(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ブローバイガスがフィルタ本体を通過すると、フィルタ本体からオイルの飛沫が飛散する。また、捕捉されたオイルがハウジングの底に貯留されて、フィルタ本体がオイルに浸漬すると、フィルタ本体を通過したブローバイガスがオイル中で気泡となり、気泡がオイルの液面から吹き出る際にオイルの飛沫が飛散する。
そのため、飛び散ったオイル飛沫がブローバイガスとともにオイルセパレータの下流へ送られてしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、オイル飛沫が下流へ送られないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するためのオイルミストフィルタは、筒状に設けられ、その中空に供給された処理対象ガスを外周面に通過させ、その処理対象ガスに含まれるオイルミストを捕捉するフィルタ本体と、前記フィルタ本体の一方の端面に設けられ、前記フィルタ本体の一方の端面の外周縁から外方にはみ出たエンドプレートと、を備え、前記エンドプレートのうち前記フィルタ本体の一方の端面の外周縁からはみ出た部位に複数の通気孔が形成され、前記フィルタ本体の外周面から吹き出た処理対象ガスが前記通気孔を通過する。
【0007】
また、オイルセパレータが、前記オイルミストフィルタと、前記オイルミストフィルタを収容したハウジングと、を備え、前記ハウジングが、開口を有した箱状のケースと、開口を有した箱状のカバーと、を有し、前記ケースの開口と前記カバーの開口が向き合って、前記ケースの開口の縁部と前記カバーの開口の縁部とがこれらの間に前記エンドプレートの周縁部を挟み込んだ状態で突き合わせられることによって、前記ハウジングの内部空間が形成され、前記ハウジングの内部空間が前記エンドプレートによって二つの領域に区切られ、前記フィルタ本体が前記二つの領域のうちの一方の領域に収容される。
【0008】
フィルタ本体の内側に送られた処理対象ガスがフィルタ本体の外周面へ通過する際に、フィルタ本体に捕捉されたオイルがフィルタ本体の外周面から吹き出ても、そのオイルがエンドプレートのうちフィルタ本体の一方の端面の外周縁から外方にはみ出た部位に受け止められ、そのオイルが通気孔を通過しない。よって、通気孔から下流へ流れる処理対象ガスにはオイルが殆ど含まれず、オイルセパレータのオイル分離効率が高い。
【0009】
前述のオイルミストフィルタにおいて、前記エンドプレートのうち前記フィルタ本体の一方の端面の外周縁からはみ出た部位が前記フィルタ本体の他方の端面側へ傾斜している。
【0010】
従って、エンドプレートのうちフィルタ本体の一方の端面の外周縁からはみ出た部位よりもフィルタの一方の端面側にスペースを確保することができる。
【0011】
前述のオイルミストフィルタが、前記エンドプレートの周縁部に設けられたガスケットを更に備える。
【0012】
従って、エンドプレート及びフィルタ本体の交換の際に、ガスケットも一緒に交換することができ、オイルミストフィルタの交換作業が容易となる。
【0013】
前述のオイルミストフィルタが、前記フィルタ本体の他方の端面に設けられた第二エンドプレートを更に備え、前記第二エンドプレートにガス導入孔が形成され、そのガス導入孔が前記フィルタ本体の中空に連通する。
【0014】
従って、フィルタの他方の端面から処理対象ガス及びオイルが吹き出ることを防止することができる。
【0015】
前述のオイルミストフィルタが、前記フィルタ本体の内周面に沿って設けられた格子状のフレームを更に備える。
【0016】
従って、フィルタ本体がフレームによって支持され、フィルタ本体の形状が崩れること等を防止することができる。
【0017】
前述のオイルセパレータが、前記ハウジングに設けられ、オイルミストを含有する処理対象ガスを前記ハウジングの外側から前記フィルタ本体の中空に導入するガス導入流路と、前記ハウジングに設けられ、前記ガス導入流路から分岐して前記一方の領域のうち前記フィルタ本体の外周面の外側にまで設けられたバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられ、前記ガス導入流路に導入される処理対象ガスの圧力が所定閾値未満である場合に前記バイパス流路を閉塞し、前記ガス導入流路に導入される処理対象ガスの圧力が前記所定閾値以上である場合に前記バイパス流路を開放するリリーフバルブと、前記二つの領域のうちの他方の領域において前記ハウジングに設けられ、前記他方の領域から処理対象ガスを排出させるガス排出部と、を更に備える。
【0018】
従って、フィルタ本体の目詰まり等が発生しても、処理対象ガスがバイパス流路を通ってガス排出部に流れる。よって、処理対象ガスの流れが止まるようなことを防止することができる。
