(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6397924
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】空港における航空機の無線接続方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/10 20060101AFI20180913BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20180913BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
H04B7/10 A
B64F1/36
H01Q3/24
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-547168(P2016-547168)
(86)(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公表番号】特表2017-507564(P2017-507564A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】US2014062940
(87)【国際公開番号】WO2015116263
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2017年4月26日
(31)【優先権主張番号】14/169,462
(32)【優先日】2014年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】シー、フォン
【審査官】
太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0132495(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0240029(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/10
B64F 1/36
H01Q 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機と無線で通信するシステムであって、次の要素を含むもの。
指向性スロット・アンテナ、
前記指向性スロット・アンテナに通信可能に接続されたプロセッサ、および、
前記プロセッサに通信可能に接続されたメモリであって、前記プロセッサにより実行されるとき前記プロセッサに演算を実行させる、次を含む実行可能な命令を含むもの。
前記指向性スロット・アンテナおよび前記航空機における受信機信号強度示度(RSSI)データに基づき、無線通信のために前記指向性スロット・アンテナに対する前記航空機の近接を計測すること、
前記航空機との無線通信のために前記指向性スロット・アンテナの複数のスロットの可用性を計測すること、
前記航空機の出発予定時刻を決定すること、
前記計測された近接、前記出発予定時刻、前記複数のスロットの可用性、および前記受信機信号強度示度(RSSI)データがしきい値レベルに達したという決定に基づき前記指向性スロット・アンテナの前記複数のスロットのうちからスロットを選択すること、および
選択された前記スロットを介して前記航空機と通信するために前記指向性スロット・アンテナに命令を与えること。
【請求項2】
前記指向性スロット・アンテナは、セクタ・アンテナである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記指向性スロット・アンテナのスロットを選択することは、さらに次を含む、請求項1または2に記載のシステム。
前記航空機に対してアップロードまたはダウンロードするべきデータ量に基づいて必要な要求帯域幅を計測すること。
【請求項4】
前記指向性スロット・アンテナは、前記複数のスロットのうちに第1スロットおよび第2スロットを含み、これにおいて、前記第1スロットから発出する電磁波は前記第2スロットから発出する電磁波とは異なるチャンネルを用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記指向性スロット・アンテナは、前記航空機と通信するための第1スロットおよび第2スロットを前記複数のスロットのうちに含む、請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記メモリは、前記プロセッサにより実行されるとき前記プロセッサに演算を実行させる、さらに次を含む実行可能な指令を含む、請求項5に記載のシステム。
前記航空機の速度または位置の少なくとも1つに基づいて、前記複数のスロットのうちの前記第1スロットまたは前記第2スロットのいずれを介して通信するかを計測すること。
【請求項7】
前記航空機は、前記指向性スロット・アンテナと通信するための無指向性アンテナを用いる、請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記指向性スロット・アンテナは、802.11無線標準を用いる、請求項1〜5、7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
