特許第6397792号(P6397792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397792
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20180913BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20180913BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A23L2/00 F
   A23L2/00 T
   A23L2/38 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-81254(P2015-81254)
(22)【出願日】2015年4月10日
(62)【分割の表示】特願2013-242397(P2013-242397)の分割
【原出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-126758(P2015-126758A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】中島 千絵
(72)【発明者】
【氏名】荒木 茂樹
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−132274(JP,A)
【文献】 特開2013−132272(JP,A)
【文献】 特開2005−015686(JP,A)
【文献】 特開平06−240288(JP,A)
【文献】 特開2004−339191(JP,A)
【文献】 特開2006−342062(JP,A)
【文献】 特開2004−339154(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/140342(WO,A1)
【文献】 関税中央分析所報,1989年,Vol.29,p.87-97
【文献】 J. Agric. Food Chem.,1997年,Vol.45,p.2638-2641
【文献】 Ecotoxicology and Environmental Safety,2011年,Vol.74,p.527-532
【文献】 Flavour and Fragrance Journal,1989年,Vol.4,p.187-191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/40
C12G 1/00−3/00
C12C 1/00−13/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対して濃度がppbとなるようにβ−caryophylleneを添加するか、又は炭酸水に対して濃度が0.5〜1ppbとなるようにβ−caryophylleneを添加する、飲用後に右脳の活動を活性化(興奮)させる水又は炭酸水の製造方法。
【請求項2】
ホップ香料を含有し、β−caryophylleneをppb含有する水、又はホップ香料を含有し、β−caryophylleneを0.5〜1ppb含有する炭酸水
【請求項3】
ホップ香料のみを含有し、β−caryophylleneをppb含有する水、又はホップ香料のみを含有し、β−caryophylleneを0.5〜1ppb含有する炭酸水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、右脳の活動活性化飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活の各場面において、単に味わったり、水分補給を行ったり、歓談時に共に味を楽しむという目的で、水、お茶、コーヒー、炭酸飲料、ジュース、ビール等の飲料を飲むことが行われてきた。また、水やお茶、炭酸水等の飲料に柑橘類等の果物等の香料を付与してなる飲料も多く市販されている。
また、特許文献1に記載されているようにバラ様の香りを伴ったフルーツ様の香りが付与されたビールテイスト飲料も知られている。
これらの飲料は、例えば気持ちを落ち着かせてリラックスをするためにも飲用されており、確かに、これらの飲料は、リラックスする等の心理面での効果を期待して飲用することが多いが、リラックスする状態は脳が比較的安静化された状態である。
【0003】
さらに、ビールに呈味が類似するノンアルコール飲料も市販されている。
ビールに呈味が類似するノンアルコール飲料の一部やビールには原料としてホップが使用されており、そのホップの香気成分がこれらの飲料の呈味を大きく左右していた。ビールに含有されるホップに由来する香気成分の濃度には一定の範囲があり、ビールに呈味を類似させるノンアルコール飲料においても、多くてもビールと同様のビールの呈味となるような濃度のホップ香気成分が含有されている。
