(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397788
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】水冷立形エンジン
(51)【国際特許分類】
F02F 1/10 20060101AFI20180913BHJP
F02F 1/14 20060101ALI20180913BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
F02F1/10 C
F02F1/14 D
F01P3/02 M
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-62136(P2015-62136)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-180391(P2016-180391A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】鍬崎 寛
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−013440(JP,A)
【文献】
特開2005−256660(JP,A)
【文献】
特開2005−282509(JP,A)
【文献】
特開平07−127520(JP,A)
【文献】
特開2007−309221(JP,A)
【文献】
特開2008−286038(JP,A)
【文献】
実開昭55−006433(JP,U)
【文献】
特開2007−085264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/10
F02F 1/14
F01P 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック(3)とスペーサ(4)とシリンダヘッド(12)を備え、シリンダブロック(3)は、シリンダバレル(1a)(1b)とブロック側ウォータジャケット(2)を内蔵し、ブロック側ウォータジャケット(2)は、シリンダバレル(1a)(1b)の周囲に形成され、クランク軸中心軸線(13)の軸長方向を前後方向、前後方向の一方を前、他方を後として、ブロック側ウォータジャケット(2)は、前部に後向きのエンジン冷却水入口(11)を備え、スペーサ(4)は、ウォータジャケット(2)内に収容され、シリンダバレル(1a)(1b)を周囲から取り囲み、
シリンダヘッド(12)はヘッド側ウォータジャケット(14)を内蔵し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)は、下方のブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)と連通された水冷立形エンジンにおいて、
冷却水ガイド通路(15)を備え、冷却水ガイド通路(15)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)に設けられ、通路入口(15a)(15a)と通路出口(15b)を備え、シリンダバレル中心軸線(1c)(1d)と平行な向きに見て、前後方向と直交する向きを左右方向として、通路入口(15a)(15a)は、通路出口(15b)よりも左右前側で、ブロック側ウォータジャケット(2)の前側に向けて開口され、通路出口(15b)は、通路入口(15a)(15a)よりも上側で、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に向けて開口され、
冷却水ガイド通路(15)は、スペーサ(4)に形成され、
スペーサ(4)は、前後端部に上向きの突起(4a)(4b)を備え、スペーサ(4)の下端部(4c)はウォータジャケット(2)の内底部(2b)に当接され、各突起(4a)(4b)を介して、スペーサ(4)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の内底部(2b)とシリンダヘッド(12)の下面との間に挟まれて上下方向の位置決めがなされている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載された水冷立形エンジンにおいて、
シリンダバレル中心軸線(1c)(1d)と平行な向きに見て、後端部の一対の突起(4b)(4b)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端の円弧に沿う円弧状に形成され、通路出口(15b)の左右前側で、通路出口(15b)よりも高い位置まで突出され、間に隙間(4d)を保持している、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された水冷立形エンジンにおいて、
シリンダバレル(1a)(1b)は前後方向に並べて複数配置され、
各シリンダバレル(1a)(1b)の左右で、シリンダバレル(1a)(1b)とスペーサ(4)との間に挟圧材(5)(5)が挟圧されている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項4】
請求項3に記載された水冷立形エンジンにおいて、
挟圧材(5)の下端部(5a)は、上死点位置にあるピストン(6)の左右のスカート部(7)の下端部(7a)よりも高い位置に配置されている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された水冷立形エンジンにおいて、