次を含む、航空機と無線で通信する方法。
無線通信のために指向性スロット・アンテナに対する前記航空機の近接を計測するにあたり、前記指向性スロット・アンテナおよび前記航空機における受信機信号強度示度(RSSI)データに基づき、前記計測をプロセッサによって行うこと、
前記航空機との無線通信のために前記指向性スロット・アンテナの複数のスロットの可用性を前記プロセッサによって計測すること、
前記航空機の出発予定時刻を前記プロセッサによって決定すること、
前記計測された近接、前記出発予定時刻、前記可用性、および前記受信機信号強度示度(RSSI)データがしきい値レベルに達したという決定に基づき前記指向性スロット・アンテナの前記複数のスロットからスロットを前記プロセッサによって選択すること、および
選択された前記スロットを介して前記航空機と通信するために前記指向性スロット・アンテナに前記プロセッサによって命令を与えること。
【請求項10】
前記指向性スロット・アンテナは、クワッド・アンテナ、ビルボード・アンテナ、パラボラ・アンテナまたはヘリカル・アンテナである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記指向性スロット・アンテナの前記複数のスロットのうちから前記スロットを選択することは、さらに次を含む、請求項9または10に記載の方法。
前記航空機に対してアップロードまたはダウンロードするべきデータ量に基づいて必要な要求帯域幅を計測すること。
【請求項12】
前記指向性スロット・アンテナは、前記複数のスロットのうちに第1スロットおよび第2スロットを含み、これにおいて、前記第1スロットから発出する電磁波は前記第2スロットから発出する電磁波とは異なるチャンネルを用いる、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記指向性スロット・アンテナは、前記航空機と通信するための第1スロットおよび第2スロットを前記複数のスロットのうちに含む、請求項9〜12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
さらに次を含む、請求項13に記載の方法。
前記航空機の速度または位置の少なくとも1つに基づいて前記複数のスロットのうちの前記第1スロットまたは第2スロットのいずれを介して通信するかを計測すること。
【請求項15】
前記航空機は、前記指向性スロット・アンテナと通信するための無指向性アンテナを用いる、請求項9〜13のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記指向性スロット・アンテナは、第1区画を介して第1の方向において前記航空機と通信し、第2区画を介して第2の方向において第2の航空機と通信するように区画されている、請求項9〜13、15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
プロセッサにより実行されるとき前記プロセッサに演算を実行させる、航空機と通信をするための次を含む実行可能な命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
無線通信のために指向性スロット・アンテナに対する前記航空機の近接を計測するにあたり、前記指向性スロット・アンテナおよび前記航空機における受信機信号強度示度(RSSI)データに基づいて前記近接の計測を行うこと、
前記航空機との無線通信のために前記指向性スロット・アンテナの複数のスロットの可用性を計測すること、
前記航空機の出発予定時刻を決定すること、
前記計測された近接、前記出発予定時刻、可用性、および前記受信機信号強度示度(RSSI)データがしきい値レベルに達したという決定、に基づき前記指向性スロット・アンテナの前記複数のスロットのうちからスロットを選択すること、および
選択された前記スロットを介して前記航空機と通信するために前記指向性スロット・アンテナに命令を与えること。
【請求項18】
実行可能な命令はさらに次を含む、請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
第1区画を介して第1の方向において前記航空機と通信し、第2区画を介して第2の方向において第2の航空機と通信するように前記指向性スロット・アンテナを区画すること。
【請求項19】
実行可能な命令はさらに次を含む、請求項17または18に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
前記航空機の速度または位置の少なくとも1つに基づいて、前記指向性スロット・アンテナの第1スロットを介して通信するか、または、前記指向性スロット・アンテナの第2スロットを介して通信するかを計測すること。
【請求項20】
実行可能な命令はさらに次を含む、請求項17〜19のいずれかに記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
前記航空機の速度または位置の少なくとも1つに基づいて、前記指向性スロット・アンテナの第1スロットを介した第1無線チャンネルを用いて通信するか、前記指向性スロット・アンテナの第2スロットを介して第2無線チャンネルを用いて通信するかを計測すること。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