これに関して、非特許文献1の第3表に記載されているように、ビールに特徴的な香りを付与するホップ由来成分として27種の香気成分が示された。また、第2表にはホップの品種によって異なるものの、ビールにβ−caryophyllene(β−カリオフィレン)が0.1〜0.3ppbの濃度で含有されていることが示されている。
また、非特許文献2の巻末の日本語Summaryには、ビール中に残存するホップ由来の香気成分が27種存在し、そのうち19種を同定できたことが記載され、さらに、第20頁表1−1には、日本で市販されているビール中の10種のテルペノイドの濃度一覧が示されており、そのうちβ−caryophylleneの濃度が0.19μg/Lであること、さらに第25頁の表1−3には実験のために試作したビールのβ−caryophylleneの濃度はホップの品種により異なり、0.1〜0.3μg/Lの範囲であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−29626号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】岸本徹 醸協第104巻第3号p157〜169「ビールに特徴的な香りを付与するホップ由来香気成分」
【非特許文献2】岸本徹 京都大学博士論文2008年「ビールに特徴的な香りを付与するホップ由来香気成分」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、飲料が気持ちを落ち着かせてリラックスをさせるという作用を有することは必要ではあるが、生活環境中にて常にリラックスすることが求められるのではなく、右脳を活性化(興奮)させて、より思考を深める等が要請されるときもある。
そのようなときにおいて、これまでの飲料は上記のように逆のリラックスをする効果を有していたり、あるいは気分転換等をさせるに留まっていたため、そのような効果ではない右脳を活性化(興奮)させることを目的とした飲料を提供することも求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記の手段を採用することにより上記の課題を解決することを見出した。
1.水及び炭酸水以外の飲料に対して濃度が0.5〜10ppbとなるようにβ−caryophylleneを添加する、飲料後に右脳の活動を活性化(興奮)させる飲料の製造方法。
2.飲料がフレーバードウォーター、フレーバード炭酸水、茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁含有飲料、ジュース、野菜飲料、ココア飲料、乳飲料及び発酵麦芽飲料のうちのいずれかである、1に記載の飲料後に右脳の活動を活性化(興奮)させる飲料の製造方法。
3.水及び炭酸水以外の飲料に対して濃度が0.5〜10ppbとなるようにβ−caryophylleneを添加して、飲料後に右脳の活動を活性化(興奮)させる方法。
4.β−caryophylleneを0.5〜10ppb含有する飲料(但し、水及び炭酸水を除く。)。
5.β−caryophylleneを0.5〜10ppb含有する、フレーバードウォーター、フレーバード炭酸水、茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁含有飲料、ジュース、野菜飲料、ココア飲料、乳飲料及び発酵麦芽飲料のうちのいずれかである4に記載の飲料。
6.リフレッシュ効果を有することを特徴とする4又は5に記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の飲料によれば、従来の飲料が有していた鎮静化作用によるリラックス効果とは全く異なる右脳の興奮作用により思考を深め、リフレッシュすることができるという効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】各物質別の右脳に対する効果
図2】水や炭酸水にβ−caryophylleneを添加したときの右脳に対する効果
図3】右脳の8.13Hz周波数出現率を示すグラフ
図4】水や炭酸水にβ−caryophyllene含有香料を添加したときの右脳に対する効果
図5】市販のノンアルコールビールや市販のビールに対するβ−caryophylleneを添加したときの右脳に対する効果
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の飲料は以下のように飲料とそれに含有されたβ−caryophylleneからなる。
