(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクチュエータの動作を制御するステップは、前記アクチュエータを、該アクチュエータが周波数fにおいて複数のサイクル数の間動作してその後に休息期間が続くように周期的に動作する、パルスオペレーションモードで動作させることを含み、
前記アクチュエータの動作を制御するステップは、前記アクチュエータを、前記ノズルが第1のサイズであるときに第1のサイクル数で動作させることと、前記ノズルが第2のサイズであるときに第2のサイクル数で動作させることとを含み、前記第2のサイクル数は前記第1のサイクル数よりも高く、前記第2のサイズは前記第1のサイズよりも小さい、請求項6に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
噴霧器、又はしばしばアトマイザとも呼ばれるものは、液体から微細なスプレー又はエアロゾルを生成するデバイスである。噴霧器の特に有益な利用は、吸入によって患者に投与するための溶解又は懸濁した特定の薬剤を含む、微細なスプレーを提供することである。
【0003】
圧電メッシュベース(piezo-mesh based)の噴霧器は一般に、そのような薬剤送達装置においてエアロゾルを生成するのに使用され、これにより、例えば圧電素子は、ノズルプレート(あるいはメッシュとも呼ばれる)を振動させて、微細なエアロゾルスプレーを作りだす。一部の噴霧器において、圧電素子はノズルプレート素子に結合されるが、別の噴霧器では、ノズルプレート素子は圧電素子とは離れている(接触しない)(ときどき、圧電空洞メッシュベース(piezo-cavity-mesh based)の噴霧器とも呼ばれる)。ノズルプレート素子を、圧電素子から離すことの利点は、ある程度使用した後にノズルプレート素子を噴霧器から取り外して掃除するか、全体的に交換することができることである。
【0004】
特定の薬について、吸入するときに治療効果があるようにするために、その薬のエアロゾルの液滴サイズは狭い治療域内でなければならない。ノズルプレート内の穴(ノズル)を通じて液体を搾り出すことにより液滴の生成を行うとき、液滴のサイズは、部分的に、ノズルプレートのノズルのサイズによって決まり、理想的には、ノズルプレートの各ノズルは、要求されたサイズであるべきである。典型的に、ノズルは、+/−(プラスマイナス)0.25μmの公差で直径2.5μmを有するのが望ましい。典型的なノズルプレートには5000個程度のノズルが存在する可能性がある。
【0005】
ノズルプレートを製造する処理における制限に起因して、一貫して所望のサイズ(あるいは所要の公差内)のノズルを有し、しかもこれらのノズルが各プレートにわたって一貫したサイズを有するように、ノズルプレートを生産することは難しいことである。したがって、製造処理の生産収率は非常に低く、しばしば約10%程度である。
【0006】
さらに、ノズルサイズの小さな変化(例えばノズルサイズの+/−0.25μmという、通常許容される公差の範囲内)でさえも、噴霧器の出力量(流量)における大きな変化につながる。特定の薬についての投薬計画(dosage regime)は正確に制御される必要があるので、この流量の変化は許容できないものである。具体的には、所望の流量からちょうど25%の流量の変化に達するのは、ノズルサイズの最大許容変化が所望のサイズから+/−0.05μmのときであることがわかっている。しかしながら、この小さな公差を従来の製造処理に適用することは、生産収率をさらに低減させることとなる。ノズルプレートは、噴霧器の消耗部品である(すなわち、しばしば交換される)ので、これは大いに望ましくないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、噴霧器で使用される可能性のある、異なる
ノズルプレートにわたる
ノズルサイズの変化にかかわらず、所望の流量及び/又は液滴サイズが得られるように噴霧器を操作する、改善された方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、噴霧器の動作を制御するための制御装置が提供される。噴霧器は、噴霧する液体を格納するための貯蔵部(reservoir chamber)と、アクチュエータと、上記アクチュエータの動作の際に上記液体を噴霧するよう配置される複数のノズルを備えた噴霧要素(nebulizing element)とを備える。上記制御装置は、噴霧要素内のノズルのサイズの指示を取得し、該取得した指示に基づいてアクチュエータの動作を制御して、所望の出力量及び/又は所要サイズの液滴で、噴霧される液体を提供するように構成される。
