(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属インゴットを溶解させ、よって前記外側層により放出される熱により加熱される、前記内側層の前記一部に向けて崩壊する溶融金属を形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
相
本明細書における「相(phase)」という用語は、熱力学的相図に見出すことのできる相を示すことができる。相とは、空間(例、熱力学系)の領域であって、その領域全体にわたる材料の物理的特性は本質的に均一である。物理的特性の例は、密度、屈折率、化学的組成および格子周期性を含む。相の簡単な説明は、化学的に均一、物理的に明確、および/または機械的に分離可能である材料の領域である。たとえば、ガラスのジャーの中の氷および水からなる系において、角氷は1つの相であり、水は第2の相であり、水上の湿った空気は第3の相である。ジャーのガラスはもう1つの別個の相である。相は固溶体を示してもよく、それは2成分、3成分、4成分もしくはそれ以上の溶体であってもよく、または相はたとえば金属間化合物などの化合物を示してもよい。別の例として、アモルファス相は結晶相とは異なる。
【0015】
金属、遷移金属および非金属
「金属」という用語は、電気的陽性の化学元素を示す。本明細書における「元素(element)」という用語は一般的に、周期表に見出され得る元素を示す。物理的には、基底状態の金属原子は、占有状態に近い空状態を有する部分的に満たされたバンドを含む。「遷移金属」という用語は、周期表の3族から12族の金属元素のいずれかであり、それらは不完全な内側電子殻を有し、一連の元素における電気的陽性が最高のものと最低のものとの間の遷移リンクの役割をする。遷移金属は、複数の原子価、着色した化合物、および安定な錯イオンを形成する能力を特徴とする。「非金属」という用語は、電子を失って陽イオンを形成する能力を有さない化学元素を示す。
【0016】
適用に依存して、あらゆる好適な非金属元素またはその組み合わせが用いられてもよい。合金(または「合金組成物」)は、たとえば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそれ以上の非金属元素など、複数の非金属元素を含んでもよい。非金属元素は周期表の13〜17族に見出されるあらゆる元素であってもよい。たとえば、非金属元素はF、Cl、Br、I、At、O、S、Se、Te、Po、N、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、Pb、およびBのうちのいずれか1つであってもよい。ときには、非金属元素が13〜17族における特定のメタロイド(例、B、Si、Ge、As、Sb、Te、およびPo)を示してもよい。一実施形態において、非金属元素はB、Si、C、P、またはその組み合わせを含んでもよい。したがって、合金はたとえばホウ化物、炭化物、またはその両方などを含んでもよい。
【0017】
遷移金属元素は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、水銀、ラザホジウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウム、およびウンウンビウムのいずれかであってもよい。一実施形態において、遷移金属元素を含有するBMGは、Sc、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、およびHgのうちの少なくとも1つを有してもよい。適用に依存して、あらゆる好適な遷移金属元素またはその組み合わせが用いられてもよい。合金組成物は、たとえば少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそれ以上の遷移金属元素など、複数の遷移金属元素を含んでもよい。
【0018】
ここに記載される合金または合金「サンプル」または「試料」合金は、あらゆる形状またはサイズを有してもよい。たとえば、合金は粒子の形状を有してもよく、それはたとえば球形、楕円体、ワイヤ状、棒状、シート状、フレーク状、または不規則な形状などの形状であってもよい。その粒子はあらゆるサイズを有してもよい。たとえば、粒子の平均直径は約1ミクロンから約100ミクロン、たとえば約5ミクロンから約80ミクロン、たとえば約10ミクロンから約60ミクロン、たとえば約15ミクロンから約50ミクロン、たとえば約15ミクロンから約45ミクロン、たとえば約20ミクロンから約40ミクロン、たとえば約25ミクロンから約35ミクロンなどであってもよい。たとえば一実施形態において、粒子の平均直径は約25ミクロンから約44ミクロンである。いくつかの実施形態においては、たとえばナノメートル範囲のものなどのもっと小さい粒子、またはたとえば100ミクロンを超えるものなどのもっと大きい粒子が用いられてもよい。
【0019】
合金サンプルまたは試料は、もっと大きな寸法のものであってもよい。たとえば、合金サンプルはバルク構造構成要素、たとえばインゴット、電子デバイスのハウジング/ケーシング、またはミリメートル、センチメートルもしくはメートル範囲の寸法を有する構造構成要素の一部などであってもよい。
【0020】
固溶体
「固溶体(solid solution)」という用語は、固形の溶体を示す。「溶体(solution)」という用語は、2つまたはそれ以上の物質の混合物を示し、それは固体、液体、気体、またはその組み合わせであってもよい。混合物は均質であっても不均質であってもよい。「混合物(mixture)」という用語は、互いに組み合わされ、かつ一般的に分離可能である2つまたはそれ以上の物質の組成物である。一般的に、その2つまたはそれ以上の物質は互いに化学的に組み合わされていない。
【0021】
合金
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される合金粉末組成物は完全に合金化されていてもよい。一実施形態において、「合金」とは2つまたはそれ以上の金属の均質な混合物または固溶体を示し、一方の原子は他方の原子間の間隙位置を置換または占有している。たとえば、黄銅は亜鉛と銅との合金である。合金は複合体(composite)とは異なり、たとえば金属性マトリックス中の1つまたはそれ以上の化合物など、金属マトリックス中の1つまたはそれ以上の元素の部分的または完全な固溶体を示してもよい。本明細書における合金という用語は、単一の固相微細構造を与え得る完全な固溶体合金と、2つまたはそれ以上の相を与え得る部分的な溶体との両方を示し得る。本明細書に記載される合金組成物は、合金を含むもの、または合金含有複合体を含むものを示してもよい。
【0022】
よって、完全に合金化された合金は構成要素の均質な分布を有してもよく、固溶体相、化合物相、またはその両方であってもよい。本明細書において用いられる「完全に合金化された(fully alloyed)」という用語は、誤差許容範囲内のわずかなばらつきを説明してもよい。たとえば、この用語は少なくとも90%の合金化、たとえば少なくとも95%の合金化、たとえば少なくとも99%の合金化、たとえば少なくとも99.5%の合金化、たとえば少なくとも99.9%の合金化などを示してもよい。本明細書におけるパーセンテージは、状況に応じて体積パーセントまたは重量パーセンテージのいずれを示してもよい。これらのパーセンテージは、合金の一部ではない組成物または相に関するものであってもよい不純物によって均衡を取られてもよい。
【0023】
アモルファスまたは非晶質固体
「アモルファス」または「非晶質固体」とは、結晶の特徴である格子周期性を欠く固体のことである。本明細書で用いられる「アモルファス固体(amorphous solid)」は、加熱の際にガラス転移によって軟化して液状の状態に変わるアモルファス固体である「ガラス」を含む。一般的に、アモルファス材料は結晶のような長距離秩序特徴を有さないが、化学結合の性質によって原子長規模で何らかの短距離秩序を有することはある。アモルファス固体と結晶固体との区別は、たとえばx線回折および透過電子顕微鏡法などの構造的特徴付け技術によって定められる格子周期性に基づいて行われてもよい。
