(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁性基材の表面の選択的金属化における化学めっき促進剤としてのドープ酸化スズの使用であって、前記ドープ酸化スズのドープ元素がニオブを含み、前記ドープ酸化スズが、CIELab色空間において、座標L*値が70〜100であり、座標a値が−5〜5であり、座標b値が−5〜5であることを特徴とする使用。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の実施形態を詳細に記述する。添付の図面を参照して本明細書に記載する実施形態は、説明及び例示のためのものであり、本開示を一般的に理解するために使用されるものである。実施形態が本開示を限定するものと解釈してはならない。
【0035】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的で、特段の断りのない限り、数値範囲の定義は常に極値を含む。
【0036】
また、「第1(first)」及び「第2(second)」等の用語は、本明細書中では説明の目的で使用されるものであり、相対的な重要性又は意義を示唆又は意味することを意図するものではない。
【0037】
本開示の実施形態の一態様によれば、絶縁性基材の表面の選択的金属化における化学めっき促進剤としてのドープ酸化スズの使用が提供される。
【0038】
本明細書中で使用する「化学めっき促進剤」との用語は、本来の化学めっき能は有さず基材を促進して化学めっきを実現し、その表面に形成される連続した金属層を得る材料を意味する。
【0039】
本開示によれば、ドープ酸化スズは、そのドープ元素としてニオブを含む。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、酸化スズの含有量は約70重量%〜約99.9重量%である。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、酸化スズの含有量は約90重量%〜約96重量%である。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、ニオブの含有量はNb
2O
5として計算して約0.1重量%〜約30重量%である。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、ニオブの含有量はNb
2O
5として計算して約1重量%〜約20重量%である。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、ニオブの含有量はNb
2O
5として計算して約4重量%〜約10重量%である。ドープ酸化スズの組成は、任意の従来の分析法及び試験法によって決定することができ、例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)によって試験することができ、又はその製造工程で使用される原材料の量によって決定することができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、平均粒径が約10nm〜約10μmであってもよい。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、平均粒径が約50nm〜約5μmであってもよい。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、平均粒径が約80nm〜約2.5μmであってもよい。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの粒径は、実用上の要件に応じて適切に選択されてもよい。例えば、ポリマー等の基材中に予め設ける場合、ドープ酸化スズの平均粒径は、好ましくは約100nm〜約10μm、より好ましくは約500nm〜約2.5μmであり、ドープ酸化スズをインク組成物の調製に用いる場合、ドープ酸化スズの平均粒径は、好ましくは約1nm〜約800nm、より好ましくは約10nm〜約500nmであってもよい。平均粒径は、当業者に知られている任意の従来の方法によって決定することができ、例えば、レーザ粒子分析器によって測定することができる。本開示によれば、特段の断りのない限り、数値範囲の定義は常にその端点値を含む。
【0041】
本開示の実施形態のドープ酸化スズは、明色を有し、CIELab色値L
*が約70〜約100であり、CIELab色値aが約−5〜約5であり、CIELab色値bが約−5〜約5であり、言い換えると、ドープ酸化スズは、CIELab色空間において、座標L
*値が約70〜約100であり、座標a値が約−5〜約5であり、座標b値が約−5〜約5である。
【0042】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、CIELab色値L
*が約80〜約90であり、CIELab色値aが約−5〜約2であり、CIELab色値bが約2〜約4であり、言い換えると、ドープ酸化スズは、CIELab色空間において、座標L
*値が約80〜約90であり、座標a値が約−5〜約2であり、座標b値が約2〜約4である。上述のCIELabの色値の範囲のドープ酸化スズは、明色及び良好な化学めっき促進能の両方を示すことができ、化学めっき加工の間に、高接着力の金属層を高めっき速度で基材上に形成することができる。
【0043】
ドープ酸化スズは、光に対する吸収力を高めることができ、波長約1064nmの光に対して示す反射率が、60%を超えず、更には40%を超えず、例えば約20%〜約30%である。言い換えると、ドープ酸化スズの波長約1064nmの光に対する反射率が60%を超えない。本開示によれば、ドープ酸化スズの光反射率は、従来の方法によって試験することができ、その例はGJB 5023.1−2003に記載されている。
【0044】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、酸化スズと、ニオブを含むドープ元素を含む少なくとも1つの化合物とを含む粉体混合物を提供する工程と、次いで前記粉体混合物を酸化性雰囲気中で焼結する工程とによって調製されてもよい。得られる化合物は、ドープ元素の酸化物、及び焼結によってドープ元素の酸化物を形成することが可能な前駆体の少なくとも一方を含む。ニオブの酸化物等のドープ元素の酸化物としては、Ni
2O
5を選択してもよい。また、焼結下でドープ元素の酸化物を形成するために用いられる前駆体は、水酸化物(例えば、水酸化ニオブ)及び/又はゲル(例えば、ニオブ含有ゲル)等のドープ元素の酸化物を形成することができる任意の化合物であってもよい。粉体混合物は、後述するように半乾式粉砕法又は湿式粉砕法によって調製されるが、前駆体は、半乾式粉砕法又は湿式粉砕法で使用される分散剤に不溶性の化合物であってもよい。
【0045】
粉体混合物中の酸化スズ及び前記化合物の含有量は、ドープ酸化スズ中の所望のドープ元素の含有量に応じて選択することができる。通常、粉体混合物の組成を調節して以下の含有量を生成することができる。即ち、焼結されたドープ酸化スズの総重量に対して、酸化スズの含有量は約70重量%〜約99.9重量%、好ましくは約90重量%〜約96重量%であり、ニオブの含有量はNb
2O
5として計算して約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは1重量%〜約20重量%、より好ましくは約4重量%〜約10重量%である。
【0046】
粉体混合物を調製する方法に特段の制限はなく、実際の実施に応じて当業者が選択することができる。幾つかの実施形態では、酸化スズ及びドープ元素を含む金属化合物を粉砕することによって粉体を得ることができる。粉砕は、乾式粉砕法、湿式粉砕法、又は半乾式粉砕法によって行うことができる。幾つかの実施形態では、半乾式粉砕法及び湿式粉砕法は、分散剤を用いて実行することができる。分散剤は、従来の粉砕法において通常使用される任意の分散剤であってもよい。幾つかの実施形態では、分散剤は、水及び/又はC1〜C5のアルコール、例えばエタノールであってもよい。分散剤の含有量に特段の制限はなく、当技術分野で知られているいずれのものであってもよい。幾つかの実施形態では、粉体は湿式粉砕法又は半乾式粉砕法によって得ることができる。また、湿式粉砕法及び半乾式粉砕法は、乾燥工程を更に含んでいてもよい。乾燥は、通常の乾燥工程によって実行することができる。幾つかの実施形態では、乾燥は、約40℃〜約120℃の範囲の温度で実行される。幾つかの実施形態では、乾燥は、酸素を含む雰囲気下で、又は非反応性雰囲気下で実行することができる。酸素を含む雰囲気は、空気、又は酸素と非反応性ガスとの組合せであってもよい。非反応性ガスは、粉体の成分又は調製された金属化合物と化学的に反応しない任意のガスを指し得る。例えば、非反応性ガスは、周期表の第0族から選択されるもの、又は窒素であってもよい。幾つかの実施形態では、非反応性ガスはアルゴンであってもよい。
【0047】
本開示における粉体混合物の径に特段の制限はなく、当業者が選択することができる。幾つかの実施形態では、粉体混合物は、平均粒径が約50nm〜約10μmである。幾つかの実施形態では、粉体混合物は、平均粒径が約500nm〜約5μmである。
【0048】