そして以下に本発明の飲料について説明する。
(β−caryophyllene)
β−caryophyllene自体は、上記非特許文献2に記載されているように、ビールの原料であるホップに由来してビール中にせいぜい0.3ppbの濃度で含有されている物質である。
β−caryophylleneは、市販されているホップ香料から抽出することにより得ることができ、これを下記等の飲料に、0.5〜10ppbの濃度となるように添加することにより本発明の飲料を得ることができる。
そのため、例えば既にβ−caryophylleneを含有するノンアルコールビールやビールにβ−caryophylleneを添加する場合には、添加後の合計量が0.5〜10ppbの濃度となるようにする。
本発明の飲料において、β−caryophylleneの濃度が0.5ppb未満であると、飲料を飲んだ後の右脳の活性化が表れず、却って鎮静化することになり、濃度が10ppbを超えると、β−caryophylleneが有する墨汁様のフレーバー等が強くなりすぎ、飲料の呈味に悪影響を与えかねない。
【0011】
(飲料)
本発明においてβ−caryophylleneが0.5〜10ppbとなるように含有される対象の飲料としては、従来公知の飲料でよく、水、フレーバードウォーター、炭酸水、フレーバード炭酸水、ノンアルコールビール、ビール、茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、果汁含有飲料、ジュース、野菜飲料、ココア飲料、乳飲料等である。
本発明において、これらの飲料が含有できる他の成分としては、通常、これらの飲料が含有できる成分でよく、例えば、香料、着色料、甘味料、酸味料、香辛料、酸化防止剤、褐変防止剤等を含有させることができる。
【0012】
(本発明の飲料の製造方法)
本発明の飲料の製造方法としては特別なものではなく、ホップ香気成分、ホップ抽出物等からβ−caryophylleneを抽出しておき、これを上記の公知の飲料中のβ−caryophylleneの濃度が0.5〜10ppbとなるように、飲料又は飲料の原料に添加して得ることができる。
得られた本発明の飲料は、例えば瓶、PET等の樹脂製ボトル、アルミニウム缶、鋼製の缶、紙製容器等の飲料を充填することができる公知の容器内に充填することができる。
なお、上記公知の飲料として炭酸飲料を挙げて本発明の飲料の製造方法を説明する。
炭酸飲料の場合の製造方法は、まず炭酸飲料を得る方法としては通常の方法を適用すればよい。炭酸ガスは、飲料中にガス容量で1.0〜4.0vol%となるように加える。これは、20℃での炭酸ガス内圧が0.3〜2.8kg/cm2に相当する。
炭酸飲料の製造法の概略として、飲料水に適している水に、β−caryophylleneの所定量と、必要に応じて甘味料、酸味料(クエン酸)、ミネラル類(乳酸カルシウム、塩化カリウム)、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンC等)、呈苦味性低カロリー甘味料(ステビア甘味料)、香料、酸化防止剤などの適量を順次加えて調合し、飲料原液を調製する。
該飲料原液の調製前後に、必要に応じて脱気、殺菌処理を行ない、冷却する。
得られた飲料原液に所定のガス容量となるように炭酸ガスを混入したのち、容器に充填する。炭酸ガスを混入させる方法としては、例えば1〜5℃程度に冷却した飲料原液を、所定の炭酸ガス圧に保持されたタンク内に噴霧する。なお、ガス容量の調整は、飲料原液の流量を一定にし、タンク内の圧力をコントロールすることにより行う。
【実施例】
【0013】
(脳基礎律動リズム度測定方法)
健康な成人被験者について、安静時の脳波を測定し、次いで、各飲料100mlを摂取させ、摂取5分後の脳波を測定した。脳波の測定は、ひとセンシング社製HSK中枢リズムモニタシステムを用いて行った。測定した脳波を付属の解析ソフトにて解析して、各被験者の右脳基礎律動リズム度を得た。
【0014】
なお、右脳基礎律動リズム度とは、前頭部α波の周波数ゆらぎスペクトルの傾きの大きさ(0〜1)のことであり、右脳基礎律動リズム度は心理的な緊張の度合いと相関する。具体的には、右脳基礎律動リズム度は、心理的な緊張が緩和されるほど1に近づく。
例えば、(右脳基礎律動リズム度)>0.5の場合にはより鎮静化した状態を示し、(右脳基礎律動リズム度)<0.5の場合にはより興奮した状態を示す。
【0015】
(実施例1)
実施例1においては、ホップ香料に含まれるいくつかの物質について、これらを添加した飲料を飲用したときの右脳への影響を確認した。