【0024】
「秩序(order)」および「無秩序(disorder)」という用語は、多粒子系における何らかの対称性または相関性の存在または不在を示す。「長距離(long−range)秩序」および「短距離(short−range)秩序」という用語は、材料内の秩序を長さ規模に基づいて区別するものである。
【0025】
固体における秩序の最も厳密な形は格子周期性である。すなわち、特定のパターン(単位格子内の原子の配置)が何度も繰り返されることによって、空間の並進的に不変のタイリングが形成される。これは結晶を定義する特性である。可能な対称性は、14種のブラヴェ格子および230種の空間群に分類されている。
【0026】
格子周期性は長距離秩序を与える。ただ1つの単位格子が既知であれば、並進対称性によって、任意の距離におけるすべての原子位置を正確に予測することが可能である。通常はその逆も真であるが、例外はたとえば、完全に決定論的なタイリングを有するが格子周期性を有さない準結晶などの場合である。
【0027】
長距離秩序は、同じサンプルの離れた部分が相関した挙動を示すような物理系を特徴付ける。これは相関関数、すなわちスピン−スピン相関関数G(x,x’)=<s(x),s(x’)>として表すことができる。
【0028】
上の関数において、sはスピン量子数であり、xは特定の系における距離関数である。この関数はx=x’のときには1に等しく、距離|x−x’|が増加するにつれて減少する。典型的に、大きな距離においてこの関数はゼロに向けて指数関数的に減少し、この系は無秩序になったと考えられる。しかし、この相関関数が大きな|x−x’|において一定の値に向けて減少するとき、その系は長距離秩序を有するといえる。この関数が距離の累乗としてゼロに向けて減少するとき、それは準長距離秩序と呼ばれ得る。大きな値の|x−x’|を構成するものは相対的であることに留意されたい。
【0029】
たとえばスピングラスなど、ある系の挙動を定めるいくつかのパラメータが時間とともに進化しない確率変数である(すなわちそれらは急冷または凍結されている)とき、その系は急冷無秩序を示すといえる。それは、確率変数がそれ自体で進化することを許されているアニール無秩序とは反対である。本明細書における実施形態は、急冷無秩序を含む系を含む。
【0030】
本明細書に記載される合金は、結晶性であっても、部分的に結晶性であっても、アモルファスであっても、実質的にアモルファスであってもよい。たとえば、合金サンプル/試料は少なくともいくらかの結晶化度を含んでもよく、その粒子/結晶のサイズはナノメートルおよび/またはマイクロメートルの範囲であってもよい。代替的に、合金は実質的にアモルファスであってもよく、たとえば完全にアモルファスであってもよい。一実施形態において、合金粉末組成物は少なくとも実質的にアモルファスではなく、たとえば実質的に結晶性であり、たとえば完全に結晶性である。
【0031】
一実施形態において、他の部分はアモルファスの合金の中に1つの結晶または複数の結晶が存在することは、合金中の「結晶相」と解釈されてもよい。合金の結晶化度の程度(またはいくつかの実施形態においては略して「結晶化度」)とは、合金中に存在する結晶相の量を示してもよい。その程度は、たとえば合金中に存在する結晶の分率などを示してもよい。分率(fraction)は、状況に応じて体積分率または重量分率を示してもよい。アモルファス合金がどれほど「アモルファス」であるかという尺度はアモルファス性(amorphicity)であってもよい。アモルファス性は、結晶化度の程度によって測定されてもよい。たとえば一実施形態において、低度の結晶化度を有する合金は高度のアモルファス性を有するといえる。たとえば一実施形態において、60vol%の結晶相を有する合金は、40vol%のアモルファス相を有し得る。
【0032】
アモルファス合金またはアモルファス金属
「アモルファス合金」とは、50体積%を超えるアモルファス含有量、好ましくは90体積%を超えるアモルファス含有量、より好ましくは95体積%を超えるアモルファス含有量、最も好ましくは99体積%超からほぼ100体積%のアモルファス含有量を有する合金である。上述のとおり、アモルファス性が高い合金は同時に結晶化度の程度が低いことに留意されたい。「アモルファス金属」とは、無秩序な原子規模の構造を有するアモルファス金属材料のことである。ほとんどの金属は結晶性であり、したがって高度に秩序のある原子配置を有するのに対し、アモルファス合金は非結晶性である。液体状態から冷却の際にこうした無秩序構造が直接生成されるような材料は、「ガラス」と呼ばれることがある。したがって、アモルファス金属は一般的に「金属ガラス」または「ガラス状金属」と呼ばれる。一実施形態において、バルク金属ガラス(bulk metallic glass)(「BMG」)とは、少なくとも部分的にアモルファスの微細構造を有する合金を示してもよい。しかしながら、極度に迅速な冷却の他にもアモルファス金属を生成するやり方はいくつかあり、それは物理蒸着、固体反応、イオン照射、溶融回転、および機械的合金化を含む。どのように調製されたかに関わらず、アモルファス合金は単一クラスの材料であってもよい。
【0033】
アモルファス金属はさまざまな急速冷却法によって生成されてもよい。たとえば、回転する金属ディスク上に溶融金属をスパッタリングすることによってアモルファス金属を生成してもよい。1秒当り何百万度というオーダーの急速冷却は結晶を形成するには速過ぎる可能性があるため、材料はガラス状の状態に「閉じ込められる」。加えて、たとえばバルク金属ガラスなど、厚い層におけるアモルファス構造の形成を可能にするために十分に低い臨界冷却速度によって、アモルファス金属/合金が生成されてもよい。
【0034】
「バルク金属ガラス」(「BMG」)、バルクアモルファス合金、およびバルク凝固アモルファス合金という用語は、本明細書において交換可能に用いられる。これらの用語は、少なくともミリメートル範囲の最小寸法を有するアモルファス合金を示す。たとえば、その寸法は少なくとも約0.5mm、たとえば少なくとも約1mm、たとえば少なくとも約2mm、たとえば少なくとも約4mm、たとえば少なくとも約5mm、たとえば少なくとも約6mm、たとえば少なくとも約8mm、たとえば少なくとも約10mm、たとえば少なくとも約12mmなどであってもよい。ジオメトリによって、その寸法は直径、半径、厚さ、幅、長さなどを示してもよい。さらに、BMGは少なくとも1つの寸法がセンチメートル範囲である金属ガラスであってもよく、その寸法はたとえば少なくとも約1.0cm、たとえば少なくとも約2.0cm、たとえば少なくとも約5.0cm、たとえば少なくとも約10.0cmなどであってもよい。いくつかの実施形態においては、BMGの少なくとも1つの寸法が少なくともメートル範囲であってもよい。BMGは、金属ガラスに関して上述した形状または形のいずれを取ってもよい。したがって、本明細書においていくつかの実施形態に記載されるBMGは、1つの重要な局面において従来の蒸着技術によって作製される薄膜とは異なっていてもよい。すなわち、前者は後者よりもかなり大きな寸法であってもよい。
【0035】
アモルファス金属は、純粋な金属ではなく合金であってもよい。合金は顕著に異なるサイズの原子を含有することによって、溶融状態における自由体積が低くなる(したがって他の金属および合金よりも高い桁の粘性を有する)ことがある。その粘性は、原子が十分に移動して秩序ある格子を形成することを妨げる。この材料構造の結果として、冷却の際の収縮が少なくなり、塑性変形に対する抵抗性がもたらされることがある。いくつかの場合には結晶性材料の弱点である粒界がないことは、たとえば摩耗および腐食に対するより良好な抵抗性をもたらすことがある。一実施形態において、アモルファス金属は技術的にはガラスであるが、酸化物ガラスおよびセラミックよりもかなり強靱であって脆性が低いことがある。