【0019】
前述のオイルセパレータが、前記ハウジングに設けられ、前記ガス導入流路から分岐して前記一方の領域にまで設けられたオイルドレイン流路と、前記オイルドレイン流路に設けられ、前記ガス導入流路に導入される処理対象ガスの圧力によって前記オイルドレイン流路を閉塞し、前記ガス導入流路に処理対象ガスが導入されない場合に前記オイルドレイン流路を開放するアンチドレイン弁と、を更に備える。
【0020】
従って、処理対象ガスがガス導入流路に送られている場合、オイルドレイン流路がアンチドレイン弁により閉塞されることによって、ハウジング内のオイルがガス導入流路に流れない。そのため、ガス導入流路を通ってフィルタ本体の内側に流れる処理対象ガスがガス導入流路内においてオイルと接触することを防止することができる。よって、このオイルセパレータによるオイルの分離効率が高い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィルタ本体の外周面からオイルが吹き出ても、そのオイルがエンドプレートのうちフィルタ本体の一方の端面の外周縁から外方にはみ出た部位に受け止められるため、通気孔から下流へ流れる処理対象ガスにはオイルが殆ど含まれない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているので、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0024】
〔第一の実施の形態〕
図1〜
図4に示すオイルミストフィルタ10は、オイルセパレータ(ミストエリミネータ)に利用されるフィルタエレメントである。オイルセパレータのハウジングに取り付けられたオイルミストフィルタ10が劣化等した場合に、オイルセパレータのハウジングに取り付けられたオイルミストフィルタ10を新たなオイルミストフィルタ10に交換する。従って、オイルミストフィルタ10は消耗品である。
【0025】
オイルミストフィルタ10はフィルタ本体11、第一エンドプレート12、第二エンドプレート13、フレーム(骨格部材)14及びガスケット15等を備える。このオイルミストフィルタ10がアセンブリー(組立品)である。つまり、フィルタ本体11、第一エンドプレート12、第二エンドプレート13、フレーム14及びガスケット15が組み合わされ、これらの部品11〜15の集合体がオイルミストフィルタ10である。
【0026】
フィルタ本体11は中空柱状(より具体的には、長円筒状)の外観をしており、フィルタ本体11の中心部が空間とされ、その内部空間がフィルタ本体11の上端及び下端において開放されている。フィルタ本体11は多孔質材からなり、より具体的には不織布からなる。
【0027】
フィルタ本体11の内側には格子状のフレーム14が収容されている。このフレーム14はフィルタ本体11の内周面に沿って設けられ、フィルタ本体11はフレーム14によって内側から支持されている。
【0028】
フレーム14の上端には第一エンドプレート12が連結され、フレーム14の下端には第二エンドプレート13が連結され、第一エンドプレート12と第二エンドプレート13の間の間隔がフレーム14によって確保されている。そして、フィルタ本体11は第一エンドプレート12と第二エンドプレート13との間に挟まれている。
【0029】
第二エンドプレート13の上面の外周縁には、外周リブ13aが上方へ突出するよう設けられている。第二エンドプレート13の上面であって外周リブ13aの内側には、内周リブ13bが上方へ突出するように設けられている。従って、これら外周リブ13a及び内周リブ13bの間には、凹状部が形成されている。
【0030】
フィルタ本体11の下端部が外周リブ13aと内周リブ13bとの間に嵌め込まれ、フィルタ本体11の下端面が第二エンドプレート13の上面に当接する。フィルタ本体11の下端面が第二エンドプレート13の上面に粘着剤又は接着剤等によって接合されてもよい。
内周リブ13bに沿ってフレーム14が設けられ、フレーム14の下端部が内周リブ13bに係合する。そして、内周リブ13bがフィルタ本体11の下側開口に挿入され、フレーム14の下端部が内周リブ13bとフィルタ本体11の外周面との間に挟まれている。
【0031】
第二エンドプレート13のうち内周リブ13bよりも内側の部位には、ガス導入孔13cが第二エンドプレート13を上下に貫通するように形成されている。フィルタ本体11の内部空間がガス導入孔13cによって第二エンドプレート13よりも下側の空間に通じる。
【0032】
