(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それらを考慮して、本開示の目的は、当技術分野、例えば、化学めっき促進剤として明色の金属酸化物を用いた、めっき速度が
低く、めっきの漏出
を伴う、化学めっきによるプラスチック等の絶縁性基材の表面上の選択的金属化により金属層を形成するための従来の方法に存在する少なくとも1つの問題を解決することにある。
【0006】
本開示の
第1の態様の実施形態は、ポリマー製品を提供する。前記ポリマー製品は、ポリマー基材と、前記ポリマー基材の表面の少なくとも一部に形成される金属層とを含
む。前記金属層で被覆される前記ポリマー基材の表面は、ポリマー組成物より形成され
る。前記ポリマー組成物は、ポリマーとドープ酸化スズとを含み、前記ドープ酸化スズのドープ元素はニオブを含
む。前記ドープ酸化スズは、CIELab色空間において、座標L
*値が約70〜約100であり、座標a値が約−5〜約5であり、座標b値が約−5〜約5である。
【0007】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの波長約1064nmの光に対する光反射率が60%を超えない。
【0008】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、酸化スズの含有量が約70重量%〜約99.9重量%であり、ニオブの含有量がNb
2O
5として計算して約0.1重量%〜約30重量%である。
【0009】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、平均粒径が約10nm〜約10μmである。
【0010】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、酸化スズと、ドープ元素を含む少なくとも1つの化合物とを含む粉体混合物を提供することと、前記粉体混合物を酸化性雰囲気中で焼結することとを含む工程によって調製され
る。前記化合物は、ドープ元素の酸化物、及び焼結によってドープ元素の酸化物を形成することが可能な前駆体の少なくとも一方を含む。
【0011】
幾つかの実施形態では、ポリマー組成物中、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約40重量部、好ましくは約1重量部〜約5重量部である。
【0012】
本開示の第2の態様の実施形態は、ポリマー基材の表面の選択的金属化方法を提供する。前記方法は、前記ポリマー基材の表面の少なくとも一部を、前記表面にエネルギー源を照射することにより除去する工程と、化学めっきにより前記ポリマー基材の表面に少なくとも1つの金属層を形成する工程とを含
む。前記ポリマー基材の表面がポリマー組成物により形成され
る。前記ポリマー組成物が、ポリマーとドープ酸化スズとを含み、前記ドープ酸化スズのドープ元素はニオブを含
む。前記ドープ酸化スズは、CIELab色空間において、座標L
*値が約70〜約100であり、座標a値が約−5〜約5であり、座標b値が約−5〜約5である。
【0013】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの波長約1064nmの光に対する光反射率が60%を超えない。
【0014】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、酸化スズの含有量が約70重量%〜約99.9重量%であり、ニオブの含有量がNb
2O
5として計算して約0.1重量%〜約30重量%である。
【0015】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、平均粒径が約10nm〜約10μmである。
【0016】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、酸化スズと、ドープ元素を含む少なくとも1つの化合物とを含む粉体混合物を提供することと、前記粉体混合物を酸化性雰囲気中で焼結することとを含む工程によって調製され
る。前記化合物は、ドープ元素の酸化物、及び焼結によってドープ元素の酸化物を形成することが可能な前駆体の少なくとも一方を含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、ポリマー組成物中、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約40重量部、好ましくは約1重量部〜約5重量部である。
【0018】
幾つかの実施形態では、エネルギー源はレーザである。
【0019】
幾つかの実施形態では、レーザは、約1064nmの波長と約3W〜40Wのパワーを有する。
【0020】
幾つかの実施形態では、ポリマー基材の一部の除去は、前記ポリマー基材の一部を気化することにより行われる。
【0021】
本開示の態様の実施形態は、前記方法により得られるポリマー製品を提供する。
【0022】
ドープ元素としてニオブを含むドープ酸化スズを用いて、ポリマー製品又はポリマー基材の金属化される表面を形成すれば、明色のドープ酸化スズが、ポリマー製品又はポリマー基材の色に干渉しない又は実質的に干渉しない。
【0023】
更に、本開示において言及するドープ酸化スズは、その金属元素を純金属に還元することなく強力な化学めっき促進能を有するものであり、即ち、ドープ酸化スズは、柔軟な使用範囲を有する化学めっき促進剤として用いることができる。ドープ酸化スズは、ポリマー等の絶縁性基材中に予め設けられるだけでなく、インク層として基材の表面上に直接的にコーティング又は印刷されてもよい。更に重要なことに、ドープ酸化スズを化学めっき促進剤として用いると、めっき速度を速めることができ、金属層と絶縁性基材との間の
向上した接着層と共に連続した金属層を形成することができ、めっき部品の製造効率と品質との両方を改善
される。
【0024】
本開示に係るポリマー基材の表面の選択的金属化方法は、色に関する高い要求を有する製品(例えば、より明るい色の製品)の調製において特に有用である。
【0025】
本開示の実施形態の更なる態様及び利点は、一部は以下の説明に記載され、一部は以下の説明から明らかとなり、又は本開示の実施形態の実施から理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の実施形態を詳細に記述する
。本明細書に記載する実施形態は、説明及び例示のためのものであり、本開示を一般的に理解するために使用されるものである。実施形態が本開示を限定するものと解釈してはならない。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的で、特段の断りのない限り、数値範囲の定義は常に極値を含む。
