(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397812
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】骨折治療具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/84 20060101AFI20180913BHJP
A61B 17/80 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
A61B17/84
A61B17/80
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-251940(P2015-251940)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-113291(P2017-113291A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年2月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514060112
【氏名又は名称】株式会社スワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(72)【発明者】
【氏名】望月 直樹
(72)【発明者】
【氏名】白井 和仁
【審査官】
吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第104783882(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0327894(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/149244(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第03933217(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/84
A61B 17/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の骨折部位に沿って配置される骨当てプレートと、前記骨当てプレートを前記骨に固定するネジ部材と、当該骨当てプレートの固定を補強する環状クリップとから成ることを特徴とする骨折治療具であって、
前記環状クリップは一部を切り欠いたC字型であり、中間部にほぼ直線的な部分を有し、その両側が湾曲する形状であり、前記直線的な中間部が前記骨当てプレートに当接するようにして、前記骨当てプレートの外側から前記骨に向かって嵌められることを特徴とする骨折治療具。
【請求項2】
骨の骨折部位に沿って配置される骨当てプレートと、前記骨当てプレートを前記骨に固定する環状クリップとから成ることを特徴とする骨折治療具であって、
前記環状クリップは一部を切り欠いたC字型であり、中間部にほぼ直線的な部分を有し、その両側が湾曲する形状であり、前記直線的な中間部が前記骨当てプレートに当接するようにして、前記骨当てプレートの外側から前記骨に向かって嵌められることを特徴とする骨折治療具。
【請求項3】
前記ネジ部材は前記骨当てプレートの両端部に配置され、前記環状クリップは前記骨当てプレートの中間部に配置されることを特徴とする請求項1記載の骨折治療具。
【請求項4】
前記環状クリップは、前記骨当てプレートの長手方向に沿って少なくとも2つ設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨折治療具。
【請求項5】
前記環状クリップが前記骨当てプレートに接触する表面箇所に前記環状クリップの直線的な中間部を収容する案内溝が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の骨折治療具。
【請求項6】
前記環状クリップの湾曲形状は、配置される前記骨の箇所に応じて形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の骨折治療具。
【請求項7】
