特許第6397839号(P6397839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397839
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】油圧モータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20180913BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20180913BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20180913BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   F15B11/02 R
   F15B11/08 B
   F15B11/00 D
   E02F9/22 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-37071(P2016-37071)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-155763(P2017-155763A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和裕
(72)【発明者】
【氏名】新留 隆志
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭55−025282(JP,B2)
【文献】 実開昭57−113766(JP,U)
【文献】 実開昭58−020705(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22;21/14
E02F 9/22
F16K 17/00−17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧油の供給により回転駆動される油圧モータ、及び前記油圧モータの負荷圧に応じて、前記油圧モータに対するブレーキ圧を生成するブレーキバルブを備え、
前記ブレーキバルブは、
圧油を流入又は流出させる第1及び第2のバルブポートと、
前記第1及び第2のバルブポートから前記油圧モータへの圧油の流入側の流路をそれぞれ形成する第1及び第2のチェック弁と、
前記油圧モータから前記第1及び第2のバルブポートへの圧油の流出側の流路を形成するカウンタバランス弁とを有し、
前記カウンタバランス弁は、
スプール摺動穴が形成された弁ケーシングと、
前記スプール摺動穴に軸方向へ移動可能に挿嵌され、前記第1及び第2のバルブポートと前記油圧モータとの間の流路を切換えるカウンタバランス弁用スプールと、
前記カウンタバランス弁用スプールの軸方向の両側にそれぞれ設けられ、前記第1及び第2のバルブポートからの圧油をパイロット圧として前記カウンタバランス弁用スプールに作用させる第1及び第2のチャンバと、
前記第1及び第2のバルブポートと前記油圧モータとの間の流路を遮断する中立位置へ向けて前記カウンタバランス弁用スプールを付勢するカウンタバランス弁用付勢部材とを含む油圧駆動装置に適用され、
前記油圧モータの回転駆動を制御する油圧モータの制御装置において、
前記カウンタバランス弁用スプール内に設けられ、前記第1及び第2のチャンバ間の流路を開閉する開閉弁を備え、
前記開閉弁は、
前記カウンタバランス弁用スプールが前記中立位置から軸方向へ移動することにより、前記第1及び第2のバルブポートのうち流入側のバルブポートと前記第1及び第2のチェック弁のうち流入側のチェック弁との間の圧力が作用する第1の受圧部と、
前記カウンタバランス弁用スプールが前記中立位置から軸方向へ移動することにより、前記第1及び第2のチェック弁のうち流入側のチェック弁と前記油圧モータとの間の圧力が作用する第2の受圧部と、
これらの第1及び第2の受圧部の圧力差による推力を受けて前記第1及び第2のチャンバ間の流路を連通させる開閉弁用スプールとを含むことを特徴とする油圧モータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧モータの制御装置において、
前記開閉弁は、前記第1及び第2のチャンバ間の流路を遮断する閉位置へ向けて前記開閉弁用スプールを付勢する開閉弁用付勢部材を含み、
前記開閉弁用付勢部材は、前記第1及び第2の受圧部の圧力差が予め設定された閾値以上になったとき、前記開閉弁が前記閉位置から前記第1及び第2のチャンバ間の流路を連通する開位置に切換わるように構成されたことを特徴とする油圧モータの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の油圧モータの制御装置において、
前記開閉弁は、前記第1及び第2のチャンバ間の流路に形成された絞りを含むことを特徴とする油圧モータの制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の油圧モータの制御装置において、
前記油圧モータが停止したときに、前記油圧モータの出力軸に対して制動力を付与するブレーキ装置を備え、
前記ブレーキ装置は、前記第1の受圧部に作用する圧力をブレーキ解除圧として用いて前記油圧モータの回転駆動の制動を解除するように構成されたことを特徴とする油圧モータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設車両に搭載される油圧モータの回転駆動を制御する油圧モータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧により駆動されて走行する建設車両では、油圧ポンプから吐出された圧油の流れを方向切換弁によって切換えることにより、圧油を油圧モータの一方、又は他方のポートに供給し、かつ油圧モータからの戻り油を他方、又は一方のポートから方向切換弁を経てタンクに連通することにより、油圧モータを一方向、例えば前進方向へ、又は他方向の後進方向へ回転駆動する制御が行われている。
