特許第6397907号(P6397907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6397907原発性高アルドステロン症を診断するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397907
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】原発性高アルドステロン症を診断するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/74 20060101AFI20180913BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20180913BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180913BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20180913BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20180913BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20180913BHJP
【FI】
   G01N33/74
   G01N33/68
   G01N33/53 A
   G01N33/53 D
   G01N27/62 V
   A61P5/38
   !A61K45/00
【請求項の数】18
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-524104(P2016-524104)
(86)(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公表番号】特表2017-500538(P2017-500538A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014072339
(87)【国際公開番号】WO2015055825
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年8月21日
(31)【優先権主張番号】13189386.9
(32)【優先日】2013年10月18日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14152763.0
(32)【優先日】2014年1月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】315006780
【氏名又は名称】アトークアント・ダイアグノスティクス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ATTOQUANT DIAGNOSTICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポグリッチュ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァーガー コルネリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン オイエン ドゥニャ
(72)【発明者】
【氏名】ライトナー マルティン
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−002935(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/134472(WO,A1)
【文献】 Increased Adrenal Sensitivity to Angiotensin II in Idiopathic Hyperaldosteronism,Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism,1978年,Vol.47, No.5,pp.938-943
【文献】 The Neurohormonal Natural History of Essential Hypertension: Towards Primary or Tertiary Aldosteronism?,Journal of Hypertension,2002年,Vol.20, No.1,pp.11-15
【文献】 Responses of Plasma Norepinephrine and Renin-Angiotensin-Aldosterone System to Dynamic Exercise in Patients with Congestive Heart Failure,Journal of Cardiac Failure,1996年,Vol.2, No.2,pp.103-110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JG01N 33/48−33/98
STPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において原発性高アルドステロン症を診断するための方法であって、該被験体からの生体サンプル中のアルドステロンレベル及びアンジオテンシンII(Ang II)レベルを測定することと、該アルドステロンレベルと該Ang IIレベルとの比(アルドステロン対アンジオテンシンII比、AA2R)を算出することとを含む、方法。
【請求項2】
1つ若しくは複数のPHAではないことが確認済みの被験体のAA2Rと比べて高いAA2Rが原発性高アルドステロン症であることを示し、及び/又は1つ若しくは複数のPHAであることが確認済みの被験体のAA2Rと比べて低いAA2Rが原発性高アルドステロン症ではないことを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AA2Rに基づく、1つ又は複数のPHA陽性であることが確認済みの被験体と1つ又は複数のPHA陰性であることが確認済みの被験体との値の比(識別係数)がARRに基づく同じデータセット間のものよりも高い、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アンジオテンシンIIの定常状態均衡レベルを測定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体が抗高血圧治療中である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体がレニンの濃度及び/又は活性増大させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被験体が前記ARRの診断力を低下させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記治療が前記AA2Rの診断力を低下させないか、又は前記AA2Rの診断力をより小さく低下させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は複数の医薬組成物が、レニン阻害剤、ACE阻害剤、ACE2、利尿薬、及び/又はカルシウムチャネル遮断薬から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記被験体がアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)にて治療されていない、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一段階診断であり、何ら確認検査を必要としない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記生体サンプルが血液サンプル又は血液由来サンプルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記レベルの少なくとも一方を質量分析により測定する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記レベルの少なくとも一方を抗体ベースの定量法により測定する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アンジオテンシンII標準とアルドステロン標準とを備える、PHAを診断するためのキット。
【請求項16】
マニュアル、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のデタージェント、及び/又は1つ若しくは複数の固相抽出カートリッジを更に備える、請求項1に記載のキット。
【請求項17】
前記キットが同位体標識アンジオテンシンII標準及び/又は同位体標識アルドステロン標準を備える、請求項1又は1に記載のキット。
【請求項18】
アンジオテンシンII抗体及び/又はアルドステロン抗体を備える、請求項1〜1のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原発性高アルドステロン症(PHA)を診断する方法及びキットに関する。特に本発明は、例えば血漿等の生体サンプル中のアンジオテンシンII(Ang II又はAng 1−8)レベル、特に定常状態均衡にあるAng IIレベルとアルドステロンレベルとの比から構成される新たな診断パラメータの使用に関する。2つの測定パラメータの比は、患者においてPHAを診断するのに用いられ、現在用いられている診断法に対して明らかな優位性がある。
【背景技術】
【0002】
原発性アルドステロン症としても知られるPHAは、過剰なレニン分泌によるものではない鉱質コルチコイドホルモンであるアルドステロンの過剰産生を特徴とするものである。アルドステロンによって腎臓におけるナトリウム及び水分保持及びカリウム排出の増大が引き起こされ、動脈性高血圧に繋がる。動脈性高血圧の患者におけるPHAの診断は、現在利用可能な検査が抗高血圧治療を妨げるものであり、用いられているアッセイの診断力が不十分であることから、重大な分析課題となっている。PHAには副腎皮質過形成症及び副腎癌腫を含む多くの原因がある。PHAが、良性腫瘍の一種であり、PHAの原因として最も多い(症例の66%)孤立性アルドステロン分泌副腎腺腫により起こる場合、このPHAはコーン症候群として知られる。PHAの他の原因としては、両側特発性副腎皮質過形成症(症例の30%)、原発性(片側)副腎皮質過形成症(症例の2%)、アルドステロン産生副腎皮質癌腫(症例の1%未満)、家族性高アルドステロン症(FH)、糖質コルチコイド奏功性アルドステロン症(I型FH、症例の1%未満)、II型FH(症例の2%未満)及び異所性アルドステロン産生腺腫又は癌腫(症例の0.1%未満)が挙げられる(非特許文献1)。しかしながら、診断能が限られていることから、PHAのサブフォーム(subforms)の有病率についてのデータにはばらつきがある。最近の研究から、両側特発性副腎皮質過形成症(IAH)に起因するアルドステロン症の有病率はPHA症例の75%とこれまで考えられてきたものよりも高いことが分かっている。診断を受ければ、PHAは通常、外科的処置により治癒することができる。
【0003】
アルドステロンの測定だけでは原発性高アルドステロン症の診断には適切ではないと考えられる。アルドステロンレベル単独の測定とは対照的に、レニンの活性又は濃度とアルドステロンとを測定し、2つのパラメータを合わせて、PHAの診断に現在用いられている算術比、すなわちアルドステロン対レニン比(ARR)にすることにより、PHAを検出するための診断特異度及び感度を高めることができることが知られている(非特許文献2)。アルドステロン対レニン比(ARR)は血漿中のアルドステロンの質量濃度をレニン活性及び/又はレニン濃度で除算したものである。アルドステロン対レニン比は、[ng/dL]/[ng/(mL・h)]、すなわちアルドステロンの1デシリットル当たりのナノグラム数/レニンの1(ミリリットル×時間)当たりのナノグラム数で表すことができる。またこの比は、アルドステロンがモル濃度で与えられる場合、[pmol/リットル]/[μg/(リットル・h)]で表すことができる。前者は27.6を乗算することにより後者へと変換することができる。また、逆の値、すなわちアルドステロン対レニン比の逆数の値であるレニン対アルドステロン比で表すこともある。アルドステロンとレニンとの比は2つのパラメータのいずれかに他の濃度単位(質量単位/ml及び/又は量単位/ml)を用いても算出することができ、これにより同様の情報を含有しているが、その比について異なる絶対値がもたらされる。ARRの算出に用いられるレニン濃度はμg UIE/mlで表すこともでき、これもレニン濃度を反映する臨床診断に用いられることの多い単位である。
【0004】
ARRに基づく原発性高アルドステロン症の個体からの正常個体のカットオフ(又は閾値)は、体位及び時刻等の検査条件に強く影響される。平均すると、23.6[ng/dL]/[ng/(mL・h)](代替単位では650[pmol/リットル]/[μg/(リットル・h)]と表される)というARRカットオフは97%の感度及び94%の特異度を有すると推定されている(上述の非特許文献2)。個体においてカットオフより高いARR値は従来技術では原発性高アルドステロン症を示すものとして用いられている。
【0005】
逆比(すなわちレニン対アルドステロン比)を用いる場合、カットオフよりも低い値が原発性高アルドステロン症を示すと考えられる。
【0006】
しかしながら、PHAを患う患者により呈される広範なARRでは、本態性高血圧とPHAとを明確にかつ確実に識別することはできず、そのため偽陽性及び/又は偽陰性の診断結果及び治療決定が起こる。ARRスクリーニング後の確認検査法におけるARRの診断力を高めるには、生理食塩水注入を伴う高度な検査プロトコルに併せて特別な医薬及び栄養必要量が必要とされる。
【0007】
内分泌学会によって、米国合同委員会(Joint National Commission)のステージ2(160超〜179/100〜109mmHg)、ステージ3(180超/110mmHg)、若しくは薬剤耐性高血圧;高血圧及び自発性若しくは利尿誘発性低カリウム血症;副腎偶発腫を伴う高血圧;又は高血圧及び早発型高血圧の家族歴若しくは若齢(40歳未満)での脳血管発作の患者を含むリスクのある患者群においてPHAをスクリーニングすることが提唱されている。PHA患者の高血圧性の一等親血縁者にはPHAに対するリスクの増大も見られる。臨床ガイドラインに従った治癒手術の決定までのPHAの診断に対する標準的な方法は多大な労力を伴い、患者には幾つかのリスクがあると考えられる。
【0008】
PHAを診断するためのARRの測定の背景にある論理的根拠は副腎皮質におけるアルドステロン分泌に関与する生理学的経路である。レニンは、アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIを産生し、該アンジオテンシンIをAng IIへと他のペプチダーゼを介して変換するレニン−アンジオテンシン系(RAS)の重要な酵素である。Ang IIは、AT1−受容体(AT1R)と結合し、アルドステロンの分泌をもたらすことが知られており、これにより腎臓及び他の組織においてその生理学的効果が生じる。健常状態下において、RASは血漿アルドステロンレベルを調節している。PHA状態下では、アルドステロン産生がRASから一部独立することになり、このことはレニンがアルドステロン産生をそれ以上維持する必要がないことを意味する。ARRの測定はレニン及びアルドステロンのこの脱調節を利用しようとしたものである。PHA患者は通常、血漿アルドステロンレベルが上昇している。そのため何人かの研究者らは、PHAについて陽性のスクリーニング検査には、ARRの上昇に加えてアルドステロンレベルの上昇(通常15ng/dlを超えるアルドステロン)を要求している。
【0009】
PHAについての診断プロセスは、上記に明記した患者群におけるARRの症例検出検査から開始する(非特許文献3)。この初めに測定されたARR値が或る特定の閾値を超えている場合、得られた結果の妥当性を確かめるために、患者に対して更なる検査を行う。なお、ARR閾値の正確な値は、本文献において偽陰性及び偽陽性が頻発することから依然議論の余地がある。
【0010】
測定したARR値に対して限られた影響しかないと思われる抗高血圧薬がいくつか存在するが、多くの抗高血圧薬はARR検査に強く干渉することが知られている。この干渉の主な原因は、レニン濃度及びレニン活性に対するこれらの薬物の強い影響によるものであり、ARR結果の改変へと繋がる。結果として、通常、確認検査の前に抗高血圧薬のウォッシュアウト(wash out)段階が必要となり、これには高血圧患者にかなりのリスクがある。確認検査自体は、時間がかかり、コストを大量に消費する臨床手法からなるものであり、この臨床手法には該手法の前後のARR検査と併せた浸透圧又は薬物の課題に応じて患者のレニンレベルを下げるという意図がある。
【0011】
よく見られるPHA確認検査は、2リットルの0.9%生理食塩水を4時間に亘って患者に投与する生理食塩水注入検査である。容量の増大によってレニンの活性及び濃度の低下が起こる。検査後の50pg/ml未満のアルドステロンレベルがPHAの非存在を示していると考えられ、検査後の100pg/mlを超えるアルドステロンレベルがPHAの疑徴と解釈される。50pg/ml〜100pg/mlの値は分類不能とみなされる(非特許文献3)。
【0012】
陽性確認検査は、過剰な及びレニン非依存性のアルドステロン産生源を決定するのに、例えばコンピュータ断層撮影(CT)及び副腎静脈サンプリング(AVS)等の副腎撮像技法を含む更なる臨床検査を誘導する。サブタイプを分類してから、片側副腎切除又は鉱質コルチコイド受容体拮抗薬による治療を行うことができる。
【0013】
診断プロセスにおける重要な工程は高リスク高血圧患者における症例検出である。症例検出検査が高血圧患者の中から偽陽性及び偽陰性の結果を容易に示し得たことから、PHA患者におけるARR値分布が非PHA患者のARR値分布と重なっていることが分かり(非特許文献4)、このことが患者の不必要な治療ミスに繋がる場合がある。偽陽性の場合、これらの治療ミスは、少なくとも3種の抗高血圧薬を服用しているにも関わらず高血圧である患者での数週間の薬物ウォッシュアウト段階がこの血圧未制御期間中に致命的な心血管事象の重大なリスクをもたらすことから、重度の合併症を引き起こす場合がある。このことに加えて、確認検査には通常、患者及び医療制度にとって時間及び費用のかかる、入院及び医師による常時監視が必要される。偽陰性結果の場合、PHA患者は抵抗性高血圧に耐え続けることになり、卒中又は心臓発作のような生命を脅かす心血管事象に対するリスクの強い増加により予後が致命的なものとなる。
【0014】
本発明は、被験体において原発性高アルドステロン症を診断する方法であって、該被験体から生体サンプルを得ることと、アルドステロンレベル及びAng IIレベルを測定することと、それらの比(アルドステロン対アンジオテンシンII比、AA2R)を算出することとを含む、方法を提供する。該方法には上記の現在用いられているARRに基づく診断法に対して明らかな優位性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Williams textbook of endocrinology. (11th ed.). Philadelphia: Saunders/Elsevier. 2008. ISBN 978-1-4160-2911-3.