【0010】
好ましい実施形態において、制御装置は、アクチュエータを、該アクチュエータが周波数fにおいて複数のサイクル数の間動作してその後に休息期間が続くように周期的に動作する、パルスオペレーションモードで動作させるように構成され、当該制御装置は、アクチュエータを、ノズルが第1のサイズであるときに第1のサイクル数で動作させ、ノズルが第2のサイズであるときに第2のサイクル数で動作させるように構成され、ここで第2のサイクル数は第1のサイクル数よりも高く、第2のサイズは第1のサイズよりも小さい。
【0011】
他の好ましい実施形態において、制御装置は、必要な出力量及び/又は必要な液滴のサイズで前記噴霧される液体を提供するように、噴霧器の1つ又は複数の操作パラメータを前記取得した指示に基づいて調整又は設定するように構成される。前記1つ又は複数の操作パラメータは、(i)前記アクチュエータのための制御信号のピーク電力、(ii)前記アクチュエータのための周期的な制御信号のうち、液体を噴霧するように前記アクチュエータを動作させるアクティブな部分及び/又は休息部分の長さ、(iii)前記アクチュエータのための制御信号の周波数、及び/又は(iv)前記アクチュエータと前記噴霧要素との距離、から選択される。
【0012】
好ましい実施形態において、制御装置は、前記噴霧要素に関連付けられた電子的に読取可能なタグ内に格納されたデータを読み取るためのリーダを更に備え、該データは、前記噴霧要素内の前記ノズルのサイズの前記指示を備える。
【0013】
一部の実施形態において、制御装置は、ノズルサイズのルックアップテーブル、及び前記アクチュエータのための少なくとも1つの操作パラメータの値を格納するように構成されたメモリを更に備え、当該制御装置は、前記ルックアップテーブル及び取得される指示を使用して、前記少なくとも1つの操作パラメータの前記値を決定して、前記アクチュエータを動作させて前記必要な出力量及び/又は必要な液滴サイズで前記噴霧される液体を提供するのに使用する。
【0014】
好ましくは、制御装置は、前記噴霧器における前記噴霧要素のインストール又は前記噴霧器のアクティブ化により、前記噴霧要素内の前記ノズルのサイズの前記指示を取得するように構成される。
【0015】
本発明の第2の態様によると、噴霧器において使用するための噴霧要素が提供される。当該噴霧要素は、複数のノズルを備えたプレートと、前記プレート内の前記ノズルのサイズの指示とを備える。
【0016】
好ましい実施形態において、噴霧要素は、電子的に読取可能なタグを更に備え、前記プレート内の前記ノズルのサイズの前記指示が該電子的に読取可能なタグに格納される。
【0017】
本発明の第3の態様によると、噴霧する液体を格納するための貯蔵部と、前記貯蔵部に格納された前記液体を噴霧するために、振動するよう構成されるアクチュエータと、上述の制御装置とを備える、噴霧器が提供される。
【0018】
好ましくは、噴霧器は、前記貯蔵部内に配置される上述の噴霧要素を更に備える。
【0019】
本発明の第4の態様によると、噴霧器を操作する方法が提供される。前記噴霧器は、噴霧する液体を格納するための貯蔵部と、アクチュエータと、前記アクチュエータの動作により前記液体を噴霧するように配置される複数のノズルを備える噴霧要素とを備え、当該方法は、前記噴霧要素内の前記ノズルのサイズの指示を取得するステップと、噴霧される液体を必要な出力量及び/又は必要なサイズの液滴で提供するように、前記アクチュエータの動作を前記取得した指示に基づいて制御するステップとを含む。
【0020】
好ましい実施形態において、前記アクチュエータの動作を制御するステップは、前記アクチュエータを、該アクチュエータが周波数fにおいて複数のサイクル数の間動作してその後に休息期間が続くように周期的に動作する、パルスオペレーションモードで動作させることを含み、前記アクチュエータの動作を制御するステップは、前記アクチュエータを、前記ノズルが第1のサイズであるときに第1のサイクル数で動作させることと、前記ノズルが第2のサイズであるときに第2のサイクル数で動作させることとを含み、ここで、前記第2のサイクル数は前記第1のサイクル数よりも高く、前記第2のサイズは前記第1のサイズよりも小さい。