第一エンドプレート12の下面の中央部には、長円状のリブ12aが下方へ突出するように設けられている。リブ12aの位置は第一エンドプレート12の外周縁よりも内側である。リブ12aよりも外側において第一エンドプレート12が下方に曲折されることによって、その位置には、下から見て枠状の段差部12bが形成されている。従って、これら段差部12b及びリブ12aの間には、凹状部が形成されている。その凹状部には、フィルタ本体11の上端部が嵌められている。段差部12bとリブ12aの間の凹状部内において、フィルタ本体11の上端面が第一エンドプレート12の下面に当接する。フィルタ本体11の上端面が第一エンドプレート12の下面に粘着剤又は接着剤等によって接合されてもよい。
【0033】
リブ12aに沿ってフレーム14が設けられ、フレーム14の上端部がリブ12aに係合する。更に、リブ12aがフィルタ本体11の上側開口に挿入され、フレーム14の上端部がリブ12aとフィルタ本体11の外周面との間に挟まれている。
【0034】
第一エンドプレート12のサイズがフィルタ本体11の上端面のサイズよりも大きく、第一エンドプレート12の外周部12c(段差部12bよりも外側の部位)がフィルタ本体11の上端面の外周縁から外方へはみ出ている。以下、第一エンドプレート12の外周部12c、つまり、フィルタ本体11の上端面の外周縁からはみ出た部位を鍔部12cという。
【0035】
鍔部12cは、段差部12bの下端部から外方に広がるように設けられている。そして、鍔部12cは、フィルタ本体11の上端面に対して、フィルタ本体11の上端面側から下端面側へ傾斜する。つまり、鍔部12cは外方に向けて下りに傾斜する。フィルタ本体11の上端面に対する鍔部12cの傾斜角は一様ではない。具体的には、フィルタ本体11の長径方向一端側からフィルタ本体11の外周に沿ってフィルタ本体11の長径方向他端側に近づくにつれて、鍔部12cの勾配が大きくなる。
【0036】
鍔部12cに複数の通気孔12dが形成され、これら通気孔12dが鍔部12cを上下に貫通する。これら通気孔12dが分布する領域は、鍔部12cのうち勾配が比較的緩やかな領域である。通気孔12dの開口面積は第二エンドプレート13のガス導入孔13cの開口面積よりも小さい。
【0037】
鍔部12cの周縁部には、リング状のガスケット15が取り付けられている。具体的には、ガスケット15の内周面に装着凹部がガスケット15の周方向に沿って形成されることによって、ガスケット15の断面形状が横U字型となっており、鍔部12cの周縁部が装着凹部に嵌め込まれている。ガスケット15が第一エンドプレート12に組み付けられているので、第一エンドプレート12と一緒にガスケット15の取り付け・取り外しをすることができる。それゆえ、オイルミストフィルタ10の交換・取付作業が容易となる。
【0038】
以上のように構成されたオイルミストフィルタ10がオイルセパレータのハウジングに組み込まれた状態では、鍔部12cの周縁部及びガスケット15がケース等によって上下に挟まれ、第一エンドプレート12よりも上側の空間と下側の空間が第一エンドプレート12によって上下に区切られる。
【0039】
オイルミストを含有した処理対象ガス(例えば、ブローバイガス)は、第二エンドプレート13の下からガス導入孔13cを通ってフィルタ本体11の内側に流れ込む。そして、処理対象ガスがフィルタ本体11の内周面から外周面に通過する際に、オイルミストがフィルタ本体11によって捕捉される。そのため、処理対象ガスからオイルミストが分離される。フィルタ本体11の外周面から吹き出た処理対象ガスが通気孔12dを通って第一エンドプレート12の上に流れる。
【0040】
フィルタ本体11に捕捉されたオイルの飛沫がフィルタ本体11の外周面等から飛び散ることがある。また、フィルタ本体11の下部がオイルに浸漬している場合、フィルタ本体11から吹き出た処理対象ガスがオイル中で気泡となり、その気泡がオイルの液面から吹き出る際にオイルの飛沫が発生することがある。そのような場合でも、オイルの飛沫が第一エンドプレート12の鍔部12cによって受け止められ、オイルの飛沫が通気孔12dを通過しない。よって、オイルミストフィルタ10のミスト捕捉効率が高い。
【0041】
第一エンドプレート12の中央部がフィルタ本体11の上端面に接合されているため、処理対象ガス及びオイルがフィルタ本体11の上端面から吹き出ない。フィルタ本体11の下端面についても同様である。
【0042】
なお、上述の実施の形態では、ガス導入孔13cが第二エンドプレート13に形成されていた。それに対して、第一エンドプレート12の中央部にガス導入孔が形成されてもよいし、両方のエンドプレート12,13にそれぞれガス導入孔が形成されてもよい。
【0043】
〔第二の実施の形態〕
図5〜12を参照して、上述のオイルミストフィルタ10を利用したオイルセパレータ3について説明するとともに。そのオイルセパレータを利用した直上式換気システム1について説明する。
【0044】