【非特許文献2】Tiu S, Choi C, Shek C, Ng Y, Chan F, Ng C, Kong A (2005). "The use of aldosterone-renin ratio as a diagnostic test for primary hyperaldosteronism and its test characteristics under different conditions of blood sampling". J Clin Endocrinol Metab 90 (1): 8. doi:10.1210/jc.2004-1149. PMID 15483077
【非特許文献3】John W. Funder et al.; J Clin Endocrinol Metab. September 2008, 93(9):3266-3281
【非特許文献4】Gary L. Schwartz and Stephen T. Turner; Clinical Chemistry 51, No. 2, 2005
【発明の概要】
【0016】
一態様では、本発明は、被験体において原発性高アルドステロン症を診断する方法であって、該被験体から生体サンプルを得ることと、アルドステロンレベル及びAng IIレベルを測定することと、それらの比(アルドステロン対アンジオテンシンII比、AA2R)を算出することとを含む、方法に関する。第2の態様では、本発明は、Ang II標準とアルドステロン標準とを備え、任意にマニュアル及び/又は更なる構成要素を更に備える、PHAを診断するキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】左パネル:14人の健常ボランティアにおけるAng II対PRA比、右パネル:健常な非処理ボランティア及びACE阻害剤で処理した健常ボランティアの血漿中のAng II対PRC比を示す図である。
図2】左パネル:非処理健常ボランティア及びACE阻害剤で処理した健常ボランティア(n=14)におけるAng II対PRA比、中央パネル:非処理健常ボランティア及びACE阻害剤で処理した健常ボランティア(n=14)におけるPRA、右パネル:非処理健常ボランティア及びACE阻害剤で処理した健常ボランティア(n=4)におけるAng II対PRC比を示す図である。
図3】4時間の生理食塩水注入確認検査の前後における1人の非PHA患者及び1人のPHAであることが確認済みの患者についてのARR及びAA2Rの比較を示す図である。左パネル:値は非PHA患者についての注入前シグナルに対するパーセントとして表し、右パネル:非PHA患者とPHA患者との間のARR及びAA2R特異的な識別係数の比較を各時点にて示している。
図4】有効レニン濃度に対する抗高血圧治療の影響を示す図である。血漿サンプルは、単回用量のACE阻害剤(左)、レニン阻害剤(中央)又はアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB、右)の投与前(投薬前)及び投与の4h後の健常ボランティアから採取した。5人の健常ボランティアの平均値±SEMをグラフに示している。
図5】ARR(上パネル)及びAA2R(下パネル)に対するRAS遮断薬投与の影響を比較する図である。血漿サンプルは、単回用量のACE阻害剤(左)、レニン阻害剤(中央)又はアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB、右)の投与前(投薬前)及び投与の4h後の健常ボランティアから採取した。血漿アルドステロン濃度、均衡アンジオテンシンII濃度及び有効レニン濃度を測定し、各サンプルについてARR及びAA2Rを算出した。ARRの算出には、アルドステロン濃度(ng/L単位)を血漿有効レニン濃度(ng/L単位)で除算した。AA2Rの算出には、アルドステロン濃度(pmol/L)をAng II濃度(pmol/L単位)で除算した。5人の健常ボランティアの平均値±SEMをグラフに示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
患者におけるPHAの診断に現在利用可能な方法は、血漿レニン活性又は血漿レニン濃度と血漿アルドステロン濃度との相関関係を利用するものである。アルドステロン対レニン比(ARR)の算出は、非PHA患者とPHA患者との部分的な識別を可能にすることが分かった。しかしながら、偽陽性及び偽陰性の結果が頻発する。レニンはアンジオテンシンI(Ang I)の産生に関与することが知られており、該Ang Iはキマーゼ又はアンジオテンシン変換酵素(ACE)のような他のタンパク質分解酵素によるAng II形成の基質として働く。Ang IIはRASの主なエフェクターホルモンであり、体液平衡及び血圧の調節を含むRAS媒介性の生理機能に主に関与している。レニンの活性及び濃度はRASの活性の代理マーカーとして働くことが広く認められており(Swales JD and Thurston HJ; Clin Endocrinol Metab. 1977 Jul; 45(1): 159-63)、RASの活性はPHAの診断マーカーとしてのARRの使用を支持するのに用いられる。
【0019】
驚くべきことに、均衡血漿サンプルにて測定されたAng IIレベル(すなわち、均衡Ang IIレベルとも呼ばれる、下記の定常状態均衡(SSE)法に従って測定されたAng IIレベル)は、個々の被験体を比較する際にAng II対PRA比及びAng II対PRC比における大きい変動によって示されるように、血漿レニン活性(PRA)及び血漿レニン濃度(PRC)と低い相関関係を示すことが分かっている(図1、左パネル及び右パネル)。血液を、抗高血圧治療を行っていない14人の健常ボランティアから採取した。血漿を遠心分離により単離し、均衡Ang IIレベルを37℃での60minの血漿均衡後に安定化したサンプルにおいて測定した。定常状態均衡におけるRASを測定する方法は国際公開第2013/182237号にて更に記載されている。PRAの測定には、同様のサンプルに対して、記載のアンジオテンシンI形成アッセイ(Bystrom et al., Clin. Chem. 56(2010), 1561-1569])を行った。アンジオテンシンIを質量分析により定量し、血漿レニン活性を(ng Ang I/ml)/h単位で算出した。グラフは均衡Ang II対レニン活性比を示している。14人のドナーの比は、全14人のドナーの平均の11%〜232%である48〜1022[pg Ang II/ml]/[(ng Ang I/ml)/h]の範囲であった。
【0020】
第2のアプローチでは、血漿レニン濃度(PRC)を、市販の臨床的に適用される抗体ベースのレニンアッセイ(Diasorin)を用いて、4人の非処理ボランティア及び4人のACE阻害剤で処理したボランティアにて決定した。均衡Ang IIレベルを60minの37℃での血漿均衡及びサンプル安定化後の質量分析により測定した。均衡Ang II対PRC比を算出し、非処理患者及びACE阻害剤で処理した患者についてグラフに示した。示される比の単位は、[pg Ang II/ml]/[μgUIE/ml レニン]である。調査した全ての患者コホートにおいて、Ang II対PRA比及びAng II対PRC比は大きく変動していることが見出された。その上、ACE阻害剤処理によって、Ang II対PRC比(図2、右パネル)及びAng II対PRA比(図2、左パネル)の両方の有意な減少が起こった。
【0021】
結論として、個々のドナーにおける異なるAng II濃度での同様のレニンの濃度及び/又は活性の結果(複数の場合もあり)から、レニンの活性及び/又は濃度がRASの生理活性については不良なマーカーであることが分かる。結果として、ARRはRAS活性に関連するアルドステロンレベルを不十分に呈し、PHAのスクリーニング手段としてのARRの好適性には疑問が残る。これらの考察から、ARR測定を介したPHA症例の検出における制限が更に説明され、偽陽性及び偽陰性の結果となりやすく、患者の治療背景に強く依存する(非特許文献3及び非特許文献4)。
【0022】
その上、Ang II対PRA比及びAng II対PRC比はACE阻害剤処理による影響を大きく受ける(図1、右パネル、図2、左パネル及び右パネル)。驚くべきことに、ACE阻害剤処理がレニンの活性及び濃度を増大させ、Ang II対レニン比を有意に低減させた(図2、中央パネル)。
【0023】
そのため、ACE阻害剤のような抗高血圧薬の有無におけるレニンの濃度及び活性とAng IIレベルとの乏しい相関関係がPHAの診断に対するARRの予測力の制限の原因である可能性があると結論付けた。
【0024】
これとは対照的に、本発明は、被験体において原発性高アルドステロン症を診断する方法であって、該被験体からの生体サンプル中のアルドステロンレベル及びアンジオテンシンII(Ang II)レベルを測定することと、該アルドステロンレベルと該Ang IIレベルとの比(アルドステロン対アンジオテンシンII比、AA2R)を算出することとを含む、方法に関する。一実施形態では、本発明は、被験体において原発性高アルドステロン症を診断する方法であって、被験体から生体サンプルを得ることと、アルドステロンレベル及びアンジオテンシンIIレベルを測定することと、それらのレベルを合わせて、算術比(アルドステロン対アンジオテンシンII比、AA2R)にすることとを含む、方法に関する。
【0025】
「レベル」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば血液、血漿又は血清等の生体サンプルにおける物質(例えばレニン、Ang II、アルドステロン等のRASの構成要素等)の濃度を指す。上記濃度は、mol/L単位、mmol/ml単位、μg UIE/ml単位、ng/ml単位、pg/ml単位、又は任意の他の濃度単位で表すことができる。
【0026】
一実施形態では、高いAA2Rが原発性高アルドステロン症であることを示し、低いAA2Rが原発性高アルドステロン症ではないことを示す。一実施形態では、1つ若しくは複数のPHAではないことが確認済みの被験体のAA2Rと比べて高いAA2Rが原発性高アルドステロン症であることを示し、及び/又は1つ若しくは複数のPHAであることが確認済みの被験体のAA2Rと比べて低いAA2Rが原発性高アルドステロン症ではないことを示す。一実施形態では、1つ若しくは複数のPHAではないことが確認済みの患者のAA2Rと同様のAA2Rが原発性高アルドステロン症ではないことを示し、及び/又は1つ若しくは複数のPHAであることが確認済みの患者のAA2Rと同様のAA2Rが原発性高アルドステロン症であることを示す。一実施形態では、上記で使用されるような「同様の」という用語は、各比(すなわちAA2R)間の差が、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、又は5%未満であることを意味する。
【0027】
AA2Rは、生理食塩水注入検査(SIT)の前後での1人の非PHA高血圧患者と高血圧PHA患者との比較により示されるように、陽性対陰性比の改善を示すことが分かった(実施例1、図3)。左パネルでは、それぞれ個々の検査(ARR及びAA2R)について、検査結果はSIT前の値に対するパーセントで表した。PHA患者はARR検査基準に従うと明らかに陽性であり、生理食塩水注入検査(SIT)前及び後の血漿アルドステロンレベルはそれぞれ、471pg/ml及び548pg/mlであり、得られる前ARR及び後ARR(アルドステロン対PRC比)はそれぞれ588.8及び421.5(SIT前のPRC:0.8μg UIE/ml、SIT後のPRC:1.3μg UIE/ml)であった。非PHA患者はそれぞれ190pg/ml及び64pg/mlというSIT前及び後の血漿アルドステロン濃度を示し、SIT前のARR及びSIT後のARRはそれぞれ19.2及び16.4であり、これは検査基準に従うと明らかに陰性である(非特許文献3)。その上で、アッセイ特異的な識別係数を診断性能(すなわち診断力)の評価基準として算出し、ARRとAA2Rとで比較した(図3、右パネル)。識別係数は、異なる検査を用いて一方が真陰性のサンプルであり、一方が真陽性のサンプルである2つの同一サンプルを測定することにより、それら両検査を比較するのに有用である。識別係数は真陽性シグナルと真陰性シグナルとの比を表す。高い識別係数は、真陰性サンプルと真陽性サンプルとの間の差が大きいことを意味し、同様のサンプルについて得られた識別係数が低い検査と比較して診断性能がより良好であることを示唆する。PHAであることが確認済みの患者のSIT前のARR値とPHAではないことが確認済みの患者のSIT前のARR値とを関連付けると、PHAではないことが確認済みの患者(真陰性)と、PHAであることが確認済みの患者(真陽性)との間で30.7という識別係数が得られる。ARRにより分析した場合、非PHA患者とPHA患者とのSIT後の識別係数は25.5であった。
【0028】
驚くべきことに、同様の2人の患者由来の同一サンプルのAA2Rによる分析によって、SIT前のサンプルでは非PHA患者とPHA患者との間の識別係数が150.8であり、SIT後のサンプルでは非PHA患者とPHA患者との間の識別係数が325.0であることが明らかとなった(図3、右パネル)。ARRの代わりにAA2Rを用いることで、陰性シグナルと陽性シグナルとの間の係数が大きく増大し、診断性能の顕著な増大をもたらすと結論付けられる。
【0029】
本発明の一実施形態では、上記AA2Rに基づく、1つ又は複数のPHA陽性であることが確認済みの被験体と1つ又は複数のPHA陰性であることが確認済みの被験体との値の比(すなわち、識別係数)がARRに基づく同じデータセット間のものよりも高い。したがって一実施形態では、1つ又は複数のPHA陽性であることが確認済みの被験体のAA2Rと、1つ又は複数のPHA陰性であることが確認済みの被験体のAA2Rとの比が、ARRに基づく同じデータセットの比よりも高い。言い換えると、1つ又は複数のPHA陽性であることが確認済みの被験体のAA2Rと、1つ又は複数のPHA陰性であることが確認済みの被験体のAA2Rとの比が、同じ1つ又は複数のPHA陽性であることが確認済みの被験体のARRと、同じ1つ又は複数のPHA陰性であることが確認済みの被験体のARRとの比よりも高い。
【0030】
