【文献】
KENNETH F MAY,"ISOLATION OF HUMAN ANTI-MICA ANTIBODY FROM CANCER PATIENTS RESPONDING TO IMMUNOTHERAPIES.",JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY,米国,2012年 5月20日,Vol.30, No.15, SUPPL.,Abstr. 2502,URL,http://meetinglibrary.asco.org/content/98709-114
【文献】
WONGSENA W. et al,Tissue Antigens,2008年,Vol.72, No.5,p.431-440
【文献】
SUAREX-ALVAREZ B. et al,Transplantation,2009年,Vol.88, No.3S,P.S68-S77
【文献】
JINUSHI M. et al,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A,2006年,Vol.103, No.24,p.9190-9195
【文献】
ZOU Y. et al,Human Immunology,2002年,Vol.63,p.30-39
【文献】
Tang B. et al,Cancer Letters,2008年,Vol.263,p.99-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化学療法、放射線療法、サイトカイン、ケモカインおよび他の生体シグナル伝達分子、腫瘍特異的ワクチン、細胞癌ワクチン(例えば、GM−CSF形質導入癌細胞)、腫瘍特異的モノクローナル抗体、自己および同種異系の幹細胞レスキュー(例えば、移植片対腫瘍効果を増強させる)、分子標的療法、抗脈管形成療法、および遺伝子治療からなる群から選択される癌の処置のために使用される1つ以上のさらなる薬剤を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
前記1つ以上のさらなる薬剤が、ヒドロキサム酸、ボリノスタット、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA、トリコスタチンA(TSA)、LAQ824、パノビノスタット(LBH589)、ベリノスタット(PXD101)、ITF2357 italfarmaco SpA、環状テトラペプチド、デプシペプチド(ロミデプシン、FK228)、ベンズアミド;entinostat(SNDX−275/MS−275)、MGCD0103、短鎖脂肪酸、バルプロ酸、フェニル酪酸、AN−9、pivanex、CHR−3996、およびCHR−2845からなる群から選択されるヒストンデアセチラーゼインヒビター(HDAC);ボルテゾミブ、NPI−0052、カーフィルゾミブ(PR−171)、CEP 18770、およびMLN9708からなる群から選択されるプロテアソーム阻害剤;抗−CTLA−4抗体またはペプチド;抗−PD−1抗体またはペプチド;抗−PDL−1抗体またはペプチド;抗−OX40抗体またはペプチド;抗−GITR抗体またはペプチド;抗−LAG−3抗体またはペプチド;および抗−TIM−3抗体またはペプチドを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本開示は、対象とする抗原の四量体を用いB細胞を標識することで、疾患に罹患したヒト対象から、疾患において重要な治療標的を直接対象にする抗体を得ることができるという観察に一部基づく。上記背景技術の項で記載した通り、従来法には、少なくとも、ヒト対象において適切なB細胞を同定するのは非効率的であり、および/すなわち捕捉した任意のB細胞の表現型が変化し、ひいては有用性が低減されてしまうという制限がある。対照的に、本明細書に記載の方法は、疾患に関連する抗原を特異的に対象とする希少な記憶B細胞を捕捉することが可能である。以下に記載する通り、この方法は疾患に関連する抗原の四量体化を要するものであり、以下の実施例に記載する通りの工程により、適切な記憶B細胞の同定が強化される。詳細には、本明細書に記載の方法により、抗原に対する対象の初回曝露後、より長期間にわたって、適切な記憶B細胞をより効率的に捕捉できるようになる。本明細書に記載の方法は、本明細書で開示される方法を使用し捕捉した記憶B細胞から得られた遺伝子材料を使用して生成した抗体(およびこのような抗体の配列から生成されたペプチド)も包含する。
【0054】
本明細書には、MHCクラスI型ポリペプチド関連性配列A(MICA)に対するヒト抗体が記載される。MICAに対するこれらのヒト抗体は、四量体抗原の使用を伴う方法により、細胞性癌ワクチン(GM−CSFを形質導入した自己腫瘍細胞)を接種した患者から同定された。
【0055】
一部の例では、本開示は、選別されたヒト対象、および対象から得られる治療用組成物から、治療能を持つ抗体を特異的に得るまたは標的とする方法を提供する。これらの方法には、ヒト対象において免疫細胞を得るまたは標的とすること(ここで、免疫細胞には、限定するものではないが例えば、B細胞および/または記憶B細胞が含まれる)、得られたまたは標的とした免疫細胞から遺伝子材料(例えば、DNAおよび/またはmRNA)を単離または精製すること、単離または精製された遺伝子材料を使用して治療用組成物、例えば、本明細書に開示される治療用組成物を製造すること、を包含させることができる。この方法についての詳細は、以下「方法」の項に提供する。
【0056】
一部の例では、本開示は、状態または疾患を有するまたは有していた、および状態または疾患に対する正の免疫応答を示した対象において存在する抗体に関係する、治療用組成物(例えば、抗体、抗体断片、抗体誘導体、および/または抗体複合体などの治療用ペプチドを含む)を提供する。
【0057】
治療用組成物
一部の例では、本明細書に記載の治療用組成物は、疾患または状態に関連する結合パートナー(例えば、免疫原(複数可)、抗原(複数可)、および/またはエピトープ(複数可))と相互作用(例えば、結合、特異的結合、および/または免疫特異的結合)することができ、治療用組成物および結合パートナー間の相互作用により、状態または疾患に対し正の免疫応答が生じる(例えば、対象において疾患または症状の程度が軽減する)。
【0058】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11の重鎖可変領域(V
H)および/または軽鎖可変領域(V
L)の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、および/または6)の相補性決定領域(CDR)を含む(例えば、含む、これから本質的になる、またはこれからなる)ペプチドを含有し得る。
【0059】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示すID1、6、7、8、9または11の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、および/または6)の相補性決定領域(CDR)を含み(例えば、含み、これから本質的になり、またはこれからなり)、かつこれらのエピトープを含むMHCクラスI型ポリペプチド関連性配列A(MICA(例えば、UniGene Hs.130838))(例えば、可溶性MICA(sMICA))と相互作用(例えば、結合、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する、ペプチドを含有し得る。
【0060】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含有し得るものであり、ペプチドはMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する。一部の例では、ペプチドは少なくとも2つのCDRを含んでよく、少なくとも2つのCDRは、表1に示される異なる抗体のCDRである。換言すれば、抗体ID1、6、7、8、9または11に関し表1に示す、CDR(並びにFRおよび/またはAA配列)は互換可能であり、かつペプチドがMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に対し結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)するのであれば、組み合わせてペプチドを生成することができる。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9および/または11のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2と、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体IDID1、6、7、8、9または11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3と、抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4のうち少なくとも1つと、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、配列番号2、77、96、113、131若しくは150のうちの1つ、および/または配列番号11、79、98、115、133若しくは152のうちの1つを含む。各例において、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)し得る。一部の例では、ペプチドおよびMICA間の結合親和性は、約0.1nM〜1μM、約50nM〜200nM、または1nM〜20nM、例えば、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、または0.10nM以下であってよい。
【0061】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID1のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含有し得るものであり、ペプチドはMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID1のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2と、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3と、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4のうち少なくとも1つと、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、配列番号:2および/または配列番号:11を含む。各例において、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)し得る。一部の例では、ペプチドおよびMICA間の結合親和性は、約0.1nM〜1μM、約50nM〜200nM、または1nM〜20nM、例えば、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、または0.10nM以下であってよい。
【0062】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID6のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含有し得るものであり、ペプチドはMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID6のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2と、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3と、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4のうち少なくとも1つと、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、配列番号:77および/または配列番号:79を含む。各例において、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)し得る。一部の例では、ペプチドおよびMICA間の結合親和性は、約0.1nM〜1μM、約50nM〜200nM、または1nM〜20nM、例えば、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、または0.10nM以下であってよい。
【0063】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID7のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含有し得るものであり、ペプチドはMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID7のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2と、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3と、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4のうち少なくとも1つと、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、配列番号:96および/または配列番号:98を含む。各例において、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)し得る。一部の例では、ペプチドおよびMICA間の結合親和性は、約0.1nM〜1μM、約50nM〜200nM、または1nM〜20nM、例えば、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、または0.10nM以下であってよい。
【0064】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID8のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含有し得るものであり、ペプチドはMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID8のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2と、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3と、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4のうち少なくとも1つと、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、配列番号:113および/または配列番号:115を含む。各例において、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)し得る。一部の例では、ペプチドおよびMICA間の結合親和性は、約0.1nM〜1μM、約50nM〜200nM、または1nM〜20nM、例えば、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、または0.10nM以下であってよい。
【0065】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID9のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含有し得るものであり、ペプチドはMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID9のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2と、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3と、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4のうち少なくとも1つと、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、配列番号:131および/または配列番号:133を含む。各例において、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)し得る。一部の例では、ペプチドおよびMICA間の結合親和性は、約0.1nM〜1μM、約50nM〜200nM、または1nM〜20nM、例えば、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、または0.10nM以下であってよい。
【0066】
一部の例では、治療用組成物は、表1に示す抗体ID11のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含有し得るものであり、ペプチドはMICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合、および/または免疫特異的結合)する。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID11のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2と、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。一部の例では、このようなペプチドは、表1に示す、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2、およびCDR3と、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3、および/またはFR4のうち少なくとも1つと、を含む。一部の例では、このようなペプチドは、配列番号:150および/または配列番号:152を含む。各例において、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合(例えば、特異的結合および/または免疫特異的結合)し得る。一部の例では、ペプチドおよびMICA間の結合親和性は、約0.1nM〜1μM、約50nM〜200nM、または1nM〜20nM、例えば、500nM以下、400nM以下、300nM以下、200nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM、0.5nM以下、0.4nM以下、0.3nM以下、0.2nM以下、または0.10nM以下であってよい。
【0067】
一部の例では、、治療用組成物は、配列番号:2および/または配列番号:11;配列番号:77および/または配列番号:79;配列番号:96および/または配列番号:98;配列番号:113および/または配列番号:115;配列番号:131および/または配列番号:133;および/または配列番号:150および/または配列番号:152を含むペプチドを含有するものであり得る。
表1
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
* 配列は、記載の配列に対し(例えば、少なくとも)80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%配列同一性を有する配列または変異体を含む。
** 配列は、1、2、3、4、5、5未満、または10未満で保存的なアミノ酸の改変を含有し得る。
# 配列は、記載の配列、例えば、FR1、FR2、FR3、および/またはFR4の相当する領域内に対し(例えば、少なくとも)80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%配列同一性を有し、並びに/あるいはCDR 1、2、および/または3の相当する領域内に1、2、3、4、5、5未満、または10未満で保存的なアミノ酸の改変を有する、配列または変異体を含む。
## 配列は、記載の配列に対し(例えば、少なくとも)80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%配列同一性を有する配列または変異体を含み、配列は対応するアミノ酸(AA)をコードする。
AA
#は、V
HまたはV
Lアミノ酸配列を示す。
核酸
##は、V
HまたはV
L核酸配列を示す。
【0068】
CDRおよびFR領域を上記に示したが、このような領域はカバットの手法に従って定義することもできる(「免疫対象となるタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」(National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987および1991年))。同様に、抗体または抗原結合断片に対するアミノ酸付番も、カバットの手法に従う。
【0069】
「ペプチド」は、鎖の長さにおいて上限なしで、少なくとも2つの連続的に連結されたアミノ酸残基を含む鎖を示す。タンパク質における1つ以上のアミノ酸残基は、限定はしないが、例えばグリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合形成のような修飾を含み得る。用語「ペプチド」は、本願明細書において「ポリペプチド」および「タンパク質」と相互互換である。
【0070】
一部の例では、治療用組成物には、例えば、完全長の抗体および/若しくはインタクトな抗体、または抗体断片などといった抗体を含むペプチドが含有され得る。「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介し、糖、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することのできる、免疫グロブリン分子である。本明細書で使用するとき、用語「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけではなく、任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)またはそれらの一本鎖、抗体を含む融合タンパク質、および任意のその他の改変を受けた、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の構成成分も包含する。抗体には、IgG、IgA、またはIgM(またはこれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を包含し、特定のクラスの抗体である必要はない。抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列によって、免疫グロブリンは異なるクラスに分類することができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちの幾種類かは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分けることもできる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。各クラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造は公知である。
【0071】
代表的な抗体および抗体断片としては、限定するものではないが、モノクローナル抗体(完全長のモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ラクダ化(camelised)抗体、キメラ抗体、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、所望の生物活性(例えば、抗原結合部分)を示す抗体断片、ジスルフィド結合させたFvs(dsFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体など)、細胞内抗体、並びに上記の任意のエピトープ結合断片が挙げられる。抗体または抗体断片はヒト型またはヒト化抗体であってよい。
【0072】
抗体は、一般的に、10
5から10
11M以下の解離定数(K
D)により反映される高親和性にて同種抗原に特異的に結合する。約10
4Mより大きい任意のK
Dは、一般的に非特異的結合を示すと考えられる。本明細書において使用されるとき、抗原に「特異的に結合する」抗体は、10
7M以下、好ましくは10
8M以下、よりさらに好ましくは5x10
9M以下、およびより好ましくは10
8Mから10
10M以下のK
Dを有することを意味する高親和性にて非関連抗原に結合しないが、高親和性にて抗原および実質的に同一の抗原に結合する抗体を示す。抗原は、所定の抗原に対し高度の配列同一性を示すとき、例えば、所定の抗原の配列に対し少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%、またはよりさらに好ましくは少なくとも99%配列同一性を示すとき、所定の抗原と「実質的に同一」である。一例として、ヒトMICAに特異的に結合する抗体はまた、ある霊長種由来のMICA抗原(例えば、カニクイザルMICA)と交差反応性を有し得るが、他の種由来のMICA抗原またはMICA以外の抗原と交差反応し得ない。
【0073】
抗体のフラグメントは、完全長抗体の抗原結合部分を含み、完全長抗体の所望のアフィニティーおよび特異性を保持する限り、提供される方法において使用するために適当である。本明細書において使用されるとき、抗体の用語「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)は、抗原(例えば、ヒトMICA)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。このような「フラグメント」は、例えば約8から約1500アミノ酸長、適当には約8から約745アミノ酸長、適当には約8から約300、例えば約8から約200アミノ酸、または約10から約50または100アミノ酸長である。したがって、抗MICA抗体のフラグメントは、Fv部分においてMICAに結合する能力、およびFv部分において樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、およびNK細胞におけるFc受容体に結合する能力を保持する。このようなフラグメントは、対応する完全長抗MICA抗体と同様の特性により特徴付けられる、すなわち、該フラグメントは、ヒト細胞の表面に発現されるヒトMICA抗原、または培地に分離されている対応するsMICA抗原に特異的に結合する。
【0074】
抗体の抗原結合機能は全長抗体のフラグメントによって行うことができることが示されている。抗体の用語「抗原結合部分」内に包含される結合フラグメントの例は、(i)V
L、V
H、CLおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)V
HおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのV
LおよびV
HドメインからなるFvフラグメント、(v)V
HドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989) Nature 341:544−546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)または(vii)所望により合成リンカーによって連結され得る2つまたはそれ以上の単離されたCDRの組合せを含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインV
LおよびV
Hは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を使用して、V
LおよびV
H領域が対を成し一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作られることが可能である合成リンカーによって、連結され得る(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423−426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883)。このような一本鎖抗体はまた、抗体の用語「抗原結合部分」内に包含されることが意図される。これらの抗体断片は当業者に知られる慣用の技術を使用して得られ、該断片は無傷な抗体と同じ方法において有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、または無傷な免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的開裂によって、生産され得る。
【0075】
Fv断片は完全な抗原認識部位および結合部位を含有している抗体断片である。これらの領域は、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが緊密に会合した2量体から構成され、これらのドメインは、天然では、例えばscFvにて共有結合し得る。このドメインの立体構造中で、各可変ドメインの3箇所のCDRが相互作用し、VH−VL二量体表面の抗原結合部位を形成する。総じて、抗体には、6つのCDRまたはこれらのサブセットにより、抗原に対する結合特異性が付与される。単一の可変ドメイン(すなわち、Fvのうち、抗原に特異的な3つのCDRのみを含む片鎖)であっても、抗原に対する認識能および結合能を有する場合もあるものの、通常は、完全な結合部位と比較して親和性が低くなる。
【0076】
一本鎖Fvまたは(scFv)抗体断片は、抗体のV
HおよびV
Lドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般的に、FvポリペプチドはV
HおよびV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvは抗原を結合するのに望ましい構造を形成することができる。
【0077】
Fabフラグメントは、軽鎖の可変および定常ドメイン、並びに重鎖の可変ドメインおよび第1定常ドメイン(CH1)を含有する。F(ab’)2抗体断片は、断片分子同士が、一般的に、カルボキシ末端近傍においてシステイン残基からなるヒンジ部位により共有結合している、一対のFabフラグメントを含む。抗体断片のその他の化学的カップリング法も当該技術分野において既知である。
【0078】
「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む種々の方法によって生産され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann、Clin. Exp. Immunol. 79:315−321 (1990); Kostelny et al.,J. Immunol. 148、1547−1553 (1992)参照。
【0079】
二重特異性抗体は、抗原結合部位を2つ有する小型の抗体断片であり、この断片は、同様のポリペプチド鎖(V
HおよびV
L)中でV
HがV
Lに連結している。同一鎖上の2つのドメインを対形成させるのには短すぎるリンカーを使用すると、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成し、抗原結合部位を2つ生成する。
【0080】
線状抗体は、一対の抗原結合領域を形成する、タンデムに連結したFd断片対(V
H−CH1−V
H−CH1)と相補的な軽鎖ポリペプチドとをともに含む。線状抗体は、二重特異的または単一特異的なものであり得る。
【0081】
本開示の抗体および抗体断片には、所望のエフェクター機能または血清半減期を得るためFc領域において改変を加えることができる。一部の例では、Fc領域は、血清半減期を延長するためにPEGまたはアルブミンと結合させることができ、あるいは所望の効果が得られる何らかのその他の複合体とすることができる。あるいは、副作用または治療による合併症を最小限に抑えるためにエフェクター機能を除去または抑制するのが望ましい場合には、何らかの他のFc領域を使用することもできる。
【0082】
ヒトおよびヒト化抗体には、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する(すなわちこれらの由来するものと同じアミノ酸配列を有する)抗体が含まれる。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列にはコードされていないアミノ酸残基を、例えば、CDR中、特にCDR3中に含有し得る(例えば、in vitroにおいてランダム変異または部位特異的変異により、あるいはin vivoにおいて体細胞変異により、変異が導入され得る)。本明細書において使用されるとき、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製、発現、作製または単離される全てのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックまたは導入染色体(transchromosomal)の動物(例えば、マウス)またはそこから調製されるハイブリドーマから単離される抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、および(d)他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含むあらゆる他の手段によって調製、発現、作製または単離される抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、例えば抗体成熟中に起こる後の再配列および突然変異を含むが、生殖細胞系列遺伝子によってコードされる特定のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列を利用する可変および定常領域を含む。当分野で知られているとおり(例えば、Lonberg (2005) Nature Biotech. 23(9):1117−1125参照)、可変領域は、抗原結合ドメインを含み、外来抗原に特異的な抗体を形成するように再配置する種々の遺伝子によってコードされる。再配列に加えて、可変領域は、外来抗原に対する抗体のアフィニティーを増加させるように、多数の単一のアミノ酸変化(体細胞突然変異または超突然変異(hypermutation)と称される)によってさらに修飾され得る。定常領域は、抗原にさらに応答して変化する(すなわち、アイソタイプスイッチ)。したがって、抗原に応答して軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする再配置された、および体細胞変異された核酸分子は、元の核酸分子と配列同一性を有さないが、代わりに実質的に同一または類似であり得る(すなわち、少なくとも80%同一性を有する)。