【0028】
また、「第1(first)」及び「第2(second)」等の用語は、本明細書中では説明の目的で使用されるものであり、相対的な重要性又は意義を示唆又は意味することを意図するものではない。
【0029】
以下、本開示の実施形態に係るポリマー製品について、詳細に述べる。
【0030】
本開示の実施形態によれば、ポリマー製品は、ポリマー基材と、前記ポリマー基材の表面の少なくとも一部に形成される金属層とを含
む。前記金属層で被覆される前記ポリマー基材の表面は、ポリマー組成物より形成され
る。前記ポリマー組成物は、ポリマーとドープ酸化スズとを含
む。前記ドープ酸化スズは、そのドープ元素としてニオブを含む。
【0031】
本開示の実施形態によれば、ドープ酸化スズの総重量に対して、酸化物として計算するときに、Snの含有量はNbの含有量を下回らない。好ましくは、ドープ酸化スズにおけるSnの含有量はNbの含有量よりも多い。
【0032】
1つの実施形態では、ドープ酸化スズの総重量に対して、酸化スズの含有量は約70重量%〜約99.9重量%、好ましくは約90重量%〜約96重量%であ
る。ニオブの含有量はNb
2O
5として計算して約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約1重量%〜約20重量%、より好ましくは約4重量%〜約10重量%である。ドープ酸化スズの組成は、任意の従来の分析法及び試験法によって決定することができ、例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)によって試験することができ、又はその製造で使用される原材料の量によって決定することができる。本開示によれば、特段の断りのない限り、数値範囲の定義は常にその端点値を含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、平均粒径が約10nm〜約10μm、好ましくは約50nm〜約5μm、より好ましくは約80nm〜約2.5μmである。平均粒径は
、任意の従来の方法によって決定することができ、例えば、レーザ粒子分析器によって測定することができる。
【0034】
本開示の実施形態のドープ酸化スズは、明色を有し、CIELab色値L
*が約70〜約100であり、CIELab色値aが約−5〜約5であり、CIELab色値bが約−5〜約5である。言い換えると、ドープ酸化スズは、CIELab色空間において、座標L
*値が約70〜約100であり、座標a値が約−5〜約5であり、座標b値が約−5〜約5である。好ましい実施形態では
、開示のドープ酸化スズの場合、CIELab色値L
*が約80〜約90であり、CIELab色値aが約−5〜約2であり、CIELab色値bが約2〜約4である。上述の好ましいCIELabの色値の範囲のドープ酸化スズは、一方で明色を有し、他方で良好な化学めっき促進能を示
す。上述のドープ酸化スズは、化学めっき加工の間に、
向上した接着金属層を高めっき速度で基材上に形成することができる。
【0035】
ドープ酸化スズは、光に対する非常に強力な吸収力を有し、波長約1064nmの光に対して示す反射率が、60%を超えず、更には40%を超えず、例えば約20%〜約30%である。本開示によれば、ドープ酸化スズの光反射率は、所定の方法によって試験される(GJB 5023.1−2003を参照のこと)。
【0036】
幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、酸化スズと、ニオブを含むドープ元素を含む少なくとも1つの化合物とを含む粉体混合物を提供することと、次いで前記粉体混合物を酸化性雰囲気中で焼結することとを含む工程によって調製することができる。言い換えると、幾つかの実施形態では、ドープ酸化スズは、酸化スズと、ニオブを含むドープ元素を含む少なくとも1つの化合物とを含む粉体混合物を提供する工程と、次いで粉体混合物を酸化性雰囲気中で焼結する工程とによって調製されてもよい。得られる化合物は、ドープ元素の酸化物、及び焼結によってドープ元素の酸化物を形成することが可能な前駆体の少なくとも一方を含む。ニオブの酸化物等のドープ元素の酸化物としては、
Nb2O5であってもよい
。焼結下でドープ元素の酸化物を形成するために用いられる前駆体は、水酸化物(例えば、水酸化ニオブ)及び/又はゲル(例えば、ニオブ含有ゲル)等のドープ元素の酸化物を形成することができる任意の化合物であってもよい。粉体混合物は、後述するように半乾式粉砕法又は湿式粉砕法によって調製されるが、前駆体は、半乾式粉砕法又は湿式粉砕法で使用される分散剤に不溶性の化合物であってもよい。
【0037】
粉体混合物中の酸化スズ及び前記化合物の量は、ドープ酸化スズ中の所望のドープ元素の含有量に応じて選択することができる。通常、粉体混合物の組成を調節して以下の含有量を生成することができる。即ち、焼結されたドープ酸化スズの総重量に対して、酸化スズの量は約70重量%〜約99.9重量%、好ましくは約90重量%〜約96重量%であり、ニオブの量はNb
2O
5として計算して約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは1重量%〜約20重量%、より好ましくは約4重量%〜約10重量%である。
【0038】
粉体混合物を調製する方法に特段の制限はなく、実際の実施に応じ
て選択することができる。幾つかの実施形態では、酸化スズ及びドープ元素を含む金属化合物を粉砕することによって粉体を得ることができる。粉砕は、乾式粉砕法、湿式粉砕法、又は半乾式粉砕法によって行うことができる。幾つかの実施形態では、半乾式粉砕法及び湿式粉砕法は、分散剤を用いて実行することができる。分散剤は、従来の粉砕法において通常使用される任意の分散剤であってもよい。幾つかの実施形態では、分散剤は、水及び/又はC1〜C5のアルコール、例えばエタノールであってもよい。分散剤の量に特段の制限はなく
、知られているいずれの
量であってもよい。幾つかの実施形態では、粉体は湿式粉砕法又は半乾式粉砕法によって得ることができる
。湿式粉砕法及び半乾式粉砕法は、乾燥工程を更に含んでいてもよい。乾燥は、
従来の乾燥工程によって実行することができる。幾つかの実施形態では、乾燥は、約40℃〜約120℃の範囲の温度で実行される。幾つかの実施形態では、乾燥は、酸素を含む雰囲気下で、又は非反応性雰囲気下で実行することができる。酸素を含む雰囲気は、空気、又は酸素と非反応性ガスとの組合せであってもよい。非反応性ガスは、粉体の成分又は調製された金属化合物と化学的に反応しない任意のガスを指し得る。例えば、非反応性ガスは、周期表の第0族から選択されるもの、又は窒素であってもよい。幾つかの実施形態では、非反応性ガスはアルゴンであってもよい。