「識別係数」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ若しくは複数のPHAであることが確認済みの被験体(又はPHA陽性であることが確認済みの被験体)の診断パラメータ(例えばARR又はAA2R)と、1つ若しくは複数のPHAではないことが確認済みの被験体(又はPHA陰性であることが確認済みの被験体)の診断パラメータ(例えばARR又はAA2R)との比、又はこのようなパラメータの1つ若しくは複数の平均値、例えばPHAであることが確認済みの被験体のコホートのARR若しくはAA2Rの平均値及びPHAではないことが確認済みの被験体のコホートのARR若しくはAA2Rの平均値を指し得る。したがって、識別係数は、1つ若しくは複数のPHAであることが確認済みの被験体のARRと、1つ若しくは複数のPHAではないことが確認済みの被験体のARRとの比、又は1つ若しくは複数のPHAであることが確認済みの被験体のAA2Rと、1つ若しくは複数のPHAではないことが確認済みの被験体のAA2Rとの比である。識別係数は、それぞれの診断パラメータ又は検査の診断性能(すなわち診断力)の評価基準である。この比が大きければ、診断力が高くなり、偽陽性及び/又は偽陰性の結果の可能性が低くなる。「PHAであることが確認済みの被験体」という用語は、PHAを患っており、従来法(例えばARRを測定する一次スクリーニング検査及び任意にSITの前後にて2回又は3回以上ARRを測定する少なくとも1つの確認検査)のいずれかにより陽性であると診断されているか、又は本発明による方法(例えば何ら確認検査を必要としないAA2R測定)により陽性であると診断されている被験体を指し、及び/又は被験体は手術及び/又は撮像法(例えばCT及び/又は副腎静脈サンプリング)により更に確認されていてもよい。「PHAではないことが確認済みの被験体」という用語は、PHAを患ってはおらず、従来法(例えばARRを測定する一次スクリーニング検査及び任意にSITの前後にて2回又は3回以上ARRを測定する任意の1つ又は複数の確認検査)のいずれかにより陰性であると診断されているか、又は本発明による方法(例えば何ら確認検査又は例えば撮像法等の他の確認手段を必要としないAA2R測定)により陰性であると診断されている被験体を指す。1つ若しくは複数の「PHAではないことが確認済みの被験体」又は1つ若しくは複数の「PHAであることが確認済みの被験体」由来の1つ又は複数のサンプルを調査中のサンプルとの比較のために本発明の方法に正常対照として使用することができる、すなわち1つ若しくは複数の「PHAではないことが確認済みの被験体」由来の1つ若しくは複数のサンプルは陰性対照として使用することができ、及び/又は1つ若しくは複数の「PHAであることが確認済みの被験体」由来の1つ若しくは複数のサンプルは陽性対照として使用することができる。例えば、1つ若しくは複数のPHAではないことが確認済みの被験体のAA2Rと比べて高いAA2Rは原発性高アルドステロン症であることを示し、及び/又は1つ若しくは複数のPHAであることが確認済みの被験体のAA2Rと比べて低いAA2Rは原発性高アルドステロン症ではないことを示す。2つ以上のサンプルを陰性対照及び/又は陽性対照として使用する場合、対応するサンプルの平均値(すなわち算術平均)又は中央値を決定してもよい。このような対照サンプル又はそれらの値に基づき、識別閾値(又はカットオフ)を決定してもよく、閾値を超えると、被験体はPHA陽性であると診断され、閾値に満たないと、被験体はPHA陰性であると診断される。このような閾値はPHA陽性被験体とPHA陰性被験体とを含む患者コホートにおけるAA2R値分布に基づき決定してもよい。この閾値は異なる患者コホートについて別々に決定してもよい(例えば異なる抗高血圧薬で処理した患者群に対して異なる閾値を決定してもよい)。閾値(又は比較レベル)を決定するのに使用することができる上記のパラメータはいずれも、最終閾値を得るために単独で又は1つ若しくは複数の他のパラメータと組み合わせて使用してもよい。
【0031】
上述のように、本発明の方法は何ら確認検査を必要とするものではないが、(例えば医師又は患者が望む場合には)確認検査を行ってもよい。さらに本発明の方法自体を確認検査として、すなわち一次スクリーニング検査をARRに基づき古典的な方法にて行った後に用いてもよい。
【0032】
一実施形態では、AA2Rに基づき決定される1つ又は複数の所与のデータ対又はデータセットについての識別係数(例えば1つ若しくは複数のPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体と比べた1つ若しくは複数のPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体、又はPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値と比べたPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値)が、ARRに基づき、特にスクリーニング検査のARR(すなわちARRの最初の測定及び/又は任意の確認検査前のARR)に基づき、及び/又は確認検査のARR(すなわちARRの2回目若しくはそれ以降の測定及び/又は任意のスクリーニング検査後のARR)に基づき決定される同じデータ対又はデータセットについての識別係数よりも高い。一実施形態では、AA2Rに基づき決定される1つ又は複数の所与のデータ対又はデータセットについての識別係数(例えば1つ若しくは複数のPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体と比べた1つ若しくは複数のPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体、又はPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値と比べたPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値)が、ARRに基づき、特にスクリーニング検査のARR(すなわちARRの最初の測定及び/又は任意の確認検査前のARR)に基づき、及び/又は確認検査のARR(すなわちARRの2回目若しくはそれ以降の測定及び/又は任意のスクリーニング検査後のARR)に基づき決定される同じデータ対又はデータセットについての識別係数よりも高い、特に顕著に高い。一実施形態では、AA2Rに基づき決定される1つ又は複数の所与のデータ対又はデータセットについての識別係数(例えば1つ若しくは複数のPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体と比べた1つ若しくは複数のPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体、又はPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値と比べたPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値)が、ARRに基づき、特にスクリーニング検査のARR(すなわちARRの最初の測定及び/又は任意の確認検査前のARR)に基づき、及び/又は確認検査のARR(すなわちARRの2回目若しくはそれ以降の測定及び/又は任意のスクリーニング検査後のARR)に基づき決定される同じデータ対又はデータセットについての識別係数よりも少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、又は500%高い。一実施形態では、AA2Rに基づき決定される1つ又は複数の所与のデータ対又はデータセットについての識別係数(例えば1つ若しくは複数のPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体と比べた1つ若しくは複数のPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体、又はPHAではないことが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値と比べたPHAであることが疑われる若しくは確認済みの被験体のコホートの平均値)が、ARRに基づき、特にスクリーニング検査のARR(すなわちARRの最初の測定及び/又は任意の確認検査前のARR)に基づき、及び/又は確認検査のARR(すなわちARRの2回目若しくはそれ以降の測定及び/又は任意のスクリーニング検査後のARR)に基づき決定される同じデータ対又はデータセットについての識別係数よりも少なくとも50パーセント、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍高い。
【0033】
「PHAであることが疑われる被験体」という用語は、PHAを患っていることが疑われ、従来法(例えばARRを測定する一次スクリーニング検査及び任意にSITの前後にて2回又は3回以上ARRを測定する少なくとも1つの確認検査)のいずれかにより陽性とは未だ診断されていないか、又は本発明による方法(例えば何ら確認検査を必要としないAA2R測定)により陽性とは未だ診断されていないか、又は過去に診断を受けているが、明らかな転帰がない、及び/又は更に確認が必要な過去の診断を受けている被験体を指す。「PHAではないことが疑われる被験体」という用語は、PHAを患っていないことが疑われ、従来法(例えばARRを測定する一次スクリーニング検査及び任意にSITの前後にて2回又は3回以上ARRを測定する任意の1つ又は複数の確認検査)のいずれかにより陰性とは未だ診断されていないか、又は本発明による方法(例えば何ら確認検査を必要としないAA2R測定)により陰性とは未だ診断されていないか、又は過去に診断を受けているが、明らかな転帰がない、及び/又は更に確認が必要な過去の診断を受けている被験体を指す。
【0034】
患者コホートに、AA2RとARRとの間の選択性及び/又は感度の比較前に前選択基準(例えば最低血圧、最低アルドステロンレベル、或る特定の薬物処理)を設けてもよい。例えば、ARRに基づくスクリーニング検査を実施する研究者によっては、陽性スクリーニング検査の結果に対して15ng/dlの最低アルドステロンレベルを要求する場合があり、これにより前選択を行わない患者コホートに比べて感度及び/又は特異度の変化が起こり得る。
【0035】
一実施形態では、規定の患者コホートにおける本発明の方法の特異度は、特にスクリーニング検査のARR(すなわちARRの最初の測定及び/又は任意の確認検査前のARR)に基づく同じ患者コホートにおける古典的なARR法の特異度と同等であるか、又はそれを超える。特異度はパーセントで表すことができ、特異度[%]=真陰性数/(真陰性数+偽陽性数)×100である。
【0036】
一実施形態では、本発明の方法の特異度は古典的なARR法の特異度よりも高く、特に古典的なARR法よりも顕著に高い。一実施形態では、特異度は93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%より高い。一実施形態では、本方法の特異度は少なくとも94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。一実施形態では、本方法の特異度は100%である。
【0037】
一実施形態では、規定の患者コホートにおける本発明の方法の感度は、特にスクリーニング検査のARR(すなわちARRの最初の測定及び/又は任意の確認検査前のARR)に基づく同じ患者コホートにおける古典的なARR法の感度と同等であるか、又はそれを超える。
【0038】
感度はパーセントで表すことができ、感度[%]=真陽性数/(真陽性数+偽陰性数)×100である。
【0039】
一実施形態では、本発明の方法の感度は古典的なARR法の感度よりも高く、特に古典的なARR法よりも顕著に高い。一実施形態では、本方法の感度は少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である。一実施形態では、本方法の感度は93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%より高い。一実施形態では、本方法の感度は100%である。
【0040】
一実施形態では、PHAであることが確認済みの全被験体の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%が、PHAではないことが確認済みの全被験体の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%より高いAA2Rを有する。PHA被験体と非PHA被験体とのAA2R値分布の重複度がPHA被験体と非PHA被験体のARR値の重複よりも大幅に低いことから、本発明の方法及びキットを用いることで、PHA被験体と非PHA被験体とを明確に区別することが可能である。一実施形態では、重複は10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下である。
【0041】
PHAを患っていることが疑われる被験体は通常、抗高血圧治療中である。例えば、被験体は、PHAの診断を行う時点で1つ又は複数の医薬組成物(本明細書では薬物とも称される)又は治療を受けてきている及び/又は受けている、特に抗高血圧医薬組成物及び/又は治療を受けてきている及び/又は受けている。抗高血圧治療によりARR検査が妨げられることは、高血圧患者におけるPHAの診断において既知の障害である。抵抗性高血圧患者はPHAについて高リスク群であり、定義としては少なくとも3つの抗高血圧薬で同時に治療していても、生理学的な血圧の上昇を依然患っているものである。臨床的に使用される抗高血圧薬の多くがレニン及びアルドステロンレベルに影響を及ぼすことが知られており、レニンは通常、アルドステロンよりも強い影響を受け、それにより偽陰性及び偽陽性の診断決定に繋がるARR検査結果における予期せぬ変動が起こる(非特許文献3)。
【0042】
臨床用途において広く使用されている抗高血圧剤群はRAS遮断薬群である。RAS遮断薬は、Ang IIのレベルを下げる(例えばレニン阻害剤、ACE阻害剤)又はAT受容体でのAng IIの作用を妨げる(例えばアンジオテンシン受容体遮断薬、ARB)ためにRASに干渉するものである。RAS遮断薬に加えて、RAS活性化薬(activators)を抗高血圧剤として使用することができる。例えばACE2は、例えば国際公開第2004/000367号及び国際公開第2008/151347号に記載のように高血圧を治療するのに投与することができる。
【0043】
レニン活性及び/又はレニン濃度に影響を及ぼす、特にレニン活性及び/又はレニン濃度を増大させる薬物及び/又は治療が、ARRに影響を及ぼす、特にARRを低減させる。ARRの診断力はこのような薬物及び/又は治療により低減する。単回用量の異なる抗高血圧剤による5人の健常ボランティアの処理(実施例2)によって、有効血漿レニン濃度の非常に大きな3倍〜10倍の増大が起こった(図4)。有効レニン濃度におけるこれらの薬物誘発性の変化がこれらの個体におけるARRに顕著な影響を及ぼす。
【0044】
単回用量のACE阻害剤(10mgのエナラプリル)、レニン阻害剤(150mgのアリスキレン)又はARB(50mgのロサルタン)の投与によって、ARRの非常に大きな顕著な低減が起こり(図5、上パネル)、これによりこれらの抗高血圧薬の存在下でのARRの診断力の強い低下が起こる。抗高血圧治療により引き起こされる低ARR値が偽陰性の結果を引き起こす。ARRとは対照的に、ARBを除くほとんどの抗高血圧薬がAA2Rには余り影響を及ぼさなかった(図5、下パネル)。薬物投与の前後でのAA2Rの比較から、ACE阻害剤の投与もレニン阻害剤の投与もAA2Rに大きな変化をもたらさず、ARRが薬物処理に応じて大きく低減したことが明らかとなった。Ang IIとAT1受容体との結合を防ぐことで、有効レニン濃度の増大とともにAng IIの集積を引き起こすARBは、AA2Rの大きな低減を引き起こす唯一の薬物であり、ARRは検査する抗高血圧薬毎に大きな影響を受ける。
【0045】
