【実施例】
【0019】
実施例に係る自動製氷機は、
図1に示すように、製氷部としての製氷室12を有する製氷機構10と、製氷室12を冷却および加熱する蒸発器EPを有する冷凍機構30とを備えている。自動製氷機は、後述する運転切替手段40、計時手段42および切替スイッチ44等に基づいて、制御手段46により製氷機構10および冷凍機構30を構成する各機器が制御され、製氷運転と除氷運転とを交互に繰り返す運転サイクルを行うよう構成されている。
【0020】
前記製氷機構10は、
図1に示すように、下向きに開口する多数の製氷小室12Aが設けられ、本体内に水平に配設された製氷室12と、この製氷室12の下方に支軸16を介して傾動可能に枢支された水皿14と、水皿14の下部に一体的に設けられ、内部に所定量の製氷水を貯留する製氷水タンク18と、製氷水タンク18の下部に設けられ、製氷水を循環供給するポンプモータ20と、水皿14および製氷水タンク18を一体的に傾動させる開閉機構22等とから構成される。製氷室12の上面には、冷凍機構30の一部をなす蒸発器EPが蛇行状に密着して配設されている。製氷室12は、この蒸発器EPにより、製氷運転時に冷却されると共に除氷運転時に加熱されるようになっている。
【0021】
前記水皿14および該水皿14に固定された製氷水タンク18は、開閉機構22の開閉モータ24の駆動により、支軸16を中心として製氷室12に対して近接および離間するよう傾動される。水皿14は、製氷運転において、製氷小室12Aの開口を閉成する閉成位置となるよう保持され、除氷運転が開始されると開閉モータ24の駆動により、製氷小室12Aの開口を開放する開放位置となるよう支軸16を中心として下方に傾動するよう構成される。また、水皿14は、除氷が完了すると開閉モータ24の駆動により、支軸16を中心として上方に傾動して閉成位置となるよう構成される。開閉モータ24は、制御手段46により駆動され、水皿14の開放位置および閉成位置への到来を切替スイッチ44が検知すると停止するよう制御される。製氷水タンク18は、上方に開口し、外部水源に接続する給水機構26から水(製氷水および融氷水)が供給される。そして、製氷運転において、ポンプモータ20を駆動することで、各製氷小室12Aに対応するように設けられた水皿14の噴水孔(図示せず)から製氷小室12Aに製氷水が噴射供給される。また、製氷小室12Aで氷結しなかった製氷水は、水皿14に設けた戻り孔(図示せず)を介して製氷水タンク18に回収されて、製氷水として再び用いられる。製氷室12には、該製氷室12の温度を検知する運転切替手段40が配設され、この運転切替手段40の温度検知結果に基づいて自動製氷機における製氷運転および除氷運転が切替えられる。自動製氷機では、運転切替手段40が、製氷運転において製氷完了温度を検知すると除氷運転に切替えられ、除氷運転において除氷完了温度を検知すると製氷運転に切替えられるよう制御手段46で制御される。なお、前記給水機構26は、外部水源に接続して出口を前記水皿14の表面(上面)側に開口する給水管28と、該給水管28に設けられた給水弁WVとを備え、該給水弁WVが制御手段46で開閉制御されることで、水(製氷水や融氷水)が水皿表面に供給されるようになっている。水皿表面に供給された水は、前記噴射孔や戻り孔を介して製氷水タンク18に回収される。実施例では、運転切替手段40が、製氷室12の温度を測定する温度測定手段としての機能を有している。
【0022】
前記冷凍機構30は、圧縮機CM、凝縮器CD、この凝縮器CDを冷却する冷却ファンFM、膨張弁EV、および製氷室12の上面に設けられた蒸発器EPが配管で連結されて冷凍回路32が構成されている。冷凍回路32では、製氷運転時に、圧縮機CMで圧縮された冷媒が、凝縮器CDで凝縮液化し、膨張弁EVで減圧され、蒸発器EPに供給され、圧縮機CMに帰還する。この冷媒は、蒸発器EPで製氷室12との間で熱交換することで該製氷室12を冷却する。また、冷凍機構30は、除氷運転時に圧縮機CMからのホットガスを蒸発器EPに供給するバイパス回路34を備えている。バイパス回路34は、圧縮機CMの出口側と蒸発器EPの入口側とを連結するバイパス管36を有している。バイパス管36の途中には、該バイパス管36の管路を開閉するホットガス弁HVが設けられている。除氷運転では、ホットガス弁HVを開放(ON)することで、バイパス回路34に冷媒が循環され、圧縮機CMからのホットガスが、凝縮器CDおよび膨張弁EVを経ることなく、バイパス管36を介して蒸発器EPに直接供給される。このホットガスは、蒸発器EPで製氷室12との間で熱交換して該製氷室12を加熱する。ホットガス弁HVは、除氷運転時には開放状態を維持するよう設定され、製氷運転では該ホットガス弁HVを閉成(OFF)することで、冷凍回路32に冷媒が循環される。また、前記冷却ファンFMは、製氷運転の開始と同時に駆動し、除氷運転の開始と同時に停止する。
