(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13は、従来の3倍共振インバータ回路を高周波電源(D級アンプ)に適用したときの回路図を示している。この3倍共振インバータ回路は、直流電源DCから出力される直流電流を高周波交流電流に変換して、負荷に供給する。3倍共振インバータ回路は、2個のスイッチング素子TR0、TR0’と、インダクタL0とコンデンサC0とを直列に接続したLC共振回路と、により構成され、LC共振回路の共振周波数は、スイッチング周波数の3倍に設定されている。これにより、スイッチング周波数の3倍の周波数の高周波電流が3倍共振インバータ回路から出力され、スイッチング回数の増加を防止しながら、高周波交流電流を負荷に供給することが可能となる。
【0006】
このように構成される従来の3倍共振インバータ回路において、
図14(a)の実線で示す駆動信号(駆動電圧)がスイッチング素子TR0に入力され、また、
図14(a)の破線で示す駆動信号(駆動電圧)がスイッチング素子TR0’に入力されることで、交互に、オン状態とオフ状態とが切り替わる。このとき、スイッチング素子TR0のドレイン−ソース間の電圧は、
図14(b)の実線で示す波形となり、また、スイッチング素子TR0のドレインに流れる電流は、
図14(b)の破線で示す波形となる。同様に、スイッチング素子TR0’のドレイン−ソース間の電圧は、
図14(c)の実線で示す波形となり、また、スイッチング素子TR0’のドレインに流れる電流は、
図14(c)の破線で示す波形となる。
【0007】
これらの電流が負荷に出力されるので、この3倍共振インバータ回路から負荷に供給される交流電流(共振電流)は、
図14(d)に示すような波形となり、上記のとおり、スイッチング周波数の3倍の周波数の高周波交流電流が出力される。なお、
図14(d)は、スイッチング周波数の3倍の周波数成分の電流波形を示している。また、
図15は、
図14(d)に示す共振電流をFFT(Fast Fourier Transform)解析により周波数解析した結果を示す図である。従来の3倍共振インバータ回路から出力される共振電流は、スイッチング素子がオン状態である期間中に、負荷抵抗により消費されて減衰してしまうため、スイッチング周期に応じた周波数成分が重畳されてしまう。したがって、
図14(d)に示すように、共振電流の波形は、スイッチング周期に応じた周期変動を有した、ゆがんだ波形になっている。
図15に示す解析結果においても、所望の3倍の周波数成分のみならず、不要であるスイッチング周波数成分も重畳されてしまっていることが分かる。このような従来の3倍共振インバータ回路を高周波電源として使用した場合、負荷に供給される高周波交流電流に不要輻射が重畳してしまい、半導体製造プロセスに悪影響となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて創作されたものであり、スイッチング素子のオン状態とオフ状態とが切り替わるときに発生するスイッチング損失の増加を防止し、さらに、インバータ装置から出力され、負荷に供給される電流の周期変動が抑制され、安定した高周波交流電流を出力することが可能なインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面によって提供されるインバータ装置は、直流電源から出力される直流電流を、交流電流に変換し、出力するインバータ装置であって、前記直流電源の正極側に接続された第1スイッチング素子と前記直流電源の負極側に接続された第2スイッチング素子とを直列接続したアームを、前記直流電源に対して並列にN個接続したスイッチング回路と、1の前記アームを構成する前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の通電状態と非通電状態とを切り替えるための駆動信号を、前記アーム毎に、2π/N[rad]ずつ位相をずらして、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子に入力する制御手段と、前記各アームの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点にそれぞれ接続された共振回路と、を備え、前記N個の共振回路から出力される交流電流である共振電流を合成して出力する。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供されるインバータ装置は、直流電源の正極側に接続された第1スイッチング素子と前記直流電源の負極側に接続された第2スイッチング素子とを直列接続したスイッチング回路と、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の通電状態と非通電状態とを切り替えるための駆動信号を、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子に入力する制御手段と、前記スイッチング回路の前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点に接続された共振回路と、を備えた共振インバータ回路を、前記共振インバータ回路の出力端でN個接続し、前記各制御手段は、前記N個のスイッチング回路毎に、2π/N[rad]ずつ位相をずらした駆動信号を入力し、前記N個の共振インバータ回路の各共振回路から出力される交流電流である共振電流を合成して出力する。
【0011】
好ましくは、本発明の第1の側面および第2の側面によって提供されるインバータ装置において、前記Nは、3以上の奇数である。
【0012】
なお、前記Nが3であるとき、前記共振回路の共振周波数が、前記駆動信号の周波数の2.5倍〜3.5倍に設定されている。
【0013】
また、本発明の第1の側面および第2の側面によって提供されるインバータ装置において、前記第1スイッチング素子の代わりに、所定のインダクタンスを有するインダクタを備え、前記制御手段は、前記第2スイッチング素子の通電状態と非通電状態とを切り替えるための駆動信号を入力することも可能である。
【0014】
また、本発明の第1の側面および第2の側面によって提供されるインバータ装置において、前記共振回路は、インダクタとコンデンサとを直列に接続したLC直列共振回路であることが望ましい。
【0015】
そして、本発明の第1の側面および第2の側面によって提供されるインバータ装置において、前記共振回路は、前記インダクタのインダクタンスまたは前記コンデンサのキャパシタンスが変更可能であってもよい。
【0016】