【0036】
アモルファス材料の熱伝導率は、その結晶性対応物よりも低いことがある。よりゆっくりした冷却の際にもアモルファス構造を形成させるために、合金を3つまたはそれ以上の構成要素で作ることによって、より高いポテンシャルエネルギおよびより低い形成確率を有する複雑な結晶単位をもたらしてもよい。アモルファス合金の形成はいくつかの因子に依存し得る。すなわち、合金の構成要素の組成、構成要素の原子半径(高い充填密度および低い自由体積を達成するために、好ましくは12%を超える有意差を有する)、ならびに構成要素の組み合わせを混合することによる負の発熱(negative heat)、結晶核形成の阻害、および溶融金属が過冷却状態にとどまる時間の延長である。しかしながら、アモルファス合金の形成は多くの異なる変数に基づいているため、ある合金組成物がアモルファス合金を形成するかどうかを予め判断することは困難であり得る。
【0037】
たとえばホウ素、シリコン、リン、およびその他のガラス形成剤などと磁性金属(鉄、コバルト、ニッケル)とのアモルファス合金は磁性であってもよく、低い保磁力および高い電気抵抗を有してもよい。抵抗が高いことによって、交番磁界を受けたときの渦電流による損失が低くなり、これはたとえば変圧器の磁気コアなどとして有用な特性である。
【0038】
アモルファス合金は、さまざまな潜在的に有用な特性を有してもよい。特に、アモルファス合金は類似の化学組成の結晶合金よりも強い傾向があり、かつ結晶合金よりも大きな可逆的(「弾性」)変形を持続できる。アモルファス金属はその強度をそれらの非結晶性構造から直接得るものであり、それは結晶合金の強度を制限する欠点(転位など)を何も有さなくてもよい。たとえば、Vitreloy(商標)として公知である最近のアモルファス金属の1つは、高純度チタンのほぼ2倍の引張り強度を有する。いくつかの実施形態において、室温の金属ガラスは延性がなく、張力を加えられると突然故障する傾向があり、そのために差し迫った故障が顕在化しないために、信頼性が重要であるような適用における材料適用が制限される。したがってこの課題を克服するために、延性結晶金属の樹枝状の粒子または繊維を含有する金属ガラスマトリックスを有する金属マトリックス複合体材料が用いられてもよい。代替的には、悪化(embitterment)をもたらす傾向のある元素(例、Ni)が少ないBMGが用いられてもよい。たとえば、Niを含まないBMGを用いることによってBMGの延性を改善してもよい。
【0039】
バルクアモルファス合金の別の有用な特性は、それらが真のガラスになり得ることである。言い換えると、バルクアモルファス合金を加熱によって軟化して流動させることができる。これによって、ポリマーとまったく同様の、たとえば射出成形などによる容易な処理を可能にできる。その結果、スポーツ機器、医療用装置、電子部品および機器、ならびに薄膜を作製するためにアモルファス合金を用いることができる。高速酸素燃料技術を介して、アモルファス金属の薄膜を保護コーティングとして蒸着することもできる。
【0040】
材料はアモルファス相、結晶相、またはその両方を有してもよい。アモルファス相および結晶相は、同じ化学組成を有していて、微細構造のみが異なっていてもよい。すなわち一方がアモルファス、他方が結晶である。一実施形態における微細構造とは、25×倍率またはそれ以上の顕微鏡によって明らかになる材料の構造を示す。代替的に、2つの相は異なる化学組成および微細構造を有してもよい。たとえば、組成物は部分的にアモルファスであっても、実質的にアモルファスであっても、完全にアモルファスであってもよい。
【0041】
上述のとおり、アモルファス性の程度(および反対に結晶化度の程度)は、合金中に存在する結晶の分率によって測定できる。その程度は、合金中に存在する結晶相の重量分率、体積分率を示してもよい。部分的にアモルファスの組成物とは、その少なくとも約5vol%、たとえば少なくとも約10vol%、たとえば少なくとも約20vol%、たとえば少なくとも約40vol%、たとえば少なくとも約60vol%、たとえば少なくとも約80vol%、たとえば少なくとも約90vol%などがアモルファス相である組成物を示してもよい。「実質的に(substantially)」および「約(about)」という用語は、本出願の別の場所に定義されている。したがって、少なくとも実質的にアモルファスの組成物とは、その少なくとも約90vol%がアモルファスであるもの、たとえば少なくとも約95vol%、たとえば少なくとも約98vol%、たとえば少なくとも約99vol%、たとえば少なくとも約99.5vol%、たとえば少なくとも約99.8vol%、たとえば少なくとも約99.9vol%などのものを示してもよい。一実施形態において、実質的にアモルファスの組成物の中には、いくらかの付帯的なわずかな量の結晶相が存在していてもよい。
【0042】
一実施形態において、アモルファス合金組成物は、アモルファス相に関して均質であってもよい。組成が均一である物質は均質である。これは不均質な物質と対照的である。「組成(composition)」という用語は、物質の化学組成および/または微細構造を示す。ある物質の体積を半分に分けたときに、両方の半体が実質的に同じ組成を有するとき、その物質は均質である。たとえば、粒子懸濁液の体積を半分に分けたときに、両方の半体が実質的に同じ体積の粒子を有するとき、その粒子懸濁液は均質である。しかし、個々の粒子を顕微鏡で見ることが可能かもしれない。均質な物質の別の例は空気であり、空気中には異なる成分が同等に浮遊しているが、空気中の粒子、気体および液体を別々に分析したり、空気から分離したりできる。
【0043】
アモルファス合金に関して均質である組成物とは、微細構造全体に実質的に均一に分布されたアモルファス相を有する組成物を示してもよい。言い換えると、その組成物は巨視的に、組成物全体にわたって実質的に均一に分布されたアモルファス合金を含む。代替的実施形態において、組成物は、中に非アモルファス相を有するアモルファス相を有する複合体の組成物であってもよい。非アモルファス相とは1つの結晶または複数の結晶であってもよい。結晶は、たとえば球形、楕円体、ワイヤ状、棒状、シート状、フレーク状、または不規則な形状など、あらゆる形状の粒子の形であってもよい。一実施形態において、結晶は樹枝状の形を有してもよい。たとえば、少なくとも部分的にアモルファスの複合体組成物は、アモルファス相マトリックス中に分散された樹枝状結晶の形状の結晶相を有してもよい。その分散は均一であっても不均一であってもよく、アモルファス相と結晶相とは同じ化学組成を有しても、異なる化学組成を有してもよい。一実施形態において、それらは実質的に同じ化学組成を有する。別の実施形態において、結晶相はBMG相よりも延性が高くてもよい。
【0044】
本明細書に記載される方法は、あらゆるタイプのアモルファス合金に適用可能であってもよい。同様に、本明細書において組成物または物品の構成要素として記載されるアモルファス合金は、あらゆるタイプのものであってもよい。アモルファス合金は、元素Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Be、またはその組み合わせを含んでもよい。つまり、合金はその化学式または化学組成にこれらの元素のあらゆる組み合わせを含んでもよい。これらの元素は異なる重量または体積パーセンテージで存在してもよい。たとえば、鉄「ベースの(based)」合金とは、わずかではない重量パーセンテージの鉄が中に存在する合金を示してもよく、その重量パーセントは、たとえば少なくとも約20wt%、たとえば少なくとも約40wt%、たとえば少なくとも約50wt%、たとえば少なくとも約60wt%、たとえば少なくとも約80wt%などであってもよい。代替的に、一実施形態において、上述のパーセンテージは重量パーセンテージである代わりに体積パーセンテージであってもよい。したがって、アモルファス合金はジルコニウムベース、チタンベース、プラチナベース、パラジウムベース、金ベース、銀ベース、銅ベース、鉄ベース、ニッケルベース、アルミニウムベース、モリブデンベースなどであってもよい。合金はさらに、特定の目的に適合するために上記の元素のいずれかを含まなくてもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、合金または合金を含む組成物は、ニッケル、アルミニウム、もしくはベリリウム、またはその組み合わせを実質的に含まなくてもよい。一実施形態において、合金または複合体は、ニッケル、アルミニウム、ベリリウム、またはその組み合わせを完全に含まない。
