特許第6397806号(P6397806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397806
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20180913BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20180913BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   H01L23/28 F
   H01L23/00 C
   H01L21/28 301R
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-179997(P2015-179997)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-55070(P2017-55070A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】317006041
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】高野 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武志
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/204208(WO,A1)
【文献】 特開2015−115552(JP,A)
【文献】 特開2014−189861(JP,A)
【文献】 特開2004−297054(JP,A)
【文献】 特開2013−150014(JP,A)
【文献】 特開平11−121961(JP,A)
【文献】 特開2015−015299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28
H01L 21/28
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面の反対側にある第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある側面とを有する基板の前記第1面上に半導体チップを搭載し、
前記半導体チップ上に前記半導体チップの前記第1面を封止する樹脂部を形成し、
接地電位源に電気的に接続される導電性膜を、前記樹脂部の上面上および前記樹脂部の側面上に形成し、
酸素または窒素を含む雰囲気中において金属を成膜することによって、表面が金属酸化膜または金属窒化膜となるように複数の材料を積層した保護膜を前記導電性膜上に形成することを具備し、
前記金属酸化膜または金属窒化膜の明度は、前記樹脂部の明度と同程度かあるいはそれよりも低い、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属は、銅、クロム、鉄、ニッケル、チタン、アルミのいずれか少なくとも1つの材料を含み、
前記金属酸化膜は、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケルのいずれか少なくとも1つの材料を含み、
前記金属窒化膜は、窒化チタンアルミを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性膜の形成は減圧雰囲気内で実行され、
前記金属酸化膜の形成は、前記導電性膜の形成工程における減圧雰囲気中において実行され、
前記金属窒化膜の形成は、前記導電性膜の形成工程における減圧雰囲気中において実行される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性膜の形成と前記金属酸化膜または前記金属窒化膜の形成とは、同一チャンバ内において実行される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性膜の形成は、減圧状態にある第1チャンバ内で実行され、
前記基板の周囲の気圧を減圧状態に維持したまま、前記基板を減圧状態にある第2チャンバへ移動し、
前記金属酸化膜または前記金属窒化膜の形成は、前記第2チャンバ内で実行される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属酸化膜は、前記金属をプラズマ酸化しながら前記導電性膜上にスパッタリング法で成膜し、
前記金属窒化膜は、前記金属をプラズマ窒化しながら前記導電性膜上にスパッタリング法で成膜する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1面と、該第1面の反対側にある第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある側面とを有する基板と、