【0003】
この種の油圧モータの制御装置の従来技術としては、負荷に制動を与えるネガティブ型のブレーキ装置を有する走行用油圧モータと、この油圧モータを油圧源に接続する一対の主管路と、この各主管路の途中に設けられ、油圧源から油圧モータに給排する圧油の方向を切換える方向切換弁と、この方向切換弁と油圧モータとの間に位置して各主管路の途中に設けられた一対のチェック弁及び圧力制御弁からなるカウンタバランス弁とを備えた走行用油圧モータ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−72570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1に開示された従来技術の走行用油圧モータとして、例えば、アキシャルピストン型斜板式モータが使用される。この種のアキシャルピストン型斜板式モータは、油圧モータの内部のピストンが油圧モータの回転数に応じて高速で往復運動しており、ピストンとロータとの間に介在する油膜がピストンとロータが金属接触を起こすことを防いでいる。ピストンの摺動速度が大きく、かつシリンダ穴内の圧力が小さい状態では、油膜切れによりピストンとロータが金属接触して凝着(焼付き)が発生し易くなる。ピストンが焼付くと、油圧モータは回転できなくなって故障するので、好ましくない。
【0006】
一般に、ピストンの摺動速度は油圧モータに流入する流量に比例し、油圧モータの回転数が高い状態として外部から観測される。具体的には、建設車両に搭載された油圧モータにおいてピストンの焼付きが発生し易い状態として、例えば、建設車両がクローラ走行車両であれば、クローラの泥落としのための走行用油圧モータの片側で空回しを行うときや、緩斜面を高速降坂するとき等、油圧モータへの供給流量が大きく、かつ油圧モータにかかる負荷が小さい状態がある。
【0007】
このような状態においてピストンの焼付きを防ぐためには、例えば、油圧モータからの戻り油の流出側におけるモータポート圧力、いわゆるモータ背圧を増加させることが考えられる。モータ背圧が増加すると、ロータの流出側に形成されたシリンダ穴の圧力が増加するのに加え、油圧モータの回転負荷が増加し、ロータの流入側に形成されたシリンダ穴の圧力も増加するため、油膜切れを抑制してピストンが焼付く可能性を低減することができる。
【0008】
しかし、特許文献1の従来技術は、油圧モータの回転数が高い状態であるときに、モータ背圧を増加させる手段については考慮されておらず、また管路抵抗を増やす等して常にモータ背圧を大きく設定すると、油圧回路の圧力損失が増大して油圧モータの機械効率が低下するので、得策ではない。さらに、油圧モータのモータ背圧を制御するための制御装置を既存のブレーキバルブとは別に設置しようとすると、その設置に要するコストの増加、油圧モータを回転駆動する油圧駆動装置の大型化、この油圧駆動装置に追加した各バルブの誤動作による信頼性の低下等の不都合が生じることが懸念されている。
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、モータ背圧を適切に増加させてピストンの焼付きを抑制すると共に、設置に伴う不都合を解消することができる油圧モータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の油圧モータの制御装置は、圧油の供給により回転駆動される油圧モータ、及び前記油圧モータの負荷圧に応じて、前記油圧モータに対するブレーキ圧を生成するブレーキバルブを備え、前記ブレーキバルブは、圧油を流入又は流出させる第1及び第2のバルブポートと、前記第1及び第2のバルブポートから前記油圧モータへの圧油の流入側の流路をそれぞれ形成する第1及び第2のチェック弁と、前記油圧モータから前記第1及び第2のバルブポートへの圧油の流出側の流路を形成するカウンタバランス弁とを有し、前記カウンタバランス弁は、スプール摺動穴が形成された弁ケーシングと、前記スプール摺動穴に軸方向へ移動可能に挿嵌され、前記第1及び第2のバルブポートと前記油圧モータとの間の流路を切換えるカウンタバランス弁用スプールと、前記カウンタバランス弁用スプールの軸方向の両側にそれぞれ設けられ、前記第1及び第2のバルブポートからの圧油をパイロット圧として前記カウンタバランス弁用スプールに作用させる第1及び第2のチャンバと、前記第1及び第2のバルブポートと前記油圧モータとの間の流路を遮断する中立位置へ向けて前記カウンタバランス弁用スプールを付勢するカウンタバランス弁用付勢部材とを含む油圧駆動装置に適用され、前記油圧モータの回転駆動を制御する油圧モータの制御装置において、前記カウンタバランス弁用スプール内に設けられ、前記第1及び第2のチャンバ間の流路を開閉する開閉弁を備え、前記開閉弁は、前記カウンタバランス弁用スプールが前記中立位置から軸方向へ移動することにより、前記第1及び第2のバルブポートのうち流入側のバルブポートと前記第1及び第2のチェック弁のうち流入側のチェック弁との間の圧力が作用する第1の受圧部と、前記カウンタバランス弁用スプールが前記中立位置から軸方向へ移動することにより、前記第1及び第2のチェック弁のうち流入側のチェック弁と前記油圧モータとの間の圧力が作用する第2の受圧部と、これらの第1及び第2の受圧部の圧力差による推力を受けて前記第1及び第2のチャンバ間の流路を連通させる開閉弁用スプールとを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油圧モータの制御装置によれば、モータ背圧を適切に増加させてピストンの焼付きを抑制すると共に、設置に伴う不都合を解消することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る油圧モータの制御装置を搭載した建設車両の一例を示す側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る油圧モータの制御装置が適用される油圧駆動装置の油圧回路の構成を示す図である。
図3図2に示す油圧モータの一例として挙げたアキシャルピストン型斜板式モータの構成を示す概念図である。