本発明の第3の側面によって提供されるインバータ装置は、直流電源から出力される直流電流を、交流電流に変換し、負荷に出力するインバータ装置であって、前記直流電源の正極側に接続された第1スイッチング素子と前記直流電源の負極側に接続された第2スイッチング素子とを直列接続したアームを、前記直流電源に対して並列にN個接続したスイッチング回路と、1の前記アームを構成する前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子の通電状態と非通電状態とを切り替えるための駆動信号を、前記アーム毎に、2π/N[rad]ずつ位相をずらして、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子に入力する制御手段と、前記各アームの前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続点に接続され、前記負荷に対して直列に接続されたインダクタと前記負荷に対して並列に接続されたコンデンサとを備えるLC回路と、を備え、前記N個のLC回路から出力される出力電流を合成して、前記負荷に出力する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、N個接続された各アームのスイッチング素子に入力される駆動信号が、2π/N[rad]ずつ位相をずらしたものなので、各共振回路から出力される共振電流の周期変動の位相も2π/N[rad]ずつずれる。したがって、各共振回路から出力された共振電流を合成した出力電流は、各共振電流の減衰を互いに補填し合うことにより、周期変動が抑制されたものになる。これにより、スイッチング損失の増加を防止し、かつ、インバータ装置から安定した高周波交流電流を出力することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るインバータ装置の実施形態として、プラズマ処理システムに適用した場合を例に説明する。
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理システム1の構成を示す図である。図示するように、第1実施形態に係るプラズマ処理システム1は、直流電源10、インバータ装置20、および、プラズマ処理装置30を含んで構成される。
【0020】
このプラズマ処理システム1は、直流電源10から出力される直流電力をインバータ装置20により高周波交流電力に変換し、変換した高周波交流電力をプラズマ処理装置30に供給するシステムである。ここで、直流電源10とインバータ装置20とで、高周波電源としての機能を有する。プラズマ処理装置30では、半導体ウエハや液晶基板などの被加工物に対して、供給された高周波交流電力を利用し、例えば、プラズマエッチングなどの加工処理を行う。好ましくは、インバータ装置20から出力された高周波交流電力の反射波を抑えるために、インバータ装置20の出力端からプラズマ処理装置30側を見たインピーダンスを調整するインピーダンス整合装置を、インバータ装置20とプラズマ処理装置30との間に備えておくとよい。
【0021】
直流電源10は、直流電力(直流電流)を出力するものであり、例えば、入力される交流電流を整流する整流回路と、平滑する平滑コンデンサとを備えている。直流電源10は、図示しない商用電源から入力される商用交流電流を、整流回路で全波整流し、平滑コンデンサで平滑化し、直流電流に変換して出力する。なお、直流電源10は、交流電流を直流電流に変換して出力するものに限られず、例えば、燃料電池、蓄電池、太陽電池などの直流電流を出力するものであってもよい。
【0022】
インバータ装置20は、直流電源10から入力される直流電流を高周波交流電流に変換して、出力するものである。インバータ装置20は、内蔵するLC共振回路の共振周波数をスイッチング周波数の略3倍に設定しておくことで、スイッチング周波数の3倍の周波数の高周波交流電流を出力することが可能な3倍共振インバータ回路を3つ含んでいる。ゆえに、このインバータ装置20から出力される高周波交流電流の周波数を所望の周波数にするためには、スイッチング周波数を所望の高周波交流電流の周波数の1/3倍に設定し、そして、共振周波数をスイッチング周波数の略3倍に設定しておく。これらの詳細は以下に説明する。インバータ装置20は、
図1に示すように、6個のスイッチング素子TR1〜TR6、3個のインダクタL1〜L3、3個のコンデンサC1〜C3、電圧電流検出部201、および、制御部202を含んで構成されている。本実施形態において、スイッチング素子TR1〜TR6は、MOSFETを用いた例を説明するが、MOSFET以外の半導体スイッチング素子(例えば、バイポーラトランジスタやIGBTなど)を用いてもよい。
【0023】
スイッチング素子TR1とTR2とは、スイッチング素子TR1のソース端子とスイッチング素子TR2のドレイン端子とが、直列に接続されている。スイッチング素子TR1のドレイン端子は、直流電源10の正極側に接続され、スイッチング素子TR2のソース端子は、直流電源10の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。同様に、スイッチング素子TR3とTR4とが直列に接続されてブリッジ構造を形成し、スイッチング素子TR5とTR6とが直列に接続されて、ブリッジ構造を形成している。ここで、スイッチング素子TR1とTR2で形成されているブリッジ構造を第1アームとし、スイッチング素子TR3とTR4で形成されているブリッジ構造を第2アーム、スイッチング素子TR5とTR6で形成されているブリッジ構造を第3アームとする。第1アーム、第2アーム、および、第3アームは直流電源10に並列に接続されている。また、第1アームのスイッチング素子TR1とTR2との接続点には出力ラインが接続され、第2アームのスイッチング素子TR3とTR4との接続点に、また、第3アームのスイッチング素子TR5とTR6との接続点にもそれぞれ出力ラインが接続されている。この第1アーム、第2アーム、第3アームにより構成される回路が、請求項1における「スイッチング回路」に相当する。
【0024】
スイッチング素子TR1のゲート端子には、制御部202から駆動信号Q1が入力され、この駆動信号Q1に基づき、スイッチング素子TR1のオン状態とオフ状態とが切り替えられる。同様に、スイッチング素子TR2〜TR6のゲート端子には、それぞれ制御部202から駆動信号Q2〜Q6が入力され、この駆動信号Q2〜Q6に基づき、スイッチング素子TR2〜TR6のオン状態とオフ状態とが切り替えられる。各アームの両端は、それぞれ直流電源10の正極側と負極側とに接続されているので、正極側のスイッチング素子TR1(TR3、TR5)がオン状態で負極側のスイッチング素子TR2(TR4、TR6)がオフ状態の場合、各アームの出力ラインの電位は直流電源10の正極側の電位となる。一方、正極側のスイッチング素子TR1(TR3、TR5)がオフ状態で負極側のスイッチング素子TR2(TR4、TR6)がオン状態の場合、各アームの出力ラインの電位は、直流電源10の負極側の電位となる。