【0045】
たとえば、アモルファス合金は式(Zr,Ti)a(Ni,Cu,Fe)b(Be,Al,Si,B)cを有してもよく、ここでa、bおよびcの各々は重量または原子パーセンテージを表す。一実施形態においては、原子パーセンテージでaは30から75の範囲であり、bは5から60の範囲であり、cは0から50の範囲である。代替的に、アモルファス合金は式(Zr,Ti)a(Ni,Cu)b(Be)cを有してもよく、ここでa、bおよびcの各々は重量または原子パーセンテージを表す。一実施形態においては、原子パーセンテージでaは40から75の範囲であり、bは5から50の範囲であり、cは5から50の範囲である。加えて、合金は式(Zr,Ti)a(Ni,Cu)b(Be)cを有してもよく、ここでa、bおよびcの各々は重量または原子パーセンテージを表す。一実施形態においては、原子パーセンテージでaは45から65の範囲であり、bは7.5から35の範囲であり、cは10から37.5の範囲である。代替的に、合金は式(Zr)a(Nb,Ti)b(Ni,Cu)c(Al)dを有してもよく、ここでa、b、cおよびdの各々は重量または原子パーセンテージを表す。一実施形態においては、原子パーセンテージでaは45から65の範囲であり、bは0から10の範囲であり、cは20から40の範囲であり、dは7.5から15の範囲である。前述の合金系の例示的実施形態の1つは商品名Vitreloy(商標)であるZr−Ti−Ni−Cu−Beベースのアモルファス合金、たとえば米国カリフォルニア州のリキッドメタルテクノロジーズ(Liquidmetal Technologies)により製作されるVitreloy−1およびVitreloy−101などである。異なる系のアモルファス合金のいくつかの例を表1に提供している。
【0046】
加えて、アモルファス合金は鉄を含む合金、たとえば(Fe,Ni,Co)ベースの合金などであってもよい。こうした組成物の例は、米国特許第6,325,868号、第5,288,344号、第5,368,659号、第5,618,359号、および第5,735,975号、イノウエ(Inoue)ら、Appl.Phys.Lett.,第71巻,p464(1997)、シェン(Shen)ら、Mater.Trans.,JIM,第42巻,p2136(2001)、ならびに日本国特許出願第200126277号(特開2001303218号)に開示されている。例示的組成の1つはFe72Al5Ga2P11C6B4である。別の例はFe72Al7Zr10Mo5W2B15である。本明細書におけるコーティングに用いられ得る別の鉄ベース合金系は米国特許出願公開第2010/0084052号に開示されており、ここではアモルファス金属がたとえばマンガン(1から3原子(atomic)%)、イットリウム(0.1から10原子%)およびシリコン(0.3から3.1原子%)などを括弧内に与えられた組成の範囲で含有し、かつ以下の元素を括弧内に与えられた組成の規定された範囲で含有する:クロム(15から20原子%)、モリブデン(2から15原子%)、タングステン(1から3原子%)、ホウ素(5から16原子%)、炭素(3から16原子%)、および残余部(balance)の鉄。
【0047】
上述のアモルファス合金系はさらに付加的な元素を含んでもよく、それはたとえばNb、Cr、V、Coを含む付加的な遷移金属元素などであってもよい。付加的な元素は、約30wt%以下、たとえば約20wt%以下、たとえば約10wt%以下、たとえば約5wt%以下などで存在してもよい。一実施形態において、付加的な任意の元素はコバルト、マンガン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、イットリウム、チタン、バナジウムおよびハフニウムのうちの少なくとも1つであることによって、炭化物を形成し、摩耗および腐食抵抗性をさらに改善する。さらなる任意の元素は亜リン酸、ゲルマニウムおよびヒ素を合計で最大約2%、好ましくは1%未満含むことによって、融点を下げてもよい。その他の付帯的な不純物は約2%未満、好ましくは0.5%未満であるべきである。
【0048】
いくつかの実施形態において、アモルファス合金を有する組成物は少量の不純物を含み得る。不純物元素は、たとえば機械的特性(例、堅さ、強度、破壊機構など)の改善、および/または腐食抵抗性の改善など、組成物の特性を変更するために意図的に加えられてもよい。代替的には、たとえば処理および製造の副生成物として得られるものなど、不可避の付帯的な不純物として不純物が存在してもよい。不純物は約10wt%以下、たとえば約5wt%、たとえば約2wt%、たとえば約1wt%、たとえば約0.5wt%、たとえば約0.1wt%などであってもよい。いくつかの実施形態において、これらのパーセンテージは重量パーセンテージである代わりに体積パーセンテージであってもよい。一実施形態において、合金サンプル/組成物は本質的にアモルファス合金からなる(付帯的な少量の不純物のみを伴う)。別の実施形態において、組成物はアモルファス合金からなる(観察可能な微量の不純物を伴わない)。
表1.例示的なアモルファス合金組成
【表1】
【0049】
溶融器具
本明細書に記載される一実施形態は、元素の合金化および/または金属合金の溶融のために用いられる物品または器具を提供する。一実施形態において、この物品は容器であってもよく、それは一実施形態においてはるつぼまたはるつぼアセンブリの形であってもよい。本明細書に記載される物品は、金属合金を成形および鋳造するためにも用いられ得る。
【0050】
一実施形態における「合金化する(alloying)」という用語は、予め定められた量の複数の個別の「原料(raw)」元素(例、金属元素または非金属元素)を加熱し、それらを溶かして混ぜ合わせることによって少なくとも1つの合金を形成するプロセスを示す。たとえば、これらの元素の各々は粉末、バー、インゴットなどの形であってもよい。いくつかの場合には、少なくとも部分的にアモルファスの合金を含むマスター合金を用いて、付加的な元素とともに合金化させてもよい。本明細書に記載されるいくつかの実施形態におけるこのプロセスは、これらの元素/マスター合金を特定の構成に積み重ねて、混合物中の最低融点を有する元素を軟化、溶融、湿潤、および/または他の元素と融合させることによって、混合物を崩壊、混合、および/または最終的に均質にさせるステップを含んでもよい。個々の構成要素がほぼ溶融して互いに混合されると、通常はその溶融物をある予め定められた程度だけ過熱することによって、完全に溶融した均質な合金生成物(例、合金供給原料)を確実に得てもよい。加熱および/または混合されるべき構成要素(すなわち合金元素または合金化元素)は、「合金チャージ(alloy charge)」と呼ばれることがある。
【0051】
一実施形態における「溶融(melting)」という用語は上述のステップを含んでもよいが、より一般的には、合金供給原料(アモルファスまたは結晶のいずれであってもよいし、その間のいずれの程度の結晶化度であってもよい)のすでに均質(または比較的均質)な小片を取り、それをその融点を超えるまで加熱して、それをさらに処理するプロセスを説明するために用いられてもよい。言い換えると、合金化と比べて、本明細書における「溶融」とは、合金化のプロセス(元素は溶融状態にあるときに合金化し得るため)に加えて、処理の前に均質な合金供給原料を取ってそれを加熱することによって溶融させるプロセスを示してもよい。合金化および/または溶融の際に用いられる容器は、いくつかの実施形態において「るつぼ」と呼ばれる。