【0039】
本開示における粉体混合物の粒子径に特段の制限はなく、
実用上の要件に基づいて選択することができる。幾つかの実施形態では、粉体混合物は、平均粒径が約50nm〜約10μmである。幾つかの実施形態では、粉体混合物は、平均粒径が約500nm〜約5μmである。
【0040】
幾つかの実施形態では、焼結は、約500℃〜約1800℃の範囲の温度で行われてもよい。幾つかの実施形態では、焼結は、約600℃〜約1500℃の範囲の温度で行われてもよい。幾つかの実施形態では、焼結は、約1300℃を超えない温度で行われてもよく、こうして得られたドープ酸化スズは、粉体混合物、即ち原料と同様の明色を有する。ドープ酸化スズの促進力を更に向上させる観点から、焼結は、約800℃より高温で行うことが好ましく、約1000℃より高温で行うことがより好ましい。焼結温度が約1000℃〜1300℃であると、得られるドープ酸化スズは粉体混合物と類似した明色を有し、良好な化学めっき促進能を示す。焼結の条件は、焼結温度に応じて選択することができ、焼結は約1時間〜約30時間、好ましくは約4時間〜約10時間の時間範囲で行ってもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、焼結は、酸化性雰囲気下で実行してもよい。酸化性雰囲気は、一般に酸素を含む雰囲気である
。例えば、酸素を含む雰囲気は、純酸素雰囲気であってもよい。また、酸素を含む雰囲気は、酸素と非反応性ガスとの組合せであってもよい。非反応性ガスは、原料及び焼結工程の生成物と化学的に反応しない任意のガスを指し得る。例えば、非反応性ガスは、周期表の第0族から選択されるもの、又は窒素であってもよい。幾つかの実施形態では、酸素及び非反応性ガスを含む酸化性雰囲気中で、酸素の体積量が約70vol%を超えていることが好まし
い。酸素を含む雰囲気は空気であってもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、前記方法は、最終生成物により
望ましい特性を付与するために、焼結工程で得られた固体生成物を粉砕する工程を更に含む。幾つかの実施形態では、粉砕工程から得られる粉砕生成物の粒径は、平均粒径が約10nm〜約10μmの範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、粉砕生成物の平均粒径は、約50nm〜約5μmの範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、粉砕生成物の平均粒径は、約80nm〜約2.5μmの範囲であってもよい。乾式粉砕法、湿式粉砕法、及び半乾式粉砕法を含む群から選択される少なくとも1つの方法によって更なる粉砕が行われてもよく、これらは
従来の方法を含んでよく、上述のものである。幾つかの実施形態では、半乾式粉砕法及び湿式粉砕法は、分散剤を用いて実行することができる。分散剤は、従来の粉砕法において通常使用される任意の分散剤であってもよい。幾つかの実施形態では、分散剤は、水及び/又はC1〜C5のアルコール、例えばエタノールであってもよい。分散剤の量に特段の制限はなく
、知られている
いずれの量であってよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、ポリマー組成物中、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約40重量部である。幾つかの実施形態では、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約30重量部である。幾つかの実施形態では、ポリマー組成物中、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約20重量部である。幾つかの実施形態では、ポリマー組成物中、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの含有量は、約1重量部〜約10重量部である。上述のドープ酸化スズの強力な化学的めっき促進能のため、100重量部のポリマーに対して、ドープ酸化スズの量が約1重量部〜約5重量部、又は約1重量部〜約3重量部等の低含有量であっても、ポリマー組成物により形成されたポリマー製品は、ポリマーを剥離するためのエネルギー線照射後も依然として無電解めっきが可能であり、高めっき速度を得ることができ、基材に対する接着性が高い完全な連続金属層を形成することができる。
【0044】
ポリマー組成物中のポリマーの種類に特段の制限はなく、実用上の要件に応じて選択することができる。幾つかの実施形態では、ポリマーは、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーであってもよい。一実施形態では、
ポリマー組成物は、ベースポリマーを含み、前記ベースポリマーは、プラスチック、ゴム、及び繊維を含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。限定されない例として、幾つかの実施形態では、ポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)等のポリオレフィン;ポリカーボネート;ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ(ジアリルイソフタレート)、ポリ(ジアリルテレフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、及びポリ(ブチレンテレフタレート)等のポリエステル;ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)、ポリ(ヘキサメチレンスクシンアミド)、ポリ(ヘキサメチレンラウラミド)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)、ポリ(デカメチレンセバカミド)、ポリウンデカンアミド、ポリ(ラウラミド)、ポリ(オクタンアミド)、ポリ(9−アミノノナン酸)、ポリカプロラクタム、ポリ(フェニレンテレフタミド)、ポリ(ヘキシレンイソフタルアミド)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、及びポリ(ノニレンテレフタミド)等のポリアミド;ポリ(芳香族エーテル);ポリエーテルイミド;ポリカーボネート/(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)合金;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリイミド;ポリスルホン;ポリ(エーテル−エーテル−ケトン);ポリベンズイミダゾール;フェノールホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;メラミン−ホルムアルデヒド樹脂;エポキシド樹脂;アルキド樹脂;並びにポリウレタンを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0045】