幾つかの実施形態では、焼結は、約500℃〜約1800℃の範囲の温度で行われてもよい。幾つかの実施形態では、焼結は、約600℃〜約1500℃の範囲の温度で行われてもよい。幾つかの実施形態では、焼結は、約1300℃を超えない温度で行われてもよく、こうして得られたドープ酸化スズは、粉体混合物、即ち原料と同様の明色を有する。ドープ酸化スズの促進力を更に向上させる観点から、焼結は、約800℃より高温で行うことが好ましく、約1000℃より高温で行うことがより好ましい。焼結温度が約1000℃〜1300℃であると、得られるドープ酸化スズは粉体混合物と類似した明色を有し、良好な化学めっき促進能を示す。焼結の条件は、焼結温度に応じて選択することができ、焼結は約1時間〜約30時間、好ましくは約4時間〜約10時間の時間範囲で行ってもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、焼結は、酸化性雰囲気下で実行してもよい。酸化性雰囲気は、一般に酸素を含む雰囲気である。従って、例えば、酸素を含む雰囲気は、純酸素雰囲気であってもよい。また、酸素を含む雰囲気は、酸素と非反応性ガスとの組合せであってもよい。非反応性ガスは、原料及び焼結工程の生成物と化学的に反応しない任意のガスを指し得る。例えば、非反応性ガスは、周期表の第0族から選択されるもの、又は窒素であってもよい。幾つかの実施形態では、酸素及び非反応性ガスを含む酸化性雰囲気中で、酸素の体積量が約70vol%を超えていることが好ましく、よって酸素を含む雰囲気は空気であってもよい。
【0050】
幾つかの実施形態では、前記方法は、最終生成物により厳しい特性を付与するために、焼結工程で得られた固体生成物を粉砕する工程を更に含む。幾つかの実施形態では、粉砕工程から得られる粉砕生成物の粒径は、平均粒径が約10nm〜約10μmの範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、粉砕生成物の平均粒径は、約50nm〜約5μmの範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、粉砕生成物の平均粒径は、約80nm〜約2.5μmの範囲であってもよい。乾式粉砕法、湿式粉砕法、及び半乾式粉砕法を含む群から選択される少なくとも1つの方法によって更なる粉砕が行われてもよく、これらは当技術分野で知られている上述のものである。幾つかの実施形態では、半乾式粉砕法及び湿式粉砕法は、分散剤を用いて実行することができる。分散剤は、従来の粉砕法において通常使用される任意の分散剤であってもよい。幾つかの実施形態では、分散剤は、水及び/又はC1〜C5のアルコール、例えばエタノールであってもよい。分散剤の含有量に特段の制限はなく、当技術分野で知られているものである。
【0051】
幾つかの実施形態では、絶縁性基材の表面の選択的金属化方法において化学めっき促進剤として用いられるドープ酸化スズの適用様式は、特定の適用状況に応じて選択することができる。以下に2つの例示的な実施形態を提供するが、以下に列挙するドープ酸化スズの方法様式はこれらの2つの実施形態に限定されるものではないことが当業者には理解されよう。
【0052】
一実施形態では、ドープ酸化スズが絶縁性基材(例えば、ポリマー基材)中に分散され、エネルギービームの照射によりドープ酸化スズを露出させ、次いで無電解めっきが実行される。別の実施形態では、ドープ酸化スズがインク層として絶縁性基材の表面上にコーティングされ、続いて無電解めっきされてもよい。
【0053】
本開示の第2の態様によれば、ポリマー組成物が提供される。ポリマー組成物は、ポリマーと上述のドープ酸化スズとを含む。ドープ酸化スズ及びその調製は、上述したものと同様であってもよい。
【0054】
幾つかの実施形態では、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約40重量部である。幾つかの実施形態では、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約30重量部である。幾つかの実施形態では、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約20重量部である。幾つかの実施形態では、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約10重量部である。上述のドープ酸化スズの強力な化学的めっき促進能のため、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量が約1重量部〜約5重量部、又は約1重量部〜約3重量部等の低含有量であっても、ポリマー組成物により形成されたポリマー成形体は、ポリマーを剥離するためのエネルギー線照射後も依然として無電解めっきが可能であり、高めっき速度を得ることができ、基材に対する接着性が高い完全な連続金属層を形成することができる。更に、ポリマー成形体はまた、優れた機械的特性を有し得る。
【0055】
ポリマー組成物中のポリマーの種類に特段の制限はなく、実用上の要件に応じて選択することができる。幾つかの実施形態では、ポリマーは、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーであってもよい。一実施形態では、ベースポリマーは、プラスチック、ゴム、及び繊維を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。限定されない例として、幾つかの実施形態では、ポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)等のポリオレフィン;ポリカーボネート;ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ(ジアリルイソフタレート)、ポリ(ジアリルテレフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、及びポリ(ブチレンテレフタレート)等のポリエステル;ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)、ポリ(ヘキサメチレンスクシンアミド)、ポリ(ヘキサメチレンラウラミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、ポリ(デカメチレンセバカミド)、ポリウンデカンアミド、ポリ(ラウラミド)、ポリ(オクタンアミド)、ポリ(9−アミノノナン酸)、ポリカプロラクタム、ポリ(フェニレンテレフタミド)、ポリ(ヘキシレンイソフタルアミド)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、及びポリ(ノニレンテレフタミド)等のポリアミド;ポリ(芳香族エーテル);ポリエーテルイミド;ポリカーボネート/(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)合金;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリイミド;ポリスルホン;ポリ(エーテル−エーテル−ケトン);ポリベンズイミダゾール;フェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;メラミン−ホルムアルデヒド樹脂;エポキシド樹脂;アルキド樹脂;並びにポリウレタンを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0056】
幾つかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも1つの添加剤を更に含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、添加剤は、例えば、フィラー、酸化防止剤、光安定剤、及び潤滑剤等であってもよい。添加剤を添加することにより、ポリマー成形体の性能及び特性を改善することができ、ポリマー組成物の加工特性を改善することができる。添加物の色が明色である限り、添加物の含有量及び種類に特段の制限はない。添加剤は、例えば、実用上の要件に応じて選択することができる。
【0057】
ポリマー組成物への添加剤として用いられるフィラーは、レーザの作用下で(物理的に又は化学的に)非反応性である任意のフィラーであってもよい。幾つかの実施形態では、フィラーは、タルク及び/又は炭酸カルシウムから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0058】
幾つかの実施形態では、フィラーはガラス繊維であってもよい。ガラス繊維の添加により、除去される基材の厚み(言い換えると、ポリマー成形体の上面から露出したドープ酸化スズまでの距離)を顕著に増加させることができ、これによって後続の化学めっきプロセスの間のドープ酸化スズ上への金属の析出を促進することができる。
【0059】
フィラーは、レーザ等のエネルギー源の作用ではたらく任意の従来の無機フィラーであってもよい。幾つかの実施形態では、フィラーはまた、マイクロガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、パールパウダー、ウォラストナイト、ケイソウ土、カオリン、石炭微粉、陶土、マイカ、オイルシェールアッシュ、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、シリカ、タルク、及び酸化亜鉛から選択されてもよい。
【0060】
ポリマー組成物によって形成されるポリマー成形体への添加剤として用いられる酸化防止剤は、従来技術における任意の従来の酸化防止剤であってもよい。幾つかの実施形態では、酸化防止剤は、一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤を含んでいてもよい。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との比率は、例えば、酸化防止剤の種類に応じて適宜選択することができる。幾つかの実施形態では、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との重量比は、約1:1〜4であってもよい。
【0061】