前記第1面上に設けられた半導体チップと、
前記半導体チップ上と前記第1面上に設けられた樹脂部と、
前記樹脂部に設けられ接地電位源に電気的に接続可能な導電性膜と、
前記導電性膜上に設けられ、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケル、窒化チタンアルミのいずれか少なくとも1つの材料を含み、表面が金属酸化膜または金属窒化膜となるように複数の材料を積層した保護膜とを備え
前記金属酸化膜または金属窒化膜の明度は、前記樹脂部の明度と同程度かあるいはそれより低い、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、電磁波によるEMI(Electro Magnetic Interference)を抑制するために、半導体パッケージの封止樹脂の表面に設けられたシールド層を有する場合がある。シールド層の表面にはシールド層を保護するために保護膜が設けられている。しかし、従来の保護膜は、金属膜であり、封止樹脂に比べて高い明度(L値)を有していた。従って、シールド層および保護膜を有する半導体パッケージは、シールド層および保護膜の無く、表面が樹脂の半導体パッケージと比べて、外観検査工程において不良(例えば、スクラッチ等)を発見し難かった。また、保護膜が高い明度を有するので、シールド層および保護膜を有する半導体パッケージは検査における光を高い反射率で反射する。このため、シールド層および保護膜を有する半導体パッケージの外観検査において、検査員の目に対する負担が大きかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−209544号公報
【特許文献2】特開2015−056427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外観検査工程において不良を発見し易い半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、第1面と、該第1面の反対側にある第2面と、前記第1面と前記第2面との間にある側面とを有する基板の第1面上に半導体チップを搭載することを具備する。半導体チップ上に半導体チップの第1面を封止する樹脂部を形成する。接地電位源に電気的に接続される導電性膜を、樹脂部の上面上および樹脂部の側面上に形成する。酸素または窒素を含む雰囲気中において金属を成膜することによって、表面が金属酸化膜または金属窒化膜となるように複数の材料を積層した保護膜を導電性膜上に形成する。金属酸化膜または金属窒化膜の明度は、樹脂部の明度と同程度かあるいはそれよりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す斜視図。
図2】半導体装置1の構成の一例を示す断面図。
図3】半導体装置の外観を上方から見た上面図。
図4】保護膜60の材質と明度(L値)との関係を示す表。
図5】保護膜60の断面図。
図6】半導体装置1の製造方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。以下の実施形態において、半導体装置の上下方向は、半導体チップが搭載される面を上とした場合の相対方向を示し、重力加速度に従った上下方向と異なる場合がある。
【0008】
図1は、本実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す斜視図である。図2は、半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。
【0009】
半導体装置1は、基板10と、半導体チップ20と、第1端子30と、樹脂部40と、シールド膜50と、保護膜60とを備えている。
【0010】
基板10は、例えば、樹脂、セラミックス、ガラス等の絶縁材料に配線層11等を設けた配線基板でよい。基板10は、第1面F11と、該第1面F11の反対側にある第2面F12と、第1面F11と第2面F12との間にある側面F13とを有する。基板10は、第1面F11上に配線層11を有し、第1面F11と第2面F12との間の基板10の中間部分に第1端子30を有する。図示しないが、基板10は、第2面F12上にも配線を有していてもよい。
【0011】
配線層11は、例えば、信号配線、電源配線、グランド配線等を含み、半導体チップ20のいずれかの端子に電気的に金属ワイヤ13等を介して接続されている。また、配線層11は、例えば、ビア15を介して第2面F12側に設けられた電極パッド12や配線(図示せず)に電気的に接続されてもよい。
【0012】