レニン活性及び/又はレニン濃度は、複数の生理学的な調節機構を介して調節される。このような調節機構に干渉する任意の薬物はレニンの活性及び/又は濃度に影響を及ぼし得る。例えば、利尿薬は利尿を促すことにより血圧を下げる一般的な抗高血圧薬群である。利尿を促すことで、レニンの活性及び/又は濃度の増大が起こる。そのため、利尿薬による被験体の治療がARRを低減させる。臨床用途における利尿薬の例は、フロセミド、トルセミド、ヒドロクロロチアジド、アセタゾラミド、メタゾラミド、エプレレノン、スピロノラクトン、アミロリド及びトリアムテレンである。レニンの活性及び/又は濃度に対する影響は、レニンの下流にあるRASカスケードにおける1つ又は複数の工程の遮断により間接的に媒介されていてもよい。
【0046】
例えば、ACE阻害剤によるAng IからAng IIへの変換の遮断は、この遮断によって生理学的補償機構を介したレニンの活性及び/又は濃度の増大が起こることから、ARRに関連付けられる。レニン、ひいてはARRに対するこの影響は、アミノペプチダーゼによるAng IからAng 2−10への変換、及び/又はACE2によるAng IからAng 1−9への変換等のRASの酵素反応に干渉する他の薬物にも当てはまる。したがって、1つ又は複数のこれらのRAS工程に影響を及ぼす1つ又は複数の薬物又は治療によって、ARRに基づく診断が損なわれ、偽陽性及び/又は偽陰性の結果に繋がる。そのため、ARRに基づく方法を用いて診断される被験体は、1つ又は複数のこのような薬物又は治療では治療することができない可能性がある。
【0047】
ARRに基づく方法とは対照的に、本発明の方法を、上記のような1つ又は複数のこのようなRAS作用(RAS affecting)薬物及び/又は治療にて、例えばARRの診断力の低下を起こす1つ又は複数の薬物又は治療(例えばACE阻害剤、ACE2、レニン阻害剤等)にて治療されている被験体にも適用することができる。特に本発明の方法を、レニンの活性及び/又は濃度に影響を及ぼす(特にレニンの活性及び/又は濃度を増大させる)作用物質にて治療されている被験体にも適用することができる、すなわち本発明の方法は、レニンの活性及び/又は濃度に影響を及ぼす(特にレニンの活性及び/又は濃度を増大させる)このような治療とは独立したものである。一実施形態では、被験体はARRの診断力を低下させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体はARRの診断力を低下させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されており、この治療はAA2Rの診断力を低下させないか、又はAA2Rの診断力を小さく低下させる。
【0048】
一実施形態では、被験体は治療中であり、例えば1つ又は複数の医薬組成物又は治療を受けてきている及び/又は受けている。一実施形態では、被験体は診断時に、例えばAA2Rを測定する及び/又は被験体からサンプルを採取する時点で治療中である。一実施形態では、上記治療はRAS干渉治療、例えば1つ又は複数のRAS干渉又はRAS作用医薬組成物の投与である。一実施形態では、被験体は抗高血圧治療中である。
【0049】
しかしながら、一実施形態では、被験体は、Ang IIとアルドステロン分泌との生理学的な繋がり(特にAT1受容体を介したシグナル伝達)に影響を及ぼす1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療、例えばARB等にて治療されていない。したがって、本発明の一実施形態では、被験体はアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)にて治療されていない。一実施形態では、本方法はアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)での治療を除く、被験体の1つ又は複数の抗高血圧治療とは独立するものである。
【0050】
一実施形態では、被験体はARBを除く抗高血圧治療中である。一実施形態では、被験体はアルドステロンレベルに影響を及ぼすが、アルドステロンレベルに対するAng II及び/又はレニン媒介性の影響は排除しない医薬組成物を除く抗高血圧治療中である。一実施形態では、被験体はレニンの濃度及び/又は活性を増大させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体はARBを除く、またアルドステロンレベルに影響を及ぼす医薬組成物を除くが、アルドステロンレベルに対するAng II媒介性の影響を引き起こす組成物を排除しない抗高血圧治療中である。
【0051】
一実施形態では、「にて治療される」(又は「にて治療されない」)又は「にて治療中である」という用語は、本明細書で使用される場合、診断時に、例えばAA2Rを測定する及び/又は被験体からサンプルを採取する時点で、1つ又は複数の薬物及び/又は治療のそれぞれにて治療されている(又は治療されていない)被験体(又は患者)を指す。上記診断は、例えば或る時点でのAA2Rの測定、又は一次診断、又は確認検査を含む任意の更なる診断等の一段階診断とすることができる。更なる実施形態では、被験体は診断の時点で、診断より前に或る特定の期間、上記薬物又は治療にて治療されている(治療されていない)。一実施形態では、上記期間は少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、及び/又は14日である。
【0052】
「に影響を及ぼす」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば活性、レベル又は比等のパラメータが影響を受ける、変更又は変化する、例えば増大又は低減する(又はしない)ことを意味する。特にこのパラメータは実質的に影響を受ける(又は受けない)。一実施形態では、このパラメータは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%を超える影響を受ける(又は受けない)。一実施形態では、1つのパラメータが別のパラメータよりも強い又は弱い影響を受ける(又は受けない)場合、このパラメータは他のパラメータよりも少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%、60%、70%、80%、90%、又は100%強い影響を受ける(又は受けない)。一実施形態では、このパラメータは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%を超えて増大する(又はしない)。一実施形態では、このパラメータは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%を超えて低減する(又はしない)。
【0053】
ARR及び/又はAA2Rに影響を及ぼす別の抗高血圧薬又は治療の群は、アルドステロンレベルに影響を及ぼす(特に実質的に及び/又は直接影響を及ぼす)医薬組成物又は治療、例えばアルドステロンの生合成、半減期、及び/又は分解に影響を及ぼし、血漿アルドステロンレベルの変化を起こす医薬組成物である。そのため、血漿アルドステロンレベルに影響を及ぼすことでARR及び/又はAA2Rを変えるこのような薬物又は治療は、本発明の方法による診断を受ける被験体の治療からは排除することもできる。特に、このような治療中でのAA2Rの診断力が同じ治療中でのARRの診断力と比べて低くなるようなAA2Rに影響を及ぼす薬物又は治療は本発明による方法から排除される。したがって、一実施形態では、被験体をARB、及び/又はアルドステロンの生合成、半減期及び/又は分解に影響を及ぼす薬物を除く、上記のような1つ又は複数の抗高血圧薬又は治療にて治療することができる。
【0054】
誤解を避けるために記すと、Ang IIに影響を及ぼす薬物又は治療(例えばACE阻害剤)はアルドステロンレベルに影響を及ぼす可能性があることから、Ang IIのレベルを下げ、そのようにしてAT1受容体に対するAng IIの作用を低減することで、アルドステロン分泌を減少させることによりアルドステロンを低減させるこのような薬物又は治療は排除する必要がないことをはっきりさせておくべきである。
【0055】
例えば、ACE阻害剤であるカプトプリルの治療的投与によって、Ang IIレベルが下がる一方、レニンレベルが上がる。このため、ACE阻害剤処理によって、アルドステロンレベルの低下とレニンの活性及び/又は濃度の増大とが起こる。このような処理は、AA2Rの診断力を大きく低下させない又は増大させることすらあるが、ARRの診断力を低下させるため、本発明の方法から排除する必要はなく、本発明の実際に好ましい実施形態である。
【0056】
同様の処理条件下においてAA2Rの診断力がARRの診断力と比べて低くなるように(又はAA2Rにより検査される所与のデータ対についての識別係数がARRにより検査される同様のデータ対についての識別係数よりも低くなるように)、AA2Rに影響を及ぼすか又はAA2Rを変えるこれらの医薬組成物及び/又は治療のみを本発明による方法から排除させることができる。
【0057】
したがって一実施形態では、被験体は、ARRの診断力を低下させるが、AA2Rの診断力を低下させない1つ若しくは複数の医薬組成物にて治療されているか、又は被験体は、ARR及び/又はAA2Rの診断力を低下させるが、より高い識別係数、特異度及び/又は選択性により示され得るように、AA2Rの診断力がARRの診断力よりも依然高くなるような1つ若しくは複数の医薬組成物にて治療されている。
【0058】
被験体は診断時に及び/又は診断の前に抗高血圧治療を含む1つ又は複数の治療を受けていても又は受けていなくてもよい(すなわち被験体は治療、例えば抗高血圧治療中であってもよい)。このような治療中の診断力がARRと比べてAA2Rにて低くなる場合、被験体は1つ若しくは複数のこのような治療を受けることができないか、又は本明細書に更に記載のように、このような治療を中断した後にAA2Rに基づく診断の前にこのような治療のウォッシュアウト段階を行う必要がある。一実施形態では、本発明の方法による診断を受ける被験体を、同様の治療中にARRの診断力と比べて低くなるようなAA2Rの診断力を低下させる治療を除く1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療にて治療することができる。一実施形態では、本方法は、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、及び/又はアルドステロンの生合成、半減期及び/又は分解に影響を及ぼす薬物による治療を除く、被験体の1つ又は複数の治療とは独立したものである(特に1つ又は複数の抗高血圧治療とは独立したものである)。
【0059】
一実施形態では、本発明の方法による診断を受ける被験体を、アルドステロン及び/又はAng IIに影響を及ぼさない1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療にて治療することができる。一実施形態では、被験体を、アルドステロン及び/又はAng IIに大きな影響を及ぼさない1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療にて治療することができる。一実施形態では、被験体を、AA2Rに影響を及ぼさない1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療にて治療することができる。一実施形態では、被験体を、AA2Rに大きな影響を及ぼさない1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療にて治療することができる。一実施形態では、被験体を、AA2Rの1つ若しくは複数の所与のパラメータ(すなわちAng II及び/又はアルドステロンレベル)及び/又はそれらの比(すなわちAA2R)に5%、10%、15%、又は20%以下の影響を及ぼす1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療にて治療することができる。例えば、本発明の方法による診断を受ける被験体を、単独で及び/又は組み合わせて、ARRに基づく識別係数よりも(依然)高いAA2Rに基づく識別係数をもたらす1つ又は複数の抗高血圧治療(例えば1つ又は複数のRAS阻害剤)にて治療することができる。
【0060】
抗高血圧薬による治療はAA2Rを増大させることすらあり、それにより識別閾値の変動が起こる場合がある。本発明の別の実施形態では、被験体は、AA2Rを増大させる1つ又は複数の薬物又は治療にて治療されている。
【0061】
本明細書に記載のように、本発明の方法の重要な利点の一つはAA2RがARRよりも抗高血圧治療による干渉を極めて受けにくいことである。言い換えると、ARRはAA2Rよりも遥かに多くの抗高血圧薬及び/又は治療により影響される(更には大きく変化する)。AA2Rが抗高血圧治療による影響を受け得る場合であっても、本発明の方法は、より高い識別係数により示されるように抗高血圧治療中においてARRに対するAA2Rの診断力の改善をもたらす。AA2Rに基づく診断から排除され得るこれらの規定の医薬組成物及び/又は治療のみ(上記に明記した実施形態に記載のように)を診断の前に被験体の血液系からウォッシュアウトさせてもよい。したがって、被験体はこのような投薬治療及び/又は治療を中断するか、又は1つ若しくは複数の医薬組成物及び/又は治療を、他の好適な医薬組成物及び/又は治療、特にAA2Rに影響を及ぼさない(又は大きな影響を及ぼさない)他の抗高血圧医薬組成物及び/又は治療に置き換えることができる。
【0062】
誤解を避けるために記すと、1つ若しくは複数の医薬組成物及び/又は治療の効果、又はパラメータ及び/又は比に影響を及ぼす(又は及ぼさない)1つ若しくは複数の医薬組成物及び/又は治療に言及する場合、この影響は1つの医薬組成物若しくは治療単独、又は2つ以上の医薬組成物及び/又は治療の組合せにより引き起こされる(又は引き起こされない)、すなわち1つ又は複数の医薬組成物及び/又は治療が単独で又は組み合わせて上記影響を引き起こす(又は引き起こさない)ことを意味する。
【0063】
一実施形態では、被験体は、ARRを変える1つ又は複数の薬物又は治療にて治療されている。一実施形態では、被験体は、ARRの診断力を低下させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体は、ARRの診断力を低下させるが、AA2Rの診断力を低下させない、又はAA2Rの診断力をARRよりも小さく低下させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体は、ARRの診断力を増大させるが、AA2Rの診断力をより大きく増大させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体は、AA2Rの診断力を増大させる1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体は、ARRの診断力に比べてより高いAA2Rの診断力をもたらす1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体は、レニン阻害剤、ACE阻害剤、ACE2、利尿薬及び/又はカルシウムチャネル遮断薬、又はそれらの組合せから選択される1つ又は複数の医薬組成物にて治療されている。一実施形態では、被験体は1つ又は複数のACE阻害剤にて治療する。別の実施形態では、被験体を1つ複数のレニン阻害剤にて治療されている。