挟圧材(5)の下端部(5a)は、上死点位置にあるピストン(6)の左右のスカート部(7)にあるピストン最大径部分(7b)よりも高い位置に配置されている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載された水冷立形エンジンにおいて、
各挟圧材(5)の前端部(5b)は、この挟圧材(5b)を挟圧するシリンダバレル(1)に内嵌されたピストン(6)の左右のスカート部(7)の前端部(7c)よりも前寄りに配置され、上記挟圧材の後端部(5c)は、上記スカート部(7)の後端部(7d)よりも後寄りに配置されている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項7】
請求項6に記載された水冷立形エンジンにおいて、
各挟圧材(5)は、その左右両側面(5e)(5f)が全長に亘って、シリンダバレル(1a)1b)とウォータジャケット(2)内のスペーサ(4)にそれぞれ接し、
前後方向で隣り合うシリンダボア間の上部にシリンダボア間を左右方向に横断する冷却水導入隙間(3a)が設けられ、前側の挟圧材(5)の後端部(5c)は、冷却水導入隙間(3a)よりも前寄りに配置され、後側の挟圧材(5)の前端部(5b)は、冷却水導入隙間(3a)よりも後ろ寄りに配置されることにより、冷却水導入隙間(3a)の左右下方には、挟圧材(5)(5)の無いウォータジャケット(2)の挟圧材不在箇所(2a)(2a)が設けられている、ことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載された水冷立形エンジンにおいて、
ブロック側ウォータジャケット(2)のエンジン冷却水入口(11)は、後方に進むにつれて左右方向に広がる形状とされている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項9】
請求項8に記載された水冷立形エンジンにおいて、
冷却水分流面(16)を備え、冷却水分流面(16)は、ブロック側ウォータジャケット(2)のエンジン冷却水入口(11)と対向する位置で、シリンダバレル(1a)に形成され、後方に進むにつれて左右方向に広がる形状とされている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載されたエンジンのシリンダヘッド冷却装置において、
冷却水ガイド通路(15)は、区画壁(15c)で左右に区画されている、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷立形エンジンに関し、詳しくは、シリンダヘッドの後部の過熱を抑制することができる水冷立形エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水冷立形エンジンとして、次のものがある(例えば、特許文献1参照)。
シリンダブロックとスペーサとシリンダヘッドを備え、シリンダブロックは、シリンダバレルとブロック側ウォータジャケットを内蔵し、ブロック側ウォータジャケットは、シリンダバレルの周囲に形成され、クランク軸中心軸線の軸長方向を前後方向、前後方向の一方を前、他方を後として、ブロック側ウォータジャケットは、前部に後向きのエンジン冷却水入口を備え、スペーサは、ウォータジャケット内に収容され、シリンダバレルを周囲から取り囲み、シリンダヘッドはヘッド側ウォータジャケットを内蔵し、ヘッド側ウォータジャケットの後端部は、下方のブロック側ウォータジャケットの後端部と連通された水冷立形エンジン。
【0003】
この種の水冷立形エンジンによれば、スペーサでブロック側ウォータジャケット内のエンジン冷却水の流れを制限して、シリンダバレルの過冷却を抑制することができる利点がある。
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、スペーサによる流れの制限のため、ヘッド側ウォータジャケットの後端部にエンジン冷却水が回りにくいにも拘わらず、ここにエンジン冷却水を導く手段がないため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−36741号公報(
図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 シリンダヘッドの後部が過熱しやすい。
特許文献1のものでは、スペーサによる流れの制限のため、ヘッド側ウォータジャケットの後端部にエンジン冷却水が回りにくいにも拘わらず、この後端部にエンジン冷却水を導く手段がないため、この後端部にエンジン冷却水のよどみが形成され、シリンダヘッドの後部が過熱しやすい。
【0007】
本発明の課題は、シリンダヘッドの後部の過熱を抑制することができる水冷立形エンジンを提供することにある。
【0008】
本発明の発明者らは、研究の結果、冷却水ガイド通路をブロック側ウォータジャケットの後端部に設け、冷却水ガイド通路の通路入口を通路出口よりも前側で開口し、通路出口は通路入口よりも上側で、ブロック側ウォータジャケットの後端部に向けて開口すれば、シリンダヘッドの後部の過熱を抑制できることを発見し、この発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図3に例示するように、シリンダブロック(3)とスペーサ(4)とシリンダヘッド(12)を備え、