商用および非商用航空機は、種々のタイプのデータをダウンロードまたはアップロードすることがある。たとえば、航空機の種々の電子機器および電子装置は、ナビゲーション・チャートおよびナビゲーション・ファイルといった格納情報を含んでおり、これは更新されることがある。加えて、とりわけ、映画、テレビ番組、音楽および診断データといった、ダウンロードまたはアップロードされる他のタイプのデータもある。
【0002】
伝統的に、空港の地上にある航空機との無線接続のために、空港当局は一般に、無線でカバーされる空港ターミナルおよびエプロン区域に対し、不必要なRF(無線周波数)エネルギを低減するために制限区域内とすべきことを求めてきた。実際のところ、現在の工業標準に準じた無線データ情報量は、混雑する民間空港での過酷な無線周波数干渉のために、すでに著しく低減されている。
【発明の概要】
【0003】
これまで検討してきた特徴、機能および利点は、種々の実施形態において独立して達成することができ、または、さらに他の実施形態と組み合わせることができ、それらのさらなる詳細は以下の説明および図面を参照することにより明らかとなろう。
【0004】
本明細書では空港において無線で航空機を接続する方法およびシステムを開示する。一つの例において、航空機と無線で通信するためのシステムは、指向性アンテナ・システム、アンテナと通信可能に接続されるプロセッサ、および、プロセッサと通信可能に接続されるメモリを含む。このメモリは、プロセッサにより実行されたとき当該プロセッサに演算を行わせる実行可能な命令を含むことができ、この演算は、無線通信のための指向性アンテナ・システムへの航空機の近接を計測すること、航空機との無線通信のための指向性アンテナ・システムの可用性を計測すること、計測された近接および可用性に基づき指向性アンテナ・システムを選択すること、および、航空機と通信するための指向性アンテナ・システムに対する命令を提供すること、を含むことができる。
【0005】
他の実施例において、航空機と無線通信する方法は、無線通信のための指向性アンテナ・システムへの航空機の近接を計測すること、航空機との無線通信のための指向性アンテナ・システムの可用性を計測すること、計測された近接および可用性に基づき指向性アンテナ・システムを選択すること、および、航空機と通信するための指向性アンテナ・システムに対する命令を提供すること、を含むことができる。
【0006】
他の実施例において、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、航空機と無線通信するための命令を含み、この命令は、無線通信のための指向性アンテナ・システムへの航空機の近接を測定すること、航空機との無線通信のための指向性アンテナ・システムの可用性を決定すること、測定された近接および可用性に基づき指向性アンテナ・システムを選択すること、および、航空機と通信するための指向性アンテナ・システムに対する命令を提供すること、を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】空港ターミナルにおいて複数の航空機と接続している指向性アンテナを示す。
【
図2】空港における空港ターミナルビルに近づく以前に航空機に接続している指向性アンテナを示す。
【
図3】本開示に係るシステムおよび方法の実施に用いることができる指向性アンテナ・システムのブロック図である。
【
図4】指向性アンテナを用い、航空機と無線で接続する方法の一例を示す。
【
図5】指向性アンテナを用い、航空機と無線で接続する方法の一例を示す。
【
図6】本開示に係る方法およびシステムの各側面またはそれらの一部を組み込むことができる汎用コンピュータ・システムを表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
航空機の着陸時、大量のデータが無線または有線でアップロードまたはダウンロードされることがある。このデータは、飛行データ、メインテナンス・データ、ナビゲーション・データ、POS業務およびこれに類するものといった多くの事柄に関連することがある。従来、無指向性アンテナは望ましくないエネルギを発生するとともに他のアンテナと干渉し、フェイズド・アレイ・アンテナは民間空港で使用するには高コスト過ぎた。本明細書で開示するものは、無線で航空機と接続する方法およびシステムである。例示するシステムは、高利得および空港において無線で航空機に接続する固定ビーム中の選択特性をもつ低コストのスロット・アンテナの使用を含む。接続は、航空機が空港環境内で停止し、または移動しているときに行われる。
【0009】
図1は、空港ターミナル12において複数の停止中の航空機と接続している指向性アンテナ14を示す。航空機22はゲート16に位置し、航空機24はゲート18に位置し、航空機26はゲート20に位置している。指向性アンテナ14は空港ターミナル12の上部に設けることができる。複数のビーム(すなわち、電磁波または電磁ローブ)は、アンテナ14から発せられる。ビーム30は航空機22の無指向性または指向性アンテナ(図示略)の方向に向けることができる。ビーム32は航空機24の無指向性または指向性アンテナ(図示略)の方向に向けることができる。加えて、ビーム34は航空機26の無指向性または指向性アンテナ(図示略)の方向に向けることができる。指向性アンテナ14と航空機22、航空機24および航空機26の各アンテナは、無線で接続することができきる。装置間の無線通信は、802.11a、802.11b、802.11g、802.11n、802.11acといった世界無線標準または将来の世界標準に準拠することができる。
