(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出ユニットは、前記挿入部の前記状態に含まれる前記挿入部の曲げ半径と前記挿入部の曲げ歪みと前記挿入部にかかる圧力との少なくとも1つを検出する請求項1に記載の可撓管挿入装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、一部の図面では図示の明瞭化のために部材の一部の図示を省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
[構成]
図1と
図2と
図3Aと
図3Bと
図4Aと
図4Bと
図4Cとを参照して第1の実施形態について説明する。
[可撓管挿入装置(以下、挿入装置10と称する)]
図1に示すような内視鏡装置である挿入装置10は、例えば、手術室または検査室に備えられる。挿入装置10は、内視鏡20と、光源装置60と、制御装置70と、表示装置80とを有する。
【0012】
内視鏡20は、例えば、大腸などの管路部200(
図4A参照)に挿入される挿入機器として機能する。内視鏡20は、管路部200内を図示しない撮像ユニットの撮像部によって撮像する。
光源装置60は、撮像部が撮像するために、光を出射する。光は、内視鏡20の内部に備えられる図示しない照明ユニットの導光部材によって図示しない照明ユニットの照明部まで導光される。光は、照明光として、照明部から外部に向かって出射される。光源装置60は、コネクタ部45aを介して制御装置70に接続される。なお撮像部によって撮像された画像は、撮像部から内視鏡20の内部に備えられる撮像ユニットの信号線を介して制御装置70に出力される。
制御装置70は、撮像部によって撮像された画像を処理する。制御装置70は、内視鏡20と光源装置60と表示装置80とを制御する。詳細については後述するが、制御装置70は、内視鏡20の挿入部30に配置される振動部100を制御する。
表示装置80は、撮像部によって撮像され、制御装置70によって画像処理された画像を表示する。表示装置80は、ケーブル81を介して制御装置70に接続される。
【0013】
[内視鏡20]
内視鏡20は、例えば、挿入機器の一例の説明として用いられる。挿入機器には、本実施形態のような、例えば大腸などの管路部200に挿入される医療用の内視鏡20が挙げられるが、これに限定される必要はない。挿入機器は、パイプ等の工業製品の管路部200に挿入される工業用の内視鏡20、照明光学系のみを有する例えばカテーテルなどの挿入器具であることも好適である。内視鏡20は、直視型の内視鏡20であってもよいし、側視型の内視鏡20であってもよい。
【0014】
図1に示すように、内視鏡20は、管路部200に挿入される挿入部30と、挿入部30の基端部に連結される操作部40とを有する。
図2に示すように、挿入部30は、挿入部30の軸方向に沿って列状に並ぶ複数のセグメント50に区切られている。セグメント50は、実在しない仮想的な領域として機能してもよいし、実在する構造として機能してもよい。
【0015】
挿入部30は、管状であり、細長く、柔軟である。挿入部30は、挿入部30の先端部から挿入部30の基端部に向かって順に、先端硬質部31と、能動湾曲部33aと、可撓管部35とを有する。先端硬質部31の基端部は能動湾曲部33aの先端部に連結され、能動湾曲部33aの基端部は可撓管部35の先端部に連結され、可撓管部35の基端部は操作部40に連結される。前記した撮像部と照明部とは、先端硬質部31の内部に備えられる。能動湾曲部33aは、挿入部30に連結される操作部40の操作によって能動的に湾曲する。能動湾曲部33aは、能動湾曲部33aが外力F2(
図4A参照)を受けた際に、外力F2によって受動的に湾曲することも可能である。
【0016】
操作部40は、能動湾曲部33aを操作する湾曲操作部41と、撮像ユニットと照明ユニットを含む各ユニットを操作するスイッチ部43とを有する。操作部40は、ユニバーサルコード45をさらに有しており、ユニバーサルコード45のコネクタ部45aを介して光源装置60及び制御装置70に接続される。
【0017】
[検出ユニット90]
図2に示すように、挿入装置10は、挿入部30の状態を検出する検出ユニット90を有する。検出ユニット90は、図示しない操作部が操作されると検出を開始し、常に検出する。なお検出のタイミングは、一定時間経過毎に実施されていてもよく、特に限定されない。
【0018】
図2に示すように、検出ユニット90は、挿入部30の内部に配置される状態検出部91と、制御装置70に配置され、状態検出部91の検出結果を基に挿入部30の状態を算出する状態算出部93とを有する。
【0019】