【0064】
一実施形態では、これらの治療及び/又は医薬組成物は、ARRの1つ又は複数のパラメータ(すなわちレニンの濃度及び/又は活性、及び/又はアルドステロンレベル)及び/又はそれらの比(すなわちARR)に5%、10%、15%、又は20%を超える影響を及ぼす。一実施形態では、これらの治療及び/又は医薬組成物は、ARRの1つ又は複数のパラメータ(すなわちレニンの濃度及び/又は活性、及び/又はアルドステロンレベル)及び/又はそれらの比(すなわちARR)に5%、10%、15%、又は20%を超える影響を及ぼすが、AA2Rの所与のパラメータ(複数の場合もあり)(すなわちAng II及び/又はアルドステロンレベル)及び/又はそれらの比(すなわちAA2R)に5%、10%、15%、又は20%以内の影響を及ぼす。一実施形態では、被験体は、ARRと比べてAA2Rの識別係数を低下させる1つ又は複数の薬物又は治療にて治療されていない。一実施形態では、被験体は、ARRを変化させるが、AA2Rを変化させない1つ又は複数の薬物又は治療にて治療されている。
【0065】
当業者であれば、治療が診断に用いられるパラメータ(例えばARRに基づく診断についてはレニンレベル及び/又はレニン活性及び/又はアルドステロンレベル、並びに本発明によるAA2Rに基づく診断についてはAng II及び/又はアルドステロンレベル)の一方又は両方に影響を及ぼすか否かを容易に判断することができる。例えば、市場での多くの抗高血圧治療については、RAS及び/又はその構成要素の1つ若しくは複数に対する効果(複数の場合もあり)が文献に記載されている(例えば上述の非特許文献3における表4を参照されたい)。さらに、その効果(複数の場合もあり)は、標準的な方法を用いて、例えば治療前及び治療中又は治療後の生体サンプルにおける1つ又は複数のパラメータのレベルを測定するか、又は統計的な方法を用いて異なる治療を行った患者群を比較することで決定することができる。代替的に又は付加的に、治療のこのような影響(複数の場合もあり)は、上記及び国際公開第2013/182237号に記載されるように、RASフィンガープリント分析、すなわち特に定常状態均衡における1つ又は複数のRAS構成要素のレベル(複数の場合もあり)の測定により決定することができる。
【0066】
診断力は本明細書又は従来技術分野に記載のように決定することができる。このため、当業者であれば、ARR及びAA2Rの診断力を容易に決定して、それらを比較することができる。
【0067】
一実施形態では、この治療はARBを除くレニン−アンジオテンシン系(RAS)に影響を及ぼす少なくとも1つの医薬組成物の投与を含む。一実施形態では、この治療は、アルドステロンレベルに影響を及ぼすが、アルドステロンレベルに対するAng II媒介性の影響は排除しない医薬組成物を除く、レニン−アンジオテンシン系(RAS)に影響を及ぼす少なくとも1つの医薬組成物の投与を含む。一実施形態では、この治療はARBを除く、またアルドステロンレベルに影響を及ぼすが、アルドステロンレベルに対するAng II媒介性の影響は排除しない医薬組成物を除く、レニン−アンジオテンシン系(RAS)に影響を及ぼす少なくとも1つの医薬組成物の投与を含む。一実施形態では、レニン−アンジオテンシン系(RAS)に影響を及ぼす医薬組成物はRASに直接的に又は間接的に影響を及ぼす(又は干渉する)。一実施形態では、レニン−アンジオテンシン系(RAS)に影響を及ぼす(又は干渉する)医薬組成物は、レニン発現及び/又は活性に直接的に又は間接的に影響を及ぼす(又は干渉する)組成物である。このようなRAS干渉薬物は、1つ若しくは複数のN末端若しくはC末端ACE阻害剤、レニン阻害剤、アミノペプチダーゼ阻害剤、及び/又は内因性RAS酵素の発現及び/又は血液循環中への分泌に影響を及ぼす他の化合物を含み得る。一実施形態では、RAS作用薬物は、リシノプリル、カプトプリル、アリスキレン、アマスタチン、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)、ネプリライシン(NEP)とも呼ばれる中性エンドペプチダーゼ、及び/又は内因性RAS酵素の発現及び/又は分泌に影響を及ぼす他の化合物、及び/又はそれらの組合せを含み得る。一実施形態では、この治療は特別な食事、例えば減塩食及び/又はDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食も含み得る。しかしながら、PHAの現在のARRに基づく診断に用いられているパラメータの少なくとも1つが1つ又は複数のこのような治療に影響することが多い。
【0068】
ARRとは対照的に、AA2Rはほとんどの抗高血圧治療、特にRAS遮断薬治療の影響を受けない。RAS遮断薬による治療中に、既知の規制フィードバック機構がAng IIの欠失により誘導され、レニン分泌がもたらされることから、レニンが増大する。Ang II抑制が更に、アンジオテンシン依存性のアルドステロン分泌の低減をもたらし、そのためAA2Rが安定した状態に保たれる一方で、ARRはレニンの増大に起因して低下する。
【0069】
例えば、ACE阻害剤処理はレニンの活性及び濃度の増大に関連するものであり、そのことは非治療患者とACE阻害剤下の患者との間のPRAを比較することで確認することができた(図2、中央パネル)。ACE阻害剤処理に応じたレニンの活性及び濃度の増大に起因して、レニンが増大するにつれてARRが強く低下することにより、偽陰性の検査結果の数が増え、ひいてはアッセイ感度が低下することから、ARRはこのような治療を受ける患者をスクリーニングするのには適していない。PHAスクリーニングが高血圧患者において主に行われていることから、抗高血圧薬による干渉が度々起こり、よく知られている(非特許文献3)。これまでに説明されてきた薬物干渉によって、抗高血圧投薬治療を確認検査前の数週間、止めなければならず、それにより卒中及び心不全のような致死的な心血管事象が引き起こされる可能性がある重度の高血圧に至るという患者にとって重大な心血管リスクが明らかにあることから、検査性能を向上させるよう設計された確認検査の必要性が増している。
【0070】
極めて一般的なPHA確認検査は上記の生理食塩水注入検査である。ARRアッセイ性能及び診断力の向上を目的とするこれらの規定条件下においてPHAを確認するために、ARR検査が用いられている(非特許文献3)。
【0071】
例えば、被験体の通常の治療、及びARRに影響を及ぼす因子又は治療、すなわち現在の診断パラメータは上述の非特許文献3における臨床診療ガイドラインにおいて記載されている。その上、アルドステロンレベル及びレニンレベルが両方ともこのような治療(複数の場合もあり)により影響を受け得る。そのため、ARR検査によって偽陽性及び/又は偽陰性の結果が生じ、不適切な治療が行われることになる。多くの場合、2つのパラメータ、すなわちレニンレベル及びアルドステロンレベルが逆に影響を及ぼすことさえあり、この比、ひいては診断結果を大きく変容させることになる。しかしながら、本発明の方法は、アルドステロンレベルに影響を及ぼすが、アルドステロンレベルに対するAng II媒介性の影響は排除しない医薬組成物を除く、またアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)による治療を除くこのような治療とは独立するものである。この群の抗高血圧薬(ARB)はAT1受容体に直接結合することにより、Ang IIシグナル伝達を妨げる。これまでに説明されてきたフィードバック機構が、レニンの濃度及び活性の増大をもたらし、結果としてAng II集積が起こる。これによりAA2Rが人為的に低下し、このことはAA2Rを用いた未来のPHA検査において考慮しなければならないことである。しかしながら、患者はAA2Rを測定する前にARBからACE阻害剤のような別のRAS遮断薬に容易に切り替えることができる。代替的には、アルドステロンレベルに影響を及ぼすが、アルドステロンレベルに対するAng II媒介性の影響は排除しない、1つ若しくは複数のARB及び/又は1つ若しくは複数の医薬組成物(更に上記される)は、本発明の診断方法を適用する前にウォッシュアウトすることができる。
【0072】
一実施形態では、アンジオテンシンIIの定常状態均衡レベルを測定する。「定常状態均衡」(SSE)又は「SSE法」又は「均衡レベル」又は「均衡濃度」という用語は、本明細書で使用される場合、生体サンプル、特に血液サンプル又は血液由来サンプルにおけるタンパク質分解カスケード(例えばRAS)の少なくとも1つのペプチド分解産物(例えばAng II)の測定結果を意味するものであり、サンプルは上記タンパク質分解カスケードに関わる上記少なくとも1つのペプチド分解産物について定常状態均衡が達成されるまでインキュベートされ、定常状態均衡濃度(又は均衡濃度)における上記の少なくとも1つのペプチド分解産物がサンプルにおいて定量される。特に、「定常状態均衡」(SSE)という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質分解カスケードに関わる少なくとも1つのペプチド分解産物の実際の総分解速度が該ペプチド分解産物の実際の総形成速度と等しいことを意味し、これにより更に下記に明記されるように、安定濃度の該ペプチド分解産物、すなわち或る特定期間にわたって実質的に変化しない定常状態均衡のペプチド濃度が生じる。上記定常状態均衡では、ペプチド分解産物の実際の総形成速度は該ペプチド分解産物の形成に関わる全ての酵素の実際の代謝回転速度の合計により規定され、すなわち該ペプチド分解産物は該酵素(複数の場合もあり)の直接産物である。ペプチド分解産物の実際の総分解速度は該ペプチド分解産物の分解に関わる全ての酵素の実際の代謝回転速度の合計により規定され、すなわち該ペプチド分解産物は該酵素(複数の場合もあり)の直接基質である。定常状態均衡は国際公開第2013/182237号に更に記載されている。
【0073】
「実際の」という用語は、本明細書で使用される場合、サンプルに存在するような条件下におけるペプチド、例えばAng IIの実際の(すなわち有効)形成速度若しくは分解速度、又は酵素、例えばACE、ACE2及び/又はアミノペプチダーゼの実際の、すなわち有効代謝回転速度を意味する。
【0074】
「と等しい」という用語は、本明細書で使用される場合、ペプチドの任意のこのような等しい形成速度若しくは分解速度(複数の場合もあり)に由来するペプチド濃度(「定常状態均衡のペプチド濃度」又は「定常状態均衡のペプチドレベル」)、又は上記ペプチドの形成若しくは分解に関わる少なくとも2つの酵素の任意のこのような等しい代謝回転速度(「定常状態均衡の酵素代謝回転速度」)に由来するペプチド濃度が、少なくとも30分(min)、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分、又は300分の期間にわたって15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%を超えて変化しないことを意味する。したがって、上記ペプチドの分解に関わる酵素の実際の総代謝回転速度は該酵素の基質ペプチド(複数の場合もあり)の実際の総形成速度により求められ、そのため任意の新たに又は更に形成された基質は分解される。しかしながら、このことは上記ペプチドの正味濃度がゼロであることを必ずしも意味するものではなく、定常状態均衡にあるサンプルに存在する正味濃度は上で更に記載されているように大きく変化しない。
【0075】
したがって、本発明の一実施形態では、タンパク質分解カスケード(例えばRAS)の上記少なくとも1つのペプチド分解産物(例えばAng II)の濃度は、形成及び分解の連続的な流れに関わらず、定常状態均衡の期間にわたって一定範囲内に保たれる。本発明の一実施形態では、定常状態均衡にある上記少なくとも1つのペプチド分解産物の濃度は、少なくとも30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分、又は300分の期間にわたって15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%を超えて変化しない。一実施形態では、定常状態均衡にある上記少なくとも1つのペプチド分解産物の濃度は60分以内に15%を超えて又は10%を超えて変化しない。したがって、上記ペプチドは、上記に明記した期間、大きく集積することも、大きく減ることもない。
【0076】
一実施形態では、サンプルを最大15分、20分、25分、30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分、又は最大300分インキュベートした後に、定常状態均衡濃度にある少なくとも1つのペプチド分解産物(特にAng II)をサンプルにおいて定量する。別の実施形態では、サンプルを、6時間(h)を超えて、特に最大8h、12h、18h、24h又は最大48hインキュベートすることができる。好適なインキュベーション期間は、所与のタンパク質分解カスケード、定量されるペプチド分析物、サンプルの性質及びインキュベーションパラメータに主に依存する。このようなインキュベーション期間は当業者によって容易に決定することができる。一実施形態では、定常状態均衡はインキュベーション後に保存される(又は安定化される又は凍結される又はクエンチされる)。「保存される」、「安定化される」、「凍結される」及び「クエンチされる」という用語は、本明細書で使用される場合、例えばタンパク質分解の阻害による生化学的状況の保存、例えばペプチドレベルの保存を意味するものとする。定常状態均衡のペプチドレベル(又はin vivoペプチドレベル)の安定化は、1つ又は複数のプロテアーゼ阻害剤の添加により、特にプロテアーゼ阻害剤カクテルの添加により行うことができる。したがって、定常状態均衡が少なくとも1つのペプチド分解産物(特にAng II)について達成されるまで、1つ又は複数のプロテアーゼ阻害剤をインキュベーション後に添加することができる。好適なプロテアーゼ阻害剤又はそれらの組合せは当業者が選択することができ、例えば特異的な又は非特異的な酵素阻害剤の組合せ又はそれらの組合せを含み得る。1つ又は複数のプロテアーゼ阻害剤又はプロテアーゼ阻害剤カクテルによって、特に対象となるカスケードのタンパク質分解工程(すなわち測定されるペプチド、すなわちAng IIを形成及び分解する酵素)、又はタンパク質分解カスケードの各酵素が完全に阻害されるようになる。
【0077】
一実施形態では、タンパク質分解カスケードの各工程が阻害される、すなわちタンパク質分解カスケードに関わる各酵素がプロテアーゼ阻害剤カクテルの少なくとも1つの成分により阻害される。別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤カクテルはタンパク質分解カスケードに関わる各プロテアーゼ群の少なくとも1つの特異的又は非特異的な阻害剤を含む。プロテアーゼ阻害剤カクテルはタンパク質分解カスケードに関わる1つ又は複数の酵素を阻害する1つ又は複数の阻害剤を含み得る。RASのこのような阻害剤の例はリシノプリル(ACE阻害剤)及びアリスキレン(レニン阻害剤)である。プロテアーゼ阻害剤カクテルは、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA、メタロプロテアーゼを阻害する)等のタンパク質分解カスケードに関わる1つ又は複数の酵素群を阻害する1つ又は複数の阻害剤も含み得る。さらに、プロテアーゼ阻害剤カクテルは1つ又は複数の非特異的な阻害剤を含み得る。一実施形態では、プロテアーゼ阻害剤カクテルは少なくとも2つの上述の阻害剤群の組合せを含む。別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤カクテルはフィーディング酵素の1つ又は複数の阻害剤、特にフィーディング酵素の特異的な阻害剤を含む。