電極パッド12は、他のプリント基板(図示せず)等に接続可能なように第2面F12上に設けられている。半導体装置1のパッケージがLGA(Land Grid Array)タイプである場合、電極パッド12は平面状の電極である。半導体装置1のパッケージがBGA(Ball Grid Array)タイプである場合、半田ボール(図示せず)が電極パッド12上に設けられる。尚、半導体装置1のパッケージのタイプは等に限定しない。
【0013】
第1端子30は、基板10の側面F13に設けられており、側面F13においてシールド膜50に電気的に接続されている。第1端子30は、他のプリント基板に実装されたときに接地電位源に電気的に接続可能に配線されている。
【0014】
配線層11、電極パッド12、第1端子30は、それぞれ単層配線であってもよいが、それに限定されず、絶縁層と導電層とを積層させた積層配線であってもよい。配線層11、電極パッド12、第1端子30のそれぞれの導電層には、例えば、銅、銀、金、ニッケル等の導電性材料が用いられる。
【0015】
半導体チップ20は、基板10の第1面F11上に図示しない接着材を介して搭載されている。半導体チップ20は、金属ワイヤ13等を介して基板10の配線11等に電気的に接続される。半導体チップ20は、半導体基板上に設けられた半導体素子を有する半導体チップである。半導体チップ20は、複数の半導体チップの積層体であってもよい。例えば、半導体装置1がNAND型EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)の場合、半導体チップ20は、複数のメモリチップを積層した積層体であってもよい。
【0016】
樹脂部40は、半導体チップ20、配線11、金属ワイヤ13等を封止し保護するために、半導体チップ20の表面や側面、基板10の第1面F11上に設けられている。樹脂部40には、例えば、カーボンブラックを含有するエポキシ樹脂等が用いられる。樹脂部40は、基板10とともにダイシング加工されるので、樹脂部40の側面は、基板10の側面F13とほぼ面一となっている。また、樹脂部40の上面には、レーザの照射により、製品番号、製造年月日、製造工場等の製品情報が刻印されている。
【0017】
導電性膜としてのシールド膜50は、樹脂部40の表面および側面、並びに、基板10の側面F13の少なくとも一部に設けられている。シールド膜50には、例えば、銅、銀、ニッケル等の低抵抗の導電性材料を用いている。シールド膜50は、基板10の側面F13に設けられた第1端子30に電気的に接続される。これにより、半導体装置1が他のプリント基板等に実装され、第1端子30が接地電位源に接続された場合、シールド膜50は、第1端子30を介して接地電位源に電気的に接続される。シールド膜50は、電磁波ノイズを接地電位源へ逃がす。これにより、シールド膜50は、半導体チップ20から生じる電磁波ノイズが半導体装置1の外部へ漏洩することを抑制する。あるいは、シールド膜50は、半導体装置1の外部からの電磁波ノイズが半導体装置1の内部へ進入することを抑制する。例えば、半導体装置1が携帯端末のように通信行う電子機器等に用いられた場合に、シールド膜50は、半導体装置1からの電磁波が電波障害(EMI)の原因となることを抑制し、あるいは、電波によって半導体装置1が誤動作することを抑制することができる。
【0018】
保護膜60は、シールド膜50の上面および側面上に設けられている。保護膜60は、シールド膜50をキズや腐食等から保護するために、シールド膜50の上面および側面を被覆している。保護膜60は、半導体装置1の最も外側に設けられた膜である。保護膜60には、例えば、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケル、窒化チタンアルミのいずれか少なくとも1つの材料を用いている。
【0019】
ここで、保護膜60の外観について説明する。
【0020】
図3(A)および図3(B)は、半導体装置の外観を上方から見た上面図である。即ち、図3(A)および図3(B)は、半導体装置の最も外側に設けられた保護膜の外観を示している。
【0021】
図3(A)に示す半導体装置は、銅を用いたシールド膜およびステンレス(SUS)を用いた保護膜を有する。ステンレスの明度(L値)は比較的高く、反射率も高い。外観としてステンレスは、銀色に近い色味を有している。このように、明度が高い場合、外観検査工程において、保護膜上に存在するキズ、腐食、汚れ等41が視認し難い。また、外観検査は、オペレータが顕微鏡等を用いて肉眼で行う。従って、保護膜からの反射光が強い場合には、オペレータの眼の疲労の原因となり易い。
【0022】
これに対し、図3(B)に示す半導体装置1は、銅を用いたシールド膜50および酸化クロム(Cr)を用いた保護膜60を有する。酸化クロムの明度(L値)はステンレスのそれよりも低い。外観として酸化クロムは、灰色から黒色に近い色味を有している。このように、明度が比較的低い場合、外観検査工程において、保護膜上に存在するキズ、腐食、汚れ等41が視認し易い。また、オペレータの眼の疲労の原因となり難くなる。