図1に例示するように、シリンダブロック(3)は、シリンダバレル(1a)(1b)とブロック側ウォータジャケット(2)を内蔵し、ブロック側ウォータジャケット(2)は、シリンダバレル(1a)(1b)の周囲に形成され、クランク軸中心軸線(13)の軸長方向を前後方向、前後方向の一方を前、他方を後として、ブロック側ウォータジャケット(2)は、前部に後向きのエンジン冷却水入口(11)を備え、スペーサ(4)は、ウォータジャケット(2)内に収容され、シリンダバレル(1a)(1b)を周囲から取り囲み、
図3に例示するように、シリンダヘッド(12)はヘッド側ウォータジャケット(14)を内蔵し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)は、下方のブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)と連通された水冷立形エンジンにおいて、
図1に例示するように、冷却水ガイド通路(15)を備え、冷却水ガイド通路(15)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)に設けられ、通路入口(15a)(15a)と通路出口(15b)を備え、
シリンダバレル中心軸線(1c)(1d)と平行な向きに見て、前後方向と直交する向きを左右方向として、通路入口(15a)(15a)は、通路出口(15b)よりも左右前側で、ブロック側ウォータジャケット(2)の前側に向けて開口され、
図4(B)(D)に例示するように、通路出口(15b)は、通路入口(15a)(15a)よりも上側で、
図3に例示するように、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に向けて
開口され、
図4(A)〜(D)に例示するように、冷却水ガイド通路(15)は、スペーサ(4)に形成され、
スペーサ(4)は、前後端部に上向きの突起(4a)(4b)を備え、図2,図3に例示するように、スペーサ(4)の下端部(4c)はウォータジャケット(2)の内底部(2b)に当接され、各突起(4a)(4b)を介して、スペーサ(4)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の内底部(2b)とシリンダヘッド(12)の下面との間に挟まれて上下方向の位置決めがなされ、
図1に例示するように、シリンダバレル中心軸線(1c)(1d)と平行な向きに見て、後端部の一対の突起(4b)(4b)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端の円弧に沿う円弧状に形成され、図4(A)〜(D)に例示するように、通路出口(15b)の左右前側で、通路出口(15b)よりも高い位置まで突出され、間に隙間(4d)を保持している、ことを特徴とする水冷立形エンジン。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 シリンダヘッドの後部の過熱を抑制することができる。
図1に例示するように、エンジン冷却水入口(11)からブロック側ウォータジャケット(2)に流入したエンジン冷却水(17)の後向きの流れは、スペーサ(4)で制限を受けるが、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)に近づいたエンジン冷却水(17)は、前寄りの通路入口(15a)(15a)に流入し、冷却水ガイド通路(15)の案内で、後寄りの通路出口(15b)まで導かれ、
図3に例示するように、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するため、この後端部(14a)にエンジン冷却水(17)が導かれ、この後端部(14a)にエンジン冷却水(17)のよどみが形成されず、シリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制することができる。
すなわち、ブロック側ウォータジャケットの後端部に冷却水ガイド通路がない場合には、エンジン冷却水がヘッド側ウォータジャケットの後端部の手前に浮上し、この後端部に到達せず、この後端部にエンジン冷却水のよどみが形成され、シリンダヘッドの後部の過熱を抑制することができない不具合があるのに対し、本発明では、エンジン冷却水(17)が冷却水ガイド通路(15)の案内で、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するため、上記不具合が生じないのである。
【0011】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ブロック側ウォータジャケットへの冷却水ガイド通路の組み込みが容易になる。
図4(A)〜(D)に例示するように、冷却水ガイド通路(15)は、スペーサ(4)に形成されているので、
図1,
図3に例示するように、ブロック側ウォータジャケット(2)にスペーサ(4)を収容すれば、同時に、ブロック側ウォータジャケット(2)に冷却水ガイド通路(15)が組み込まれ、ブロック側ウォータジャケット(2)への冷却水ガイド通路(15)の組み込みが容易になる。
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》スペーサ(4)が挟圧材(5)(5)を介してシリンダバレル(1a)(1b)に強固に固定される。
