【実施例】
【0013】
(脳基礎律動リズム度測定方法)
健康な成人被験者について、安静時の脳波を測定し、次いで、各飲料100mlを摂取させ、摂取5分後の脳波を測定した。脳波の測定は、ひとセンシング社製HSK中枢リズムモニタシステムを用いて行った。測定した脳波を付属の解析ソフトにて解析して、各被験者の右脳基礎律動リズム度を得た。
【0014】
なお、右脳基礎律動リズム度とは、前頭部α波の周波数ゆらぎスペクトルの傾きの大きさ(0〜1)のことであり、右脳基礎律動リズム度は心理的な緊張の度合いと相関する。具体的には、右脳基礎律動リズム度は、心理的な緊張が緩和されるほど1に近づく。
例えば、(右脳基礎律動リズム度)>0.5の場合にはより鎮静化した状態を示し、(右脳基礎律動リズム度)<0.5の場合にはより興奮した状態を示す。
【0015】
(実施例1)
実施例1においては、ホップ香料に含まれるいくつかの物質について、これらを添加した飲料を飲用したときの右脳への影響を確認した。
ホップ香料に含有される4つの物質(isobutyl isobutanoate, γ-terpinene, β-caryophyllene, geranyl acetate )を用い、ホップ香料に含有されるこれら4つの物質の重量比を考慮して、それぞれの物質の添加量を該重量比を考慮し調整して炭酸水(ガス圧3.0vol%)に添加した。これらの物質を個別に添加してなる4種の炭酸水100mlそれぞれを7名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルA〜Dは以下の通り。
サンプルAはisobutyl isobutanoateを0.5ppb含有する炭酸水100ml
サンプルBはγ-terpineneを10ppb含有する炭酸水100ml
サンプルCはβ-caryophylleneを1ppb含有する炭酸水100ml
サンプルDはgeranyl acetateを30ppb含有する炭酸水100ml
これらの結果を
図1の(A)〜(D)に示す。
【0016】
図1の(A)〜(D)に示す結果によると、isobutyl isobutanoateやγ-terpineneを添加したサンプル(A)及び(B)の炭酸水を飲用すると、飲用前よりも右脳基礎律動リズム度が若干低下して右脳の覚醒感が興奮寄りになったものの、ほとんど変化らしい変化ではない。
また、サンプル(D)の炭酸水を飲用すると飲用前より脳基礎律動リズム度が若干高くなり右脳の覚醒感が鎮静寄りになった。
これらに対して、本発明におけるβ-caryophylleneを添加したサンプル(C)の炭酸水を飲用すると、飲用前よりも明らかに右脳基礎律動リズム度が低下して右脳の覚醒感が興奮寄りになった。この結果は、β-caryophylleneを含有してなる飲料を飲用することにより、より右脳の活動が活性化(興奮)し、より思考を深め、リフレッシュされたことを示している。
【0017】
(実施例2)
実施例2においては、水と炭酸水の右脳に与える影響と、β-caryophylleneを含有する炭酸水のβ-caryophylleneの添加量による右脳への影響を確認した。これらの飲料100mlを7名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルE〜Hは以下の通り。
サンプルEは何も添加しない水100ml
サンプルFは何も添加しない炭酸水100ml
サンプルGはβ-caryophylleneを0.25ppb含有する炭酸水100ml
サンプルHはβ-caryophylleneを0.5ppb含有する炭酸水100ml
これらの結果を
図2の(E)〜(H)に示す。
【0018】
水100mlを飲用すると、
図2の(E)に示すように飲用前よりも鎮静化する効果が表れ、炭酸水100mlを飲用すると
図2の(F)に示すように、水とは逆に若干興奮寄りの結果となった。
上記のように、右脳の活動を興奮寄りにする炭酸水に代えて、β-caryophylleneを0.25ppb含有する炭酸水を100ml飲用した結果である
図2の(G)によれば、何も含有しない炭酸水の時の
図2の(F)に示す結果とは逆に右脳の活動は若干鎮静化された結果となった。
ところが、β-caryophylleneの添加量を増加させ0.5ppbとした炭酸水を飲用した
図2の(H)に示す結果によると、0.25ppbを炭酸水に添加した結果とは逆に、明らかに右脳の活動は興奮寄りとなった。この結果は、β-caryophylleneの添加量が0ppbに相当する
図2の(F)と、0.25ppbを添加した結果である
図2の(G)から予測される、より右脳の活動が鎮静化される効果とは明らかに逆の効果を示している。つまり、β-caryophylleneを飲料中に0.25ppbの濃度となるように添加しても、右脳を活性化(興奮)させる効果を得ることができないが、0.5ppbの濃度とすることにより右脳を活性化(興奮)させることができる。すなわち、β-caryophylleneを飲料中に0.5ppbの濃度となるように添加された飲料は、リフレッシュ効果を有することが明らかとなった。
【0019】
さらに、上記
図2の結果を測定する際に右脳の8−13Hz周波数出現率を測定した。この結果を
図3に示す。