【0023】
図4は、保護膜60の材質と明度(L値)との関係を示す表である。保護膜60の明度は、色差計(SCI(Specular Component Include)またはSCE(Specular Component Exclude))を用いて測定したL値によって判定される。L値は、小さいほど黒色に近く、大きいほど、白色(銀色)に近くなる。尚、図4の“SUSO”は、SUS酸化膜を示す。
【0024】
図4(A)は、樹脂部40のL値を示す図である。図4(B)〜図4(E)は、保護膜60の材料とL値との関係を示す表である。図4(A)に示すように、樹脂部40の材料に用いられるカーボンブラック等を含有するエポキシ樹脂のL値は、約29.60(SCI)、約27.81(SCE)である。このような樹脂部40は、黒色に近く、外観検査工程において、キズ、腐食、汚れ等が視認し易い。また、オペレータの眼の疲労の原因となり難い。しかし、樹脂部40上にシールド層50および保護膜60を設けた場合、保護膜60の材料によってL値が高くなってしまう。例えば、シールド層50としての銅膜(例えば、膜厚は約2.5μm)を用い、保護膜60としてステンレス膜(例えば、膜厚は約0.3μm)を用いた場合、図4(B)に示すように、半導体装置の表面(保護膜60)のL値は、約73.53(SCI)、約70.01(SCE)となり、かなり白色または銀色に近くなる。このような保護膜60は、外観検査工程においてキズ、腐食、汚れ等が視認し難く。また、オペレータの眼の疲労の原因となり易い。
【0025】
これに対し、本実施形態による半導体装置1において、保護膜60は、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケル、窒化チタンアルミのいずれか少なくとも1つの材料を含む。例えば、図4(C)では、保護膜60は、酸化銅(CuO)膜(例えば、膜厚は約0.42μm)上にステンレスの酸化膜(例えば、膜厚は約0.02μm)を設けた積層膜である。図5(A)は、図4(C)の保護膜60の断面図である。図5(A)に示すように、酸化銅膜60aがシールド膜50上に設けられており、ステンレスの酸化膜60bが酸化銅60a上に設けられている。ステンレスの酸化膜60bは、酸化鉄(FeO、Fe)、酸化クロム(Cr)および酸化ニッケル(NiO、Ni)を含む酸化膜である。以下、ステンレスの酸化膜60bをSUS酸化膜60bともいう。シールド膜50は、銅膜(例えば、膜厚は約2.5μm)のままでよい。この場合、保護膜60(SUS酸化膜60bの表面)のL値は、約28.43(SCI)、約27.02(SCE)となった。即ち、保護膜60を酸化銅膜60aとSUS酸化膜60bとの積層膜とすることによって、L値は、樹脂部40のL値よりも低くなる。この場合、半導体装置の表面(保護膜60)は、充分に黒色に近くなり、外観検査工程において、キズ、腐食、汚れ等が視認し易く、また、オペレータの眼の疲労の原因となり難い。尚、上記例では、保護膜60は、酸化銅膜60a上にSUS酸化膜60bを設けた積層膜である。しかし、図5(B)に示すように、保護膜60は、酸化銅膜60aの下に、ステンレス膜60cを有していてもよい。即ち、保護膜60は、ステンレス膜60cと、ステンレス膜60c上に設けられた酸化銅膜60aと、酸化銅膜60a上に設けられたSUS酸化膜60bとを有する3層の積層膜であってもよい。この場合であっても、図4(C)に示すL値にほぼ等しいL値が得られる。尚、シールド膜50と酸化銅膜60aとの間のステンレス膜60cは、酸化銅膜60aまたはSUS酸化膜60bの酸素がシールド膜50に拡散し、シールド膜50を酸化することを抑制する。
【0026】
図4(D)では、保護膜60は、ステンレス膜(例えば、膜厚は約0.3μm)上に酸化クロム(Cr)膜(例えば、膜厚は約0.1μm)を設けた積層膜である。図5(C)は、図4(D)の保護膜60の断面図である。図5(C)に示すように、ステンレス膜60cがシールド膜50上に設けられており、酸化クロム膜60dがステンレス膜60c上に設けられている。シールド膜50と酸化クロム膜60dとの間のステンレス膜60cは、酸化クロム膜60dの酸素がシールド膜50に拡散し、シールド膜50を酸化することを抑制する。シールド層50は、銅膜(例えば、膜厚は約2.5μm)でよい。この場合、半導体装置の表面(保護膜60)のL値は、約50.57(SCI)、約47.26(SCE)となった。即ち、保護膜60のL値は、樹脂部40のL値よりも高くなった。しかし、図4(B)のような単層のステンレス膜からなる保護膜60と比較すると、保護膜60のL値は、かなり低くなる。この場合、半導体装置の表面(保護膜60)は、或る程度暗色になり、外観検査工程において、キズ、腐食、汚れ等は比較的容易に視認可能であり、また、比較的、オペレータの眼の疲労を引き起こし難い。