【0023】
ここで、実施例の除氷完了温度は、除氷運転によって加熱された製氷室12から全ての氷塊Iが離脱した際の製氷室12の温度に対し、補正値αを足した温度に設定されている。言い替えると、製氷室12が除氷完了温度から補正値αを引いた温度となったときには、該製氷室12から全ての氷塊Iが離脱している。実施例では、〔除氷完了温度−補正値α〕の温度を、後述する融氷水の供給再開温度と指称する(
図5参照)。なお、補正値αについては、後述する低温モードで融氷水が供給される第2低温時供給時間の間の除氷運転において製氷室12が温度上昇すると予測される値に設定される。
【0024】
(融氷水の供給制御について)
実施例の自動製氷機では、前記除氷運転において、給水機構26から水皿14の表面に常温の水(以後、融氷水と指称する場合もある)を供給することで、水皿14の表面に付着した氷片(氷)を融解して除去するよう構成されている。また、実施例の自動製氷機では、融氷水の温度を直接または間接的に検知(取得)し、前記制御手段46は、融氷水の温度と予め設定された判定基準温度とを比較して、除氷運転における冷凍機構30,開閉機構22,給水機構26等の各機構の動作条件を決定する制御モードを設定するようになっている。具体的には、融氷水温度が判定基準温度より高い場合(実施例では判定基準温度以上の場合)であれば、制御手段46は、融氷水が高温であると判定して高温モードで冷凍機構30,開閉機構22,給水機構26等の各機構を制御(
図4参照)し、融氷水温度が判定基準温度より低い場合(実施例では判定基準温度未満の場合)であれば、制御手段46が、融氷水が低温であると判定して低温モードで冷凍機構30,開閉機構22,給水機構26等の各機構を制御(
図5参照)するよう構成される。なお、実施例では、融氷水の温度を間接的に検知(測定)するよう構成されているが、該温度の測定方法については後述する。
【0025】
自動製氷機は、前記運転切替手段40が製氷完了温度を検知して除氷運転が開始されてから、予め設定された待機時間(例えば20秒)の経過後に、前記給水機構26からの融氷水の供給を開始(給水弁WVの開放)するよう設定されている(
図4,
図5参照)。すなわち、水皿表面の氷片を融解する融氷水は、運転切替手段40による製氷運転完了の検知によって供給が開始されるよう構成される。また、除氷運転の開始初期は、前記水皿14が閉成位置または製氷室12から下方へ僅かに離間した状態であるので、運転切替手段40による製氷運転完了の検知と同時に水皿表面への融氷水の供給を開始すると、水皿14の表面に供給された融氷水が製氷室12に生成されている氷塊I(製氷室12から離脱する前の氷塊)の下面に付着してしまうおそれがある。そこで、前記待機時間を設けることで、製氷室12に生成されている氷塊Iに融氷水が付着するのを防いで、ストッカ38内で氷塊Iが再氷結するのを防止するようにしている。すなわち、前記待機時間は、閉成位置から傾動を開始した水皿14の傾斜角度が、水皿表面に供給された融氷水が製氷室12に生成されている氷塊Iに付着することのない角度となるまでに要する時間以上に設定される。なお、切替スイッチ44が水皿14の開放位置を検知することを条件として、融氷水の供給を開始するようにしてもよい。
【0026】
(高温モードでの制御について)
前記融氷水の温度が、前記判定基準温度以上の場合に行われる高温モードの制御では、
図4に示す如く、除氷運転が開始されてから前記待機時間が経過すると、制御手段46は、前記給水機構26の給水弁WVを開放制御(ON)して融氷水の供給を開始させる。そして、予め設定された高温時供給時間(例えば、30秒)が経過すると、制御手段46は、給水弁WVを閉成制御(OFF)して融氷水の供給を停止させる。すなわち、融氷水の温度が判定基準温度以上の高温の場合には、高温時供給時間の間は連続して融氷水が水皿表面に供給される。この高温時供給時間は、判定基準温度以上の高温の融氷水を水皿表面に供給した場合に、前記製氷室12から氷塊Iが離脱(最初の氷塊Iが離脱)する前に水皿表面の氷片を除去し得る時間(除氷運転の開始から氷塊Iが離脱し始めるまでの時間より短い時間)であって、該高温時供給時間は実験により求められる。すなわち、実験により求めた時間が、制御手段46に高温時供給時間として設定記憶される。また、高温モードでは、高温時供給時間の経過後に、製氷室12から全ての氷塊Iが離脱して前記運転切替手段40が除氷完了温度を検知することで、制御手段46は、除氷運転を終了して製氷運転を開始するように各機構を制御するよう設定されている。