【0010】
一例において、複数のビーム28は、802.11b無線標準を用いて形成することができる。
図1において、外部機器とのデータ通信のために11のチャッネルを用いることができ、一方、その他のチャンネル(たとえば、チャンネル12−14は他国で用いることができるが、米国内で用いることができない)を使用不可とすることができる。
図1において、ビーム30は802.11bのチャンネル1に、ビーム32は802.11bのチャンネル6に、そして、ビーム34は802.11bのチャンネル11に符合している。このようなチャンネルの分離は、干渉を最小化するとともにデータのアップロードまたはダウンロードのための帯域幅を最大化するのに役立つ。
【0011】
図2は、空港における空港ターミナル40に到達するまでに移動中の航空機に接続している指向性アンテナ46を示す。一例において、航空機42は、進路48にそってゲート44に向かって動くとき、ビーム50を介して最初に指向性アンテナ46に接続することができる。航空機42が進路48に沿ってゲート44に向かって進むと、指向性アンテナ46は、航空機42と断続的に通信するために、ビーム50、ビーム52、ビーム54およびビーム56間を切り換えることができる。アンテナ46は、演算機器45と通信で接続される。演算機器45は、(たとえば、GPS、無線センサまたはビデオ・カメラを介して)航空機42を追跡するとともに、航空機42との通信を容易にするために一つのビームを他のビームに切り換えるように指向性アンテナ46に指令を与えることができる。指向性アンテナ46は、本明細書中で検討するどのタイプの指向性アンテナであってもよい。たとえば、指向性アンテナ46は、パラボラ・アンテナでもよく、かつ、航空機42と通信するために軸回りに物理的に回転することができてもよい。
【0012】
図3は、複数(たとえば、3)の航空機に接続することができる本開示のシステムおよび方法を実行するのに用いられる指向性アンテナ・システム60のブロック図を示す。指向性アンテナ・システム60は、電磁波がアンテナ62の前端に配置されるスロット・アレイの開口を通過する、セクタ化ビーム・アンテナとすることができる。ブロックA77、ブロックB78およびブロックC79は、指向性アンテナとともに用いられるチャンネル選択部である。たとえば、上述の802.11標準が用いられる場合、ブロックA77をチャンネル1とし、ブロックB78をチャンネル6とし、ブロックCをチャンネル11とすることができる。チャンネル1、チャンネル6およびチャンネル11は、通信に802.11標準を用いる場合、無線干渉を最小にするように用いることができる。
【0013】
送信アンプ74および受信アンプ76は、サーキュレータ72と通信接続される信号アンプである。サーキュレータ72は、受信アンプ76の受信信号からの送信アンプ74の送信信号の分離において助力することができる。サーキュレータ72は、ビーム(電磁波)の方向を制御する単一極3接点(SP3T)スイッチ80に通信接続されている。
図3に示すように、接続81はアンテナ62のポート63に接続されている。ポート63を通ってパス67に沿う電磁波により伝送される信号は、上記スロット・アレイに結合され、かつ当該スロット・アレイから上記方向(主ローブ)に発出される。SP3T80はまた、切り換えることができてポート64またはポート65に接続することができる。ブロックA77のチャンネルと対応するスロット・アレイを通る結合電磁波の方向は、SP3T80により選択されるとき、ポート64またはポート65において送信または受信される。
図3に示すように、ポート61およびポート66は、サイドローブを抑制するために適切に終わっている。スロット・アレイに結合されるポート86は、ブロックB78のチャンネルに対応して選択される。スロット・アレイに結合されるポート88は、ブロックC79のチャッネルに対応して選択される。パス82およびパス83に沿う電磁波により伝送される信号は、それぞれポート86およびポート88を通って送信または受信される。ポート86およびポート88は、スロット・アレイ全体に結合され、同じスロット・アレイからそれらの独自方向(それぞれの主ローブ)に発出する。指向性アンテナ・システム60は、アンテナ62のスロットと対応する追加のスイッチを有することができる。多くの細分されたスイッチまたは対応するスロットを設けることができる。
【0014】