【0025】
インダクタL1とコンデンサC1とは、直列に接続され、LC直列共振回路を構成している。同様に、インダクタL2とコンデンサC2とが直列に接続され、インダクタL3とコンデンサC3とが直列に接続され、それぞれLC直列共振回路を構成している。このインダクタL1とコンデンサC1とで構成されるLC直列共振回路を共振部LC1とし、同様に、インダクタL2とコンデンサC2とで構成されるLC直列共振回路を共振部LC2、インダクタL3とコンデンサC3とで構成されるLC直列共振回路を共振部LC3とする。これら共振部LC1〜LC3の共振周波数は、後述する制御部202がスイッチング素子TR1〜TR6に入力する駆動信号Q1〜Q6の周波数(スイッチング周波数)の略3倍の周波数に設定しておく。なお、共振部LC1〜LC3の共振周波数は、全て同じ周波数に設定される。また、好ましくは、スイッチング素子TR1〜TR6のスイッチング損失をさらに防ぐためのソフトスイッチング(電圧ゼロスイッチングや電流ゼロスイッチング)を行うときには、スイッチング周波数の3倍より少し低い周波数に設定しておくとよい。この共振部LC1〜LC3がそれぞれ、請求項1の「共振回路」に相当する。
【0026】
共振部LC1の一端は、第1アームに接続される出力ラインに接続され、共振部LC2の一端は、第2アームに接続される出力ラインに接続され、共振部LC3の一端は、第3アームに接続される出力ラインに接続されている。そして、共振部LC1〜LC3の他端は、一点(接続点A)で接続され、共振部LC1〜LC3に流れる電流(以下、「共振電流」という。)ir1、ir2、ir3が、接続点Aで合成される。そして、接続点Aで合成された共振電流ir1〜ir3は、プラズマ処理装置30に出力(供給)される。以下、この合成されて出力される電流IRc1を、「負荷電流」と表現する。
【0027】
電圧電流検出部201は、電圧計と電流計とを含み、電圧計でインバータ装置20からプラズマ処理装置30に印加される電圧を検出し、電流計でインバータ装置20からプラズマ処理装置30に出力される電流を検出する。電圧電流検出部201は、検出した電圧値および電流値を制御部202に出力する。
【0028】
制御部202は、ROM、RAM、CPUなどを備えるマイクロコンピュータやFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで構成される。制御部202は、電圧電流検出部201から入力される電圧値および電流値が設定電圧や設定電流になるように調整した駆動信号Q1〜Q6を発生させる。そして、制御部202は、発生させた駆動信号Q1〜Q6をそれぞれスイッチング素子TR1〜TR6に入力し、スイッチング素子TR1〜TR6のオン状態とオフ状態とを切り替える。これにより、直流電源10から入力される直流電流が交流電流に変換される。本実施形態において、スイッチング素子TR1〜TR6は、MOSFETであるため、ゲート端子に電圧が印加されることで、オン状態とオフ状態とが切り替えられる。スイッチング素子TR1〜TR6のゲート端子に電圧が印加されているときオン状態となり、電圧が印加されていないときオフ状態となる。よって、制御部202は、パルス波の電圧信号を駆動信号Q1〜Q6として発生させる。なお、駆動信号Q1、Q3、Q5(Q2、Q4、Q6)のデューティ比は同じであり、駆動信号Q1〜Q6の振幅は全て同じである。制御部202は、このパルス波のデューティ比や振幅を変化させることで、インバータ装置20から出力される電圧や電流を調整する。上記では、制御部202は、電圧電流検出部201から入力される電圧値および電流値が設定電圧や設定電流になるように駆動信号Q1〜Q6を調整する場合を例に説明するが、これに限らず、電圧電流検出部201から入力される電圧値および電流値から電力値を求め、この電力値が設定電力になるように駆動信号Q1〜Q6を調整するようにしてもよい。なお、電力値が設定電力になるように調整する場合、電圧電流検出部201の代わりに、電力を検出する電力検出部を用いてもよい。
【0029】
制御部202は、第1アームを構成するスイッチング素子TR1、TR2の一方がオン状態のときに他方がオフ状態となるように、駆動信号Q1、Q2を発生させる。同様に、制御部202は、第2アームを構成するスイッチング素子TR3、TR4の一方がオン状態のときに他方がオフ状態となるように、駆動信号Q3、Q4を発生させ、第3アームを構成するスイッチング素子TR5、TR6の一方がオン状態のときに他方がオフ状態となるように、駆動信号Q5、Q6を発生させる。すなわち、1個のアームに入力される2つの駆動信号(Q1とQ2、Q3とQ4、Q5とQ6)は、反転している。また、制御部202は、各アームに入力する駆動信号を2π/3[rad](=120°)ずつずらしたマルチフェーズ動作を行う。具体的には、制御部202は、第1アームに入力する駆動信号Q1、Q2の位相を基準(0°)とすると、第2アームに入力する駆動信号Q3、Q4の位相を120°、第3アームに入力する駆動信号Q5、Q6の位相を240°遅らせて発生させ、各アームに入力する。
【0030】
制御部202が発生させる駆動信号Q1〜Q6の周波数(スイッチング周波数)は、プラズマ処理装置30に供給する所望の高周波交流電流の周波数に基づき、設定される。具体的には、スイッチング周波数は、プラズマ処理装置30に供給する所望の高周波交流電流の周波数の1/3倍に設定される。
【0031】
好ましくは、制御部202は、電圧電流検出部201から入力される高周波電圧または高周波電流の検出値に基づき、電圧が0(ゼロ)または電流が0(ゼロ)のときに、スイッチング素子TR1〜TR6のオン状態とオフ状態とを切り替えるソフトスイッチング(電圧ゼロスイッチングまたは電流ゼロスイッチング)を行う。
【0032】
プラズマ処理装置30は、図示しない加工部を備え、その加工部の内部に搬入したウエハや液晶基板等の被加工物を加工(エッチングなど)するための装置である。このプラズマ処理装置30は、被加工物を加工するために、加工部にプラズマ放電用のガスを導入し、インバータ装置20から出力される高周波交流電流(高周波交流電力)を利用して、プラズマ放電用ガスを非プラズマ状態からプラズマ状態にしている。そして、プラズマを利用して被加工物を加工している。
【0033】
このように構成された第1実施形態に係るプラズマ処理システム1において、各共振部LC1〜LC3に流れる共振電流およびインバータ装置20から出力される高周波交流電流(プラズマ処理装置30に流れる負荷電流)について、具体的に説明する。
【0034】
図2は、制御部202からスイッチング素子TR1〜TR6に出力される駆動信号Q1〜Q6のスイッチング周波数を13.56MHz、共振周波数を38.9MHzに設定した場合、すなわち、スイッチング周波数の3倍の周波数より共振周波数が低くなるように(スイッチング周波数の約2.87倍の周波数に)設定した場合の各種波形を示している。