【0052】
本明細書に記載される一実施形態における「成形(molding)」という用語は、「熱可塑性成形(thermoplastic forming)」および「熱間成形(hot forming)」と交換可能に用いられてもよい。特定的には、本明細書におけるこの用語は、合金供給原料をガラス遷移温度Tgよりも高いが溶融温度Tmよりも低い温度まで加熱し、次いでそこから形を成形するプロセスを示してもよい。前に与えられたとおり、本明細書において用いられる「供給原料(feedstock)」という用語は部分的にアモルファスであっても、実質的にアモルファスであっても、完全にアモルファスであってもよい。言い換えると、いくつかの場合における成形プロセスは、溶融/合金化プロセスの後に行われる。なぜなら前者は後者の生成物を成形/形成することだからである。
【0053】
本明細書の一実施形態における「鋳造(casting)」という用語は、合金供給原料をその合金の溶融点を超える温度まで加熱した後に、その溶融供給原料から形を成形するプロセスを示してもよい。「鋳造」および「成形」という用語は時折交換可能に用いられてもよい。たとえば「射出成形」の場合、成形のプロセスは鋳造のプロセスと類似であり得る。合金化および/または溶融の際に用いられる容器は、いくつかの実施形態において「モールド」と呼ばれる。
【0054】
るつぼは、いくつかの点でモールドとは異なっていてもよい。「るつぼ」とは空洞を有する容器を示してもよく、この容器は金属、ガラス、および顔料の製造、ならびにいくつかの最近の実験プロセスに対して用いられる耐火性材料を含み、それはこの容器の内容物を溶融するか、または別様に変化させるために十分に高い温度に耐え得るものである。るつぼの空洞のジオメトリは通常、最終金属/合金生成物のジオメトリに最小限の影響を与える。なぜなら、生成物はしばしばその後に別個の成形プロセスにおいて所望の形状に成形されるからである。これに対し、「モールド」とはプラスチック、ガラス、金属、またはセラミック原材料などの液体が充填される中空にされたブロックを示してもよい。液体はモールド内で硬化または凝固し、その形状になる。言い換えると、モールドの空洞のジオメトリは最終金属/合金生成物のジオメトリに対する顕著な役割を有し得る。なぜなら後者は前者に適合するからである。したがって、モールドの空洞のジオメトリの設計は重要であり得る。加えて、すべての場合に当てはまるわけではないが、一般的に合金化/溶融プロセスは合金チャージのTmよりも高い温度で行われる必要があるが、成形の温度はそうではないため、一般的にるつぼはモールドよりもかなり多く加熱およびその衝撃(例、下記に説明されるとおりのアタックおよびコンタミネーション)に耐え得る必要がある。
【0055】
本明細書に記載される物品は空洞を有する内側容器を含んでもよく、この内側容器はセラミックを含み、この物品はさらに外側容器を含んでもよく、この外側容器はサセプタを含み、内側容器の外表面の少なくとも一部は外側容器の内表面に接触しており、内側容器はモールドから取外し可能である。一実施形態において、この物品はるつぼ、またはるつぼアセンブリの一部であってもよい。たとえば、
図1に示されるとおり、内側容器はるつぼであってもよく、それは外側容器の空洞内に置かれていてもよい。
【0056】
内側容器はセラミックを含んでもよいし、本質的にセラミックからなっていてもよいし、セラミックからなっていてもよい。セラミックは、周期表のIVA、VAおよびVIA族から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。特定的には、その元素はTi、Zr、Hf、Th、Va、Nb、Ta、Pa、Cr、Mo、W、およびUのうちの少なくとも1つであってもよい。一実施形態において、セラミックは酸化物、窒化物、酸窒化物、ホウ化物、炭化物、炭窒化物、ケイ酸塩、チタン酸塩、ケイ化物、またはその組み合わせを含んでもよい。たとえば、セラミックはイットリア、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ホウ素、ホウ化チタン(TiB2)、ケイ酸ジルコニウム(または「ジルコン」)、チタン酸アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、炭化タングステン、アルミニウム酸窒化物(または「サイアロン」)、またはその組み合わせを含んでもよい。内側容器は、誘導加熱において用いられるような無線周波数(RF)に対して非感受性の材料を含んでもよい。こうしたRF非感受性材料の1つはイットリアである。代替的には、RFに対して感受性の材料が用いられてもよい。
【0057】
別の実施形態において、内側容器は耐火性材料を含んでもよい。耐火性材料は、たとえばモリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、レニウムなどの耐火性金属を含んでもよい。代替的に、耐火性材料は耐火性セラミックを含んでもよい。セラミックは前述のセラミックのいずれかであってもよく、それはイットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア、二ホウ化チタン、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、炭化タングステン、シリカ、および石英ガラス(fused silica)を含む。
【0058】
外側容器はサセプタを含んでもよい。本明細書における「サセプタ」とは、電磁エネルギを吸収してそれを熱に変換する能力を有するために用いられる材料を示してもよく、ときにはその熱が赤外線熱放射として再放射されるように設計されてもよい。このエネルギは、工業用加熱プロセスおよびときにはマイクロ波調理にも用いられる無線周波数またはマイクロ波放射であってもよい。一般的に公知のあらゆるサセプタが用いられてもよい。たとえば、サセプタはグラファイト、耐火性材料、またはその両方を含んでもよい。耐火性材料は上述されている。代替的に、サセプタは炭化ケイ素、ステンレス鋼、および/またはあらゆるその他の導電性材料を含んでもよい。
【0059】
一実施形態において、外側容器は、内側容器の材料よりも熱伝導性の高い材料を含んでもよい。よって、外側容器は内側容器よりも熱伝導性が高くなり得る。外側容器は、誘導加熱の際のRFに対して感受性の材料を含んでもよい。代替的には、RFに対して非感受性の材料が用いられてもよい。
【0060】
外側容器は熱源に接続される。熱源はあらゆる好適な熱源であってもよい。たとえば、
図1に示されるとおり、熱源は外側容器の少なくとも一部を囲む誘導加熱コイルであってもよい。内側容器11は外側容器12の空洞の内側にある。この実施形態において、内側容器11はセラミックを含むるつぼであってもよい。るつぼは、合金化および/または溶融のために好適な、当該技術分野において公知のあらゆる商業的に入手可能なるつぼであってもよい。内側容器11の少なくとも一部は外側容器12と接触している。
図1は単なる概略図であり、代替バージョンの設計が存在し得ることに留意されたい。たとえば、11の高さは12の高さよりも高くてもよい(図示されるとおり)が、より低くても、同じ高さであってもよい。内側容器11の壁の厚さは、外側容器12の壁の厚さと同じであっても、それより大きくても小さくてもよい。内側および外側容器はあらゆる望ましいジオメトリを有してもよい。たとえば、それは円筒形、球形、立方体、矩形、または不規則な形状であってもよい。
【0061】
外側容器および内側容器は、さまざまなやり方で互いに接触していてもよい。たとえば一実施形態においては、内側容器の外表面の実質的に全体が外側容器の内表面と接触する。1つの場合には、
図1に提供される概略図に示されるとおり、内側容器が外側容器の空洞内に密接に適合してもよい。ジオメトリによっては、(