ホップ香料に含有される4つの物質(isobutyl isobutanoate, γ-terpinene, β-caryophyllene, geranyl acetate )を用い、ホップ香料に含有されるこれら4つの物質の重量比を考慮して、それぞれの物質の添加量を該重量比を考慮し調整して炭酸水(ガス圧3.0vol%)に添加した。これらの物質を個別に添加してなる4種の炭酸水100mlそれぞれを7名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルA〜Dは以下の通り。
サンプルAはisobutyl isobutanoateを0.5ppb含有する炭酸水100ml
サンプルBはγ-terpineneを10ppb含有する炭酸水100ml
サンプルCはβ-caryophylleneを1ppb含有する炭酸水100ml
サンプルDはgeranyl acetateを30ppb含有する炭酸水100ml
これらの結果を図1の(A)〜(D)に示す。
【0016】
図1の(A)〜(D)に示す結果によると、isobutyl isobutanoateやγ-terpineneを添加したサンプル(A)及び(B)の炭酸水を飲用すると、飲用前よりも右脳基礎律動リズム度が若干低下して右脳の覚醒感が興奮寄りになったものの、ほとんど変化らしい変化ではない。
また、サンプル(D)の炭酸水を飲用すると飲用前より脳基礎律動リズム度が若干高くなり右脳の覚醒感が鎮静寄りになった。
これらに対して、本発明におけるβ-caryophylleneを添加したサンプル(C)の炭酸水を飲用すると、飲用前よりも明らかに右脳基礎律動リズム度が低下して右脳の覚醒感が興奮寄りになった。この結果は、β-caryophylleneを含有してなる飲料を飲用することにより、より右脳の活動が活性化(興奮)し、より思考を深め、リフレッシュされたことを示している。
【0017】
(実施例2)
実施例2においては、水と炭酸水の右脳に与える影響と、β-caryophylleneを含有する炭酸水のβ-caryophylleneの添加量による右脳への影響を確認した。これらの飲料100mlを7名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルE〜Hは以下の通り。
サンプルEは何も添加しない水100ml
サンプルFは何も添加しない炭酸水100ml
サンプルGはβ-caryophylleneを0.25ppb含有する炭酸水100ml
サンプルHはβ-caryophylleneを0.5ppb含有する炭酸水100ml
これらの結果を図2の(E)〜(H)に示す。
【0018】
水100mlを飲用すると、図2の(E)に示すように飲用前よりも鎮静化する効果が表れ、炭酸水100mlを飲用すると図2の(F)に示すように、水とは逆に若干興奮寄りの結果となった。
上記のように、右脳の活動を興奮寄りにする炭酸水に代えて、β-caryophylleneを0.25ppb含有する炭酸水を100ml飲用した結果である図2の(G)によれば、何も含有しない炭酸水の時の図2の(F)に示す結果とは逆に右脳の活動は若干鎮静化された結果となった。
ところが、β-caryophylleneの添加量を増加させ0.5ppbとした炭酸水を飲用した図2の(H)に示す結果によると、0.25ppbを炭酸水に添加した結果とは逆に、明らかに右脳の活動は興奮寄りとなった。この結果は、β-caryophylleneの添加量が0ppbに相当する図2の(F)と、0.25ppbを添加した結果である図2の(G)から予測される、より右脳の活動が鎮静化される効果とは明らかに逆の効果を示している。つまり、β-caryophylleneを飲料中に0.25ppbの濃度となるように添加しても、右脳を活性化(興奮)させる効果を得ることができないが、0.5ppbの濃度とすることにより右脳を活性化(興奮)させることができる。すなわち、β-caryophylleneを飲料中に0.5ppbの濃度となるように添加された飲料は、リフレッシュ効果を有することが明らかとなった。
【0019】
さらに、上記図2の結果を測定する際に右脳の8−13Hz周波数出現率を測定した。この結果を図3に示す。
サンプルE及びFに比べ、β-caryophylleneの含有量を0.25ppbとした炭酸水のサンプルGを100ml飲用すると右脳の8−13Hz周波数出現率が低下したが、β-caryophylleneの含有量を0.5ppbとしたサンプルHによると、逆に右脳の8−13Hz周波数出現率が高くなり、β-caryophylleneを含有させない炭酸水よりも明らかに高くなり、右脳にはより高い出現率で8−13Hz周波数の波、つまりα波が発生した。
これは、β-caryophylleneを0.5ppb以上含有する飲料を飲用すると、単に興奮するというよりは、より心地よい興奮を感じることを示している。