【0021】
代替的な好ましい実施形態において、前記アクチュエータの動作を制御するステップは、前記必要な出力量及び/又は必要な液滴のサイズで前記噴霧される液体を提供するように、前記噴霧器の1つ又は複数の操作パラメータを前記取得した指示に基づいて調整又は設定することを含み、前記1つ又は複数の操作パラメータは、(i)前記アクチュエータのための制御信号のピーク電力、(ii)前記アクチュエータのための周期的な制御信号のうち、液体を噴霧するように前記アクチュエータを動作させるアクティブな部分及び/又は休息部分の長さ、(iii)前記アクチュエータのための制御信号の周波数、及び/又は(iv)前記アクチュエータと前記噴霧要素との距離、から選択される。
【0022】
好ましくは、指示を取得するステップは、前記噴霧要素に関連付けられた電子的に読取可能なタグ内に格納されたデータを読み取ることを含み、該データは、前記噴霧要素内の前記ノズルのサイズの前記指示を備える。
【0023】
一部の実施形態において、前記アクチュエータの動作を制御するステップは、前記取得した指示、ノズルサイズのルックアップテーブル、及び前記アクチュエータのための少なくとも1つの操作パラメータの値を使用して、前記少なくとも1つの操作パラメータの前記値を決定して、前記必要な出力量及び/又は必要な液滴サイズで前記噴霧される液体を提供するよう前記アクチュエータを操作するのに使用する。
【0024】
好ましくは、取得するステップは、前記噴霧器における前記噴霧要素のインストール又は前記噴霧器のアクティブ化により、前記噴霧要素内の前記ノズルのサイズの前記指示を取得することを含む。
【0025】
本発明の第5の態様によると、コンピュータプログラムコードを有するコンピュータ読取可能媒体を備えたコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラムコードは、コンピュータ又はプロセッサによって実行されると、該コンピュータ又はプロセッサに上述の方法のステップを実行させるように構成される、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0026】
本発明の例示的な実施形態を、単なる例示として添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は主に、噴霧器で使用することができるノズルプレート内のノズルのサイズの変化に関連する問題に対処するためのものとして説明されるが、本発明を、代替又は追加として、(ノズルプレート内のノズルが正しいサイズであるかどうかにかかわらず)特定のノズルプレートによって提供される出力流量及び/又は液滴サイズを調整するのに用いることができる。このことは特に、異なる薬又は治療計画が異なる流量を要する場合に有用であり、単一のノズルプレートからこれらの異なる出力流量をもたらすことができることが望ましい。同様に、噴霧器が小さな子供によって使用されている場合、噴霧器内のノズルプレートを変更する必要なく、通常よりも小さいサイズの液滴を生成することができることが望ましい。
【0029】
図1は、例示的な噴霧器2を示している。噴霧器2は、吸気口6と排気口8とを有する本体4を備え、吸気口6と排気口8は、噴霧器2のユーザが排気口8を通じて吸入するときに、空気が吸気口6と排気口8を介して噴霧器2の中を通じてユーザの身体へと吸引されるように配置されている。排気口8は典型的に、マウスピース又は顔若しくは鼻マスクの形で、あるいは別個の交換可能マウスピース又は顔若しくは鼻マスクと接続するのに適切な形で提供される。
【0030】
噴霧器2は、吸気口6と排気口8との間に、例えば薬剤又は薬などの噴霧する(すなわち、微細な霧又はスプレーに変わる)液体12を格納するための貯蔵部10を備える。噴霧器2は、ユーザが1回分の薬剤又は薬を吸い込んでユーザ自身に送るときに、噴霧された液体12の微細な液滴が、噴霧器2を通じて吸引される空気と結合するように構成される。