【0083】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を示す。さらに、抗体が定常領域を含むとき、定常領域もまたヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本願発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)。しかしながら、本明細書において使用されるとき、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。用語「ヒト」抗体および「完全ヒト」抗体は同義的に使用される。
【0084】
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のいくつかの、多くの、または全てのアミノ酸がヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置換されている抗体を示す。抗体のヒト化形態の1つの態様において、1つ以上のCDR領域内のいくつかの、多くの、または全てのアミノ酸が変化していないのに対して、CDRドメイン外のいくつかの、多くの、または全てのアミノ酸がヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置換されている。特定の抗原に結合する抗体の能力を破壊しない限り、アミノ酸の小さい付加、欠失、挿入、置換または修飾が許される。「ヒト化」抗体は、元の抗体と同様の抗原特異性を保持する。
【0085】
「キメラ抗体」は、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域がマウス抗体に由来し、定常領域がヒト抗体に由来する抗体を示す。
【0086】
本明細書で使用するとき、用語「エピトープ」は、抗体が結合し得るタンパク質決定因子を指す。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基から構成され、かつ通常、特異的な立体構造特性、並びに特異的な電荷特性を有する。エピトープは、タンパク質の三次折り畳みに並べられている隣接していないアミノ酸(例えば、立体構造エピトープ)または隣接するアミノ酸(例えば、非立体構造エピトープ)の両方で形成され得る。立体構造および非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下において、前者に対する結合は失われるのに対し、後者に対する結合は失われないという点で区別される。エピトープは、一般的に、ユニークな空間配座において少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。何のエピトープが所定の抗体に結合されるかを決定するための方法(すなわち、エピトープマッピング)は、当分野でよく知られており、(例えば、MICAからの)重複または隣接するペプチドを所定の抗体(例えば、抗MICA抗体)との反応性について試験する、例えば免疫ブロット法および免疫沈降アッセイを含む。エピトープの空間配座を決定する方法は、当分野の技術および本明細書に記載されているもの、例えば、X線結晶学および二次元核磁気共鳴を含む(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)参照)。
【0087】
用語「エピトープマッピング」は、抗体抗原認識のための分子決定因子の同定のプロセスを示す。
【0088】
抗体または抗体断片に対する用語「エピトープに結合する」または「エピトープを認識する」は、抗原内でのアミノ酸の連続的または不連続的なセグメントを示す。当業者は、該用語は、抗体または抗体断片がエピトープ配列内のあらゆるアミノ酸と直接接触していることを必ずしも意味しないことを理解している。
【0089】
2つ以上の抗体に対する用語「同じエピトープに結合する」は、抗体がアミノ酸の同じ、重複または包括的な、連続的または不連続的なセグメントに結合することを意味する。当業者は、フレーズ「同じエピトープに結合する」が抗体が同じアミノ酸に正確に結合または接触することを必ずしも意味しないことを理解している。抗体が接触する正確なアミノ酸は異なっていてもよい。例えば、第1の抗体は、第2の抗体によって結合されるアミノ酸のセグメントによって完全に包含されるアミノ酸のセグメントに結合することができる。他の例において、第1の抗体は、第2の抗体によって結合される1つ以上のセグメントと有意に重複するアミノ酸の1つ以上のセグメントに結合する。この目的のために、このような抗体は、「同じエピトープ」に結合すると考える。
【0090】
したがって、本明細書に記載されている特定の抗体により認識されるエピトープ(例えば、同じまたは重複領域またはその領域間のまたはその領域にわたる領域)のすべてまたは一部(例えば、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸、連続的または不連続的)を含むMICA上のエピトープに結合する抗体も、本願発明に包含される。
【0091】
本明細書に記載されている抗体と「MICA上の同じエピトープ」に結合する抗体を決定するための技術は、例えば、エピトープマッピング方法、例えば、エピトープの原子分解を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析を含む。他の方法は、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾によって結合の喪失がエピトープ構成要素の指標(indication)としばしば考えられる、抗原フラグメントまたは抗原の突然変異への抗体の結合をモニタリングする。加えて、エピトープマッピングのためのコンピューターによるコンビナトリアル方法も使用することができる。これらの方法は、特異的な短ペプチドをコンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから単離する興味ある抗体の能力に頼る。次に、このペプチドは、ペプチドライブラリーをスクリーニングするために使用される抗体に相当するエピトープの定義のための手がかりと見なされる。エピトープマッピングについて、立体構造の不連続的なエピトープをマッピングするように示されるコンピューターによるアルゴリズムも開発されている。
【0092】
MICAへの結合について本明細書に記載されている抗体と競合する抗体も本願発明に包含される。同じエピトープを認識する、または結合について競合する抗体は、日常的な技術を使用して同定することができる。このような技術は、例えば、ある抗体の、標的抗原への別の抗体の結合をブロックする能力を示す免疫測定法、すなわち、競合的結合アッセイを含む。競合的結合は、試験下で免疫グロブリンが共通の抗原への参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイ、例えばMICAにおいて決定される。多くのタイプの競合的結合アッセイが知られている、例えば:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al.、Methods in Enzymology 9:242 (1983)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al.、J. Immunol. 137:3614 (1986)参照);固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press (1988)参照);I−125ラベルを使用する固相直接ラベルRIA(Morel et al.、Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al.、Virology 176:546 (1990));および直接標識化RIA(Moldenhauer et al.、Scand. J. Immunol. 32:77 (1990))。一般的に、かかるアッセイは、非標識試験免疫グロブリンおよび標識化参照免疫グロブリンのいずれかを有する細胞または固体表面に結合される精製された抗原の使用を含む。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で細胞または固体表面に結合される標識の量を決定することにより測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合する抗体が過剰に存在するとき、それは参照抗体の共通の抗原への特異的結合を少なくとも50−55%、55−60%、60−65%、65−70%、70−75%またはそれ以上阻害する。
【0093】
本明細書において使用される用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合」および「特異的に結合」は、あらかじめ決定された抗原上のエピトープへの抗体結合を示す。一般的に、抗体は、分析物として組換えMICAおよびリガンドとして抗体を使用してBIACORE 2000器具において表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定されるとき、約10
−7M未満、たとえば約10
8M未満、10
−9M未満または10
−10Mまたはそれ未満の平衡解離定数(KD)で結合し、あらかじめ決定された抗原または密接に関連した抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対する親和性よりも少なくとも2倍良いアフィニティーであらかじめ決定された抗原に結合する。したがって、「ヒトMICAに特異的に結合する」抗体は、10
−7M以下、たとえば約10
8M未満、10
−9M未満または10
−10M未満またはそれ未満のK
DでヒトMICAに結合する抗体を示す。「カニクイザルMICAと交差反応する」抗体は、10
−7M以下、たとえば約10
8M未満、10
−9M未満または10
−10M未満またはそれ未満のK
DでカニクイザルMICAに結合する抗体を示す。1つの態様において、非ヒト種由来のMICAと交差反応しないこのような抗体は、標準結合アッセイにおいてこれらのタンパク質に対して本質的に検出不可能な結合を示す。
【0094】
本明細書において使用されるとき、用語「kassoc」または「k
a」は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を示すように意図されている一方、本明細書において使用されるとき、用語「kdis」または「k
d」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を示すように意図されている。本明細書において使用されるとき、用語「K
D」は、解離定数を示すように意図されており、それはk
d対k
aの比(すなわちk
d/k
a)から得られ、かつモル濃度(M)として表現されるものである。抗体に対するK
D値は、当該技術分野で十分に確立された方法を用いて決定可能である。抗体のK
Dを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムの利用によるものである。
【0095】
本明細書において使用されるとき、IgG抗体に対する用語「高親和性」は、標的抗原に対して10
−8M以下、さらに好ましくは10
−9M以下、よりさらに好ましくは10
−10M以下のK
Dを有する抗体を示す。しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに応じて変化しうる。例えば、IgMアイソタイプに対する「高親和性」結合は10
−7M以下、さらに好ましくは10
−8M以下のK
Dを有する抗体を示す。
【0096】
本明細書において使用される用語「EC50」は、インビトロまたはインビボアッセイのいずれかにおいて応答を誘導し、最大応答の50%、すなわち、最大応答およびベースラインの中間である抗体またはその抗原結合部分の濃度を示す。
【0097】
用語「固定されたMICAに結合」は、例えば、細胞の表面上に発現された、または固体支持体に付着されている、MICAに結合する本願発明の抗体の能力を示す。
【0098】
本明細書において使用される用語「交差反応」は、本願発明の抗体が異なる種からのMICAに結合する能力を示す。例えば、ヒトMICAに結合する本願発明の抗体はまた、別の種のMICA(例えば、カニクイザルMICA)に結合し得る。本明細書において使用される交差反応性は、結合アッセイ(例えば、SPR、ELISA)において精製された抗原との特異的反応性またはMICAを生理学的に発現する細胞への結合または当該細胞と機能的相互作用を検出することにより測定される。交差反応性を決定するための方法は、本明細書に記載されている標準結合アッセイ、例えば、Biacore
TM 2000 SPR器具(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用するBiacore
TM表面プラズモン共鳴(SPR)分析、またはフローサイトメトリー技術を含む。
【0099】
可変ドメインの「CDR」は、超可変領域内のアミノ酸残基であり、カバット(Kabat)、コチア(Chothia)の定義に従って同定される。カバットおよびコチアの両方の蓄積、AbM、接触性、および/または立体構造の定義、またはCDR決定に関わる何らかの手法は、当該技術分野で公知である。抗体CDRは、もともとはカバットらにより定義された超可変領域として同定することもできる。例えば、Kabat et al.,1992,「免疫対象となるタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」,第5版,Public Health Service,NIH,Washington D.C.を参照されたい。CDRの位置は、元々コチアおよびその他の著者らにより報告されているループ構造としても同定することができる。例えば、Chothia et al.,1989,Nature 342:877〜883を参照されたい。CDRを同定するその他の手法としては、「AbMの定義」が挙げられる。AbMは、カバットおよびコチアの定義に含まれ、かつOxford MolecularのAbM抗体モデリング用ソフトウェア(現Accelrys(登録商標))、または抗原の接触性についての観察に基づくMacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.,262:732〜745に記載のCDRの「接触性の定義(contact definition)」を使用して導くことができる。本明細書においてCDRの「立体構造の定義」として参照される、別のアプローチでは、CDRの配置は、抗原を結合するようエンタルピーを作用させる残基配置として同定することができる。例えば、Makabe et al.,2008,Journal of Biological Chemistry,283:1156〜1166を参照されたい。さらに別の、CDRの境界についての定義は、上記の手法のいずれかに固執するものではないがカバットのCDRと少なくとも一部重なるものの、特定の残基、若しくは残基群、またはさらには完全なCDRが、抗原の結合性に著しく影響を与えないという予測または実験による所見を考慮して、短縮または延長することができる。本明細書で使用するとき、CDRは、当該技術分野において既知の任意の手法(手法の組み合わせを包含する)により定義されたCDRを指す。本明細書で使用する方法では、これらのアプローチのうちのいずれかに従って規定されたCDRを利用することができる。1つ以上のCDRを含有する任意の所与の実施形態に際し、CDRは、カバット、コチア、伸長、AbM、接触法、および/または立体構造の定義のうちのいずれかに従って規定することができる。
【0100】
一部の例では、例えば、未改変のペプチドと比較して、ペプチド変異体の抗原結合特性が維持されるかまたは改善されるのであれば、本明細書で開示されるペプチドのアミノ酸配列に改変および変更を加え、ペプチド変異体(例えば、本明細書で開示されるペプチドに対し規定の配列相同性を有するペプチド)を作製してもよい(任意の改変ペプチドの抗原結合特性は、本明細書に記載されるin vitroおよび/またはin vivoアッセイ並びに/あるいは当該技術分野において既知の手法を使用して評価することができる)。
【0101】
一般的に、ペプチド変異体はアミノ酸レベルで観察されかつ考察される一方で、実際の改変は、典型的には核酸レベルで導入されまたは実施される。例えば、表1に示すペプチドに対し80%、85%、90%、95%、96%、97%、98、または99%アミノ酸配列同一性を有する変異体は、配列番号1、10、76、78、95、97、112、114、130、132、149、および/または151をコードしている核酸、またはこれらの部分/断片を、当該技術分野において既知の手法(例えば、クローニング法)、および/または本明細書で開示される手法を用い改変することにより作成できる。
【0102】
アミノ酸配列の改変は、典型的には、置換、挿入、または欠失による改変の3種類のうちの1つ以上に当てはまる。挿入には、アミノおよび/または末端の融合、並びに配列中への単一または複数のアミノ酸残基の挿入が含まれる。通常、挿入は、アミノまたはカルボキシ末端の融合と比較して、より小さな挿入であり、例えば、約1〜4残基ほどである。欠失は、タンパク質配列からの1つ以上のアミノ酸残基の除去により特徴づけられる。典型的には、タンパク質分子内のいずれか一箇所にて約2〜6未満の残基が欠失している。アミノ酸置換は、典型的には単一残基のものであるが、一度に複数の異なる位置に生じる場合もある;挿入は、通常、約1〜10個のアミノ酸残基である;欠失は、約1〜30残基の範囲である。欠失または挿入は隣接する対になすことができ、すなわち、2残基の欠失または2残基の挿入をなすことができる。置換、欠失、挿入、またはこれらの任意の組み合わせを合わせて、最終的なコンストラクトを得ることもできる。変異は、読み枠外の配列に配置すべきではなく、および好ましくは、mRNAの二次構造を生成し得る相補性決定領域に作成すべきではない。置換による改変は、少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその部位に挿入されるというものである。一部の例では、置換は、保存的アミノ酸置換であり得る。一部の例では、本明細書に記載のペプチドには、表1に示すペプチドに対する1つ以上の保存的アミノ酸置換を含有させることができる。例えば、変異体は、表1に示すペプチドに対し、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜30、30〜40、または40〜50個の保存的アミノ酸置換を含有し得る。あるいは、変異体は、表1に示すペプチドに対する50個以下、40個以下、30個以下、20個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下の保存的アミノ酸置換を含有し得る。このような置換は、概して以降の表2に従ってなされ、かつ保存的置換と呼ばれる。タンパク質の改変に対する許容性を予測する方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Guo et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,101(25):9205〜9210(2004)を参照されたい)。
【0104】
一部の例では、置換は非保存的なものである。例えば、表1に示すペプチド中のアミノ酸は、ペプチドの何らかの特性または態様を変更し得るアミノ酸により置換することができる。一部の例では、非保存的アミノ酸置換は、例えば、ペプチドの構造を変化させ、ペプチドの結合特性を変化する(例えば、抗原に対するペプチドの結合親和性を増加または減少させる、並びに/あるいは、抗原に対するペプチドの結合特異性を増加または減少させる)ためになすことができる。
【0105】
一部の例では、ペプチドおよび/またはペプチド変異体には、表1に示すペプチドの断片を含有させることができ、あるいは断片であってよい。このような断片には、例えば、断片が、完全長のペプチドの結合特性を少なくとも一部保有するのであれば、例えば、表1に示すCDR、FR、および/またはAAと比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、50〜100、101〜150個少ないアミノ酸を含有させ得る(例えば、完全長のペプチドの結合特性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%)。切断はアミノ末端、カルボキシ末端、および/または本明細書に記載のペプチド内に行うことができる。
【0106】
一部の例では、ペプチド変異体の相互作用面は、例えば、未改変のペプチドに対するペプチド変異体の結合特性を、変更(例えば、増強または減弱)、保存、または維持するための改変を受けていないペプチドのものと同様(例えば、ほぼ同様)であり得る。ペプチドの相互作用面を同定する手法は当該技術分野において既知である(Gong et al.,BMC:Bioinformatics,6:1471〜2105(2007);Andrade and Wei et al.,Pure and Appl.Chem.,64(11):1777〜1781(1992);Choi et al.,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,77(1):14〜25(2009);Park et al.,BMC:並びにBioinformatics,10:1471〜2105(2009)。
【0107】
当業者であれば、2つのポリペプチド(例えば、未改変のペプチドおよびペプチド変異体)の同一性を評価する方法については容易に判断する。例えば、同一性は、同一度が最も高くなるように2つの配列を整列させた後に算出することができる。同一性を算出する別の方法は、公開されているアルゴリズムにより実施することができる。配列比較の最適なアラインメントは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math,2:482(1981)の局所同一性アルゴリズム(local identity algorithm)、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)と同様の検索方法、コンピュータへのこれらのアルゴリズムの実装(Wisconsin Geneticsソフトウェア・パッケージ(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または観察により実施することができる。
【0108】
同様の種類の同定は、例えば、Zuker,Science 244:48〜52(1989);Jaeger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706〜10(1989);Jaeger et al.,Methods Enzymol.183:281〜306(1989)に開示されるアルゴリズムにより、核酸についても得ることができ、これらの文献は、少なくとも、核酸アラインメントに関係する要素を参照することにより、本明細書に組み込まれる。典型的には任意の方法を使用できること、並びに特定の例においてはこれらの各種方法により得られる結果が異なっていることは理解されるが、当業者であれば、これらの方法のうち少なくとも1つにより同一性が認められた場合、配列は記載の同一性を有するものとされ、かつ本明細書で開示される配列であるとみなされることは理解するであろう。
【0109】
2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、配列で共有される同一位置の数の関数(すなわち%相同性=同一位置の#/位置の全体#×100)であり、2つの配列の最適なアラインメントにおいて導入される必要がある。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、下記の非限定例にて記載のように数学的アルゴリズムを用いて行われうる。
【0110】
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70または80のギャップ重量および1、2、3、4、5もしくは6の長さ重量を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.com入手可能)内のGAPプログラムを使用して決定することができる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、E. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム(CABIOS、4:11−17 (1989))を用いて決定可能であり、同アルゴリズムはPAM120重み残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ(Gap length penalty)および4のギャップペナルティを用いてALIGNプログラム(バージョン2.0)に導入されている。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (48):444−453 (1970))アルゴリズムを用いて決定可能であり、同アルゴリズムはBlossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかと、16、14、12、10、8、6もしくは4のギャップ重量および1、2、3、4、5もしくは6の長さ重量を用いてGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)内のGAPプログラム中に包含されている。
【0111】
本願発明の核酸およびタンパク質配列をさらに「クエリー配列」として用い、公的データベースで探索を行い、例えば、例えば関連配列を同定することが可能である。かかる探索は、Altschul、et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実行可能である。BLASTヌクレオチドの探索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行うことで、本願発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質の探索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行うことで、本願発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップドアラインメント(gapped alignments)を得るため、Gapped BLASTは、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されているように利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる場合、各プログラムのデフォルトパラメータ(例えばXBLASTおよびNBLAST)を使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。
【0112】
一部の例では、以降の方法の項においてより詳細に記載される通り、本明細書で開示される治療用組成物は、本明細書で開示される方法を使用して得られた免疫細胞(例えば、記憶B細胞などのB細胞)から単離および/または精製された遺伝子材料(例えば、DNAおよび/またはmRNA)を使用して作製することができる。このような遺伝子材料が得られた場合に、本明細書で開示される治療用組成物をこのような遺伝子材料を使用して作製する方法は当該技術分野において既知であり、および/または以下に要約される。
【0113】
一部の例では、ペプチドには検出可能な標識を含有させ得る。本明細書で使用するとき、「標識」は、標識を取り付けられるペプチドの検出を可能にする部位に組み込まれた、少なくとも1つのエレメント、同位体、または官能基を指す。標識は直接取り付けることができ(すなわち、結合を介して)、またはリンカー(例えば、環状または非環状、分岐状または非分岐状、置換または非置換アルキレン;環状または非環状、分岐状または非分岐状、置換または非置換アルケニレン;環状または非環状、分岐状または非分岐状、置換または非置換アルキニレン;環状または非環状、分岐状または非分岐状、置換または非置換ヘテロアルキレン;環状または非環状、分岐状または非分岐状、置換または非置換ヘテロアルケニレン;環状または非環状、分岐状または非分岐状、置換または非置換ヘテロアルキニレン;置換または非置換アリーレン;置換または非置換ヘテロアリーレン;あるいは置換または非置換アシレン(acylene)、あるいはこれらのうちの、リンカーを構成させることのできる任意の組み合わせ)により取り付けることができる。標識は、生物活性または検出される本発明のポリペプチドの特性に干渉しない任意の位置にて、ペプチドに取り付けることができる。
【0114】
標識としては、限定するものではないが、
2H、
3H、
13C、
14C、
15N、
31P、
32P、
35S、
67Ga、
99mTc(Tc−99m)、
111In、
123I、
125I、
169Yb、および
186Reといった放射性同位体または重同位体などであり得る同位体部位を含有する標識;酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)と結合し得る抗体または抗原であり得る免疫性部分または免疫反応性部分を含有する標識;着色、冷光、リン光などの標識、または蛍光部分(例えば、蛍光標識FITCなど)を含有する標識;1つ以上の光親和性部分を有する標識;1つ以上の既知の結合パートナー(ビオチン−ストレプトアビジン、FK506−FKBPなど)を有するリガンド部分を有する標識を挙げることができる。
【0115】
一部の例では、標識には、生物システムにおいて分子間相互作用を直接的に解明するために、1つ以上の光親和性部分を含有させることができる。各種既知の発光分子を使用することができ、殆どの場合、ジアゾ化合物類、アジド類、ジアジリニン類のナイトレン類またはカルベン類への光分解(photoconversion)を利用する(例えば、Bayley,H.,Photogenerated Reagents in Biochemistry and Molecular Biology(1983),Elsevier,Amsterdamを参照されたい。この非特許文献は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。本発明の特定の実施形態では、光親和性の標識としては、限定するものではないが、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸などといった、1つ以上のハロゲン部分により置換されたo−、m−、およびp−アジゾベンゾイル類が使用される。
【0116】
標識は撮像剤であってもよく、または撮像剤として利用することもできる。撮像剤の例としては、限定するものではないが、陽電子放出断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法(CAT)、単一光子放射断層撮影法、X線法、蛍光透視法、および磁気共鳴映像法(MRI);制吐薬;並びに造影剤に使用されるものが挙げられる。診断薬の例としては、限定するものではないが、蛍光分子、冷光分子、磁気分子;ガドリニウム系キレート剤(例えば、DTPA、DTPA−BMA、DOTA、およびHP−DO3Aを併用したガドリニウム系キレート剤)、鉄キレート剤、マグネシウムキレート剤、マンガンキレート剤、銅キレート剤、クロムキレート剤、CATおよびX線撮像に有用なヨウ素系化合物、並びに放射性核種が挙げられる。好適な放射性核種としては、限定するものではないが、
123I、
125I、
130I、
131I、
133I、
135I、
47Sc、
72As、
72Se、
90Y、
88Y、
97Ru、
100Pd、
101mRh、
119Sb、
128Ba、
197Hg、
211At、
212Bi、
212Pb、
109Pd、
111In、
67Ga、
68Ga、
67Cu、
75Br、
77Br、
99mTc、
14C、
13N、
150、
32P、
33P、および
18Fが挙げられる。
【0117】
蛍光および冷光分子としては、限定するものではないが、「染料」、「標識」、または「指示薬」として一般に呼ばれる異なる各種有機または無機小分子が挙げられる。例としては、限定するものではないが、フルオレセイン、ローダミン、アクリジン染料、Alexa、シアニン染料などが挙げられる。蛍光および冷光分子としては、天然に生じる各種タンパク質およびその誘導体、例えば、遺伝子組換えされた変異体を挙げることができる。例えば、蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度GFP、赤色、青色、黄色、シアン色、およびサファイア色蛍光タンパク質、造礁サンゴ蛍光タンパク質などが挙げられる。冷光タンパク質としては、ルシフェラーゼ、エクオリン、およびこれらの誘導体が挙げられる。当該技術分野においては、数多くの蛍光および冷光染料並びにタンパク質が知られている(例えば、米国特許出願公開第2004/0067503号;Valeur,B.,「分子蛍光:原理および応用(Molecular Fluorescence: Principles and Applications),」John Wiley and Sons,2002;並びに「蛍光プローブおよび探索分子、分子プローブハンドブック(Handbook of Fluorescent Probes and Research Products, Molecular Probes)」,第9版,2002)。
【0118】
本明細書で使用するとき、用語「精製された」または「単離された」は、他の分子、例えば、ポリペプチド、核酸分子が、その天然の環境成分から識別されかつ分離されおよび/または回収されていることを指す。したがって、一実施形態では、本発明の抗体は精製抗体であり、自然環境の1つ以上の成分から分離されている。
【0119】
核酸組成物
一部の例では、本開示は、本開示のペプチド(例えば、表1に開示される)に相当する(例えば、本開示のペプチドをコードする)ヌクレオチド配列を提供する。これらの配列には、本開示のペプチドに関係するすべての縮重配列を包含し、すなわち、特定のペプチドおよび変異体並びにその誘導体を1つコードする配列を有するすべての核酸を包含する。したがって、具体的な各核酸配列は記載されないものの、各配列およびすべての配列は、実際のところ本開示のポリペプチド配列により本明細書に開示されかつ記載される。
【0120】
一部の例では、本開示の核酸には、発現ベクターを含む。適切なベクターの例としては、限定するものではないが、プラスミド、人工染色体、例えば、BAC、YAC、またはPAC、並びにウイルスベクターが挙げられる。
【0121】