幾つかの実施形態では、一次酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であってもよい。例として、但し限定されるものではないが、幾つかの実施形態では、一次酸化防止剤は、酸化防止剤1098又は酸化防止剤1010であってもよく、ここで、酸化防止剤1098は、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヘキサンジアミンを主成分とするものであり、酸化防止剤1010は、テトラ[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトールを主成分とするものである。
【0062】
幾つかの実施形態では、二次酸化防止剤は、亜リン酸エステル系酸化防止剤であってもよい。例として、限定されるものではないが、幾つかの実施形態では、二次酸化防止剤は、トリ(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)フォスフォライトを主成分とする酸化防止剤168であってもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、ポリマー物品の添加剤として用いられる光安定剤は、ヒンダードアミン系のものであってもよい。幾つかの実施形態では、光安定剤は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートであってもよい。光安定剤は、当該技術分野で知られているいずれのものであってもよく、本開示において特段の制限はない。
【0064】
幾つかの実施形態では、潤滑剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVAワックス)、ポリエチレン(PEワックス)、及びステアレートを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。潤滑剤を添加することにより、ポリマー成形体の流動性を向上させることができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、添加剤の含有量は、添加剤の機能及び種類に応じて適宜選択することができる。幾つかの実施形態では、ポリマー組成物100重量部に対して、フィラーの含有量は1重量部〜40重量部の範囲であってもよく、酸化防止剤の含有量は約0.1重量部〜約10重量部の範囲であってもよく、光安定剤の含有量は約0.1重量部〜約10重量部の範囲であってもく、潤滑剤の含有量は約0.1重量部〜約10重量部の範囲であってもよい。
【0066】
本開示の第3の態様によれば、ポリマー成形体が提供される。ポリマー成形体の表面の少なくとも一部が、上述のポリマー組成物により形成される。
【0067】
本開示によれば、ポリマー体の表面とは、上面、下面、側面、前面、後面、左面、及び右面等の外面だけでなく、機械加工により形成される成形体の内面、例えば、成形体に穿設された孔の内面を含む全ての露出表面を指す。
【0068】
ポリマー成形体を形成するために用いられるポリマー組成物中のドープ酸化スズは、明色であり、化学めっき促進能を有する。従って、化学めっきにより金属層を形成するために必要なポリマー成形体の表面は、ポリマー組成物により形成されるため、上記ポリマー組成物により形成される表面は、ポリマーを剥離するためのエネルギービームの照射の後、化学めっきにより金属層パターンを形成することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、ポリマー成形体の表面の一部のみをポリマー組成物により形成してもよく、又はポリマー成形体全体を上述のポリマー組成物により形成してもよく、即ち、ポリマー成形体はポリマー組成物により形成される。費用低減の観点から、その厚みが非常に大きければ、ポリマー成形体の表面のみ又は表面の一部のみをポリマー組成物により形成してもよく、厚みがあまり大きくなければ、ポリマー成形体をポリマー組成物により一体的に形成してもよい。
【0070】
ポリマー成形体の大きさは、状況の使用目的に応じて適宜選択することができ、本開示において特段の制限はない。ポリマー成形体は、実用上の用途に応じて任意の形状とすることができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、成形工程は、当技術分野で知られている任意の従来の成形プロセスによって行うことができ、本開示において特段の制限はない。幾つかの実施形態では、成形工程は射出成形によって行われる。別の実施形態では、成形工程は押出成形によって行われる。
【0072】
本開示の第4の態様によれば、上述のポリマー組成物又はポリマー成形体の使用が提供され、ポリマー組成物又はポリマー成形体は、ポリマー基材の表面の選択的金属化方法において使用される。
【0073】
一実施形態では、ポリマー基材又はポリマー基材の表面を形成するためにポリマー組成物が用いられ、又はポリマー成形体がポリマー基材として用いられ、次いで表面にエネルギー源を照射してポリマー基材の表面の一部を気化させた後に化学めっきを実行することにより、ポリマー基材の表面上の選択的金属化を達成する。
【0074】
幾つかの実施形態では、エネルギー源は、レーザ、電子ビーム、及びイオンビームを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。幾つかの実施形態では、エネルギー源はレーザである。レーザにより提供されるエネルギーは、確実にその表面の照射領域内のポリマー基材を気化して照射領域内のドープ酸化スズを露出させる必要がある。
【0075】
幾つかの実施形態では、照射工程はレーザを用いて行われ、レーザは、157nm〜10600nmの波長と1W〜100Wのパワーを有していてもよい。
【0076】
ドープ酸化スズは、エネルギー源が提供するエネルギーに対する優れた吸収能力を有するので、提供するエネルギーが比較的低いエネルギー源での照射であっても、所定部分のポリマー基材を除去して所定部分のドープ酸化スズを露出させることができる。一実施形態では、レーザは、1064nm〜10600nmの波長と3W〜50Wのパワーを有していてもよい。別の実施形態では、レーザは、1064nmの波長と3W〜40Wのパワーを有していてもよい。更なる実施形態では、レーザは、1064nmの波長と5W〜10Wのパワーを有していてもよい。ポリマー基材の表面の所定部分がパターンを形成することができ、その結果、所定部分に形成された金属層がポリマー基材上に金属パターンを形成することができる。レーザを用いると、金属パターンの精度を向上させることができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、照射工程は電子ビームを用いて行われてもよく、電子ビームは10W/cm
2〜10
11W/cm
2のパワー密度を有していてもよい。
【0078】
幾つかの実施形態では、照射工程はイオンビームを用いて行われてもよく、イオンビームは10eV〜10
6eVのエネルギーを有していてもよい。
【0079】
化学めっきは、当業者にとって周知である。幾つかの実施形態では、化学めっきは、以下の工程を用いて実行することができる。照射を受けたポリマー基材を、Cu溶液に浸漬する。幾つかの実施形態では、Cu溶液はCu塩を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、Cu溶液は還元剤を更に含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、Cu溶液のpHは、約12〜約13の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、還元剤は、Cu塩中のCuイオンをCu金属に還元することができる。幾つかの実施形態では、還元剤は、グリオキシル酸、ジアミド、及びリン酸ナトリウムを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0080】
化学めっきにより形成される金属層の厚みは、実用上の要件によって選択されてよく、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、金属層の厚みは、約0.1μm〜約10μmである。
【0081】
幾つかの実施形態では、金属層の形状は、実用上の要件によって選択されてもよい。例えば、化学めっき後に得られるポリマー物品を用いて回路基板を作製する場合、金属層は金属層パターンであってもよい。
【0082】
幾つかの実施形態では、前記方法は、電気めっき工程又は化学めっき工程を更に含んでいてもよい。電気めっき又は化学めっきは、少なくとも1回行われてもよく、その結果、先の金属層と同じ金属又は異なる金属のいずれかの追加の金属層が、先の金属層上に形成されてもよい。幾つかの実施形態では、第1の化学めっき工程でポリマー基材の表面にCu層が形成され、次いで後続の電気めっき又は化学めっきでCu層上にNi層が形成される。Ni層を追加することにより、Cu層の酸化を防止することができる。
【0083】
本開示の第5の態様によれば、インク組成物が提供される。インク組成物は、結合剤と上述のドープ酸化スズとを含む。更にドープ酸化スズは、そのドープ元素としてニオブを含有し、CIELab色値L
*が約70〜約100であり、CIELab色値aが約−5〜約5であり、CIELab色値bが約−5〜約5である。ドープ酸化スズの平均粒径は、約1nm〜約800nm、好ましくは約10nm〜約500nm、より好ましくは約50nm〜約300nmである。
【0084】
本開示の実施形態によれば、インク組成物が絶縁性基材の表面上に塗布される際に、結合剤が絶縁性基材の表面上のドープ酸化スズの均一な分散に寄与し得る。幾つかの実施形態では、結合剤を用いて、結合剤とインク組成物とを含んでいてもよいインク層を、絶縁性基材の表面上に形成することができる。幾つかの実施形態では、結合剤材料を有するインク層は、インク層と絶縁性基材との間の強固な接着が可能となる一定の必要な強度を有することができる。
【0085】
