され、弁本体50に連結された弾性連結片55が弾性変形する。これにより、弁本体50が下弁座部26から離反して下連通口10aが開放される。すると、容器本体2内の内容物がチューブ体27及び下連通口10a内を通して、収容室R内に流入する。
そして、ステム6及びピストン11が上昇端位置P2まで上昇し、シリンダ10に対するピストン11の上方に向けた摺動が停止すると、弾性連結片55が復元変形する。これにより、弁本体50が下弁座部26に着座して下連通口10aが閉塞される。またこのときシール筒16が、上部弁体15に下方から液密に嵌合する。
【0054】
また、押下ヘッド5を上昇端位置P2に移行させた後、内容物を吐出する場合には、押下ヘッド5を押下して、ステム6とともに押下ヘッド5を下方移動させる。すると、ステム6の下方移動に伴って、シール筒16が上部弁体15から離脱するととともに、ピストン11が付勢部材14の付勢力に抗しながら直筒部21の内周面上を下方に向けて摺動する。これにより、収容室R内が加圧され、弁体部45が上方に移動して上弁座部46から離反するので、上連通口6aが開放される。
そのため、収容室R内の内容物が、ステム6の立ち上がり筒部43、押下ヘッド5の連通筒63及びノズル筒62の内部を順次流通し、吐出孔5aに達する。その結果、内容物を、吐出孔5aを通じて外部に吐出することができる。
【0055】
次に、押下ヘッド5の押下を解除した場合には、上述した上昇端位置P2への移行時と同様に、付勢部材14の上方付勢力(弾性復元力)によって、ピストン11、ステム6及び押下ヘッド5が上方に復元移動する。これにより、容器本体2内の内容物がシリンダ10の収容室R内に流入するとともに、次回の押下ヘッド5の押下による吐出操作に備えることができる。
【0056】
特に、本実施形態の吐出器1では、規制リブ66が弁体部45の上方移動を規制するので、弁体部45がステム6の立ち上がり筒部43を超えて、立ち上がり筒部43の内径よりも大きい内径の連通筒63内に進入することを防ぐことができる。これにより、弁体部45をステム6の立ち上がり筒部43内に留めることができるので、立ち上がり筒部43内で弁体部45を通過するように内容物を流通させることができ、吐出孔5aに向けて流れる内容物が弁体部45を通過するときの流通抵抗を高く維持することができる。
従って、弁体部45を通過して吐出孔5aに向かう内容物の流量の増大を抑えることができ、吐出孔5aを通じて外部に吐出される内容物の勢いを抑制することができる。
【0057】
また、押下ヘッド5の押し下げを行わない場合において、何らかの理由により弁体部45が上方移動して上弁座部46から離反したとしても、規制リブ66によってステム6の立ち上がり筒部43内に弁体部45を留めておくことができるので、上述したように内容物が弁体部45を通過するときの流通抵抗を高く維持できる。従って、内容物が弁体部45を通過し難くなるので、吐出孔5aからの内容物の漏出を抑制することができる。
【0058】
また、立ち上がり筒部43は、全域(全長)に亘って内径が同等とされているので、例えば立ち上がり筒部43の内周面に突リブ等を形成する場合と比べて、立ち上がり筒部43にひけが生じることを抑えることが可能となる。従って、押下ヘッド5における装着筒61と立ち上がり筒部43との間のシール性を容易且つ確実に確保することができる。
【0059】
なお、本実施形態の吐出器1では、空気孔25が環状空間70を通して外部に連通しているので、容器本体2内の圧力が上昇しようとしたときに、この圧力を、空気孔25及び環状空間70を通して容器本体2の外部に逃がすことができる。そのため、例えば未操作時(上昇端位置P2にあるとき)に容器本体2内の内容物が吐出孔5aから漏出することを抑制することができる。
【0060】
また、押下ヘッド5を押下して内容物を吐出する場合には、ピストン11の移動による環状空間70内の容積変化に伴って、環状空間70内と容器本体2内とで空気を相互に流通させることができ、スムーズな押下操作を実施できる。さらに、例えば容器本体2が高温環境下におかれた場合等であっても、容器本体2内と外部との連通を、空気孔25、環状空間70を通して良好に確保することができる。その結果、上述の作用効果を奏功させることができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
例えば、装着キャップ3、ピストン11、ステム6や下部弁体13等の構成は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。また、上述した実施形態では、ピストン11及びステム6を一体に形成したが、ピストン11及びステム6を別体としてもよい。この場合には、ピストン11をステム6に連係させ、ピストン11の上下動に伴ってステム6も可動するように構成すればよい。
シール筒16の硬度が、ステム6及び上部弁体15の各硬度よりも低くなくてもよい。
【0063】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。