【0031】
アクチュエータ14は、貯蔵部10に格納された液体を撹拌又は振動させるために提供される。以下でさらに説明される本発明の諸実施形態において、アクチュエータは圧電素子の形で提供される。しかしながら、噴霧器の分野の当業者には、本発明に係る噴霧器において他の形のアクチュエータ14を用いることができることが認識されよう。圧電素子14をプラスチック又は金属のカバー層で覆って、圧電素子と液体12との直接の接触を回避することができることも認識されよう。
【0032】
液体12がアクチュエータ12によって振動されるときに液体12を噴霧するためのノズルプレート16を、貯蔵部10内に備えることもできる。ノズルプレート16は典型的に、少量の液体が通る複数の小さな穴若しくはノズルを有するメッシュ又は膜の形である。ノズルプレート16内のノズルのサイズ(直径)により、特に、噴霧器2がアクティブ化されるときに生成される液体の液滴のサイズが決まる。生成される液体の液滴のサイズを、平均質量径(MMD:mass mean diameter)に関して測定することができる。ノズルプレート16は噴霧器2から取り外し可能であるので、ノズル16を必要に応じて掃除し、あるいは完全に交換することができる。
【0033】
図示された実施形態において、アクチュエータ14はノズルプレート16から離れており、液体12を撹拌するために貯蔵部10の下に、又はその近くに配置される。しかしながら、代替的な実施形態において、アクチュエータ14は、ノズルプレート16に接触させるか又は一体にすることもでき、液体12を噴霧するためにノズルプレート16を振動させることができる。
【0034】
使用において、液体12は、貯蔵部10をノズルプレート16の高さまで満たす。貯蔵部10内の液体12は、噴霧器2が操作されると消費されることとなるので、液体12を、噴霧器2の動作を継続するのに必要な高さに保つために、さらなる液体12を貯蔵部10に追加しなければならないことが認識されよう。したがって、噴霧器2は、液体12を貯蔵部10に補給するための液体を格納する追加の貯蔵装置(
図1には図示せず)を備えるか、又はこれに結合されてもよい。追加の貯蔵装置からの液体は、重力及び/又はキャピラリ充填(capillary filling)のアクションに起因して貯蔵部10へと流れる。
【0035】
噴霧器2はさらに、該噴霧器2の動作を制御する制御装置17を備える。制御装置17は、アクチュエータ14と電子的に接続されるプロセッサ18を備える。プロセッサ18は、以下でさらに説明されるように、アクチュエータ14を動作させて液体12を噴霧させる制御信号を、アクチュエータ14に出力する。
【0036】
プロセッサ18によって噴霧器2の動作中に使用するための操作パラメータ及び/又はプログラム命令を格納することができるメモリ20も提供される。操作パラメータは、例えば、必要な処置時間及び/又は薬剤の流量など、噴霧器2によって提供される投薬計画に関するものであってよい。
【0037】
図示される実施形態において、プロセッサ18によってアクチュエータ14に対して出力される制御信号は、アクチュエータ14を「パルス」オペレーションモードで動作させる。このモードでは、制御信号は、アクチュエータ14を、ある行の特定のサイクル数の間、周波数fで作動させ、次いでアクチュエータ14を、さらなるサイクル数の間休ませる。この作動オペレーションと非作動オペレーションが、噴霧器2の動作の間、繰り返される。一実施形態において、周波数fは1MHzであるが、他の周波数を使用してもよいことが認識されよう。
【0038】
この「パルス」オペレーションの例示的な制御信号を
図2に示す。
図2では、制御信号が、周波数fにおいて4つの作動サイクルを含むアクティブ部分30(本明細書ではしばしば「パルス」とも呼ばれる)を備え、その後に、アクチュエータ14が作動していない休息期間32が続くのが分かる。本明細書において「パルス長」又は「サイクル数」(アクティブ部分30における周波数fの信号のサイクル数としても定義することができる)とも呼ばれるアクティブ部分30と非作動(休息)部分32の長さは、期間pである。
【0039】
次に
図3を参照して、本発明によって提供される解決策をより詳細に説明する。