図1の内側容器の底部に示されるとおり)内側および外側容器の間に隙間があってもよい。代替的には、2つの容器のジオメトリが隙間のないものであってもよい。したがって、(
図1に示されるとおり)内側および外側容器は内側容器の壁全体によって接触していてもよい。代替的には、内側容器の特定の壁(例、底部壁)のみが外側容器と接触していてもよい。
【0062】
内側容器は外側容器から取外されて、再挿入されてもよい。一実施形態において、取外し可能な内側容器は再使用可能であってもよい。たとえば、内側容器はモールドであってもよく、モールドの内側の成形金属/合金部分を取出してから、その後の成形プロセスのためにモールドが外側容器に再挿入されてもよい。この再使用可能性は、内側容器が合金化、溶融、または鋳造のために用いられる場合にも適用され得る。以下に示されるとおり、ここに提供される内側容器は、驚くべきことに自身に接触する合金の湿潤が少ないことが示され、それによって金属合金による内側容器の内表面のコンタミネーション、およびその逆のリスクが最小化される。その結果として、内側るつぼは再使用され得る。
【0063】
ここに記載される構成の物品は、驚くべき利点を有するるつぼ(またはるつぼアセンブリ)として用いられ得る。たとえばこの物品は、たとえばイットリアまたはサイアロンなどの熱衝撃感受性材料を含むるつぼを、加熱中または加熱後にるつぼの完全性を失うことなく使用することを可能にできる。一実施形態において、内側容器はRF非感受性材料を含むるつぼであってもよい。内側容器の壁は、サセプタを含み得る外側容器の壁に対するライナーの働きもしてもよい。よって、内側容器の空洞内のアモルファス合金構成要素の代わりに、RF非感受性材料がRF放射を捕えてもよい。
【0064】
代替的実施形態の1つはるつぼアセンブリを提供し、そのるつぼアセンブリは、セラミックを含む内側層と、サセプタを含む外側層とを含み、サセプタは(たとえばグラファイトなどの形の)炭素を含んでもよい。一実施形態において、内側層の外表面の少なくとも一部は外側層の内表面に接触する。
【0065】
内側層のセラミックは、あらゆる形状またはサイズであってもよい。内側層は独立したるつぼである代わりに、サセプタに対するライナーの働きをしてもよい。内側層は、たとえばセラミックの単数または複数のシートで作られた中空の円筒であってもよい。代替的に、内側層はたとえば吹き付けられた微粒子など、複数の微粒子の形を有してもよい。微粒子はあらゆる公知の吹き付け技術によって吹き付けられてもよい。微粒子は粒子の形であってもよく、その粒子はたとえば球形、棒状、フレーク状、またはあらゆる不規則な形状など、あらゆる形状またはサイズであってもよい。セラミックは前述のセラミックのいずれかであってもよく、たとえばイットリア、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ホウ素、ホウ化チタン、ケイ酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ、炭化タングステン、またはその組み合わせなどであってもよい。他方で、外側層は前述の外側容器に用いられ得る材料のいずれかを含んでもよい。
【0066】
溶融プロセス
上述のとおり、ここに記載される物品は、溶融および/または合金化プロセスに用いられてもよい。一実施形態における溶融プロセスは、合金化されるべき合金元素の混合物(または合金チャージ)を提供するステップと、混合物をるつぼの中で合金元素の溶融温度よりも高い温度まで加熱するステップとを含んでもよい。一実施形態における合金は、少なくとも部分的にアモルファスの合金を示すが、いくつかの場合における合金は、結晶合金をも示してもよい。一実施形態において、合金はBMGである。るつぼは、たとえば本明細書に記載される物品のいずれかにおけるものなどの、あらゆる好適なるつぼであってもよい。特定的には、るつぼは外側容器の空洞の内側にあってもよい。るつぼは成形プロセスに用いられてもよいが、本明細書に提供される実施形態のいくつかにおいては、るつぼは溶融または成形に用いられることが好ましい。
【0067】
溶融実施形態の1つにおいて、混合物は複数の個別の合金元素または少なくとも1つのマスター合金を含んでもよく、それらは内側容器の内側に配置され得る最終合金組成物を作製するために用いられ、それらは十分に高い温度に加熱されることによって、融合して互いに溶け合い、溶融合金を形成してもよい。装置は、たとえば
図2および
図3に示されるものなどであってもよい。たとえば加熱プロセス全体など、加熱の少なくとも一部は、たとえばRF周波数によって行われる1つの誘導加熱などの誘導加熱など、上述の加熱技術のいずれかによって行われてもよい。合金と空気との反応を回避するために、たとえば低真空または高真空などの部分的真空下で加熱が行われてもよい。一実施形態において、真空環境は約10-2トル以下、たとえば約10-3トル以下、たとえば約10-4トル以下などであってもよい。代替的に、加熱および/または配置(disposing)のステップは、たとえばアルゴン、窒素、ヘリウム、またはその混合物などの不活性雰囲気において行われてもよい。適用に対して好適であれば、たとえば周囲空気などの非不活性気体が用いられてもよい。別の実施形態において、そのステップは部分的真空と不活性雰囲気との組み合わせにおいて行われてもよい。一実施形態において、加熱は真空誘導溶融によって行われてもよい。加熱は、たとえばアルゴンによるものなどの不活性雰囲気において行われてもよい。
【0068】
合金元素は金属元素、非金属元素、またはその両方を含んでもよい。その元素は上述の合金のいずれの元素であってもよい。加えて、それらの元素がともに溶解した後、合金はその液相線温度以上のある温度、すなわち、合金がたとえば完全に溶融する温度など、少なくとも実質的に溶融している温度にて、ある期間保持されてもよい。その期間の長さは合金の化学によって異なっていてもよい。結果として、ここに提供されるるつぼを介して、元素および/またはマスター合金は、均質な合金または合金供給原料に変わり得る。溶融した合金化元素をたとえば急冷などにより冷却して固体の供給原料にすることを含む、追加の処理が適用されてもよい。供給原料は、その後の成形プロセスにおいて望ましい予め定められたジオメトリに成形されてもよい。
【0069】
混合物は、Zr、Fe、Hf、Cu、Co、Ni、Al、Sn、Be、Ti、Pt、Cu、Ni、P、Si、B、Pd、Ag、Ge、Ti、V、Nb、Zr、Be、Fe、C、B、P、Mn、Mo、Cr、Y、Si、Y、Sc、Pb、Mg、Ca、Zn、La、W、Ru、またはその組み合わせを含んでもよい。上述の合金のいずれかを形成するために用いられ得るあらゆるその他の元素も用いられてもよい。たとえば、合金はたとえばBMGなどのアモルファス合金であってもよい。特に、合金はPt、Cu、Ni、P、Si、B、Pd、Ag、Ge、またはその組み合わせを含む貴金属ベースのアモルファス合金であってもよい。合金はTi、V、Nb、Zr、Be、またはその組み合わせを含む樹枝状アモルファス合金であってもよい。代替的に、合金はFe、C、B、P、Mn、Mo、Cr、Y、またはその組み合わせを含むFeベースのアモルファス合金であってもよい。加えて、合金はSi、Y、Sc、および/またはPbの少量の添加を含むアモルファス合金のいずれかであってもよい。加えて、合金はMg、Ca、Zn、La、W、Ru、またはその組み合わせを含むアモルファス合金の1つであってもよい。
【0070】