幾つかの実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも1つの添加剤を更に含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、添加剤は、例えば、フィラー、酸化防止剤、光安定剤、及び潤滑剤等であってもよい。添加剤を添加することにより、ポリマー製品の性能及び特性を改善することができ、ポリマー組成物の加工特性を改善することができる。添加物の色が明色である限り、添加物の含有量及び種類に特段の制限はない。添加剤は、例えば、実用上の要件に応じて選択することができる。
【0046】
ポリマー組成物への添加剤として用いられるフィラーは、レーザの作用下で(物理的に又は化学的に)非反応性である任意のフィラーであってもよい。幾つかの実施形態では、フィラーは、タルク及び/又は炭酸カルシウムから選択される少なくとも1つであってもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、フィラーはガラス繊維であってもよい。ガラス繊維の添加により、除去される基材の厚み(言い換えると、ポリマー製品の上面から露出したドープ酸化スズまでの距離)を顕著に増加させることができ、これによって後続の化学めっきプロセスの間のドープ酸化スズ上への金属の析出を促進することができる。
【0048】
フィラーは、レーザ等のエネルギー源の作用ではたらく任意の従来の無機フィラーであってもよい。幾つかの実施形態では、フィラーはまた、マイクロガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、パールパウダー、ウォラストナイト、ケイソウ土、カオリン、石炭微粉、陶土、マイカ、オイルシェールアッシュ、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、シリカ、タルク、及び酸化亜鉛
を含む群から選択されてもよい。
【0049】
ポリマー組成物によって形成されるポリマー製品への添加剤として用いられる酸化防止剤は、従来技術における任意の従来の酸化防止剤であってもよい。幾つかの実施形態では、酸化防止剤は、一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤を含んでいてもよい。一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との比率は、例えば、酸化防止剤の種類に応じて適宜選択することができる。幾つかの実施形態では、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との重量比は、約1:1〜4であってもよい。
【0050】
幾つかの実施形態では、一次酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であってもよい。例として、但し限定されるものではないが、幾つかの実施形態では、一次酸化防止剤は、酸化防止剤1098又は酸化防止剤1010であってもよく、ここで、酸化防止剤1098は、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヘキサンジアミンを主成分とするものであり、酸化防止剤1010は、テトラ[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトールを主成分とするものである。
【0051】
幾つかの実施形態では、二次酸化防止剤は、亜リン酸エステル系酸化防止剤であってもよい。例として、限定されるものではないが、幾つかの実施形態では、二次酸化防止剤は、トリ(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)フォスフォライトを主成分とする酸化防止剤168であってもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、ポリマー物品の添加剤として用いられる光安定剤は、ヒンダードアミン系のものであってもよい。幾つかの実施形態では、光安定剤は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートであってもよい。光安定剤は、当該技術分野で知られているいずれのものであってもよく、本開示において特段の制限はない。
【0053】
幾つかの実施形態では、潤滑剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVAワックス)、ポリエチレン(PEワックス)、及びステアレートを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。潤滑剤を添加することにより、ポリマー製品の流動性を向上させることができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、添加剤の量は、添加剤の機能及び種類に応じて適宜選択することができる。幾つかの実施形態では、ポリマー組成物100重量部に対して、フィラーの含有量は1重量部〜40重量部の範囲であってもよく、酸化防止剤の含有量は約0.1重量部〜約10重量部の範囲であってもよく、光安定剤の含有量は約0.1重量部〜約10重量部の範囲であってもく、潤滑剤の含有量は約0.1重量部〜約10重量部の範囲であってもよい。
【0055】
幾つかの実施形態では、ポリマー基材の表面の一部のみをポリマー組成物により形成してもよ
い。或いは、ポリマー基材全体を上述のポリマー組成物により形成してもよく、即ち、ポリマー基材
全体がポリマー組成物により形成される。費用低減の観点から、その厚みが非常に大きければ、ポリマー基材の表面のみ又は表面の一部のみをポリマー組成物により形成してもよ
い。厚みがあまり大きくなければ、ポリマー基材をポリマー組成物により一体的に形成してもよい。
【0056】