図3は、5つのノズルプレートについて取得される出力(流)量をグラム/分(g/min)で示しており、5つのノズルプレートはそれぞれ、アクチュエータ14のオペレーションの3つの異なるパルス長において、異なる平均ノズルサイズ(2.41μm、2.63μm、2.83μm、3μm及び3.25μm)を有する。
【0040】
流量をパルス長によりグループ化することによって、所与のパルス長について、流量は一般に、ノズルサイズが増加すると線形で増加することがわかる。具体的には、矢印50で示されるように、ノズルサイズの許容可能な範囲内にあるとき、すなわち上述の2.5μm+/−0.25μmの範囲内にあるとき、出力量は、パルス長の増加にともなって、矢印52で示されるように0(ゼロ)から、約4.5g/minまで変化する。言い換えると、オンとオフのサイクルの比(すなわち、アクティブ部分30のサイクル数と休息部分32のサイクル数との比)を変化させることによって、噴霧器2の出力流量を調整することができる。
【0041】
1.5g/minの出力量が望ましいと想定する場合、55サイクルのパルス長は、平均ノズルサイズが2.5μmのときに、必要な流量を提供することとなる。しかしながら、平均ノズルサイズが2.75μmのわずかに下のとき(したがって依然としてノズルサイズの許容可能な公差内であるとき)、55サイクルのパルス長は、約2.4g/minの出力量となるが、これは高すぎる出力量である。したがって、この場合、パルス長を約27サイクルまで減少させる(すなわち、
図2に図示されるように20サイクルと55サイクルとの線の間で分ける)ことにより、1.5g/minという必要な流量を得ることができる。同様に、平均ノズルサイズが約2.34μmであるとき、55サイクルのパルス長は、約1.0g/minの出力量となり、これは低すぎる出力量である。したがって、この場合、パルス長を約90サイクルまで増加させることにより、1.5g/minという必要な流量を得ることとなる。
【0042】
図4は、流量g/minが、パルスのサイクル数によってどのように影響されるかを示す別のグラフである。この特定のメッシュは、2.36ミクロンという平均ノズルサイズを有する。この図において、流量が一般にパルスのサイクル数とともに線形で増加するのが分かる。
【0043】
したがって、本発明の1つの好ましい実施形態によると、制御装置17は、必要な出力流量を提供するために、アクチュエータ14のパルスのサイクル数(すなわちパルス長)が、噴霧器2内に存在するノズルプレート16内のノズルのサイズ又は平均サイズに基づいて変化又は設定されるよう、噴霧器2を制御するように構成される。一般に、ノズル16内のノズルのサイズをより大きくすると、アクチュエータ14のパルス内のサイクル数は少なくなり、またその逆もそうである。
【0044】
図5は、本発明のこの実施形態に従って用いることが可能な2つの例示的な制御信号を示す。上の信号は、4つのパルス長(すなわち、周波数fで4つの信号サイクル)を有する
図2に示された信号に対応し、比較的小さいノズルを有するノズルプレート16に使用される可能性がある。下の信号は、2つのパルス長(すなわち、周波数fで2つの信号サイクル)を有し、これは大きなノズルを有するノズルプレート16に使用されることとなる。
【0045】
ノズルプレート16は、噴霧器2の交換可能な要素であり、ノズルの平均サイズは異なるノズルプレート16にわたって変化することになるので、アクチュエータ14を操作するための制御信号を適切に設定することができるように、噴霧器2において現在使用しているノズルプレート16のノズルの平均サイズを決定する必要がある。
【0046】
したがって、特定のノズルプレート16の製造中または製造後に、ノズルプレート16のノズルのサイズを測定することができ、この情報を、噴霧器2による使用のために記録することができる。その後、この情報を、噴霧器2によって自動的に読み取り、又は操作前に手動で噴霧器2に入力することができ、そしてこの情報を使用して、所望の出力流量を取得するようにアクチュエータ14のパルスのサイクル数を設定することができる。この情報は、ノズルプレート16の平均ノズルサイズ、例えば測定されたノズルサイズの平均中央値若しくはモード、又はノズルプレート16のノズルのサイズ範囲を備えることができる。
【0047】