図5に示す直上式換気システム1はブリーザーパイプ2及びオイルセパレータ3等を備える。オイルセパレータ3が横置きされた状態でエンジン4の上面に取り付けられている。また、オイルセパレータ3とエンジン4がブリーザーパイプ2及び吸気側流路5によって接続されている。
【0045】
エンジン4内のブローバイガス(オイルミスト含有ガス)がオイルセパレータ3に流入する。そして、そのブローバイガス中のオイルミストがオイルセパレータ3によって分離されて、回収される。オイルミスト分離後のブローバイガスがオイルセパレータ3から排出されて、ブリーザーパイプ2を通じて吸気側流路5に送られる。そして、エアフィルタ6から吸気側流路5に送られた新鮮な空気とブローバイガスが混合され、その混合ガスがターボチャージャー7によって圧縮される。その後、ターボチャージャー7によって圧縮された混合ガスがチャージクーラ8によって冷却され、冷却された混合ガスがエンジン4に供給される。これにより、オイルが除去されたブローバイガスがエンジン4に還元される。
【0046】
エンジン4の動作中は、オイルセパレータ3によって回収されたオイルがオイルセパレータ3内に貯留される。一方、エンジン4が停止した際には、オイルセパレータ3によって回収されたオイルがエンジン4に戻される。
【0047】
図6〜
図9に示すように、オイルセパレータ3はオイルミストフィルタ10、ケース20、カバー30、PCVバルブ40、PCVカバー50、バルブケース部材60、リリーフバルブ70及びアンチドレイン弁80等を備える。
【0048】
このケース20は、上面が開放された箱状部材によって構成されている。カバー30は、下面が開放された箱状部材によって構成されている。ケース20の上側開口とカバー30の下側開口が向き合って、ケース20の上側開口の縁部(ケース20の上端面)とカバー30の下側開口の縁部(カバー30の下端面)が突き合わせられている。カバー30がケース20に組み合わせられることによってハウジング90が組み立てられ、そのハウジング90の内側に内部空間が形成される。
【0049】
カバー30の側面には、円筒状のガス排出部33が側方に向けて突出するように設けられている。このガス排出部33がブリーザーパイプ2に接続され、オイルミストが除去された処理済みのブローバイガスがカバー30内からガス排出部33を通ってブリーザーパイプ2に排出される。
【0050】
図10及び
図11に示すように、カバー30の下側開口の周縁には、リング状の段凹部32が形成されている。カバー30がオイルミストフィルタ10の第一エンドプレート12に覆い被さって、第一エンドプレート12の鍔部12cの周縁部及びガスケット15が段凹部32に嵌まっている。ケース20の上端もガスケット15の下から段凹部32に嵌まり、鍔部12cの周縁部及びガスケット15が段凹部32の段面とケース20の上端面との間に挟持されている。これによりオイルミストフィルタ10がケース20及びカバー30に取り付けられ、オイルミストフィルタ10のフィルタ本体11、第一エンドプレート12、第二エンドプレート13及びフレーム14がケース20及びカバー30の内部空間に収容される。
【0051】
オイルミストフィルタ10がケース20及びカバー30に取り付けられた状態では、ガス排出部33が第一エンドプレート12の周縁部よりも上側に位置する。また、第一エンドプレート12の鍔部12cがフィルタ本体11の下端面側へ傾斜しているので、第一エンドプレート12の中央部がカバー30の天板部の近くに配置されても、鍔部12cの上側のスペース38が形成される(
図10参照)。特に、鍔部12cのうち複数の通気孔12dが形成されている領域の上側では、スペース38が大きくなっている。
【0052】
図6及び
図8に示すように、ケース20とカバー30の固定はボルト39によってなされている。具体的には、ケース20の外周面の上端よりも僅かに下の位置に突縁21が設けられ、カバー30の外周面の下端部に突縁31が設けられ、これら突縁21と突縁31が突き合わせられて、これら突縁21,31がボルト39によって互いに締結される。ボルト39の締結を解除すれば、ケース20とカバー30を分離することができる。
【0053】
図6、
図10及び
図11に示すように、ケース20の内側の底面には、第一収容凹部22及び第二収容凹部23が形成されている。第一収容凹部22がケース20内の底面のほぼ中央部に位置し、第二収容凹部23が第一収容凹部22に近接する。また、ケース20内の底面には、リング状の弁座24が突出するように設けられている。この弁座24は第一収容凹部22及び第二収容凹部23に近接する。第二収容凹部23及び弁座24は、鍔部12cのうち通気孔12dが形成された領域の下方に配される。
【0054】