図4図2に示す開閉弁が設けられたカウンタバランス弁の内部の構造を示す断面図であり、カウンタバランス弁が中立位置に保持された状態、及び開閉弁が閉位置に保持された状態を示す図である。
図5図4のA−A線に沿う断面図である。
図6図2に示す開閉弁が設けられたカウンタバランス弁の内部の構造を示す断面図であり、カウンタバランス弁が駆動位置(左位置)に切換えられた状態、及び開閉弁が閉位置に保持された状態を示す図である。
図7図6のA−A線に沿う断面図である。
図8図2に示す開閉弁が設けられたカウンタバランス弁の内部の構造を示す断面図であり、カウンタバランス弁が駆動位置(左位置)に保持された状態、及び開閉弁が開位置に切換えられた状態を示す図である。
図9図8のA−A線に沿う断面図である。
図10図2に示す開閉弁が設けられたカウンタバランス弁の内部の構造を示す断面図であり、カウンタバランス弁が駆動位置(左位置)から中立位置へ戻される状態、及び開閉弁が開位置に保持された状態を示す図である。
図11図10のA−A線に沿う断面図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る油圧モータの制御装置が適用される油圧駆動装置の油圧回路の構成を示す図である。
図13図12に示す開閉弁が設けられたカウンタバランス弁の内部の構造を示す断面図であり、カウンタバランス弁が駆動位置(左位置)に保持された状態、及び開閉弁が開位置に切換えられた状態を示す図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る油圧モータの制御装置が適用される油圧駆動装置の油圧回路の構成を示す図である。
図15図14に示す開閉弁が設けられたカウンタバランス弁の内部の構造を示す断面図であり、カウンタバランス弁が中立位置に保持された状態、及び開閉弁が閉位置に保持された状態を示す図である。
図16図14に示す開閉弁が設けられたカウンタバランス弁の内部の構造を示す断面図であり、カウンタバランス弁が駆動位置(左位置)に切換えられた状態、及び開閉弁が閉位置に保持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る油圧モータの制御装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0014】
[第1実施形態]
本発明に係る油圧モータの制御装置の第1実施形態は、例えば図1に示すように、クローラ式の走行装置を備えた油圧ショベル100に搭載される。この油圧ショベル100は、走行装置としての走行体101と、この走行体101上に旋回フレーム102aを介して旋回可能に設けられた旋回体102と、この旋回体102の前方に取付けられ、上下方向に回動して掘削等の作業を行う作業装置としてのフロント作業機103とを備えている。
【0015】
走行体101は、旋回体102の下方に配置され、前後方向に延設されたトラックフレーム101Aと、トラックフレーム101Aの前部に回動可能に取り付けられた従動輪101Bと、トラックフレーム101Aの後部に回動可能に取り付けられた駆動輪101Cと、これらの従動輪101Bと駆動輪101Cとの間に巻回され、図示しないローラを介して張設された無端状の履帯101Dと、駆動輪101Cに出力軸21(図2参照)が接続された油圧モータ2とから構成されている。
【0016】
このような構成の走行体101では、油圧モータ2が圧油の供給により回転駆動されると、油圧モータ2の出力軸21のトルクが伝達されて駆動輪101Cが回転し、この駆動輪101Cに摺接する履帯101Dが回動すると共に、従動輪101Bが履帯101Dを介して駆動輪101Cに従動することにより、車体が油圧モータ2の回転方向に応じて前進又は後進するようになっている。すなわち、本発明の第1実施形態に係る油圧モータ2は走行モータとして機能する。
【0017】
旋回体102は、前部に配置され、フロント作業機103を操作するオペレータが搭乗する運転室104と、後部に配置され、車体が傾倒しないように車体のバランスを保つカウンタウェイト105と、これらの運転室104とカウンタウェイト105との間に配置され、油圧モータ2に圧油を供給するためのエンジンや油圧ポンプ等の油圧源(図示せず)が内部に搭載された機械室106と、運転室104の下方に配置され、油圧源により生成された圧油を用いて油圧モータ2を回転駆動する後述の油圧駆動装置1(図2参照)とを備えている。
【0018】
フロント作業機103は、基端が旋回フレーム102aに回動可能に取付けられ、車体に対して上下方向へ回動するブーム103Aと、このブーム103Aの先端に回動可能に取付けられ、車体に対して上下方向へ回動するアーム103Bと、このアーム103Bの先端に回動可能に装着され、車体に対して上下方向へ回動するバケット103Cとを含んでいる。
【0019】
また、フロント作業機103は、旋回体102とブーム103Aとを接続し、伸縮することによりブーム103Aを回動させるブームシリンダ103aと、ブーム103Aとアーム103Bとを接続し、伸縮することによってアーム103Bを回動させるアームシリンダ103bと、アーム103Bとバケット103Cとを接続し、伸縮することによってバケット103Cを回動させるバケットシリンダ103cとを含んでいる。
【0020】
図2は本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置1の油圧回路の構成を示す図である。
【0021】
図2に示すように、油圧駆動装置1は、圧油の流入口と流出口を逆転させることで両方向に回転可能なアキシャルピストン型斜板式モータから成る前述の油圧モータ2と、この油圧モータ2の負荷圧に応じて、油圧モータ2に対するブレーキ圧を生成するブレーキバルブ3と、これらの油圧モータ2及びブレーキバルブ3内を流通する圧油が貯蔵される作動油タンク4とを備えている。
【0022】
図3は本発明の第1実施形態に係る油圧モータ2の構成を示す概念図である。
【0023】