他のC字型環状クリップを、前記環状クリップの前記切り欠き部分を覆うように、前記骨に向かって嵌めたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の骨折治療具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨折治療具に関し、特に、骨当てプレートを骨に固定するとき固定ネジの本数の削減に適した骨折治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折の治療は一般的に整形外科で行われる。整形外科での外科的な治療処置の一例として、骨折した骨の当該骨折部位にプレートを当てて治療する方法(「プレート固定法」)がある。この外科的な治療処置では、骨折部位の周辺の組織を切開して当該骨折部位を露出させ、骨折した箇所を整えて骨折部位を骨折前の状態に戻すように整復し、その後、所要のプレートを骨折部位に架け渡すように当てて配置し、プレートに形成されたネジ用孔を通してネジ部材を骨の中に埋め込んで当該プレートを骨に固定する。プレートは骨折部位に対して骨当て部材として機能し、これによって、骨折箇所の両側に位置する骨部分(骨断片)の固定を強化する。プレートは、骨折部位の動きを抑制し、外力に起因して骨折部位に生じる応力を軽減し、骨折した骨の治癒を促進する。
【0003】
上記した従来の「プレート固定法」に基づく骨折治療具を開示する従来文献として、代表的に、下記の特許文献1を挙げることができる。特許文献1では、骨折部位が圧迫されたときプレートと骨との間に生じる摩擦を問題としている。この問題は、従来、プレートの形状を骨の外観を成す輪郭の幾何学的形状に適合するように曲げることで、対応していた。しかし、手術中にプレートを曲げることは治療措置の観点では作業として好ましくなく、問題であった。そこで、特許文献1の発明では、当該問題を解消するため、プレートと骨との間に配置されるスペーサを提案している。
【0004】
さらに本発明に関連する従来技術として下記の特許文献2,3を挙げる。
【0005】
特許文献2は骨折合具に関するものであり、その背景技術の説明において、
図3で「プレート固定法」が説明されている。
図3に示した「プレート固定法」では、尺骨に骨折が生じたとき、当該尺骨の骨折部位の外側面にプレート(61)を当てて、例えば6本のネジ(62)を使用してプレート(61)を尺骨に固定している。
【0006】
特許文献3は、医療用防水プロテクターに関するものであり、患者の腕部や脚部に医療用防水カバーを装着して固定する場合に、固定する手段としての留め具を開示している。この留め具は、皮膚の外側から腕や脚の全周囲を締め付けるように取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−525155号公報(段落0002〜0006)
【特許文献2】WO2010/005076号公報(段落0005、
図3)
【特許文献3】特開2005−66301号公報(
図5〜
図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の「プレート固定法」によれば、骨折部位に骨当てプレートを配置し、当該骨当てプレートを骨折部位にネジ部材で結合して固定するようにしていた。骨当てプレートを骨に取り付ける結合手段としてはネジ部材だけを使用していたため、プレートが長形の形状を有する場合、プレートの両端部および中間部などにネジ部材が取り付けられ、少なくとも4本以上の多数のネジ部材を使用することが必須であった。ネジ部材を骨に埋め込むためには、骨組織にネジ部材を埋め込むためのネジ孔を作ることが必要となる。そのため、治療する骨に負担をかけると共に、骨折治療における骨の迅速な回復の観点でも問題であった。その結果、外科的治療処置である「プレート固定法」では、使用するネジ部材の本数を減少させることが強く望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、外科的治療処置であるプレート固定法でネジ部材の本数を可能な限り少なくし、治療手術を簡易化しかつ迅速化することができる骨折治療具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る骨折治療具は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0011】
第1の骨折治療具(請求項1に対応)は、骨の骨折部位に沿って配置される骨当てプレートと、骨当てプレートを当該骨に固定するネジ部材と、当該骨当てプレートの固定を補強する環状クリップとによって構成される。
上記の骨折治療具では、整形外科による外科治療の「プレート固定法」において、固定性能を低減させることなくネジ部材の本数を可能な限り少なくすることができ、治療および施術の簡素化および治癒の迅速化を実現することが可能である。
【0012】
第2の骨折治療具(請求項2に対応)は、骨の骨折部位に沿って配置される骨当てプレートと、骨当てプレートを当該骨に固定する環状クリップとによって構成される。
上記の骨折治療具では、整形外科による外科治療の「プレート固定法」において、環状クリックの固定力または固定性能を高めることにより、ネジ部材を使用することなく、環状クリップだけで骨当てプレートを骨の骨折部位にしっかりと取り付けることができ、これにより、さらに、治療および施術の簡素化および治癒の迅速化を実現することが可能である。