ケース20の下面には連結パイプ部25が下方に突出するように設けられている。連結パイプ部25が第二収容凹部23及び弁座24の直下に配され、上下方向に見て、第二収容凹部23及び弁座24が連結パイプ部25に重なる。連結パイプ部25の径は弁座24の直径及び第二収容凹部23の直径よりも大きい。また、上下方向に見て、第一収容凹部22と連結パイプ部25が部分的に重なる。
【0055】
この連結パイプ部25がエンジン4の上面に連結されている。連結パイプ部25の外周面にはリング状のシール27が設けられ、これにより気密性が保たれている。
【0056】
図6、
図7及び
図9に示すように、第一収容凹部22の内周面のうち第二収容凹部23及び弁座24寄りの部位には、インレット孔26が形成されている。インレット孔26は、第一収容凹部22の内周面から、ケース20の外面のうち連結パイプ部25内側の部位にまで通じている。このインレット孔26は、オイルミストを含むブローバイガスをハウジング90内に取り込む入り口である。
【0057】
図6、
図10及び
図12に示すように、第一収容凹部22がPCVカバー50によって覆われ、PCVカバー50の周縁部が第一収容凹部22の周辺においてケース20の底面に気密状態に取り付けられている。このPCVカバー50の上面の中央部には、凸部51が形成されている。そして、連通孔52が凸部51の頭頂面からPCVカバー50の下面にまで貫通する。PCVカバー50の凸部51がガス導入孔13cに嵌め込まれており、連通孔52がフィルタ本体11の内部空間に通じている。連通孔52は、ブローバイガスを第一収容凹部22内からフィルタ本体11の内部空間へ流動させるためのものである。ここで、
図12では、ケース20の内側を見やすくするために、カバー30及びオイルミストフィルタ10がケース20から取り外された状態が示されている。
【0058】
第二エンドプレート13はPCVカバー50によって下から支持されている。そのため、第二エンドプレート13は第一収容凹部22の底面から離れている。
【0059】
PCVカバー50の下であって第一収容凹部22内には、PCVバルブ40が取り付けられている。PCVバルブ40は、ブローバイガスの流量を調整することによって、エンジン4の吸気圧力やクランクケース側の圧力を適切に調整する。具体的には、PCVバルブ40は、PCVカバー50の連通孔52の開き具合を調整することによってブローバイガスの流量を調整する。
【0060】
PCVバルブ40はダイヤフラム41、上側スプリング42及び下側スプリング43を備える。
ダイヤフラム41は、円盤状の弁体であり、ゴムと樹脂を成形することで作製されている。このダイヤフラム41は、第一収容凹部22の底面に取り付けられている。具体的には、第一収容凹部22内の底面にリング状の台座部28が凸状に設けられ、ダイヤフラム41の周縁部が台座部28に取り付けられている。よって、第一収容凹部22内の空間がダイヤフラム41によってダイヤフラム41の下側の空間とダイヤフラム41の上側の空間に仕切られている。
【0061】
図6、
図7、
図9及び
図10に示すように、第一収容凹部22の底面には調圧孔29が形成されている。その調圧孔29は台座部28よりも内側に配されているとともに、連結パイプ部25の外側に配されている。よって、ダイヤフラム41の下側の空間が調圧孔29によって大気圧とされている。
一方、インレット孔26が台座部28よりも外側に配置されており、ダイヤフラム41の上側の空間がインレット孔26によって連結パイプ部25の内側に連通する。
【0062】
図10に示すように、上側スプリング42及び下側スプリング43は、ダイヤフラム41の中央部を上下方向に移動可能な状態で支持するための弾性部材である。上側スプリング42は、ダイヤフラム41の中央部の上方においてダイヤフラム41とPCVカバー50との間に挟まれている。下側スプリング43は、ダイヤフラム41の中央部の下方においてダイヤフラム41と第一収容凹部22の底面との間に挟まれている。そして、これらの上側スプリング42と下側スプリング43がこれらの間にダイヤフラム41を挟み込んで、ダイヤフラム41が上側スプリング42及び下側スプリング43によって移動可能な状態で支持されている。
【0063】
図6、
図11及び
図12に示すように、バルブケース部材60がケース20内に取り付けられている。バルブケース部材60は弁箱部61、弁ガイド部65及び弁座67を有し、これら弁箱部61、弁ガイド部65及び弁座67が一体成形されることによってバルブケース部材60が構成される。
【0064】
弁箱部61は、上端が閉塞されているとともに下端が開放された筒状に設けられている。弁箱部61の下端には、弁箱部61の内周面から外周面にまで通じた切欠き状のガス逃し部62が形成されている。弁箱部61の下側開口が弁座24の上端面に形成された開口部24aに対向し、弁箱部61の下端面が弁座24に当接し、弁箱部61がケース20に固定されている。そして、弁座24の開口部24aはケース20の下面のうち連結パイプ部25内側の部位にまで貫通している。