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》ピストンスラップ音の放出を低減することができる。
その理由は、次のようなものと推定される。すなわち、ピストン(6)の首振りにより、左右のスカート部(7)の下端部(7a)付近で生じたピストンスラップ音は、挟圧材(5)による遮音で、シリンダヘッド(12)側に抜けにくく、ピストンスラップ音の放出が低減される。
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
その理由は、次のように推定される。すなわち、ピストン(6)の首振りにより、ピストン最大径部分(7b)付近で発生した大きなスラップ音が、挟圧材(5)による遮音で、シリンダヘッド(12)側に抜けにくく、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
(請求項6,7に係る発明)
請求項6,7に係る発明は、請求項3から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
その理由は、次のように推定される。すなわち、ピストン(6)の首振りにより、ピストン(6)の左右のスカート部(7)の前端部(7c)付近で発生したピストンスラップ音が、スカート部(7)の前端部(7c)よりも前寄りに張り出した挟圧材(5)の前端部(5b)の遮音でシリンダヘッド(12)側に抜けにくいとともに、ピストン(6)の左右のスカート部(7)の後端部(7d)付近で発生したピストンスラップ音が、スカート部(7)の後端部(7d)よりも後寄りに張り出した挟圧材(5)の後端部(5c)の遮音でシリンダヘッド(12)側に抜けにくく、挟圧材(5)による遮音で、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
【0012】
(
請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、
請求項1から請求項7のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 シリンダヘッドの後部の過熱を抑制する機能が高まる。
図1に例示するように、ブロック側ウォータジャケット(2)のエンジン冷却水入口(11)は、後方に進むにつれて左右方向に広がる形状とされているので、エンジン冷却水入口(11)からブロック側ウォータジャケット(2)に流入するエンジン冷却水(17)は左右方向にスムーズに分流し、冷却水ガイド通路(15)の通路入口(15a)(15a)へのエンジン冷却水(17)の流入量が増加し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するエンジン冷却水(17)の量が増加し、
図3に例示するシリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制する機能が高まる。
【0013】
(
請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明は、
請求項8に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 シリンダヘッドの後部の過熱を抑制する機能が高まる。
図1に例示するように、冷却水分流面(16)を備え、冷却水分流面(16)は、ブロック側ウォータジャケット(2)のエンジン冷却水入口(11)と対向する位置で、シリンダバレル(1a)に形成され、後方に進むにつれて左右方向に広がる形状とされているので、エンジン冷却水入口(11)からブロック側ウォータジャケット(2)に流入するエンジン冷却水(17)は左右方向にスムーズに分流し、冷却水ガイド通路(15)の通路入口(15a)(15a)へのエンジン冷却水(17)の流入量が増加し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するエンジン冷却水(17)の量が増加し、
図3に例示するシリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制する機能が高まる。
【0014】
(
請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明は、
請求項1から請求項9のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 シリンダヘッドの後部の過熱を抑制する機能が高まる。
図4(D)に例示するように、冷却水ガイド通路(15)は、区画壁(15c)で左右に区画されているので、左右の通路入口(15a)(15a)から流入したエンジン冷却水(17)(17)が冷却水ガイド通路(15)内で干渉することなく、区画壁(15c)に沿ってスムーズに浮上し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するエンジン冷却水(17)の量が増加し、
図3に例示するシリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制する機能が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る水冷立形エンジンで用いるスペーサを収容したシリンダブロックの平面図である。
【
図4】
