(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6397971
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】踏切用フランジウェイの間詰構造
(51)【国際特許分類】
E01B 15/00 20060101AFI20180913BHJP
E01C 9/04 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
E01B15/00
E01C9/04
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-152823(P2017-152823)
(22)【出願日】2017年8月8日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】513013023
【氏名又は名称】宮坂 亮雪
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 亮雪
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−184570(JP,A)
【文献】
実公平04−049202(JP,Y2)
【文献】
特開平08−092902(JP,A)
【文献】
実開昭49−139704(JP,U)
【文献】
米国特許第3469783(US,A)
【文献】
独国特許発明第19859708(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 15/00
E01C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切における軌間内ブロックと軌条の間のフランジウェイにおける間詰構造であって、
前記軌間内ブロックと軌条との間に設置された中空状の弾性防護部材と、
前記弾性防護部材の上部で、前記軌間内ブロックから軌条に向かって配置されフランジウェイを覆う複合シール板と、を備え、
前記複合シール板は、硬質で折れ曲がり自在な可撓性の防護材と、少なくとも表面が前記防護材で覆われた鋼製の板ばねとを具備し、
前記板ばねの基端部が前記軌間内ブロックに取り付けられた支持部材に支持されたことを特徴とする踏切用フランジウェイにおける間詰構造。
【請求項2】
請求項1記載の踏切用フランジウェイにおける間詰構造であって、
板ばねは、中間部の裏面側に、折れ曲がり用の溝部が軌条の長さ方向に沿って形成された
ことを特徴とする踏切用フランジウェイにおける間詰構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の踏切用フランジウェイにおける間詰構造であって、
複合シール板は、表面に防護材が配置され、前記防護材の裏面に板ばねが配置された
ことを特徴とする踏切用フランジウェイにおける間詰構造。
【請求項4】
請求項1または2記載の踏切用フランジウェイにおける間詰構造であって、
複合シール板は、防護材内に板ばねが内装された
ことを特徴とする踏切用フランジウェイにおける間詰構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用軌条やクレーン等産業用の台車軌条と、人や車両が通行する道路との踏切において、軌条と路面の間で軌条車両の車輪フランジが通過するフランジウェイにおける間詰構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フランジウェイを閉塞する防護材として、ゴム等の弾性材により形成され、断面が略台形で中空部を有する筒状材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−254303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フランジウェイでは、軌条車両が通過する度に複数の車輪フランジで筒状材が押圧されて圧縮変形される。このため、筒状材の復元性や強度、耐久性が要求される。またフランジウェイ内に筒状材が露出しており、日光や風雨に直接晒されることから、十分な対候性が必要となる。しかしながら、引用文献1に開示された筒状材は、設置時間の経過とともに劣化が進み、復元性や強度が減少して耐久性が低くなることが推測される。そして筒状材の部分的な欠損は、歩行者等の事故につながるおそれがある。