状態検出部91は、後述する振動部100とセットで配置されることが好適である。この場合、状態検出部91は、可撓管部35の先端部且つ能動湾曲部33aに近いセグメント50に配置されていることが特に好ましい。
【0020】
なお図示はしないが、状態検出部91は、少なくともセグメント50毎に配置されてもよい。例えば、1つの状態検出部91は、1つのセグメント50に配置される。このように各状態検出部91は、挿入部30の軸方向に沿って互いに対して離れている。
【0021】
状態検出部91は、挿入部30の曲げ半径と外部から挿入部30にかかる負荷によって歪む挿入部30の曲げ歪みと挿入部30にかかる前記した負荷である圧力といった挿入部30の状態を検出する。なお検出ユニット90の状態検出部91は、挿入部30の状態に含まれる挿入部30の曲げ半径と挿入部30の曲げ歪みと挿入部30にかかる圧力との少なくとも1つを検出してもよい。状態検出部91は、例えば、挿入部30の状態に対応して磁界を発生するコイルと、挿入部30の状態に対応して電磁波または超音波などを出力する出力部と、挿入部30の状態に対応して光の進行率が可変する光ファイバセンサと、歪みセンサと、挿入部30の状態に対応してX線を吸収する吸収部材との少なくとも1つを有する。
【0022】
状態検出部91は、例えば有線または無線によって状態算出部93に接続されており、状態検出部91が検出した検出結果を状態算出部93に出力する。
【0023】
状態算出部93は、表示装置80に接続されている。表示装置80は、状態算出部93によって算出された算出結果を基に、管路部200内における現状の挿入部30の状態を表示する。表示は、例えば3次元によって実施される。操作者は、表示装置80に表示される挿入部30の状態を基に、管路部200内における挿入部30の位置及び状態を監視可能となる。
【0024】
[振動部100]
図2に示すように、挿入装置10は、挿入部30に内蔵され、振動を発生する1つ以上の振動部100を有する。振動部100は、振動部100が発生した振動によって挿入部30を振動させる。振動部100は、挿入部30を振動させることで管路部200と挿入部30との間における摩擦力を低減する。
【0025】
振動部100は、例えば、能動湾曲部33aの周辺に配置される。具体的には、挿入部30は能動湾曲部33aと操作部40との間に介在する介在部37を有し、介在部37は能動湾曲部33aの基端部に連結される先端部を有する。本実施形態では、1つの振動部100が配置され、この振動部100は介在部37の先端部に配置される。本実施形態では、介在部37は、可撓管部35として機能する。なお振動部100は、本実施形態の場合では可撓管部35の先端部且つ能動湾曲部33aに近いセグメント50に配置されていることが特に好ましい。そして、少なくとも1つの状態検出部91は、振動部100と共に1つのユニットとして、振動部100が配置されるセグメント50に配置されていることが好ましい。
【0026】
振動部100は、例えば、モータである駆動部と、偏心した状態で駆動部の軸部に取り付けられ、駆動部の駆動力によって回転する錘部材とを有する。このような振動部100は、例えば振動モータである。駆動部が駆動することによって、錘部材が回転した際、錘部材が偏心しているため、振動部100は振動を発生する。
【0027】
振動部100は、ボイスコイルモータを有してもよい。ボイスコイルモータは、1対の永久磁石と、永久磁石に挟まれ、永久磁石の磁界の中に配置され、電流が流れることによって駆動するコイルである電磁石とを有する。電磁石が駆動すると、振動部100は振動を発生する。
【0028】
振動部100は、圧電素子を有する振動体として機能してもよい。圧電素子は、電圧を印加されることによって、振動を発生する。
【0029】
[制御部110]
図2に示すように、挿入装置10は、検出ユニット90によって検出された挿入部30の状態を基に、振動部100が発生する振動を制御する制御部110を有する。制御部110は、制御装置70に配置される。
【0030】
制御部110は、状態検出部91の検出結果である挿入部30の状態を基に、管路部200から挿入部30に負荷される外力F2の大きさを算出する算出部111を有する。挿入部30の状態は、例えば、曲げ半径と曲げ歪みと圧力とのいずれかを示す。外力F2の大きさは、状態検出部91が検出した位置における外力である。一般的に、挿入部30の曲げ剛性は、設計値として既知である。このため算出部111は、曲げ剛性と挿入部30の状態とから、フックの法則を利用して外力F2を算出する。
【0031】
図3Aに示すように、一般的に、物体の共振周波数は物体に負荷される外力F2の大きさによって変化し、外力F2の大きさが大きいほど、共振周波数が小さくなる。また