【0035】
図2(a)は、スイッチング素子TR1に入力される駆動信号Q1およびスイッチング素子TR2に入力される駆動信号Q2の電圧波形を示している。
図2(b)は、スイッチング素子TR3に入力される駆動信号Q3およびスイッチング素子TR4に入力される駆動信号Q4の電圧波形を示しており、
図2(c)は、スイッチング素子TR5に入力される駆動信号Q5およびスイッチング素子TR6に入力される駆動信号Q6の電圧波形を示している。
図2(a)〜(c)に示すように、制御部202は、駆動信号Q1、Q3、Q5を120°ずつずらして発生させ、それぞれスイッチング素子TR1、TR3、TR5に入力する。同様に、駆動信号Q2、Q4、Q6を120°ずつずらして発生させ、それぞれスイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力する。
【0036】
これらの駆動信号Q1〜Q6がそれぞれスイッチング素子TR1〜TR6に入力されると、直流電源10から出力される直流電流が、各スイッチング素子TR1〜TR6の動作により、交流電流に変換される。このとき、各アームに接続された共振部LC1〜LC3により、
図2(d)に示す共振電流ir1〜ir3が、各共振部LC1〜LC3に流れる。
図2(d)において、第1アームから出力される共振電流ir1は実線、第2アームから出力される共振電流ir2は破線、第3アームから出力される共振電流ir3は一点鎖線で示されている。このとき、各アームから出力される共振電流ir1〜ir3は、従来の3倍共振インバータ回路と同様に、スイッチング周期に応じた周期変動を有した波形となっている。
【0037】
そして、各共振部LC1〜LC3を流れる共振電流ir1〜ir3は、接続点Aで合成され、プラズマ処理装置30に出力される。このとき、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流(高周波交流電流)IRc1は、
図2(e)に示す波形となる。
図2(e)に示すように、負荷電流IRc1は、各共振電流ir1〜ir3にみられた周期変動が抑制され、安定した波形となる。これは、
図2(d)に示す各共振電流ir1〜ir3を合成したことで、各共振電流ir1〜ir3の減衰を互いに補填し合ったためである。よって、負荷電流IRc1は、周期変動が抑制され、安定した高周波交流電流となり、インバータ装置20から安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。さらに、
図2(e)に示すように、負荷電流IRc1は、スイッチング周波数の3倍の周波数となる。よって、インバータ装置20は、スイッチング周波数の3倍の周波数の高周波交流電流を出力することができ、スイッチング損失を低減させることができる。
【0038】
図3は、プラズマ処理装置30に供給される負荷電流IRc1をFFT解析したときの結果を示している。
図15に示す従来の3倍共振インバータ回路から負荷に供給される共振電流は、所望となるスイッチング周波数の3倍の周波数成分のみならず不要であるスイッチング周波数成分も重畳されていたが、
図3に示す負荷電流IRc1においては、所望となるスイッチング周波数の3倍の周波数成分のみが得られ、不要なスイッチング周波数成分が減衰されている。
【0039】
続いて、
図4は、制御部202からスイッチング素子TR1〜TR6に出力される駆動信号Q1〜Q6のスイッチング周波数を13.56MHz、共振周波数を43.3MHzに設定した場合、すなわち、スイッチング周波数の3倍の周波数より共振周波数が高くなるように(スイッチング周波数の約3.19倍の周波数に)設定した場合の各種波形を示している。
【0040】
図4(a)は、スイッチング素子TR1に入力される駆動信号Q1およびスイッチング素子TR2に入力される駆動信号Q2の電圧波形を示している。
図4(b)は、スイッチング素子TR3に入力される駆動信号Q3およびスイッチング素子TR4に入力される駆動信号Q4の電圧波形を示しており、
図4(c)は、スイッチング素子TR5に入力される駆動信号Q5およびスイッチング素子TR6に入力される駆動信号Q6の電圧波形を示している。
図4(a)〜(c)に示すように、制御部202は、駆動信号Q1、Q3、Q5を120°ずつずらして発生させ、それぞれスイッチング素子TR1、TR3、TR5に入力する。同様に、駆動信号Q2、Q4、Q6を120°ずつずらして発生させ、それぞれスイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力する。
【0041】
これらの駆動信号Q1〜Q6がそれぞれスイッチング素子TR1〜TR6に入力されると、直流電源10から出力される直流電流が、各スイッチング素子TR1〜TR6の動作により、交流電流に変換される。このとき、各アームに接続された共振部LC1〜LC3により、
図4(d)に示す共振電流ir1〜ir3が、各共振部LC1〜LC3に流れる。
図4(d)において、第1アームから出力される共振電流ir1は実線、第2アームから出力される共振電流ir2は破線、第3アームから出力される共振電流ir3は一点鎖線で示されている。このとき、各アームから出力される共振電流ir1〜ir3は、
図2(d)に示す共振電流に比べ、さらに、スイッチング素子がオン期間中の減衰量が大きくなっている。
【0042】
そして、各共振部LC1〜LC3を流れる共振電流ir1〜ir3は、接続点Aで合成され、プラズマ処理装置30に出力される。このとき、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流(高周波交流電流)IRc1は、
図4(e)に示す波形となる。
図4(e)に示すように、負荷電流IRc1は、各共振電流ir1〜ir3にみられた周期変動が抑制され、安定した波形となる。これは、
図4(d)に示す各共振電流ir1〜ir3を合成したことで、各共振電流ir1〜ir3の減衰を互いに補填し合ったためである。よって、負荷電流IRc1は、周期変動が抑制され、安定した高周波交流電流となり、インバータ装置20から安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。さらに、
図4(e)に示すように、負荷電流IRc1は、スイッチング周波数の3倍の周波数となる。よって、インバータ装置20は、スイッチング周波数の3倍の周波数の高周波交流電流が出力することができ、スイッチング損失を低減させることができる。また、各共振部LC1〜LC3に設定される共振周波数が、スイッチング周期の3倍より高い場合でも低い場合でも、出力電流を安定させることができる。なお、共振周波数が高い(
図4)方が各共振電流の減衰が大きく、合成した電流は小さくなる(