【0020】
(実施例3)
実施例3においては、水と炭酸水のそれぞれに対してβ-caryophyllene含有ホップ香料を添加した飲料を飲用したときの右脳に与える影響を確認した。これらの飲料100mlを8名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルI〜Lは以下の通り。
サンプルIは何も添加しない水100ml
サンプルJは何も添加しない炭酸水100ml
サンプルKはβ-caryophyllene含有ホップ香料が添加された水100ml
サンプルLはβ-caryophyllene含有ホップ香料が添加された炭酸水100ml
サンプルKとLの結果によれば、水や炭酸水にホップ香料を添加させると、それぞれ結果的にisobutyl isobutanoateを0.5ppb、γ-terpineneを10ppb、β-caryophylleneを1ppb、geranyl acetateを30ppb含有される。
これらの結果を図4の(I)〜(L)に示す。
【0021】
図4の(I)に示すように、水100mlを飲用した後には右脳への影響が殆ど見られなかった。この傾向は図4の(J)に示すように炭酸水100mlを飲用した場合においても同様であった。
これらの結果に対して、図4の(K)に示すβ-caryophyllene含有ホップ香料を含有し、β-caryophylleneを1ppb含有する水を飲用した結果、及び図4の(L)に示すβ-caryophyllene含有ホップ香料を含有し、β-caryophylleneを1ppb含有する炭酸水を飲用した結果は、いずれも飲用後に右脳の活動が活発化(興奮)されたことを示している。
さらに図1の(C)や図2の(H)の結果を総合してわかるように、ホップ香料ではなくβ-caryophylleneのみを添加した炭酸水に対しても右脳の活性化(興奮)の傾向に変わりない。
【0022】
(実施例4)
実施例4においては、ノンアルコールビール(市販品)とビール(市販品)に対してβ-caryophylleneを添加した飲料を飲用したときの右脳に与える影響をそれぞれ確認した。これらの飲料100mlを2名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルM〜Pは以下の通り。
サンプルMは何も添加しないノンアルコールビール(市販品、β-caryophylleneの濃度は上記非特許文献2の記載を考慮すると多くても0.1〜0.3ppb)100ml
サンプルNはサンプルMのノンアルコールビール(市販品)に、1.0ppb分のβ-caryophylleneを添加して、合計の濃度が1.1〜1.3ppbとしてなるノンアルコールビール100ml
サンプルOは何も添加しないビール(市販品、β-caryophylleneの濃度は上記非特許文献2の記載を考慮すると多くても0.1〜0.3ppb)100ml
サンプルPはサンプルOのビール(市販品)にβ-caryophylleneを1.0ppb分のβ-caryophylleneを添加して、合計の濃度が1.1〜1.3ppbとしてなるビール100ml
これらの結果を図5の(M)〜(P)に示す。
【0023】
市販のノンアルコールビールと市販のビールを飲用した場合には、図5の(M)と(O)に示すように右脳の活動は飲用前と比較して鎮静寄りになった。これらの市販のノンアルコールビールとビールは共にホップを使用しているので、上記非特許文献2によれば、ホップに由来するβ-caryophylleneを多くても0.1〜0.3ppb含有しているが、飲用するとこのように鎮静寄りであった。
これに対して、市販のノンアルコールビールと市販のビールそれぞれに対して、β-caryophylleneを1.1〜1.3ppbとなるように添加してなるサンプル(N)と(P)を100ml飲用すると、いずれも興奮する傾向がみられ、右脳の活動が活性化(興奮)されたことを示した。
【0024】
これらの実施例から理解できるように、市販のノンアルコールビールやビールにはβ-caryophylleneは含有されているが、その濃度は低く、その低濃度の飲料を飲用しても右脳の活動を興奮寄りにさせる効果は見られず、よってより活性化(興奮)させることがない。むしろ、右脳の活動を鎮静化させる作用を示す結果であった。
これに対して、本発明によれば、β-caryophylleneの濃度が0.5〜10ppbと高濃度であるため、上記の低濃度の飲料と比較して右脳の活動を鎮静化させる方向とは逆の興奮化させる作用を発揮し、その右脳の活動を活性化(興奮)させることができる効果を奏することが理解できる。
図1
図2
図3
図4
図5