【0027】
図4(E)では、保護膜60の材料は、ステンレス膜(例えば、膜厚は約0.3μm)上に酸化クロム(Cr)膜(例えば、膜厚は約0.2μm)を設けた積層膜である。図4(E)の保護膜60の断面は、酸化クロム膜60dの厚みにおいて異なるものの、図5(C)に示す断面と同様である。シールド膜50と酸化クロム膜60dとの間のステンレス膜60cは、酸化クロム膜60dの酸素がシールド膜50に拡散し、シールド膜50を酸化することを抑制する。シールド膜50は、例えば、約0.5μmの膜厚を有する銅膜である。この場合、半導体装置の表面(保護膜60)のL値は、約57.47(SCI)、約54.47(SCE)となった。即ち、酸化クロム膜60dの膜厚を厚くすると、L値は、高くなる。しかし、図4(B)のような単層のステンレス膜からなる保護膜60と比較すると、保護膜60のL値は、かなり低くなる。この場合、半導体装置の表面(保護膜60)は、或る程度暗色になり、外観検査工程において、キズ、腐食、汚れ等は比較的容易に視認可能であり、また、比較的、オペレータの眼の疲労を引き起こし難い。
【0028】
図4(F)では、保護膜60の材料は、ステンレス膜(例えば、膜厚は約0.3μm)上に窒化チタンアルミ(TiAlN)膜(例えば、膜厚は約0.1μm)を設けた積層膜である。図4(F)の保護膜60の断面は、酸化クロム膜60dの材質を酸化クロムから窒化チタンアルミへと換えたもので、その他については図5(C)に示す断面と同様である。シールド膜50と窒化チタンアルミとの間のステンレス膜60cは、窒化チタンアルミの窒素がシールド膜50に拡散し、シールド膜50を窒化することを抑制する。シールド層50は、銅膜(例えば、膜厚は約2.5μm)でよい。この場合、半導体装置の表面(保護膜60)のL値は、約28.85(SCI)、約27.29(SCE)となった。即ち、保護膜60を酸化銅膜60aとSUS酸化膜60bとの積層膜とすることによって、L値は、樹脂部40のL値よりも低くなる。この場合、半導体装置の表面(保護膜60)は、充分に黒色に近くなり、外観検査工程において、キズ、腐食、汚れ等が視認し易く、また、オペレータの眼の疲労の原因となり難い。
【0029】
図4(C)〜図4(F)に示す保護膜60は、程度の差はあるものの、いずれもL値においてステンレス膜よりも低くなった。従って、保護膜60が酸化銅膜60a、酸化クロム膜60d、SUS酸化膜(酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケル)60b、窒化チタンアルミ膜のいずれか少なくとも1つの材料を含む膜であることによって、保護膜60のL値は、ステンレス膜のL値よりも低くなり、例えば、約58以下にすることができる。これにより、キズ、腐食、汚れ等の視認を容易化し、オペレータの眼の疲労を抑制することができる。
【0030】
また、図4(C)(F)に示す保護膜60は、樹脂部40のL値と同程度、あるいは、それよりも低いL値を有する。従って、図4(C)(F)に示す保護膜60を用いることによって、半導体装置の表面は、樹脂部40と同程度に、あるいは、それよりも黒色に近くなり、外観検査工程において、キズ、腐食、汚れ等の視認がさらにし易くなり、かつ、オペレータの眼がさらに疲労し難くなる。
【0031】
次に、本実施形態による半導体装置1の製造方法について説明する。
【0032】
図6は、半導体装置1の製造方法を示すフロー図である。まず、基板10上に半導体チップ20を搭載する(S10)。基板10は、上述の通り、第1面F11と、該第1面F11の反対側にある第2面F12と、第1面F11と第2面F12との間にある側面F13とを有する。半導体チップ20は、基板10の第1面F11上に搭載される。半導体チップ20は、複数の半導体チップを積層して形成された半導体チップの積層体であってもよい。
【0033】
次に、半導体チップ20の電極パッドと基板10上の配線層11とを金属ワイヤ13等で電気的に接続する(S20)。
【0034】
次に、半導体チップ20を搭載した基板10の第1面F11上に、樹脂部40(例えば、エポキシ樹脂)をモールドし、半導体チップ20、金属ワイヤ13等を封止する(S25)。樹脂部40のモールド方法は、トランスファモールド法、コンプレッションモールド法、ポッテイング方法、印刷法等のいずれを用いてもよい。
【0035】
次に、ダイシングブレード等を用いて、半導体装置1を個別化する(S30)。このとき、樹脂部40を基板10とともに切断し、半導体装置1をそれぞれ分離する。
【0036】