図3Bに示すように、一般的に、物体が振動する際に、摩擦係数は周波数における共振周波数で最も小さくなることが知られている。このため制御部110は、算出部111によって算出された外力F2の大きさに対応する共振周波数を演算する演算部113を有する。
【0032】
制御部110は、演算部113によって演算された共振周波数で振動部100が振動するように振動部100を駆動させる駆動制御部115を有する。
【0033】
このように制御部110は、挿入部30の状態を基に管路部200から挿入部30に負荷される外力F2の大きさを算出し、外力F2の大きさに対する振動の共振周波数を演算し、振動部100が共振周波数で振動するように振動部100を制御する。制御部110は、図示しない操作部が操作されると制御を開始し、常に制御する。なお制御のタイミングは、一定時間経過毎に実施されていてもよく、特に限定されない。
【0034】
[作用]
挿入部30の基端部が把持され、挿入部30が管路部200に挿入され、挿入部30全体が押される。そして
図4Aに示すように、挿入部30の先端部が大腸などの管路部200の屈曲部201を通過するとする。
能動湾曲部33aは湾曲操作部41によって湾曲し、この湾曲によって能動湾曲部33aの曲げ半径が屈曲部201の曲げ半径に対応する。同時に、挿入部30全体が挿入力F1によって押されて管路部200を進行する。この状態で、能動湾曲部33aは屈曲部201に接触し、能動湾曲部33aは接触部分において挿入部30の挿入力F1の反力として外力F2を受ける。管路部200には外力F2の反力として抗力が発生し、抗力に対応する摩擦力F3は挿入部30の進行を妨げる。
【0035】
管路部200に挿入されている挿入部30の状態は例えば挿入力F1または外力F2によって変化し、挿入部30の状態が変化することによって摩擦力F3は変化する。本実施形態とは異なり、検出ユニット90と振動部100と制御部110との少なくとも1つが配置されていない場合、これら少なくとも1つが配置されていないため、挿入部30の状態言い換えると変化した摩擦力F3に対応する最適な振動が常に容易に発生できず、挿入部30の挿入性が最大限に確実に向上しない。このため、挿入部30が挿入力F1によって進行する際、能動湾曲部33aは摩擦力F3によって屈曲部201の内周面を摺動できず、挿入部30の先端部は摩擦力F3によって屈曲部201に沿って進行できない。状況によっては、
図4Bに示すように、能動湾曲部33aは挿入力F1によって屈曲部201を突き上げてしまい、患者に苦痛を与えてしまう。
【0036】
しかしながら、本実施形態では、検出ユニット90は、挿入部30の状態を、能動湾曲部33aが屈曲部201に接触した時を含め常に検出する。挿入部30の状態は、挿入部30の曲げ半径と曲げ歪みと圧力とのいずれかである。制御部110の算出部111は、挿入部30の状態を基に、管路部200から挿入部30に負荷される外力F2の大きさを算出する。次に、制御部110の演算部113は、算出部111によって算出された外力F2の大きさに対応する共振周波数を演算する。そして制御部110の駆動制御部115は、振動部100が共振周波数で振動するように、振動部100を駆動させる。
図4Cに示すように、挿入部30が屈曲部201を含む管路部200と接触した状態で、振動部100は共振周波数で振動する。
【0037】
摩擦力F3は振動によって低減し、挿入部30は少ない挿入力F1で進行し、挿入部30の挿入性が向上する。
特に本実施形態では、管路部200に挿入されている挿入部30の状態に対応して摩擦力F3が変化したとしても、検出ユニット90は常に挿入部30の状態を検出しており、振動部100は、挿入部30の状態に対応する共振周波数、言い換えると変化した摩擦力F3に対応する共振周波数で振動する。このため振動は、管路部200に挿入されている挿入部30の状態に対応する摩擦力F3を最大限に低減できることとなる。よって本実施形態では、振動が発生すると、挿入部30の挿入性は最大限に確実に向上する。
【0038】
本実施形態では、振動の共振周波数は、挿入部30の状態言い換えると摩擦力F3に対応しており、算出部111によって常に算出される。このため変化した摩擦に対応する最適な振動が常に容易に発生する。
【0039】
[効果]
本実施形態では、挿入部30の状態が常に検出され、検出結果に対応する共振周波数で振動が実施される。このため、本実施形態では、変化した摩擦に対応する最適な振動を常に容易に発生できるとともに、挿入部30の挿入性を最大限に確実に向上できる。
【0040】
特に、振動によって摩擦力F3を低減でき、挿入部30を少ない挿入力F1で進行でき、挿入部30の挿入性を向上できる。また摩擦力F3を共振周波数での振動によって低減できるため、挿入部30を確実に進行できる。よって、