【0065】
弁箱部61内には、リリーフバルブ70が取り付けられている。このリリーフバルブ70は、連結パイプ部25内の圧力が所定閾値未満である場合に開口部24aを閉塞するとともに、連結パイプ部25内の圧力が所定閾値以上である場合に開口部24aを開放する。ここで、リリーフバルブ70は弁体71及び付勢スプリング72を有する。弁体71が弁箱部61内に収容されている。弁体71が弁箱部61の内周面によって上下に案内される。弁体71と弁箱部61の天井部との間には、付勢スプリング72が挟まれている。付勢スプリング72が上下に圧縮された状態とされ、付勢スプリング72の弾性力によって弁体71が弁座24に押し付けられており、これにより開口部24aが弁体71によって閉塞されている。
【0066】
弁箱部61の下端の一部には、弁ガイド部65の上端の一部が連結されている。弁ガイド部65が筒状に設けられている。弁ガイド部65の軸線が弁箱部61の軸線からずれている。弁ガイド部65内に弁座67が設けられ、弁ガイド部65の内部空間が弁座67によって上下に仕切られている。弁ガイド部65が第二収容凹部23に嵌め込まれている。弁ガイド部65がケース20の内の底面よりも上に突き出ておらず、弁ガイド部65の上端面がケース20の内の底面に揃っているか、又はその底面よりも低い位置にある。
【0067】
弁ガイド部65の下端には、弁ガイド部65の内周面から外周面にまで通じた切欠き状のオイル逃し部66が形成されている。一方、第二収容凹部23の内周面にはオイル排出口23bが形成されている。オイル排出口23bは、第二収容凹部23の内周面から、ケース20の外面のうち連結パイプ部25内側の部位にまで通じている。そして、オイル排出口23bがオイル逃し部66に重なっている。
【0068】
弁座67の中央部には、棒通し穴68が弁座67を上下に貫通するように形成されている。棒通し穴68の周囲には複数のドレイン孔69が形成され、これらドレイン孔69が弁座67を上下に貫通する。一方、第二収容凹部23の底面の中央部には、オイル排出口23aが形成されている。
【0069】
弁ガイド部65の内部空間のうち弁座67よりも下側の領域には、アンチドレイン弁80が設けられている。このアンチドレイン弁80は、エンジン4の動作中の連結パイプ部25内の圧力によってドレイン孔69を閉塞するとともに、エンジン4の停止中にドレイン孔69を開放する。
【0070】
アンチドレイン弁80はゴム弾性体の弁体81、弁棒82及び弁棒83を有する。弁体81が円盤状に形作られている。弁棒82が弁体81の上面の中央部に立てた状態に設けられ、弁棒83が弁体81の下面の中央部に立てた状態に設けられている。弁体81が弁ガイド部65の内部空間のうち弁座67よりも下側の領域に収容され、弁棒82が棒通し穴68に嵌め込まれることによって弁座67に取り付けられている。これにより、弁体81が弁座67の下面に当接し、複数のドレイン孔69が弁体81によって閉塞される。一方、弁体81が曲げの弾性変形することによって、弁体81が弁座67の下面から離れ、複数のドレイン孔69が開放される。
【0071】
以上のようにPCVカバー50がハウジング90に組み付けられることによって、ハウジング90の外からフィルタ本体11の中空にまで通じるガス導入流路が形成される。このガス導入流路は、連結パイプ部25の内部空間からインレット孔26及び第一収容凹部22(特に、PCVカバー50とダイヤフラム41との間の空間)を経由して連通孔52までの流路である。そのガス導入流路にPCVバルブ40が設けられている。
また、バルブケース部材60の弁箱部61がハウジング90に組み付けられることによって、ガス導入流路から分岐して鍔部12cの下方領域(特に、フィルタ本体11の外周面の外側)にまで通じるバイパス流路が形成される。バイパス流路は、弁座24の開口部24aから弁箱部61の内部空間を経由してガス逃し部62までの流路である。そのバイパス流路にリリーフバルブ70が設けられている。
また、バルブケース部材60の弁ガイド部65及び弁座67がハウジング90に組み付けられることによって、ガス導入流路から分岐して鍔部12cの下方領域(特に、フィルタ本体11の外周面の外側)にまで通じるオイルドレイン流路が形成される。そのオイルドレイン流路は、オイル排出口23bからオイル逃し部66及び第二収容凹部23を経由してドレイン孔69までの流路である。そのオイルドレイン流路にはアンチドレイン弁80が設けられている。
【0072】
続いて、オイルセパレータ3の動作について説明する。