次に、YAGレーザ等を備えたレーザマーキング装置により、半導体装置1の樹脂部40の上面に、製品名、製品番号、製造年月日、製造工場等の製品情報を刻印する(S40)。刻印の深さは、良好な視認性及び作業性を得る観点から、20〜40μm程度が好ましい。
【0037】
次に、樹脂部40の上面上、樹脂部40の側面上、並びに、基板10の側面上にシールド膜50を形成する(S50)。導電性膜としてのシールド膜50は、例えば、減圧雰囲気中において、めっき法またはスパッタ法を用いて形成される。樹脂部40の上面および樹脂部40の側面に設けられたシールド膜50は、基板10の側面F13に設けられたシールド膜50と電気的に接続されている。また、基板10の側面F13に設けられたシールド膜50は、接地電位源等に電気的に接続可能な第1端子30に電気的に接続される。これにより、シールド膜50全体が第1端子30に電気的に接続され、第1端子30を介して接地電位源等に電気的に接続可能である。その結果、電磁波ノイズが半導体装置1の外部へ漏洩することを抑制し、あるいは、外部からの電磁波ノイズが半導体装置1の内部へ進入することを抑制することができる。
【0038】
次に、スパッタ法等を用いて、シールド膜50の上面および側面に保護膜60を形成する(S60)。保護膜60は、酸素を含む雰囲気中において金属をシールド膜50上に成膜することによってシールド膜50上に金属酸化膜として形成される。または、保護膜60は、窒素を含む雰囲気中において金属をシールド膜50上に成膜することによってシールド膜50上に金属窒化膜として形成される。
【0039】
(保護膜60が酸化銅膜60aとSUS酸化膜60bとの積層膜の場合)
例えば、図4(C)および図5(A)に示すように、保護膜60が酸化銅膜60aとSUS酸化膜60bとの積層膜である場合、まず、銅(Cu)をターゲットとして用いて、アルゴン(Ar)および酸素(O)の混合雰囲気中において、銅をプラズマ酸化しながらシールド膜50上にスパッタリングを行う。次に、ステンレスの材料(Fe、Cr、Ni)をターゲットとして用いて、アルゴン(Ar)および酸素(O)の混合雰囲気中において、ステンレスの材料をプラズマ酸化しながら酸化銅膜上にスパッタリングを行う。これにより、保護膜60として、酸化銅膜60aとSUS酸化膜(酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケルを含む酸化膜)60bとの積層膜がシールド膜50上に形成される。
【0040】
ここで、保護膜60の形成は、シールド膜50の形成工程における減圧雰囲気中において、その減圧雰囲気を維持したまま実行される。例えば、保護膜60の形成は、シールド膜50の形成工程において用いられたチャンバ(図示せず)内において大気開放することなく連続して実行される。即ち、シールド膜50および保護膜60は、同一チャンバ内において連続的に形成される。この場合、基板10を移動させること無く、スパッタのターゲットを変更することによって、シールド膜50および保護膜60を連続して形成することができる。従って、シールド膜50(例えば、銅)が酸素に触れて自然酸化する前に、保護膜60によってシールド膜50を被覆する。これにより、シールド膜50の酸化を抑制することができる。また、基板10を移動させないので、パーティクル等が半導体装置1に付着する可能性を低減させることができる。
【0041】
代替的に、シールド膜50および保護膜60は、ターゲットの異なる複数のチャンバを用いて成膜してもよい。この場合、例えば、第1チャンバにおいて、シールド膜50を形成した後、基板10は、減圧されたトランスファチャンバ等を介して第1チャンバから第2チャンバへ移動される。次に、第2チャンバにおいて、保護膜60を形成する。このように、基板10は、その周囲の気圧を減圧状態に維持したまま、第2チャンバへ移動される。これにより、第1チャンバから第2チャンバへ移動させる際に、基板10は、大気に晒されること無く、減圧雰囲気内で移動され得る。これにより、シールド膜50が酸化することを抑制することができる。また、この場合、第1および第2チャンバにおいてターゲットを交換する必要が無いので、ターゲットを交換する手間を省くことができる。
【0042】
さらに、保護膜60の形成工程についても、酸化銅膜の成膜およびSUS酸化膜の成膜は、同一チャンバ内において、ターゲットを変更することによって実行してもよい。この場合、基板10を移動させることなく、酸化銅膜およびSUS酸化膜を積層することができる。また、基板10を移動させないので、パーティクル等が半導体装置1に付着する可能性を低減させることができる。
【0043】