サンプルE及びFに比べ、β-caryophylleneの含有量を0.25ppbとした炭酸水のサンプルGを100ml飲用すると右脳の8−13Hz周波数出現率が低下したが、β-caryophylleneの含有量を0.5ppbとしたサンプルHによると、逆に右脳の8−13Hz周波数出現率が高くなり、β-caryophylleneを含有させない炭酸水よりも明らかに高くなり、右脳にはより高い出現率で8−13Hz周波数の波、つまりα波が発生した。
これは、β-caryophylleneを0.5ppb以上含有する飲料を飲用すると、単に興奮するというよりは、より心地よい興奮を感じることを示している。
【0020】
(実施例3)
実施例3においては、水と炭酸水のそれぞれに対してβ-caryophyllene含有ホップ香料を添加した飲料を飲用したときの右脳に与える影響を確認した。これらの飲料100mlを8名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルI〜Lは以下の通り。
サンプルIは何も添加しない水100ml
サンプルJは何も添加しない炭酸水100ml
サンプルKはβ-caryophyllene含有ホップ香料が添加された水100ml
サンプルLはβ-caryophyllene含有ホップ香料が添加された炭酸水100ml
サンプルKとLの結果によれば、水や炭酸水にホップ香料を添加させると、それぞれ結果的にisobutyl isobutanoateを0.5ppb、γ-terpineneを10ppb、β-caryophylleneを1ppb、geranyl acetateを30ppb含有される。
これらの結果を
図4の(I)〜(L)に示す。
【0021】
図4の(I)に示すように、水100mlを飲用した後には右脳への影響が殆ど見られなかった。この傾向は
図4の(J)に示すように炭酸水100mlを飲用した場合においても同様であった。
これらの結果に対して、
図4の(K)に示すβ-caryophyllene含有ホップ香料を含有し、β-caryophylleneを1ppb含有する水を飲用した結果、及び
図4の(L)に示すβ-caryophyllene含有ホップ香料を含有し、β-caryophylleneを1ppb含有する炭酸水を飲用した結果は、いずれも飲用後に右脳の活動が活発化(興奮)されたことを示している。
さらに
図1の(C)や
図2の(H)の結果を総合してわかるように、ホップ香料ではなくβ-caryophylleneのみを添加した炭酸水に対しても右脳の活性化(興奮)の傾向に変わりない。
【0022】
(実施例4)
実施例4においては、ノンアルコールビール(市販品)とビール(市販品)に対してβ-caryophylleneを添加した飲料を飲用したときの右脳に与える影響をそれぞれ確認した。これらの飲料100mlを2名の被験者が飲用し、飲用前後の右脳の脳波を測定した。その脳波の測定結果から飲用前後の右脳基礎律動リズム度(覚醒感)を求めた。被験者が飲用した飲料のサンプルM〜Pは以下の通り。
サンプルMは何も添加しないノンアルコールビール(市販品、β-caryophylleneの濃度は上記非特許文献2の記載を考慮すると多くても0.1〜0.3ppb)100ml
サンプルNはサンプルMのノンアルコールビール(市販品)に、1.0ppb分のβ-caryophylleneを添加して、合計の濃度が1.1〜1.3ppbとしてなるノンアルコールビール100ml
サンプルOは何も添加しないビール(市販品、β-caryophylleneの濃度は上記非特許文献2の記載を考慮すると多くても0.1〜0.3ppb)100ml
サンプルPはサンプルOのビール(市販品)にβ-caryophylleneを1.0ppb分のβ-caryophylleneを添加して、合計の濃度が1.1〜1.3ppbとしてなるビール100ml
これらの結果を
図5の(M)〜(P)に示す。
【0023】
市販のノンアルコールビールと市販のビールを飲用した場合には、
図5の(M)と(O)に示すように右脳の活動は飲用前と比較して鎮静寄りになった。これらの市販のノンアルコールビールとビールは共にホップを使用しているので、上記非特許文献2によれば、ホップに由来するβ-caryophylleneを多くても0.1〜0.3ppb含有しているが、飲用するとこのように鎮静寄りであった。
これに対して、市販のノンアルコールビールと市販のビールそれぞれに対して、β-caryophylleneを1.1〜1.3ppbとなるように添加してなるサンプル(N)と(P)を100ml飲用すると、いずれも興奮する傾向がみられ、右脳の活動が活性化(興奮)されたことを示した。
【0024】
これらの実施例から理解できるように、市販のノンアルコールビールやビールにはβ-caryophylleneは含有されているが、その濃度は低く、その低濃度の飲料を飲用しても右脳の活動を興奮寄りにさせる効果は見られず、よってより活性化(興奮)させることがない。むしろ、右脳の活動を鎮静化させる作用を示す結果であった。
これに対して、本発明によれば、β-caryophylleneの濃度が0.5〜10ppbと高濃度であるため、上記の低濃度の飲料と比較して右脳の活動を鎮静化させる方向とは逆の興奮化させる作用を発揮し、その右脳の活動を活性化(興奮)させることができる効果を奏することが理解できる。