【0013】
第3の骨折治療具(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、ネジ部材は骨当てプレートの両端部に配置され、環状クリップは骨当てプレートの中間部に配置されることを特徴とする。この構成では、骨当てプレートの両端はネジ部材で固定し、その中間部は環状クリップで固定することにより、固定構造を簡素化することが可能となり、かつ十分な固定性能を保持することが可能となる。
【0014】
第4の骨折治療具(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、環状クリップは隙間を有し、当該環状クリップは、骨当てプレートと骨を囲むように、隙間を介して、骨当てプレートの外側から骨に向かって嵌められることを特徴とする。この構成では、環状クリップはアルファベットの大文字「C」の形状を有し、骨当てプレートおよび骨に簡単に取り付けることができる形状を有している。
【0015】
第5の骨折治療具(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、環状クリップは、骨当てプレートの長手方向に沿って少なくとも2つ設けられることを特徴とする。この構成によれば、可能限り少ない環状クリップを用いて安定した骨当てプレートの固定状態を実現することが可能である。
【0016】
第6の骨折治療具(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、環状クリップが骨当てプレートに接触する表面箇所に環状クリップを収容する案内溝が形成されることを特徴とする。この構成によれば、環状クリップが骨当てプレートの長手方向または骨の長手方向に移動することを阻止することができ、環状クリップの配置箇所を安定して同一箇所に保持することが可能となる。
【0017】
第7の骨折治療具(請求項7に対応)は、上記の構成において、好ましくは、環状クリップの湾曲形状は、配置される骨の箇所に応じて形成されることを特徴とする。この構成によれば、環状クリップによって骨当てプレートををきっちりと骨に取り付けることができ、骨当てプレートの固定性能を高めることができる。
【0018】
第8の骨折治療具(請求項8に対応)は、上記の構成において、好ましくは、他の環状クリップを、外側から取り付けられた環状クリップの隙間を囲むように、骨の裏側から骨に向かって嵌めたことを特徴とする。この構成によれば、骨当てプレートおよび骨の外側から取り付けた環状クリップが外れる可能性をできる限り低減し、固定性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る骨折治療具によれば、整形外科によるプレート固定法の外科治療において、特定の形状を有する環状クリップを利用して骨当てプレートの固定性能を補強するようにしたため、骨当てプレートを骨へ固定するためのネジ部材の本数をできるだけ減らすことができ、その結果、当該外科治療の手術を簡易化しかつ迅速化すると共に、患者の手術負担を軽減し、骨の治癒を迅速化することができる。さらに、環状クリップの固定性能等を高めることにより、ネジ部材を使用することなく、環状クリップだけによる固定も可能になり、よりいっそう、外科治療の手術を簡易化しかつ迅速化すると共に、患者の手術負担を軽減し、骨の治癒を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る骨折治療具の第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】第1の実施形態の骨折治療具の使用状態を示す組立斜視図である。
【
図3】第1の実施形態の骨折治療具の使用状態を示す平面図である。
【
図6】本発明に係る骨折治療具の第2の実施形態を示す
図4と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜
図5を参照して本発明に係る骨折治療具の代表的な第1の実施形態を説明する。なおこの実施形態では、骨当てプレートを骨の骨折部位に固定する手段として、ネジ部材と環状クリップが併用されているが、ネジ部材は必須の部材ではない。環状クリップの固定力または固定性能を高めることにより、ネジ部材の使用を省略することもできる。
【0023】
図1に示すように、この骨折治療具10は、骨折部位11Aが存する骨11の所要の表面箇所に当てるように配置される骨当てプレート12と、骨当てプレート12を骨11に結合して当該骨11に固定するための例えば3本のネジ部材(ロッキング・スクリュー)13と、骨11に固定された骨当てプレート12に対して骨11と骨当てプレート12を一体化して囲むように配置され、かつ骨11への骨当てプレート12の固定状態を補強するための例えば2つの環状クリップ14と、から構成されている。