図2(e)および
図4(e)の振幅参照)ので、共振周波数は低い方が望ましい。
【0043】
以上で説明したように、本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理システム1によれば、2個のスイッチング素子を直列接続したアームを3個並列接続し、各アームの出力ラインに、インダクタとコンデンサを直列接続したLC直列共振回路(共振部LC1〜LC3)を接続している。このように構成されたインバータ装置20において、LC直列共振回路の共振周波数を、スイッチング周波数の略3倍の周波数に設定しておき、制御部202は、2π/3[rad](=120°)ずつずらした駆動信号を発生させ、各アームに入力する。そして、各LC直列共振回路から出力される共振電流ir1〜ir3を合成して、プラズマ処理装置30に供給するようにした。これにより、各LC直列共振回路から出力される共振電流の周期変動の位相も2π/3[rad]ずつずれ、各LC直列共振回路から出力された共振電流を合成した出力電流(負荷電流IRc1)は、各共振電流が減衰を互いに補填し合うことにより、周期変動が抑制されたものになる。よって、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流IRc1は、安定した高周波交流電流となり、インバータ装置20は、安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。さらに、3つの共振電流が合成されるため、高出力の高周波交流電流を供給することができる。
【0044】
第1実施形態において、共振部LC1〜LC3の共振周波数をスイッチング周波数の略3倍の周波数に設定した例を説明したが、これに限定されるものではなく、いかなる周波数を設定しても、同様に安定した高周波交流電流を供給することができる。
図5は、共振部LC1〜LC3の共振周波数を、変化させたときの負荷電流IRc1の電流波形を示している。
図5(a)〜(e)は、それぞれ共振部LC1〜LC3の共振周波数をスイッチング周波数の1.25倍、2.1倍、2.5倍、3.5倍、5.3倍にしたときの負荷電流IRc1を示している。
図5を見てわかるように、共振周波数を変化させても、安定した高周波交流電流をプラズマ負荷に供給することが分かる。また、
図6は、
図5に示す負荷電流IRc1のFFT解析したときの解析結果を示しており、共振周波数を変化させた場合でも、所望の周波数成分が最も高く出力されている。
【0045】
以上のことから、第1実施形態に係るプラズマ処理システム1において、共振部LC1〜LC3の共振周波数はスイッチング周波数の略3倍に限定されず、インバータ装置20は、安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。ただし、
図6に示すように、共振周波数がスイッチング周波数の3倍から離れるほど、不要な周波数成分が重畳され、不要輻射が多くなるため、共振部LC1〜LC3の共振周波数は、略3倍(2.5倍〜3.5倍程度)に設定しておくことが望ましい。
【0046】
また、第1実施形態において、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR2とで構成されたアームを直流電源10に対して3個並列接続した場合を例に説明したが、これに限られず、スイッチング素子TR1、TR3、TR5の代わりに、それぞれインダクタを用いても同様の効果が得られる。この場合を、第2実施形態として、以下に説明する。
【0047】
図7は、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理システム2の構成を示す図である。なお、第1実施形態と同じまたは類似する構成については、同一の符号番号を付して、その説明を省略する。図示するように、第2実施形態に係るプラズマ処理システム2は、直流電源10、インバータ装置21、および、プラズマ処理装置30を含んで構成される。第1実施形態に係るプラズマ処理システム1と比べ、インバータ装置21の構成が異なっている。
【0048】
インバータ装置21は、直流電源10から入力される直流電流を高周波交流電流に変換して、出力するものである。インバータ装置21は、
図7に示すように、3個のスイッチング素子TR2、TR4、TR6、6個のインダクタL1〜L3、Lr11〜Lr13、3個のコンデンサC1〜C3、電圧電流検出部201、および、制御部212を含んで構成されている。インバータ装置21は、第1実施形態のインバータ装置20と比べ、スイッチング素子TR1、TR3、TR5をインダクタLr11、Lr12、Lr13に代えている点で異なる。つまり、インダクタLr11とスイッチング素子TR2とが直列接続され、第1アームを形成している。同様に、インダクタLr12とスイッチング素子TR4とが直列接続され、第2アームを形成し、インダクタLr13とスイッチング素子TR6とが直列接続され、第3アームを形成している。そして、第1アーム、第2アーム、および、第3アームは、直列電源10に対して並列接続されている。
【0049】
インダクタL1(L2、L3)とコンデンサC1(C2、C3)からなる共振部LC1(LC2、LC3)の共振周波数は、駆動信号Q12(Q14、Q16)のスイッチング周波数の略3倍の周波数に設定しておく。また、好ましくは、スイッチング素子TR2、TR4、TR6のスイッチング損失をより防ぐためのソフトスイッチング(電圧ゼロスイッチングや電流ゼロスイッチング)を行うときには、スイッチング周波数の3倍より少し低い周波数に設定しておくとよい。なお、第1実施形態と同様に、共振部LC1〜LC3の共振周波数は、スイッチング周波数の略3倍に限定されるものではないが、略3倍の周波数を設定しておくことが望ましい。
【0050】
各共振部LC1〜LC3の出力端は、一点(接続点B)で接続され、共振部LC1〜LC3に流れる共振電流ir11、ir12、ir13は、接続点Bで合成される。そして、接続点Bで合成された電流(負荷電流IRc2)は、プラズマ処理装置30に出力(供給)される。
【0051】
制御部212は、第1実施形態の制御部202と同様の構成であり、各スイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力する駆動信号Q12、Q14、Q16を発生させる。このとき、制御部212は、電圧電流検出部201から入力される電圧値や電流値が設定電圧や設定電流になるように、駆動信号Q12、Q14、Q16を調整する。
【0052】