【0027】
(低温モードでの制御について)
前記融氷水の温度が、前記判定基準温度未満の場合に行われる低温モードの制御では、
図5に示す如く、除氷運転が開始されてから前記待機時間が経過すると、制御手段46は、前記給水機構26の給水弁WVを開放制御(ON)して融氷水の供給を開始させる。そして、予め設定された第1低温時供給時間(第1供給時間であって、例えば、40秒)が経過すると、制御手段46は、給水弁WVを閉成制御(OFF)して融氷水の供給を一時的に停止させる。その後、除氷運転が進行して前記運転切替手段40が、前記供給再開温度を検知すると、制御手段46は、給水弁WVを開放制御(ON)して融氷水の供給を再開し、予め設定された第2低温時供給時間(第2供給時間であって、例えば、55秒)が経過すると、制御手段46は、給水弁WVを閉成制御(OFF)して融氷水の供給を停止させる。そして、低温モードでは、第2低温時供給時間の経過後に運転切替手段40が除氷完了温度(除氷完了温度以上の温度)を検知していれば、制御手段46は、除氷運転を終了して製氷運転を開始するように各機構を制御するよう設定されている。
【0028】
ここで、前記第1低温時供給時間は、判定基準温度未満の低温の融氷水を水皿表面に供給した場合に、前記製氷室12から氷塊Iが離脱(最初の氷塊Iが離脱)するまでの時間より短い時間であり、該時間は実験により求められる。すなわち、実験により求めた時間を、制御手段46に第1低温時供給時間として設定記憶させている。そして、判定基準温度未満の低温の融氷水を水皿表面に連続して供給した場合に、水皿表面の氷片を除去し得る時間を低温時総合供給時間として実験により求め、この低温時総合供給時間から実験により求めた前記第1低温時供給時間を差し引いた残りの時間を第2低温時供給時間として、制御手段46に設定記憶させている。なお、第1低温時供給時間は、具体的には低温の融氷水が水皿表面に供給開始されてから氷塊I(最初の氷塊I)が製氷室12から離脱するまでの時間より短かい時間(数秒短かい時間)に設定される。また、除氷運転の進行によって製氷室12から全ての氷塊Iが落下した際の前記供給再開温度についても、実験によって求められる。すなわち、低温モードでは、除氷運転が開始されてから氷塊Iが製氷室12から離脱する前と、全ての氷塊Iが製氷室12から離脱した後とに分けて融氷水を水皿表面に供給するようになっている。
【0029】
(融氷水の温度測定について)
実施例の自動製氷機では、融氷水の温度を間接的に検知(測定)するよう構成されており、該温度の測定方法について説明する。自動製氷機では、除氷運転に際して前記給水機構26から供給されて製氷水タンク18に貯留された常温の水を、次回の製氷運転の製氷水として用いるよう構成されており、製氷運転の開始時(初期段階)に製氷室12に供給される常温の製氷水と熱交換する該製氷室12の温度を測定することで、融氷水(常温の水)の温度を間接的に知り得ることができる。そこで、製氷運転において前記ポンプモータ20の運転開始から所定の水温測定時間(例えば、30秒)が経過した後の、前記運転切替手段40による検知温度(測定温度)を融氷水の温度として制御手段46が記憶し、該制御手段46は、記憶した融氷水温度(測定温度)と判定基準温度とを比較して水温の高低を判定し、該判定結果に基づいて次回の除氷運転での制御モードを設定するようになっている。具体的に、融氷水の測定温度は、ポンプモータ20の運転開始から水温測定時間の経過後の運転切替手段40の検知温度と、融氷水の実際の温度との関係を予め実験により取得して、該関係をテーブル化したデータを予め制御手段46に記憶させる。そして、自動製氷機の実際の運転時においては、制御手段46に予め記憶されているデータに基づいて、制御手段46が運転切替手段40の検知温度から融氷水の測定温度を取得するようにしている。融氷水の温度は、製氷運転毎に測定しており、実施例では除氷運転毎に制御モードを高温モードにするか低温モードにするかを判定(以後、モード判定と指称する場合もある)している。なお、融氷水の温度やモード判定は、各運転サイクル毎に行うことなく、運転サイクルをカウントするカウンタを設け、該カウンタが設定された設定数(例えば、数100)をカウントしたときの運転サイクルにおいて行って、測定温度や設定した制御モードを更新するようにしてもよい。また、デイリータイマを用いて、測定温度や設定した制御モードの更新を1ケ月に1回とすることもできる。