ノズルプレート16のノズルのサイズ、ノズルの平均サイズ又はノズルのサイズの変化を測定するための一技術が、本件出願人であるコーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィによる特許文献1(「Nozzle plage fabrication」という名称の欧州特許出願第11163885.4号明細書)に説明されており、この内容は参照によって本出願に組み込まれる。簡潔に説明すると、この技術は、光によってノズルを照らすことと、ノズルプレート内の複数のノズルを通じて伝送される光を検出することと、検出された光を分析して、ノズルプレートにわたるノズルのサイズの変化を決定することとを含む。
【0048】
この技術、又はノズルのサイズを測定するための(当業者に明らかであろう)任意の他の適切な技術の結果を、ノズルプレート16内に又はノズルプレート16上に、複数の異なる方法で記録することができる。
【0049】
例えば一実施形態において、ノズルプレート16のノズルの平均サイズを、ノズルプレート16に印刷することができる。ユーザがノズルプレート16を噴霧器2にインストールするとき、ユーザは、印刷された平均ノズルサイズを読み取り、これを噴霧器2にユーザインタフェース(
図1には図示せず)を介して入力することができる。あるいは、噴霧器2に、印刷された平均サイズをノズルプレート16から読み取るための何らかの手段(例えばカメラ、又は光文字認識ソフトウェアに関連する他の光センサ)を備えることができる。
【0050】
代替的な実施形態において、ノズルプレート16上にノズルの実際の平均サイズを印刷するのではなく、平均サイズを、ユーザが噴霧器2に入力するのがより容易な、又は噴霧器2が自動的に読み取るのがより容易な、簡略化された形式で提示することができる。この簡略化された形式は、平均ノズルサイズの特定の範囲を表す単一の桁又は文字を備えることが可能である(例えば数字の1が2〜2.1μmという平均ノズルサイズを表し、数字2が2.1〜2.2μ、という平均ノズルサイズを表す等が可能である)。
【0051】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、ノズルプレート16内のノズルの平均サイズに関する情報を、RFID(Radio-Frequency Identification)タグなど、ノズルプレート16の一部である電子的に読み取り可能なタグに格納する。ノズルの実際の平均サイズに関して、あるいは上述の簡略化された形式に関して、情報を格納することができる。したがって、再び
図1を参照すると、ノズルプレート16には、ノズルサイズの指示を格納するRFIDタグ22が提供されており、制御装置17は更に、プロセッサ18に接続されるRFIDタグリーダ24を備えている。
【0052】
本発明の別の実施形態において、所望の流量は、投与される特定の薬剤に応じて異なるものとしてもよい。この場合、ノズルプレート16に薬剤を供給することができ、上述のノズルプレート16のノズルの平均サイズに関する情報を、必要な流量に関する情報によって補充することができる。この情報を噴霧器2によって読み取ることも、又は噴霧器2に入力することもでき、これに応じて、この情報を使用して噴霧器2の動作を調整することができる。
【0053】
図6は、異なる流量について(ミクロンで測定される)ノズルサイズと(これもミクロンで測定される)平均質量径(MMD:mass mean diameter)との間の関係を示すグラフである。このグラフは、4つの異なるノズルプレート16について取得された液滴サイズを示す。この4つの異なるノズルプレートはそれぞれ2.41μ、2.63μ、2.83μ及び3.0μというノズルサイズを有し、0.5g/min、1.0g/min、1.5g/minの流量を取得するために3つの異なるセットのパルス長で操作される。
【0054】
2.63ミクロンの平均ノズルサイズを有するノズルプレート16を用いる、5ミクロンという例示的な対象液滴サイズ(MMD)のために、1g/minの出力流量を達成するのに必要なサイクル数(パルス長)を有する制御信号を使用する必要があることがわかる。
【0055】
液滴サイズが大きすぎる場合(例えば5.6ミクロン)、(