上述のとおり、内側容器は、内側容器の壁と合金供給原料との間に加熱プロセスの結果として(またはそのプロセスの間に)生じる湿潤を最小限にし得る材料を含むことが望ましい。たとえば、内側容器はイットリア、サイアロン、または内側容器に対する候補として上述された材料のいずれかを含んでもよい。「湿潤(wetting)」という用語は、当該技術分野において容易に理解される。いくつかの実施形態において、湿潤を欠く(lack of wetting)とは、溶融金属が急冷されて固体になった後に、内側容器の内壁の上に顕著な量の合金が観察されないことを示してもよい。壁に合金元素が存在するのは、合金と内側容器との間の物理的相互作用/反応(例、吸着)または化学的相互作用/反応(例、化学反応)によるものであり得る。一実施形態において、湿潤を欠くとは、内側容器の内壁の上に、いくらかの微量のものを除き、合金が実質的に存在しないことを示してもよい。加えて、ここに記載される物品は、合金からの元素と、内側容器および/または外側容器を含むるつぼアセンブリ全体の元素との相互拡散および/またはコンタミネーションを最小化できる。たとえば、溶融した加熱合金チャージ、および結果として得られる固体合金供給原料は、内側容器、外側容器、またはその両方から拡散した元素を少なくとも実質的に含まなくてもよい。たとえば、外側層(または容器)がグラファイトサセプタを含む場合、合金はグラファイトサセプタからの炭素を実質的に含まなくてもよい。
【0071】
さらに、湿潤を欠くことは、溶融合金の元素と内側容器(またはいくつかの場合には外側容器)の元素との反応(化学的または物理的)がないことに反映されてもよい。一実施形態において、ここに提供される物品は、内側容器内の溶融合金チャージまたは個々の元素が、内側容器との界面において内側容器と反応することを実質的に防いでもよい。こうした反応は、合金チャージのるつぼの壁に対する「アタック」または代替的に「コンタミネーション」と呼ばれることもある。
【0072】
反応とは、さまざまなタイプの反応を示してもよい。たとえば反応とは、内側容器の元素が溶融合金に溶解することによって、容器の構成要素元素による溶融合金のコンタミネーションをもたらすことを示してもよい。溶解は、内側容器を構成する結晶の破壊、およびそれらの元素の溶融合金への拡散を伴ってもよい。加えて溶解は、溶融合金の内側容器への拡散も示してもよい。拡散は、合金(チャージ)の元素が容器内の粒子(または結晶)および/または粒界の中に拡散的に輸送されることを伴ってもよい。いくつかの場合には、反応とは、溶融合金と内側容器との界面においてそれら両方からの元素を含む結晶相が生成されることを示してもよい。これらの結晶相は酸化物、窒化物、炭化物などであってもよいし、これらの結晶相は金属間化合物であってもよい。それらは撹拌によって界面から溶融合金のバルクに運ばれて、さらなるコンタミネーションをもたらすこともある。
【0073】
一実施形態において、「アタック」(または「コンタミネーション」)は、最終溶融合金中の不純物元素の濃度を測定する(内側容器を含む元素が合金に入った程度を示す)か、または最終溶融合金の主要元素の、所望の公称組成からの偏差(合金元素の内側容器への拡散を示す)のいずれかによって定量化されてもよい。これは、合金組成の測定、ならびに主要構成要素と、たとえば酸素、炭素、窒素、硫黄、水素、および内側容器の元素などの不純物元素との両方に関する公称組成との比較を伴ってもよい。不純物元素に対する許容度は、溶融される実際の合金組成物によって異なる。さらに、「アタック」の付加的な尺度の1つは処理後の内側容器の壁の厚さであってもよく、これは実質的な量の容器材料が溶融合金に溶解したかどうかを示すものである。
【0074】
内側容器はるつぼから取外し可能であるため、内側容器を取外し、洗浄し(またはあらゆる生成後処理を受けさせ)て、るつぼの外側容器の空洞に再挿入してもよい。代替的には、新しい交換内側容器を外側容器の空洞に挿入してもよい。
【0075】
一実施形態において、内側るつぼ容器は前処理されてもよい。たとえば、グラファイトを含むるつぼなどのるつぼの内側を、ZrもしくはSi粉末のコーティング、または炭素と反応するZrもしくはSiを含有する化合物によって前処理してもよい。次いでるつぼを真空下で加熱することにより、粉末を強制的にるつぼと反応させて、炭化ジルコニウムまたは炭化ケイ素を形成してもよい。前処理されたるつぼを用いて合金供給原料を溶融させてもよく、グラファイトから合金への炭素付加が最小化される。炭化ケイ素を内側容器のセラミックとして直接用いることに加えて、この前処理法は、改善された熱衝撃を有するセラミックるつぼを生成するための代替的技術となり得る。
【0076】
熱衝撃抵抗性の改善
前述のとおり、ここに記載される物品は、溶融器具として用いられるときに既存のるつぼよりも改善された熱衝撃抵抗性を有し得る。特に、一実施形態においては、外側容器と内側容器(すなわちるつぼ)とを組み合わせることによって、ここに記載されるるつぼは外側容器を有さないるつぼに比べて、亀裂の開始に関する改善された熱衝撃抵抗性を有する。熱衝撃抵抗性の測定は、当該技術分野における通常の当業者に容易に理解され得る。たとえばセラミックの場合、熱衝撃抵抗性の測定は通常、固体小片をさまざまな高温にゆっくりと加熱し、次いでそれをたとえば水などの低温媒体内で急冷することを伴う。ASTM C1525規格は、この測定に関する何らかのガイダンスを提供している。一実施形態においては、亀裂の誘導によって保持曲げ強度が実質的に低減されることなく固体小片が急冷され得る最大温度間隔が、熱衝撃抵抗性を表してもよい。
【0077】
1つの材料、または種々の材料を合わせたものの熱衝撃抵抗性は、さまざまな技術によって改善され得る。たとえば、より高い熱伝導性を有する材料、より低い熱膨張係数を有する材料、より高い強度またはより低い弾性係数を有する材料、より高い靱性または亀裂に対する抵抗性を有する材料を用いることによって改善が達成されてもよいし、材料自体の熱勾配を低減させるために材料をもっとゆっくり加熱することによって熱衝撃抵抗性が改善されてもよい。加えて、これらの技術のあらゆる組み合わせ、またはあらゆるその他の一般的に公知の技術によって改善が達成されてもよい。
【0078】
一実施形態において、ここに記載されるるつぼアセンブリは、材料自体の熱勾配を低減させるために材料をもっとゆっくり加熱することによって熱衝撃抵抗性を改善してもよい。特定的には、サセプタを外側で用いることによって、内側容器は低い熱衝撃抵抗性および/または破壊靱性を有する材料を含んでもよい。サセプタは内側容器を均一に加熱でき、かつ内側容器と中の合金チャージとがゆっくりと、より制御された態様で加熱されることを可能にし、それらは両方とも内側容器内の熱勾配を低減させる助けとなり、熱衝撃による故障を防ぐ。
【0079】
その結果、ここに記載される物品は、内側容器の壁の中への亀裂および/または壁を通る亀裂を効果的に防ぐことができる。たとえば1つの場合には、ここに記載される物品の内側容器の壁の中への亀裂および/または壁を通る亀裂が観察されない。たとえば、既存の溶融技術はしばしば、イットリアるつぼ単独の使用を伴う。しかし、合金チャージが誘導的に加熱されてるつぼ内に崩壊するとすぐに、約1000℃を超える溶融合金が比較的低温のるつぼを打つ衝撃によって、直ちにるつぼに亀裂が入る。つまり、るつぼは導電性ではないため、誘導によって加熱されない。
図6は、加熱後の熱衝撃によるるつぼの破壊を示す。これに対し、ここに記載される物品において提供されるとおり、一実施形態において
図7(c)に示されるとおり、るつぼの外側がサセプタを介して加熱されれば、るつぼは合金が崩壊する前に内側の合金の溶融温度近くまで温められるために、熱勾配は実質的に低減される。
【0080】
ここに記載される装置の結果としてもたらされる高い熱衝撃抵抗性のために、るつぼがある期間、たとえば少なくとも約1000℃、たとえば少なくとも約1100℃、たとえば少なくとも約1200℃、たとえば少なくとも約1300℃、たとえば少なくとも約1400℃、たとえば少なくとも約1500℃などの高温で加熱された後も、内側容器(またはるつぼ)は観察可能な亀裂を実質的に発生しない。その期間の長さは温度によって異なっていてもよく、その長さは数分から数時間の範囲であってもよい。たとえば、その期間は少なくとも約5分、たとえば少なくとも約10分、たとえば少なくとも約20分、たとえば少なくとも約40分、たとえば少なくとも約1時間、たとえば少なくとも約2時間、たとえば少なくとも約4時間、たとえば少なくとも約6時間、たとえば少なくとも約8時間、たとえば少なくとも約10時間、たとえば少なくとも約12時間などであってもよい。一実施形態において、温度が1200℃であるとき、少なくとも8時間にわたって観察可能な亀裂は実質的に観察されない。別の実施形態において、温度が少なくとも約1300℃、たとえば少なくとも約1400℃であるとき、約5分から約60分の間は観察可能な亀裂は実質的に観察されない。