図1のエンジンで用いるスペーサを説明する図で、
図4(A)は平面図、
図4(B)は
図4(A)のB方向矢視図、
図4(C)は
図4(A)のC方向矢視図、
図4(D)はスペーサの変形例の
図4(C)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図4は本発明の実施形態に係る水冷立形エンジンを説明する図であり、この実施形態では、水冷立形直列2気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0017】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図3に示すように、シリンダブロック(3)とスペーサ(4)とシリンダヘッド(12)を備え、
図1に示すように、シリンダブロック(3)は、シリンダバレル(1a)(1b)とブロック側ウォータジャケット(2)を内蔵し、ブロック側ウォータジャケット(2)は、シリンダバレル(1a)(1b)の周囲に形成され、クランク軸中心軸線(13)の軸長方向を前後方向、前後方向の一方を前、他方を後として、ブロック側ウォータジャケット(2)は、前部に後向きのエンジン冷却水入口(11)を備え、スペーサ(4)は、ウォータジャケット(2)内に収容され、シリンダバレル(1a)(1b)を周囲から取り囲んでいる。
図3に示すように、シリンダヘッド(12)はヘッド側ウォータジャケット(14)を内蔵し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)は、下方のブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)と連通されている。
このため、スペーサ(4)でブロック側ウォータジャケット(2)内のエンジン冷却水(17)の流れを制限して、シリンダバレル(1a)(1b)の過冷却を抑制することができる。
【0018】
シリンダブロック(3)は、アルミダイカスト製で、
図2に示すように、シリンダバレル(1a)(1b)の内周面には鉄製のシリンダライナ(1e)が鋳包まれている。
図1に示すように、ウォータジャケット(2)は上方が全面開口されたオープンデッキとされている。
図1に示すように、シリンダバレル(1a)(1b)の外向き膨出部(1f)(1f)は、副燃焼室の噴口口金(図外)の受け座である。
図1,
図3に示すように、シリンダボア間の上部には冷却水導入隙間(3a)が設けられている。
シリンダヘッド(12)もアルミダイカスト製である。
【0019】
図1に示すように、クランク軸中心軸線(13)の軸長方向を前後方向、シリンダバレル中心軸線(1c)(1d)と平行な向きに見て、前後方向と直交するシリンダブロック(3)の幅方向を左右方向として、
シリンダバレル(1a)(1b)は前後方向に並べて2本配置され、シリンダバレル
(1a)(1b)の左右で、シリンダバレル
(1a)(1b)とスペーサ(4)との間に挟圧材(5)(5)が挟圧されている。
このため、スペーサ(4)が挟圧材(5)(5)を介してシリンダバレル(1)(1)に強固に固定される。
【0020】
図3に示すように、シリンダブロック(3)の前部には水ポンプ(18)が組み付けられ、水ポンプ(18)から圧送されるエンジン冷却水(17)は、
図1に示すように、シリンダブロック(3)の前部のエンジン冷却水入口(11)から後向きに導入され、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)に向けて後向きに流れる。シリンダバレル(1a)(1b)の熱で加熱されたエンジン冷却水(17)は、浮上して、
図3に示すシリンダヘッド(12)のヘッド側ウォータジャケット(14)に流入し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の前端部に向けて前向きに流れ、前シリンダヘッド(12)の前端部に設けられたサーモスタットケース(図示せず)からラジエータ(図示せず)に流出する。
【0021】
図1に示すように、このエンジンは、冷却水ガイド通路(15)を備え、冷却水ガイド通路(15)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)に設けられ、通路入口(15a)(15a)と通路出口(15b)を備え、通路入口(15a)(15a)は、通路出口(15b)よりも左右前側で、ブロック側ウォータジャケット(2)の前側に向けて開口され、
図4(B)に示すように、通路出口(15b)は、通路入口(15a)(15a)よりも上側で、
図3に示すように、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に向けて開口されている。
このため、
図1に例示するように、エンジン冷却水入口(11)からブロック側ウォータジャケット(2)に流入したエンジン冷却水(17)の後向きの流れは、スペーサ(4)で制限を受けるが、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端部(2a)に近づいたエンジン冷却水(17)は、前寄りの通路入口(15a)(15a)に流入し、冷却水ガイド通路(15)の案内で、後寄りの通路出口(15b)まで導かれ、