また、制御部212も、各スイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力する駆動信号を2π/3[rad](=120°)ずつずらしたマルチフェーズ動作を行う。具体的には、制御部212は、スイッチング素子TR2に入力する駆動信号Q12の位相を基準(0°)とすると、スイッチング素子TR4に入力する駆動信号Q14の位相を120°、スイッチング素子TR6に入力する駆動信号Q16の位相を240°遅らせて、各スイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力する。好ましくは、制御部212も、制御部202と同様に、ソフトスイッチングを行う。
【0053】
このように、構成された第2実施形態に係るプラズマ処理システム2において、各共振部LC1〜LC3に流れる共振電流およびインバータ装置21から出力される高周波交流電流(プラズマ処理装置30に流れる負荷電流)について、具体的に説明する。
【0054】
図8は、第2実施形態に係るプラズマ処理システム2における各種波形(駆動信号や電流)を示す図である。
図8(a)は、スイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力される駆動信号Q12、Q14、Q16の電圧波形を示している。図示するように、制御部212は、駆動信号Q12、Q14、Q16をそれぞれ120°ずつずらして発生させ、それぞれスイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力する。
図8(a)に示される駆動信号Q12、Q14、Q16がそれぞれスイッチング素子TR2、TR4、TR6に入力されると、直流電源10から出力される直流電流が、各スイッチング素子TR2、TR4、TR6の動作により、交流電流に変換される。このとき、共振部LC1〜LC3により、
図8(b)に示す共振電流ir11〜ir13が各共振部LC1〜LC3に流れる。
図8(b)に示すように、共振部LC1〜LC3に流れる共振電流ir11〜ir13は、第1実施形態と同様に、スイッチング周期に応じた周期変動を有した波形となっている。
【0055】
そして、各共振部LC1〜LC3を流れる共振電流ir11〜ir13は、接続点Bで合成され、プラズマ処理装置30に出力される。このとき、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流(高周波交流電流)IRc2は、
図8(c)に示す波形となる。
図8(c)に示すように、負荷電流IRc2は、各共振電流ir11〜ir13にみられた周期変動が抑制され、安定した波形となる。これは、
図8(b)に示す各共振電流ir11〜ir13を合成したことで、各共振電流ir11〜ir13の減衰を互いに補填し合ったためである。よって、負荷電流IRc2は、周期変動が抑制され、安定した高周波交流電流となり、インバータ装置21からプラズマ処理装置30に供給することができる。さらに、
図8(c)に示すように、負荷電流IRc2は、スイッチング周波数の3倍の周波数となる。よって、インバータ装置21は、スイッチング周波数の3倍の周波数の高周波交流電流を出力することができ、スイッチング損失を低減させることができる。
【0056】
以上で説明したように、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理システム2によれば、直流電源10から入力される直流電流を高周波交流電流に変換するインバータ装置21において、第1実施形態のスイッチング素子TR1、TR3、TR5の代わりに、インダクタLr11、Lr12、Lr13を用いても、各共振部LC1〜LC3に流れる共振電流ir11〜ir13を合成した出力電流(負荷電流IRc2)は、各共振電流が減衰を互いに補填し合うことにより、周期変動が抑制されたものになる。よって、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流IRc2は、安定した高周波交流電流となり、インバータ装置21は、安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。
【0057】
第1実施形態および第2実施形態において、3つの共振電流を合成してプラズマ処理装置30に高周波交流電流(負荷電流)を供給する場合を例に説明したが、これに限られず、Nつ(Nは3以上の奇数)の共振電流を合成した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給するようにすれば、第1実施形態と同様に、安定した高周波交流電流を出力することが可能である。この場合のインバータ装置は、N個のアームとN個の共振部を備えた回路構成となる。また、制御部は、それぞれ2π/N[rad]ずつずらした駆動信号を各アームに入力する。例えば、このNを5とした場合を、第3実施形態として、以下に説明する。なお、第1実施形態は、Nを3とした場合の実施形態である。
【0058】
図9は、本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理システム3の構成を示す図である。なお、第1実施形態および第2実施形態と同じまたは類似する構成については、同一の符号番号を付して、その説明を省略する。図示するように、第3実施形態に係るプラズマ処理システム3は、直流電源10、インバータ装置22、および、プラズマ処理装置30を含んで構成される。第1実施形態に係るプラズマ処理システム1と比べ、インバータ装置22の構成が異なっている。
【0059】
インバータ装置22は、直流電源10から入力される直流電流を高周波交流電流に変換し出力するものである。インバータ装置22は、
図9に示すように、10個のスイッチング素子TR1〜TR10、5個のインダクタL1〜L5、5個のコンデンサC1〜C5、電圧電流検出部201、および、制御部222を含んで構成されている。図示するように、第1実施形態のインバータ装置20では、2個のスイッチング素子を有するアームを、直流電源10に対して3個並列接続し、各アームに接続された出力ラインにそれぞれインダクタとコンデンサからなる共振部LC1〜LC3を接続した構成であったが、第3実施形態のインバータ装置22は、さらに2個のアームを追加し、合計5個のアームを直流電源10に対して並列接続している。それにより、インダクタL4とコンデンサC4からなる共振部LC4およびインダクタL5とコンデンサC5からなる共振部LC5が追加され、合計5個の共振部LC1〜LC5を含んで構成されている。
【0060】
スイッチング素子TR1〜TR10には、制御部222から駆動信号Q21〜Q30が入力され、各スイッチング素子TR1〜TR10のオン状態とオフ状態とが切り替えられる。このとき、各共振部LC1〜LC5の共振周波数は、駆動信号Q21〜Q30の周波数(スイッチング周波数)の略5倍の周波数に設定されており、この点も第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様に、共振部LC1〜LC5の共振周波数は、何倍であってもよいが、略5倍の周波数を設定しておくことが望ましい。そして、各共振部LC1〜LC5に流れる共振電流を接続点Cで合成した負荷電流IRc3が、プラズマ処理装置30に供給される。