ポリマー基材の大きさは、状況の使用目的に応じて適宜選択することができ、本開示において特段の制限はない。ポリマー基材は、実用上の用途に応じて任意の形状とすることができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、ポリマー基材は、当技術分野で知られている任意の従来の成形プロセスによって調製することができ、本開示において特段の制限はない。幾つかの実施形態では、成形プロセスは射出成形によって行われる。別の実施形態では、成形プロセスは押出成形によって行われる。
【0058】
本開示によれば、金属層の厚みは、実用上の要件によって選択されてもよく、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、金属層の厚みは、約0.1μm〜約10μmである。
【0059】
幾つかの実施形態では、金属層の形状は、実用上の要件によって選択されてもよい。例えば、化学めっき後に得られるポリマー物品を用いて回路基板を作製する場合、金属層は金属層パターン
を有してもよい。
【0060】
本開示の第2の態様の実施形態は、ポリマー基材の表面の選択的金属化方法を提供する。前記方法は、前記ポリマー基材の表面の少なくとも一部を、前記表面にエネルギー源を照射することにより除去する工程と、化学めっきにより前記ポリマー基材の表面に少なくとも1つの金属層を形成する工程とを含
む。前記ポリマー基材の表面がポリマー組成物により形成され
る。前記ポリマー組成物が、ポリマーとドープ酸化スズとを含み、前記ドープ酸化スズのドープ元素はニオブを含
む。前記ドープ酸化スズは、CIELab色空間において、座標L
*値が約70〜約100であり、座標a値が約−5〜約5であり、座標b値が約−5〜約5である。
【0061】
本開示によれば、ドープ酸化スズ、ポリマー組成物、及びポリマー基材は、上に詳細に記載される。
【0062】
幾つかの実施形態では、エネルギー源は、レーザ、電子ビーム、及びイオンビームを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。幾つかの実施形態では、エネルギー源はレーザである。レーザにより提供されるエネルギーは
、その表面の照射領域内のポリマー基材を気化して照射領域内のドープ酸化スズを露出させる
のに十分に高い。
【0063】
幾つかの実施形態では、照射工程はレーザを用いて行われ、
これは、157nm〜10600nmの波長と1W〜100Wのパワーを有していてもよい。
【0064】
ドープ酸化スズは、エネルギー源が提供するエネルギーに対する優れた吸収能力を有するので、提供するエネルギーが比較的低いエネルギー源での照射であっても、所定部分のポリマー基材を除去して所定部分のドープ酸化スズを露出させることができる。一実施形態では、レーザは、1064nm〜10600nmの波長を有し、3W〜50Wのパワーを有していてもよい。別の実施形態では、レーザは、1064nmの波長を有し、3W〜40Wのパワーを有していてもよい。更なる実施形態では、レーザは、1064nmの波長を有し、5W〜10Wのパワーを有していてもよい。ポリマー基材の表面の所定部分がパターンを形成することができ、その結果、所定部分に形成された金属層がポリマー基材上に金属パターンを形成することができる。レーザを用いると、金属パターンの精度を向上させることができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、照射工程は電子ビームを用いて行われてもよく、
これは、10W/cm
2〜10
11W/cm
2のパワー密度を有していてもよい。
【0066】
幾つかの実施形態では、照射工程はイオンビームを用いて行われてもよく、
これは、10eV〜10
6eVのエネルギーを有していてもよい。
【0067】
幾つかの実施形態では、化学めっきは、以下の工程を用いて実行することができる。照射を受けたポリマー基材を、
銅の溶液(Cu溶液
と称する)に浸漬する。幾つかの実施形態では、Cu溶液はCu塩を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、Cu溶液は還元剤を更に含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、Cu溶液のpHは、約12〜約13の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、還元剤は、Cu塩中のCuイオンをCu金属に還元することができる。幾つかの実施形態では、還元剤は、グリオキシル酸、ジアミド、及びリン酸ナトリウムを含む群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0068】
化学めっきにより形成される金属層の厚みは、実用上の要件に
基づいて選択されるものであり、特段の制限はない。幾つかの実施形態では、金属層の厚みは、約0.1μm〜約10μmである。
【0069】
幾つかの実施形態では、金属層の形状は、実用上の要件に
基づいて選択されてもよい。例えば、化学めっき後に得られるポリマー物品を用いて回路基板を作製する場合、金属層は金属層パターンであってもよい。
【0070】
幾つかの実施形態では、前記方法は、電気めっき工程又は化学めっき工程を更に含んでいてもよい。電気めっき又は化学めっきは、少なくとも1回行われてもよく、その結果、先の金属層と同じ金属又は異なる金属のいずれかの追加の金属層が、先の金属層上に形成されてもよい。幾つかの実施形態では、第1の化学めっき工程でポリマー基材の表面にCu層が形成され、次いで後続の電気めっき又は化学めっきでCu層上にNi層が形成される。Ni層を追加することにより、Cu層の酸化を防止することができる。
【0071】
本開示の第3の態様の実施形態は、上述の方法で得られるポリマー製品を提供する。前記ポリマー製品は、ポリマー基材と、前記ポリマー基材の表面の少なくとも一部に形成される金属層とを含む。前記金属層は、前記ポリマー基材に対する接着性が高い完全な連続金属層である。
【0072】
上述した特徴、及び以下に説明する特徴は、規定する特定の組合せだけでなく、他の組合せ又はそれ自体において、本発明の範囲から逸脱することなく使用され得ることが理解されよう。
【0073】
本発明のより良い理解のため、及びその実用上の実施形態のため、幾つかの例示的かつ非限定的な実施例を以下に示す。
【実施例】
【0074】
試験
以下の実施
形態及及び比較
実施形態で得られたドープ酸化スズ及びポリマー製品の試料について、以下の試験を行った。
【0075】
組成
以下の実施
形態及び比較
実施形態において、その調製に用いた原料の量によりドープ酸化スズの組成を測定した。
