(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397796
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】食品液加熱殺菌方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A23L 3/22 20060101AFI20180913BHJP
【FI】
A23L3/22
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-101824(P2015-101824)
(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-214130(P2016-214130A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190677
【氏名又は名称】新光産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】木原 均
【審査官】
伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−044962(JP,A)
【文献】
特開2012−187037(JP,A)
【文献】
特開2012−100572(JP,A)
【文献】
特開2010−002100(JP,A)
【文献】
国際公開第99/021442(WO,A1)
【文献】
特開平10−262628(JP,A)
【文献】
特開平09−250705(JP,A)
【文献】
特開平05−076330(JP,A)
【文献】
実開平04−092102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00
A23L 5/00
A23L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲形成された内管と、該内管を囲む外管とを有する加熱器を用い、前記内管に食品液を流し、前記外管の入口側に高温蒸気を供給すると共に、前記外管の出口側から、高圧流水によってその周囲に負圧を発生させるエジェクターを用いて真空吸引を行い、前記加熱器の温度を制御する食品液加熱殺菌方法において、
前記エジェクターで、吸引された蒸気と前記高圧流水が一体化して加温された水と、前記加熱器に供給される前の前記食品液との熱交換を行い、前記エジェクターから排出された前記水の冷却と、前記食品液の加熱を同時に行うことを特徴とする食品液加熱殺菌方法。
【請求項2】
加熱殺菌しようとする食品液を流す内管、及び該内管を囲む外管を有する加熱器と、前記外管の入口側に高温蒸気を供給する高温蒸気発生源と、前記外管の出口側に接続されて、高圧流水によってその周囲に負圧を発生させ、真空吸引により前記外管内の圧力を制御するエジェクターとを備えた食品液加熱殺菌装置において、
前記エジェクターで、吸引された蒸気と前記高圧流水が一体化して加温された水と、前記加熱器に供給される前の前記食品液との熱交換を行う加熱用熱交換器を設け、前記水の温度上昇を防止し、かつ前記食品液の加熱を行うことを特徴とする食品液加熱殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品液の加熱殺菌方法及び装置に係り、例えばドレッシング、調味液等の低温殺菌を連続的に行うのに適した食品液加熱殺菌方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のように、食品液はビンや缶等の容器に充填される前に加熱殺菌が行われている。そして、特許文献2には、殺菌機の入口側に真空蒸気制御弁を設け、出口側に吸引手段を設けて、真空蒸気制御弁で殺菌機に供給する蒸気を大気圧以下の真空蒸気とすると共に、吸引手段で殺菌機内を所定の減圧状態に維持して、大気圧以下の蒸気、即ち100℃以下の低温蒸気を殺菌機内に安定に供給して、食品を100℃以下の品質劣化を来すことのない蒸気温度で殺菌することが行われている。
また、特許文献2には、吸引手段として、循環ポンプとエジェクターを組み合わせたエジェクター式の真空ポンプを使用することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−98734号公報
【特許文献2】特開平11−332532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2記載の技術は、殺菌機が密封タンクであるので、食品を連続的に低温殺菌できるものではない。