上記要件が満たされている限り、結合剤に特段の制限はない。幾つかの実施形態では、結合剤は有機結合剤である。幾つかの実施形態では、結合剤は、酢酸セルロース、ポリアクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA結合剤と称する)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリホスホン酸を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0086】
本開示において、結合剤に特段の制限はない。幾つかの実施形態では、市販の結合剤を使用してもよい。幾つかの実施形態では、結合剤は、ブチルアセテートセルロース番号CAB381−0.5、ブチルアセテートセルロース番号CAB381−20、ブチルアセテートセルロース番号CAB551−0.2、及びブチルアセテートセルロース番号CAB381−2等のEastman Chemical Company(US)より市販されているCABシリーズのブチルアセテートセルロース、並びに、ポリビニルブチラール番号Mowital B 60T、ポリビニルブチラール番号Mowital B 75H、及びポリビニルブチラール番号Mowital B 60H等のKuraray Company(日本)より市販されているMowitalシリーズのポリビニルブチラールを含む群から選択される少なくとも1つである。
【0087】
ドープ酸化スズが絶縁性基材の表面上に均一に分散されている限り、インク組成物中の結合剤とドープ酸化スズとの間の比に特段の制限はない。幾つかの実施形態では、インク層は、一定の強度と絶縁性基材との一定の接着性を有しており、インク層上に少なくとも1つの金属層が形成されていてもよい。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズ100重量部に対して、結合剤の量は約1重量部〜約60重量部の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、結合剤の量は約30重量部〜約60重量部の範囲であってもよい。
【0088】
幾つかの実施形態では、インク組成物は溶剤を更に含んでいてもよい。溶剤を用いると、ドープ酸化スズを結合剤中でより均一に分散することができ、絶縁性基材の表面上により均一なインク層を形成することができる。
【0089】
溶剤は、当業者に知られている任意の従来のものであってもよく、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、溶剤は、水、C1〜C12のアルコール、C3〜C12のケトン、C6〜C12の芳香族炭化水素、C1〜C12のハロゲン化アルキル、及びC2〜C12のハロゲン化アルケニルを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0090】
幾つかの実施形態では、溶剤は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、アセトン、2−n−ペンタノン、2−n−ブタノン、3−メチル−2−ペンタノン、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、トルエン、キシレン、及びトリクロロエチレンを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0091】
インク組成物中の溶剤の含有量に特段の制限はない。幾つかの実施形態では、結合剤中にドープ酸化スズを均一に分散させ、絶縁性基材の表面上に均一なインク層を形成するために、ある含有量の溶剤が添加される。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズ100重量部に対して、溶剤の含有量は、約20重量部〜約250重量部の範囲であってもよい。
【0092】
幾つかの実施形態では、インク組成物は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤は、例えばその特定の性能又は機能に応じて選択することができる。幾つかの実施形態では、添加剤は、分散剤、消泡剤、レベリング剤、及び粘度調整剤を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0093】
添加剤の含有量は、例えば従来の操作に応じて選択されてもよい。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズ100重量部に対して、添加剤の量は、約0.1重量部〜約20重量部の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、添加剤の量は約0.5重量部〜約10重量部の範囲であってもよい。
【0094】
本開示の幾つかの実施形態によれば、分散剤を用いることで、ドープ酸化スズが結合剤及び任意の溶剤中に均一に分散するのに要する時間を短縮することができ、ドープ酸化スズの安定性を改善することができる。分散剤は、上記の機能を提供することができる任意の物質であってもよく、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、分散剤は有機分散剤であってもよい。
【0095】
幾つかの実施形態では、有機分散剤は、脂肪族アミン系分散剤、ヒドラミン系分散剤、環状不飽和アミン系分散剤、脂肪酸系分散剤、脂肪族アミド系分散剤、エステル系分散剤、パラフィン系分散剤、リン酸塩系分散剤、ポリマー系分散剤(ポリアクリレート系分散剤、又はポリエステル系分散剤等)、及び有機ホスフィン系分散剤を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0096】
幾つかの実施形態では、分散剤は、市販の任意の従来のものであってもよい。幾つかの実施形態では、分散剤は、ANTI−TERRA−U、ANTI−TERRA−U 80、ANTI−TERRA−U 100、DISPERBYK−101、DISPERBYK−130、BYK−220 S、LACTIMON、LACTIMON−WS、BYK−W 966、DISPERBYK、BYK−154、BYK−9076、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−110、DISPERBYK−102、DISPERBYK−111、DISPERBYK−180、DISPERBYK−106、DISPERBYK−187、DISPERBYK−181、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−115、DISPERBYK−160、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−165、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−182、DISPERBYK−183、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、DISPERBYK−168、DISPERBYK−169、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−190、DISPERBYK−2150、BYK−9077、DISPERBYK−112、DISPERBYK−116、DISPERBYK−191、DISPERBYK−192、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2020、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、及びDISPERBYK−2070の番号でBYK company(GE)より市販されている分散剤;Akzo Nobel Company(DL)より市販されている分散剤番号PHOSPHOLAN PS−236;Witco Chemical Company(US)より市販されている分散剤番号PS−21A;並びにCroda Company(GB)より市販されている分散剤番号Hypermer KD及び分散剤番号Zephrym PD;を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0097】
分散剤の含有量は、実際の実施に基づき決定されてもよく、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズ100重量部に対して、分散剤の含有量は、約0.1重量部〜約4重量部の範囲であってもよい。
【0098】
消泡剤は、泡の形成を防止し、形成された泡を破壊し、又は形成された泡をインク組成物から除去することが可能な任意の従来のものであってもよい。幾つかの実施形態では、消泡剤は、有機ポリシロキサン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、及び脂肪族アルコール系消泡剤を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。幾つかの実施形態では、消泡剤は有機ポリシロキサン系である。
【0099】
消泡剤は、市販されている任意の従来のものであってもよい。幾つかの実施形態では、消泡剤は、BYK−051、BYK−052、BYK−053、BYK−055、BYK−057、BYK−020、BYK−065、BYK−066N、BYK−067A、BYK−070、BYK−080A、BYK−088、BYK−141、BYK−019、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−011、BYK−031、BYK−032、BYK−033、BYK−034、BYK−035、BYK−036、BYK−037、BYK−038、BYK−045、BYK−A530、BYK−A555、BYK−071、BYK−060、BYK−018、BYK−044、及びBYK−094の番号でBYK Comapnay(GE)より市販されている消泡剤を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0100】