【0030】
ここで、実施例の自動製氷機では、製氷運転の初期段階において融氷水の温度を測定し、該測定温度に基づいて融氷水の高低を判定することで制御モードを決定するため、制御手段46は、製氷運転および除氷運転を経ていない最初の運転サイクル(電源ONにより開始される除氷運転)では融氷水の高低を判定できず、制御モードを設定できない。そこで、実施例の自動製氷機では、最初の除氷運転時には低温モードを設定するようになっている。但し、融氷水の温度が判定基準温度より高いことが予測される夏場には高温モードが設定されるようにしてもよい。
【0031】
図2に示す如く、自動製氷機は、前記給水機構26からの融氷水の供給時間を計時する計時手段42を備えている。計時手段42は、前記給水機構26の給水弁WVが開放制御されると計時を開始する。そして、制御手段46は、計時手段42が、前記高温時供給時間、第1低温時供給時間、第2低温時供給時間を計時すると、給水弁WVを閉成制御するようになっている。なお、計時手段42は、給水弁WVが閉成制御されるとリセットされる。また、計時手段42は、自動製氷機で用いられる前記待機時間や水温測定時間等の各種の時間を計時し、該計時手段42での計時時間に基づいて制御手段46が対応する各機構を制御するよう構成されている。なお、待機時間や水温測定時間等は、別の計時手段によって計時するようにしてもよい。
【0032】
次に、実施例に係る自動製氷機の運転方法について、
図3のフローチャートを参照して説明する。実施例の自動製氷機は、電源を投入すると、先ず除氷運転が開始されるようになっているが、以下の説明では製氷運転が行われた後に、除氷運転が開始された時点からの流れを説明する。
【0033】
自動製氷機は、除氷運転を開始(ステップS10)すると、圧縮機CMが駆動されると共に、ホットガス弁HVが開放されることで製氷室12が加温され、開閉モータ24が駆動して開閉機構22により水皿14が下降される。制御手段46は、除氷運転の開始から待機時間が経過すると(ステップS11)、製氷運転の初期に測定した融氷水の温度(測定温度)が判定基準温度未満であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0034】
(高温モードでの制御)
前記ステップS12が否定の場合、制御手段46は、除氷運転を
図4に示す高温モードで制御する。すなわち、ステップS13で給水弁WVを開放制御することで、前記水皿14の表面への融氷水の供給が開始される。高温モードでは、給水弁WVの開放制御によって計時を開始した計時手段42が高温時供給時間を計時(ステップS14)すると、制御手段46は給水弁WVを閉成制御し(ステップS15)、水皿表面への融氷水の供給は停止する。
【0035】
融氷水が高温の場合(判定基準温度以上の場合)は、高温時供給時間の間、水皿表面に融氷水を連続して供給することで、前記製氷室12から氷塊Iが離脱(最初の氷塊Iが離脱)する前に水皿表面に付着している氷片を除去することができる。すなわち、高温モードでの融氷水の供給が停止した後に、ホットガス弁HVにより加温されている製氷室12から氷塊Iが離脱し始め、該製氷室12から全ての氷塊Iが離脱し、前記運転切替手段40が除氷完了温度を検知(ステップS16で肯定)すると、制御手段46は、除氷運転を終了し、ステップS17に移行して製氷運転を開始する。
【0036】
製氷運転では、制御手段46は、前記開閉モータ24を駆動して水皿14を上昇し、同時にホットガス弁HVを閉成すると共に、冷却ファンFMを駆動することで、製氷室12の冷却が開始される。また、水皿14の上昇中に前記給水弁WVが開放制御(ステップS18)されて給水機構26から水皿表面に常温の水が供給され、該水が前記噴水孔や戻り孔を介して製氷水タンクに貯留され、該水が次回の製氷水として用いられる。
【0037】