提供されるベクターには、例えば、複製起点および/またはマーカーを含有させることもできる。マーカー遺伝子は、選択可能な表現型、例えば、抗生物質耐性を細胞に付与し得る。マーカー産物は、ベクターが細胞に入り、かつ入った後に発現しているかを判断するために使用する。哺乳類細胞用の選択可能なマーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、およびブラストサイジンである。このような選択可能なマーカーが哺乳類の宿主細胞に首尾よく移行された場合、形質転換した哺乳類宿主細胞は、選択圧下に置いた場合に生存し得る。他のマーカーの例としては、例えば、大腸菌(E. coli)lacZ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)、およびルシフェラーゼが挙げられる。加えて、発現ベクターには、発現したポリペプチドの操作または検出(例えば、精製または局在化)を促進するよう設計したタグ配列を含有させることができる。GFP、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、赤血球凝集、またはFLAG(商標)タグ(Kodak;New Haven,CT)配列などのタグ配列は、典型的には、コードされているポリペプチドを有する融合体として発現させることができる。このようなタグは、カルボキシまたはアミノ末端のいずれかを含む、ポリペプチド内のどこにでも挿入することができる。
【0122】
一部の例では、本開示は、本明細書で開示される核酸(例えば、ベクター)および/またはペプチドを含む細胞を包含する。細胞には、例えば、真核生物および/または原核細胞が包含され得る。一般的に、本明細書において使用され得る細胞は、例えば、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC),P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108から市販のものである。同様に、F.Ausubel et al.,「分子生物学標準プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」,John Wiley & Sons,New York,NY,(1998)も参照されたい。本明細書で開示される細胞の生成に有用な形質転換および遺伝子導入方法は、例えば、F.Ausubel et al.,「分子生物学標準プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」,John Wiley & Sons,New York,NY,(1998)に記載されている。
【0123】
ベクター媒介遺伝子導入は、抗体の標的化送達を操作するために示されている(Balazs et al.、
Nature. 2011 Nov 30;481(7379):81−4)。したがって、1つの局面において、本開示は、興味あるMICAに免疫特異的に結合するペプチドをコードするポリヌクレオチドをウイルスを使用して標的細胞に送達するための方法および組成物を提供する。遺伝子治療の文脈において、MICAに免疫特異的に結合するペプチドをコードする核酸配列は、ベクター(例えば、限定はしないがアデノウイルス、ワクシニアウイルスまたはアデノ随伴ウイルスを含むウイルスベクター)を介して細胞に送達され得る。例えば、特定の細胞表面分子に対する特異性を有するタンパク質、例えば抗体または抗体断片を、ウイルスの表面に付着させ、ウイルスを特異的な細胞に標的化させることができる。さらに、ウイルスを核酸配列、例えばプロモーターを含むように操作し、ウイルスが特定の細胞、例えば癌細胞のみに機能させることができる。
【0124】
一部の例では、記載されている治療用組成物は、MICAに免疫特異的に結合するペプチドをコードする核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター、ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター)を含むことができる。1つの局面において、MICAに免疫特異的に結合するペプチドは、MICAに免疫特異的に結合する抗体または抗体断片である。本明細書に記載されているとおり、抗体および抗体断片は、限定はしないが、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合フラグメントから形成される多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、ラクダ抗体、キメラ抗体、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、所望の生物学的活性を示す抗体断片(例えば抗原結合部分)、ジスルフィド連結Fvs(dsFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本願発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、細胞内抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを含む。
【0125】
したがって、1つの局面において、本開示は、配列番号:1、76、95、112、130または149に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むベクターおよび細胞を提供する。一部の態様では、核酸配列は、配列番号:2、77、96、113、131または150と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0126】
1つの局面において、ベクターは、配列番号:10、78、97、114、132または151に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むことができる。一部の態様では、核酸配列は、配列番号:2、11、79、98、115、133または152と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0127】
一部の実施形態では、本開示は、MHCクラスI型ポリペプチド関連性配列A(MICA)またはそれらのエピトープに免疫特異的に結合するペプチドをコードする核酸を含む組成物を提供する。一部の態様では、組成物の核酸は、5以下の保存的アミノ酸置換を有する表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Hをコードする。一部の態様では、組成物の核酸は、5以下の保存的アミノ酸置換を有する表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Lをコードする。
【0128】
1つの局面において、本開示は、配列番号:1に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:2と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の局面において、本開示は、配列番号:10に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:11と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0129】
1つの局面において、本開示は、配列番号:76に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:77と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の局面において、本開示は、配列番号:78に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:79と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0130】
1つの局面において、本開示は、配列番号:95に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:96と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の局面において、本開示は、配列番号:97に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:98と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0131】
1つの局面において、本開示は、配列番号:112に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:113と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の局面において、本開示は、配列番号:114に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:115と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0132】
1つの局面において、本開示は、配列番号:130に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:131と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の局面において、本開示は、配列番号:132に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:133と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0133】
1つの局面において、本開示は、配列番号:149に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:150と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の局面において、本開示は、配列番号:151に対し少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の、または完全(100%)配列同一性ヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。一部の態様では、単離された核酸配列は、配列番号:152と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0134】
本明細書において使用される用語「核酸」または「核酸分子」は、DNA分子およびRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は一本鎖または二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0135】
単離された核酸は、例えば、天然ゲノムにおけるDNA分子が除外され、または不存在である直接に隣接して通常見られる核酸配列の1つを提供するDNA分子であり得る。したがって、単離された核酸は、限定はしないが、他の配列から独立している別々の分子として存在するDNA分子(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理により生産される化学的に合成された核酸、cDNA、またはゲノムDNAフラグメント)ならびにベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)に、または原核生物または真核生物のゲノムDNAに導入されるDNAを含む。加えて、単離された核酸は、操作された核酸、例えばハイブリッドまたは融合核酸の一部である組換えDNA分子を含むことができる。例えばcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリー内の、数百から数百万の他の核酸中に存在する核酸、またはゲノムDNA制限消化を含むゲル切片中に存在する核酸は、単離された核酸として考えない。
【0136】
パーセント配列同一性の計算において、2つの配列をアラインし、2つの配列間のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一一致の数を決定する。同一一致の数をアラインされる領域の長さ(すなわち、アラインされるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数)で割り、100を掛けて、パーセント配列同一性値に達する。アラインされる領域の長さがもっとも短い配列の全長サイズ次第で1つまたは両方の配列の一部であり得ることが理解される。単一の配列は2つ以上の他の配列とアラインされ、それぞれのアラインされる領域と異なるパーセント配列同一性値を有することがあることも理解される。同一性パーセント値は通常、最も近い整数に概算されることに注意すること。例えば、78.1%、78.2%、78.3%および78.4%は78%に繰り下がり、78.5%、78.6%、78.7%、78.8%および78.9%は79%に繰り上がる。また、アラインされる領域の長さは常に整数であることに注意すること。
【0137】
本明細書において使用される用語「パーセント配列同一性」は、任意の所定のクエリー配列と対象配列間の同一性の程度を示す。別の対象核酸またはアミノ酸配列と比較しての任意のクエリー核酸またはアミノ酸配列、例えば転写因子についての同一性パーセントは、以下のように決定することができる。
【0138】
核酸は、全細胞内に、細胞溶解液中にまたは部分精製形態もしくは実質的に純粋な形態で存在しうる。核酸は、当該技術分野で周知のアルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動およびその他を含む標準技術により、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば他の細胞核酸もしくはタンパク質から除去精製される場合、「単離される」かまたは「実質的に純粋な状態にされる」。See、F. Ausubel、et al.、ed. Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、New York (1987)参照。
【0139】
しばしば天然配列(修飾された制限酵素認識部位などを除けば)においてであるが、cDNA、ゲノムまたはそれらの混合物のいずれかからの本願発明の核酸組成物は、遺伝子配列を提供する標準技術にしたがって変異させてもよい。コード配列について、これらの変異は、要望通りアミノ酸配列に影響を及ぼし得る。特に、天然V、D、J、定常、スイッチおよび本明細書に記載されている他のこのような配列に実質的に相同であるか、またはそれらから派生するDNA配列が考えられる(ここで「派生」はある配列が別の配列と同一であるか、または別の配列から修飾されていることを示す)。
【0140】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれているとき、「作動可能に連結」されている。例えば、配列の転写に影響を与えるとき、プロモーターまたはエンハンサーはコード配列と作動可能に連結されている。転写調節配列について、作動可能に連結は、連結されるDNA配列が隣接しており、必要であれば2つのタンパク質コード領域を、隣接して、リーディングフレームにおいて結びつけることを意味する。スイッチ配列について、作動可能に連結は、該配列がスイッチ組換え(recombination)を生じることができることを示す。
【0141】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、核酸配列を宿主細胞に移動させるために使用される任意の分子を示す。一部の態様では、発現ベクターを利用する。発現ベクターは、宿主細胞の形質転換のために適当な核酸分子であり、移動される核酸配列の発現指向および/またはコントロールする核酸配列を含む。発現は、イントロンが存在するとき、限定はしないが転写、翻訳およびスプライシングのようなプロセスを含む。一部の態様では、ウイルスベクターを利用する(例えば、特に、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、およびポックスウイルス)。多数のこのようなウイルスベクターを利用できることが当分野で理解されている。さらに他の局面において、非ウイルスプラスミドベクターもまた、本願発明を実施することにおいて適当であり得る。本願発明のベクターは、当業者に広く利用できる標準組換え技術を使用して構築され得る。このような技術は、一般的な分子生物学文献、例えばSambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition、1989)において見ることができる。
【0142】
本明細書において使用される用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を示すことを意図する。該用語は特定の対象細胞のみだけでなくかかる細胞の子孫もまた示すことを意図すると理解されるべきである。或る修飾が突然変異または環境の影響のいずれかによって後世において起こり得るため、かかる子孫は、実際には、親細胞と同一ではないかもしれないが、本明細書において使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0143】
キメラ抗原受容体
一部の例では、本願発明は、MICAに免疫特異的に結合するペプチドおよび細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。(Kalos M、et al.、Sci Transl Med. 2011 Aug 10;3(95))。一部の態様では、CARは、MICAに免疫特異的に結合するペプチド、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞受容体シグナル伝達ドメインを含む。本願発明のさらなる態様は、本願発明のCARに関連する、関連核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体またはその抗原結合部分、および医薬組成物を提供する。
【0144】
キメラ抗原受容体(CAR)は、T−細胞シグナル伝達ドメインに連結した抗体の抗原結合ドメイン(scFv)を含む人工的に構築されるハイブリッドタンパク質またはポリペプチドである。(Kalos M、et al.、Sci Transl Med. 2011 Aug 10;3(95))。Kalos et al.は、CD19を標的とするCAR T細胞の産生を記載しており、慢性リンパ性白血病患者におけるCAR修飾T−細胞が介在する強力な抗腫瘍効果を証明している。CARの操作されたT−細胞特性は、非MHC−非拘束性様式において選択される標的へT細胞特異性および反応性を変更する能力を含み、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用する。CAR修飾T−細胞はインビボで複製する可能性を有し、長期持続は持続的腫瘍コントロールを可能にし、抗体の繰り返し注入の必要性を防ぐ。(Kalos M、et al.、Sci Transl Med. 2011 Aug 10;3(95))。非MHC−非拘束性抗原認識は、CARを発現するT細胞に抗原処理から独立している抗原を認識する能力を与え、したがって腫瘍回避の主なメカニズムを回避する。さらに、T−細胞において発現されるとき、CARは、有利には、内因性T細胞受容体(TCR)アルファおよびベータ鎖と二量化しない。CAR修飾T細胞は、US2003/022450およびUS2010/0261269およびMilone et al. 2009 Mol. Ther. 17:1453において詳細に記載されている。
【0145】
医薬組成物
一部の例では、本明細書で開示される治療用組成物には、癌の処置に使用される他の化合物、薬剤、および/または剤を含有させることができる。このような化合物、薬剤、および/または剤としては、例えば、化学療法剤、低分子抗癌剤または所定の癌に対する免疫応答を刺激する抗体を挙げることができる。一部の例では、治療用組成物には、例えば、本明細書で開示される1つ以上のペプチド、および1つ以上の抗CTLA−4抗体若しくはペプチド、抗PD−1抗体若しくはペプチド、抗PDL−1抗体若しくはペプチド、抗OX40(CD134、TNFRSF4、ACT35および/またはTXGP1Lとしても知られている)抗体若しくはペプチド、抗GITR(TNFRSF18、AITRおよび/またはCD357としても知られている)抗体若しくはペプチド、抗LAG−3抗体若しくはペプチド、および/または抗TIM−3抗体若しくはペプチドが挙げられる。例えば、一部の例では、本明細書で開示される治療用組成物は、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または10未満)の化合物と組み合わせることができる。
【0146】
一部の例では、本明細書で開示される治療用組成物には、ヒストン脱アセチル化酵素(「HDAC」)阻害剤などの他の化合物を含有させ得る。HDAC阻害剤の例としては、例えば、ヒドロキサム酸、ボリノスタット(Zolinza);スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Merck)、トリコスタチンA(TSA)、LAQ824(Novartis)、パノビノスタット(LBH589)(Novartis)、ベリノスタット(PXD101)(CuraGen)、ITF2357 Italfarmaco SpA(Cinisello)、環状テトラペプチド;デプシペプチド(ロミデプシン、FK228)(Gloucester Pharmaceuticals)、ベンズアミド;Entinostat(SNDX−275/MS−275)(Syndax Pharmaceuticals)、MGCD0103(Celgene)、短鎖脂肪酸、バルプロ酸、フェニル酪酸、AN−9、pivanex(Titan Pharmaceutical)、CHR−3996(Chroma Therapeutics)、およびCHR−2845(Chroma Therapeutics)が挙げられる。
【0147】
一部の例では、本明細書で開示される治療用組成物には、例えば、ボルテゾミブ(Millennium Pharmaceuticals)、NPI−0052(Nereus Pharmaceuticals)、カーフィルゾミブ(PR−171)(Onyx Pharmaceuticals)、CEP 18770、およびMLN9708といったプロテアソーム阻害剤などの、その他の化合物を含有させることができる。
【0148】
一部の例では、本明細書で開示される治療用組成物には、これまでに、抗MICAモノクローナル抗体の有効性を増強させ得るMICAの発現を増大させることが示されている、メルファランなどのアルキル化剤、およびアドリアマイシン(ドキソルビシン)などのトポイソメラーゼ阻害薬を含有させることができる。
【0149】
一部の例では、、治療用組成物は、例えば、本明細書に記載されている1つ以上のペプチドおよび1つ以上の他の薬剤、例えば、化学療法、放射線療法、サイトカイン、ケモカインおよび他の生体シグナル伝達分子、腫瘍特異的ワクチン、細胞癌ワクチン(例えば、GM−CSF形質導入癌細胞)、腫瘍特異的モノクローナル抗体、自己および同種異系の幹細胞レスキュー(例えば、移植片対腫瘍効果を増強させるため)、他の治療抗体、分子標的療法、抗脈管形成療法、治療目的での感染因子(例えば、腫瘍局在化細菌)および遺伝子治療を含むことができる。
【0150】
一部の例では、治療用組成物は、製薬上許容可能な担体と共に製剤化された、本明細書に記載されている抗MICA抗体またはその抗原結合部分の1つまたは組合せを含むことができる。このような組成物は、MICAに結合する(例えば、2つ以上の異なる)ペプチド、抗体、抗原結合部分、免疫複合体または二重特異性分子の1つまたは組合せを含み得る。
【0151】
例えば、医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または補体作用を有する抗体の組合せ(または免疫複合体または二重特異性)を含むことができる。一部の例では、このような組成物は、MICA*009配列(配列番号:167)内のアミノ酸229から248と関与または重複するエピトープと相互作用する抗体または抗体断片、MICA*009アミノ酸配列(配列番号:167)内のアミノ酸179から188と関与または重複するエピトープと相互作用する抗体または抗体断片、および/またはMICA*009アミノ酸配列(配列番号:167)内のアミノ酸119から128と関与または重複するエピトープと相互作用する抗体または抗体断片の1つ以上を含み得る。例えば、治療用組成物は、MICAに結合し、CM33322 mAb4のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/またはCM33322 mAb4のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含むペプチド、抗体または抗体断片を、抗体ID1、6、7、8または9のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1、6、7、8または9のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む1つ以上のペプチド、抗体または抗原結合フラグメントと共に含むことができる。
【0152】
一部の例では、本明細書で開示される治療用組成物は、医薬組成物として、または医薬組成物に使用するために処方することができる。このような組成物は、任意の経路、例えば、米国食品医薬品局(FDA)に認可された任意の経路により対象に投与するために処方または調節することができる。方法例は、FDAのCDERデータ標準マニュアル(CDER Data Standards Manual),ver.004(fda.give/cder/dsm/DRG/drg00301.htmから入手可能)に記載されている。
【0153】
担体材料と組み合わせることで単一の剤形を生成可能な活性成分の量は、処置される対象および特定の投与方法に依存して変化することになる。単一の剤形を生成するための担体材料と併用可能な活性成分の量は、一般に治療効果をもたらす組成物の量となる。一般に、この量は、製薬上許容可能な担体との併用で、100%のうち、活性成分の約0.01%〜約99%、好ましくは活性成分の約0.1%〜約70%、最も好ましくは活性成分の約1%〜約30%の範囲となる。
【0154】
一部の例では、医薬組成物には、有効な量の1つ以上のペプチドを含有させることができる。本明細書で使用するとき、用語「有効な量」および「処置に有効な」は、所望される効果または生理学的結果を得る際の投与という文脈において、一定時間(急性または慢性投与および定期または継続投与など)にわたって有効である本明細書に記載されている1つ以上のペプチド(例えば、MICAに結合する抗体または抗体断片)の量または濃度を指す。
【0155】
一部の例では、医薬組成物には、1つ以上のペプチド並びに任意の製薬上許容可能な担体、補助剤および/または賦形剤を含有させることができる。一部の例では、医薬組成物には、さらに1つ以上の追加の治療剤を、疾患または病徴の調節を達成するのに有効な量で含有させることができる。
【0156】
用語「製薬上許容可能な担体または補助剤」は、本発明のペプチドとともに患者に投与することができ、かつ本発明のペプチドの薬理活性を損なわず、かつ治療量の化合物を送達するのに十分な投与量で投与した場合に非毒性である基剤または助剤を指す。
【0157】
本発明の医薬組成物に使用することのできる製薬上許容可能な基材、補助剤および賦形剤としては、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸塩などの自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、Tween若しくは他の同様の高分子系送達マトリックスなどの薬物剤形において使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、緩衝成分、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸と、水と、塩類とまたは電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩との、部分グリセリド混合物、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系材料、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、並びに羊毛脂が挙げられる。本明細書に記載の処方の化合物の送達性を増強させるために、α−、β−、およびγ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを有利に使用することもできる。
【0158】
本発明の医薬組成物には、製薬上許容できる任意の一般的な非毒性基材、補助剤、または賦形剤を含有させることができる。場合によっては、処方のpHは、製薬上許容可能な酸、塩基、または緩衝剤により調整して、処方された化合物またはその送達形態の安定性を向上させることができる。本明細書で使用するとき、用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、病巣内、および頭蓋内注射または輸液による手法を包含する。
【0159】
医薬組成物は、吸入および/または経鼻投与用の溶液または粉末の形態であり得る。このような組成物は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween 80など)および懸濁剤を使用して、当該技術分野において既知の手法に従って処方することもできる。無菌注射製剤は、非毒性非経口投与可能な希釈剤または溶媒を用いた無菌注射製剤または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール溶液)であってもよい。利用することのできる投与可能な賦形剤および溶媒としては、マンニトール、水、リンガー液および生理食塩水が挙げられる。加えて、無菌硬化油は、一般的に、溶媒または懸濁媒質として利用される。この目的に関し、合成モノまたはジグリセリドなどの任意の低刺激性硬化油が利用され得る。例えば、オリーブ油またはヒマシ油、特に、これらのポリオキシエチル化化合物などといった、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、製薬上許容できる天然油として、注射剤の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液には、乳濁液およびまたは懸濁液など、製薬上許容可能な剤形の処方に一般的に使用される、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロース若しくは同様の分散剤を含有させることができる。その他の一般的に使用されるTween若しくはSpanなどの界面活性剤、および/または他の類似の乳化剤、または製薬上許容可能な固体、液体若しくは他の剤形の製造に一般に使用される生物学的利用能増強剤なども、製剤目的で使用することができる。
【0160】
医薬組成物は、限定するものではないが、カプセル剤、錠剤、乳濁液および水性懸濁液、分散液および溶液などといった、経口投与可能な任意の投与形態で経口投与することができる。経口用途用の錠剤の場合、一般に使用される基材としては乳糖およびトウモロコシデンプンが挙げられる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの粘滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与の際に有用な希釈剤としては、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液および/または乳濁液を経口投与する場合、有効成分は、乳化剤および/または懸濁剤と組み合わせた油相に懸濁または溶解させることもできる。必要に応じて、特定の甘味料および/または香料および/または着色料を添加することもできる。
【0161】
あるいは、またはこれに加え、医薬組成物は、点鼻剤(エアゾール)または経鼻吸入により投与することができる。このような組成物は、製剤処方の技術分野で公知の手法に従って調製され、かつベンジルアルコールまたは他の好適な保存料、生物学的利用能を増強させる吸収促進剤、フッ化炭素、および/または当該技術分野において既知の他の溶解剤若しくは分散剤を利用して、生理食塩水溶液として調製することができる。
【0162】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書で開示される任意の1つ以上のペプチドまたは医薬組成物(以降「X」として記載)を、以降の方法において使用するための方法を提供する。
【0163】
本明細書で開示される1つ以上の疾患または状態(例えば、「Y」として以降の実施例において参照される癌)の処置において薬剤として使用するための物質X。Yの処置用薬剤を製造する際の物質Xの使用;およびYの処置において使用するための物質X。
【0164】
一部の例では、本明細書で開示される治療用組成物は、米国での販売、米国への輸入、および/または米国からの輸出用に製剤することができる。
【0165】
方法
一部の例では、方法には、状態または疾患を有するまたは有したヒト対象、および状態または疾患に対し正の免疫応答を示すまたは示したヒト対象を選別することが包含され得る。一部の例では、好適な対象には、例えば、状態または疾患を有するまたは有していたものの、疾患またはそれらの病態から回復している対象、現在では疾患の症状が(例えば、同様の状態または疾患を有する他の対象(例えば、大多数の対象)と比較して)軽減している対象、並びに/あるいは、例えば、無症候期(例えば、同様の状態または疾患を有する他の対象(例えば、大多数の対象)と比較して)において、状態または疾患を有するまたは有していたものの、状態または疾患を有しつつ(例えば、同様の状態または疾患を有する他の対象(例えば、大多数の対象)と比較して)より長期間生存している対象、が包含される。一部の例では、状態または疾患に対してワクチンを接種している(例えば、ワクチン接種歴があるおよび/またはワクチンを接種されたことがあるおよびワクチンを再接種されている(例えば、免疫補助剤入りワクチンを接種されている))対象を選別することができる。
【0166】
本明細書で使用するとき、用語「対象」は、任意の動物を指す。一部の例では、対象は哺乳類である。本明細書で使用するとき、一部の例では、用語「対象」はヒト(例えば、男性、女性、または子供)を指す。本方法に使用する試料には、血清試料が包含され、例えば、選別された対象から得られた血清試料が包含される。
【0167】