【0078】
例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つのプロテアーゼ阻害剤をサンプルに添加する。一実施形態では、プロテアーゼ阻害剤カクテルはペプスタチンA、1,10−フェナントロリン、EDTA、p−ヒドロキシ水銀安息香酸及びレニン阻害剤ペプチドZ−Arg−Arg−Pro−Phe−His−Sta−Ile−His−Lys(Z−Arg)を含む。
【0079】
代替的には、又は1つ若しくは複数のプロテアーゼ阻害剤若しくはプロテアーゼ阻害剤カクテルの使用に加えて、定常状態均衡は、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、塩化マグネシウム、チオシアン酸グアニジン(GTC)、塩化グアニジニウム、フェノール、プロパノール、ブタノール、エタノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、尿素等の1つ又は複数のカオトロピック剤の添加により保存することができる。
【0080】
代替的には、又は1つ若しくは複数のプロテアーゼ阻害剤若しくはプロテアーゼ阻害剤カクテルの使用に加えて、定常状態均衡は、サンプルにおける酵素の他の物理的な不活性化手段、例えば熱、塩、pH若しくはデタージェントにより誘導される酵素の変性、又は冷却、例えばインキュベーションの直後に氷上にサンプルを置くことにより保存することができる。サンプルの更なる1つ又は複数の処理工程、例えば血漿又は血清の分離、及び固相抽出(SPE、例えばマトリクス枯渇及び/又はペプチド濃縮)による分離について、それに従った周囲温度をサンプル中の全ての酵素が不活性となるようにも選択することができる。例えば、サンプルの前処理又はサンプル分析前のサンプル処理を、4℃の(又はそれより低い)周囲温度にて少なくともタンパク質分解カスケードに関わる酵素の完全な変性又は不活性化まで(例えばSPEカラム又はカートリッジからの溶出まで)行うことができる。
【0081】
これとは対照的に、古典的な血漿レニンアッセイ(PRA)は、サンプルを採取した直後のアンジオテンシンI(Ang I)の分解経路の完全な阻害を目的とするものであり、酵素活性は上記酵素により形成されるペプチドの集積速度に基づき算出される。Ang I分解経路の阻害がこのようなPRAアッセイにて不完全である場合があったとしても、Ang Iの正味濃度が経時的に大きく変化することから、PRAは本発明による任意の定常状態均衡とは依然程遠い。例えばBystrom et al.(Clin. Chem. 56(2010), 1561-1569)に記載のようなPRAアッセイにおいては、Ang I濃度が経時的に大きく増大する。その上、現行の技術水準のアッセイは、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)に基づく方法により血漿サンプル中の立体構造的に活性化した形態のレニンを測定することによって、RASの全体の活性を評価しようとするものである(DRG Diagnostics, http://www.drg-diagnostics.de/49-1-DRG+Renin+active+ELISA.html)。上記のSSE測定とは対照的に、これらのアッセイは使用抗体の特異性に決定的に依存するものであり、RASの生理学的効果に関与するサンプル中のエフェクターペプチドの濃度についての結論を出すことは不可能である。この理由は、エフェクターペプチドのレベルに影響を及ぼす酵素が複数存在するためである。これらの全てのペプチドをSSE測定により同時に分析することができる一方で、現行の技術水準のアッセイは1サンプル当たり1つだけの酵素活性又は濃度に着目している。
【0082】
本発明の一実施形態では、定常状態均衡下において、フィーディング酵素の実際の代謝回転速度が最大である、すなわちフィーディング基質がフィーディング酵素と比べて広くモル過剰に存在し、外部からフィーディング基質を添加してもフィーディング酵素の実際の代謝回転速度はそれ以上増大しない。したがって、タンパク質分解カスケードのフィーディング酵素は、フィーディング変換反応に関与する酵素、すなわち続くタンパク質分解カスケードの律速段階(又はタンパク質分解カスケードの障害(bottleneck))である。生理学的条件下におけるRASタンパク質分解カスケードについては、フィーディング酵素は、アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIへの変換に関与するレニンである。生理系では(例えば体内、血中、血漿又は血清サンプルでは)、レニンの基質であるアンジオテンシノーゲンがレニンに対して広くモル過剰に存在する。しかしながら、本発明の一実施形態では、RASタンパク質分解カスケードの1つ又は複数又は全ての他の酵素、例えばアミノペプチダーゼ(AP)、特にアミノペプチダーゼA(APA)及び/又はアミノペプチダーゼN(APN)、ジペプチジルアミノペプチダーゼ(DAP)、カルボキシペプチダーゼ(特にACE2)、ジペプチジルカルボキシペプチダーゼ(特にACE)、及び/又はエンドペプチダーゼ(特にネプリライシンとも呼ばれる中性エンドペプチダーゼ)等が任意の新たに又は更に形成された基質を分解するのに十分な濃度にてサンプル中に存在し、そのためインキュベーション中の上記酵素及びペプチド(複数の場合もあり)についての定常状態均衡の確立が可能となる、すなわち上記酵素の実際の総代謝回転速度は基質ペプチド(複数の場合もあり)の実際の総形成速度により求められる。
【0083】
本発明によると、「フィーディング酵素」という用語は、実際の代謝回転速度が最大の、すなわち実際の代謝回転速度がサンプル中の上記酵素について最大限達成可能な代謝回転速度である酵素を意味する。「最大限達成可能な代謝回転速度」という用語はサンプルに含まれる酵素の代謝回転速度を意味するものとし、該代謝回転速度は、少なくとも定常状態均衡が達成されるまで、基質ペプチドが酵素と比べて広くモル過剰に(又は実質的に無尽蔵の量で)存在する(存在すると考えられる)場合、サンプルにおいて所与の条件下にて達成することができる。したがって、フィーディング酵素の実際の代謝回転速度は、フィーディング基質がフィーディング酵素と比べて広くモル過剰に既に存在していることから、外部から基質を添加してもそれ以上増大させることはできない。例えば定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前又は最中に任意の外部基質ペプチド(すなわちタンパク質分解カスケードに関わるペプチド)又はこのような基質の類似物をサンプルに添加する場合、これにより、本発明の定義に従って、添加する基質ペプチドの量が該基質ペプチドの分解に関わる少なくとも1つの酵素(すなわち生理学的条件下におけるフィーディング酵素以外の酵素)の最大限達成可能な代謝回転速度をもたらすのに十分である場合、タンパク質分解カスケードについての律速段階(複数の場合もあり)、ひいては更にタンパク質分解カスケードのフィーディング酵素(複数の場合もあり)の変化が起こり得る。例えば、調査中のタンパク質分解カスケードがRASである場合、また定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前又は最中に、Ang II分解に関わる1つ又は複数又は全ての酵素に比べて広くモル過剰のAng II(又はその類似物、例えば質量標識(mass label)若しくはアミノ酸交換を含む任意の共有結合的な修飾を保有するAng II)をサンプルに添加する場合、Ang Ang IIの分解に関わる少なくとも1つ又は更には全ての酵素(例えばACE2、AP、及び/又はDAP)は、最大限達成可能な代謝回転速度を達成することができ、そのためカスケードの続くタンパク質分解反応(複数の場合もあり)についての律速フィーディング段階(複数の場合もあり)となると考えられる。
【0084】
本発明の一実施形態では、フィーディング酵素をサンプルに添加することができる。フィーディング酵素の添加が酵素カスケードのフロースルーを増大させ、それにより相対レベル(ペプチド比)を変えずにペプチドの絶対レベルが上がる。したがって、1つ又は複数のペプチドの定常状態均衡レベルは依然、生理学的状況、すなわち酵素活性を反映するものであるが、総ペプチドレベルは比例的に増大する。これは、例えばフィーディング酵素を添加せずに測定されたペプチドレベルがペプチド(複数の場合もあり)の定量に用いられる方法の検出限度未満である場合に有用であると考えられる。任意で、フィーディング基質も添加してもよい。これにより、フィーディング基質がフィーディング酵素と比べてモル過剰となるとともにそれを保ち、フィーディング酵素を添加しても、フィーディング基質が、定常状態均衡を規定する或る特定期間、安定したフィーディング酵素の代謝回転速度をもたらすような実質的に無尽蔵の量で依然存在するようにすることができる。
【0085】
一実施形態では、タンパク質分解カスケードはRASであり、分析されるペプチドはAng IIである。該実施形態では、唯一の酵素的なAng II分解経路がサンプルにおいて「開かれた」ものである、すなわち唯一のAng IIを分解する酵素が活性化している場合、定常状態均衡下において上記のAng IIを分解する酵素の実際の代謝回転速度はAng IIを形成する酵素であるACEの実際の代謝回転速度に等しい。該実施形態では、2つ以上のAng II分解酵素がサンプルにおいて活性化している場合、上記の活性化しているAng IIを分解する酵素の実際の代謝回転速度の合計(すなわちAng IIの実際の総分解速度)はACEの実際の代謝回転速度(すなわち実際の総Ang II形成速度)に等しい。
【0086】
したがって、ペプチド、例えばAng II、及び関連酵素(複数の場合もあり)、すなわち該ペプチド(例えばAng II)を形成又は分解する酵素(複数の場合もあり)について定常状態均衡が達成される。上記のように、タンパク質分解カスケードに関わる少なくとも1つのペプチド(特にAng II)、2つ以上のペプチド、又は全てのペプチドの正味濃度が、少なくとも30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分、又は300分の期間にわたって15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%を超えて変化しない場合、定常状態均衡が達成される。15分、20分、25分、30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分若しくは300分、又は8h、12h、18h、24h若しくは48hのサンプルのインキュベーション後に上記定常状態均衡が達成される。定常状態均衡は少なくとも30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分又は300分、持続される。
【0087】
本発明の一実施形態では、定常状態均衡下において、タンパク質分解カスケードに関わる少なくとも1つのペプチド(例えばAng II)の最大限達成可能な総分解速度はその実際の総形成速度に等しいか又はそれよりも高い。本発明によると、ペプチドの最大限達成可能な分解速度は、上記ペプチドを分解する各酵素と比べて広くモル過剰の該ペプチド(又は実質的に無尽蔵の量の上記ペプチド)の存在下において、すなわち外部ペプチドの添加により所与の条件下にて達成することができる総分解速度である。したがって、ペプチドの最大限達成可能な分解速度は該ペプチドの分解に関わる全ての酵素の最大限達成可能な代謝回転速度の合計である。
【0088】
一実施形態では、インキュベーション時間の開始時に、タンパク質分解カスケードのフィーディング酵素を除くタンパク質分解カスケードに関わる全ての酵素の量が、それぞれの基質(複数の場合もあり)の量に対して過剰である。別の実施形態では、タンパク質分解カスケードのフィーディング酵素を除くタンパク質分解カスケードに関わる上記の1つ若しくは複数の酵素、又は全ての酵素の量が、インキュベーション期間全体にわたりそれぞれの基質(複数の場合もあり)の量に対して過剰である。
【0089】
別の実施形態では、上記で明記した条件(すなわち酵素の量がそれぞれの基質の量に対して過剰であること、及び/又はペプチドの形成速度が定常状態均衡下において分解速度に等しいこと)を少なくとも、1つ若しくは複数の分析されるペプチド(例えばAng II)、及び/又は分析される該ペプチド(複数の場合もあり)(例えばAng II)を形成若しくは分解するそれぞれの酵素(複数の場合もあり)に適用する。
【0090】
例えば、RASタンパク質分解カスケードの構成要素を調べるのに本発明のSSE法を用い、また分析されるペプチドがAng IIである場合、このことは、定常状態均衡が達成されるまで、ACEによるAng IIの実際の形成速度は、限定するものではないが、ACE2、AP、及び/又はDAPを含むAng II分解に関わる全ての酵素の実際の分解速度の合計よりも高いことを意味している。したがって、定常状態均衡が達成されるまで、Ang II濃度が増大する、すなわちAng IIが集積する。定常状態均衡が達成されると、Ang IIの実際の形成速度はAng II分解に関わる全ての酵素の実際の代謝回転速度の合計(Ang IIの実際の総分解速度)に等しくなる。
【0091】
したがって、本発明の定常状態均衡の一実施形態では、少なくとも1つのタンパク質分解反応が、分析される分解ペプチド、例えばAng IIについて、実際の総分解速度が上記ペプチドの実際の総形成速度に等しくなる程度に活性化されていなければならない又は「開かれて」いなければならない、すなわち例えば1つ又は複数のプロテアーゼ阻害剤の使用により、実際の総形成速度が該ペプチドの実際の又は最大限達成可能な総分解速度を上回る程度には阻害されていてはならない又は「閉じられて」いてはならない。
【0092】
一実施形態では、例えばEDTA、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、8−ヒドロキシキノリン、フェナントロリン及びジメルカプロール(ブリティッシュ−アンチ−レウィシット(British-anti-Lewisite)、すなわちBALとも呼ばれる)等のキレート剤は、キレート剤が二価イオンのキレート化によりメタロプロテアーゼに対する阻害効果を有することから、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に添加しない、特にRASカスケード又はメタロプロテアーゼが関与する他のタンパク質分解カスケードでは添加しない。
【0093】