図1では、骨11に対して、骨当てプレート12と、3本のネジ部材13と、2つの環状クリップ14は、組み立てる前の段階で、取付け位置関係を正しく保った分解状態で示されている。
図1中、一点鎖線で描かれた矢印15によって取付け・組立の関係が示されている。
【0024】
骨11の骨折部位11Aでは、ヒビ状の骨折箇所11A−1と、その両側に位置する骨断片11A−2とが存する。骨折部位11Aを有する骨11としては、人体の骨格を形成する任意の骨が対象となるが、棒状で、かつある程度の長さを有する骨が好ましい。
【0025】
骨当てプレート12は、長形の骨11の骨折部位11Aの長さに応じた必要な長さを有し、かつ、好ましくは薄板状の形状を有している。骨当てプレート12は、
図1に示された位置関係において、さらに
図2に示すように、骨折部位11Aの長手方向に沿って接触または非接触の関係に基づき配置される。なお、
図2では骨11の周辺の組織の図示は省略されている。実際の施術では、骨11の骨折部位11Aの周辺の組織を切開し、当該骨折部位11Aを露出させ、骨折箇所11A−1を整えて骨折部位11Aを骨折前の状態に戻すように整復し、その後に、骨当てプレート12を骨折箇所11A−1の両側の骨断片11A−2に架け渡すように当てて配置する。骨当てプレート12の材質は、好ましくは金属であるが、所要の強度を有するのであれば任意の材質を用いることができる。
【0026】
また骨当てプレート12の外側(図中、上側)の表面には、2つの環状クリップ14の各々が配置される箇所に対応させて、骨当てプレート12の幅方向に、ほぼ直線的な溝12A,12Bが形成されている。溝12A,12Bの溝形状は、対応する環状クリップ14の形状に一致するように形成されている。2つの環状クリップ14を骨当てプレート12に取り付けるとき、各環状クリップ14のほぼ中間部は溝12A,12Bに案内されて配置される。この溝の形状と個数と形成位置は、使用する環状クリップの形状と個数と取付け位置に応じて適宜に決定される。
【0027】
さらに、骨当てプレート12には、3本のネジ部材13が取り付けられる各箇所に、当該ネジ部材13を挿通させるための孔12Cが形成されている。この孔の個数や形成位置は、使用されるネジ部材の個数と取付け位置に応じて適宜に決定される。
【0028】
なお、骨当てプレート12を骨11の骨折部位11Aに設けるときには、それらの間にスペーサ部材を配置することもできる。
【0029】
ネジ部材13は、いわゆるロッキング・スクリューと呼ばれるものであり、「プレート固定法」では、従来より骨にプレートを固定する手段として良く知られた手段である。この実施形態では、骨11に対して骨当てプレート12を固定するには、原則的に、3本のネジ部材13を使用したが、その本数は任意である。またこの実施形態では、3本のネジ部材13は、骨プレート12の両端部の位置において端部の形状に応じて配置されているが、ネジ部材の配置位置は任意に決定することができる。
【0030】
なお、使用されるネジ部材13の本数は、少なければ少ない程好ましい。
【0031】
環状クリップ14は、全体として環状の形状を成し、アルファベットの大文字「C」に類似した形状を有している。その結果、環状クリップ14は、中間部に位置するほぼ直線的な部分14A、その両側に位置する所要の湾曲形状を有した湾曲部14B、および隙間(切欠き部)14Cによって形成されている。隙間14Cは、両端部の間の離間部として形成される。環状クリップ14における直線的な部分14Aの長さおよび形状、湾曲部14Bの湾曲形状、および隙間14Cの長さは、取り付けられる骨11の部位に応じて適宜に決定される。そのため、
図1および
図2等に示した2つの環状クリップ14に関して、左側の環状クリップ14は相対的に小形の形状を有し、右側の環状クリップ14は相対的に大形の形状を有している。
図1および
図2に示されるように、2つの環状クリップ14の各々は、直線的な部分14Aが前述した骨当てプレート12の溝12A,12Bの中に配置されるように、骨当てプレート12の対応する箇所に取り付けられる。環状クリップ14の材質は、金属材またはそれに類似した強度を有する材質(樹脂材等)である。金属材を使用する場合、例えば、棒状の部材を湾曲部14Bが形成されるように折り曲げて作られる。
【0032】
図1に示した骨当てプレート12、3本のネジ部材13、2つの環状クリップ14から成る骨折治療具10を骨11に組み付けると、
図2に示すような使用状態になる。
図2および
図3〜
図5を参照して骨折治療具10の使用状態を説明する。
【0033】
骨当てプレート12は、整復された骨11の骨折部位11Aの長手方向に沿って配置され、その両端部の3つの孔12Cのそれぞれを通して3本のネジ部材13を骨11にねじ込んで埋設し、骨11に骨当てプレート12を固定する。その後、骨当てプレート12の中間部に2つの環状クリップ14を取り付ける。この取付け順序は反対であってもかまわない。各環状クリップ14は、それぞれの配置箇所において、骨当てプレート12と骨11を囲むように、その隙間14Cを介して、骨当てプレート12の外側(