一部の例では、対象の選別には、対象から試料を得ること(例えば、候補となる対象)、および対象が選択に適するかを示す指標について試料を試験することを包含させることができる。一部の例では、対象は、状態または疾患を有していたかまたは有しているものとして、例えば、医療従事者により、確認または特定することができる。一部の例では、状態または疾患に対する正の免疫応答の提示は、病歴、家族歴、および/または正の免疫応答に関する指標の検出からなされる。場合によっては、患者の選別には複数名の患者を包含させることができる。例えば、第1施設により候補となる対象から試料を得て、第2施設により試料を試験することができる。一部の例では、対象は、医師(例えば、一般開業医)により選別および/または参照することができる。一部の例では、対象の選別には、選別した対象から試料を得ること、および試料を保管すること、および/または本明細書で開示される方法を使用すること、を包含させることができる。試料は、例えば、細胞または細胞集団を含有し得る。
【0168】
一部の例では、免疫細胞を得ることまたは標的とすることには、例えば、標的とする免疫細胞に結合(例えば、特異的に結合)することができる免疫原四量体を得ること、または提供すること;免疫原四量体と試料とを接触させること;免疫原四量体を検出すること;免疫原四量体が標的免疫細胞に結合するか否か判定すること;並びに、標的とする免疫細胞に免疫原四量体が結合する場合には、標的とする免疫細胞を得ること、のうちの1つ以上および/または組み合わせを包含させることができる。
【0169】
免疫原四量体には、状態または疾患に関連する、および/または標的とする免疫細胞に結合(例えば、特異的に結合)する免疫原を含有させることができ、例えば、標的免疫細胞は、選択された状態または疾患に関連するものである。状態または疾患に関連する免疫原および標的免疫細胞としては、例えば、特定の状態または疾患を有する対象には存在するが、この状態または疾患を有さない対象には存在しない、免疫原または免疫細胞;並びに/あるいは特定の状態または疾患を有する対象と、この状態または疾患を有さない対象とで程度が異なる(例えば、増加している)免疫原または免疫細胞が挙げられる。一部の例では、免疫原または免疫細胞は癌特異的なものであり得る。免疫原は可溶性であり得る。免疫原四量体には、四量体(例えば、免疫原性抗原(例えば、抗原および/またはエピトープ)の単量体、二量体、および/または三量体を含む)が含有され得る。一部の例では、免疫原四量体は、同様の条件下での、細胞に対する非四量体型の免疫原の結合性と比較して、細胞に対する結合性が増大している。一部の例では、四量体抗原は、検出可能な部分、例えば、ストレプトアビジン部分を含有する。四量体化の方法は、当該技術分野において既知でありかつ本明細書で開示される。
【0170】
免疫原四量体を検出すること、および/または免疫原四量体が標的細胞に結合するか否かを判定することは、当該技術分野において既知のおよび/または本明細書で開示される方法を使用して実施することができる。例えば、方法はフローサイトメトリーを包含し得る。フローサイトメトリー(ソーティングおよびゲーティング法を含む)を最適化する方法は、当該技術分野において既知であり、および/または本明細書で開示される。一部の例では、方法には、標的とする免疫細胞に結合する抗原四量体間の結合性、結合親和性、および/または結合特異性の度合いの解析が包含され得る。例えば、免疫原四量体と標的免疫細胞と間に、規定の結合度が測定された場合に(例えば、このような場合に限り)、標的とする免疫細胞を得ることができる。規定の結合度は、特定の度合いであってよく、および/または相対的な度合いであってよい。標的とする免疫細胞を得ることには、標的とする免疫細胞を得ること、提供すること、同定すること、選別すること、精製すること、および/または単離すること、を包含させることができる。このような方法には、例えば、セルソーティング法、細胞濃縮法、および/またはバックグラウンド減少法を含有させることができる。
【0171】
一部の例では、自己抗原に対する免疫細胞を得ることは、例えば、自己抗原に対し正の免疫応答を示す対象を特定すること;自己抗原の多量体を得ることまたは提供すること;自己抗原の多量体を、自己抗原に対し正の免疫応答を示す対象由来のサンプルと接触させること;自己抗原の多量体と結合する免疫細胞を得ることのうちの1つ以上および/またはこれらの組み合わせを包含し得る。
【0172】
一部の例では、方法には、癌患者由来の自己抗原に対する免疫細胞を得ることを包含させることができ、例えば、自己抗原に対し正の免疫応答を示す対象を特定すること;自己抗原の多量体を提供すること;自己抗原の多量体を、自己抗原に対し正の免疫応答を示す対象由来のサンプルと接触させること;並びに自己抗原の多量体と結合する免疫細胞を得ることのうちの1つ以上および/またはこれらの組み合わせを包含させ得る。
【0173】
多量体型の自己抗原には、状態または疾患に関連する、および/または標的とする免疫細胞に結合(例えば、特異的に結合)する自己抗原を含有させることができ、例えば、標的免疫細胞は、選択された状態または疾患に関連するものである。状態または疾患に関連する自己抗原および標的免疫細胞としては、例えば、特定の状態または疾患を有する対象には存在するが、この状態または疾患を有さない対象には存在しない、抗原または免疫細胞;および/あるいは特定の状態または疾患を有する対象と、この状態または疾患を有さない対象とで程度が異なる(例えば、増加している)免疫原または免疫細胞が挙げられる。一部の例では、状態または疾患は癌であり得る。一部の実施形態では、癌は、黒色腫、肺癌、乳癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、グリア芽腫、肝臓癌、並びに結腸癌、リンパ腫または白血病である。一部の例では、自己抗原または免疫細胞は、癌特異的なものであり得る。自己抗原は可溶性であり得る。多量体型の自己抗原には、自己抗原(例えば、抗原および/またはエピトープ)の四量体(例えば、単量体、二量体、および/または三量体型抗原を四量体化させたものなど)が包含され得る。一部の例では、自己抗原の多量体は、検出可能な部位、例えば、ストレプトアビジン部位を含有する。多量体化の方法は、当該技術分野において既知でありかつ本明細書で開示される。
【0174】
得られた標的免疫細胞からの遺伝子材料(例えば、DNAおよび/またはmRNA)の単離または精製方法は、当該技術分野において既知であり、かつ本明細書において例示される。このような遺伝子材料が得られた場合に、本明細書で開示される治療用組成物をこのような遺伝子材料を使用して作製する方法は当該技術分野において既知であり、および/または以下に要約される。上述のように、当該技術分野において既知の手法を用いて遺伝子材料に変更を加え、本明細書で開示されるペプチド変異体を作製することができる。
【0175】
標的細胞内に含有されるまたは標的細胞から得られる核酸(例えば、cDNA)からペプチドを作製することは、例えば、解析法、例えば、標的とする免疫細胞(例えば、単一のまたは単離され、同定された標的免疫細胞)由来の重鎖および軽鎖可変ドメインの配列決定をすることを包含し得る。一部の例では、方法には、完全型ヒト抗体、またはそれらの断片(例えば、上記の通りのもの)を生成すること、並びに非ヒト抗体をヒト化することが包含され得る。DNAは、得られた免疫細胞から、一般的な手法を用い(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを使用することで)容易に単離および/または配列決定することができる。
【0176】
単離したDNAは、発現ベクター中に配置し、次に、本来であれば抗体タンパク質を産生しない大腸菌(Escherichia coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞に遺伝子導入し、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体を合成させることができる。抗体をコードしているDNAの、細菌における組換え発現についての総説としては、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5:256〜262(1993)およびPluckthun,Immunol.Revs.,130:151〜188(1992)が挙げられる。
【0177】
抗体またはそれらの変異体の組換え発現には、一般的に、抗体をコードするポリヌクレオチドを含有している発現ベクターの構築が必要とされる。したがって、本発明は、抗体分子、抗体重鎖または軽鎖、抗体またはこれらの部分の重鎖または軽鎖可変ドメイン、あるいは重鎖または軽鎖CDR、操作可能に連結したプロモーター、をコードしているヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。このようなベクターには、抗体分子の定常部をコードしているヌクレオチド配列(例えば、米国特許第5,981,216号;同第5,591,639号;同第5,658,759号および同第5,122,464号を参照されたい)を含有させることができ、並びに完全な重鎖、完全な軽鎖、または完全な重鎖および軽鎖の両方を発現させるために、抗体の可変ドメインをこのようなベクターにクローニングすることもできる。一般的な手法により、発現ベクターを宿主細胞に移行させたならば、次に、遺伝子導入した細胞を一般的な手法により培養し、抗体を産生させる。したがって、本発明は、操作可能に異種プロモーターに連結された、本発明の抗体若しくはそれらの断片、またはそれらの重鎖若しくは軽鎖、またはそれらの部分、または本発明の単鎖抗体、をコードしているポリヌクレオチドを含有している、宿主細胞を含む。特定の実施形態では、二本鎖抗体の発現にあたり、以降に記載の通りに、完全な免疫グロブリン分子を発現させるための重鎖および軽鎖の両方をコードしているベクターを宿主細胞において同時発現させることもできる。
【0178】
組換え抗体の発現の際に宿主として入手可能な哺乳類細胞株は、当該技術分野において公知であり、かつアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手可能な、限定するものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、ヒト腎臓上皮細胞293、および数多くのその他の細胞株などの数多くの不死化細胞株を包含する。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後のプロセシングおよび修飾に関し、特徴的でかつ特異的な機序を有する。適切な細胞株または宿主系を選択することで、発現させた抗体またはそれらの部分の正しい修飾およびプロセシングが保証されることになる。この目的を達成するために、一次転写産物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞機序を保有している真核生物を宿主細胞として使用することができる。このような哺乳類宿主細胞としては、限定するものではないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NS0(なんらかの機能性免疫グロブリン鎖を内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3O並びにHsS78Bst細胞が挙げられる。一実施形態では、ヒトリンパ球を不死化させることにより展開されるヒト細胞株を使用して、遺伝子組換え法によりモノクローナル抗体を産生させることができる。一実施形態では、遺伝子組換え法によるモノクローナル抗体の産生には、ヒト細胞株PER.C6.(Crucell,オランダ)を使用することができる。
【0179】
一部の例では、本明細書で開示されるペプチドは合成により生成することができる。本明細書に記載のペプチドの合成に有用な、合成による化学的な変換および保護基による方法論(保護および脱保護)は、当該技術分野において既知であり、このようなものとしては、例えば、R.Larock,包括的有機分子変換法(Comprehensive Organic Transformations),VCH Publishers(1989);T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」,第3版,John Wiley and Sons(1999);L.FieserおよびM.Fieser,「有機合成用フィッシャーおよびフィッシャー試薬(Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis)」,John Wiley and Sons(1994);並びにL.Paquette,ed.,「有機合成用試薬辞典(Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis)」,John Wiley and Sons(1995)、並びにこれらの改訂版に記載のものなどが挙げられる。
【0180】
ペプチドは、当業者により公知の化学合成法により製造することもできる。例えば、Fields et al.,「合成ペプチド(Synthetic Peptides)」第3章:ユーザーズガイド(User's Guide),ed.Grant,W.H.Freeman & Co.,(ニューヨーク市,N.Y.),1992,p.77を参照されたい。したがって、ペプチドは、自動化したメリーフィールド固相合成法を使用して、例えば、アプライドバイオシステムズのモデル430Aまたは431のペプチド合成装置において、側鎖保護されたアミノ酸を使用し、t−Boc若しくはFmoc化学法のいずれかにより保護したα−NH
2により合成することができる。
【0181】
本明細書に記載のペプチドを製造する際の一つの手法には、ペプチド固相合成法(SPPS)が使用される。リンカー分子を用い酸に不安定な結合を介し、C末端アミノ酸をポリスチレン樹脂と結合させる。この樹脂は、合成に使用される溶媒に不溶性であることから、過剰な試薬および副産物は比較的簡単かつ迅速に洗い流される。N末端は、酸には安定であるものの塩基により除去することのできるFmoc基により保護される。任意の側鎖官能基は、塩基に安定で酸には不安定な基により保護される。
【0182】
天然の化学連結法を使用し、個々の合成ペプチドを結合させることにより、より長鎖のペプチド鎖を合成することができる。別の方法としては、より長鎖の合成ペプチドは、公知の組換えDNA法により合成することができる。このような手法は、詳細なプロトコルを備える公知の一般的な手法により提供される。本発明のペプチドをコードしている遺伝子を構築するため、アミノ酸配列を逆翻訳して、アミノ酸配列をコードしている核酸配列、好ましくは、遺伝子を発現させる生物に関し最適化されたコドンを有する核酸配列を得る。次に、合成遺伝子を、典型的にはペプチドおよび必要に応じて任意の制御エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することにより作製する。合成遺伝子を適切なクローニングベクターに挿入し、宿主細胞に形質移入させる。次に、選択された発現系および宿主に合った、好適な条件下でペプチドを発現させる。このペプチドを、一般的な手法により精製し、および特徴づける。
【0183】
ペプチドは、ハイスループットでコンビナトリアルな方法、例えば、アドバンスドケムテックから入手可能な、ハイスループットなマルチチャンネルシンセサイザーで合成することができる。
【0184】
ペプチド結合は、例えば、ペプチドの生理学的安定性を向上させるために、レトロ・インベルソ(retro-inverso)結合(C(O)−NH);還元型アミド結合(NH−CH
2);チオメイレン結合(S−CH
2またはCH
2−S);オキソメチレン結合(O−CH
2またはCH
2−O);エチレン結合(CH
2−CH
2);チオアミド結合(C(S)−NH);トランス型オレフィン結合(CH=CH);フッ素置換されたトランス型オレフィン結合(CF=CH);ケトメチレン結合(C(O)−CHR)またはCHR−C(O)(式中、RはHまたはCH
3である);およびフッ素−ケトメチレン結合(C(O)−CFRまたはCFR−C(O)(式中、RはHまたはFまたはCH
3である)により置き換えることができる。
【0185】
ペプチドは、アセチル化、アミド化、ビオチン化、シンナモイル化、ファルネシル化、フルオレセイン化、ホルミル化、ミリストイル化、パルミトイル化、リン酸化(Ser、TyrまたはThr)、ステアロイル化、スクシニル化およびスルフリル化によりさらに修飾することができる。上記の通り、ペプチドを例えば、ポリエチレングリコール(PEG);アルキル基(例えば、C1〜C20線状または分岐状アルキル基);脂肪酸ラジカル;およびこれらの組み合わせと結合させることができる。
【0186】
一部の例では、ペプチドは、免疫グロブリン分子の精製に関し、当該技術分野において既知の任意の方法、例えば、クロマトグラフ(例えば、イオン交換、アフィニティー(特にプロテインAまたはプロテインG特異的抗原に対する親和性をもとにしたもの)、およびサイズ排除クロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の違い、あるいはタンパク質の精製に関する任意のその他の一般的な手法により精製することができる。さらに、本発明の抗体またはそれらの断片は、精製を容易にするため、上記のまたは当該技術分野において既知の異種ポリペプチド配列(本明細書において「タグ」と参照される)と融合させることもできる。
【0187】
代表的な、非限定的な方法の概略を
図5A−5Fに示す。この概略は、順序を指定するものではない。
【0188】
一部の例では、本開示はまた、所望の機能性MICA結合特性を保持する本明細書に記載されている抗体のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変および/または軽鎖領域を有する抗体または抗体断片を提供する。例えば、いくつかの態様において、抗体または抗体断片は、上記配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるV
Hおよび/またはV
Lアミノ酸配列を含むことができる。配列番号:2、77、96、113、131または150および79、98、115、133または152のV
HおよびV
L領域と高い(すなわち、80%またはそれ以上)相同性を有するV
HおよびV
L領域を有する抗体または抗体断片は、配列番号:77、96、113、131または150および/または11、79、98、115、133または152をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発)、次に、本明細書に記載されている機能アッセイを使用して、保持された機能(すなわち、1つ以上の機能、例えば、MICAのアルファ3ドメインへの結合;MICA分離のブロック;MICAへのNGKD結合を阻害しない;可溶性MICA誘導NGKD下方調節およびNK細胞細胞毒性低下のブロック)についてコードされる改変された抗体の試験により得ることができる。
【0189】
MICAへの本明細書に記載されている特定の抗MICA抗体(例えば、抗体ID1、6、7、8、9および11)の結合に対して競合する(例えば、交差競合する)抗体および抗体断片も提供する。かかる競合する抗体は、標準MICA結合アッセイにおいて該抗体へのMICAの結合を競合的に阻害する能力に基づいて特定することができる。例えば、組換えヒトMICAタンパク質がプレート上に固定され、抗体の1つが蛍光標識され、標識された抗体の結合と競合オフ(compete off)する標識されていない抗体の能力を評価する標準ELISAアッセイを使用することができる。さらに、またはあるいは、BIAcore分析を、抗体の交差競合する能力を評価するために使用することができる。MICAへの抗MICA抗体の結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がMICAへの結合に対して該抗体と競合することができることを証明する。
【0190】
したがって、1つの態様において、本開示は、FACSにより測定されるとき、活性化T細胞上のMICAへの本明細書に記載されている抗MICA抗体の結合を少なくとも50%、例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%阻害する抗MICA抗体を提供する。例えば、競合する抗MICA抗体候補物による抗MICA抗体の結合の阻害は、実施例に記載されている条件下で評価することができる。
【0191】
一部の例では、本開示は、本明細書に記載されている抗MICA抗体(例えば、抗体ID8、9および11)と同じエピトープに結合する抗MICA抗体を提供する。実施例14にさらに議論されているとおり、抗体ID8(CM33322 mAb11)は、MICA*009 アミノ酸配列(配列番号:167)内の残基119から128と関与するエピトープに結合する;抗体ID9(CM33322 mAb29)は、MICA*009アミノ酸配列(配列番号:167)内の残基229から248と関与するエピトープに結合する;抗体ID11(CM33322 mAb4)は、MICA*009アミノ酸配列(配列番号:167)内の残基179から188と関与するエピトープに結合する。したがって、一部の実施形態では、本開示は、MICA*009のアミノ酸181から274に相当するα3領域内のアミノ酸残基に結合する抗MICA抗体または抗体断片を提供する。
【0192】
本明細書に記載されている抗体と「MICA上の同じエピトープ」に結合する抗体を決定するための技術は、例えば、エピトープマッピング方法、例えば、エピトープの原子分解を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析を含む。他の方法は、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾によって結合の喪失がエピトープ構成要素の指標(indication)としばしば考えられる、抗原フラグメントまたは抗原の突然変異への抗体の結合をモニタリングする。加えて、エピトープマッピングのためのコンピューターによるコンビナトリアル方法も使用することができる。これらの方法は、特異的な短ペプチドをコンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから単離する興味ある抗体の能力に頼る。次に、このペプチドは、ペプチドライブラリーをスクリーニングするために使用される抗体に相当するエピトープの定義のための手がかりと見なされる。エピトープマッピングについて、立体構造の不連続的なエピトープをマッピングするように示されるコンピューターによるアルゴリズムも開発されている。
【0193】
例えば、マウスは、本明細書に記載されているヒトMICA、生産されるハイブリドーマ、およびMICAへの結合についてmAb4と競合する能力についてスクリーニングされて得られるモノクローナル抗体で免疫化され得る。マウスはまた、mAb4モノクローナル抗体が結合するエピトープを含むMICAのより小さいフラグメントで免疫化することもできる。例えば、Jespers et al., Biotechnology 12:899, 1994の方法が、同じエピトープ、したがって典型的なモノクローナル抗体と同様の特性を有するモノクローナル抗体の選択を導くために使用され得る。ファージディスプレイを使用して、最初に、典型的な抗体の重鎖をMICA結合モノクローナル抗体を選択するように(好ましくはヒト)軽鎖のレパートリーと対にし、次に、新規軽鎖を典型的なモノクローナル抗体と同じエピトープを有する(好ましくはヒト)MICA結合モノクローナル抗体を選択するように(好ましくはヒト)重鎖のレパートリーと対にする。あるいは、典型的なモノクローナル抗体の変異体(例えば、mAb4、ID11)は、抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAの突然変異誘発により得ることができる。
【0194】
例えば、Champe et al. (1995) J. Biol. Chem. 270:1388−1394に記載されているエピトープマッピングは、抗体が興味あるエピトープに結合するか否かを決定するために行うことができる。Cunningham and Wells (1989) Science 244: 1081−1085によって記載されている「Alanine scanning mutagenesis」、またはMICAまたはMICBにおけるアミノ酸残基の点突然変異誘発のいくつかの他の形態もまた、本願発明の抗−MICAまたはMICB抗体に対する機能的エピトープを決定するために使用され得る。しかしながら、突然変異誘発試験はまた、MICAまたはMICBの全体的三次元構造に極めて重要であるが、抗体−抗原接触に直接的に関与しないアミノ酸残基を表し得、したがって、他の方法が、この方法を使用して決定される機能的エピトープを確認するために必要とされ得る。
【0195】
本明細書に記載されている抗体競合アッセイはまた、抗体が別の抗体と「同じエピトープに結合する」か否かを決定するために使用することができる。一般的に、第2の抗体が過剰であり、第1の抗体が全ての部位で飽和である条件下で、第2の抗体によってエピトープと相互作用することが知られている抗体の50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の競合は、これらの抗体が「同じエピトープに結合する」ことを示す。2つの抗体間の競合レベルを評価する貯めに、例えば、放射免疫測定法または抗体に対して他の標識を使用するアッセイを使用することができる。例えば、MICAまたはMICB抗原を、同じ量の第2の標識されていない抗MICA抗体の存在下で、標識化化合物(例えば、
3H、
125I、ビオチン、またはルビジウム)にコンジュゲートされた飽和量の第1の抗MICA抗体またはその抗原結合フラグメントとインキュベートすることができる。次に、標識されていないブロッキング抗体の存在化で抗原に結合する標識された抗体の量を評価し、標識されていないブロッキング抗体の非存在下での結合と比較する。競合は、ブロッキング抗体の非存在下と比較しての、標識されていないブロッキング抗体の存在下での結合シグナルの変化パーセントによって決定される。したがって、ブロッキング抗体の非存在下での標識された抗体の結合と比較して、ブロッキング抗体の存在下での標識された抗体の結合の50%阻害があるとき、50%の2つの抗体間での競合がある。したがって、50%またはそれ以上、60%またはそれ以上、70%またはそれ以上、例えば70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の第1および第2の抗体間の競合についての言及は、第1の抗体が抗原への第2の抗体の結合(または逆もまた同様)を(第1の抗体の非存在下で第2の抗体による抗原の結合と比較して)50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上を阻害することを意味する。したがって、第2の抗体による抗原への第1の抗体の結合の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の阻害は、2つの抗体が同じエピトープに結合することを示す。
【0196】
(1)本明細書に記載されているV
H CDR領域の1つ以上を含むV
H配列および本明細書に記載されているV
L CDR領域の1つ以上を含むV
L配列、および(2)異種フレームワーク領域を含む操作された組換え抗体も提供する。異種フレームワーク領域は、CDR領域の天然供給源ではない抗体、細胞、またはヒトに由来し得る。例えば、一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9または11のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1、6、7、8、9または11のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および同じCDRを含む抗体ID1、6、7、8、9または11に由来しないフレームワーク領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID1のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID1に由来しないフレームワーク領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID6のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID6のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID6に由来しないフレームワーク領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID7のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID7のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID7に由来しないフレームワーク領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID8のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID8のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID8に由来しないフレームワーク領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID9のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID9のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID9に由来しないフレームワーク領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID11のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID11のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID11に由来しないフレームワーク領域を含み得る。
【0197】
(1)本明細書に記載されているV
H CDR領域の1つ以上を含むV
H配列および本明細書に記載されているV
L CDR領域の1つ以上を含むV
L配列、および(2)異種定常領域を含む操作された組換え抗体も提供する。異種定常領域は、CDR領域の天然供給源ではない抗体、細胞、またはヒトに由来し得る。例えば、一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9または11のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1、6、7、8、9または11のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、およびCDRが得られたヒトではないヒトの定常領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID1のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID1に由来しない定常領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID6のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID6のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID6に由来しない定常領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID7のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID7のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID7に由来しない定常領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID8のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID8のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID8に由来しない定常領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID9のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID9のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID9に由来しない定常領域を含み得る。一部の実施形態では、抗体は、表1に示される抗体ID11のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID11のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3、および抗体ID11に由来しない定常領域を含み得る。
【0198】
(1)本明細書に記載されているV
H CDR領域の1つ以上を含むV
H配列および本明細書に記載されているV
L CDR領域の1つ以上を含むV
L配列、および(2)異種Fc領域を含む操作された組換え抗体も提供する。異種Fc領域は、CDR領域の天然供給源ではない抗体、細胞、またはヒトに由来し得る。
【0199】
出発原料から改変された特性を有し得る修飾抗体を設計されるように、出発原料として本明細書中に開示されるV
Hおよび/またはV
L配列のうちの1つ以上を有する抗体を使用して、作製された改変および修飾された抗体も提供する。ここで修飾抗体は最初の抗体からの改変された特性を有しうる。抗体は、一方もしくは両方の可変領域(すなわちV
Hおよび/またはV
L)内、例えば1つ以上のCDR領域内および/または1つ以上のフレームワーク領域内での1つ以上の残基の修飾によって改変可能である。さらにまたはその他として、抗体は、定常領域内で残基を修飾し、例えば抗体のエフェクター機能を改変することによって改変可能である。
【0200】
実施することができる可変領域の改変の1つのタイプはCDR移殖である。抗体は、6つの重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基全体に支配的な標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、各抗体間でCDR外部の配列よりも多様である。CDR配列が大部分の抗体−抗原相互作用に関与することから、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上に移植された特定の天然抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターの作成により発現することは可能である(例えば、Riechmann、L. et al. (1998) Nature
332:323−327; Jones、P. et al. (1986) Nature
321:522−525; Queen、C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. See. U.S.A.