エンジン4が停止した状態では、エンジン4からオイルセパレータ3にブローバイガスが供給されず、連結パイプ部25内の圧力がほぼ大気圧と低い状態となっている。
【0073】
エンジン4が作動すると、オイルミストを含有したブローバイガスがエンジン4から連結パイプ部25内へ供給され、連結パイプ部25内の圧力が上昇する。その圧力によって弁体81が弁座67の下面に押し当てられている。なお、連結パイプ部25内の圧力が上昇しても、その圧力が所定閾値未満であれば、リリーフバルブ70の弁体71が開口部24aを閉塞する。
【0074】
連結パイプ部25に供給されたブローバイガスは、インレット孔26を通って第一収容凹部22(特に、ダイヤフラム41の上側の領域)内に導入される。そして、そのブローバイガスは、第一収容凹部22からPCVカバー50の連通孔52を通って、フィルタ本体11の内側に流れ込む。そして、そのブローバイガスがフィルタ本体11の内周面から外周面に通過する。ブローバイガスに含まれるオイルミストはフィルタ本体11によって捕捉される。
【0075】
フィルタ本体11の外周面から吹き出たブローバイガスが通気孔12dを通って第一エンドプレート12の上に流れる。通気孔12dを通過したブローバイガスがカバー30の内側からガス排出部33を通ってブリーザーパイプ2に排出される。これにより、ブローバイガスがエンジン4へと環流される。
【0076】
フィルタ本体11から吹き出るブローバイガスの流れによって、フィルタ本体11に捕捉されたオイルの一部がフィルタ本体11の外周面から吹き出る。そのようなオイルは粒径の大きな液滴である。よって、フィルタ本体11の外周面から吹き出たオイルは、第一エンドプレート12によって遮られて、通気孔12dを通過しない。
【0077】
ブローバイガスが連通孔52を通過するに際して、そのブローバイガスの流量が調整される。つまり、エンジン4の吸気圧力(負圧)が過度に大きい場合には、ダイヤフラム41の中央部が上方へ移動して、連通孔52の下側開口の開き具合が小さくなって、ブローバイガスの流量が低下する。一方、クランクケース側の圧力が高い場合には、ダイヤフラム41の中央部が下方へ移動して連通孔52の下側開口の開き具体が大きくなって、ブローバイガスの流量が上昇する。これにより、ブローバイガスの流量がダイヤフラム41によって適切に調整される。また、エンジン4、特にクランクケースの圧力も適切に調整される。
【0078】
エンジン4が連続して運転されると、ドレイン孔69が弁体81によって閉塞されているので、フィルタ本体11によって捕捉されたオイルがケース20内の下部に貯留される。ケース20内のオイル量が増えて、オイルの液面がフィルタ本体11の下端面を越えると、フィルタ本体11の下部がオイルに浸漬される。そうすると、フィルタ本体11の外周面から吹き出たブローバイガスがオイル内の気泡として浮かび上がり、気泡の影響によってオイルの液滴がオイルの液面から跳ね上がる。そのようなオイルの液滴は第一エンドプレート12の鍔部12cによって遮られて、通気孔12dを通過しない。
【0079】
エンジン4の運転中に、ブローバイガスが連結パイプ部25に過供給されると、連結パイプ部25内の圧力が所定閾値以上になる。そうすると、リリーフバルブ70の弁体71が付勢スプリング72の弾性力に抗して弁座24から上へ離れ、開口部24aが開放される。そのため、連結パイプ部25内のブローバイガスが開口部24a、ガス逃し部62及び通気孔12dを通って第一エンドプレート12の上に流れる。そして、そのガスがガス排出部33を通ってブリーザーパイプ2に排出される。
【0080】
連結パイプ部25内の圧力が所定閾値未満になると、リリーフバルブ70の弁体71が付勢スプリング72の弾性力によって弁座24に押し付けられて、開口部24aが弁体71によって閉塞される。これにより、バイパス流路(開口部24a、ガス逃し部62及び通気孔12d)を通るブローバイガスの流れが止まる。
【0081】
エンジン4が停止すると、エンジン4から連結パイプ部25内へのブローバイガスの供給が止まり、連結パイプ部25内の圧力が低下する。そうすると、ケース20内の下部に貯留されたオイルの重量によって弁体81が下方に曲げられ、弁体81が弁座67の下面から下方に離れるので、複数のドレイン孔69が開放される。そのため、ケース20の底に貯留されたオイルがドレイン孔69、オイル逃し部66、オイル排出口23a、オイル排出口23b及び連結パイプ部25を経由して、エンジン4に流れ込む。これにより、分離したオイルがエンジン4に回収される。オイルの排出が終了すると、弁体81がその弾性力によって弁座67の下面に当接し、ドレイン孔69が弁体81によって閉塞される。
【0082】
続いて、オイルセパレータ3のメンテナンス方法について説明する。