【0076】
平均粒径
以下の実施
形態及び比較
実施形態において、Chengdu Jingxin Powder Analyse Instrument Co., Ltd.(中国)より市販されているレーザ粒子サイザー(Laser Particle Sizer)によってドープ酸化スズの平均粒径を測定した。
【0077】
光反射率
以下の実施
形態及び比較
実施形態において、中国国家基準GJB 5023.1−2003による所定の方法により、Lambda 750 UV/VIS/NIR分光光度計を用い、波長1064nmでドープ酸化スズの光反射率を測定した。
【0078】
接着性
以下の実施
形態及び比較
実施形態において、クロスカットプロセスによって金属層とポリマーシートとの間の接着性を測定した。具体的には、クロスカットナイフを用いて被測定試料の表面を100の格子(1mm×1mm)に切断した。隣接する格子間の間隙は、金属層の底部に達するように形成した。試験領域の破片をブラシで清掃し、次いで粘着テープ(3M600粘着紙)を試験する格子に貼り付けた。貼り付けた粘着紙の一端を急速に垂直方向に引き剥がした。同じ格子領域で2度の同一の試験を行った。接着の程度を、以下の基準に従って測定した。
グレード5B:切り口が滑らかであり、格子の切り口及び切断交点の金属層が脱落しない。
グレード4B:切断交点の金属層が部分的に除去されるが、除去されるものが金属層の5%(面積率)を超えない。
グレード3B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の5%〜15%(面積率)が除去される。
グレード2B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の15%〜35%(面積率)が除去される。
グレード1B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の35%〜65%(面積率)が除去される。
グレード0B:切り口及び切断交点の両方の金属層が部分的に除去され、金属層の65%超(面積率)が除去される。
結果を表1に示す。
【0079】
実施形態1
本実施形態
1は以下の工程を含む。
【0080】
工程1)SnO
2の粒子をNb
2O
5及びエタノールと共に粉砕機中で2時間粉砕し、第1の混合物を形成した。100重量部のSnO
2及びNb
2O
5に対して、エタノールの量は250重量部であった。SnO
2及びNb
2O
5の総量に対して、Nb
2O
5の含有量は10重量%であった。第1の混合物を、空気雰囲気下、60℃で3時間乾燥させ、平均粒径1.5μmの第2の混合物を得た。第2の混合物を、空気雰囲気下、1050℃で5時間焼結し、平均粒径1.2μmの粉体に粉砕した。粉体はドープ酸化スズを含んでおり、そのCIELab色値及び光反射率を表1に記載する。
【0081】
工程2)ドープ酸化スズの粉体を、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6Tと称する)及び酸化防止剤1010と混合して第3の混合物を形成し
た。次いで第3の混合物を押出機で押し出しペレット化し、ペレットを形成した。ペレットを射出成形モールドで射出成形し、ドープ酸化スズを含むPA6Tシートを形成した。100重量部のPA6Tに対して、ドープ酸化スズの量は5重量部であり、酸化防止剤1010の量は10重量部であった。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0082】
工程3)PA6Tシートの表面に対し、YAGレーザにより提供されるレーザを照射し、PA6Tシートの表面の所定部分(受像部の構造に相当)のPA6Tを除去した。レーザは、波長1064nm、パワー5W、周波数30kHz、走査速度1000mm/s、かつ充填距離30μmであった。
【0083】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートを、Cu溶液を用いて1時間化学めっきし、PA6Tシートの表面の所定部分に金属層を形成した。金属層は、アンテナとして使用されてもよい。Cu溶液は、0.12mol/LのCuSO
4・5H
2O、0.14mol/LのNa
2EDTA・2H
2O、10mg/Lのフェロシアン化カリウム、10mg/Lの2,2’−ビピリジン、及び0.10mol/Lのグリオキシル酸を含んでいた。Cu溶液は、温度が50℃、pHが12.5〜13であり、pHはNaOH及びH
2SO
4で調整した。
【0084】
次いで金属層が形成されたPA6Tシートを観察し、金属層が、めっきの漏れなくPA6Tシート上に連続した完全な回路を形成したことが分かった。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0085】
比較実施形態1
本
比較実施形態1は以下の工程を含む。
【0086】
工程1)SnO
2粒子(実施形態1における工程1)の原料)を、PA6T及び酸化防止剤1010と混合して混合物を形成した
。次いで、実施形態1の工程2)に記載するものと同様の条件で混合物を押し出しペレット化し、酸化スズを含むPA6Tシートを形成した。100重量部のPA6Tに対して、SnO
2粒子の量は5重量部であり、酸化防止剤1010の量は10重量部であった。
【0087】
工程2)工程1)で得られたPA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0088】
工程3)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0089】
PA6Tシート上に完全な金属回路を形成することができないことが観察された。
【0090】
比較実施形態2
本
比較実施形態2は以下の工程を含む。
【0091】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、Nb
2O
5の代わりに同量のSb
2O
3を用いたことを除き、実施形態1の工程1)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0092】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが比較実施形態2の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0093】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0094】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0095】