図3に示すように、油圧モータ2は、出力軸21と、この出力軸21の外周側にスプライン結合され、出力軸21と一体となって回転するロータ22と、このロータ22の後述の複数のシリンダ穴22Aにそれぞれ収容される複数のピストン23と、このピストン23の端部に揺動可能に保持され、ロータ22と共に回転する複数のシュー24と、このシュー24が摺接する斜板25と、ロータ22の両端面のうち斜板25と反対側の一端面に摺接する弁板26とを備えている。
【0024】
出力軸21の一端は、軸方向においてロータ22の外側へ突出し、図示しない減速機等を介して走行体101の駆動輪101Cに連結されている。ロータ22は、両端面がそれぞれ斜板25と弁板26に対向して配置されている。また、ロータ22は、内部に各ピストン23を包含する前述の複数のシリンダ穴22Aを有している。
【0025】
これらの各シリンダ穴22Aは、出力軸21を中心としてロータ22の軸方向の周りに一定の間隔をおいて離間され、ロータ22の軸方向、すなわち出力軸21の軸方向に対して平行に配置されている。そして、各シリンダ穴22Aの一端には、弁板26を介して間欠的に連通又は遮断されるシリンダポート22Bが形成されている。
【0026】
各シュー24は、各ピストン23からの押付力によって斜板25の後述の平滑面25Bにそれぞれ押付けられた状態で保持されている。斜板25は、ロータ22に対して傾転可能に支持される斜板本体25Aと、この斜板本体25Aの表面に形成され、シュー24が摺動する前述の平滑面25Bと、出力軸21を挿通する軸挿通穴25Cとから成っている。なお、この軸挿通穴25Cの大きさは、出力軸21を挿通した状態において出力軸21が斜板25の傾転動作の妨げとならないように設定されている。
【0027】
弁板26には、例えば、眉形状を有する一対の給排ポート26A,26Bが形成されており、これらの給排ポート26A,26Bは、ロータ22が出力軸21の軸方向の周りへ回転したときに、各シリンダポート22Bに間欠的に連通するようになっている。従って、弁板26のうち高圧側(圧油の流入側)ポートとして機能する給排ポート26Aと、低圧側(圧油の流出側)ポートとして機能する給排ポート26Bとが分離されることにより、ロータ22の回転角度に応じてシリンダポート22Bに作用する圧油の状態が切換わる。
【0028】
このような構成の油圧モータ2では、弁板26の高圧側の給排ポート26Aから圧油がロータ22のシリンダポート22Bに流入すると、シリンダ穴22A内のピストン23に圧油による高圧が作用してピストン23を押出し始める。このとき、斜板25がピストン23の推力によってシュー24を介して押出され、シュー24と斜板25との当接面である平滑面25Bとピストン23の推力の方向が傾いていることから横分力が発生する。
【0029】
その結果、ピストン23を介してロータ22を軸方向の周りに回転させようとするトルクが発生する。そして、高圧側のシリンダポート22Bでは複数のピストン23が押出され、シュー24が斜板25の平滑面25Bを滑り下りるような運動をするのと連動してロータ22が出力軸21と一体となって回転する。
【0030】
ピストン23が斜板25によって規定される最大ストローク(下死点)に到達すると、ロータ22の回転運動に伴ってシュー24が斜板25の平滑面25Bに沿って押上げられるため、ピストン23はシリンダ穴22A内へ押し戻される。このとき、シリンダ穴22A内の圧油は弁板26の低圧側の給排ポート26Bを通って流出する。
【0031】
一方、ピストン23がシリンダ穴22Aによって規定される最小ストローク位置(上死点)に到達すると、シリンダポート22Bが弁板26の高圧側の給排ポート26Aと連通し、ピストン23は給排ポート26Aからの圧油により再び押出し動作を行う。このように、複数のピストン23がロータ22のシリンダ穴22A内を軸方向に沿って往復運動することにより、油圧モータ2が出力軸21を連続的に回転駆動する。
【0032】
図2において、ブレーキバルブ3は、圧油を流入又は流出させる第1及び第2のバルブポート(以下、第1のバルブポートに符号31Aを付し、第2のバルブポートに符号31Bを付して両者を区別する)と、油圧モータ2に対して圧油を流入又は流出させる第1及び第2のモータポート(以下、第1のモータポートに符号32Aを付し、第2のモータポートに符号32Bを付して両者を区別する)と、後述のカウンタバランス弁35に対して圧油を流入又は流出させる第1及び第2のカウンタバランス弁ポート(以下、第1のカウンタバランス弁ポートに符号33Aを付し、第2のカウンタバランス弁ポートに符号33Bを付して両者を区別する)とを有している。
【0033】
また、ブレーキバルブ3は、バルブポート31A,31Bから油圧モータ2への圧油の流入側の流路をそれぞれ形成する第1及び第2のチェック弁(以下、第1のチェック弁に符号34Aを付し、第2のチェック弁に符号34Bを付して両者を区別する)と、油圧モータ2からバルブポート31A,31Bへの圧油の流出側の流路を形成する前述のカウンタバランス弁35とを有している。
【0034】
カウンタバランス弁ポート33A,33Bは、バルブポート31Aとモータポート32Aとを接続する流路の間、及びバルブポート31Bとモータポート32Bとを接続する流路の間にそれぞれ設けられている。チェック弁34A,34Bは、ポペット型の逆止弁から成り、バルブポート31A,31B側からモータポート32A,32B側への圧油の流れを許容するのに対し、モータポート32A,32B側からバルブポート31A,31B側への圧油の流れを遮断するように動作する。
【0035】
カウンタバランス弁35は、例えば、7ポート3位置のスプリングセンタ式スプール型切換弁から成っている。具体的には、カウンタバランス弁35は、スプール摺動穴が形成された弁ケーシング351(図4参照)と、スプール摺動穴に軸方向へ移動可能に挿嵌され、バルブポート31A,31Bと油圧モータ2との間の流路を切換えるカウンタバランス弁用スプール352とを含んでいる。
【0036】