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、十分な復元性と耐久性が得られる踏切用フランジウェイの間詰構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、踏切における軌間内ブロックと軌条の間のフランジウェイにおける間詰構造であって、前記軌間内ブロックと軌条との間に設置された中空状の弾性防護部材と、前記弾性防護部材の上部で、前記軌間内ブロックから軌条に向かって配置されフランジウェイを覆う複合シール板と、を備え、前記複合シール板は、硬質で折れ曲がり自在な可撓性の防護材と、少なくとも表面が前記防護材で覆われた鋼製の板ばねとを具備し、前記板ばねの基端部が前記軌間内ブロックに取り付けられた支持部材に支持されたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、軌条を通過する車輪フランジにより、複合シール板の先端側が押し下げられて板ばねの先端側が下方に折り曲げられるとともに、弾性防護部材が下方に押圧されて圧縮変形される。したがって、板ばねにより複合シール板が元の形状に安定して復元される。また複合シール板により弾性防護部材が覆われることから弾性防護部材の対候性が大幅に向上される。さらに板ばねの表面が防護材に覆われているので、板ばねに錆も発生しにくく、板ばねが直接車輪フランジに接触して摩耗することもない。
【0008】
また上記構成において、板ばねは、中間部の裏面側に、折れ曲がり用の溝部が軌条の長さ方向に沿って形成されることが好ましい。上記構成によれば、溝部により板ばねが一定位置で安定して折り曲げられる。
【0009】
さらに上記構成において、複合シール板は、表面に防護材が配置され、前記防護材の裏面に板ばねが配置されることが好ましい。
【0010】
さらにまた上記構成において、複合シール板は、防護材内に板ばねが内装されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、十分な復元性と強度が得られる踏切用フランジウェイの間詰構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る踏切用フランジウェイの間詰構造の実施例1を示し、車輪フランジ通過時を示す踏切軌条の横断面図である。
【
図5】複合シール板の実施例2を示す横断面図である。
【
図6】車輪フランジ通過時を示す複合シール板の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0014】
図4に示すように、踏切10内で、左右一対の軌条11間内に起間内ブロック12が設置されている。そして、軌条11に対向する起間内ブロック12の縁部には、アングル状のガードレール13が固着されている。そして軌条11と起間内ブロック12の間に、車輪フランジWFが通過するフランジウェイ14が形成されている。また踏切10内で軌条11の外側に起間外ブロック15がそれぞれ設置されている。
【0015】
図2,
図3に示すように、起間内ブロック12と起間外ブロック15の間のレール締結溝16には、タイプレートパット17を介してタイプレート18が設置され、タイプレート18は、両縁部に貫入したくさび19によりレール締結溝16内に固定されている。さらにタイプレート18の表面にレールパット20を介して軌条11が配置され、左右のレール固定具21A,21Bにより下フランジを介して軌条11がレールパット20上に固定されている。
【0016】
左右のレール固定具21A,21Bは、ボルト・ナットによりクリップを介して軌条11の下フランジおよびレールパット20を固定するもので、クリップとナットの間でボルト部分にV形ばねやコイルばね等が介在される。
【0017】
軌条11と起間外ブロック15との間には、裏面が開放された略チャンネル形断面の閉塞材31が設置され、閉塞材31内に間隔保持板32が内装されている。なお、レール固定具21A,21B周辺のハッチング部分は、充填材を示す。
【0018】
フランジウェイ14を埋める間詰材は、固定具21Aの上部に設置されてゴムや樹脂からなる中空状の弾性防護部材22と、弾性防護部材22の表面側で、軌間内ブロック12から軌条11に向かって水平に突出されて先端部が軌条11に接近されフランジウェイ14を覆う複合シール板23と、を備えている。複合シール板23は、硬質で折れ曲がり自在な可撓性の板状の防護材24と、防護材24の裏面に配置された鋼製で平坦な板ばね25とを具備している。また軌間内ブロック12のガードレール13に支持部材26が溶接などにより突設されている。この支持部材26に、皿ビスなど取り外し可能な複数の連結具27により、板ばね25の基端部が支持されている。複合シール板23は、軌間内ブロック12の表面と軌条11の上フランジが面一となるように配置されてフランジウェイ14が覆われている。そして防護材24は、踏切の横断車両や車輪フランジWFの加圧接触に対して十分な耐久性を有して減耗も少なく、かつ対候性を有して折れ曲がり可能な硬質の材料、たとえばウレタンゴムなどの合成ゴムや樹脂から選択される。また防護材24および板ばね25の各裏面の中間部で支持部材26より先端側に、折れ曲がりを許容するための折れ曲がり用の溝部24a,25aが軌条11の長さ方向に沿って形成されている。なお、この複合シール板23は、通行人や横断車両の荷重で折れ曲がることはないが、軌条車両の車輪Wが軌条11を通過する際に車輪フランジWFによる荷重で折れ曲がるように設計されている。さらにまた、板ばね25の先端部は、防護材24の先端部より十分に後退位置にあり、車輪フランジWFが板ばね25に直接接触するのを回避することができる。ここで、弾性防護部材22および複合シール板23は、フランジウェイ14の長さ方向の全長にわたって連続するように説明したが、複数の弾性防護部材22および複数の複合シール板23をそれぞれ互いに連結したものであってもよい。