図3に例示するように、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するため、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するエンジン冷却水(17)の量が増加し、シリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制することができる。
【0022】
図4(C)(D)に示すように、冷却水ガイド通路(15)の下半部は、左右幅が一定であるが、上半部は、上方に進むにつれて左右幅が次第に狭くなっている。このため、通路入口(15a)(15a)に流入したエンジン冷却水は、冷却水ガイド通路(15)の案内で、冷却水ガイド通路(15)の左右方向中央部の上部に形成された通路出口(15b)に浮上する。
【0023】
図1,
図3,
図4(A)〜(D)に示すように、冷却水ガイド通路(15)は、スペーサ(4)に形成されている。
このため、
図1,
図3に例示するように、ブロック側ウォータジャケット(2)にスペーサ(4)を収容すれば、同時に、ブロック側ウォータジャケット(2)に冷却水ガイド通路(15)が組み込まれ、ブロック側ウォータジャケット(2)への冷却水ガイド通路(15)の組み込みが容易になる。
図4(A)〜(D)に示すように、スペーサ(4)は、前後端部に上向きの突起(4a)(4b)を備え、図2,図3に示すように、スペーサ(4)の下端部(4c)はウォータジャケット(2)の内底部(2b)に当接され、各突起(4a)(4b)を介して、スペーサ(4)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の内底部(2b)とシリンダヘッド(12)の下面との間に挟まれて上下方向の位置決めがなされている。
図1に示すように、シリンダバレル中心軸線(1c)(1d)と平行な向きに見て、後端部の一対の突起(4b)(4b)は、ブロック側ウォータジャケット(2)の後端の円弧に沿う円弧状に形成され、図4(A)〜(D)に例示するように、通路出口(15b)の左右前側で、通路出口(15b)よりも高い位置まで突出され、間に隙間(4d)を保持している。
【0024】
図1に示すように、ブロック側ウォータジャケット(2)のエンジン冷却水入口(11)は、後方に進むにつれて左右方向に広がる形状とされている。
このため、エンジン冷却水入口(11)からブロック側ウォータジャケット(2)に流入するエンジン冷却水(17)は左右方向にスムーズに分流し、冷却水ガイド通路(15)の通路入口(15a)(15a)へのエンジン冷却水(17)の流入量が増加し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するエンジン冷却水(17)の量が増加し、
図3に示すシリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制する機能が高まる。
【0025】
図1に示すように、冷却水分流面(16)を備え、冷却水分流面(16)は、ブロック側ウォータジャケット(2)のエンジン冷却水入口(11)と対向する位置で、シリンダバレル(1a)に形成され、後方に進むにつれて左右方向に広がる形状とされている。
このため、エンジン冷却水入口(11)からブロック側ウォータジャケット(2)に流入するエンジン冷却水(17)は左右方向にスムーズに分流し、冷却水ガイド通路(15)の通路入口(15a)(15a)へのエンジン冷却水(17)の流入量が増加し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するエンジン冷却水(17)の量が増加し、
図3に例示するシリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制する機能が高まる。
【0026】
図4(D)はスペーサの変形例を説明する図で、
図4(C)に示すスペーサの基本例では、冷却水ガイド通路(15)は一連に形成されているが、
図4(D)に示すスペーサの変形例では、冷却水ガイド通路(15)は区画壁(15c)で左右に区画されている。
このため、
図4(D)に示すスペーサの変形例では、左右の通路入口(15a)(15a)から流入したエンジン冷却水(17)(17)が冷却水ガイド通路(15)内で干渉することなく、区画壁(15c)に沿ってスムーズに浮上し、ヘッド側ウォータジャケット(14)の後端部(14a)に浮上するエンジン冷却水(17)の量が増加し、
図3に例示するシリンダヘッド(12)の後部の過熱を抑制する機能が高まる。
【0027】
図2,
図3に示すように、挟圧材(5)の下端部(5a)は、上死点位置にあるピストン(6)の左右のスカート部(7)の下端部(7a)よりも高い位置に配置されている。このため、ピストンスラップ音の放出を低減することができる。
その理由は、次のようなものと推定される。すなわち、ピストン(6)の首振りにより、左右のスカート部(7)の下端部(7a)付近で生じたピストンスラップ音は、挟圧材(5)による遮音で、シリンダヘッド側に抜けにくく、ピストンスラップ音の放出が低減される。
【0028】
図2,
図3に示すように、挟圧材(5)の下端部(5a)は、上死点位置にあるピストン(6)の左右のスカート部(7)にあるピストン最大径部分(7b)よりも高い位置に配置されている。このため、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