【0061】
制御部222は、制御部202や制御部212と同様の構成であり、各スイッチング素子TR1〜TR10に入力する駆動信号Q21〜Q30を発生させる。制御部222は、制御部202および制御部212と比べ、2π/5[rad](=72°)ずつずらした駆動信号を各アームに入力する点で異なる。
【0062】
このように構成された第3実施形態に係るプラズマ処理システム3において、各アームから出力される共振電流ir21〜ir25は、第1実施形態と同様に、スイッチング周期に応じた周期変動を有する波形となるが、各アームから出力される共振電流ir21〜ir25を、接続点Cで合成することで、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流IRc3は、周期変動が抑制され、安定した高周波交流電流となる。
【0063】
以上で説明したように、本発明の第3実施形態に係るプラズマ処理システム3においても、各アームから出力され、各LC直列共振回路(共振部LC1〜LC5)から出力される共振電流ir21〜ir25を合成して、プラズマ処理装置30に供給するようにした。これにより、各LC直列共振回路から出力される共振電流の周期変動の位相も2π/5[rad]ずつずれ、各LC直列共振回路から出力された共振電流を合成した出力電流(負荷電流IRc3)は、各共振電流が減衰を互いに補填し合うことにより、周期変動が抑制されたものとなる。よって、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流IRc3は、安定した高周波交流電流となり、インバータ装置22は、安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。ひいては、N個のアームを直流電源10に対して並列接続し、各アームの出力ラインにLC直列共振回路を接続した構成であっても、同様に、安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。
【0064】
なお、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、直流電源10の正極側に接続されたスイッチング素子をインダクタに代えることも可能である。このとき、制御部222は、直流電源10の負極側に接続されたスイッチング素子に2π/N[rad]ずつずらした駆動信号を入力することで、安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。
【0065】
第1実施形態ないし第3実施形態において、1個の直流電源10から出力される直流電流を高周波交流電流に変換し、プラズマ処理装置30に供給する場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、直流電源と、2個のスイッチング素子を直列接続したアームと、アームの接続点に接続され、インダクタとコンデンサを直列接続したLC直列共振回路と、を備えた高周波電源をN個備え、N個の高周波電源から出力される高周波交流電流を合成して、プラズマ処理装置30に供給することも可能である。この場合を、第4実施形態として、以下に説明する。
【0066】
図10は、本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理システム4の構成を示す図である。なお、第1実施形態ないし第3実施形態と同じまたは類似する構成についは、同一の符号番号を付して、その説明を省略する。
図10に示すように、本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理システム4は、3個の直流電源11、12、13、インバータ装置23、および、プラズマ処理装置30を含んで構成される。図示するように、第1実施形態のプラズマ処理システム1と比べ、直流電源を3個備えている構成とインバータ装置23の構成とが異なる。
【0067】
直流電源11、12、13は、直流電力(直流電流)を出力するものであり、第1実施形態の直流電源10と同じ構成であるため、その説明を省略する。インバータ装置23は、直流電源11、12、13から入力される直流電流を高周波交流電流に変換して、出力するものである。インバータ装置23は、
図10に示すように、3個のインバータ回路231、232、233、電圧電流検出部201、および、制御部234を含んで構成される。
【0068】
インバータ回路231(232、233)は、2個のスイッチング素子TR1’とTR2’(TR3’とTR4’、TR5’とTR6’)、インダクタL1’(L2’、L3’)、および、コンデンサC1’(C2’、C3’)を含んで構成される。スイッチング素子TR1’とTR2’(TR3’とTR4’、TR5’とTR6’)とは、スイッチング素子TR1’(TR3’、TR5’)のソース端子とスイッチング素子TR2’(TR4’、TR6’)のドレイン端子とが、直列に接続されている。スイッチング素子TR1’(TR3’、TR5’)のドレイン端子は、直流電源11(12、13)の正極側に接続され、スイッチング素子TR2’(TR4’、TR6’)のソース端子は、直流電源11(12、13)の負極側に接続されて、ブリッジ構造を形成している。この直列接続された2個のスイッチング素子TR1’とTR2’(TR3’とTR4’、TR5’とTR6’)により構成される各回路がそれぞれ、請求項2における「スイッチング回路」に相当する。
【0069】
また、インダクタL1’(L2’、L3’)とコンデンサC1’(C2’、C3’)とは、直列に接続され、LC直列共振回路を構成しており、このLC直列共振回路を共振部LC1’(LC2’、LC3’)とする。スイッチング素子TR1’とTR2’(TR3’とTR4’、TR5’とTR6’)の接続点には出力ラインが接続されており、この出力ラインは、共振部LC1’(LC2’、LC3’)の一端と接続されている。共振部LC1’〜LC3 ’の共振周波数は、第1実施形態の共振部LC1〜LC3と同様に、スイッチング周波数の略3倍に限定されるものではないが、略3倍の周波数を設定しておくことが望ましい。なお、共振部LC1’〜LC3 ’の共振周波数は、全て同じ周波数に設定される。この共振部LC1’(LC2’、LC3’)がそれぞれ、請求項2における「共振回路」に相当する。また、この直流電源11(12、13)とインバータ回路231(232、233)とが上記高周波電源に相当する。
【0070】