また、エジェクターへの水は循環使用しているが、殺菌機によって使用された高温蒸気も混入するので、徐々に温度上昇する。勿論途中で温度上昇した水を廃棄し、タンクに水を入れることも可能であるが水及び熱の有効利用がなされていない。
更には、殺菌機内に搬送される食品は、前もって予熱されているわけではないので、加熱殺菌に時間がかかるという問題がある。
【0005】
また、
図3に示すように、熱交換器を用いその加熱源に温水を用いて食品液を加熱する方法も行われている。この食品液加熱殺菌装置60は、内管61、外管62、及びフランジ63〜66を有する熱交換器を用い、内管61内に食品液を流し、外管62内に温水を流して食品液の適正温度の加熱殺菌を行っている。ここで、68は循環ポンプを、69は温水の加熱装置を示す。
【0006】
ところが、この装置60においては、下流側に設けられている食品液の充填装置にトラブル等が発生した場合、熱交換器から温水を抜くのに時間がかかり、必要以上に食品液が加熱されてしまうという問題があった。また、温水を用いるので、その装置60及び温水の温度上昇に時間がかかるという問題があった。
更に、特許文献1記載の技術においても、同様な問題があった。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、装置全体の応答性を高めて、全体の熱効率を向上させた食品液加熱殺菌方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る食品液加熱殺菌方法は、屈曲形成された内管と、該内管を囲む外管とを有する加熱器を用い、前記内管に食品液を流し、前記外管の入口側に高温蒸気を供給すると共に
、前記外管の出口側
から、高圧流水によってその周囲に負圧を発生させるエジェクターを用いて真空吸引(減圧吸引)を行い、前記加熱器の温度を制御する食品液加熱殺菌方法において、
前記エジェクターで、吸引された蒸気と前記高圧流水が一体化して加温された水と
、前記加熱器に供給される前の前記食品液との熱交換を行い、
前記エジェクターから排出された前記水の冷却と、前記食品液の加熱を同時に行う。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る食品液加熱殺菌装置は、加熱殺菌しようとする食品液を流す内管、及び該内管を囲む外管を有する加熱器と、前記外管の入口側に高温蒸気を供給する高温蒸気発生源と、前記外管の出口側に接続されて、
高圧流水によってその周囲に負圧を発生させ、真空吸引により前記外管内の圧力を制御するエジェクターとを備えた食品液加熱殺菌装置において、
前記エジェクターで、吸引された蒸気と前記高圧流水が一体化して加温された水と
、前記加熱器に供給される前の前記食品液との熱交換を行う加熱用熱交換器を設け、前記水の温度上昇を防止し、かつ前記食品液の加熱を行う。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る食品液加熱殺菌方法、及び第2の発明に係る食品液加熱殺菌装置においては、加熱器の加熱源に高温蒸気を用い、しかも、加熱器の出口側にはエジェクターを接続しているので、加熱器内の圧力を制御し、加熱温度を調整できる。
この場合、加熱源は蒸気であって、温水に比較して残存する熱量が小さく、食品液加熱殺菌装置の事故対応をする場合の応答性が速い。
なお、前記加熱器は直列又は並列に配置された複数の加熱器から構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る食品液加熱殺菌装置のブロック図である。
【
図3】比較する従来例に係る食品液加熱殺菌装置の部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る食品液加熱殺菌装置10は、食品液(例えば、調味液)を加熱殺菌する加熱器11を有している。この加熱器11は、内管12とその主要部の外側を囲む外管13とを有する熱交換器11aからなっている。
【0013】
加熱器11の外管13は筒状となって、
図2に示すように、両端部にフランジ(端板)14、15を有し、このフランジ14、15にはフランジ14、15を挿通する内管12の直管部に連接するUベンド17、18が複数設けられ、接続フランジ19、20が連結されて、熱交換器11a内にジグザグ状に折り返し配置(屈曲形成)された内管12を形成している。なお、この熱交換器11aの構造については、例えば、特許第5358660号公報に開示されている。また、複数の熱交換器11aを直列又は並列に接続して、一つの加熱器とすることもできる。