また、カウンタバランス弁35は、カウンタバランス弁用スプール352の軸方向の両側にそれぞれ設けられ、バルブポート31A,31Bからの圧油をパイロット圧としてカウンタバランス弁用スプール352に作用させる第1及び第2のチャンバ(以下、第1のチャンバに符号353Aを付し、第2のチャンバに符号353Bを付して両者を区別する)と、後述の中立位置AOへ向けてカウンタバランス弁用スプール352を付勢するカウンタバランス弁用付勢部材としての一対のスプリング354A,354Bと、バルブポート31A,31Bとチャンバ353A,353Bとを接続する流路にそれぞれ形成された一対の絞り355A,355Bとを含んでいる。
【0037】
カウンタバランス弁35は、カウンタバランス弁用スプール352における左右のチャンバ353A,353B間の圧力差に応じて、バルブポート31A,31Bとモータポート32A,32Bとの間の流路を遮断する中立位置AO、バルブポート31Aとモータポート32Aとの間の流路を連通し、バルブポート31Bとモータポート32Bとの間の流路を遮断する駆動位置(右位置)AR、及びバルブポート31Bとモータポート32Bとの間の流路を連通し、バルブポート31Aとモータポート32Aとの間の流路を遮断する駆動位置(左位置)ALのいずれかに切換えるように構成されている。
【0038】
カウンタバランス弁用スプール352には、左右のバルブポート31A,31Bから流入した圧油をチャンバ353A,353Bへ導くことにより、これらのチャンバ353A,353Bに作用する圧力差(以下、便宜的にチャンバ差圧と称する)ΔPChに応じた推力が発生する。
【0039】
ここで、バルブポート31Aを圧油の流入側(高圧側)、バルブポート31Bを圧油の流出側(低圧側)とした場合に、チャンバ差圧ΔPChが予め設定された閾値PCr以上になると、カウンタバランス弁用スプール352がスプリング354Bの弾性力に抗して中立位置AOから駆動位置ALへ移動し、流出側(低圧側)のバルブポート31Bと流出側(低圧側)のモータポート32Bとを連通させるように動作する。
【0040】
チャンバ差圧ΔPChが閾値PCrよりも大きく設定された閾値(以下、便宜的にフルストローク必要差圧と称する)PFSに達すると、カウンタバランス弁用スプール352がフルストロークとなり、カウンタバランス弁用スプール352の開口面積Arが最大値Armaxをとる。また、絞り355A,355Bがチャンバ353A,353Bに流出入する圧油の流量を制限することにより、カウンタバランス弁用スプール352の移動を緩やかにして油圧モータ2の出力軸21の回転が急加速又は急減速するのを防止することができる。
【0041】
カウンタバランス弁35は、油圧モータ2の出力軸21が外力によって回転する際(ポンプ作用)、その出力軸21が過剰に回転する油圧モータ2の過回転を抑制する機能を有する。具体的には、油圧モータ2にポンプ作用が発生すると、バルブポート31A,31Bのうち圧油の流入側(高圧側)のバルブポートと圧油の流出側(低圧側)のバルブポートの圧力差(以下、便宜的にバルブポート差圧と称する)ΔPが通常の動作時よりも小さくなる。
【0042】
このように、バルブポート差圧ΔPが小さくなると、これに伴ってチャンバ差圧ΔPChも小さくなり、チャンバ差圧ΔPChがフルストローク差圧PFSよりも小さくなると(ΔPCh<PFS)、カウンタバランス弁用スプール352が駆動位置AR又は駆動位置ALから中立位置AOへ変位し始める。
【0043】
このカウンタバランス弁用スプール352の移動によってその開口面積Arが減少することにより、モータポート32A,32Bのうち油圧モータ2の流出側のモータポートの圧力が上昇して油圧モータ2の回転負荷として作用する。これにより、外力に対してブレーキ圧が発生するので、このブレーキ圧による制動力によって油圧モータ2の過回転を抑制することができる。従って、油圧ショベル100に搭載される走行モータとしての油圧モータ2においては、急な坂の降坂時等に作動して車体の逸走を防止することができる。
【0044】
次に、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置1における圧油の流れについて、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
図2において、バルブポート31Aを圧油の流入側(高圧側)、バルブポート31Bを圧油の流出側(低圧側)とし、バルブポート差圧ΔPに等しいチャンバ差圧ΔPChがフルストローク差圧PFSよりも大きい(ΔP=ΔPCh>PFS)と仮定すると、ブレーキバルブ3内において、カウンタバランス弁35のカウンタバランス弁用スプール352は駆動位置ALで保持される。
【0046】
そのため、バルブポート31Aからモータポート32Aへのカウンタバランス弁35の流路は遮断されているのに対し、バルブポート31Aからモータポート32Aへのチェック弁34Aの流路は連通している。従って、流入側のバルブポート31Aから流入した圧油は、チェック弁34Aを通過し、モータポート32Aを介して油圧モータ2の弁板26における高圧側の給排ポート26Aに流入することにより、油圧モータ2を駆動する。
【0047】
一方、モータポート32Bからバルブポート31Bへのカウンタバランス弁35の流路は連通しているのに対し、モータポート32Bからバルブポート31Bへのチェック弁34Bの流路は遮断されている。従って、油圧モータ2の弁板26における低圧側の給排ポート26Bから流出する圧油は、カウンタバランス弁35の駆動位置AL内の流路を通過し、バルブポート31Bから流出する。
【0048】
このように、油圧駆動装置1において、バルブポート31Aから油圧モータ2への流入側の流路を流れる圧油はチェック弁34Aを通過し、油圧モータ2からバルブポート31Bへの流出側の流路を流れる圧油はカウンタバランス弁35を通過する。
【0049】
ところで、油圧ショベル100に搭載された油圧モータ2は走行モータとして機能するので、例えば、油圧ショベル100が履帯101Dに付着した泥を落とすために油圧モータ2を片側で空回ししたり、緩斜面を高速降坂したりするときのように、油圧モータ2への供給流量が大きく、かつ油圧モータ2にかかる負荷が小さくなると、油圧モータ2内のピストン23の焼付きが発生し易くなる。
【0050】