各インバータ回路231〜233の共振部LC1’〜LC3 ’の他端は、一点(接続点D)で接続され、共振部LC1’〜LC3 ’に流れる共振電流ir31〜ir33は、接続点Dで合成される。そして、接続点Dで合成された電流(負荷電流)IRc4は、プラズマ処理装置30に出力(供給)される。
【0071】
制御部234は、制御部202と同様の構成であり、各スイッチング素子TR1’〜TR6’に入力する駆動信号Q1’〜Q6’を発生させる。また、制御部234は、制御部202と同様に、各インバータ回路231〜233に入力する駆動信号Q1’〜Q6’の位相を2π/3[rad](=120°)ずつずらしたマルチフェーズ動作を行う。なお、本実施形態において、制御部234は、1個の制御部により、インバータ回路231〜233を制御するものとして、説明するが、インバータ回路231〜233毎に制御部を備える構成であってもよい。上記インバータ回路231(232、233)および制御部234を備えた回路がそれぞれ、請求項2における「共振インバータ回路」に相当する。
【0072】
このように構成された第4実施形態に係るプラズマ処理システム4において、各インバータ回路231〜233から出力される共振電流ir31〜ir33は、
図14(d)に示す従来の3倍共振インバータ回路から出力される共振電流と同じであり、周期変動を有する波形となってしまうが、各インバータ回路231〜233から出力される共振電流ir31〜ir33を、接続点Dで合成することで、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流IRc4は、周期変動が抑制され、安定した高周波交流電流となる。
【0073】
以上で説明したように、本発明の第4実施形態に係るプラズマ処理システム4においても、各インバータ回路231〜233から出力され、各共振部LC1’〜LC3 ’に流れる共振電流ir31〜ir33を合成して、プラズマ処理装置30に供給するようにした。これにより、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流IRc4は、安定した高周波交流電流となる。よって、インバータ装置23は、安定した高周波交流電流をプラズマ処理装置30に供給することができる。
【0074】
第1実施形態ないし第4実施形態において、LC直列共振回路を構成するインダクタのインダクタンスおよびコンデンサのキャパシタンスは、予め所望の共振周波数となるように、設定しておく場合を例に説明したが、インダクタンスとキャパシタンスの両方または一方を変更可能な構成とすることで、共振周波数を自由に変更できるようにしてもよい。例えば、インダクタのインダクタンスが変更可能な可変インダクタを用いたり、コンデンサのキャパシタンスが変更可能な可変コンデンサを用いたりすることで実現される。このようにすることで、スイッチング周波数に応じて共振周波数も変更できるので、利用者がスイッチング周波数を自由に設定することが可能となる。また、共振周波数およびスイッチング周波数が変更可能であれば、利用者がインバータ装置からプラズマ処理装置に出力される高周波交流電流の周波数を自由に設定することも可能となる。
【0075】
第1実施形態ないし第4実施形態において、インダクタとコンデンサをプラズマ処理装置30(負荷)に対して、直列接続している場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、プラズマ処理装置30(負荷)に対して、インダクタを直列に接続し、一方、コンデンサを並列に接続した場合でも、同様にスイッチング周波数のN倍の高周波交流電流を供給することができる。この場合は、第5実施形態として、以下に説明する。
【0076】
図11は、本発明の第5実施形態に係るプラズマ処理システム5の構成を示す図である。なお、第1実施形態ないし第4実施形態と同じまたは類似する構成については、同一の符号番号を付して、その説明を省略する。第1実施形態に示すプラズマ処理装置1のインバータ装置20(
図1参照)と比べ、インバータ装置24は、コンデンサC1〜C3の接続位置が異なっている。また、プラズマ処理装置30に入力される直流電流をカットするためのコンデンサCcutが追加されている。それ以外については、同じである。インダクタL1(L2、L3)とコンデンサC1(C2、C3)とを備えた回路がそれぞれ、請求項8のLC回路に相当する。
【0077】
このように構成された第5実施形態に係るプラズマ処理システム5において、駆動信号Q1〜Q6のスイッチング周波数を13.56MHzで制御したときの各電流波形について、説明する。
図12(a)は、各アームから出力される出力電流ir41〜ir43の電流波形を示しており、
図12(b)は、出力電流ir41〜ir43を接続点Eで合成した出力電流IRc5(負荷電流IRc5)を示している。
図12(a)に示すように、各アームから出力される出力電流ir41〜ir43は、スイッチング周期毎に周期変動を有する波形となるが、この出力電流ir41〜ir43を、接続点Eで合成することで、
図12(b)に示すように、プラズマ処理装置30に流れる負荷電流IRc5は、周期変動が抑制され、安定した高周波交流電流となる。
【0078】
また、
図12(c)は、第5実施形態に係るプラズマ処理システム5における出力電流ir41のFFT解析結果を示し、
図12(d)は、出力電流ir41〜ir43を接続点Eで合成した負荷電流IRc5のFFT解析結果を示している。
図12(c)に示すように、1個のアームから出力される出力電流ir41(ir42、ir43も同様)では、スイッチング周波数の周波数成分が最も高く出力されていることに対して、
図12(d)では、スイッチング周波数の3倍の周波数成分が最も高く出力されている。よって、各出力電流ir41〜ir43を合成した負荷電流IRc5は、不要な周波数成分が減衰されていることがわかる。
【0079】
第1実施形態ないし第5実施形態において、それぞれ接続点Aないし接続点Eの一点で合成した例を説明したが、複数の共振電流を合成してプラズマ処理装置30に出力する構成であれば、これに限定されるものではない。
【0080】
第1実施形態ないし第5実施形態において、本発明に係るインバータ装置をプラズマ処理システムに適用した場合を例に説明したが、これに限られるものではない。例えば、高周波交流電力をプラズマ処理装置以外の負荷に供給するものにも適用することができる。すなわち、本発明に係るインバータ装置は、高周波交流電力を出力する高周波電源に含まれるインバータ装置として機能する。
【0081】
本発明に係るインバータ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲を逸脱しなければ、各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。また、上記実施形態の説明に用いた各種設定値(スイッチング周波数、共振周波数など)も、種々に設計変更自在である。