86:10029−10033;Winterによる米国特許第5,225,539号、およびQueen et al.による米国特許第5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号参照)。
【0201】
したがって、本開示の別の実施形態は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列(各々、配列番号4、81、100、117、135および154、配列番号84、102、119、137および156、ならびに配列番号8、86、103、121、139および158からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む)を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、およびCDR3配列(各々、配列番号13、88、106、124、142および161、配列番号15、90、108、126、144および163、ならびに配列番号17、92、110、128、146および165からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む)を含む軽鎖可変領域とを含む単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。したがって、かかる抗体は、表1に示されるモノクローナル抗体ID1、6、7、8、9または11のV
HおよびV
L CDR配列を有し、これらはさらにこれらの抗体由来の異なるフレームワーク配列を含みうる。
【0202】
かかるフレームワーク配列は、生殖細胞系の抗体遺伝子配列を含む公的なDNAデータベースまたは出版された参考文献から得られうる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子における生殖細胞系DNA配列は、(インターネット上のwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能な)「Vベース(VBase)」ヒト生殖細胞系配列データベースや、ならびにKabat、E. A.、et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、米国保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)、NIH Publication No. 91−3242; Tomlinson、I. M.、et al. (1992) “The Repertoire of Human Germline V
H Sequences Reveals about Fifty Groups of V−
H Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol.
227:776−798;ならびにCox、J. P. L. et al. (1994) “A Directory of Human Germ−line V
H Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur. J. Immunol.
24:827−836(これら各々の内容は参照により本明細書中に明示的に援用される)において見出されうる。
【0203】
本開示の抗体で用いられる例示されるフレームワーク配列は、本開示の抗体により用いられるフレームワーク配列と構造的に類似する配列を含む。V
H CDR1、2および3配列、ならびにV
L CDR1、2および3配列はフレームワーク配列の元となる生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子内に見出される配列と同一の配列を有するフレームワーク領域上に移植されうるか、あるいはCDR配列は生殖細胞系配列と比べて1つ以上の突然変異を含むフレームワーク領域上に移植されうる。例えば、特定の例ではフレームワーク領域内の残基を突然変異させ、抗体の抗原への結合能を維持または増強することが有益であることが見出されている(例えば、Queen et alによる米国特許第5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号参照)。
【0204】
可変領域修飾の別のタイプは、アミノ酸残基をV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域内で変異させ、それにより目的の抗体の1つ以上の結合特性(例えば親和性)を改善するものである。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発を行い、突然変異を導入可能であり、かつ、目的の抗体の結合または他の機能特性に対する効果が、本明細書中に記載されかつ実施例に提供されるインビトロまたはインビボアッセイにおいて評価されうる。好ましくは、(上で考察の)保存的修飾が導入される。突然変異は、アミノ酸の置換、付加または欠失でありうるが、好ましくは置換である。さらに典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つ以下の残基が改変される。
【0205】
したがって、別の実施形態では、本開示は、(a)配列番号4、81、100、117、135および154からなる群から選択されるアミノ酸配列あるいは配列番号4、81、100、117、135および154と比べて1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HCDR1領域;(b)配列番号6、84、102、119、137および156からなる群から選択されるアミノ酸配列あるいは配列番号6、84、102、119、137および156と比べて1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HCDR2領域;(c)配列番号8、86、103、121、139および158からなる群から選択されるアミノ酸配列あるいは配列番号8、86、103、121、139および158と比べて1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HCDR3領域;(d)配列番号13、88、106、124、142および161からなる群から選択されるアミノ酸配列あるいは配列番号13、88、106、124、142および161と比べて1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LCDR1領域;(e)配列番号15、90、108、126、144および163からなる群から選択されるアミノ酸配列あるいは配列番号15、90、108、126、144および163と比べて1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LCDR2領域;ならびに(f)配列番号17、92、110、128、146および165からなる群から選択されるアミノ酸配列あるいは配列番号17、92、110、128、146および165と比べて1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LCDR3領域を含む重鎖可変領域を含む単離抗MICAモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0206】
抗体のCDRにおけるメチオニン残基は酸化され、可能な化学分解および抗体の効力における結果としての減少を引き起こし得る。したがって、本願発明はまた、重鎖および/または軽鎖CDRにおける1つ以上のメチオニン残基が酸化的分解を受けないアミノ酸残基と置き換えられている抗MICA抗体を提供する。1つの態様において、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11のCDRにおけるメチオニン残基は、酸化的分解を受けないアミノ酸残基と置き換えられる。
【0207】
本開示の改変抗体は、例えば抗体の特性を改善するためにV
Hおよび/またはV
L内のフレームワーク残基に修飾が施されている場合の抗体を含む。典型的には、かかるフレームワーク修飾を施すことで抗体の免疫原性が低下する。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系配列に「復帰突然変異する(backmutate)」ことである。より詳細には、体細胞突然変異を経ている抗体は、抗体が誘導される生殖細胞系配列とは異なるフレームワーク残基を含みうる。かかる残基は、抗体フレームワーク配列を抗体が誘導される生殖細胞系配列と比較することにより同定されうる。フレームワーク領域配列を生殖細胞系列立体配置に戻すために、体細胞突然変異を、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発によって、生殖細胞系列配列に「復帰突然変異させる」ことができる。かかる「復帰突然変異された」抗体もまた、本願発明により包含されることを意図する。
【0208】
フレームワーク修飾の別のタイプは、フレームワーク領域内またはさらに1つ以上のCDR領域内で1つ以上の残基を変異させ、T細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。このアプローチは、「脱免疫(deimmunization)」としても称され、Carr et alによる米国特許公開第20030153043号にさらに詳述されている。
【0209】
フレームワークまたはCDR領域内でなされる修飾に加えまたはその他として、本開示の抗体は、Fc領域内で修飾を含み、典型的には抗体の1つ以上の機能特性、例えば血清半減期、補体固定、Fc受容体結合性および/または抗原依存性の細胞毒性を変化させるように改変されうる。さらに、本開示の抗体は、化学的に修飾されうる(例えば1つ以上の化学的部分が抗体に付着されうる)か、または修飾によりそのグリコシル化が改変されさらに抗体の1つ以上の機能特性が改変されうる。これらの各実施形態は下記にさらに詳述されている。Fc領域内の残基の番号付与はKabatのEU指数のものである。
【0210】
Fcは、免疫グロブリン、好ましくはヒト免疫グロブリンの定常領域(該定常領域のフラグメント、アナログ、変異体、突然変異体または誘導体を含む)に由来するドメインを含む。適当な免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、および他のクラス、例えば、IgA、IgD、IgEおよびIgMを含む。免疫グロブリンの定常領域は、天然または合成ポリペプチドであり得、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはCH4ドメインを、別々にまたは組み合わせて含み得る。
【0211】
免疫グロブリンの定常領域は、Fc受容体(FcR)結合および補体結合を含む多くの重要な抗体機能に関与する。アイソタイプによって指定される特有のエフェクター機能をそれぞれ有するIgA、IgG、IgD、IgE、IgMに分類される、重鎖定常領域の5つの主なクラスがある。例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4として知られる4つのサブクラスに分離される。本明細書で言及されるFcは、重鎖定常領域の任意のクラスまたはサブクラスを含み得る。
【0212】
Ig分子は、多数のクラスの細胞受容体と相互作用する。例えば、IgG分子は、抗体のIgGクラスに特異的なFcγ受容体(FcγR)の3つのクラス、すなわちFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIと相互作用する。FcγR受容体へのIgGの結合のための重要な配列は、CH2およびCH3ドメインに位置されることが報告されている。抗体の血清半減期は、Fc受容体(FcR)に結合する抗体の能力によって影響される。同様に、IgFcの血清半減期もまた、かかる受容体に結合する能力によって影響される(Gillies S D et al., (1999) Cancer Res. 59:2159−66)。本明細書で言及されるFcは、これらの受容体の1つ以上に結合し得る。
【0213】
本明細書に記載されている抗体は、免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端の少なくとも一部を含むFcを含み得る。例えば、Fcは、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、CH2−CH3ドメイン、CH2−CH4ドメイン、CH2−CH3−CH4ドメイン、ヒンジ−CH2ドメイン、ヒンジ−CH2−CH3ドメイン、ヒンジ−CH2−CH4ドメイン、またはヒンジ−CH2−CH3−CH4ドメインを含み得る。Fcドメインは、任意の免疫グロブリンクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMまたは任意のIgG抗体サブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に属する抗体に由来し得る。Fcドメインは、天然の対立遺伝子またはスプライス変異体を含む天然Fc配列であり得る。Fcドメインは、2つまたはそれ以上の異なるIgアイソタイプからのFcドメインの一部を含むハイブリッドドメイン、例えば、IgG2/IgG4ハイブリッドFcドメインであり得る。典型的な態様において、Fcドメインはヒト免疫グロブリン分子に由来する。Fcドメインは、限定はしないがマウス、ラット、ウサギ、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダおよびサルを含む非ヒト動物からのFcドメインのヒト化または脱免疫化バージョンであり得る。
【0214】
1つの態様において、Fcドメインは、変異Fc配列、例えば、望ましい構造的特徴および/または生物学的活性を提供するように、親Fc配列(例えば、変異体を産生するために後で修飾される非修飾Fcポリペプチド)と比較して(例えばアミノ酸置換、欠失および/または挿入によって)修飾されているFc配列である。
【0215】
例えば、1つには、親Fcと比較して、(a)増加または減少した抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)、(b)増加または減少した補体依存性の細胞毒性(CDC)、(c)増加または減少したC1qに対する親和性および/または(d)増加または減少したFc受容体に対する親和性を有するFc変異体を産生させるためにFc領域において修飾を作ってもよい。かかるFc領域変異体は一般的に、Fc領域において少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾の組み合わせが特に望ましいであると考えられる。例えば、変異Fc領域は、例えば本明細書(図面を含む)で同定される特定のFc領域位置に2、3、4、5などの置換を含み得る。
【0216】
変異Fcドメインは、ジスルフィド結合形成に関与する部位が除去される配列変化を含み得る。かかる除去は、本願発明の分子を生産するために使用される宿主細胞に存在する他のシステイン含有タンパク質との反応を回避し得る。この目的のために、N−末端でのシステイン含有セグメントは切断されてもよい、またはシステイン残基は欠失させてもよい、もしくは他のアミノ酸(例えば、アラニル、セリル)で置換してもよい。システイン残基が除去されるときでさえ、一本鎖Fcドメインは、非共有的に結合している二量体Fcドメインをまだ形成することができる。他の態様において、天然Fcドメインは、選択される宿主細胞とより適合性とさせるように修飾させ得る。例えば、1つには、大腸菌における消化酵素、例えばプロリンイミノペプチダーゼにより認識され得る、典型的な天然FcのN−末端近くのPA配列を除去し得る。他の態様において、Fcドメイン内の1つ以上のグリコシル化部位を除去してもよい。一般的にグリコシル化される残基(例えば、アスパラギン)は細胞溶解反応を与え得る。このような残基は、欠失され得るか、またはグリコシルされない残基(例えば、アラニン)で置換され得る。他の態様において、相補体との相互作用に関与する部位、例えばC1q結合部位はFcドメインから除去され得る。例えば、1つにはヒトIgG1のEKK配列を欠失してよく、または置換してよい。1つの態様において、Fc受容体への結合に影響する部位、好ましくはsalvage受容体結合部位以外の部位、を除去してもよい。他の態様において、Fcドメインは、ADCC部位を除去するように修飾され得る。ADCC部位は当分野で知られている;例えば、IgG1におけるADCC部位に関してMolec. Immunol. 29 (5): 633−9 (1992)参照。変異Fcドメインの特定の例は、例えば、WO 97/34631およびWO 96/32478に記載されている。
【0217】
1つの態様において、CH1のヒンジ領域が、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変化する、例えば増加または減少するように修飾される。このアプローチは、Bodmer et alによる米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数が変化することで、例えば軽鎖および重鎖の構築が促進されるかあるいは抗体の安定性が増大または低下する。
【0218】
他の態様において、抗体のFcヒンジ領域の突然変異により抗体の生物学的半減期が減少する。より詳細には、抗体により天然Fc−ヒンジドメインSpA結合に対するブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合が低下している程度に、1つ以上のアミノ酸変異がFc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン界面領域に導入される。このアプローチは、Ward et alによる米国特許第6,165,745号にさらに詳述されている。
【0219】
他の態様において、抗体の修飾によりその生物学的半減期が増加する。様々なアプローチが可能である。例えば、ワード(Ward)に交付された米国特許第6,277,375号明細書に記載のように、1つ以上の以下の変異、すなわちT252L、T254S、T256Fが導入可能である。あるいは、Presta et alによる米国特許第5,869,046号および米国特許第6,121,022号に記載のように、生物学的半減期を増加させるため、抗体はIgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ(salvage)受容体結合エピトープを有するようにCH1またはCL領域内で改変されうる。
【0220】
1つの態様において、Fcは、以下に示されるヒトIgG1のCH2およびCH3領域を含む:VFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:171)。最後のグリシンおよびリジンは任意であると理解すべきである。1つの態様において、Fcは、(配列番号:171)と少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの態様において、Fcは、(配列番号:171)の少なくとも50、100または150個の隣接するアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。1つの態様において、Fcは、(配列番号:171)の50−100、50−150、または100−150個の隣接するアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。1つの態様において、Fcは、1−5、1−10、1−15、1−20、または1−25の置換または保存的置換を有する(配列番号:171)を含むアミノ酸配列を含む。ヒト野生型γ1定常領域配列は、最初にEllison et al.、Nucl. Acids Res. 10:4071 (1982)におけるLeroy Hood’s groupによって記載された。EU指数位置356、358および431はG1mγ1ハプロタイプを定義する。
【0221】
さらなるFc変異体は以下に記載される。開示のFc領域は、Kabat et al.(1991、NIH Publication 91−3242、National Technical Information Service、Springfield、Va.)による、EU指数による番号付与配置を含むと理解される。
【0222】
本願発明は、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基と置換し、抗体のエフェクター機能を改変することによって改変されるFc領域を有するペプチドを含む。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つ以上のアミノ酸が、抗体がエフェクターリガンドに対して改変された親和性を有しても親抗体の抗原への結合能を保持する程度に異なるアミノ酸残基と置換されうる。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、例えばFc受容体または補体のC1成分でありうる。このアプローチは、Winter et alによる米国特許第5,624,821および5,648,260号にさらに詳述されている。
【0223】
別の例では、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つ以上のアミノ酸が、抗体がC1q結合を改変しおよび/または補体依存性の細胞毒性(CDC)を低減または根絶している程度に異なるアミノ酸残基と置換されうる。このアプローチは、Idusogie et alによる米国特許第6,194,551号にさらに詳述されている。
【0224】
別の例では、アミノ酸位置231および239内の1つ以上のアミノ酸残基が改変されることにより、抗体の補体を固定する能力が改変される。このアプローチは、Bodmer et alによるPCT公開WO94/29351にさらに記載されている。
【0225】
さらに別の例では、以下の位置、すなわち238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438もしくは439での1つ以上のアミノ酸の修飾によるFc領域の修飾により、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)を媒介する能力が増大しおよび/または抗体のFcγ受容体に対する親和性が増大する。このアプローチは、PrestaによるPCT公開WO00/42072にさらに記載されている。さらに、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位がマッピングされており、かつ結合が改善された変異体についての記載がなされている(Shields、R.L. et al. (2001) J. Biol. Chem.