【0081】
電子デバイス
前述のるつぼは、BMGを伴う製作プロセスに用いられてもよい。BMGの優れた特性のために、BMGはさまざまなデバイスおよび部品の構造的構成要素に作製され得る。こうしたタイプのデバイスの1つは電子デバイスである。
【0082】
本明細書における電子デバイスとは、当該技術分野において公知であるあらゆる電子デバイスを示してもよい。たとえば、電子デバイスは電話機、たとえば携帯電話および陸線電話など、またはあらゆる通信デバイス、たとえばiPhone(商標)などを含むスマートフォン、および電子eメール送信/受信デバイスなどであってもよい。電子デバイスは、たとえばデジタルディスプレイ、TVモニタ、電子書籍リーダ、ポータブル・ウェブブラウザ(例、iPad(商標))、およびコンピュータモニタなどのディスプレイの一部であってもよい。さらに電子デバイスは、ポータブルDVDプレーヤー、従来のDVDプレーヤー、ブルーレイディスクプレーヤー、ビデオゲームコンソール、音楽プレーヤー、たとえばポータブル音楽プレーヤー(例、iPod(商標))などを含む娯楽デバイスであってもよい。さらに電子デバイスは、たとえば画像、ビデオ、音響のストリーミングの制御などの制御を提供するデバイス(例、Apple TV(商標))の一部であってもよいし、電子デバイスに対するリモートコントロールであってもよい。電子デバイスは、たとえばハードドライブタワーのハウジングまたはケーシング、ラップトップハウジング、ラップトップキーボード、ラップトップトラックパッド、デスクトップキーボード、マウス、およびスピーカなどのコンピュータまたはその付属物の一部であってもよい。さらにこの物品は、たとえば腕時計または掛け(置き)時計などのデバイスに適用されてもよい。
【0083】
本明細書において、冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の対象が1つまたは1つより多く(すなわち少なくとも1つ)あることを示すために用いられる。たとえば、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂または2つ以上のポリマー樹脂を意味する。本明細書において言及されるあらゆる範囲は包括的である。本明細書を通じて用いられる「実質的に(substantially)」および「約(about)」という用語は、小さな変動を記載して説明するために用いられる。たとえば、それらの用語は±5%以下、たとえば±2%以下、たとえば±1%以下、たとえば±0.5%以下、たとえば±0.2%以下、たとえば±0.1%以下、たとえば±0.05%以下などを示してもよい。
【実施例】
【0084】
非制限的な実施例
さまざまなるつぼ材料におけるコンタミネーションのレベルをテストするために、一連の実験が行われた。
【0085】
イットリア
このセラミックはLM1を弱く湿潤することが見出され、化学分析では実質的な過熱の1時間後でも混入物のレベルは許容できる(低い)ものであることが示された。さらに、サセプタを含有する外側容器がないとき、イットリアの熱衝撃抵抗性は非常に低く、溶融合金が崩壊するとすぐにるつぼに亀裂が入ることが見出された。
【0086】
代替的なイットリアるつぼ実施形態をテストした。Hfベースのアモルファス合金を溶融するためのグラファイトるつぼの内側にイットリアを吹き付けコートした。合金を導入する前に、このイットリアコーティングを1200℃にて8時間焼き付けた。溶融プロセスの後、意外なことに合金の湿潤およびグラファイトへのアタックはみられなかった。
【0087】
サイアロン
窒化ケイ素の変形物であるサイアロンは、概してかなり良好な熱衝撃抵抗性および靱性を有するセラミックである。実験結果から、サイアロンは実験中に接触したほとんどの溶融合金による湿潤およびアタックに抵抗できることが示された。窒素レベルはわずかしか増加しないことが見出され、サイアロンはZrベース合金の処理のために望ましい材料であると判定された。
【0088】
炭化ケイ素
炭化ケイ素は、供給原料のドロスの量を低減するための多孔性フィルタ材料として用いられた。SiCによってさまざまな合金の複数の鋳造物を作り、概してZrベース合金はこの材料を非常に弱く湿潤するか、またはまったく湿潤しないことが観察された。炭化ケイ素は、コンタミネーションを低減するための合金溶融に対する良好な候補となることが判定された。熱衝撃を低減させるために、上述のとおり、グラファイトサセプタの内側に炭化ケイ素るつぼを置くことが提案された。
【0089】
図2は、サイアロンとZrベースのアモルファス合金との適合性をテストするための実験装置の写真を提供するものである。るつぼ21は、0.005トル未満に排気された石英筐体22の内側に置かれ、排気石英筐体と、サイアロンるつぼと、るつぼ内の合金インゴットとの外側の周囲に誘導コイル23が置かれた。
図3に示されるとおり、頂部のホース31は真空ポンプに接続されており、コイル23はRF電源に接続されている。
【0090】
図4(a)〜4(b)は、インゴットをサイアロン内で1000℃にて約30分間誘導的に溶融し、合金を室温に冷却したところを示す写真を提供するものである。次いでるつぼを意図的に破壊して、合金が湿潤してサイアロンに結合したかどうかを評価した。実際には、合金は元のるつぼに残留物を残さずに完全にサイアロンの外に出た。これは、湿潤が非常に低いこと、すなわち合金処理に対する良好な適合性を示すものである。
図5は、30分間に大量の銅が合金から蒸発したことを示す写真を提供するものであり、ボートをサイアロンスリーブでライニングするときにも同じ銅蒸着が観察された。
【0091】
イットリアるつぼをジルコニウムベース合金とともに1000℃にて1時間加熱し、次いで徐冷した。
図6は、合金を急速に加熱し、溶融し、るつぼに充填した後にるつぼの頂部が破壊されたことを示す写真を提供するものである。合金はゆっくりと冷却され、亀裂が入ったるつぼの中に保持された。しかし、合金とるつぼとの間の湿潤は低く、るつぼの断片を除去することはかなり容易であり、処理に対する良好な適合性が示された。
【0092】
化学分析によって示されるとおり、コンタミネーションは低く、その結果は表2に提供される。イットリアはグラファイトに比べてO含有量をわずかに増やしたことが示される。この結果は、テストされたセラミックるつぼが合金チャージによる低い湿潤を有する可能性があることを示す。よって、cサセプタの外側容器を導入することによって、るつぼアセンブリ全体が、低い湿潤および改善された熱衝撃抵抗性という利益を得ることになる。
表2.異なるるつぼ設計の異なるコンタミネーションレベルを示す化学分析結果。
【表2】
【0093】
比較のために、グラファイトサセプタ72内のイットリアるつぼ71によって以下の実験を行った。
図7(a)〜7(c)に示されるとおり、これらは両方とも石英容器73の内側に保持された。
【0094】
イットリアるつぼに入れた合金インゴットは、Zr−Ti−Cu−Ni−Beベース合金(LM1)であり、その組成は表2に示される。サセプタを誘導的に加熱して合金インゴットを溶融し、合金インゴットはイットリアるつぼ内に崩壊した。合金を約1000℃にて1時間保持し、その後ゆっくりと室温まで冷却させた。合金が溶融してるつぼを充填する際に、イットリアるつぼはグラファイトサセプタからの放射によって均一に加熱されていることが観察され、さらにるつぼ内に(熱衝撃による)亀裂は観察されなかった。
図7(b)〜7(c)を参照されたい。