PA6Tシート上に金属層が形成されたものの、めっきの漏れがあることが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0096】
比較実施形態3
本
比較実施形態3は以下の工程を含む。
【0097】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、Nb
2O
5の代わりに同量のV
2O
5を用いたことを除き、実施形態1の工程1)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0098】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが比較実施形態3の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0099】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0100】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0101】
PA6Tシート上に金属層が形成されたものの、めっきの漏れがあることが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0102】
比較実施形態4
本
比較実施形態4は以下の工程を含む。
【0103】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、第2の混合物を窒素雰囲気下で焼結したことを除き、実施形態1の工程1)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0104】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが比較実施形態4の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。PA6TシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0105】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0106】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0107】
完全な金属回路をPA6Tシート上に形成することができないことが観察された。
【0108】
実施形態2
本実施形態
2は以下の工程を含む。
【0109】
工程1)実施形態1の同様の工程1)でドープ酸化スズを調製した。
【0110】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、100重量部のPA6Tに対して、ドープ酸化スズの量を3重量部としたことを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。
【0111】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0112】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0113】
めっきの漏れなく、PA6Tシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0114】
実施形態3
本実施形態
3は以下の工程を含む。
【0115】
工程1)実施形態1の同様の工程1)でドープ酸化スズを調製した。
【0116】
工程2)PA6Tシートを調製する工程は、100重量部のPA6Tに対し、ドープ酸化スズの量を1重量部としたことを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様とした。
【0117】
工程3)PA6Tシートに対し、実施形態1の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0118】
工程4)レーザを照射したPA6Tシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0119】
めっきの漏れなく、PA6Tシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0120】
実施形態4
本実施形態
4は以下の工程を含む。
【0121】
工程1)SnO
2粒子をNb
2O
5及びエタノールと共に粉砕機中で3時間粉砕し、第1の混合物を形成した。100重量部のSnO
2及びNb
2O
5に対して、エタノールの量は300重量部であった。SnO
2及びNb
2O
5の総量に対して、Nb
2O
5の含有量は5重量%であった。第1の混合物を、空気雰囲気下、80℃で2時間乾燥させ、平均粒径2μmの第2の混合物を得た。第2の混合物を、空気雰囲気下、1300℃で8時間焼結し、平均粒径0.5μmの粉体に粉砕した。粉体はドープ酸化スズを含んでおり、そのCIELab色値及び光反射率を表1に記載する。
【0122】
工程2)ドープ酸化スズの粉体を、ポリカーボネート(PCと称する)、酸化防止剤1098、及びタルクと混合して第3の混合物を形成し
た。次いで第3の混合物を押出機で押し出しペレット化し、ペレットを形成した。ペレットを射出成形モールドで射出成形し、ドープ酸化スズを含むPCシートを形成した。100重量部のPCに対して、ドープ酸化スズの量は10重量部であり、酸化防止剤1098の量は8重量部であり、タルクの量は15重量部であった。PCシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0123】
工程3)PCシートの表面に対し、YAGレーザにより提供されるレーザを照射し、PCシートの表面の所定部分(受像部の構造に相当)のPCを除去した。レーザは、波長1064nm、パワー4W、周波数30kHz、走査速度1000mm/s、かつ充填距離30μmであった。
【0124】
工程4)レーザを照射したPCシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0125】
めっきの漏れなく、PCシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPCとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0126】
実施形態5