276:6591−6604参照)。位置256、290、298、333、334および339での特異的変異がFcγRIIIに対する結合を改善することが示された。さらに、以下の変異体の組み合わせ、すなわちT256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334AがFcγRIIIに対する結合を改善することが示された。典型的な置換は、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332D、および332Eを含む。典型的な変異体は、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324T、and 267E/268F/324Tを含む。FcyRおよび補体相互作用を増強させるための他の修飾は、限定はしないが置換298A、333A、334A、326A、2471、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、3051、および396Lを含む。これらの他の修飾は、Strohl, 2009, Current Opinion in Biotechnology 20:685−691に概説される。
【0226】
Fcガンマ受容体への結合を増加させるFc修飾は、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、279、280、283、285、298、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、312、315、324、327、329、330、335、337、3338、340、360、373、376、379、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439の任意の1つ以上でアミノ酸修飾を含み、Fc領域内の残基の番号付与はKabatのEU指数のものである(WO00/42072)。
【0227】
Fcに作ることができる他のFc修飾は、FcyRおよび/または補体タンパク質への結合を低下または除去し、それによりFc介在エフェクター機能、例えばADCC、ADCP、およびCDCを低下または除去するためのものである。典型的な修飾は、限定はしないが、位置234、235、236、237、267、269、325、および328での置換、挿入、および欠失を含み、番号付与はEU指数のものである。典型的な置換は、限定はしないが234G、235G、236R、237K、267R、269R、325L、および328Rを含み、番号付与はEU指数のものである。Fc変異体は236R/328Rを含み得る。FcyRおよび補体相互作用を減少させるための他の修飾は、置換297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233P、および234V、ならびに突然変異手段または酵素的手段によって、またはタンパク質をグリコシル化しない細菌のような生物体における生産によって位置297でのグリコシル化の除去を含む。これらの他の修飾はは、Strohl、2009、Current Opinion in Biotechnology 20:685−691に概説される。
【0228】
所望により、Fc領域は、当業者に知られているさらなる、および/または代替の位置で非天然アミノ酸残基を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821;6,277,375;6,737,056;6,194,551;7,317,091;8,101,720号;PCT特許公報WO 00/42072;WO 01/58957;WO 02/06919;WO 04/016750;WO 04/029207;WO 04/035752;WO 04/074455;WO 04/099249;WO 04/063351;WO 05/070963;WO 05/040217、WO 05/092925およびWO 06/020114)。
【0229】
抑制性受容体FcyRllbに対する親和性を増強させるFc変異体もまた使用され得る。このような変異体は、例えばB細胞および単球を含む、FcyRl lb
+細胞と関連している免疫調節活性を有するFcを提供し得る。1つの態様において、Fc変異体は、1つ以上の活性化受容体と比較して、FcyRllbに対する選択的に増強されたアフィニティーを提供する。FcyRl lbへの結合を変化させるための修飾は、EU指数による、234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328、および332からなる群から選択される位置での1つ以上の修飾を含む。FcyRl lb アフィニティーを増強させるための典型的な置換は、限定はしないが、234D、234E、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Y、および332Eを含む。典型的な置換は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328W、および328Yを含む。FcyRl lbへの結合を増強させるための他のFc変異体は、235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、267E/268D、267E/268E、および267E/328Fを含む。
【0230】
Fc領域のそのリガンドに対する親和性および結合特性は、限定はしないが、平衡方法(例えば、酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)、または放射免疫測定法(RIA))、または動力学(例えば、BIACORE分析)、および他の方法、例えば間接結合アッセイ、競合結合アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)を含む、当分野で知られている種々のインビトロアッセイ方法(生化学的または免疫学的ベースのアッセイ)により決定され得る。これらおよび他の方法においては、検査されている1以上の成分上の標識を利用することが可能であり、および/または、限定はしないが色素原標識、蛍光標識、発光標識または同位体標識を含む種々の検出方法を利用することが可能である。結合親和性および動力学の詳細な説明は、抗体−免疫原相互作用を中心に説明しているPaul、W. E.、ed.、Fundamental Immunology、4th Ed.、Lippincott−Raven、Philadelphia (1999)において見出され得る。
【0231】
Fcはまた、抗体の血清半減期を増強させ得る。例えば、これは、FcRnに対するFc領域の結合親和性を増加させることによって行われ得る。例えば、1つ以上の以下の残基を変異させることができる:米国特許第6,277,375号に記載されている252、254、256、433、435、436。
【0232】
FcRnへの結合を増加させ、および/または薬物動態学的特性を改善する他の典型的なFc変異体は、位置259、308、428、および434での置換、例えば259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Y、および434Mを含む。FcRnへの結合Fcを増加させる他の変異体は、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al.、2004、J. Biol. Chem. 279(8): 6213−6216、Hinton et al. 2006 Journal of Immunology 176:346−356)、256A、272A、286A、305A、307A、307Q、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al、Journal of Biological Chemistry、2001 、276(9):6591−6604)、252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311S(Dall Acqua et al. Journal of Immunology、2002、169:5171−5180、Dall’Acqua et al.、2006、Journal of Biological Chemistry 281 :23514−23524)を含む。FcRn結合を調節するための他の修飾は、Yeung et al.、2010、J Immunol、182:7663−7671に記載されている。
【0233】
1つの態様において、特定の生物学的特性を有するハイブリッドIgGアイソタイプが、使用され得る。例えば、lgG1/lgG3ハイブリッド変異体は、CH2および/またはCH3領域におけるlgG1位置を2つのアイソタイプが異なる位置でのlgG3からのアミノ酸で置換することによって構築され得る。したがって、1つ以上の置換、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435R、および436Fを含むハイブリッド変異体IgG抗体が構築され得る。本願発明の他の態様において、lgG1/lgG2ハイブリッド変異体は、CH2および/またはCH3領域におけるlgG2位置を2つのアイソタイプが異なる位置でのlgG1からのアミノ酸で置換することによって構築され得る。したがって、1つ以上の置換、例えば、1つ以上の以下のアミノ酸置換:233E、234L、235L、−236G(位置236でのグリシンの挿入に関して)、および327Aを含むハイブリッド変異体IgG抗体が構築され得る。
【0234】
さらに別の態様において、抗体のグリコシル化は修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗体の抗原に対するアフィニティーを増強するために改変することができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内でグリコシル化の1つ以上の部位を改変することにより達成することができる。例えば、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除をもたらし、それによってその部位のグリコシル化を排除するように行うことができる。このような非グリコシル化は抗体の抗原に対するアフィニティーを増強し得る。かかるアプローチは、Co et al.による米国特許第5,714,350および6,350,861号にさらに詳細に記載されている。あるいは、Fc領域に共有的に付着させるオリゴ糖は、例えば種々の生物体または細胞系、操作されたものまたは別で(例えば、Lec−13 CHO細胞またはラットハイブリドーマYB2/0細胞)においてIgGを発現させることによって、グリコシル化経路に関与する酵素(例えば、FUT8[a1,6−フコシルトランスフェラーゼ]および/またはβ1−4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII[GnTIII])を調節することによって、IgGが発現された後に炭水化物を修飾することによって、または酵素的阻害剤としてフコースアナログの存在下でFc融合タンパク質を発現させることによって、変化させることができる。Fcの糖型を修飾させるための他の方法は、酵母(Li et al.、2006、Nature Biotechnology 24(2):210−215)、コケ(moss)(Nechansky et al.、2007、Mol Immunjol 44(7): 1826−8)、および植物(Cox et al.、2006、Nat Biotechnol 24(12):1591 −7)の糖操作された(glycoengineered)系統を使用することを含む。
【0235】
1つの態様において、Fc融合は、シアル化(sialylation)のレベルを変化させるように糖操作される。Fc分子におけるシアル化されたFcグリカンのより高いレベルは、機能性に有害に影響を与え得る(Scallon et al.、2007、Mol Immunol. 44(7): 1524−34)、およびFcシアル化のレベルにおける違いは修飾された抗炎症活性をもたらすことができる(Kaneko et al.、2006、Science 313:670−673)。
【0236】
Fc分子のグリコシル化のレベルはまた特定の突然変異によって修飾され得る。例えば、アミノ酸位置297または299での突然変異は、位置297でのグリコシル化を取り除く。使用され得る他のFc修飾は、WO88/07054、WO88/07089、US 6,277,375、WO99/051642、WO01/058957、WO2003/074679、WO2004/029207、US 7,317,091およびWO2004/099249に記載されているものを含む。
【0237】
さらにまたはその他として、グリコシル化の改変タイプを有する抗体、例えば減量されたフコシル残基を有する低フコシル化(hypofucosylated)抗体または増強されたGlcNac二分構造を有する抗体が作製されうる。かかる改変されたグリコシル化パターンにより、抗体のADCC能力が増大することが示されている。かかる炭水化物修飾は、例えばグリコシル化機構が改変された宿主細胞内で抗体を発現することにより行われうる。グリコシル化機構が改変された細胞については当該技術分野で記載がなされており、本開示の組換え抗体を発現することにより改変されたグリコシル化を有する抗体が産生される宿主細胞として用いられうる。例えば、Hanai et al.によるEP1,176,195は、機能的に破壊されたフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を有する細胞系について記載している。かかる細胞系内で発現される抗体は低フコシル化(hypofucosylation)を示す。PrestaによるPCT公開WO03/035835には、フコースをAsn(297)に連結された炭水化物に付着させる能力が低下した(その宿主細胞内で発現される抗体の低フコシル化ももたらす)変異CHO細胞系、Lec13細胞について記載されている(Shields、R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem.
277:26733−26740も参照)。Umana et al.によるPCT公開WO99/54342には、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えばβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を、改変された細胞系内で発現される抗体が抗体のADCC活性の増大をもたらすGlcNac二分構造の増大を示すように発現するように改変された細胞系について記載されている(Umana et al. (1999) Nat. Biotech.
17:176−180も参照)。
【0238】
さらに、特定のFc変異体は、Arg218がクローニングを容易にするためにBg1II制限酵素認識配列を含むようにヒンジ領域に導入されているがγ1ヒンジ領域を含み、対になっていないスルフヒドリル基の可能性のある存在によって悪影響を防止するようにCys残基置換のためにSerを含むFc4変異体を含む。Fc4のCH2領域はγ1 CH2に基づき、Fc γ受容体I(FcγRI)結合を低下させる3つのアミノ酸置換を含む。これらは、EU指数位置234、235、および237での置換である。これらの置換は、Greg Winter’s groupによるDuncan et al.、Nature 332:563 (1988)において記載され、Fc γ RIへの結合を低下させるについてこの文献に示された。加えて、補体C1q結合部位における2つのアミノ酸置換は、補体結合を低下させるように導入された。これらは、EU指数位置330および331での置換である。補体C1q結合(または補体結合または活性化の欠乏)における位置330および331の重要性、または関連性は、Sherie Morrison’s groupによるTao et al.、J. Exp. Med. 178:661 (1993)およびCanfieldおよびMorrison、J. Exp. Med. 173:1483 (1991)において記載されている。Fc4変異体におけるCH3領域は、野生型γ1 Fcと同一のままである。
【0239】
Fc5は、ヒンジ領域におけるArg218置換が野生型Lys218残基に戻されたFc4の変異体である。Fc5はまた、Fc4と同じCys220Ser置換ならびに野生型γ1Fcと同一であるCH2領域を有する同じCH2置換を含む。Fc6変異体は、Fc5と同じヒンジ領域置換を含み、Fc4と同じCH2置換を含む。Fc6 CH3領域は、カルボキシル末端リジン残基を含まない。この特定のLys残基は、付与されたEU指数番号を有さない。このリジンは、成熟免疫グロブリンから種々の程度に除去され、したがって循環する抗体上に大部分は見られない。組換えFc上のこの残基の非存在はより均質な産物をもたらし得る。Fc7変異体は、ヒンジ領域において野生型γ1 Fcと同一である。そのCH2領域はγ1 CH2に基づくが、残基Asn−297でのN−連結炭水化物付着部位が、脱グリコシル化Fcを生産するように、Glnに変化される(例えば、Tao and Morrison (1989) J. Immunol. 143:2595−2601参照)。CH3領域は、野生型γ1 Fcと同一である。Fc8変異体は、Fc4と同一であるヒンジ領域を有し、CH2領域およびCH3領域の両方が対応する野生型γ1 Fc領域と同一である。Fc9変異体は、ちょうどカルボキシ末端のAsp残基で開始し、軽鎖へのジスルフィド結合に関与するCys残基までの短縮γ1ヒンジを含む。残っているヒンジ配列は野生型γ1ヒンジと同一である。CH2領域配列およびCH3領域配列の両方は、野生型γ1 Fcに対して対応する領域と同一である。Fc10変異体は、Fc5と同じヒンジ領域置換を含む。CH2領域配列およびCH3領域配列の両方は、野生型γ1 Fcに対して対応する領域と同一である。Fc11変異体は、Fc5と同じヒンジ領域置換を含む。そのCH2ドメインは、γ1 CH2に基づくが、Fcγ受容体結合を減少させる置換(EU指数位置234、235、および237での置換)を含む。Fc11は、C1q結合および補体結合について野生型である。Fc11のCH3ドメインは、野生型γ1 CH3と同一である。Fc12変異体は、Cys220Ser、Cys226Ser、およびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Fc5と同一であるCH2ドメインを有し、野生型γ1 CH3ドメインを有する。Fc13変異体は、Cys220Ser、Cys226Ser、およびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Fc5と同一であるCH2ドメインを有し、Tyr407Gly置換を有する野生型γ1 CH3を有する。Fc14変異体は、Cys220Ser、Cys226Ser、およびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、野生型γ1 CH2を有し、Tyr407Gly置換を有する野生型γ1 CH3を有する。Fc15変異体は、IgG4「Fab交換」を減少させるようにSer228Pro置換を有するγ4ヒンジを含み、野生型γ4 CH2およびCH3ドメインを有する。Fc16変異体は、Cys220Ser置換を含むγ1ヒンジを含み、γ1 CH2と同一であるCH2ドメインを有し、野生型γ4 CH3と同一であるCH3ドメインを有する。Fc17変異体は、Cys220Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Phe243Ala置換を有するγ1 CH2ドメインを有し、野生型γ1 CH3と同一であるCH3ドメインを有する。Fc18変異体は、Cys220Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、野生型γ1 CH2と同一であるγ1 CH2ドメインを有し、His435Ala置換を有するγ1 CH3を含む。Fc19変異体は、Fc5と同一であるヒンジを含み、残基Asn−297でのN−連結炭水化物付着部位が脱グリコシル化Fcを生産するようにGlnに変化されていることを除きFc5と同一であるCH2ドメインを有し、野生型γ1 CH3と同一であるCH3ドメインを有する。Fc21変異体は、Cys220Ser、Cys226Ser、およびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Fc5と同一であるCH2ドメインを有し、Phe405AlaおよびTyr407Gly置換を有するγ1 CH3を有する。Fc22変異体は、Cys220Ser、Cys226Ser、およびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Fc1と同一であるCH2ドメインを有し、Phe405AlaおよびTyr407Gly置換を有するγ1 CH3を有する。Fc23変異体は、Cys220Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Leu234Ala、Leu235Glu、Pro331Ser置換を有するγ1 CH2ドメインを有し、野生型γ1 Fcと同一であるCH3ドメインを有する。
【0240】
本願発明で検討される本明細書中の抗体の別の修飾はペグ化(pegylation)である。抗体をペグ化することで、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期が増加されうる。抗体をペグ化するため、抗体またはその断片は、典型的にはポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1つ以上のPEG基が抗体または抗体断片に付着した状態になるという条件下で反応する。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(または類似反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して行われる。本明細書において使用されるとき用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質、例えばモノ(C1−C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを誘導体化するのに用いられているPEGの形態のいずれかを包含することを意図されている。1つの態様において、ペグ化されるべき抗体はアグリコシル化(aglycosylated)抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当該技術分野で既知であり、本願発明の抗体に適用可能である。例えば、Nishimura et al.によるEP 0 154 316およびIshikawa et al.によるEP 0 401 384参照。
【0241】
使用方法
一部の例では、本開示は、本明細書で開示される組成物を対象に投与することを包含する処置方法を提供する。
【0242】
本明細書においては、対象における癌または癌の症状の処置および/または予防方法も提供され、方法は、MHCクラスI型ポリペプチド関連性配列A(MICA)に免疫特異的に結合する、治療に有効な量のペプチドを、前記対象に投与することを包含し、前記ペプチドは、5以下の保存的アミノ酸置換を有する、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11のV
Hの相補性決定領域(CDR)3と、5以下の保存的アミノ酸置換を有する、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9または11のV
LのCDR3と、を含む。一部の実施例では、癌は、MICAの過剰発現を伴う癌である。一部の実施形態では、癌は、黒色腫、肺癌、乳癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、並びに結腸癌、リンパ腫または白血病である。一部の実施形態では、癌は黒色腫である。一部の実施形態では、癌は、形質細胞の悪性腫瘍であり、例えば、多発性骨髄腫(MM)または形質細胞の前癌性状態である。一部の実施例では、対象は、それまでに癌を有するものとして診断されているか、または癌になりやすいものとして診断されている。
【0243】
一部の例では、本開示は、対象における癌または癌の症状の処置および/または予防方法を提供し、方法は、MHCクラスI型ポリペプチド関連性配列A(MICA)に特異的に結合する単離抗体を含む治療に有効な量の組成物を、前記対象に投与することを包含し、前記抗体は、配列番号2、77、96、113、131または150のVH配列として示される、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号11、79、98、113、133または152の軽鎖可変領域(VL)配列と、を含む。
【0244】
当業者により公知の癌の症状としては、限定するものではないが、異常な分子特徴、非対称性、境界、色、および/または直径など分子外見の変化、新規色素沈着を生じた皮膚面積、異常なほくろ、爪下暗色化領域、乳房腫瘤、乳頭変化、乳房嚢胞、乳房痛、死亡、体重減少、脱力感、過剰な倦怠感、食欲低下、食欲不振、慢性咳嗽、息切れの悪化、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、肝転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、鼓腸、腹腔内液体貯留、膣出血、便秘、腹部膨隆、結腸の穿孔、急性腹膜炎(感染、発熱、疼痛)、疼痛、吐血、大量の発汗、発熱、高血圧、貧血症、下痢、黄疸、目眩、悪寒、筋痙攣、大腸癌転移、肺転移、膀胱転移、肝転移、骨転移、腎転移、および膵転移、嚥下障害、および同様の症状が挙げられる。
【0245】
本明細書で開示される方法は、広範な種、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、シカ、エルク、ヤギ、イヌ、ネコ、イタチ、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラット、およびマウスに適用することができる。
【0246】
本明細書で使用するとき、用語「処置」または「処置する」は、対象が罹患している疾患または状態の少なくとも1つの症状または生物学的徴候の発現、進行または再発を軽減、阻害、寛解、および/または軽減することを指す。一部の例では、処置により、患者が罹患している疾患または状態が持続的に消失し得る。
【0247】
用語「有効用量」または「有効量」は、所望の効果をなし遂げる十分な量または所望の効果を少なくとも部分的になし遂げる量として定義される。用語「治療有効用量」は、疾患にすでに罹患している患者における疾患およびその合併症を治癒する、または少なくとも部分的に阻止するために十分な量として定義される。この使用に対して有効な量は、処置される障害の重症度および患者自身の免疫系の全身状態に依存する。
【0248】
薬物または治療剤、例えば本願発明のFc融合タンパク質の「治療有効な量」または「治療有効用量」は、単独または別の治療剤と組み合わせて使用して、病徴の重症度の低下、無症状期間の頻度および持続時間の増加、または病気の苦痛に起因する欠陥または障害の阻止により証明される疾患退行を促進する薬物の任意の量である。薬物の治療有効な量または用量は、単独または別の治療剤と組み合わせて疾患を発症する危険性がある、または疾患の再発に苦しむ対象に投与されると、疾患の発症または再発を阻害する薬物の任意の量である「予防的有効量」または「予防有効用量」を含む。疾患退行を促進する、または疾患の発症または再発を阻害する治療剤の能力は、当業者に既知の種々の方法を使用して、例えば臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性の動物モデルシステム予測において、またはインビトロアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることにおいて評価することができる。
【0249】