図1,2中では上側)から骨11に向かって嵌め込む。嵌め込みが完了した状態では、
図2に示すように、各環状クリップ14の直線的な部分14Aは、溝12A,12Bの中に案内されるごとく収納される。
【0034】
この実施形態では、
図3に示すように、骨当てプレート12は、比較的に広い面積を有する端部(
図3中、右端部)には2本のネジ部材13を配置し、比較的に狭い面積を有する端部(
図3中、左端部)には1本のネジ部材13を設けることにより、骨11に固定されている。また2つの環状クリップ14の各々は、骨当てプレート12の中間部分の箇所に配置され、
図3に示すごとく、骨当てプレート12の右半分および左半分のそれぞれのほぼ中央の箇所に、前述した取付け構造に基づいて配置されている。大形の環状クリップ14は、
図4に示すごとく、骨当てプレート12と骨11とを一体的に囲むように配置される。環状クリップ14の両端の各端部は、骨11の裏側の表面に当接している。この取付け関係に基づいて、骨当てプレート12の中間部を骨11に固定し、骨当てプレート12が骨11から離れるのを防止することができる。小形の環状クリップ14でも同様である。さらに
図5に示すように、ネジ部材13と環状クリップ14を併用することにより、ネジ部材13に基づく骨当てプレート12の骨11への固定を環状クリップ14によって補強することができる。
【0035】
図2〜
図5に示された骨折治療具10の使用状態において、骨11への骨当てプレート12の固定は、骨当てプレート12の両端部に配置された3本のネジ部材13で行われ、骨当てプレート12の中間部は2つの環状クリップ14で固定され、ネジ部材13による固定を補完し、補強している。この結果、従来の「プレート固定法」の治療手術に比較して、骨当てプレート12の中間部についてネジ部材を省略することができると共に、施術の際の作業を簡素化しかつ迅速化することができる。
【0036】
次に
図6を参照して本発明に係る骨折治療具の第2の実施形態を説明する。
図6は、
図4と同様な図であり、当該実施形態の特徴的な構成を示している。その他の構成は、前述した第1の実施形態の構成と同じであり、第1の実施形態と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。この実施形態では、骨当てプレート12および骨11の外側(表側)から配置される環状クリップ14に対して、さらに、骨11の裏側から他の環状クリップ21を配置する。環状クリップ21の形状は、前述した環状クリップ14と実質的に同じである。この環状クリップ21は、環状クリップ14の隙間14Cの部分を囲むように、骨11の裏側から当該骨11に向かって嵌めるように取り付けられている。環状クリップ21は、環状クリップ11を囲むことにより、実質的に、骨11および骨当てプレート12を囲むように配置される。この構成によれば、環状クリップ14が外れる可能性を低くし、環状クリップ14による固定を強化することができる。
【0037】
本発明に係る骨折治療具は、その構成を次のように変更することも可能である。
【0038】
上記の実施形態では、骨当てプレート12に対して環状クリップ14を別部材として作製したが、骨当てプレート12の両側の側辺部分に湾曲部14Bが延設されるようにして、骨当てプレートと環状クリップを一体的に作製することも可能である。
【0039】
上記の第1および第2の実施形態では、3本のネジ部材13と2つの環状クリップ14を併用した構成であったが、前述した通り、環状クリップの個数および形状・形態等を変更することにより、環状クリップの固定力または固定性能を高め、環状クリップのみで骨当てプレート12を骨11に固定するように構成することも可能である。この場合には、例えば、環状クリップの太さ、湾曲度等の形状および構造(弛み防止のための補助部材の付加等)を、固定力等を高めるように変更することが好ましい。この例によれば、環状クリップのみで固定できるので、ネジ部材の使用を完全になくすことができる。
【0040】
また骨の治療の対象を「骨折」について説明したが、治療具の適用例はこれに限定されない。
【0041】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る骨折治療具は、整形外科による骨の外科治療におけるプレート固定法に利用される。
【符号の説明】
【0043】
10 骨折治療具
11 骨
11A 骨折部位
11A−1 骨折箇所
11A−2 骨断片
12 骨当てプレート
12A,12B 溝
12C 孔
13 ネジ部材
14 環状クリップ
14A 直線的部分
14B 湾曲部
14C 隙間
15 矢印
21 環状クリップ