図6において矢印Aによって示されるように)液滴サイズを約5ミクロンまで縮小させるためにサイクル数を低減することができる。同様に、液滴サイズが小さすぎる場合(例えば4.4ミクロン)、(
図6において矢印Bによって示されるように)液滴サイズを増大させるためにサイクル数を増加させることができる。
【0056】
大きな平均ノズルサイズ(例えば2.83ミクロン)を有するノズルプレートについて、5ミクロンという対象の液滴サイズは、(
図6の矢印C及びDによって示されるように)2.63ミクロンの平均ノズルサイズを有するノズルプレートについての制御信号よりも少ないサイクル数を含むように制御信号を調整することによって取得されることが可能である。
図6から、このノズルプレートについて必要な液滴サイズにより、より低い流量となることがわかるであろう。
【0057】
一般に、生成された液滴のMMDを所望の値に設定するように制御信号を調整した結果、噴霧器2の出力量が調整されすぎることになることがあることは認識されよう。しかしながら、所望の液滴サイズを得るためにサイクル数を特定の値に設定した後、流量を調整するために、制御信号又は噴霧器2の他のパラメータをさらに調整することが可能である。
【0058】
例えばノズルプレート16が2.63ミクロンの平均ノズルサイズを有し、5ミクロンのMMDを有する液滴を生成することが望ましい場合、サイクル数は
図6に示されるように設定され、この結果は、1g/minの流量となる。流量を増加させることが望まれる場合は、その後2つのステップを行うべきである。はじめに、アクティブな期間と非アクティブの期間との間の(実質的に一定な)比を保ちつつ、制御信号の期間を減少させることができる。この結果、(時間内において液滴がより分散されるので)MMDは低減されるが、大体同じ流量となる。次いで、第2のステップでは、5ミクロンのMMDを回復するために、サイクル数を増加させ、その結果として高流量にすることができる。したがって、制御信号の期間を調整することによって、液滴のMMDをほぼ一定に保ちつつ、流量を調整することができる。
【0059】
調整可能な他のパラメー
タのうちの1つが、制御信号の電圧を含むことは認識されよう。
【0060】
この調整を、反対に実行することもできることが認識されよう。すなわち、必要な流量に達するようにサイクル数を選択し、次いで、液滴サイズを修正するために制御信号の他のパラメータを調整することも可能である。
【0061】
本発明の好適な実施形態に従って噴霧器2を操作する方法が、
図7に図示されている。第1のステップ、すなわちステップ101は、ノズルプレート16が初めに噴霧器2内にインストールされるとき、又は噴霧器2がアクティブ化されるときに起こり、プロセッサ18が、ノズルプレート16のRFIDタグ22に格納された平均ノズルサイズに関する情報又は指示を読み取るために、RFIDタグリーダ24をアクティブ化する。
【0062】
平均ノズルサイズの情報又は指示をノズルプレート16から読み取ると、プロセッサ18はその情報を処理し、必要な流量及び/又は液滴サイズを得るために、必要なアクチュエータ(圧電素子)14を動作させるパルスのサイクル数を決定することができる。具体的には、異なるノズルサイズについてサイクル数をリストするルックアップテーブルを、メモリ20内に格納することができ、プロセッサ18は、単に適切なノズルサイズをルックアップして、テーブル内の流量及び/又は液滴サイズを出力し、必要なサイクル数を抽出することができる。あるいは、必要なサイクル数及び他の操作パラメータをRFIDタグに格納することもできる。
【0063】
必要なパルス長を決定すると、プロセッサ18は適切な制御信号をアクチュエータ14に出力し、この制御信号は、アクチュエータ14に液体12を撹拌させ、必要な出力流量及び/又は液滴サイズの液滴を提供させる(ステップ103)。
【0064】
ノズルプレート16が噴霧器2から取り外されて掃除若しくは交換されるか、又は別のノズルプレート16によって交換される場合、プロセッサ18は、アクチュエータ14を必要なパルス長で動作させるために
図4に示されるステップを繰り返すことができる。
【0065】
上述の本発明の好適な実施形態では、制御装置17は、アクチュエータ14のパルスのサイクル数(すなわち、パルス長)がノズルプレート16のノズルのサイズ又は平均サイズに基づいて変更又は設定されるよう噴霧器2を制御するように構成されるが、必要な出力量及び/又は液滴サイズを得るために変更又は設定される、アクチュエータ14の動作を定義する他のパラメータも可能であることが認識されよう。