前記切替スイッチ44が水皿14の閉成位置を検知すると、ポンプモータ20が駆動(ステップS19)し、水皿14から製氷小室12Aに製氷水が噴射供給され、製氷小室12Aに氷塊Iが生成される。また、ポンプモータ20の運転開始(製氷室12への製氷水の供給開始)と同時に前記計時手段42が計時を開始する。そして、制御手段46は、計時手段42が水温測定時間を計時(ステップS20)すると、前記運転切替手段40の検知温度(測定温度)を取得し(ステップS21)、該検知温度を次回の除氷運転に際してモード判定に用いる融氷水温度として記憶する。なお、製氷水を製氷水タンク18に貯留するために開放制御された前記給水弁WVは、予め設定された製氷水給水時間の経過(ステップS22)により制御手段46により閉成制御される(ステップS23)。そして、製氷運転が進行して、前記運転切替手段40が製氷完了温度を検知すると(ステップS24で肯定)、前記制御手段46は製氷運転を終了して除氷運転に移行するべく各機構を制御する。
【0038】
(低温モードでの制御)
前記ステップS12が肯定の場合、制御手段46は、除氷運転を
図5に示す低温モードで制御する。すなわち、ステップS25で給水弁WVを開放制御することで、前記水皿14の表面への融氷水の供給が開始される。低温モードでは、給水弁WVの開放制御によって計時を開始した計時手段42が第1低温時供給時間を計時(ステップS26)すると、制御手段46は給水弁WVを閉成制御し(ステップS27)、水皿表面への融氷水の供給を一旦停止(中断)する。除氷運転が進行して、前記運転切替手段40が供給再開温度を検知すると(ステップS28で肯定)、制御手段46は、再び給水弁WVを開放制御(ステップS29)して水皿表面への融氷水の供給を再開する。
【0039】
ステップS29での給水弁WVの開放制御によって計時を開始した計時手段42が第2低温時供給時間を計時(ステップS30)すると、制御手段46は給水弁WVを閉成制御し(ステップS31)、水皿表面への融氷水の供給を停止する。また、制御手段46は、ステップS17に移行して製氷運転を開始する。ステップS18からステップS24までの流れは、前述した通りである。なお、低温モードでは、製氷室12の温度が、該製氷室12から全ての氷塊Iが離脱したときの温度である供給再開温度となった後も除氷運転(ホットガス)によって製氷室12は加温されるが、前述したように除氷完了温度は、低温モードにおいて第2低温時供給時間の間に温度上昇する製氷室12の上昇分に対応する補正値αだけ供給再開温度より高い値に設定されているので、高温モードおよび低温モードにおいて製氷運転に切替わる際の製氷室12の温度は略同じとなる。
【0040】
実施例の自動製氷機の運転方法によれば、融氷水の温度に応じて融氷水の制御モードを切替えているので、融氷水が何れの条件であっても、製氷室12から氷塊Iが水皿表面に落下するときに水皿表面に融氷水が供給されることはなく、氷塊Iに融氷水が付着してストッカ38で再氷結してブロッキングやアーチング等の弊害が発生するのを防ぐことができる。また、実施例の自動製氷機の運転方法によれば、製氷運転の初期段階において、常温の製氷水が供給されている製氷室12の温度を検知する運転切替手段40での検知温度から融氷水の温度を取得し、取得した融氷水の温度(測定温度)と判定基準温度とを比較して融氷水の高低を判定するので、融氷水の温度を検知するための専用の温度検知手段を設ける必要がなく、製造コストを抑えることができる。また、自動製氷機が実際に運転中に測定した融氷水の温度に基づいて融氷水温度の高低を判定するため、自動製氷機の運転を自動製氷機の実状に応じて制御できる。
【0041】
ここで、実施例では、除氷運転から製氷運転への切替えの契機となる除氷完了温度を、製氷室12から全ての氷塊Iが離脱したときの温度に補正値αを足した温度として設定すると共に、低温モードにおいて融氷水の供給を再開する契機となる供給再開温度を、除氷完了温度から補正値αを引いた温度として設定している。これにより、高温モードおよび低温モードにおいて、製氷運転が開始されるときの製氷室12の温度が略同じとなるようにしている。従って、製氷運転の初期段階において製氷室12の温度から得られる融氷水の温度を、何れの制御モードで制御された除氷運転から製氷運転に切替わる場合であっても、実際の融氷水の温度に対応した温度とすることができ、次回の除氷運転における制御モードを適切に設定し得る。
【0042】
〔別実施例〕
次に、別実施例に係る自動製氷機の運転方法について説明する。別実施例では、前記製氷室12から氷塊Iが離脱し始めるタイミング(時間)を取得する離氷判定処理を自動製氷機の運転中に行い、該取得したタイミング(時間)に基づいて次回の低温モードでの第1低温時供給時間を設定するよう構成されている。なお、別実施例の運転方法については、実施例と異なる部分について主に説明するものとする。