インク組成物中の消泡剤の含有量は、当業者に知られているものであり、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズ100重量部に対して、消泡剤の含有量は、約0.01重量部〜約3重量部の範囲であってもよい。
【0101】
本開示の実施形態によれば、レベリング剤の添加により、絶縁性基材の表面上に形成されるインク層は、より平坦かつ滑らかとなる。本開示におけるレベリング剤に特段の制限はなく、レベリング剤は上記機能を実現することが可能な従来のものであってもよい。幾つかの実施形態では、レベリング剤は、ポリアクリレート系、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、及びフッ素含有界面活性剤を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0102】
レベリング剤は、市販されている任意の従来のものであってもよい。幾つかの実施形態では、レベリング剤は、BYK−333、BYK−306、BYK−358N、BYK−310、BYK−354、及びBYK−356の番号でBYK Company(GE)より市販されている消泡剤を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0103】
インク組成物中のレベリング剤の含有量は、当業者に知られているものであり、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズ100重量部に対して、レベリング剤の含有量は、約0.3重量部〜約4重量部の範囲であってもよい。
【0104】
本開示の実施形態によれば、粘度調整剤の添加により、実用上の要件に応じて、インク組成物の粘度を調節することができる。本開示における粘度調整剤に特段の制限はなく、粘度調整剤は従来のものであってもよい。幾つかの実施形態では、粘度調整剤は、気体シリカ、ポリアミドワックス、有機ベントナイト、硬化ヒマシ油、金属石鹸、ヒドロキシアルキルセルロース、及びそれら誘導体、ポリビニルアルコール、並びにポリアクリレートを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0105】
インク組成物中の粘度調整剤の含有量は、当業者に知られているものであり、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズ100重量部に対して、粘度調整剤の含有量は、約0.3重量部〜約3重量部の範囲であってもよい。
【0106】
幾つかの実施形態では、インク組成物は、ドープ酸化スズ、結合剤、溶剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、及び粘度調整剤を含むか、又はそれらからなる。ドープ酸化スズ100重量部に対して、結合剤の量は約1重量部〜約60重量部の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、溶剤の量は約20重量部〜約250重量部の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、分散剤の量は約0.4重量部〜約4重量部の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、消泡剤の量は約0.1重量部〜約3重量部の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、レベリング剤の量は約0.3重量部〜約4重量部の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、粘度調整剤の量は約0.3重量部〜約3重量部の範囲であってもよい。
【0107】
ドープ酸化スズ、結合剤、及び任意の添加剤が均一に混合されている限り、本開示におけるインク組成物の調製方法に特段の制限はない。幾つかの実施形態では、インク組成物の調製方法は以下の工程を含む。ドープ酸化スズ、結合剤、並びに任意の溶媒及び添加剤を混合して第1の混合物を形成する。次いで、第1の混合物を、例えば遊星ボールミルとすることができるミキサー中で粉砕してインク組成物を得る。遊星ボールミルにおける混合及び粉砕、並びに混合及び粉砕の操作工程及び操作条件は当業者に周知であるので、その詳細は省略する。
【0108】
本開示の実施形態によれば、絶縁性基材の表面上に例えば電気に対して非導電化することができるインク組成物を塗布し、次いで絶縁性基材上の化学めっきを行うことによって、絶縁性基材の表面の選択的金属化を達成することができる。幾つかの実施形態では、インク組成物を絶縁性基材の表面上に塗布してインク層を形成する際、インク層の所定部分に又は絶縁性基材の表面の所定部分にドープ酸化スズが分散される。次いで化学めっきを施すことにより、絶縁性基材の所定部分に金属を析出させることができ、これによって絶縁性基材の所定部分に少なくとも1つの金属層を形成することができる。このようにして、絶縁性基材の表面の選択的金属化を達成することができる。
【0109】
本開示の第6の態様によれば、絶縁性基材の表面の選択的金属化方法が提供される。インク組成物については上記で説明した。前記方法は、上述のインク組成物を絶縁性基材の表面上に提供ことにより絶縁性基材の表面上にインク層を形成する工程と、化学めっきによりインク層上に少なくとも1つの金属層を形成する工程とを含む。
【0110】
本開示の実施形態によれば、インク組成物は、絶縁性基材の表面の所定部分に塗布され、絶縁性基材の表面の残りはインク組成物によって被覆されない。従って、インク層は絶縁性基材の表面の所定部分にのみ形成される。ドープ酸化スズを含むインク層は導電性を有するので、絶縁性基材上に化学めっきを行うことにより、インク層の一部に、例えば、絶縁性基材の表面の所定部分に少なくとも1つの金属層を形成し、基材の表面の残りの領域には金属層を析出させないようにすることができる。このようにして、絶縁性基材の表面の選択的金属化を達成することができる。
【0111】
本開示の実施形態のインク組成物を絶縁性基材上に提供するために、例えば、スクリーン印刷、スプレーコーティング、レーザ印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、グラビア印刷、活版印刷、及びリソグラフ印刷を含む群から選択される種々の一般的に使用されるプロセスを用いることができる。スクリーン印刷、スプレーコーティング、レーザ印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、グラビア印刷、活版印刷、及びリソグラフ印刷の具体的な操作工程及び操作条件は当業者に周知であるので、その詳細な説明については、ここでは明確化する目的で省略する。幾つかの実施形態では、インク組成物は、インクジェット印刷又はレーザ印刷によって絶縁性基材の表面上に塗布される。
【0112】
幾つかの実施形態では、前記方法は、インク層を乾燥させる工程を更に含んでいてもよい。
【0113】
乾燥は当業者に周知であり、特段の制限はなく、乾燥はインク組成物中の結合剤材料及び任意の溶剤に基づき選択されてもよい。幾つかの実施形態では、乾燥は約40℃〜約150℃の範囲の温度で実行することができる。幾つかの実施形態では、乾燥は約0.5時間〜約5時間の時間範囲で実行することができる。幾つかの実施形態では、乾燥は常圧下で行ってもよい。幾つかの実施形態では、乾燥は減圧下で行ってもよい。
【0114】
後続の化学めっきが絶縁性基材の表面上の選択的金属化を行うことができる限り、本開示においてインク層の厚みに特段の制限はない。幾つかの実施形態では、インク層の厚みは約8μm〜約50μmの範囲である。幾つかの実施形態では、インク層の厚みは約12μm〜約40μmの範囲である。幾つかの実施形態では、インク層の厚みは約12μm〜約25μmの範囲である。
【0115】
化学めっきは、当業者に周知である。幾つかの実施形態では、化学めっきは、以下の工程で実行されてもよい。インク層が塗布された絶縁性基材をCu溶液に浸漬する。幾つかの実施形態では、Cu溶液はCu塩を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、Cu溶液は還元剤を更に含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、Cu溶液のpHは約12〜約13であってもよい。幾つかの実施形態では、還元剤はCu塩中のCuイオンをCu金属に還元することができる。幾つかの実施形態では、還元剤は、グリオキシル酸、ジアミド、及びリン酸ナトリウムを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0116】
幾つかの実施形態では、前記方法は、電気めっき工程又は化学めっき工程を更に含んでいてもよい。電気めっき又は化学めっきは、少なくとも1回行われてもよく、その結果、先の金属層と同じ金属又は異なる金属のいずれかの追加の金属層が、先の金属層上に形成されてもよい。幾つかの実施形態では、第1の化学めっき工程で絶縁性基材の表面にCu層が形成され、次いで後続の電気めっき又は化学めっきでCu層上にNi層が形成される。Ni層を追加することにより、Cu層の酸化を防止することができる。
【0117】