図4は、空港に到着する航空機と通信するために指向性アンテナを用いる一例方法を示す。ブロック405において、航空機の着陸後、誘導路または空港エプロンに沿う航空機の位置が検知される。この航空機は、航空機の車輪が路面に接触することにより、あるいはその他の方法により、通信を開始する。ブロック410において、航空機との通信に適切なターミナル・アンテナが選択される。このターミナル・アンテナは、アンテナへの航空機の近接、アンテナの可用性(たとえば、使われていないポート)、航空機へのアップロードまたはダウンロードされるデータ量に基づき必要な予測帯域幅、航空機の駐機場所、航空機の出発予定時刻(たとえば、短い乗り継ぎのためにゲートに付けるのを待つ必要がないかもしれない)、あるいはそれに類することに基づき、選択される。ブロック415において、ターミナルビルまたはその他の構造上のアンテナの最初に選択された(第1)ポートを介してデータが伝送される。ブロック420において、データは、航空機の位置または速度に基づいて、最初に選択されたアンテナの他のポート(あるいは全く異なるアンテナ)を介して伝送される。一例において、航空機の位置および検出速度または予測速度(たとえば、誘導路移動中の横断時の低速化予測)が、どのアンテナを選択するかの決定に先立って考慮されることがある。アンテナの使用可能なポートは、航空機が完全に停止するまで、データ伝送するべく終わりまで循環することがある。本明細書に説明されるような方法はまた、駐機場所を離れ、離陸前にエプロンに沿って移動する出発航空機についても転換適用することができる。
【0015】
移動中の航空機(たとえば、
図2参照)に対し、空港エプロンに沿う既知の、あるいは所定の移動経路にしたがい、アンテナの利用可能な固定ビームからビームが選択され、かつ切り換えられる。
図5は、空港において航空機と通信するための指向性アンテナを使用する一例方法450を示す。ブロック455において、航空機の位置と符合する指向性アンテナの第1ポートが選択される。ブロック460において、信号強度が受信される。この信号強度は、航空機と上記第1ポートとの間の信号強度である。航空機を追跡するために、受信機信号強度示度(RSSI)を用いることができる。ブロック465において、上記第1ポートと航空機との間の信号強度に基づき、航空機に供するための第2ポートが選択される。ブロック470において、指向性アンテナの第2ポートを介して航空機にデータが伝送される。
図5に示す方法は、所定の経路にそって移動する航空機に対し、特に適用可能である。一例において、第1ポートの信号強度がしきい値レベルに達する場合に、第1ポートの左右両側の第2および第3ポートからの隣り合うビームが選択されることがある。第2ポートと第3ポートのRSSI信号が比較され、航空機に向けたより高い信号強度をもつポートの選択が行われる。このプロセスは、気象条件、または、指向性アンテナの予期される、または予期されない動きを説明するため、航空機が停止した後にまで継続することがある。この方法は、エプロンに沿う離陸前の航空機の動きに対して適用することができる。
【0016】
航空機を無線接続する方法およびシステムは、種々のタイプの指向性アンテナを用いるとこができる。この指向性アンテナは、セクタ・アンテナ、八木アンテナ、パッチ・アンテナ、クワッド・アンテナ、ビルボード・アンテナ、パラボラ・アンテナ、ヘリカル・アンテナ、多アンテナ・アレイ、または、ディジタル・ビーム・アンテナとすることができる。
【0017】
一般に、航空機は、無線通信に対して著しい干渉または制約が潜在する環境の中で大量のデータを送信または受信することがある。請求項の範囲、解釈または適用を不当に制限することなく、航空機にダウンロードし、かつ航空機からアップロードするための帯域幅を最小化することもできる廉価なアンテナによって本開示に係る主題を用いることができる。空港の地上にある航空機と他の航空機の接続は、連続的なビーム偏向や非常に小刻みなステップでの精密なビーム偏向は必要としない。したがって、動力化ディッシュや位相アレイに代えて、たとえば、選択するべき多数の固定ビームをもつように表面集積された指向性スロット・アンテナを用いることができる。
図3に示されたもののような指向性スロット・アンテナは、低コストで配置することができる。指向性スロット・アンテナは、市販の多層ラミネート・プリント回路基板を用いて作製することができ、これにおいて、ポートおよびスロットのアレイ、伝送ラインおよび導波管、シフタ、スプリッタおよびカプラが多層プリント回路基板内に集積される。多数の固定ビームは、アンテナ・アッセンブリを回転させることなく、同時に形成することができる。アンテナの固定ビームの1つまたはそれ以上を選択することにより、単一の切り換え可能な通信リンク、または、多数の重なりのないリンクを確立することができる。プリント回路基板の材質は、搬送波周波数において、低い信号減衰(すなわち、低ロス)特性をもつことができる。この場合において、その動作周波数は、通常用いられ、豊富な世界的供給元を有するIEEE802.11バンド内とすることができる。
【0018】
図6および以下の説明は、本開示に係る方法およびシステム、および/または、その一部が実施されるのに適当な演算環境の概要の説明を意図したものである。いうまでもないが、本開示に係る方法およびシステムは、クライアント・ワークステーション、サーバ、パーソナル・コンピュータ、あるいはスマートフォンやタブレット・コンピュータのようなモバイル・コンピュータ装置といったコンピュータで実行されるプログラム・モジュールのような、コンピュータで実行可能な命令の一般的な文脈において説明される。一般的に、プログラム・モジュールは、特定のタスクを実行し、あるいは特定の抽象データ型を実施する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造およびこれに類するものを含む。