【0043】
(離氷判定処理について)
別実施例の離氷判定処理では、低温モードにおいて、除氷運転の開始から前記待機時間が経過すると同時(給水機構26からの融氷水の供給開始と同時)に前記計時手段42での計時を開始する。また、前記運転切替手段40による製氷室12の単位時間当りの温度変化量を監視し、該温度変化量が判定変化量以上となった場合に、製氷室12から氷塊Iが離脱し始めたと見做し、製氷室12の温度変化量が判定変化量以上となるまでの前記計時手段42の計時時間を、制御手段46が第1低温時供給時間として記憶する。具体的には、水皿表面への融氷水の供給が開始されると、制御手段46は、運転切替手段40の検知温度T1を取得すると共に、単位時間後(例えば、2秒後)に運転切替手段40の検知温度T2を再び取得する。そして、制御手段46は、T2−T1の温度変化量(温度勾配)が判定変化量t以上であるか否かを判定し、製氷室12の温度変化量が判定変化量t以上となるまで単位時間当りの温度変化量と判定変化量tとを比較する処理を繰り返し、製氷室12の温度変化量が判定変化量t以上となったときの前記計時手段42の計時時間を、離氷時間βとして記憶する。なお、計測された離氷時間βは、後述するように次回の除氷運転におけるモード判定において第1低温時供給時間として用いられるものであって、該離氷時間βは、融氷水の供給開始から氷塊Iが離脱するまでの時間よりも短くなるように、計測された離氷時間βから所定の補正値(例えば、2秒)を引いた値として記憶するようにしてもよい。なお、該補正値は、実験等によって適切な値を求めるようにすればよい。
【0044】
ここで、別実施例の低温モードでは、水温が判定基準温度未満の融氷水を供給することで水皿14の表面に付着している氷片を完全に除去し得る前記低温時総合供給時間(例えば、90秒)Rを制御手段46に記憶させ、該低温時総合供給時間Rから前記離氷判定処理において計測された離氷時間β(第1低温時供給時間)を差し引した時間を第2低温時供給時間として用いるようになっている。
【0045】
また、別実施例では、自動製氷機の運転を開始する際には、低温モードで用いる第1低温時供給時間の適切な値が分かっていないことから、第1低温時供給時間γの初期の値として、γ=0が設定される。そして、除氷運転に際しては、第1低温時供給時間γの値がγ=0の場合と、γ≠0の場合とで異なる低温モードでの制御を行うようになっている。具体的には、γ=0の場合は、前回の除氷運転に際して製氷室12から氷塊Iが離脱するタイミングで融氷水が水皿表面に供給されていたものとして、適切な第1低温時供給時間を得るために各機構を制御する処理が行われ、γ≠0の場合は、前回の除氷運転に際して製氷室12から氷塊Iが離脱するタイミングで融氷水が水皿表面に供給されていないものとして、実状に応じた第1低温時供給時間を得るために各機構を制御する処理が行われる。なお、以後の説明において、γ=0の場合の低温モードについて第1の低温モードと指称し、γ≠0の場合の低温モードについて第2の低温モードと指称して区別する場合もある。また、第1の低温モードでは、前回の除氷運転に際して離氷判定処理が行われておらず、適切な第1低温時供給時間が分からないことから、該第1の低温モードでは、融氷水の供給を分けることなく低温時総合供給時間Rに亘って融氷水を供給する制御が行われるようになっている。
【0046】
次に、別実施例に係る自動製氷機の運転方法について、
図6,
図7のフローチャートを参照して説明する。なお、前回の運転サイクルにおいて、第1低温時供給時間γが、γ=0であった場合で説明する(ステップC10)。
【0047】
自動製氷機は、除氷運転を開始(ステップC11)すると、圧縮機CMが駆動されると共に、ホットガス弁HVが開放されることで製氷室12が加温され、開閉モータ24が駆動して開閉機構22により水皿14が下降される。制御手段46は、除氷運転の開始から待機時間が経過すると(ステップC12)、製氷運転の初期段階において測定した融氷水の温度が判定基準温度未満であるか否かを判定する(ステップC13)。
【0048】
(高温モードでの制御)