幾つかの実施形態では、前記方法は、化学めっき工程の前に、インク層の表面にエネルギー源を照射することにより、インク層の表面の少なくとも一部を気化させる工程を更に含む。照射工程により、インク層の所定部分を除去してこの部分におけるインク組成物のドープ酸化スズを露出させることができる。次いで、後続のめっき工程において所定部分に金属層を形成してもよい。絶縁性基材の表面上に塗布されたインク層を照射することにより、その後の化学めっき工程で形成される金属層の絶縁性基材に対する接着性が向上する。
【0118】
幾つかの実施形態では、エネルギー源は、レーザ、電子ビーム、及びイオンビームを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。幾つかの実施形態では、エネルギー源はレーザである。レーザにより提供されるエネルギーは、確実にポリマー物品の表面の照射領域内のベースポリマーを気化し、照射領域内のドープ酸化スズを露出させる必要がある。ドープ酸化スズは、エネルギー源が提供するエネルギーに対する優れた吸収能力を有するので、提供するエネルギーが比較的低いエネルギー源での照射であっても、所定部分のベースポリマーを除去して所定部分のドープ酸化スズを露出させることができる。
【0119】
幾つかの実施形態では、照射はレーザを用いて行われ、レーザは、157nm〜10600nmの波長と5W〜100Wのパワーを有していてもよい。一実施形態では、レーザは、1064nm〜10600nmの波長と3W〜50Wのパワーを有していてもよい。別の実施形態では、レーザは、1064nmの波長と3W〜40Wのパワーを有していてもよい。更なる実施形態では、レーザは、1064nmの波長と5W〜10Wのパワーを有していてもよい。ポリマー物品の表面の所定部分がパターンを形成することができ、その結果、所定部分に形成された金属層が絶縁性基材上に金属パターンを形成することができる。レーザを用いると、金属パターンの精度を向上させることができる。
【0120】
幾つかの実施形態では、照射は電子ビームを用いて行われてもよく、電子ビームは10W/cm
2〜10
11W/cm
2のパワー密度を有していてもよい。
【0121】
幾つかの実施形態では、照射はイオンビームを用いて行われてもよく、イオンビームは10eV〜10
6eVのエネルギーを有していてもよい。
【0122】
幾つかの実施形態では、絶縁性基材は、プラスチック、ゴム、繊維、コーティング層、セラミック、ガラス、木、セメント、及び紙を含む群から選択される少なくとも1つを含有していてもよい。幾つかの実施形態では、絶縁性基材はプラスチック製又はセラミック製であってもよい。
【0123】
幾つかの実施形態では、絶縁性基材は、可撓性プラスチック製であり、以下に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ(エーテル−ケトン)、ポリ(エーテル−エーテル−ケトン)、及び液晶を含んでいてもよい。可撓性プラスチックを絶縁性基材の表面に適用して化学めっきを行う場合、絶縁性基材上に形成された少なくとも1つの金属層は、フレキシブル回路の調製等の様々な用途に使用することができる。
【0124】
上述した特徴、及び以下に説明する特徴は、規定する特定の組合せだけでなく、他の組合せ又はそれ自体において、本発明の範囲から逸脱することなく使用され得ることが理解されよう。
【0125】
本発明のより良い理解のため、及びその実用上の実施形態のため、幾つかの例示的かつ非限定的な実施例を以下に示す。
【実施例】
【0126】
試験
以下の実施例及び比較例で得られたドープ酸化スズ及びポリマー成形体の試料について、以下の試験を行った。
【0127】
組成
以下の実施例及び比較例において、その調製に用いた原料の量によりドープ酸化スズの組成を測定した。
【0128】
平均粒径
以下の実施例及び比較例において、Chengdu Jingxin Powder Analyse Instrument Co., Ltd.(中国)より市販されているレーザ粒子サイザー(Laser Particle Sizer)によってドープ酸化スズの平均粒径を測定した。
【0129】
光反射率
以下の実施例及び比較例において、GJB 5023.1−2003における所定の方法により、Lambda 750 UV/VIS/NIR分光光度計を用い、波長1064nmでドープ酸化スズの光反射率を測定した。
【0130】
接着性
以下の実施例及び比較例において、クロスカットプロセスによって金属層とポリマーシートとの間の接着性を測定した。具体的には、クロスカットナイフを用いて被測定試料の表面を100の格子(1mm×1mm)に切断した。隣接する格子間の間隙は、金属層の底部に達するように形成した。試験領域の破片をブラシで清掃し、次いで粘着テープ(3M600粘着紙)を試験する格子に貼り付けた。貼り付けた粘着紙の一端を急速に垂直方向に引き剥がした。同じ格子領域で2度の同一の試験を行った。接着の程度を、以下の基準に従って測定した。
グレード5B:切り口が滑らかであり、格子の切り口及び切断交点の金属層が脱落しない。
グレード4B:切断交点の金属層が部分的に除去されるが、除去されるものが金属層の5%(面積率)を超えない。
グレード3B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の5%〜15%(面積率)が除去される。
グレード2B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の15%〜35%(面積率)が除去される。
グレード1B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の35%〜65%(面積率)が除去される。
グレード0B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の65%超(面積率)が除去される。
結果を表1に示す。
【0131】
実施形態1
本実施形態は以下の工程を含む。
【0132】
工程1)SnO
2の粒子をNb
2O
5及びエタノールと共に粉砕機中で2時間粉砕し、第1の混合物を形成した。100重量部のSnO
2及びNb
2O
5に対して、エタノールの量は250重量部であった。SnO
2及びNb
2O
5の総量に対して、Nb
2O
5の含有量は10重量%であった。第1の混合物を、空気雰囲気下、60℃で3時間乾燥させ、平均粒径1.5μmの第2の混合物を得た。第2の混合物を、空気雰囲気下、1050℃で5時間焼結し、平均粒径1.2μmの粉体に粉砕した。粉体はドープ酸化スズを含んでおり、そのCIELab色値及び光反射率を表1に記載する。
【0133】
工程2)ドープ酸化スズの粉体を、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6Tと称する)及び酸化防止剤1010と混合して第3の混合物を形成し、次いで第3の混合物を押出機で押し出しペレット化し、ペレットを形成した。ペレットを射出成形モールドで射出成形し、ドープ酸化スズを含むPA6Tシートを形成した。100重量部のPA6Tに対して、ドープ酸化スズの量は5重量部であり、酸化防止剤1010の量は10重量部であった。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0134】
工程3)PA6Tシートの表面に対し、YAGレーザにより提供されるレーザを照射し、PA6Tシートの表面の所定部分(受像部の構造に相当)のPA6Tを除去した。レーザは、波長1064nm、パワー5W、周波数30kHz、走査速度1000mm/s、かつ充填距離30μmであった。
【0135】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートを、Cu溶液を用いて1時間化学めっきし、PA6Tシートの表面の所定部分に金属層を形成した。金属層は、アンテナとして使用されてもよい。Cu溶液は、0.12mol/LのCuSO
4・5H
2O、0.14mol/LのNa
2EDTA・2H
2O、10mg/Lのフェロシアン化カリウム、10mg/Lの2,2’−ビピリジン、及び0.10mol/Lのグリオキシル酸を含んでいた。Cu溶液は、温度が50℃、pHが12.5〜13であり、pHはNaOH及びH
2SO
4で調整した。
【0136】
次いで金属層が形成されたPA6Tシートを観察し、金属層が、めっきの漏れなくPA6Tシート上に連続した完全な回路を形成したことが分かった。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0137】
比較実施形態1
本実施形態は以下の工程を含む。
【0138】
工程1)SnO
2粒子(実施形態1における工程1)の原料)を、PA6T及び酸化防止剤1010と混合して混合物を形成した後、実施形態1の工程2)に記載するものと同様の条件で混合物を押し出しペレット化し、酸化スズを含むPA6Tシートを形成した。100重量部のPA6Tに対して、SnO
2粒子の量は5重量部であり、酸化防止剤1010の量は10重量部であった。
【0139】
工程2)工程1)で得られたPA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0140】
工程3)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0141】
PA6Tシート上に完全な金属回路を形成することができないことが観察された。
【0142】
比較実施形態2
本実施形態は以下の工程を含む。
【0143】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、Nb
2O
5の代わりに同量のSb
2O
3を用いたことを除き、実施形態1の工程1)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0144】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが比較実施形態2の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0145】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0146】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0147】