そこで、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置1は、ピストン23の焼付きを抑制するために、チャンバ353A,353B間の流路を開閉する開閉弁36をカウンタバランス弁用スプール352内に設けている。この開閉弁36は、例えば、2ポート2位置のスプール型切換弁から成っている。
【0051】
具体的には、開閉弁36は、カウンタバランス弁用スプール352が中立位置AOから軸方向へ移動することにより、バルブポート31A,31Bのうち流入側のバルブポートとチェック弁34A,34Bのうち流入側のチェック弁との間の圧力が作用する第1の受圧部としてのチャンバ361Aと、カウンタバランス弁用スプール352が中立位置AOから軸方向へ移動することにより、チェック弁34A,34Bのうち流入側のチェック弁と油圧モータ2との間の圧力が作用する第2の受圧部としてのチャンバ361Bと、これらのチャンバ361A,361Bの圧力差による推力を受けてチャンバ353A,353B間の流路を連通させる開閉弁用スプール362とを含んでいる。
【0052】
また、開閉弁36は、開閉弁用スプール362における左右のチャンバ361A,361Bの圧力差に応じて、チャンバ353A,353B間の流路を遮断する閉位置C1、チャンバ353A,353B間の流路を連通する開位置C2のいずれかに切換えるように構成されている。
【0053】
さらに、開閉弁36は、閉位置C1へ向けて開閉弁用スプール362を付勢する開閉弁用付勢部材としてのスプリング363とを含んでいる。このスプリング363は、チャンバ361A,361Bの圧力差が予め設定された閾値以上になったとき、開閉弁用スプール362が閉位置C1から開位置C2に切換わるように構成されており、例えば、カウンタバランス弁35の大きさや形状に対して、スプリング363のバネ定数や長さ等が調整されている。
【0054】
次に、本発明の第1実施形態に係る開閉弁36が設けられたカウンタバランス弁35の内部の構造、及び開閉弁36が閉位置C1から開位置C2へ切換わるまでの一連の行程について、図4図11を参照しながら詳細に説明する。
【0055】
図4図11に示すように、開閉弁36のスプリング363はチャンバ361B内に収容されており、開閉弁用スプール362は、チャンバ361A,361B内の圧力及びスプリング363の弾性力によって軸方向への推力を受ける。カウンタバランス弁35の本体を構成する弁ケーシング351には、スプール摺動穴におけるカウンタバランス弁用スプール352の位置に応じて、カウンタバランス弁用スプール352と摺接する複数のランド部351A〜351Hが設けられている。
【0056】
ランド部351A,351Bは、スプール摺動穴の中央側に配設された作動油タンク4へ繋がる流路の左右両側に配置され、チャンバ361Aと、作動油タンク4又はバルブポート31A,31Bとを連通又は遮断させるようにそれぞれ形成されている。なお、カウンタバランス弁用スプール352には、チャンバ361Aとバルブポート31A,31Bとを連通させる溝部としてのノッチ352Aが形成されている。また、カウンタバランス弁用スプール352の両端には、チャンバ353A,353B内でスプリング354A,354Bを保持する段付きストッパ352Bがそれぞれ取付けられている。
【0057】
ランド部351C,351Dは、ランド部351A,351Bに対して、バルブポート31A,31Bからチェック弁34A,34Bへの流路を挟んでスプール摺動穴の軸方向へ離間して配置され、バルブポート31A,31Bとカウンタバランス弁ポート33A,33Bとを連通又は遮断させるようにそれぞれ形成されている。
【0058】
ランド部351E,351Fは、ランド部351C,351Dに対して、カウンタバランス弁ポート33A,33Bを挟んでスプール摺動穴の軸方向へ離間して配置され、チャンバ361Bとカウンタバランス弁ポート33A,33Bとを連通又は遮断させるようにそれぞれ形成されている。
【0059】
図4図5はカウンタバランス弁35が中立位置AOに保持された状態、及び開閉弁36が閉位置C1に保持された状態を示している。同図において、カウンタバランス弁用スプール352とランド部351C,351Dによってバルブポート31A,31Bとカウンタバランス弁ポート33A,33Bとの間の流路は遮断されているので、バルブポート31A,31Bとモータポート32A,32Bとの間のカウンタバランス弁35の流路も遮断されている。
【0060】
チャンバ361Aと作動油タンク4との間の流路は連通し、カウンタバランス弁用スプール352とランド部351A,351Bによってチャンバ361Aとバルブポート31A,31Bとの間の流路は遮断されているので、バルブポート31A,31Bからの圧油がチャンバ361Aに供給されない。
【0061】
カウンタバランス弁用スプール352とランド部351E,351Fによってチャンバ361Bとカウンタバランス弁ポート33A,33Bとの間の流路が遮断されているので、カウンタバランス弁ポート33A,33Bからの圧油がチャンバ361Bに供給されない。従って、スプリング363によって開閉弁用スプール362が閉位置C1に保持されることにより、チャンバ353A,353B間の流路が遮断されている。
【0062】
図6図7はカウンタバランス弁35が駆動位置ALに切換えられた状態、及び開閉弁36が閉位置C1に保持された状態を示している。カウンタバランス弁用スプール352とランド部351Cによってバルブポート31Aとカウンタバランス弁ポート33Aとの間の流路は遮断されているので、バルブポート31Aとモータポート32Aとの間のカウンタバランス弁35の流路も遮断されている。一方、バルブポート31Bとカウンタバランス弁ポート33Bとの間の流路は連通しているので、バルブポート31Bとモータポート32Bとの間のカウンタバランス弁35の流路も連通している。
【0063】
カウンタバランス弁用スプール352とランド部351Bによってチャンバ361Aと作動油タンク4との間の流路は遮断され、チャンバ361Aとバルブポート31Bとの間の流路も遮断されているが、チャンバ361Aとバルブポート31Aとの間の流路は連通しているので、バルブポート31Aからの圧油がチャンバ361Aに供給される。