【0019】
上記構成において、踏切10で軌条11と起間外ブロック15の間のレール締結溝16が閉塞部材31により閉塞されるとともに、フランジウェイ14が弾性防護部材22および複合シール板23に覆われることで、通行人や起動車両を安全に横断させることができる。また、フランジウェイ14が複合シール板23に覆われることにより、弾性防護部材22に対して、直射日光が遮られるとともに、直接風雨に晒されるのが未然に防止されるので、弾性防護部材22の長寿命化を図ることができる。さらに、軌条車両が軌条11に沿って通過し、車輪フランジWFがフランジウェイ14に沿って移動すると、車輪フランジWFの外周部が複合シール板23の先端側表面に当接して押し下げつつ複合シール板23の表面を転動する。これにより複合シール板23は、防護板24および板ばね24の先端側が溝部24a,25aを中心としてそれぞれ下方に折り曲げられ、さらに複合シール板23に押圧されて弾性防護部材22が加圧変形される。これにより、車輪フランジWFがフランジウェイ14を通過する。車輪フランジWFがフランジウェイ14を通過し終わると、複合シール板23は、弾性防護部材22および板ばね25の弾性により元の姿勢に復帰される。
【0020】
上記実施例1によれば、軌条11を通過する車輪フランジWFにより、複合シール板23が押圧されて先端側が下方に折り曲げられ、さらに複合シール板23により弾性防護部材22が圧縮変形される。車輪フランジWFの通過後に、板ばね25が複合シール板23を復元させるので、復元性が大きく向上される。また弾性防護部材22は、複合シール板23に覆われるので、直射日光に直接晒されることがなく、耐久性を大幅に向上させることができる。さらに複合シール板23では、板ばね25が防護材24で覆われているので、板ばね25の車輪フランジWFへの接触が回避され、またさびの発生を防止することができる。さらに防護材24および板ばね25に、折れ曲がり用の溝部24a,25aを軌条11の長さ方向に沿って形成したので、車輪フランジWFにより、複合シール板23の先端側を下方に一定位置で安定して折り曲げることができる。
【0021】
[実施例2]
実施例1では、複合シール板23は、板ばね25の表面に防護材24が取り付けられていたが、実施例2では板ばね25を防護材24内に一体成形で内装したものである。
図5および
図6を参照して、実施例2を説明する。なお、実施例1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
図5に示すように、複合シール板43は、一体成形により、所定の厚みを有する板状の防護材44の裏面寄りに板ばね45が内装されている。また防護材44の裏面側に、折り曲げ用溝部44aが形成されている。さらに防護材44の裏面側に、板ばね45を露出させる切り欠き部44bが形成されている。なお、図では防護材44裏面の折り曲げ用溝部44aと切り欠き部44bが連続して形成されているが、それぞれ独立して形成してもよい。これにより、支持部材26に防護材44の切り欠き部44bを介して直接板ばね45を配置し、連結具27を使用して板ばね45を支持部材26に直接固定することができる。
【0023】
上記実施例2によれば、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0024】
なお、防護材44と板ばね45とを一体成形したが、防護材44と板ばね45を別々に成形し、防護材44に形成した装着孔内に板ばね45を嵌合して一体化してもよい。
【符号の説明】
【0025】
W 車輪
WF 車輪フランジ
11 軌条
12 起間内ブロック
13 ガードレール
14 フランジウェイ
16 レール締結溝
21A,21B レール固定具
22 弾性防護部材
23,43 複合シール板
24,44 防護材
24a 折れ曲がり用溝部
44a 折れ曲がり用溝部
25,45 板ばね
25a 折れ曲がり用溝部
26 支持部材
27 連結具
【要約】
【課題】十分な復元性と耐久性が得られる踏切用フランジウェイの間詰構造を提供する。
【解決手段】軌間内ブロック12と軌条11との間に設置された中空状の弾性防護部材22と、弾性防護部材22の上部で、軌間内ブロック12の上辺端縁部から軌条11に向かって配置されフランジウェイ14を覆う複合シール板23と、を備え、複合シール板23は、硬質で折れ曲がり自在な可撓性の防護材24と、表面が防護材24で覆われた鋼製の板ばね25とを具備し、板ばね25の基端部が軌間内ブロック12に取り付けられた支持部材26に支持された。
【選択図】
図1