一例として、抗癌剤は対象における癌退行を促進する。好ましい態様において、治療有効な量の薬物は、癌を除去する点で癌退行を促進する。「癌退行を促進」は、有効な量の薬物を単独または抗腫瘍剤と組み合わせての投与が、腫瘍増殖またはサイズの減少、腫瘍の壊死、少なくとも1つの病徴の重症度の減少、無症状期間の頻度および持続時間の増加、病気の苦痛に起因する欠陥または障害の阻止、または患者における病徴の改善を引き起こすことを意味する。加えて、処置に関して用語「有効」および「有効性」は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、患者における癌退行を促進する薬物の能力を示す。生理学的安全性は、毒性、または薬物の投与によって引き起こされる細胞、臓器および/または生物体レベルでの他の有害生理学的効果(副作用)のレベルを示す。
【0250】
腫瘍の処置のための一例として、薬物の治療有効な量または用量は好ましくは、未処置対象と比較して、細胞増殖または腫瘍増殖を少なくとも約20%、さらに好ましくは少なくとも約40%、よりさらに好ましくは少なくとも約60%、さらに好ましくは少なくとも約80%を阻害する。最も好ましい態様において、薬物の治療有効な量または用量は、細胞増殖または腫瘍増殖を完全に阻害する、すなわち、好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を100%阻害する。腫瘍増殖を阻害する化合物の能力は、以下に記載されているアッセイを使用して評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は細胞増殖を阻害する化合物の能力を試験することにより評価することができる、かかる阻害は当業者に既知のアッセイによりインビトロで測定することができる。本願発明の他の好ましい態様において、腫瘍退縮は、少なくとも約20日間、さらに好ましくは少なくとも約40日間、また よりさらに好ましくは少なくとも約60日間観察または持続され得る。
【0251】
一般的に、方法は、状態または疾患に関連するリスクを有する、あるいは状態または疾患を有する対象を選別することを包含する。一部の例では、対象の状態または疾患は、本明細書で開示される医薬組成物により処置することができる。例えば、一部の例では、方法には、癌を有する対象を選別することが包含され、例えば、対象の癌は、MICAおよび/またはアンジオポエチン−2のいずれかまたは両方を標的とすることにより処置することができる。
【0252】
一部の例では、処置方法には、必要に応じて、患者が罹患している疾患または病状を予防または処置するための、単回投与、複数回投与、および反復投与が包含される。場合によっては、処置方法には、処置前、処置中、および/または処置後に対象において疾患の程度を評価することを包含させることができる。一部の例では、処置は、対象において検出される疾患の度合いが低減するまで継続することができる。
【0253】
本明細書で使用するとき、用語「投与する」、「投与すること」、または「投与」は、形態にかかわらず本発明のペプチドを、埋め込むこと、吸収させること、摂取させること、注入すること、または吸入させることを指す。一部の例では、本明細書で開示される1つ以上のペプチドは、対象に局所的に(例えば、経鼻的に)、および/または経口的に投与することができる。例えば、本明細書に記載の方法には、有効な量の化合物または化合物の組成物を投与して、所望のまたは記載の効果を得ることが包含される。任意の特定の患者に対する具体的な投与法および処置レジメンは、使用する具体的な化合物の活性、年齢、体重、通常の健康状態、性別、体重、投与時間、排泄速度、合剤、疾患、状態、または症状の重症度および経過、疾患、状態、または症状に対する患者の性質、並びに処置を行う医師の判断などといった多様な因子に応じ変化し得る。
【0254】
例えば、投与レジメンを調節することで最適な所望の応答(例えば治療応答)がもたらされる。単回ボーラスが投与され得るか、数回の分割用量が時間とともに投与され得るか、または同用量が治療状況の要件で示されるように比例的に減少または増加され得る。投与の容易さおよび用量の均一性を意図し、非経口組成物を投与単位形態で調製することが特に有利である。本明細書において使用されるとき「投与単位形態」は、処置されるべき対象に対する単一の用量として適合する物理的に別々の単位であり、各単位は必要とされる医薬担体と一緒に所望の治療効果をもたらすように計算された既定量の活性化合物を有する。本願発明の投与単位形態における仕様は、(a)活性化合物固有の特性および達成されるべき特定の治療効果と、(b)個体における感受性を治療するためにかかる活性化合物を化合する当該技術分野に内在する制限により決定づけられ、かつそれらに直接依存している。
【0255】
抗MICA抗体または抗体断片の投与においては、用量は、宿主体重の約0.0001〜100mg/kg、およびより一般的には0.01〜5mg/kgの範囲である。例えば用量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重もしくは10mg/kg体重または1−10mg/kgの範囲内であってもよい。典型的な処置レジメンでは、毎週1回、2週ごとに1回、3週ごとに1回、4週ごとに1回、1か月に1回、3か月ごとに1回または3〜6か月ごとに1回の投与が必要とされる。本願発明の抗MICA抗体に対する好ましい投与レジメンは、静脈内投与を介した1mg/kg体重または3mg/kg体重を含み、ここで抗体は(i)6回投与を4週ごと、次いで3か月ごと;(ii)3週ごと;(iii)1回の3mg/kg体重、次いで3週ごとに1mg/kg体重といった投与スケジュールのうちの1つを用いて投与される。
【0256】
いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時投与され、いずれの場合でも投与される各抗体の用量は指定範囲内に含まれる。多くの場合、抗体が通常投与される。単回投与間の間隔は、例えば、週単位、月単位、3か月単位または年単位であってもよい。患者における抗体の標的抗原に対する血中濃度の測定により示されるとき、間隔は不規則であってもよい。用量は、ある方法では約1〜1000μg/ml、またある方法では約25〜300μg/mlの血漿抗体濃度をなし遂げるように調節される。
【0257】
あるいは、医薬組成物は徐放製剤として投与可能であり、いずれの場合でも低頻度の投与が必要とされる。用量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変化する。一般に、ヒト抗体は最長の半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体がそれに続く。投与の用量および頻度は、処置が予防的であるかまたは治療的であるかに依存して変化しうる。予防的適用においては、比較的低用量が長期にわたり比較的低頻度の間隔で投与される。一部の患者が、余生にわたって治療を受け続ける。治療的適用においては、疾患の進行が低下または終結されるまで、好ましくは患者が疾患の徴候の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要とされる場合がある。その後、患者は予防レジメンで投与されうる。
【0258】
本願発明の医薬組成物中での活性成分の実際の用量レベルは、患者に毒性をもたらすことなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を得るのに有効な活性成分の量を得るように変化しうる。選択される用量レベルは、用いられる本願発明の特定の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、用いられる特定の化合物の投与経路、投与時間、排出速度、用いられる特定の組成物と併用される治療薬、他の薬物、化合物および/または材料の処置時間、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般健康および過去の病歴、ならびに医術において周知の要素のようなものを含む種々の薬物動態学的因子に依存する。
【0259】
投与後に、対象を、疾患の程度を検出、診断、または判定するために評価することができる。一部の例では、処置を、対象において検出される疾患の程度が変化(例えば、低減)するまで継続することができる。
【0260】
患者の状態の改善に応じ(例えば、対象における疾患の程度の変化(例えば、低減))、必要に応じて、本発明の化合物、組成物または組み合わせの維持量を投与することができる。続いて、症状の変化に応じ、改善された状態が維持される程度にまで、投与量または投与頻度あるいはこの両方を減少させることもできる。しかしながら、患者は、何らかの疾患の症状の再発に応じて、長期にわたって断続的に処置する必要がある場合もある。
【0261】
一部の例では、本開示は、ヒト対象由来の、免疫細胞、例えば、B細胞および/または記憶B細胞を検出する方法を提供する。例えば、このような方法を使用して、ヒト対象において、免疫細胞、例えば、B細胞および/または記憶B細胞の程度を、例えばイベントを追跡して、モニターすることができる。イベント例としては、限定するものではないが、疾患、感染症の検出;本明細書で開示される治療用組成物の投与、治療薬または処置レジメンの投与、ワクチンの投与、免疫応答の誘導が挙げられる。このような方法は、臨床的におよび/または研究用に使用することができる。
【実施例】
【0262】
本発明は、以降の実施例でさらに説明される。これらの実施例は、請求項に記載される本発明の範囲を制限するものではない。
【0263】
本明細書に記載される方法は、所定の抗原に対し特異性を有する希少な記憶B細胞を、限られた量の末梢血から、高感度に、特異的におよび高信頼度で検出可能なものである。本方法は、抗原の排除後数カ月から数年間にわたり記憶B細胞の可視化および単離を可能にする。
【0264】
本明細書で開示される方法の原理の証明は、Franz et al.(Blood,118(2):348〜357(2011))に詳細に報告される通り、破傷風毒素のC末断片(TTCF)の四量体を使用してなされている。この参考文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0265】
ほとんどの個体は破傷風トキソイドによりワクチン接種を受け、ワクチンによりIgG抗体の持続性力価を誘導されることから、TTCF(すなわち、TTCFの、52kDa、非毒性のC末断片)をモデル抗原として選択した(Amanna et al.,N.Engl.J.Med.,357:1903〜1915,2007)。したがって、本明細書で開示される方法において、TTCFを使用し、対象の大規模なプールを検証することができた。しかしながら、当業者であれば、一般的な手法を用い、任意の疾患に関連する抗原を包含するよう、本方法を改変することができることは理解するであろう。以降に例示される通り、このような改変は、癌関連抗原であるMICAおよびアンジオポエチン−2を抗原とする抗体を獲得することにより示される。
【0266】
実施例1:抗原の発現および四量体の形成
以下にさらに詳細に記載される通り、TTCFは大腸菌(Eschericia coli)において発現させ、BirA酵素による部位特異的モノビオチン化のためBirA部位をN末端に取り付けた。タンパク質とビオチン化部位の間に可動性リンカーを配置し、抗体の結合に関係する立体障害を回避した。TTCFは、アニオン交換クロマトグラフィーにより精製し、BirAによりビオチン化し、ゲル濾過クロマトグラフィーにより、未結合のビオチンおよびBirAから分離した。蛍光標識したストレプトアビジンを、モル比1:4でビオチン化TTCF抗原とインキュベートし、TTCF四量体を生成した。これらの四量体を、次に一連のmAbとともに使用して、破傷風トキソイドに特異的な記憶B細胞を同定した。
【0267】
TTCFをpET−15b(Novagen)にクローニングした。BL21(DE3)大腸菌(Eschericia coli)において、1mMのイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)により28℃で4時間タンパク質発現を誘導した。細胞を洗浄し、溶解し、得られる上清を回収した。HIS−選択親和性カラム(Sigma)を使用して、TTCFを精製した。タンパク質分解によりHisタグを除去した。同様の方法を用い、マウスCD80膜近位ドメインを産生した。タンパク質をモノビオチン化した。特定の実験に際し、Alexa−488染料分子(Molecular Probes)を、ビオチン化TTCFまたはCD80の一級アミンに連結した。
【0268】
ビオチン化抗原を、モル比4:1で特級PE標識ストレプトアビジン(Molecular Probes)と少なくとも20分間氷上でインキュベートし、抗原四量体を調製した。使用に先立ち、四量体抗原を遠心分離し、凝集体を除去した。一部の実施例では、四量体は、4:1比のAlexa−fluor−488標識抗原と非蛍光ストレプトアビジンとにより形成させた。
【0269】
実施例2:特定方法
Franz et al.,Blood,118(2):348〜357(2011)に記載の通りに方法を実施した。細胞は、BD FACS Aria II細胞選別機で分取した。細胞は単一細胞として分取した。サンプルからは、最初に、一連の除外マーカー(CD3、CD14、CD16、7AAD)が陰性のCD19
+細胞をゲーティングし、次に、CD27を高発現しかつCD19を即時的に(immediate level)発現していると同定された形質芽球をゲーティングし、最後に四量体
+ CD19
+細胞をゲーティングした。
【0270】
記憶B細胞は低頻度であることから、注意深く、可能な限りバックグラウンドを減少させる必要があった。B細胞は、最初はネガティブ選別により濃縮し(CD2、CD3、CD14、CD16、CD56およびグリコホリンAに対する抗体カクテル)、四量体に非特異的に結合し得る大部分の細胞を除去した。濃縮細胞を均一に分注し、TTCFまたは対照四量体により染色した後、CD19、CD27およびIgMにより標識して、クラススイッチした記憶B細胞を特異的に選択した。ゲーティング戦略では、CD19を発現し、一連の除外マーカー(CD3、CD14、CD16、7AAD)による標識を欠き、メモリーマーカーCD27を発現し、かつIgMの発現を欠くことをクラススイッチのエビデンスとしてみなした。対象とする抗原に特異的な記憶B細胞を可視化するため、四量体の染色をCD27染色に対しプロットした。mRNA抽出緩衝液3μLを入れたPCR用ストリップチューブに、四量体陽性のB細胞を直接分取した。
【0271】
分取の間チューブは冷温に維持し、分取した細胞は凍結し、−80℃で保管した。CD19+ CD27+ IgM−B細胞を陽性対照として使用した。
【0272】
既存のネステッドPCRプロトコルを使用して、重鎖および軽鎖可変領域を増幅した(Wang et al.,J.Immunol.Methods.,244:217〜225,2000)。混入を最小限に抑えるのに適切な条件下でmRNAの増幅を行った。使用したプライマーは次のものを含む:
TAATACGACTCACTATAGGTTCGGGGAAGTAGTCCTTGACCAGG(配列番号:19);
TAATACGACTCACTATAGGGATAGAAGTTATTCAGCAGGCACAC(配列番号:20);
TAATACGACTCACTATAGGCGTCAGGCTCAGRTAGCTGCTGGCCGC(配列番号:21)。
【0273】
Franz et al.,Blood,118(2):348〜357(2011)に記載の通りにネステッドRT−PCRを実施した。
【0274】
混入をモニターし、予防するため、陰性対照を包含させた。TTCF四量体により標識した計35の単一細胞から、32の重鎖および30の軽鎖断片を増幅させ、PCR産物をゲルから精製し直接配列決定したところ、最終的なPCR効率は89%に相当した。配列解析により、TTCF四量体
+細胞では、特定の遺伝子配列が優先されることはなく、異なる多様なV
HD−J
H遺伝子配列が選択されていたことが明らかになった。観察された配列により、クローンにおいて、体細胞突然変異により細胞が多様化していることが支持された。
【0275】
抗体産生および精製には、重鎖および軽鎖可変ドメインのDNAを、ウシプロラクチンシグナルペプチド配列並びに完全長のIgG1またはκ軽鎖定常ドメインを含有している別個のpcDNA3.3発現ベクターにクローニングすることを包含させた。抗体は、37℃、8% CO
2下で、100mL培養フラスコを用い、8mMのGlutamax(Gibco)を添加したCHO−S培地(Invitrogen)中で発現させた。遺伝子導入の一日前に、細胞は6×10
5個/mLとして分取した。遺伝子導入の当日に、必要があれば細胞は1×10
6個/mLに調整した。MAX transfection reagent(Invitrogen)を使用して、25μgの重鎖および軽鎖プラスミドDNAを同時導入し、遺伝子導入した細胞を6〜8日間培養した。プロテインGセファロースビーズを用いてタンパク質を得て、100mMグリシン(pH2.5)を使用して抗体を溶出し、Spin−X遠心チューブを使用してビーズから分離した。マイクロバイオスピンカラム(BioRad)を使用して、精製抗体をリン酸緩衝食塩水(PBS)に移した。タンパク質濃度は吸光度(280nm)により評価した。
【0276】
飽和結合アッセイに関し、非ビオチン化、MonoQ精製TTCFをユーロピウムにより標識し、未結合のユーロピウムを除去した。96ウェル平底プレートの各ウェルを、20ngの抗体を含む100mMのNaHCO
3緩衝液(pH9.6)により一晩コーティングした。ウシ血清アルブミン(BSA)およびウシγグロブリンを添加したアッセイ緩衝液を用い、ブロッキングを行った。アッセイ緩衝液によりTTCF−ユーロピウムを希釈し(100nM〜4pM)、3ウェル1組で各ウェルに200μLずつ分注した。プレートを37℃で2時間インキュベートし、200μLの洗浄緩衝液(50mMのTris(pH8)、150mMのNaCl、20μMのEDTA、0.05% Tween)で3回洗浄した。各ウェルに100μLの増感液を加え、Victor
3プレートリーダーを615nmで使用して、蛍光をカウントした。
【0277】
ソフトウェアIMGT/V−QuestおよびJIONSOLVERを使用し、重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を解析した。FlowJo解析ソフトウェアを使用し、フローサイトメトリーデータを評価した。ソフトウェアGraphPad Prism 5を使用し、独立t検定により統計解析を実施した。抗体のK
D値を測定するため、ソフトウェアGraphPad Prism 5を使用して、非線形回帰分析により飽和結合データを当てはめた。
【0278】
実施例3:多量体化により記憶B細胞の識別が促進される
TTCF四量体および単量体を比較した。Alexa−488によりTTCFを蛍光標識し、次に単量体形態で使用するか、あるいは未標識のストレプトアビジンを使用して四量体に変換した(上記を参照されたい)。次に、濃縮B細胞を、同濃度のTTCF−Alexa−488四量体または単量体とインキュベートした。対照タンパク質(CD80膜近位ドメイン)を同様の方法で標識し、同様に四量体として使用した。
【0279】
図6Aおよび6Bに示す通り、3つのドナー由来の細胞を使用したところ、TTCF単量体では一部の記憶B細胞が標識されていたのに対し、四量体では識別頻度は大幅に増大した(1.6〜7.3倍)。3つのTTCF特異的記憶B細胞のドナーのうちの1つは四量体により検出されたが、単量体では検出されなかった。
【0280】
これらの結果から、末梢血に存在する記憶B細胞は非常にわずかであるにもかかわらず、抗原四量体により、BCRの抗原特異性に基づき、記憶B細胞を高感度に検出することが可能になることが示される。TTCF特異的にクラススイッチした記憶B細胞は、適切なTTCF抗原四量体により高感度に標識されたのに対し、四量体型の対照により標識されたバックグラウンドは一貫して低かった。
【0281】
実施例4:方法/抗体の確認
オーバーラップPCRにより、IgG重鎖およびκ鎖の定常部を、単離された可変配列と連結して、完全ヒト型抗体を生成した。CHO−S細胞を使用し、無血清哺乳類発現系により、6〜8日間にわたって抗体を一過性に発現させた。プロテインGおよびゲル濾過クロマトグラフィーを使用して、抗体を精製した。
【0282】
図7A−7Bに示す通り、TTCF特異的形質芽球から単離された抗体は、TTCF抗原に対し、K
D=2.2nM(TTCF Ab 1)および323pM(TTCF Ab 2)の高結合親和性を示した(
図7B)。記憶B細胞から単離した抗体は、他の抗体に対しても、K
D=382pM、228pM、および1.4nMの高結合親和性を示した(TTCF Abs 3、4および5)(
図7B)。
【0283】
これらのデータにより、本明細書で開示される方法の特異性が支持される。さらには、本明細書に記載の方法の特異性は、3の異なるドナーから5種の抗TTCF抗体を構築することによっても実証され、これらのすべての抗体は高親和性でTTCFと結合した。
【0284】
本明細書に示すデータは、宿主由来の抗原が排除されてから長時間が経過した後でも、抗原四量体により、記憶B細胞を高感度に検出することができることも実証する。
【0285】
実施例5:抗MICA抗体の取得
本明細書に記載の方法を使用して、MICAに対し免疫特異的に結合する抗体を作製した。
【0286】
簡潔に述べると、抗原のモノビオチン化を可能にするC末端BirAタグ(GLNDIFEAQKIEWHE(配列番号148))とともに、MICA抗原(UniGene Hs.130838)を発現させた。R−フィコエリトリン(PE)で標識したストレプトアビジン(SA)により、抗原を四量体化した(MICA:SAのモル比4:1)。GM−CSF発現ベクター(GVAX)(PNAS 103:9190、2006)により遺伝子導入した自己腫瘍細胞をワクチン接種した進行期黒色腫患者から末梢血単核細胞を得て、次に抗CTLA−4モノクローナル抗体イピリムマブ(YERVOY(商標)(Bristol Myers Squibから入手可能))により処理した。末梢血単核細胞を迅速に解凍し、洗浄し、2%のウシ胎児血清を添加したリン酸緩衝食塩水(pH7.2)により5×10
6にて再懸濁し、約0.1ug/mLの四量体により氷上で30分間染色した。クラススイッチした記憶B細胞(CD19
+、CD27
+、かつIgM
−)を識別するため、抗体を加えた。T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、および死細胞を標識する一連の排除抗体をインキュベートして、四量体によるバックグラウンドの染色を軽減させた(CD3、CD14、CD16、7−AAD)。BD FACS Aria IIを使用し、MICA四量体と結合する単一のB細胞をPCR用8連ストリップチューブに分取した。以下に記載の遺伝子特異的なプライマーを使用して、Epicentre Biotechnologiesから市販のキット(カタログ番号MBCL90310)により、B細胞受容体(BCR)のmRNAを増幅した。
mRNAの増幅
IgG−T7:AATACGACTCACTATAGGTTCGGGGAAGTAGTCCTTGACCAGG(配列番号:22)
κ−T7:TAATACGACTCACTATAGGGATAGAAGTTATTCAGCAGGCACAC(配列番号:23)
λ−T7:TAATACGACTCACTATAGGCGTCAGGCTCAGRTAGCTGCTGGCCGC(配列番号:24)
【0287】
第1回目のPCR
VHL−1:TCACCATGGACTG(C/G)ACCTGGA(配列番号:25)
VHL−2:CCATGGACACACTTTG(C/T)TCCAC(配列番号:26)
VHL−3:TCACCATGGAGTTTGGGCTGAGC(配列番号:27)
VHL−4:AGAACATGAAACA(C/T)CTGTGGTTCTT(配列番号:28)
VHL−5:ATGGGGTCAACCGCCATCCT(配列番号:29)
VHL−6:ACAATGTCTGTCTCCTTCCTCAT(配列番号:30)
VkL−1:GCTCAGCTCCTGGGGCTCCTG(配列番号:31)
VkL−2:CTGGGGCTGCTAATGCTCTGG(配列番号:32)
VkL−3:TTCCTCCTGCTACTCTGGCTC(配列番号:33)
VkL−4:CAGACCCAGGTCTTCATTTCT(配列番号:34)
VlL−1:CCTCTCCTCCTCACCCTCCT(配列番号:35)
VlL−2:CTCCTCACTCAGGGCACA(配列番号:36)
VlL−3:ATGGCCTGGA(T/C)C(C/G)CTCTCC(配列番号:37)
CgII:GCCAGGGGGAAGAC(C/G)GATG(配列番号:38)
CkII:TTTCAACTGCTCATCAGATGGCGG(配列番号:39)
ClII:AGCTCCTCAGAGGAGGG(C/T)GG(配列番号:40)
【0288】
第2回目のPCR
VH−1:CAGGT(G/C)CAGCTGGT(G/A)CAGTC(配列番号:41)
VH−2:CAG(A/G)TCACCTTGAAGGAGTC(配列番号:42)
VH−3:(G/C)AGGTGCAGCTGGTGGAGTC(配列番号:43)
VH−4:CAGGTGCAGCTGCAGGAGTC(配列番号:44)
VH−5:GA(G/A)GTGCAGCTGGTGCAGTC(配列番号:45)
VH−6:CAGGTACAGCTGCAGCAGTC(配列番号:46)
Vk−1:CG(A/C)CATCC(A/G)G(A/T)TGACCCAGT(配列番号:47)
Vk−2:CGAT(A/G)TTGTGATGAC(C/T)CAG(配列番号:48)
Vk−3:CGAAAT(T/A)GTG(T/A)TGAC(G/A)CAGTCT(配列番号:49)
Vk−4:CGACATCGTGATGACCCAGT(配列番号:50)
Vl−1:CCAGTCTGTGCTGACTCAGC(配列番号:51)
Vl−2:CCAGTCTGCCCTGACTCAGC(配列番号:52)
Vl−3:CTCCTATGAGCTGAC(T/A)CAGC(配列番号:53)
CgIII:GAC(C/G)GATGGGCCCTTGGTGGA(配列番号:54)
CkIII:AAGATGAAGACAGATGGTGC(配列番号:55)
ClIII:GGGAACAGAGTGACCG(配列番号:56)
【0289】
第1のPCRおよび第2のPCRに使用したプライマーおよびPCRのサイクル条件は、Wang and Stollar et al.(journal of immunological methods、2000)に記載の方法をもとに最適化した。
【0290】
上記のプライマーセットにより十分に網羅されていない可能性のあった重鎖可変領域配列を網羅するよう、代替となる重鎖可変領域の順方向プライマーのセットを開発した。以降の代替的なプライマーを作成した:
第1回目のPCR
VHL1−58:TCACTATGGACTGGATTTGGA(配列番号:57)
VHL2−5:CCATGGACA(C/T)ACTTTG(C/T)TCCAC(配列番号:58)
VHL3−7:GTAGGAGACATGCAAATAGGGCC(配列番号:59)
VHL3−11:AACAAAGCTATGACATATAGATC(配列番号:60)
VHL3−13.1:ATGGAGTTGGGGCTGAGCTGGGTT(配列番号:61)
VHL3−13.2:AGTTGTTAAATGTTTATCGCAGA(配列番号:62)
VHL3−23:AGGTAATTCATGGAGAAATAGAA(配列番号:63)
VHL4−39:AGAACATGAAGCA(C/T)CTGTGGTTCTT(配列番号:64)
VHL4−61:ATGGACTGGACCTGGAGCATC(配列番号:65)
VHL−9:CCTCTGCTGATGAAAACCAGCCC(配列番号:66)
【0291】
第2回目のPCR
VH1−3/18:CAGGT(C/T)CAGCT(T/G)GTGCAGTC(配列番号:67)
VH1−45/58:CA(A/G)ATGCAGCTGGTGCAGTC(配列番号:68)
VH2−5:CAG(A/G)TCACCTTGA(A/G)GGAGTCTGGT(配列番号:69)
VH3−9/23/43:GA(A/G)GTGCAGCTG(T/G)TGGAGTC(配列番号:70)
VH3−16:GAGGTACAACTGGTGGAGTC(配列番号:71)
VH3−47:GAGGATCAGCTGGTGGAGTC(配列番号:72)