本実施形態
5は以下の工程を含む。
【0127】
工程1)ドープ酸化スズを調製する工程は、第2の混合物を空気雰囲気下、1350℃で8時間焼結したことを除き、実施形態4の工程1)と実質的に同様とした。
【0128】
工程2)PCシートを調製する工程は、ドープ酸化スズが実施形態5の工程1)で得られたものであることを除き、実施形態4の工程2)と実質的に同様とした。
【0129】
工程3)PCシートに対し、実施形態4の工程3)に記載するものと同様の条件でレーザを照射した。
【0130】
工程4)レーザを照射したPCシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0131】
めっきの漏れなく、PA6Tシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPA6Tとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0132】
実施形態6
本実施形態
6は以下の工程を含む。
【0133】
工程1)SnO
2粒子をNb
2O
5及びエタノールと共に粉砕機中で6時間粉砕し、第1の混合物を形成した。100重量部のSnO
2及びNb
2O
5に対して、エタノールの量は400重量部であった。SnO
2及びNb
2O
5の総量に対して、Nb
2O
5の含有量は4重量%であった。第1の混合物を、空気雰囲気下、50℃で6時間乾燥させ、平均粒径1μmの第2の混合物を得た。第2の混合物を、空気雰囲気下、1200℃で8時間焼結し、平均粒径0.8μmの粉体に粉砕した。粉体はドープ酸化スズを含んでおり、そのCIELab色値及び光反射率を表1に記載する。
【0134】
工程2)ドープ酸化スズの粉体を、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBTと称する)、酸化防止剤1098、及びタルクと混合して第3の混合物を形成し、次いで第3の混合物を押出機で押し出しペレット化し、ペレットを形成した。ペレットを射出成形モールドで射出成形し、ドープ酸化スズを含むPBTシートを形成した。100重量部のPBTに対して、ドープ酸化スズの量は15重量部であり、酸化防止剤1098の量は8重量部であり、タルクの量は20重量部であった。PBTシートのCIELab色値を表1に記載した。
【0135】
工程3)PBTシートの表面に対し、YAGレーザにより提供されるレーザを照射し、PCシートの表面の所定部分(受像部の構造に相当)のPBTを除去した。レーザは、波長1064nm、パワー6W、周波数30kHz、走査速度1000mm/s、かつ充填距離30μmであった。
【0136】
工程4)レーザを照射したPBTシートに対し、実施形態1の工程4)に記載するものと同様の条件で化学めっきを施した。
【0137】
めっきの漏れなく、PBTシート上に金属層が形成されたことが観察された。めっき速度、及び金属層とPBTとの間の接着性を、共に表1に記載した。
【0138】
【表1】
【0139】
1:PA6T及び酸化防止剤1010のみを混合してドープ酸化スズを含まない第3の混合物を形成
したことを除き、実施形態1の工程2)と実質的に同様の工程でPA6Tシートを調製した。
100重量部のPA6Tに対して、酸化防止剤1010の量を10重量部とした。PA6Tシートは、CIELab色値L
*が83.89であり、CIELab色値aが−0.15であり、CIELab色値bが1.56である。
【0140】
2:PC、酸化防止剤1098、及びタルクのみを混合してドープ酸化スズを含まない第3の混合物を形成
したことを除き、実施形態4の工程2)と実質的に同様の工程でPCシートを調製した。
100重量部のPCに対して、酸化防止剤1098の量を8重量部とし、タルクの量を15重量部とした。PCシートは、CIELab色値L
*が83.12であり、CIELab色値aが1.54であり、CIELab色値bが4.35である。
【0141】
3:PBT、酸化防止剤1098、及びタルクのみを混合してドープ酸化スズを含まない第3の混合物を形成
したことを除き、実施形態6の工程2)と実質的に同様の工程でPBTシートを調製した。
100重量部のPBTに対して、酸化防止剤1098の量を8重量部とし、タルクの量を20重量部とした。PBTシートは、CIELab色値L
*が87.55であり、CIELab色値aが2.30であり、CIELab色値bが2.33である。
【0142】
表1から、酸化性雰囲気下で焼結されたニオブ含有元素がドープされた酸化スズから得られたドープ酸化スズは、明色であり、光に対して非常に強い吸収力を有することが分かる。よって、ドープ酸化スズは、ポリマー基材の表面の選択的金属化方法において、化学めっき促進剤として化学めっきを促進することが可能であった。従って、ポリマー基材、特に明色のポリマー基材中にドープ酸化スズを予め設けることは、ポリマー基材の元の色を覆わず、又は基本的に覆わず、ポリマー基材の色を明らかに妨害することがない。
【0143】
更に、レーザを照射して表面の所定部分のPA6Tを除去したポリマー基材は、良好なめっき活性を有していた。化学めっきの間に、高めっき速度が得られ、めっきの漏れなく連続した金属層が形成されると共に、金属層とポリマー基材との間の高接着性が得られた。
【0144】
本明細書を通じて、「一実施形態(an embodiment)」、「幾つかの実施形態」、「一実施形態(one embodiment)」、「別の実施例」、「一実施例」、「特定の実施例」、又は「幾つかの実施例」との参照は、その実施形態又は実施例に関して説明する特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて、様々な箇所における、「幾つかの実施形態では」、「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態では(in an embodiment)」、「別の実施例では」、「一実施例では」、「特定の実施例では」、又は「幾つかの実施例では」等の表現の出現は、必ずしも本開示の同一の実施形態又は実施例を指すものとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1以上の実施形態又は実施例において任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0145】
説明のための実施形態を示して説明したが、実施形態において、本開示の精神及び原理から逸脱することなく特許請求の範囲及びその均等物の範囲内の全ての変更、代替、及び修正がなされ得ることが、当業者には分かるであろう。