その理由は、次のように推定される。すなわち、ピストン(6)の首振りにより、ピストン最大径部分(7b)付近で発生した大きなスラップ音が、挟圧材(5)による遮音で、シリンダヘッド(12)側に抜けにくく、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
【0029】
図1,
図3に示すように、挟圧材(5)の前端部(5b)は、この挟圧材(5)を挟圧するシリンダバレル(1)に内嵌されたピストン(6)の左右のスカート部(7)の前端部(7c)よりも前寄りに配置され、上記挟圧材の後端部(5c)は、上記スカート部(7)の後端部(7d)よりも後寄りに配置されている。このため、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
その理由は、次のように推定される。すなわち、ピストン(6)の首振りにより、ピストン(6)の左右のスカート部(7)の前端部(7c)付近で発生したピストンスラップ音が、スカート部(7)の前端部(7c)よりも前寄りに張り出した挟圧材(5)の前端部(5b)の遮音でシリンダヘッド側に抜けにくいとともに、ピストン(6)の左右のスカート部(7)の後端部(7d)付近で発生したピストンスラップ音が、スカート部(7)の後端部(7d)よりも後寄りに張り出した挟圧材(5)の後端部(5c)の遮音でシリンダヘッド側に抜けにくく、挟圧材(5)による遮音で、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
【0030】
図2,
図3に示すように、挟圧材(5)の上端部(5d)は、上死点位置にあるピストン(6)の圧力リング(9)の下端部(9a)よりも低い位置に配置されている。このため、圧力リング(9)からの放熱が挟圧材(5)で遮断されるのを防止することができる。
また、挟圧材(5)の上端部(5d)は、上死点位置にあるピストン(6)のオイルリング(10)の下端部(10a)よりも低い位置に配置されている。このため、オイルリング(10)からの放熱が挟圧材(5)で遮断されるのを防止することができる。
図1に示すように、各挟圧材(5)は、その左右両側面(5e)(5f)が全長に亘って、シリンダバレル(1a)1b)とウォータジャケット(2)内のスペーサ(4)にそれぞれ接している。
前後方向で隣り合うシリンダボア間の上部にシリンダボア間を左右方向に横断する冷却水導入隙間(3a)が設けられ、前側の挟圧材(5)の後端部(5c)は、冷却水導入隙間(3a)よりも前寄りに配置され、後側の挟圧材(5)の前端部(5b)は、冷却水導入隙間(3a)よりも後ろ寄りに配置されることにより、冷却水導入隙間(3a)の左右下方には、挟圧材(5)(5)の無いウォータジャケット(2)の挟圧材不在箇所(2a)(2a)が設けられている。
【0031】
挟圧材(5)は、弾性を有する樹脂で構成されている。具体的には、ウレタンフォームで構成されている。挟圧材(5)は、樹脂(発泡樹脂を含む)の他、ゴム(発泡ゴムを含む)で構成されていてもよい。
このように、挟圧材(5)は、弾性樹脂またはゴムで構成されているので、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
その理由は、次のように推定される。すなわち、ピストン(6)の首振りによりピストン(6)のスカート部(7)の下端部(7a)付近で発生した
ピストンスラップ音を、弾性樹脂またはゴムの挟圧材(5)が吸収するため、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
挟圧材(5)は、スペーサ(4)に取り付けられている。このため、挟圧材(5)を取り付けたスペーサ(4)をウォータジャケット(2)に押し込むだけで、シリンダバレル(1)(1)とスペーサ(4)との間に挟圧材(5)(5)を挟圧し、シリンダバレル(1)(1)にスペーサ(4)や挟圧材(5)(5)を容易に取り付けることができる。
【0032】
スペーサ(4)は、樹脂で構成されている。具体的には、ナイロンで構成されている。スペーサ(4)は、PPA(ポリフタルアミド)で構成してもよい。また、スペーサ(4)は、ゴム(例えば、ブチルゴム)で構成してもよい。
スペーサ(4)は、樹脂(発泡樹脂を含む)の他、ゴム(発泡ゴムを含む)、樹脂や金属の基材の表面にゴム層を形成した素材を用いることができる。
このように、スペーサ(4)は、樹脂、ゴム、基材の表面にゴム層を形成した素材のいずれかで構成されているので、ピストンスラップ音がスペーサ(4)の素材に吸収されやすく、ピストンスラップ音の放出を低減する機能が高い。
【0033】
図4(A)〜(D)に示すように、スペーサ(4)は、前後端部に上向きの突起(4a)(4b)が設けられ、
図2に示すように、スペーサ(4)の下端部(4c)はウォータジャケット(2)の内底部
(2b)に当接され、突起(4a)(4b)の上端部はシリンダヘッド(図外)に当接され、ブロック側ウォータジャケット(2)の内底部(2b)とシリンダヘッド(12)の下面とに挟まれて、スペーサ(4)は、上下方向の位置決めがなされている。
【符号の説明】
【0034】
(1a) シリンダバレル
(1b) シリンダバレル
(2) ブロック側ウォータジャケット
(3) シリンダブロック
(4) スペーサ
(11) エンジン冷却水入口
(12) シリンダヘッド
(13) クランク軸中心軸線
(14) ヘッド側ウォータジャケット
(14a) 後端部
(15) 冷却水ガイド通路
(15a) 通路入口
(15b) 通路出口
(15c) 区画壁
(16) 冷却水分流面