【0064】
カウンタバランス弁用スプール352とランド部351Fによってチャンバ361Bとカウンタバランス弁ポート33Bとの間の流路は遮断されているが、チャンバ361Bとカウンタバランス弁ポート33Aとの間の流路は連通しているので、カウンタバランス弁ポート33Aからの圧油がチャンバ361Bに供給される。従って、開閉弁用スプール362には、チャンバ361A,361B内の圧油による推力F1,F2、及びスプリング363の弾性力F3が作用する。
【0065】
図6図7に示す状態では、チャンバ361B内の圧油による推力F2とスプリング363の弾性力F3との合力がチャンバ361A内の圧油による推力F1以上であるから(F2+F3≧F1)、開閉弁用スプール362が閉位置C1に保持されることにより、チャンバ353A,353B間の流路が遮断されている。
【0066】
図8図9はカウンタバランス弁35が駆動位置ALに保持された状態、及び開閉弁36が開位置C2に切換えられた状態を示している。この状態では、スプール摺動穴内のカウンタバランス弁用スプール352の位置は図6図7に示す状態と同様であるが、カウンタバランス弁用スプール352内の開閉弁用スプール362の位置が図6図7に示す状態と異なる。
【0067】
すなわち、開閉弁用スプール362において、チャンバ361A内の圧油による推力F1がチャンバ361B内の圧油による推力F2とスプリング363の弾性力F3との合力よりも大きくなっていることから(F2+F3<F1)、開閉弁用スプール362がチャンバ361B内の圧油による推力F2とスプリング363の弾性力F3に抗して開位置C2へ移動することにより、チャンバ353A,353B間の流路が連通する。
【0068】
図10図11はカウンタバランス弁35が駆動位置ALから中立位置AOへ戻される状態、及び開閉弁36が開位置C2に保持された状態を示している。この状態では、カウンタバランス弁用スプール352内の開閉弁用スプール362の位置は図8図9に示す状態と同様であるが、スプール摺動穴内のカウンタバランス弁用スプール352の位置が図8図9に示す状態と異なる。
【0069】
すなわち、チャンバ353A,353B間の流路が連通したことにより、チャンバ差圧ΔPChが減少するので、チャンバ差圧ΔPChがフルストローク差圧PFSよりも小さくなると(ΔPCh<PFS)、カウンタバランス弁用スプール352がチャンバ353B内の圧油による推力を受けて駆動位置ALから中立位置AOへ向けて変位する。
【0070】
このとき、カウンタバランス弁用スプール352とランド部351Dとの開口面積が減少することにより、バルブポート31Bとモータポート32Bとの間のカウンタバランス弁35の流路が絞られるので、バルブポート31Bとモータポート32Bとの間のカウンタバランス弁35の流路内の圧油に対する抵抗が大きくなり、モータ背圧が増加する。
【0071】
このように構成した本発明の第1実施形態に係る油圧モータ2の制御装置によれば、開閉弁36が、チャンバ361A,361Bの圧力差に応じて、カウンタバランス弁35のチャンバ353A,353B間の流路を開閉することにより、油圧モータ2の回転数が高い状態であるときに、モータ背圧を容易に増加させることができる。そのため、管路抵抗を増やす等して常にモータ背圧を大きく設定しなくても、油圧モータ2のピストン23とロータ22との間の油膜切れを効率良く抑制できるので、ピストン23とロータ22が金属接触を起こすことを防ぐことができる。
【0072】
また、開閉弁36は、カウンタバランス弁用スプール352内に設けられることにより、カウンタバランス弁35を大きく改変しなくて済み、カウンタバランス弁35に開閉弁36を追加するコストを低減しつつ、油圧駆動装置1の小型化を図ることができる。しかも、開閉弁36がカウンタバランス弁35に組み込まれることで、カウンタバランス弁35と開閉弁36との動作の相性を良好に保つことができるので、油圧駆動装置1の信頼性を向上させることができる。このように、本発明の第1実施形態に係る油圧モータ2の制御装置は、モータ背圧を適切に増加させてピストン23の焼付きを抑制すると共に、設置に伴う不都合を解消することができる。
【0073】
また、本発明の第1実施形態に係る油圧モータ2の制御装置では、スプリング363が開閉弁36のチャンバ361B内に収容されているので、チャンバ361A,361Bの圧力差がスプリング363によって規定される閾値以上になったとき、開閉弁が閉位置C1から開位置C2に切換わることにより、油圧ショベル100が履帯101Dに付着した泥を落とすために油圧モータ2を片側で空回ししたり、緩斜面を高速降坂したりするときのように、油圧モータ2内のピストン23の焼付きが発生し易い状態において、モータ背圧を迅速に増加させることができる。これにより、ピストン23の焼付きの抑制効果を高めることができるので、油圧モータ2の耐久性を向上させることができる。
【0074】
[第2実施形態]
図12は本発明の第2実施形態に係る油圧モータ2の制御装置が適用される油圧駆動装置1Aの油圧回路の構成を示す図、図13は本発明の第2実施形態に係る開閉弁36Aが設けられたカウンタバランス弁35の内部の構造を示す断面図である。
【0075】
本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置1Aは、図12図13に示すように、上述の第1実施形態の構成に加え、開閉弁36Aが、チャンバ353A,353B間の流路に形成された絞り364を含んで構成されている。この絞り364の大きさは、例えば、バルブポート差圧ΔPが小さくなる油圧モータ2の低負荷時に、チャンバ差圧ΔPChがフルストローク差圧PFSを下回るように予め設定されている(ΔPCh<PFS)。なお、その他の第2実施形態の構成は、上述した第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