まず、オイルセパレータ3のハウジング90の内側に設置されたオイルミストフィルタ10(以下、旧オイルミストフィルタ10という。)とは別の新たなオイルミストフィルタ10(以下、新オイルミストフィルタ10という。)を準備する。
【0083】
次に、ボルト39の締結を解除し、ケース20からカバー30を外す。
次に、ケース20から旧オイルミストフィルタ10を取り外す。
次に、新オイルミストフィルタ10の第二エンドプレート13を下に向けて、その第二エンドプレート13及びフィルタ本体11をケース20内に収容する。この際、新オイルミストフィルタ10の第二エンドプレート13のガス導入孔13cの位置をPCVカバー50の凸部51の位置に合わせ、凸部51をガス導入孔13cに嵌め込む。また、第一エンドプレート12の鍔部12cの周縁部及びガスケット15をケース20の上端面(ケース20の上側開口の縁部分)に重ねる。
【0084】
次に、カバー30の下側開口を下に向けて、カバー30をケース20の上から覆い被せる。この際、ケース20の上端面(ケース20の上側開口の縁部分)及びガスケット15を段凹部32に合わせ、ケース20の上端及びガスケット15を段凹部32に嵌める。
次に、ケース20の突縁21とカバー30の突縁31をボルト39によって締結し、ケース20とカバー30を固定する。
【0085】
以上の実施の形態は次のような利点・効果をもたらす。
(1) オイルの飛沫が第一エンドプレート12の鍔部12cによって受け止められるので、ガス排出部33から排出されるブローバイガスにはオイルが殆ど含まれておらず、このオイルセパレータ3によるオイルの捕集効果が高い。
【0086】
(2) 第一エンドプレート12の鍔部12c(特に、複数の通気孔12dが形成されている領域)の傾斜によってスペース38が鍔部12cの上側に形成されているので、第一エンドプレート12の中央部をカバー30の天板部に近接させることができる。それゆえ、カバー30の高さを抑えることができ、オイルセパレータ3をコンパクト化することができる。
【0087】
(3) 弁座24と第一収容凹部22と第二収容凹部23が互いに近接に配され、ブローバイガスの導入部分(インレット孔26)と、ブローバイガスの逃し部分(開口部24a)と、オイルの排出部分(オイル排出口23b)が連結パイプ部25に集約されている。従って、エンジン4とオイルセパレータ3の間の接続或いは配管が簡素化され、エンジン4及びオイルセパレータ3の構造をシンプルにすることができる。
【0088】
(4) 弁座24と第二収容凹部23が互いに近接に配されているので、リリーフバルブ70及びアンチオイル弁80を保持するホルダをバルブケース部材60に共通化することができる。つまり、弁箱部61、弁ガイド部65及び弁座67が一体成形されたものとなる。それゆえ、オイルセパレータ3の部品点数の削減を図ることができるとともに、オイルセパレータ3の組立の際の作業性が向上する。
【0089】
(5) フィルタ本体11の目詰まり等が生じ場合でも、連結パイプ部25に供給されたブローバイガスがリリーフバルブ70によってフィルタ本体11の下流側にバイパスされる。よって、ブローバイガスの流れが止まるようなことを防止することができる。
【0090】
(6) エンジン4の動作中では、ドレイン孔69がアンチドレイン弁80により閉塞されることによって、オイルが連通パイプ部25内に流れない。そのため、連通パイプ部25等を通ってフィルタ本体11の内側に流れるブローバイガスが連通パイプ部25内においてオイルと接触することを防止することができる。よって、このオイルセパレータ3によるオイルの分離効率が高い。
【0091】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0092】
以上の実施の形態の説明では、オイルセパレータ3が横置きされた状態であった。それに対して、
図13に示すように、オイルセパレータ3が縦にされた状態で、そのオイルセパレータ3が側面に取り付けられてもよい。具体的には、ケース20の下面がエンジン4の側面に向けられ、連結パイプ部25がエンジン4の側面に連結されている。この場合、ケース20の側面が鉛直下方に向けられており、その側面にはオイル排出部20aが突出した状態に設けられている。オイル排出部20aが筒状に設けられ、オイル排出部20aの内部空間がケース20の内側に通じている。更に、オイル排出部20aがパイプ9の一端に連結され、パイプ9の他端がエンジン4に連結されている。そのため、オイルセパレータ3のフィルタ本体11によって捕捉されたオイルがケース20からオイル排出部20a及びパイプ9を通ってエンジン4に流れ込む。
【0093】
また、上述の実施の形態では、処理対象ガスとしてブローバイガスを例示した。それに対して、分離対象となるミスト状オイルを含有するガスであれば、処理対象ガスとなり得る。