PA6Tシート上に金属層が形成されたものの、めっきの漏れがあることが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0148】
比較実施形態3
本実施形態は以下の工程を含む。
【0149】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、Nb
2O
5の代わりに同量のV
2O
5を用いたことを除き、実施形態1の工程1)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0150】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが比較実施形態3の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0151】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0152】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0153】
PA6Tシート上に金属層が形成されたものの、めっきの漏れがあることが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0154】
比較実施形態4
本実施形態は以下の工程を含む。
【0155】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、第2の混合物を窒素雰囲気下で焼結したことを除き、実施形態1の工程1)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0156】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが比較実施形態4の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0157】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0158】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0159】
完全な金属回路をPA6Tシート上に形成することができないことが観察された。
【0160】
実施形態2
本実施形態は以下の工程を含む。
【0161】
工程1)実施形態1の同様の工程1)でドープ酸化スズを調製した。
【0162】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、100重量部のPA6Tに対して、ドープ酸化スズの量を3重量部としたことを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。
【0163】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0164】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0165】
めっきの漏れなく、PA6Tシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0166】
実施形態3
本実施形態は以下の工程を含む。
【0167】
工程1)実施形態1の同様の工程1)でドープ酸化スズを調製した。
【0168】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、100重量部のPA6Tに対し、ドープ酸化スズの量を1重量部としたことを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。
【0169】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0170】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0171】
めっきの漏れなく、PA6Tシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0172】
実施形態4
本実施形態は以下の工程を含む。
【0173】
工程1)SnO
2粒子をNb
2O
5及びエタノールと共に粉砕機中で3時間粉砕し、第1の混合物を形成した。100重量部のSnO
2及びNb
2O
5に対して、エタノールの量は300重量部であった。SnO
2及びNb
2O
5の総量に対して、Nb
2O
5の含有量は5重量%であった。第1の混合物を、空気雰囲気下、80℃で2時間乾燥させ、平均粒径2μmの第2の混合物を得た。第2の混合物を、空気雰囲気下、1300℃で8時間焼結し、平均粒径0.5μmの粉体に粉砕した。粉体はドープ酸化スズを含んでおり、そのCIELab色値及び光反射率を表1に記載する。
【0174】
工程2)ドープ酸化スズの粉体を、ポリカーボネート(PCと称する)、酸化防止剤1098、及びタルクと混合して第3の混合物を形成し、次いで第3の混合物を押出機で押し出しペレット化し、ペレットを形成した。ペレットを射出成形モールドで射出成形し、ドープ酸化スズを含むPCシートを形成した。100重量部のPCに対して、ドープ酸化スズの量は10重量部であり、酸化防止剤1098の量は8重量部であり、タルクの量は15重量部であった。PCシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0175】
工程3)PCシートの表面に対し、YAGレーザにより提供されるレーザを照射し、PCシートの表面の所定部分(受像部の構造に相当)のPCを除去した。レーザは、波長1064nm、パワー4W、周波数30kHz、走査速度1000mm/s、かつ充填距離30μmであった。
【0176】
工程4)レーザを照射したPCシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0177】
めっきの漏れなく、PCシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPCとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0178】
実施形態5
本実施形態は以下の工程を含む。
【0179】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、第2の混合物を空気雰囲気下、1350℃で8時間焼結したことを除き、実施形態4の工程1)と実質的に同様とした。
【0180】
工程2)PCシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが実施形態5の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態4の工程2)と実質的に同様とした。
【0181】
工程3)PCシートに対し、実施形態4の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0182】
工程4)レーザを照射したPCシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0183】
めっきの漏れなく、PA6Tシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0184】
実施形態6
本実施形態は以下の工程を含む。
【0185】
工程1)SnO
2粒子をNb
2O
5及びエタノールと共に粉砕機中で6時間粉砕し、第1の混合物を形成した。100重量部のSnO
2及びNb
2O
5に対して、エタノールの量は400重量部であった。SnO
2及びNb
2O
5の総量に対して、Nb
2O
5の含有量は4重量%であった。第1の混合物を、空気雰囲気下、50℃で6時間乾燥させ、平均粒径1μmの第2の混合物を得た。第2の混合物を、空気雰囲気下、1200℃で8時間焼結し、平均粒径0.8μmの粉体に粉砕した。粉体はドープ酸化スズを含んでおり、そのCIELab色値及び光反射率を表1に記載する。
【0186】
工程2)ドープ酸化スズの粉体を、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBTと称する)、酸化防止剤1098、及びタルクと混合して第3の混合物を形成し、次いで第3の混合物を押出機で押し出しペレット化し、ペレットを形成した。ペレットを射出成形モールドで射出成形し、ドープ酸化スズを含むPBTシートを形成した。100重量部のPBTに対して、ドープ酸化スズの量は15重量部であり、酸化防止剤1098の量は8重量部であり、タルクの量は20重量部であった。PBTシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0187】
工程3)PBTシートの表面に対し、YAGレーザにより提供されるレーザを照射し、PCシートの表面の所定部分(受像部の構造に相当)のPBTを除去した。レーザは、波長1064nm、パワー6W、周波数30kHz、走査速度1000mm/s、かつ充填距離30μmであった。
【0188】
工程4)レーザを照射したPBTシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0189】
めっきの漏れなく、PBTシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPBTとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0190】