前記ステップC13が否定の場合、制御手段46は除氷運転を高温モードで制御する。すなわち、ステップC14で給水弁WVを開放制御することで、前記水皿14の表面への融氷水の供給が開始される。高温モードでは、給水弁WVの開放制御によって計時を開始した計時手段42が高温時供給時間を計時(ステップC15)すると、制御手段46は給水弁WVを閉成制御し(ステップC16)、水皿表面への融氷水の供給は停止する。また、制御手段46は、第1低温時供給時間γの値を、γ=0として記憶する(ステップC17)。すなわち、高温モードでは、第1低温時供給時間γは更新されない。なお、高温モードで制御される前に低温モードでの制御が行われ、第1低温時供給時間γの値がγ≠0となっている場合は、γ=0と書き換えられる。そして、前記運転切替手段40が除氷完了温度を検知(ステップC18で肯定)すると、制御手段46は、ステップC19に移行して製氷運転を開始する。なお、製氷運転での各機構の制御は前述した実施例と同じである。
【0049】
(低温モードでの制御)
前記ステップC13が肯定の場合、制御手段46は除氷運転を低温モードで制御する。低温モードでは、ステップC20において、第1低温時供給時間γの値が、γ=0であるか否かを判定し、該ステップC20が肯定である場合は、ステップC21に移行して第1の低温モードで除氷運転が制御される。これに対し、前記ステップC20が否定の場合は、ステップC26に移行して第2の低温モードで除氷運転が制御される。
【0050】
(離氷判定処理)
ここで、第1の低温モードおよび第2の低温モードで制御される除氷運転において並行して実行される離氷判定処理について、
図7を参照して説明する。該離氷判定処理では、各低温モードにおいて、後述する水皿表面への融氷水の供給が開始されると、制御手段46は、運転切替手段40の検知温度T1を取得すると共に、単位時間が経過すると再び運転切替手段40の検知温度T2を取得する(ステップD10〜D12)。そして、制御手段46は、ステップD13において、T2−T1の温度変化量が判定変化量t以上であるか否かを判定する。ステップD13が否定の場合は、ステップD10〜ステップD13を繰り返す。そして、ステップD13が肯定されると、制御手段46は、融氷水の供給開始(給水弁WVの開放)により計時を開始した前記計時手段42の、温度変化量が判定変化量t以上であると判定した時点での計時時間を、離氷時間βとして記憶する(ステップD14)。
【0051】
(第1の低温モードでの制御)
第1の低温モードでは、制御手段46は、ステップC21で給水弁WVを開放制御して前記水皿14の表面への融氷水の供給を開始させる。そして、制御手段46は、給水弁WVの開放制御によって計時を開始した計時手段42が低温時総合供給時間Rを計時(ステップC22)すると給水弁WVを閉成制御し(ステップC23)、水皿表面への融氷水の供給を停止する。また、制御手段46は、前記離氷判定処理において記憶した離氷時間βを、第1低温時供給時間γの値(γ=β)として記憶する(書き換える)(ステップC24)。そして、除氷運転が進行して、前記運転切替手段40が除氷完了温度を検知すると(ステップC25で肯定)、制御手段46は、ステップC19に移行して製氷運転を開始する。
【0052】
(第2の低温モードでの制御)
次に、前記ステップC20が否定の場合、すなわち前回の除氷運転に際して離氷判定処理によって計測された離氷時間βに第1低温時供給時間γの値が書き換えられている場合(γ=βの場合)、制御手段46は、ステップC26に移行して第2の低温モードで除氷運転を制御する。制御手段46は、ステップC26で給水弁WVを開放制御して、前記水皿14の表面への融氷水の供給を開始させる。そして、ステップC26での給水弁WVの開放制御によって計時を開始した計時手段42が、制御手段46に記憶されている前回の離氷判定処理により計測された離氷時間である第1低温時供給時間γ(=β)を計時(ステップC27)すると、制御手段46は給水弁WVを閉成制御し(ステップC28)、水皿表面への融氷水の供給を一旦停止(中断)する。除氷運転が進行して、前記運転切替手段40が除氷完了温度を検知すると(ステップC29で肯定)、制御手段46は、再び給水弁WVを開放制御(ステップC32)して水皿表面への融氷水の供給を再開する。また、第2の低温モードにおいても、除氷運転と並行して実行される前記離氷判定処理において、ステップC26での融氷水の供給開始(給水弁WVの開放)により計時を開始した前記計時手段42の、製氷室12の単位時間当りの温度変化量が判定変化量t以上であると判定された時点での計時時間を、新たな離氷時間βとして制御手段46が記憶する(ステップD14)。
【0053】