図4Bに示すような挿入部30が挿入力F1によって屈曲部201を突き上げてしまうことを防止でき、患者に苦痛を与えてしまうことを防止できる。振動の共振周波数は、制御部110によって常に制御される。つまり振動の共振周波数は手動によって調整されるものではなく、摩擦力F3が変化する度に、変化した摩擦力F3に対応する振動の共振周波数を設定する操作は不要であり、設定の煩わしさを解消できる。
【0041】
振動部100は、介在部37である可撓管部35の先端部に配置される。このため、振動部100の振動を確実に能動湾曲部33aに作用でき、能動湾曲部33aにおける摩擦力F3を低減でき、能動湾曲部33aを容易に湾曲できる。よって、能動湾曲部33aの湾曲によって、結果として挿入部30の挿入性を向上できる。
【0042】
なお本実施形態では、算出部111は、状態検出部91の検出結果である挿入部30の状態を基に、管路部200から挿入部30に負荷される外力F2の大きさを常に算出したが、これに限定される必要はない。
算出部111は、挿入部30の状態である挿入部30の曲げ半径が予め設定された閾値よりも小さいか否かを判断する。曲げ半径が閾値よりも小さいと算出部111が判断した際に、算出部111は、挿入部30に負荷される外力F2の大きさを算出してもよい。
または算出部111は、挿入部30の状態である挿入部30の曲げ歪みが予め設定された閾値よりも大きいか否かを判断する。曲げ歪みが閾値よりも大きいと算出部111が判断した際に、算出部111は、挿入部30に負荷される外力F2の大きさを算出してもよい。
または算出部111は、挿入部30の状態である挿入部30かかる負荷である圧力が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判断する。圧力が閾値より大きいと算出部111が判断した際に、算出部111は、挿入部30に負荷される外力F2の大きさを算出してもよい。
【0043】
また本実施形態では、演算部113は、算出部111によって算出された外力F2の大きさに対応する共振周波数を常に演算したが、これに限定される必要はない。
演算部113は、外力F2が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判断する。外力F2が閾値よりも大きいと演算部113が判断した際に、演算部113は、外力F2の大きさに対応する共振周波数を演算してもよい。
【0044】
[第2の実施形態]
以下に
図5を参照して、第1の実施形態とは異なる部分のみ記載する。本実施形態は、第1の実施形態とは挿入部30の構成が異なる。
挿入部30は、挿入部30の先端部から挿入部30の基端部に向かって順に、先端硬質部31と、能動湾曲部33aと、受動湾曲部33bと、可撓管部35とを有する。能動湾曲部33aの基端部は受動湾曲部33bの先端部に連結され、受動湾曲部33bの基端部は可撓管部35の先端部に連結される。
【0045】
受動湾曲部33bが外力F2を受けた際に、受動湾曲部33bは外力F2によって受動的に湾曲する。受動湾曲部33bの最大湾曲半径は、能動湾曲部33aの最大曲げ半径よりも大きく、可撓管部35の最大曲げ半径よりも小さい。これにより挿入部30の曲率は、挿入部30の先端部から挿入部30の基端部に向かって、段階的に大きくなっている。
【0046】
介在部37は、受動湾曲部33b及び可撓管部35として機能する。
【0047】
振動部100は、介在部37である受動湾曲部33bの先端部に配置される。振動部100は、可撓管部35に配置されてもよい。
【0048】
本実施形態では、受動湾曲部33bが屈曲部201を含む管路部200に接触した状態で、振動部100は共振周波数で振動する。このため受動湾曲部33bと管路部200とにおける摩擦力F3を低減できる。挿入部30の曲率は段階的に大きくなっているため、挿入部30は滑らかに曲がることができ、挿入部30は管路部200に局所的な抗力を与えずに滑らかに屈曲部201を通過できる。
【0049】
[第3の実施形態]
以下に
図6を参照して、第1の実施形態とは異なる部分のみ記載する。本実施形態では、複数の振動部100が配置され、振動部100同士は挿入部30の軸方向に沿って互いに対して離れている。例えば、1つの振動部100と1つの状態検出部91が1つのユニットとして1つのセグメント50毎に配置される。
【0050】
制御部110は、各ユニットに共有される。なお制御部110は、1つのユニット毎に配置されてもよい。制御部110は、ユニット毎に、振動部100が発生する振動の共振周波数を制御する。
【0051】
本実施形態では、振動部100は挿入部30全体に配置される。挿入部30全体において摩擦力F3が低減するため、挿入部30をより少ない挿入力F1で進行でき、挿入部30の挿入性をさらに向上できる。
【0052】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。