【表1】
【0191】
1:PA6T及び酸化防止剤1010のみを混合してドープ酸化スズを含まない第3の混合物を形成し、100重量部のPA6Tに対して、酸化防止剤1010の量を10重量部としたことを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様の工程でPA6Tシートを調製した。PA6Tシートは、CIELab色値L
*が83.89であり、CIELab色値aが−0.15であり、CIELab色値bが1.56である。
【0192】
2:PC、酸化防止剤1098、及びタルクのみを混合してドープ酸化スズを含まない第3の混合物を形成し、100重量部のPCに対して、酸化防止剤1098の量を8重量部とし、タルクの量を15重量部としたことを除き、実施形態4の工程2)と実質的に同様の工程でPCシートを調製した。PCシートは、CIELab色値L
*が83.12であり、CIELab色値aが1.54であり、CIELab色値bが4.35である。
【0193】
3:PBT、酸化防止剤1098、及びタルクのみを混合してドープ酸化スズを含まない第3の混合物を形成し、100重量部のPBTに対して、酸化防止剤1098の量を8重量部とし、タルクの量を20重量部としたことを除き、実施形態6の工程2)と実質的に同様の工程でPBTシートを調製した。PBTシートは、CIELab色値L
*が87.55であり、CIELab色値aが2.30であり、CIELab色値bが2.33である。
【0194】
表1から、酸化性雰囲気下で焼結されたニオブ含有元素がドープされた酸化スズから得られたドープ酸化スズは、明色であり、光に対して非常に強い吸収力を有することが分かる。よって、ドープ酸化スズは、ポリマー基材の表面の選択的金属化方法において、化学めっき促進剤として化学めっきを促進することが可能であった。従って、ポリマー基材、特に明色のポリマー基材中にドープ酸化スズを予め設けることは、ポリマー基材の元の色を覆わず、又は基本的に覆わず、ポリマー基材の色を明らかに妨害することがない。
【0195】
更に、レーザを照射して表面の所定部分のPA6Tを除去したポリマー基材は、良好なめっき活性を有していた。化学めっきの間に、高めっき速度が得られ、めっきの漏れなく連続した金属層が形成されると共に、金属層とポリマー基材との間の高接着性が得られた。
【0196】
実施形態7
本実施形態は以下の工程を含む。
【0197】
工程1)実施形態1の工程1)で得られた100gのドープ酸化スズ(平均粒径200nmの粉体に粉砕したもの)、30gの結合剤CAB381−0.5(Eastman Chemical Company(US)より市販)、150gのn−エタノール、1.5gの分散剤DISPERBYK−165(BYK Company(GE)より市販)、0.5gの消泡剤BYK−051(BYK Company(GE)より市販)、0.6gのレベリング剤BYK−333(BYK Company(GE)より市販)、及び0.75gの硬化ヒマシ油(Wuhan Jinnuo Chemical Company(中国)より市販)を均一に混合してインク組成物を得た。
【0198】
工程2)インク組成物をAl
2O
3セラミック基材の表面上にインクジェット印刷により塗布した後、インク組成物を塗布したAl
2O
3セラミック基材を100℃の温度で3時間乾燥させた。これにより、セラミック基材の表面上にインク層が形成された。インク層は所定のパターンを形成しており、受信機用のアンテナとして使用された。インク層を走査型電子顕微鏡で試験したところ、インク層の厚みは10μmであった。
【0199】
工程3)インク層に対し、波長1064nm、パワー2W、周波数20kHz、移動速度800mm/s、かつ充填距離20μmのレーザを照射した。
【0200】
工程4)照射されたインク層を有するセラミック基材に対し、0.12mol/LのCuSO
4・5H
2O、0.14mol/LのNa
2EDTA・2H
2O、10mg/Lのフェロシアン化カリウム、10mg/Lの2,2’−ビピリジン、及び0.10mol/Lのグリオキシル酸を含むCu溶液を用いて、化学めっきを1時間施した。Cu溶液は、温度が50℃、pHが12.5〜13であり、pHはNaOH及びH
2SO
4で調整した。従って、セラミック基材上に金属層が形成された。
【0201】
次いでセラミック基材を観察したところ、金属層がセラミック基材上に連続した完全な回路を形成したことが分かった。めっき速度、及び金属層とセラミック基材との間の接着性を、共に表2に記載した。
【0202】
実施形態8
本実施形態は、工程3)を行わなかったこと、即ち、セラミック基材の表面上にインク層を塗布した後に化学めっき工程を直接行ったこと以外は、実施形態7と実質的に同様の工程を含む。
【0203】
セラミック基材を観察したところ、金属層がセラミック基材上に連続した完全な回路を形成したことが分かった。めっき速度、及び金属層とセラミック基材との間の接着性を、共に表2に記載した。
【0204】
実施形態9
本実施形態は以下の工程を含む。
【0205】
工程1)実施形態4の工程1)で得られた100gのドープ酸化スズ(平均粒径100nmの粉体に粉砕したもの)、45gのシリアル番号Mowitalのポリビニルブチラール(Kuraray Company(日本)より市販)、及び80gのトルエンを均一に混合してインク組成物を得た。
【0206】
工程2)インク組成物をポリ(エーテル−エーテル−ケトン)(PEEK)基材の表面上に塗布した後、インク組成物を塗布したPEEK基材を120℃の温度で6時間乾燥させた。これにより、セラミック基材の表面上にインク層が形成された。インク層は所定のパターンを形成しており、受信機用のアンテナとして使用された。インク層を走査型電子顕微鏡で試験したところ、インク層の厚みは20μmであった。
【0207】
工程3)インク層に対し、波長1064nm、パワー3W、周波数20kHz、移動速度1000mm/s、かつ充填距離20μmのレーザを照射した。
【0208】
工程4)照射されたインク層を有するセラミック基材に対し、実施形態7の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0209】
次いでセラミック基材を観察したところ、金属層がセラミック基材上に連続した完全な回路を形成したことが分かった。めっき速度、及び金属層とセラミック基材との間の接着性を、共に表2に記載した。
【0210】
実施形態10
本実施形態は以下の工程を含む。
【0211】
工程1)実施形態6の工程1)で得られた100gのドープ酸化スズ(平均粒径80nmの粉体に粉砕したもの)、50gのEVA結合剤(Eastman Chemical Company(US)より市販)、200gのトルエン、2gの分散剤ANTI−TERRA−U 80(BYK Company(GE)より市販)、1gの消泡剤BYK−065(BYK Company(GE)より市販)、0.8gのレベリング剤BYK−306(BYK Company(GE)より市販)、及び0.6gのヒドロキシエチルセルロース(Luzhou North Dadong Chemical Company(中国)より市販)を均一に混合してインク組成物を得た。
【0212】
工程2)インク組成物をガラス基材の表面上にインクジェット印刷により塗布した後、インク組成物を塗布したガラス基材を150℃の温度で4時間乾燥させた。これにより、ガラス基材の表面上にインク層が形成された。インク層は所定のパターンを形成しており、受信機用のアンテナとして使用された。インク層を走査型電子顕微鏡で試験したところ、インク層の厚みは15μmであった。
【0213】
工程3)ガラス基材に対し、実施形態7の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0214】
工程4)レーザを照射したガラス基材に対し、実施形態7の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0215】
次いでガラス基材を観察したところ、金属層がガラス基材上に連続した完全な回路を形成したことが分かった。めっき速度、及び金属層とセラミック基材との間の接着性を、共に表2に記載した。
【0216】
【表2】
【0217】
表2から、インク組成物のインクジェット印刷により絶縁性基材の表面上に形成されたインク層は化学的めっき活性を有しており、化学めっきによりインク層の表面上に金属層が形成されたことが分かる。
【0218】
本明細書を通じて、「一実施形態(an embodiment)」、「幾つかの実施形態」、「一実施形態(one embodiment)」、「別の実施例」、「一実施例」、「特定の実施例」、又は「幾つかの実施例」との参照は、その実施形態又は実施例に関して説明する特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて、様々な箇所における、「幾つかの実施形態では」、「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態では(in an embodiment)」、「別の実施例では」、「一実施例では」、「特定の実施例では」、又は「幾つかの実施例では」等の表現の出現は、必ずしも本開示の同一の実施形態又は実施例を指すものとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1以上の実施形態又は実施例において任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0219】
説明のための実施形態を示して説明したが、実施形態において、本開示の精神及び原理から逸脱することなく特許請求の範囲及びその均等物の範囲内の全ての変更、代替、及び修正がなされ得ることが、当業者には分かるであろう。