このように構成した本発明の第2実施形態に係る油圧モータ2の制御装置によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる他、チャンバ353A,353B間の流路に絞り364が形成されているので、油圧モータ2への圧油の供給流量が大きく、かつ油圧モータ2にかかる負荷が小さい状態のときに限ってモータ背圧を的確に高めることができる。これにより、油圧駆動装置1Aにおける油圧回路の圧力損失を低減できるので、油圧モータ2の機械効率を向上させることができる。
【0077】
[第3実施形態]
図14は本発明の第3実施形態に係る油圧モータ2の制御装置が適用される油圧駆動装置1Bの油圧回路の構成を示す図である。
【0078】
本発明の第3実施形態に係る油圧駆動装置1Bは、図14に示すように、上述の第1実施形態の構成に加え、油圧モータ2が停止したときに、油圧モータ2の出力軸21に対して制動力を付与するブレーキ装置としての駐車ブレーキ5を備え、この駐車ブレーキ5は、チャンバ361Aに作用する圧力をブレーキ解除圧として用いて油圧モータ2の回転駆動の制動を解除するように構成されている。
【0079】
具体的には、駐車ブレーキ5は、圧油が供給されるシリンダ51と、シリンダ51内に摺動自在に収容され、シリンダ51内をロッド室51Aとボトム室51Bとに区画するピストン52と、シリンダ51のロッド室51A内に一部が収容され、ピストン52に基端が連結されたピストンロッド53とを含んでいる。
【0080】
また、駐車ブレーキ5は、ピストンロッド53の先端に取付けられ、シリンダ51内のピストン52の位置に応じて、油圧モータ2の出力軸21に摺接する摺接プレート54と、シリンダ51のボトム室51B内に収容され、出力軸21側へ向けてピストン52を付勢するスプリング55と、ブレーキバルブ3からの圧油をシリンダ51のロッド室51Aへ導くことにより、ブレーキ解除圧を発生させるブレーキ解除ポート56とを含んでいる。
【0081】
図15はカウンタバランス弁35が中立位置AOに保持された状態、及び開閉弁36が閉位置C1に保持された状態を示している。この状態では、ブレーキ解除ポート56は、作動油タンク4へ繋がるカウンタバランス弁35の流路に接続されており、作動油タンク4と連通している。
【0082】
そのため、シリンダ51のロッド室51A内の圧油がブレーキ解除ポート56を介して作動油タンク4へ導かれるので、ロッド室51A内の圧力が減少し、スプリング55の弾性力によってピストン52がロッド室51A側へ押出される。これにより、ピストンロッド53がシリンダ51の外側へ伸長し、ピストンロッド53の先端の摺接プレート54が油圧モータ2の出力軸21と摺接することにより、油圧モータ2の回転駆動を制動することができる。
【0083】
図16はカウンタバランス弁35が駆動位置ALに切換えられた状態、及び開閉弁36が閉位置C1に保持された状態を示している。この状態では、ブレーキ解除ポート56は、バルブポート31Aからチャンバ361Aへ繋がるカウンタバランス弁35の流路に接続されており、バルブポート31Aとチェック弁34Aとの間の流路と連通している。
【0084】
そのため、バルブポート31Aからの圧油がシリンダ51のロッド室51A内へ導かれるので、ロッド室51A内の圧力が増加し、このロッド室51A内の圧力によってピストン52がボトム室51B側へ押戻される。これにより、ピストンロッド53がシリンダ51の内側へ縮退し、ピストンロッド53の先端の摺接プレート54が油圧モータ2の出力軸21から離間することにより、油圧モータ2の回転駆動の制動を解除することができる。なお、カウンタバランス弁35が駆動位置ARに切換えられた状態においても、ブレーキ解除ポート56がバルブポート31Bとチェック弁34Bとの間の流路と連通し、上述したのと同様の動作が行われる。その他の第3実施形態の構成は、上述した第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0085】
このように構成した本発明の第3実施形態に係る油圧モータ2の制御装置によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる他、カウンタバランス弁35が駆動位置AL,ARに切換えられたときに、バルブポート31A,31Bとチェック弁34A,34Bとの間の圧力を、ブレーキ解除圧として駐車ブレーキ5のピストン52に作用させ、駐車ブレーキ5による油圧モータ2の回転駆動の制動を解除するようにしているので、油圧ショベル100に搭載された駐車ブレーキ5に対して、ブレーキバルブ3内の流路を有効に活用することができる。これにより、ブレーキバルブ3以外に、新たな流路を設けて駐車ブレーキ5を駆動する必要がないので、小型で経済性に優れた油圧駆動装置1Bを提供することができる。
【0086】
なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0087】
1,1A,1B…油圧駆動装置、2…油圧モータ、3…ブレーキバルブ、4…作動油タンク、5…駐車ブレーキ(ブレーキ装置)
21…出力軸、31A,31B…第1及び第2のバルブポート、32A,32B…第1及び第2のモータポート、33A,33B…第1及び第2のカウンタバランス弁ポート、34A,34B…第1及び第2のチェック弁、35…カウンタバランス弁、36,36A…開閉弁、51…シリンダ、51A…ロッド室、51B…ボトム室、52…ピストン、53…ピストンロッド、54…摺接プレート、55…スプリング、56…ブレーキ解除ポート
100…油圧ショベル、351…弁ケーシング、351A〜351F…ランド部、352…カウンタバランス弁用スプール、352A…ノッチ、352B…段付きストッパ、353A,353B…第1及び第2のチャンバ、354A,354B…スプリング(カウンタバランス弁用付勢部材)、355A,355B…絞り、361A…チャンバ(第1の受圧部)、361B…チャンバ(第2の受圧部)、362…開閉弁用スプール、363…スプリング(開閉弁用付勢部材)
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
図12
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