さらに、本開示に係る方法およびシステム、および/または、その部分が、携帯装置、マルチ・プロセッサ・システム、マイクロプロセッサに基礎づけられた、またはプログラム可能な民生電子機器、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレーム・コンピュータおよびこれに類するものを含む、その他のコンピュータ・システム構成によって実施されうることは、いうまでもない。プロセッサは、単一チップ、マルチチップ、あるいは異なるアーキテクチャをもつ複数の電子コンポーネント上で実現することができる。本開示に係る方法およびシステムはまた、通信ネットワークを通じて連携された遠隔処理装置によってタスクが実行される、分散コンピュータ環境で実施することができる。分散コンピュータ環境において、プログラム・モジュールは、局所の記憶装置および遠隔の記憶装置のいずれにも設けることができる。
【0019】
図6は、本開示に係る方法およびシステムの各側面、および/または、その一部を組み込むことができる汎用コンピュータ・システムを表すブロック図である。図に示すように、この例示の汎用コンピュータ・システムは、処理部521、システム・メモリ522、および、上記システム・メモリを含む種々のシステム・コンポーネントを上記処理部521に連結するシステム・バス523を含む、コンピュータ520あるいはこれに類するものを含む。システム・バス523は、種々のバス・アーキテクチャのいずれかを用いるメモリ・バスまたはメモリ・コントローラ、周辺バス、および、ローカル・バスを含む、種々のタイプのバス構造のいずれであってもよい。システム・メモリは、リード・オンリー・メモリ(ROM)524、および、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)を含む。スタートアップ時のようなとき、コンピュータ520内の要素間の情報伝送を助力する基本ルーチンを含む基本入力/出力システム526(BIOS)は、ROM524に格納される。
【0020】
コンピュータ520はさらに、ハード・ディスク(図示せず)に読み書きを行うハード・ディスク・ドライブ527、着脱可能な磁気ディスク529に読み書きを行う磁気ディスク・ドライブ528、および、CD−ROMやその他の光媒体のような着脱可能な光ディスク531に読み書きを行う光ディスク・ドライブ530を含むことができる。ハード・ディスク・ドライブ527、磁気ディスク・ドライブ528および光ディスク・ドライブ530は、それぞれ、ハード・ディスク・ドライブ・インターフェース532、磁気ディスク・ドライブ・インターフェース533、および光ディスク・ドライブ・インターフェース534により、システム・バス523に接続される。
図6に示されていないが、ビーム制御、および、航空機へのおよび航空機からのデータ交換のための命令を扱うために、どのような適用可能な通信アンテナ駆動インターフェースをシステム・バス523に接続してもよい。上記各ドライブおよびそれらと協働するコンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ520のためのコンピュータ読み取り可能な指令、データ構造、プログラム・モジュールおよびその他のデータの不揮発性記憶装置を提供する。ここに説明するように、コンピュータ読み取り可能な媒体は、有形の、物理的な、かつ固形の製造物であり、したがって信号それ自体ではない。
【0021】
ここに説明した例示環境ではハード・ディスク、着脱可能な磁気ディスク529および着脱可能な光ディスク531を採用するが、コンピュータでアクセス可能なデータを格納することができる他のタイプのコンピュータ読み取り可能な媒体もまた例示の動作環境において使用しうることはいうまでもない。そのような他のタイプの媒体は、磁気カセット、フラッシュ・メモリ・カード、ディジタル・ビデオ・ディスクまたはバーサイル・ディスク、ベルヌーイ・カートリッジ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)およびこれに類するものを含むが、これらに限定されない。
【0022】
オペレーティング・システム535、上記したアンテナ・ビーム制御アルゴリズムを含むがこれに限定されない1またはそれ以上のアプリケーション・プログラム、他のプログラム・モジュール537およびプログラム・データ538を含む多くのプログラム・モジュールが、ハード・ディスク、磁気ディスク529、光ディスク531、ROM524またはRAM525に格納される。ユーザは、キーボード540およびポインティング・デバイス542のような入力装置を通じてコンピュータ520に命令および情報を入力することができる。他の入力装置(図示せず)は、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲーム・パッド、サテライト・ディスク、スキャナあるいはこれに類するものを含むことができる。これらのそしてその他の入力装置はしばしば、システム・バスに接続されるシリアルポート・インターフェース546を介して処理ユニット521に接続されるが、パラレル・ポート、ゲーム・ポートまたはユニバーサル・シリアル・バス(USB)のような他のインターフェースにより接続されてもよい。モニタ547またはその他のタイプの表示装置はまた、ビデオ・アダプタ548のようなインターフェースを介してシステム・バス523に接続される。モニタ547に加え、コンピュータは、スピーカおよびプリンタのようなその他の周辺出力装置(図示せず)を含むことができる。