ステップC30での給水弁WVの開放制御によって計時を開始した計時手段42が、前記低温時総合供給時間R−第1低温時供給時間γ(=β)で得られる第2低温時供給時間(R−β)を計時(ステップC31)すると、制御手段46は給水弁WVを閉成制御し(ステップC32)、水皿表面への融氷水の供給を停止する。また、制御手段46は、第2の低温モードでの離氷判定処理によって記憶した離氷時間βを、新なた第1低温時供給時間γの値(γ=β)として更新し(ステップC33)、製氷運転を開始する(ステップC19)。そして、以後の除氷運転において、低温モードでの制御が継続する場合(ステップC13で肯定)は、ステップC20では否定されるので、ステップC26〜ステップC33の処理が行われ、第2の低温モードで制御される除氷運転が行われる毎に、第1低温時供給時間γ(=β)の値が更新される。
【0054】
別実施例の運転方法によれば、自動製氷機の運転中に取得した製氷室12から氷塊Iが離脱し始めるタイミング(離氷時間β)に基づいて第1低温時供給時間および第2低温時供給時間を設定するので、実機の実状に応じて低温モードにおける融氷水の供給制御を行うことができ、氷塊Iに融氷水が付着してストッカ内で氷塊Iが固化するのを防止し得る。また、低温モードでの除氷運転毎に、第1低温時供給時間γの値を、離氷判定処理において計測した離氷時間βに更新するので、融氷水の温度変化の追従性がよく、精度の高い融氷水制御を行い得る。更に、自動製氷機の運転中に、第1低温時供給時間γ(=β)を取得するので、予め実験等を行って第1低温時供給時間を取得する必要はなく、手間を省くことができる。
【0055】
〔変更例〕
本発明は、前述の実施例に限定されず、以下の如く変更することも可能である。
(1) 実施例では、運転切替手段の検知温度から融氷水の温度を取得したが、凝縮器の温度を検知するセンサや外気温を検知するセンサでの検知温度から融氷水の温度を取得するようにしてもよい。また、融氷水の温度を、他のファクターの温度から取得するのではなく、該融氷水の温度を温度センサで直接検知するようにしてもよい。
(2) 低温モードにおいて、除氷運転の開始を契機として第1低温時供給時間だけ融氷水を供給した後、運転切替手段が除氷完了温度を検知するまで融氷水の供給を停止し、除氷完了温度となった後に第2低温時供給時間だけ融氷水を供給するようにしてもよい。
(3) 製氷室から最初の氷塊が離脱してから最後の氷塊が離脱するまでに要する離脱時間を実験により求め、低温モードでは、除氷運転の開始を契機として第1低温時供給時間だけ融氷水を供給した後、離脱時間の間は融氷水の供給を停止し、該離脱時間の経過により第2低温時供給時間だけ融氷水を供給するようにしてもよい。
【0056】
(4) 実施例では、第2低温時供給時間の融氷水の供給が停止した後に、除氷運転から製氷運転に切替えるようにしたが、水皿が開放位置から閉成位置に移動するのに要する復帰時間より、第2低温時供給時間が短かい場合は、第2低温時供給時間の融氷水の供給中に除氷運転から製氷運転に切替えることができる。
(5) 高温モードにおける高温時供給時間については、融氷水の温度と水皿表面から氷片を融解除去し得る時間との関係を予め実験により取得して、該関係をテーブル化したデータを予め制御手段46に記憶し、融氷水の温度に応じて高温時供給時間の長さを変えるようにしてもよい。
(6) 融氷水の温度は、周囲温度に影響されると共に、該周囲温度の高低によって除氷運転において除氷開始から氷塊が離脱し始めるまでの時間も異なる場合がある。そこで、低温モードにおける第1低温時供給時間について、周囲温度(融氷水の温度)と除氷開始から氷塊が離脱し始めるまでの時間との関係を予め実験により取得して、該関係をテーブル化したデータを予め制御手段46に記憶し、周囲温度(融氷水の温度)に応じて第1低温時供給時間の長さを変えるようにしてもよい。
(7) 実施例では、運転切替手段によって製氷室(製氷部)の温度を検知して製氷運転と除氷運転とを切替えるようにしたが、運転切替手段はタイマ等の計時手段を用いることができる。すなわち、予め設定された製氷完了時間や除氷完了時を計時手段(運転切替手段)が計時することで製氷運転と除氷運転とを切替えるようにすることができる。
(8) 実施例では、運転切替手段が製氷運転完了を検知(製氷完了温度の検知)してから待機時間が経過してから融氷水の供給を開始するようにしたが、運転切替手段の製氷運転完了の検知と同時に融氷水の供給を開始するようにしてもよい。