一実施形態では、例えばヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、塩化マグネシウム、チオシアン酸グアニジン(GTC)、塩化グアニジニウム、フェノール、プロパノール、ブタノール、エタノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、尿素等のカオトロピック剤は定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に添加しない。
【0094】
一実施形態では、上記タンパク質分解カスケードについて生理学的条件下において定常状態均衡が達成され、これはタンパク質分解カスケードの構成要素(酵素及び基質又は産物ペプチド)、身体から採取された生体サンプルに存在するそれらの総量及び/又は相対量、並びにサンプルの組成及び/又はpHに関するマトリクスが、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に変更されない又は実質的に変更されないことを意味する。一実施形態では、身体から採取された生体サンプルに存在するタンパク質分解カスケードに関わる酵素及び/又はペプチドの濃度は、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に変更されない。
【0095】
別の実施形態では、タンパク質分解カスケードに関わる任意の酵素(複数の場合もあり)の基質又は基質類似物、例えば内部標準又は分解標準等を、それらの天然形態にて又は標識(例えば同位体標識及び/又は蛍光標識、及び/又は少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸修飾若しくは交換)により修飾されたかに関わらず、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に添加しない。本発明の一実施形態では、タンパク質分解カスケードはRASであり、アンジオテンシノーゲン、アンジオテンシンI及び/又はAng IIも、それらの任意の類似物も、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に添加しない。
【0096】
別の実施形態では、例えば緩衝物質(Tris、PBS、MES、HEPES、クエン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩(又は重炭酸塩))、及び/又は他の緩衝物質若しくはそれらの緩衝溶液等の更なる物質又は試薬は定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に添加しない。
【0097】
更に別の実施形態では、例えばEDTA、EGTA、PMSF、AEBSF、BSA、マレイン酸、マレイン酸無水物、ギ酸、及び/又は水(任意の形態、例えば脱イオン水及び/又は蒸留水等)等の物質又は試薬は定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に添加しない。
【0098】
しかしながら、上述にもかかわらず、1つ又は複数のこのような上述のプロテアーゼ阻害剤、キレート剤、カオトロピック剤、基質、標準、BSA、緩衝剤、及び/又は他の基質若しくは試薬は、一度、定常状態均衡が達成され、任意にクエンチされていれば、添加してもよい。
【0099】
特に1つ又は複数の標準、例えば内部標準及び/又は分解標準は、一度、定常状態均衡が達成され、凍結されていれば添加してもよい。標準は例えば、タンパク質分解カスケードのペプチドであり、該ペプチドは質量標識及び/又は化学標識(例えば同位体及び/又は蛍光標識、及び/又はアミノ酸修飾、及び/又は質量タグの使用、及び/又は少なくとも1つのアミノ酸の交換)により修飾されていてもよい。したがって、内部標準は例えば国際公開第03/016861号に開示される安定同位体標識内部標準である。一実施形態では、生体サンプルは被験体から採取したまま(ex vivoで)インキュベートする、すなわちサンプルのマトリクス及び/又は分析されるタンパク質分解カスケードの構成要素の濃度は変更しないが、定常状態均衡が達成され、安定化する前又はその後に(例えば血漿又は血清を得るために)任意に更に処理する。任意に、抗凝固剤、すなわち凝固を防ぐ(血液が固まるのを止める)物質を、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に生体サンプルに添加してもよい。しかしながら、このような抗凝固剤は分析されるタンパク質分解カスケードのプロテアーゼに実質的に影響を及ぼさないものとする。本発明によるSSE法における使用に適した抗凝固剤はヘパリンである。
【0100】
分析前に、サンプルを、例えばマトリクス枯渇及び/又はペプチド濃縮のために、例えば血漿又は血清の分離(例えば遠心分離、又は凝固の活性化の後の遠心分離による)、及び/又は固相抽出(SPE)による精製により前処理するか又は更に処理してもよい。したがって、固相抽出は、逆相クロマトグラフィー材料、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料、イオン交換材料、親和性クロマトグラフィー材料、例えば逆相クロマトグラフィー材料、特にC18、C8又はC6H5(フェニル)材料を用いて行うことができる。
【0101】
一実施形態では、1つ又は複数の分析物(複数の場合もあり)(例えばAng II)を固体表面から溶出した後に濃縮乾固して、高圧液体クロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィー、HPLCとも呼ばれる)の相溶性溶媒にて再構成することができ、このことは溶媒の組成が1つ又は複数の分析物とMSに連結させたHPLCカラムとの結合を干渉しないことを意味する。再構成溶媒は、例えば分析物の溶解性を高め、及び/又は分析物とHPLCカラムとの結合を促すため、プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、酸又は塩基を含む添加剤を添加することができる水性溶媒である。
【0102】
別の実施形態では、本発明によるSSE法は、抗凝固剤で処理したサンプルを準備する工程と、任意にサンプルを更に処理して血漿又は血清のサンプルを得る工程と、タンパク質分解カスケードに関わる少なくとも1つのペプチド分解産物について定常状態均衡が達成されるまでサンプルをインキュベートする工程と、該定常状態均衡を保存する工程と、任意に定常状態均衡が保存されたら、1つ又は複数の内部標準を添加する工程と、サンプルを用いる固相抽出を実施する工程と、サンプルを分析する工程とを含む。血漿又は血清の分離は定常状態均衡が血漿、血清又は全血において調査されるかに応じて、定常状態均衡が達成される(任意に安定化する)までインキュベーション工程の前又は後のいずれにて行ってもよい。
【0103】
少なくとも1つのペプチド分解産物の、任意に定常状態均衡濃度又はアルドステロンレベルでの分析を、例えば質量分析(MS)により、液体クロマトグラフィー、例えば高圧液体クロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィー、HPLCとも呼ばれる)により、特に液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化質量分析(LC−MS)及び/又は液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC−MS/MS)により行うことができる。例えば、Cui et al.(Anal Biochem. 369 (2007), 27-33)は、アンジオテンシンペプチドを定量するために液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレーイオン化質量分析及び液体クロマトグラフィータンデム質量分析法を開示している。各ペプチド又は分析物及び対応する内部標準については、異なる質量の変動を測定することができる。この方法の性能は品質管理サンプルを用いてモニタリングすることができる。
【0104】
このような品質管理サンプルとして、例えば分析物の濃度が既定の生体サンプル及び合成ペプチドの濃度が既定の混合物を含む合成サンプルを挙げることができる。例えば、品質管理サンプルは、1つ又は複数のペプチドの濃度が既定である、プールされた血液、血漿若しくは血清のサンプル、又はプールされた組織ホモジネートサンプルとすることができる。アンジオテンシンペプチド濃度(例えばAng II濃度)は、統合シグナルが10を超えるシグナル対ノイズ比を達成する場合に内因性ペプチドシグナルと内部標準シグナルとを関連付けることにより算出することができる。
【0105】
さらにこの分析をラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)により行うことができる。任意に、HPLC精製工程はタンパク質分解カスケードのペプチド分解産物のRIA又はELISAに基づく定量の前に行うことができる。一実施形態では、サンプル前処理、サンプル処理、及び/又はサンプルの分析をマルチウェルフォーマットにて、例えば96ウェルプレート上にて行うことができる。
【0106】
この内容におけるペプチド(例えばAng II)の定常状態均衡濃度は、該ペプチドの形成速度が該ペプチドの分解速度に等しいことを意味し、このことからペプチド(例えばAng II)濃度は或る特定期間にわたって実質的に又は大きく変化せず、また上で更に記載されているように、所与の条件下において最大酵素変換率よりも酵素と該酵素の基質との親和性に強く依存することとなる。本発明が生体系を取り扱うことから、「定常状態均衡」という用語は、ペプチド濃度の達成される単一点ではなく、より広い動的標的領域とみなすことができることが明らかであり、その濃度は或る特定期間にわたって大きく変化しない。このような定常状態均衡濃度が達成されるまでのより正確な期間は主に、所与のタンパク質分解カスケード、定量されるペプチド分析物、サンプルの性質、及びインキュベーションパラメータに依存する。これは各カスケードについて容易に求めることができる。概して、本発明による定量を行うことができる「定常状態均衡ウィンドウ」は、少なくともタンパク質分解カスケードのいくつか、特に血中のタンパク質分解カスケードでは少し大きい。通常、定常状態均衡は、経験的に求められる或る特定インキュベーション期間(例えばRASシステムでは30分)後に達成され、その後長期間(例えばRASシステムでは6時間(h))安定した状態を保つ。次いで、定常状態均衡はサンプルにおける関与する酵素の分解及び不活性化又はフィーディング基質の喪失等の影響により妨害される。所与のカスケードについてのフィーディング基質濃度に基づく安定性時間(ts)は、フィーディング基質(又はフィーディング前駆体ペプチド)の濃度(cf)を、サンプルにおけるフィーディング酵素の最大代謝回転速度を達成するための最低基質濃度を規定する酵素及びサンプル特異的な定数(cmin)で減算したものを、カスケードの送り速度(Vf)を規定するカスケードのフィーディング酵素の代謝回転速度で除算することにより算出することができる。
=(c−cmin)/V
フィーディング基質濃度に基づく安定性時間[h]
フィーディング基質濃度[mol/L]
min サンプルにおけるフィーディング酵素の最大代謝回転速度を達成するためのサンプル特異的な最小基質濃度[mol/L]
カスケードの送り速度[[mol/L]/[h]]、及び、
min=f×c
f 過剰因子
フィーディング酵素濃度
【0107】
例えば、フィーディング変換がレニンにより行われた場合のRASに対するこれらの上記式の適用により、PRA(血漿レニン活性)、PRC(血漿レニン濃度)(例えばNishiyama et al. 2010、及びBystrom et al., Clin. Chem. 56(2010), 1561-1569を参照されたい)についての様々な公開値に基づき、例えば70μg/mlの血漿中のAGT濃度及び例えば1000の過剰係数を適用することで、約60時間〜200時間というRAS定常状態均衡の算出されたフィーディング基質濃度に基づく安定性時間が得られる。当然のことながら、上記の算出されたフィーディング基質濃度に基づく安定性時間は、定常状態均衡の実際の安定性時間がサンプルにおいて大きく異なり得ることから、大まかな理論参照点としてのみ役立つものとする。
【0108】
阻害剤を使用しても幾つかの酵素により産生されるペプチドを即座に安定化させるのに限られた成果しかない現行の技術水準の方法とは対照的に(Bystrom et al., Clin. Chem. 56(2010), 1561-1569)、本発明によると、サンプルはタンパク質分解カスケードに関わる少なくとも1つのペプチド、例えばAng IIについて酵素活性によって規定される定常状態均衡を達成することが可能である。この革新的なアプローチにより、Ang IIの代謝に関わる酵素活性を統合しながら生理学的サンプルマトリクスにおけるAng IIの再現性の高い評価が可能となる。現行の技術水準の技術に対する別の利点は、in vitro酵素活性アッセイとは対照的に、本発明によるアッセイにおける基質濃度が、サンプルにおける所与の条件(例えば生理学的条件)下におけるそれぞれ単一の基質に対する酵素の親和性を考慮して、(フィーディング酵素を除く)代謝酵素の濃度未満に大まかに維持されることであり、ここではこの重要な特徴は過剰量の基質を使用することにより、単純化のために無視する。
【0109】
具体的には血液サンプルについて、タンパク質分解カスケードに関わる少なくとも1つのペプチド(例えばAng II)について定常状態均衡を達成するには、本SSE法にて観察されるタンパク質分解カスケードのプロテアーゼがプロテアーゼ阻害剤のサンプルへの添加により、少なくとも上記少なくとも1つのペプチドについて定常状態が達成されるまで、該少なくとも1つのペプチドの分解に関わる少なくとも1つの酵素が働かなくなる程度でないくらいには阻害されない、すなわち該ペプチド(複数の場合もあり)の少なくとも1つの分解酵素は該ペプチド(複数の場合もあり)についての定常状態均衡を可能にする程度には活性がなければならないことが重要である。そのため一実施形態では、プロテアーゼ阻害剤は、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に分析される少なくとも1つのペプチド(例えばAng II)の形成及び分解に関わるプロテアーゼの活性が大きく阻害される程度にはサンプルに添加されない。上記実施形態によると、サンプルはこのようなプロテアーゼ阻害剤と混ぜ合わせないか、又はこのような阻害剤が既に添加されている場合には、このような阻害剤は、定常状態均衡が達成されるまでインキュベーションの前及び/又は最中に阻害(プロテアーゼ阻害機能にて)又は除去される。本発明によるSSE法により調査される関連のタンパク質分解カスケードのプロテアーゼに影響を及ぼさないが、他のタンパク質分解活性を阻害する阻害剤(例えばRASを調査する場合の血液凝固の阻害剤)は当然サンプルに添加することができるが、これは関連のタンパク質分解カスケード(すなわち分析されるカスケード、例えばRAS)がカスケードの少なくとも1つのペプチドについて定常状態均衡を達成する能力に影響を及ぼさないと考えられるためである。