【0014】
外管13の一側端部(入口側)の上位置には、高温蒸気を入れる蒸気入口21が設けられ、外管13の他側端部(出口側)の下位置には、高温蒸気(及び水)を排出する蒸気出口22が設けられている。
【0015】
加熱器11の蒸気出口22には図示しない逆止弁を介してエジェクター24が接続されている。エジェクター24は、高圧流水の周囲に負圧を発生させ、蒸気出口22からの蒸気を真空吸引するもので、真空ポンプと同様な働きをする。なお、吸引された蒸気は高圧流水と一体化し水となる。吸引される蒸気は高温蒸気であるから、高圧流水を加温することになる。このエジェクター24によって、外管13内の圧力を制御(加熱)して、加熱器11の蒸気温度を例えば90℃より低い70〜80℃に制御している。
【0016】
エジェクター24からの水は、タンク25に送られ、ポンプ26を介して、直列接続された食品液の加熱用熱交換器27に送られ、加熱用熱交換器27で冷却されてエジェクター24に供給される。
【0017】
一方、加熱器11を構成する熱交換器11aに供給する高温蒸気は、高温蒸気を発生する蒸気源(高温蒸気発生源)29(0.02MPa)から供給を受けて、ストレーナーを通って、バルブ、減圧弁、止めバルブ、流量調整弁(蒸気バルブ38)、バルブ、逆止弁を備えた蒸気機器を経て、蒸気入口21に供給される。蒸気入口21の蒸気温度は70〜80℃になるように蒸気機器及びエジェクター24の吸引圧力を調整している。
【0018】
食品液は最初食品液タンク31に貯留され、ポンプ32を介して加熱用熱交換器27に供給され、タンク25(エジェクター24からの水)の水と熱交換される。この加熱用熱交換器27によって、食品液は加熱され、タンク25の水は冷やされ、温度上昇を防止している。
【0019】
加熱用熱交換器27で予備加熱された食品液は熱交換器11aの内管12内を流れて加熱殺菌される。熱交換器11aを出た食品液は、必要な場合、図示しない保温ユニットに供給される。保温ユニットの出口には切り換えバルブ33があり、必要でない食品液を食品液タンク31に戻す場合と、食品液を外部に流す場合の選択ができる。
【0020】
従って、この実施の形態に係る食品液加熱殺菌方法及びその装置においては、熱交換器11a内に屈曲形成された内管12に食品液を流し、内管12を囲む外管13によって所定温度の蒸気加熱を行い、加熱殺菌された食品液を図示しない充填装置に搬送する。
この場合、エジェクター24を通過する圧力流水(高圧流水)は、高温蒸気によって加熱されるので、加熱用熱交換器27で熱回収して、食品液を加熱している。
【0021】
また、下流側に配置された食品液の充填装置が止まると、食品液の加熱も急停止する必要があり、蒸気機器の蒸気バルブ38を閉にして、熱交換器11aに冷水を注水することによって、食品液加熱殺菌装置10の急速停止を行うことができる。食品液加熱殺菌装置10が加熱を停止するまでに要した時間は、従来の1/3程度となることが確認されている。
更には、熱交換器11aに温水を使用しないで、蒸気を使用するので、熱交換器11aの応答性が速くなって、熱交換器11aの目標加熱温度を直ぐに達成できる。
【0022】
そして、本発明においては、蒸気を直接使用するので、エネルギーロスが減少する。また、蒸気は境膜伝熱係数が高いので、伝熱効率が向上する。
本実施の形態に係る食品液加熱殺菌装置10においては、外管13内を負圧にしているので、熱交換器11aの漏れを常時監視できる。食品液の急速加熱停止も行える。なお、
図1において、35は水源、36はバルブである。また、37は圧力コントローラであって蒸気バルブ38を制御し、二次側の蒸気圧力を一定に保持している。39、40は温度センサーで常時食品液、エジェクター24の水の温度を管理している。
【0023】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
【符号の説明】
【0024】
10:食品液加熱殺菌装置、11:加熱器、11a:熱交換器、12:内管、13:外管、14、15:フランジ、17、18:Uベント、19、20:接続フランジ、21:蒸気入口、22:蒸気出口、24:エジェクター、25:タンク、26:ポンプ、27:加熱用熱交換器、29:蒸気源、31:食品液タンク、32:ポンプ、33:切り換えバルブ、35:水源、36:バルブ、37:圧力コントローラ、38:蒸気バルブ、39、40:温度センサー