【0066】
具体的には、制御信号におけるパルス長(パルスのサイクル数)を変化させる代わりに(又はそれに加えて)、(i)制御信号の振幅(ピーク電圧)(この場合、制御信号の振幅/電圧により、アクチュエータ14の作動の程度が定まり、より高い電圧は一般に、所与のノズルプレート16に対してより高い出力量を生み出す)、(ii)制御信号の期間(アクティブな期間に対して休息期間の長さを減少又は増加させる効果を有する可能性がある)、(iii)アクティブな部分30におけるサイクルの周波数f、及び/又は(iv)ノズルプレート16とアクチュエータ14との間の距離、を調整することによって、必要な出力量及び/又は液滴サイズを得ることが可能である。
【0067】
図示される実施形態において、プロセッサ18によってアクチュエータ14に出力される制御信号は、アクチュエータ14を、「パルス」オペレーションモードで動作させるが、アクチュエータ14を、連続オペレーションモード(すなわち、休息部分32が存在しない)を含め、代替的なオペレーションモードで動作させることも可能であることが認識されよう。
【0068】
したがって、噴霧器2において使用される可能性のある異なるノズルプレート16にわたるノズルサイズの変化に関わらず、所望の流量及び/又は液滴サイズを得るように噴霧器2を動作させる、改善された方法が提供される。
【0069】
認識されるように、上述の制御装置17及びプロセッサ18に加えて、本発明を、コンピュータ読取可能媒体に担持されるコンピュータプログラムの形で提供することも可能であり、そのようなコンピュータプログラムは、制御装置17内のプロセッサ18に
図6に示されるステップを実行させるように構成される。このプログラムをメモリ20内に格納することも可能である。
【0070】
当業者は、「噴霧器」という用語を、薬剤送達装置又はアトマイザという用語に置き換えて使用することが可能であり、「噴霧器」という用語の使用は、上述及び図面に図示された特定のタイプの噴霧器以外の形式及び設計の噴霧器も包含するように意図されていることが認識されよう。
【0071】
さらに、本発明を、薬剤を投与する際に主に使用される噴霧器に関して説明してきたが、本発明を、例えば空気加湿器、電気シェーバー、スチームアイロン又は香水ディスペンサなど、液体を噴霧するためにノズルプレートがアクティブ化される、任意の他のタイプの噴霧器又はデバイスに適用することもできることが認識されよう。
【0072】
本発明を、図面及び上記説明において図示して詳細に説明してきたが、そのような図及び記載は、制限的なものではなく、具体例又は実施例と考えられるべきであり、本発明は開示される実施形態に限定されない。
【0073】
当業者が特許請求に係る発明を実施する際に、図面、本開示及び特許請求の範囲の検討から、開示された実施形態に対する変更が理解され、有効である可能がある。特許請求の範囲の記載において、「備える」という用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「ある、1つの(a、an)」は複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他の装置が、請求項に記載されるいくつかのアイテムの機能を満たす可能性がある。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという事実は単に、有利性のためにこれらの手段の組み合わせが使用されるのではないことを示さない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアの一部とともに、又はその一部として供給される光記憶媒体又は半導体媒体などの適切な媒体に格納/分散されてよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線の電話システムを介するなど他の形式で分散されてもよい。請求項におけるいずれの参照符号もその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。