【0110】
定常状態均衡にある1つ又は複数のタンパク質分解産物(例えばAng II)を定量することが有益である。これは、通常サンプル(すなわち血液サンプル)を被験体から採取した後に即座に安定化した、すなわち定常状態均衡にはないタンパク質分解カスケードの状況において分析物の定量を適用する従来技術の分析とは本質的に異なるものである。通常、このような従来技術のサンプルは、カスケードにおける望ましくない酵素に応じた変化を抑えるために、サンプルの採取直後にプロテアーゼ阻害剤にて処理される。しかしながら、SSE法は、定常状態均衡が達成されるまで、調査中の上記カスケードのプロテアーゼのタンパク質分解活性を特異的に発揮させることにより、タンパク質分解カスケードに関わる被験体の生理学的又は生化学的な状況を分析する際にこのような酵素に応じた変化を利用するものである。これにより通常、被験体からサンプルを採取した後に即座に安定化したサンプルに対して調査中のタンパク質分解カスケードにおけるペプチド分解産物の量及び組成の変化が起こることになる。サンプル特異的なタンパク質分解活性により、(定常状態均衡が達成されるまでインキュベーション工程なしで)即座に安定化したサンプルよりもこのカスケードに関する被験体の生化学的状況のより良い指標となる定常状態均衡がもたらされる。
【0111】
上記で既に示されているように、本発明による定常状態均衡は単一の定量的に正確に求められる単離した点ではなく、相対比の変化がサンプルにおいて大きく低減されている状況である。通常このような定常状態均衡は、調査中の所与のサンプル及びカスケードについての通常のインキュベーション条件を適用することにより達成することができる。上記に明記したように、サンプルは最大15分、20分、25分、30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分又は300分、インキュベートすることができる。RAS及び/又はブラジキニンシステムでは、サンプルは少なくとも30min〜最大300min、又は少なくとも30min〜最大180min、又は少なくとも30min〜最大120min、又は少なくとも30min〜最大90min、又は少なくとも30min〜最大60minインキュベートすることができる。好適なインキュベーション温度は、生理系に存在する温度、又は調査中のタンパク質分解カスケードのプロテアーゼが、例えば30℃〜50℃、35℃〜40℃、又は特に約37℃(具体的にヒト血液又は血液由来サンプルについて)の温度に最適な作用温度を有している場合の温度である。
【0112】
本発明によるSSE法がサンプルに含まれるタンパク質分解活性を適用することから、1つ又は複数のサンプル、特に血液サンプルは、定常状態均衡が達成されるまではタンパク質分解カスケードに関する添加プロテアーゼ阻害剤を含まないものとする。
【0113】
このようなプロテアーゼ阻害剤はインキュベーション後に定常状態均衡が達成され、安定化されるまで添加することができる。これは定常状態均衡を反映するペプチド濃度(複数の場合もあり)(特にAng II濃度)が定量工程中に依然存在することを守るものである(定常状態均衡は通常、或る期間にわたって安定しており、このことがSSE法に更なる品質保証を与える)。
【0114】
SSE法はペプチド分解産物の正確かつ的確な定量に依存するものである。多くのサンプル、特に血液サンプルが、ペプチド定量を妨害する可能性のあるタンパク質、塩、酸、塩基、脂質、リン脂質又は他の構成要素を含有することから、定量前にサンプルの前処理法を適用してもよい。
【0115】
一実施形態では、被験体は高血圧を患う被験体であり、及び/又は抗高血圧治療に抵抗性があり、及び/又はPHAを患っている疑いがあり、及び/又はPHA陽性若しくは陰性の診断を必要とするものである。一実施形態では、被験体はヒトである。一実施形態では、被験体は動物、例えばネコ、イヌ、ウマ、ラット、マウス、ウサギ、ブタ及び/又はウシである。
【0116】
上記のように、従来技術の方法は通常、ARRを1回決定する1つのスクリーニング段階と、十分な感度及び特異度にてPHAを診断することができるまでARR又はアルドステロン単独を少なくとも2回決定するその後の確認検査とを含んでいる。この戦略の理由は疑陽性結果が高頻度で起こるためである。上記の生理食塩水注入確認検査では、更にARRの3回の決定(1回目はスクリーニング時、2回目は食塩水注入前の確認検査、及び3回目は生理食塩水注入後)が含まれる。これとは対照的に、本発明の方法は、1回の検査又は工程、例えばAA2Rのみの1回の測定に基づき診断が可能である。
【0117】
したがって一実施形態では、本方法は一段階診断である。一実施形態では、診断はAA2Rの(一時点での)1回のみの測定を含む。一実施形態では、アンジオテンシンIIレベル及び/又はアルドステロンレベルを1回だけ測定する。
【0118】
一実施形態では、上記一段階診断により確定診断に至る。一実施形態では、該一段階診断は例えばAA2R又は他のパラメータの任意の2回目の又は更なる測定等の確認検査を必要としない。一実施形態では、生理食塩水注入検査は必要としない。
【0119】
一実施形態では、生体サンプルは血液サンプル又は血液由来サンプルである。例えば、血液サンプル又は血液由来サンプルは全血、血清、EDTA血漿、ヘパリン血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血、EDTA血又はクエン酸血である。一実施形態では、少なくとも1つのレベルを質量分析により測定する。一実施形態では、少なくとも1つのレベルを例えばELISA等の抗体ベースの定量法により測定する。一実施形態では、両レベルを質量分析により測定する。一実施形態では、両レベルを抗体ベースの定量法により測定する。これは、個々の分析物のどちらに対するキットも市販されていることから、容易に行うことができる。しかしながら、質量分析には、選択性及び再現性に関して抗体ベースの定量法に対する大きな利点がある。
【0120】
別の態様では、本発明はアンジオテンシンII標準とアルドステロン標準とを備えるPHAを診断するキットに関する。
【0121】
一実施形態では、本キットは、マニュアル、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のデタージェント、及び/又は1つ若しくは複数の固相抽出カートリッジを更に備え得る。
【0122】
一実施形態では、マニュアルは本発明による方法の記載、特に本方法の上記の実施形態のいずれかの記載を含むものである。一実施形態では、本キットは同位体標識アンジオテンシンII標準及び/又は同位体標識アルドステロン標準を備える。一実施形態では、本キットはアンジオテンシンII抗体及び/又はアルドステロン抗体を備える。
【0123】
本発明は下記の実施形態により更に説明され、これらの実施形態は請求項1〜15のいずれか一項と容易に結び付けることができる:
1. 被験体において原発性高アルドステロン症を診断する方法であって、アルドステロンレベル及びAng IIレベルを測定することと、それらのレベルを合わせて、算術比(アルドステロン対ang II比、AA2R)にすることとを含む、方法、又は請求項、特に請求項1に記載の方法。
2. 高いAA2Rが原発性高アルドステロン症であることを示し、低いAA2Rが原発性高アルドステロン症ではないことを示す、実施形態1の方法。
3. 所与のデータ対又はデータセットのAA2Rに基づく識別係数が同じデータ対又はデータセットのARRに基づく識別係数よりも高い、実施形態1又は2の方法。
4. 上記方法の特異度が93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%より高い、実施形態1〜3のいずれかの方法。
5. 上記方法の感度が少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%である、上述の実施形態のいずれかの方法。
6. PHAであることが確認済みの全被験体の少なくとも95%がPHAではないことが確認済みの全被験体の少なくとも95%よりも高いAA2Rを有する、上述の実施形態のいずれかの方法。
7. ARBを除く、またアルドステロンレベルに影響を及ぼすが、アルドステロンレベルに対するAng II媒介性の影響は排除しない医薬組成物を除く被験体の任意の治療とは独立したものである、上述の実施形態のいずれかの方法。
8. 上記治療がRAS干渉治療である、実施形態7の方法。
9. アンジオテンシンIIの定常状態均衡レベルを測定する、上述の実施形態のいずれかの方法。
10. 被験体がヒトである、上述の実施形態のいずれかの方法。
11. 被験体が、ARBを除く、またアルドステロンレベルに影響を及ぼすが、アルドステロンレベルに対するAng II媒介性の影響は排除しない医薬組成物を除く抗高血圧治療中である、上述の実施形態のいずれかの方法。
12. 上記治療がレニン−アンジオテンシンシステム(RAS)に影響を及ぼす少なくとも1つの医薬組成物の投与を含む、実施形態11の方法。
13. 一段階診断であり、何ら確認検査を必要としない、上述の実施形態のいずれかの方法。
14. それらのレベルを1回だけ測定する、上述の実施形態のいずれかの方法。
15. 生理食塩水注入検査を必要としない、上述の実施形態のいずれかの方法。
16. 上記生体サンプルが血液サンプル又は血液由来サンプルである、上述の実施形態のいずれの方法。
17. 血液サンプル又は血液由来サンプルは、全血、血清、血漿、ヘパリン血、EDTA血又はクエン酸血である、上述の実施形態のいずれかの方法。
18. 上記レベルの少なくとも一方を質量分析により測定する、上述の実施形態のいずれかの方法。
19. 上記レベルの少なくとも一方を抗体ベースの定量法により測定する、上述の実施形態のいずれかの方法。
20. アンジオテンシンII標準と、アルドステロン標準と、マニュアルとを備える、PHAを診断するキット。
21. 1つ若しくは複数の溶媒、デタージェント、及び/又は固相抽出カートリッジを更に備える、実施形態20のキット。
22. マニュアルが実施形態1〜19のいずれかに記載の方法の記載を含む、実施形態20又は21のキット。
23. 少なくとも1つのレベルの質量分析定量法のためのものであり、同位体標識アンジオテンシンII標準及び/又は同位体標識アルドステロン標準を備える、実施形態20〜22のいずれかのキット。
24. 少なくとも1つのレベルの抗体ベースの定量法のためのものであり、アンジオテンシンII抗体及び/又はアルドステロン抗体を備える、実施形態20〜23のいずれかのキット。
【実施例】
【0124】
実施例1:高血圧患者の血漿中のAA2Rの測定。
生理食塩水注入検査(SIT)及びサンプル採取
1人の非PHA患者及び1人のPHA患者に対してSITを行った。患者は内分泌学会ガイドライン(非特許文献3)に従ってSITを受けた。要するに、2リットルの0.9%生理食塩水を4時間かけて患者に投与した(生理食塩水注入検査、SIT)。EDTA血及びヘパリン血サンプルを4hの生理食塩水注入の前(前SIT)及び後(後SIT)に採取した。血液サンプルを冷やした遠心分離器にて3000gで10min遠心分離し、質量分析による分析まで−80℃で冷凍した。
【0125】
均衡Ang IIレベルの測定
均衡Ang IIレベルを均衡状態のヘパリン血漿サンプルにおける定常状態のアンジオテンシンペプチドレベルの定量により求めた。そこで、解凍したヘパリン血漿サンプルを水浴にて37℃で30minインキュベートした。均衡になった後、プロテアーゼ阻害剤の添加により血漿アンジオテンシンペプチドレベルを安定化させ、続いて均衡ペプチドレベルを質量分析により定量した。そこで内部標準化のために、安定同位体標識Ang IIを200pg/mlの濃度にて安定化させた血漿サンプルに添加した。C18ベースの固相抽出後に、サンプルに対して、XEVO TQ−S三連四重極型質量分析計(Waters)とともにMRMモードにて操作した逆相分析カラム(Acquity UPLC(商標) C18、Waters)を用いて質量分析を行った。分析物及び標準に付き2つの異なる質量の変動が測定され、ヒトブランク血漿における検量線により求められる対応する応答因子を考慮して、内因性シグナルを内部標準シグナルと関連付けることにより濃度を算出した。
【0126】
血漿アルドステロンレベルの測定
内部標準化のために、安定同位体標識アルドステロンを500pg/mlの濃度にて安定化させた血漿サンプルに添加した。C18ベースの固相抽出後に、サンプルに対して、XEVO TQ−S三連四重極型質量分析計(Waters)とともにMRMモードにて操作した逆相分析カラム(Acquity UPLC(商標) C18、Waters)を用いて質量分析を行った。分析物及び標準に付き2つの異なる質量の変動が測定され、ヒトブランク血漿における検量線により求められる対応する応答因子を考慮して、内因性シグナルを内部標準シグナルと関連付けることにより濃度を算出した。
【0127】
算出
各血漿サンプルにおいて得られたアルドステロン濃度を得られたAng II濃度で除算した。
【0128】
実施例2:様々な抗高血圧治療を受けた健常ボランティアにおけるAA2Rの測定。
処理及びサンプル採取
単回用量の3つの異なる抗高血圧薬を1週間空けた3つの異なる処理日にて5人の健常ボランティアに投与した。単回用量の10mgのエナラプリル(ACE阻害剤)、50mgのロサルタン(ARB)又は150mgのアリスキレン(レニン阻害剤)の投与の4h後、ヘパリン血を静脈穿刺により採取し、血漿を遠心分離により分離した。サンプルを分析まで−80℃で冷凍した。
【0129】
均衡Ang IIレベルの測定
均衡Ang IIレベルを均衡状態のヘパリン血漿サンプルにおける定常状態のアンジオテンシンペプチドレベルの定量により求めた。そこで、解凍したヘパリン血漿サンプルを水浴にて37℃で60minインキュベートした。均衡になった後、プロテアーゼ阻害剤の添加により血漿アンジオテンシンペプチドレベルを安定化させ、続いて均衡ペプチドレベルを質量分析により定量した。そこで内部標準化のために、安定同位体標識Ang IIを200pg/mlの濃度にて安定化させた血漿サンプルに添加した。C18ベースの固相抽出後に、サンプルに対して、XEVO TQ−S三連四重極型質量分析計(Waters)とともにMRMモードにて操作した逆相分析カラム(Acquity UPLC(商標) C18、Waters)を用いて質量分析を行った。分析物及び標準に付き2つの異なる質量の変動が測定され、ヒトブランク血漿における検量線により求められる対応する応答因子を考慮して、内因性シグナルを内部標準シグナルと関連付けることにより濃度を算出した。
【0130】
血漿アルドステロンレベルの測定
内部標準化のために、安定同位体標識アルドステロンを500pg/mlの濃度にて安定化させた血漿サンプルに添加した。C18ベースの固相抽出後に、サンプルに対して、XEVO TQ−S三連四重極型質量分析計(Waters)とともにMRMモードにて操作した逆相分析カラム(Acquity UPLC(商標) C18、Waters)を用いて質量分析を行った。分析物及び標準に付き2つの異なる質量の変動が測定され、ヒトブランク血漿における検量線により求められる対応する応答因子を考慮して、内因性シグナルを内部標準シグナルと関連付けることにより濃度を算出した。
図1
図2
図3
図4
図5