V4−34:CAGGTGCAGCTACAGCAGTG(配列番号:73)
V4−30−2/39:CAGCTGCAGCTGCAGGAGTC(配列番号:74)
VH7−4−1:CAGGTGCAGCTGGTGCAATC(配列番号:75)
【0292】
簡潔に述べると、初回のPCRには、mRNA増幅により生成したcDNA 2uLをテンプレートとして使用し、次のサイクル条件を用いた:前増幅3サイクル(94℃/45秒、45℃/45秒、72℃/105秒);増幅30サイクル(94℃/45秒、50℃/45秒、72℃/105秒);最終的な伸長、72℃/10分。
【0293】
初回のPCR産物3uLを、第2回目のネステッドPCRのテンプレートとして使用した。3サイクルの前増幅を省略したことを除き、初回のPCRと同様のサイクル条件を使用した。いずれのPCR工程も、クローン化したPfuポリメラーゼAD(Agilent Technologies)を使用して実施した。PCR産物を1%アガロースゲルで分離し、Zymoclean DNAゲル回収キット(Zymo Research)を使用して、大きさにして300〜400ヌクレオチドを単離した。第2回目のネステッドPCR用の順方向および逆方向プライマーを使用して、配列決定を実施した。2段階ネステッドPCRにより、重鎖および軽鎖のBCR可変ドメインを増幅する(上記を参照のこと)。GM−CSF発現ベクター(GVAX)により遺伝子導入した自己腫瘍細胞をワクチン接種した進行期黒色腫患者から、末梢血単核細胞を得た(PNAS 103:9190,2006)。完全長のIgG1抗体として、CHO−S発現系において抗体を発現させた。
【0294】
2つの独立したビーズ系アッセイにより、MICAに結合する抗MICA抗体を検証した。初回アッセイには、各種MICA対立遺伝子産物(One Lambda、カタログ番号LSMICA001)に対し、抗MICA抗体の検出用に設計された市販の溶液系ビーズアッセイキットを使用した。各種濃度のMICA抗体をビーズとともにインキュベートし、次に洗浄し、フィコエリトリンと結合させた抗ヒトIgG抗体とともにインキュベートした。2次洗浄工程後に、装置Luminexでビーズを解析した。陰性対照は、フィコエリトリンのみ(抗MICA抗体は含まない)と結合させた抗ヒトIgG抗体を備えるビーズをインキュベートしたものから構成された。陽性対照は、フィコエリトリンと直接結合させた市販の抗MICA/MICBモノクローナル抗体(クローン6D4)(BioLegendカタログ番号320906)とビーズとをインキュベートしたものから構成された。第2のアッセイは、ストレプトアビジンと結合させたポリスチレンビーズを使用して、社内で開発した。ビーズはモノビオチン化MICAタンパク質によりコーティングし、各種濃度の抗MICA抗体、抗TTCF抗体(アイソタイプ陰性対照)、またはフィコエリトリンと直接結合させたBioLegend抗MICA/MICB抗体(陽性対照)とともにインキュベートした。抗MICA抗体または抗TTCF抗体とインキュベートしたビーズを洗浄し、次にAlexa488を結合させた抗ヒトIgG抗体とともにインキュベートした。ビーズに結合するバックグラウンドを測定するため、比較のためMICAタンパク質によりコーティングしていないストレプトアビジン結合ビーズを使用して、同様のインキュベートを実施した。抗体に対する結合について、FACS Caliberフローサイトメーターによりビーズを解析した。
【0295】
図8および9A−9Oに示す通り、抗MICA抗体(MICA−Ab12およびMICA−Ab20)は高親和性でMICAと結合する。MICA−Ab20は、表1に記載の抗MICA抗体ID−1に相当する。
【0296】
実施例6:抗MICA抗体
本明細書に記載の方法を使用して、生物学的特性と臨床的な相関を有するさらなる抗MICA抗体を開発した。癌の細胞ワクチン(GM−CSF形質導入された癌細胞、GVAXとして参照)と、T細胞上のCTLA−4受容体に対するイピリムマブ(YERVOY(商標)(Bristol Myers Squibから入手可能))による阻害を遮断する抗体との接種を受けた患者において、共通の対立遺伝子産物と反応するMICA特異的抗体を同定した。次に、MICA四量体を使用して、血清MICAの反応が最も高かった患者の末梢血単核細胞からB細胞を単離した。実施例5において概説する通り、単一細胞PCRにより、これらのB細胞から、重鎖および軽鎖配列を決定した。この試行により、北アメリカの人口集団において共通する対立遺伝子産物を認識する抗体を同定した。
【0297】
CM24002 Ab2(表1に記載される抗MICA抗体ID−6)は、GVAX+イピリムマブ併用療法に対し臨床的に有意な応答を示し、かつ血漿がMICAと強力に反応した、急性骨髄性白血病(AML)患者から単離された抗体である。CM24002 Ab2軽鎖(
図12および13)および重鎖(
図10および11)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、CDR1、CDR2およびCDR3配列に下線を引き、示す。同様の患者から、強力な結合性を有するさらなる抗体を得て、CM24002 Ab4(表1に記載の抗MICA抗体ID−7)と標識した。CDR1、CDR2およびCDR3配列に下線を引き、CM24002 Ab4軽鎖(
図16および17)および重鎖(
図15および14)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。
【0298】
CM33322 Ab11(表1に記載の抗MICA抗体ID−8)、CM33322 Ab29(表1に記載の抗MICA抗体ID−9)およびCM33322 Ab4(表1に記載の抗MICA抗体ID−11)は、GVAX+イピリムマブ併用療法に対し長期にわたって応答を示す、転移性黒色腫患者から単離された抗体である。CDR1、CDR2およびCDR3配列に下線を引き、CM33322 Ab11軽鎖((
図20および21)および重鎖(
図18および19)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3配列に下線を引き、CM33322 Ab29軽鎖(
図24および25)および重鎖(
図22および23)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。CDR1、CDR2およびCDR3配列に下線を引き、CM33322 Ab4軽鎖(
図37および38)および重鎖(
図35および36)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。この患者が長期にわたって臨床応答を示したため、これらの抗体を特に対象とする。
【0299】
最初に、対象とする抗体を同定、クローニング、および発現させた後、異なるMICA対立遺伝子産物に対するこれらの抗体の特異性を、細胞数測定ビーズアッセイにより評価した。簡潔に述べると、可溶性の組換えMICA対立遺伝子産物002、008、009と、単一のBirAビオチン化部位を有するMICBとを発現させ、精製し、およびストレプトアビジンビーズで捕捉した。次に、記載の抗MICA抗体を、組換えMICAによりコーティングした異なる濃度のビーズとともに1時間インキュベートし、次に洗浄し、FITCで標識した抗ヒトIgG二次抗体とともにインキュベートした。2回目の洗浄工程後、フローサイトメトリーにより、ビーズの結合したFITCの蛍光の定量を完了した。北アメリカの人口集団における有病率に基づき、MICA対立遺伝子産物002、008、009並びに関連するMICBタンパク質を選択した(
図26A−G)。重要なことに、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29は、すべてのMICA対立遺伝子産物並びにMICBに強力に結合した。他に2つの抗体が対立遺伝子産物のサブセットに結合した:CM24002 Ab4はMICA
*009およびMICBに強力に結合し、CM33322 Ab11はMICA
*002、MICA
*008、およびMICBに強力に結合した(
図26A−G)。同様の手法により生成したヒト陰性対象抗体(破傷風トキソイドC末端断片、すなわちTTCF特異的抗体)、並びに抗MICA陽性対照抗体(MICAを抗原とする、BioLegendから市販のマウス抗体)を使用し、特異性を実証した。これらの試験により、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29を、臨床応用に有望な候補として同定した。
【0300】
実施例7:自己腫瘍細胞に対する抗MICA抗体の結合
フローサイトメトリーにより、単離した抗MICA抗体CM24002 Ab2の自己腫瘍細胞への結合能を評価した(
図27)。患者CM24002から骨髄を得て、CM24002 Ab2により、腫瘍細胞への結合を試験した。次に、骨髄試料から、CD33+ CD34+細胞として腫瘍細胞を同定した。次に、腫瘍細胞を、10μg/mLの、抗MICA抗体CM24002 Ab2、陽性対照の市販のMICA抗体(BioLegend)、または陰性対照抗体(TTCF特異性)により染色した。
図27に示す通り、CM24002 Ab2はこれらの細胞に強力に結合した。CM24002 Ab2は非腫瘍細胞(CD16+およびCD3+細胞)に対し結合を示さず、バックグラウンドの結合のみがCD14+細胞にみられたことから、抗腫瘍特異性が実証された(データ不掲載)。
【0301】
実施例8.抗MICA抗体によるNK細胞上のNKG2D受容体の阻害
単離された抗MICA抗体CM24002 Ab2が、同族受容体であるNKG2Dによる可溶性MICA介在性の下方制御を妨げる能力を評価した。患者由来の血清CM24002を1:10希釈して使用して、ヒトNK細胞とともに48時間インキュベートした。これらの培養物に、CM24002 Ab2(濃度10μg/mL)、市販の陽性対照MICA抗体(BioLegend)または陰性対照抗体(TTCF特異的)を加えた。48時間の時点で、NKG2Dの発現をフローサイトメトリーにより評価した(
図28)。患者由来の血清CM24002は、NKG2Dの発現を強力に下方制御した(したがって、この受容体の機能を不能にした)。CM24002 Ab2および陽性対照MICA抗体は、NK細胞によるNKG2Dの細胞表面での発現を部分的に回復した。特異性を実証するために、患者の血清の代わりに組換えMICA 2ng/mLとともに細胞をインキュベートして、上記の実験を繰り返した(
図29)。CM24002 Ab2はNKG2D発現のMICA介在性の下方制御を完全に妨げたのに対し、陰性対照抗体(TTCF特異的)は効果を有さなかった(
図29)。これらのデータは、ヒトNK細胞上の重要なNKG2D受容体の阻害は、ヒトMICA抗体により妨げられることを実証する。
【0302】
単離された抗MICA抗体がNKG2Dの可溶性MICA介在下方制御を防止する能力をさらに試験するために、上記実験は複数の血清サンプルおよびさらなる単離された抗MICA抗体を使用して繰り返した。
図29に示されるとおり、進行性黒色腫を有する患者からの20個の血清サンプルのうち15は、有意なレベルの分離されるMICAを含む。PBMCを、コントロール血清または可溶性MICA単独または100ug/mlで指示された抗体の存在下で含む選択された黒色腫患者サンプルと48時間インキュベートした。48時に、NKG2D発現を、フローサイトメトリーによってNK細胞(CD3−、CD8−、CD56+)において決定した(
図40;データはNKG2D陽性であるNK細胞の%として示される)。これらのデータは、ヒトMICA抗体が、血清サンプルにおいてNKG2D下方制御をブロックし、試験された全ての血清サンプルにおいてNKG2D−媒介細胞毒性を回復させ、ヒトNK細胞上の重要なNKG2D受容体の阻害を防止することができることをさらに証明する。
【0303】
単離された抗MICA抗体がNKG2Dの可溶性MICA介在下方制御を防止する能力をさらに試験するために、上記実験はさらなる単離された抗MICA抗体(例えば、CM24002 Ab2、CM33322 Ab4またはCM33322 Ab11)を使用して繰り返した。48時間後、細胞を洗浄し、NKG2D表面発現をフローサイトメトリーにより評価した。
図55に示されるとおり、いくつかの抗MICA抗体はrMICA誘導NKG2D下方制御をブロックする。
【0304】
単離された抗MICA抗体がNKG2Dの黒色腫血清誘導下方制御を防止する能力を試験するために、上記実験は複数の血清サンプルおよびさらなる単離された抗MICA抗体を使用して繰り返した。全PBMCをコントロール血清または黒色腫血清単独または指示された抗体の存在下でと48時間インキュベートした。48時間後、細胞を洗浄し、NKG2D表面発現をフローサイトメトリーにより評価した。
図53に示されるとおり、いくつかの抗MICA抗体は黒色腫血清誘導NKG2D下方制御をブロックする。
【0305】
実施例9:抗MICA抗体の細胞介在性細胞傷害
CM24002 Ab2が細胞介在性細胞傷害を可能にするか評価するため、10μg/mLのCM24002 Ab2、陰性対照抗体(TTCF特異的)、または陽性対照抗体(BioLegend)の存在下で、ヒトNK細胞(エフェクター細胞)を、組換えMICA(2ng/mL)とともに48時間インキュベートした。48時間後、細胞を洗浄し、エフェクター:標的比20:1、10:1、および5:1で、K562腫瘍細胞とともに4時間インキュベートした。NK細胞による標的細胞の特異的な溶解は、K562腫瘍細胞からの細胞質タンパク質(LDH)の放出により測定した。MICA抗体の非存在下においては、NK細胞によるK562腫瘍細胞の殺傷は観察されなかった。しかしながら、CM24002 Ab2は、NK細胞介在性のK562腫瘍細胞の溶解を非常に促進させ、かつすべてのエフェクター:標的比において、マウスMICAの陽性対照抗体よりも効果的であった(
図30)。(Fc受容体によりというよりは)NKG2D経路によりK562腫瘍細胞の殺傷が実際に介在されることがさらに実証された。さらに2つの実験群(NKG2DおよびヒトFcブロック用の遮断抗体による)を加え、上記の実験を繰り返した。加えて、CM33322 Ab29も試験した。データから、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29を加えることで、NK細胞介在性細胞傷害が可能になることが示される。NKG2D遮断抗体を加えた場合にはK562細胞の殺傷は生じなかったのに対し、Fc遮断試薬の場合にはわずかに効果が示された(
図31)。これらのデータは、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29がNKG2D経路の抗腫瘍機能を回復させることを示す。
【0306】
さらなる単離された抗−MICAが細胞媒介細胞毒性であるか否かを決定するために、全PBMCを、CM24002 Ab2、CM33322 Ab4、CM33322 Ab11、ネガティブコントロール抗体(TTCF特異的)またはポジティブコントロール抗体(BioLegend)の存在下で、組換えMICA(rMICA)と48時間インキュベートした。48時間後、細胞を洗浄し、20:1、10:1、および5:1 エフェクター:標的比で
51Cr標識K562標的細胞と4時間インキュベートした。特異的溶解を4時間後の
51Cr放出により評価した。
図54において証明されるとおり、NK細胞を殺す活性は、組換えsMICAの存在下で抗MICA抗体により増強される。
【0307】
単離された抗MICA抗体が細胞媒介細胞毒性であるか否かをさらに決定するために、ヒトNK細胞(エフェクター細胞)を黒色腫患者血清と48時間インキュベートした。PBMCを、コントロール血清または可溶性MICA単独または100ug/mlで指示された抗体の存在下で含む黒色腫患者サンプルと48時間インキュベートした(ネガティブアイソタイプコントロール抗体(TTCF特異的)またはポジティブコントロール抗体(BioLegend)。48時に、細胞を洗浄し、20:1のエフェクター対標的比で
51Cr標識K562標的細胞とインキュベートした。特異的溶解を4時間後のシンチレーション計測により評価した(
図41−43)。これらのデータは、CM24002 Ab2、CM33322 Ab29およびCM33322 Ab4がNKG2D経路の抗腫瘍機能を回復させることをさらに示す。
【0308】
全PBMCを、コントロール血清または黒色腫血清単独またはCM24002 Ab2、CM33322 Ab4またはCM33322 Ab11の存在下でと48時間インキュベートした(
図52)。48時間後、細胞を洗浄し、指示されたエフェクター対標的比で
51Cr標識K562標的細胞とインキュベートした。特異的溶解を4時間後の
51Cr放出により評価した。
図56において証明されるとおり、NK細胞を殺す活性は、黒色腫血清の存在下で抗MICA抗体により増強される。
【0309】
さらなる例において、CM24002 Ab2およびCM33322は、K562腫瘍細胞のNK細胞媒介溶解を非常に増強させ、全てのエフェクター:標的比でポジティブコントロールマウスMICA抗体よりもより有効であった(
図50)。
【0310】
実施例10:MICAドメインα3に対する抗MICA抗体の結合
NKG2D受容体は、MICAのα1およびα2ドメイン頂部に結合するため、同じ部位に結合する抗体は、NKG2D受容体と競合し、NK細胞による腫瘍細胞の殺傷を妨げる可能性がある。α3ドメインに結合する抗体は、NKG2D受容体の結合を遮断できないため、特に対象となる。同時に、このような抗体は、タンパク質分解による腫瘍細胞表面からのMICAの切断に干渉し得る。MICA α3ドメインに対する抗MICA抗体の性能を、前述の細胞数測定ビーズアッセイにより評価した。ビオチン化組換えタンパク質をストレプトアビジンビーズ上に捕捉した。次に、ビーズを、10μg/mLの抗体CM24002 Ab2、CM24002 Ab4、CM33322 Ab11、CM33322 AB29、陰性対照の抗体(TTCF特異的)、または陽性対照の抗体(BioLegend)とともにインキュベートし、続いてFITCにより標識した抗ヒトIgG二次抗体とともにインキュベートし、ビーズに結合したFITC蛍光をフローサイトメトリーにより定量した(
図32)。
図32に示す通り、CM33322 Ab29はMICA α3ドメインに結合するため、治療応用に関し非常に興味を引く。
【0311】
実施例11:腫瘍細胞に対する抗MICA抗体の結合
広範な癌を標的とした際のCM24002 Ab2およびCM33322 Ab29の使用可能性を評価した。CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29による標識性について、多発性骨髄腫(RPMI 8226およびXg−1)、卵巣癌(OVCAR3)、急性骨髄性白血病(U937)、黒色腫(K028)、肺癌(1792および827)、および乳癌(MCF7)細胞をひと通り試験した。1% BSAを添加したPBSに、腫瘍細胞を1×10
6個/mLの濃度で再懸濁し、10μg/mLの、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29、並びに陽性および陰性対照(それぞれマウスMICA抗体およびTTCF−特異的抗体)(直接的に結合させたもの)により4℃で1時間染色した。フローサイトメトリーにより標識を評価した(
図33)。試験した細胞株の大部分に関し、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29は、いずれも、市販の陽性対照により標識した場合と比較してより良好に各腫瘍細胞型に結合した。
【0312】
実施例11:抗MICA抗体のMICA対立遺伝子産物特異性
市販のLuminexアッセイを用い、CM33322 Ab29の対立遺伝子産物特異性を評価した。市販の試験キットは、単一のサンプルにおいて結合性を評価することを可能にする、それぞれ固有の蛍光特性を有するLuminexビーズに直接結合した組換えMICA対立遺伝子産物(MICA
*001、
*002、
*007、
*012、
*017、
*018、
*027、
*004、
*009、および
*015)を含有する。記載のMICA対立遺伝子産物によりコーティングしたLuminexビーズを、10μg/mLの、CM33322 Ab29、BioLegend陽性対照、および陰性対照(TTCF)とともに1時間インキュベートし、続いて、PEを結合させた抗ヒトIgG二次抗体とともにインキュベートした。記載の抗体とともに60分間インキュベートし、続いてPE結合抗ヒト二次抗体とともにインキュベートした後、装置Luminex 200を用い蛍光を測定した(
図34)。CM33322 Ab29が市販のアッセイに存在するすべての対立遺伝子産物に結合し得たことから、この抗体はMICAの遺伝子型とは関係なく患者に使用できることが示唆された。
【0313】
これらのデータにより、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29の高生物活性と、これらの抗体の、NK細胞介在性の腫瘍細胞溶解能とが実証される。これらのデータは、免疫療法に応答性の癌患者が、NK細胞の抗腫瘍活性を回復したMICA抗体を産生したことを実証する。あわせて、これらの結果により、癌患者において免疫抑制を克服する際に、および腫瘍崩壊を促進する際に、抗MICA抗体が持ち得る治療能が強調された。
【0314】
実施例12.抗MICA抗体のインビトロおよびインビボ生物学的活性
腫瘍増殖に対する抗MICA抗体の影響を直接的に試験するために、マウスB16を使用して抗MICA抗体のインビトロおよびインビボ生物学的活性を評価した。この試験のために、B16マウス黒色腫細胞を、ヒトMICAを発現するように形質導入した。フローサイトメトリーを、MICAの細胞B16表面発現を検出するために使用した(
図44)。
【0315】
図45は、B16−MICA腫瘍が脾臓のNK細胞および腫瘍浸潤NK細胞におけるNKG2D発現を下方調節することを証明する一連のグラフを提供する。NKG2D発現は、非腫瘍マウスの脾臓または腫瘍を有する動物の脾臓および腫瘍から単離されたNK細胞(CD3−、CD8−、CD335+)においてフローサイトメトリーにより決定された。
【0316】
図46は、抗MICA抗体処置がB16−MICA腫瘍を有するマウスにおいて血清−MICAレベルを減少させることを示す。B16−MICA腫瘍を有するB6マウスを、1週間に3回尾静脈注射によって100ugまたは200ug/用量のCM33322 Ab29で処置した。最初の処置から1週間後、血液を回収し、血清MICAはELISAにより測定された。
図47は、抗MICA抗体の投与がサンドイッチELISAによるMICA検出を妨げないことを示す。組換えMICAを1000倍過剰の抗体と18時間回転しながらインキュベートした。MICA濃度は、サンドイッチELISAにより決定された。
【0317】
腫瘍増殖に対する抗MICA抗体の影響を直接的に試験するために、抗MICA抗体CM33322 Ab29をB16−MICA腫瘍を有するマウスに投与した。マウスを、腫瘍が直径5mmに達したときに始まる、200ug/用量のマウスIgG2a/κアイソタイプコントロールまたは抗MICA抗体CM33322 Ab29で静脈内に処置した。用量を週に3回投与し、腫瘍容量を毎日記録した。
図48に示されるとおり、抗MICA抗体CM33322 AB29でのB16−MICA腫瘍を有するマウスの処置が腫瘍増殖を停止する。これらのデータはインビトロおよびインビボの両方で黒色腫細胞の増殖阻害を示し、抗MICA抗体処置が宿主抗腫瘍応答および腫瘍細胞の直接的殺傷の調節の結果として可能な治療戦略であり得ることを示す。
【0318】
実施例13.抗MICA抗体は腫瘍細胞から分離するMICAを減少させる
腫瘍細胞から分離するMICAを減少させるCM24002 Ab2およびCM33322 Ab29の可能性を試験した。RPMI−8226細胞を10ug/ml アイソタイプコントロール抗体(TTCF−S1C1)、CM33322 Ab29、またはCM24002 Ab2の存在下で培養した。48時間後、細胞を洗浄し、MICA表面発現をフローサイトメトリーにより決定した。
図49において証明されるとおり、CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29は、RPMI−8226細胞から分離するMICAを減少させる
【0319】
さらなる例において、腫瘍細胞から分離するMICAを減少させるCM24002 Ab2、CM33322 Ab4、およびCM33322 Ab11の可能性を試験した。RPMI−8226細胞を、アイソタイプコントロール抗体(TTCF−S1C1)およびCM24002 Ab2、CM33322 Ab4またはCM33322 Ab11の存在下で培養した。48時間後、細胞を洗浄し、MICA表面発現をフローサイトメトリーにより決定した。
図51において証明されるとおり、CM24002 Ab2、CM33322 Ab4およびCM33322 Ab11は、RPMI−8226細胞から分離するMICAを減少させる。
【0320】
実施例14.抗MICA抗体のエピトープマッピング
CM33322 mAb 29、CM33322 11およびCM33322 mAb4に対するエピトープ配列を決定するために、実験を行った。簡潔には、エピトープマッピングを、MICA*009細胞外ドメインの全長にわたる一連の重複ペプチドを含むペプチドアレイによって行った。アレイにおけるそれぞれのペプチドは、以前の配列と10アミノ酸によって重複してそれぞれ後の配列を有する、MICA*009参照配列(配列番号:167)からの20アミノ酸直線状配列の長さであった(10aaオフセット(offset)で20aaペプチド)。これらのペプチドは、フレキシブルな(flexible)リンカーの使用を介してスライドガラスに結合させた。Cy5コンジュゲートされた抗ヒトIgG抗体で検出されるペプチドフラグメントに結合される抗体と共に、抗体をスライドとインキュベートした。アレイスポットへの結合は、GenePixマイクロアレイスキャナーで評価した。結果は、mAbs CM33322 Ab4およびCM33322 Ab29がヒトMICAまたはMICBのアルファ−3領域に結合したことを示した。
【0321】
結果は、全3つの抗体が明らかに異なる連続的なアミノ酸配列を含むヒトMICAのα3領域内のエピトープと相互作用したことを示した。MICA*009内のCM33322 mAb 29、CM33322 11およびCM33322 mAb4に対するエピトープのアミノ酸配列は、
図56A−56Cに示される。MICAの三次元構造内でCM33322 mAb 29およびCM33322 mAb4に対するエピトープの位置はまた、
図57に示される。
【0322】
結果は、抗体CM33322 mAb29により認識されるエピトープが、ヒトMICA配列番号:167のアミノ酸残基229から248に相当する、隣接アミノ酸配列:GDVLPDGNGTYQTWVATRIC(配列番号:168)を含むことを示した。(
図56A)。抗体CM33322 mAb11により認識されるエピトープは、ヒトMICA配列番号:167のアミノ酸残基119から128に相当する、隣接アミノ酸配列:NVETEEWTP(配列番号:169)を含む(
図56B)。抗体CM33322 mAb 4により認識されるエピトープは、ヒトMICA配列番号:167のアミノ酸残基179から188に相当する、隣接アミノ酸配列:TVPPMVNVTR(配列番号:170)を含む(
図56C)。
【0323】
ウェスタンブロットにおける天然または変性MICAまたはMICBへのmAbs CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29の結合もまた決定した。簡潔には、実験は以下のとおりに行った。ヒトMICAまたはMICBを、変性または非変性のPAGE電気泳動法のいずれかに付した。結果は、mAb CM24002 Ab2およびCM33322 Ab29が天然MICAまたはMICBならびに変性タンパク質に結合することを示し、当該抗体が少なくとも部分的に連続的であるエピトープに結合することを示した。
【0324】
その他の実施の形態
本発明は、発明を実施するための形態と組み合わせて記載したが、前述の記載は、例示目的のものであり、本発明の範囲を制限するものではないことは理解されるであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。以降の特許請求の範囲内に含まれるその他の態様、利点、および改変も存在する。