代替的に、酸化銅膜およびSUS酸化膜は、ターゲットの異なる複数の成膜チャンバを用いて成膜してもよい。この場合、例えば、第1チャンバにおいて、酸化銅膜を形成した後、基板10は、減圧されたトランスファチャンバ等を介して第1チャンバから第2チャンバへ移動される。次に、第2チャンバにおいて、SUS酸化膜を形成する。このように、基板10は、その周囲の気圧を減圧状態に維持したまま、第2チャンバへ移動される。これにより、第1チャンバから第2チャンバへ移動させる際に、基板10は、大気に晒されること無く、減圧雰囲気内で移動され得る。また、この場合、第1および第2チャンバにおいてターゲットを交換する必要がないので、ターゲットを交換する手間を省くことができる。
【0044】
シールド膜50および保護膜60の膜厚は、樹脂部40に設けられた刻印の深さよりも薄い。これにより、シールド膜50および保護膜60が樹脂部40の上面上に設けられているが、オペレータは、刻印された情報を視認することができる。
【0045】
図5(B)に示すように、シールド膜50と酸化銅膜60aとの間にステンレス膜60cを形成する場合、ステンレス膜60cも、基板10の周囲の減圧雰囲気を維持したままシールド膜50上に形成すればよい。その後、酸化銅膜60aおよびSUS酸化膜60bも、基板10の周囲の減圧雰囲気を維持したままステンレス膜60c上に形成される。
【0046】
(保護膜60がステンレス膜60cとクロム酸化膜60dとの積層膜である場合)
例えば、図4(D)および図4(E)に示すように、保護膜60がステンレス膜とクロム酸化膜との積層膜である場合、まず、ステンレス膜の材料(Fe、Cr、Ni)をターゲットとして用いて、アルゴン(Ar)の混合雰囲気中において、ステンレス膜をシールド膜50上にスパッタする。次に、クロムをターゲットとして用いて、アルゴン(Ar)および酸素(O)の混合雰囲気中において、クロムをプラズマ酸化しながらステンレス膜上にスパッタする。これにより、保護膜60として、ステンレス膜と酸化クロム膜との積層膜がシールド膜50上に形成される。
【0047】
保護膜60の形成は、上述の通り、シールド膜50の形成工程における減圧雰囲気中において、その減圧雰囲気を維持したまま実行される。これにより、シールド膜50が酸化することを抑制することができる。
【0048】
保護膜60の形成工程において、ステンレス膜の成膜および酸化クロム膜の形成は、同一チャンバ内において、ターゲットを変更することによって実行してもよい。これにより、基板10を移動させないので、パーティクル等が半導体装置1に付着する可能性を低減させることができる。代替的に、ステンレス膜および酸化クロム膜は、ターゲットの異なる複数の成膜チャンバを用いて成膜してもよい。チャンバから他のチャンバへ移動させる際に、基板10は、大気に晒されること無く、減圧雰囲気内で移動される。この場合、複数のチャンバにおいてターゲットを変更する必要がないので、ターゲットを交換する手間を省くことができる。
【0049】
(保護膜60がステンレス膜60cと窒化チタンアルミとの積層膜である場合)
例えば、保護膜60がステンレス膜と窒化チタンアルミとの積層膜である場合、まず、ステンレス膜の材料(Fe、Cr、Ni)をターゲットとして用いて、アルゴン(Ar)の混合雰囲気中において、ステンレス膜をシールド膜50上にスパッタする。次に、チタンアルミ合金をターゲットとして用いて、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合雰囲気中において、チタンアルミ合金をプラズマ窒化しながらステンレス膜上にスパッタする。これにより、保護膜60として、ステンレス膜と窒化チタンアルミ膜との積層膜がシールド膜50上に形成される。
【0050】
保護膜60の形成は、上述の通り、シールド膜50の形成工程における減圧雰囲気中において、その減圧雰囲気を維持したまま実行される。これにより、シールド膜50が酸化することを抑制することができる。
【0051】
保護膜60の形成工程において、ステンレス膜の成膜および窒化チタンアルミ膜の形成は、同一チャンバ内において、ターゲットを変更することによって実行してもよい。これにより、基板10を移動させないので、パーティクル等が半導体装置1に付着する可能性を低減させることができる。代替的に、ステンレス膜および窒化チタンアルミ膜は、ターゲットの異なる複数の成膜チャンバを用いて成膜してもよい。チャンバから他のチャンバへ移動させる際に、基板10は、大気に晒されること無く、減圧雰囲気内で移動される。この場合、複数のチャンバにおいてターゲットを変更する必要がないので、ターゲットを交換する手間を省くことができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1・・・半導体装置、10・・・基板、20・・・半導体チップ、30・・・第1端子、40・・・樹脂部、50・・・シールド膜、60・・・保護膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6