図6の例示システムはまた、ホスト・アダプタ555、スモール・コンピュータ・システム・インターフェース(SCSI)バス556およびこのSCSIバス556に接続された外部記憶装置562を含む。
【0023】
空港において、航空会社のオペレーションセンターとこの航空会社の全航空機とを接続するために、適当なファイヤウォールが組み込まれ、かつその他のデータ保護手段の中でのコンピュータ520は、遠隔コンピュータ549のような1またはそれ以上の遠隔コンピュータとの論理接続を用いる安全なネットワーク環境において作動することができる。
図6にはメモリ記憶装置550のみが示されているが、遠隔コンピュータ549は、パーソナル・コンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、大容記憶装置をもつクラウドベース・コンピュータ、ピア装置またはその他の共有ネットワーク・ノードとすることができ、かつ、コンピュータ520に関連する上記した要素のすべてを含むことができる。
図6の論理接続は、すべてのバージョンの有線ネットワークおよび無線ネットワークを含む、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)551およびワイド・エリア・ネットワーク(WAN)を含む。このようなネットワーク環境は、オフィス、企業全体のコンピュータ・ネットワーク、イントラネットおよびインターネットにおける通常のものである。
【0024】
LANネットワーク環境で用いる場合、コンピュータ520は、ネットワーク・インターフェースまたはアダプタ553を通じてLAN551に接続される。WANネットワーク環境で用いる場合、コンピュータ520は、インターネットのような広域ネットワーク552での通信を確立するためのモデムまたはその他の手段を含むことができる。内蔵または外付けとすることができるモデム554は、シリアルポート・インターフェース546を介してシステム・バス523に接続される。ネットワーク環境において、コンピュータ520に関して表現されるプログラム・モジュールは、遠隔メモリ記憶装置に格納することができる。いうまでもなく、上記したネットワーク接続は例示であり、コンピュータ間の通信リンクを確立するその他の手段を用いることができる。
【0025】
コンピュータ520は、種々のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含むことができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータでアクセス可能などのような入手可能な媒体であってもよく、かつ、揮発性媒体と不揮発性媒体の双方、着脱可能媒体と着脱可能ではない媒体の双方を含む。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プラグラム・モジュールまたはその他のデータといった情報を格納するために、あらゆる方法または技術で実行される揮発性および不揮発性媒体の双方、着脱可能および着脱不可能媒体の双方を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリまたはその他のメモリ・テクノロジー、CD−ROM、ディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)またはその他の光ディスク記憶媒体、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶媒体あるいはその他の磁気記憶機器、あるいは、所望の情報の格納に用いることができ、かつ、コンピュータ520でアクセス可能なその他のどのような媒体も含むが、これに限定されない。上記のどのような組み合わせも本明細書で説明する方法およびシステムを実行するためのソース・コードの格納に用いることができるコンピュータ読み取り可能な媒体の範囲に含まれるべきである。本明細書に開示する特徴または要素のどの組み合わせも、1またはそれ以上の組み合わせにおいて用いることができる。
【0026】
本開示に係る主題の好ましい具体例を説明するにあたり、図に示すように、明快とするべく特定の用語が用いられている。請求項に記載した主題はしかしながら、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図しておらず、各特定の要素は同様の目的を達成するために同様の手法で作動するすべての技術的等価物を含むことが理解されよう。
【0027】
本明細書で記述した説明は、最良の形態を含み、また、装置またはシステムを作成するとともに使用し、かつ組み込まれた方法を実行することを含む本発明の実施をどの当業者にも可能とさせる、発明を開示するための例を用いている。本発明の特許性のある範囲は請求項により規定され、かつ当業者によって想起される他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが請求項の文言から異ならない構造上の要素をもつ場合、あるいは、それらが請求項の文言から実質的に相違する均等な構造上の要素を含む場合に、請求項の範囲内に入ることが意図されている。