特許第6398004号(P6398004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398004曲率センサ及びそれを搭載した内視鏡装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398004
(24)【登録日】2018年9月7日
(45)【発行日】2018年9月26日
(54)【発明の名称】曲率センサ及びそれを搭載した内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20180913BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20180913BHJP
【FI】
   A61B1/00 552
   A61B1/00 713
   G02B23/26 B
【請求項の数】19
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-521328(P2017-521328)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2015065606
(87)【国際公開番号】WO2016194059
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/019752(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/137846(WO,A1)
【文献】 特開2007−249093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する導光部材に設けられた複数の被検出部由来の複数の光信号から曲率情報を検出する曲率センサであって、
所定の波長成分を少なくとも含む発光波長領域のセンサ光を発生する光源と、
可撓性を有し、前記センサ光を閉じ込めて導光する前記導光部材と、
前記導光部材の長手方向で異なる場所、及び長手方向で略同じ場所に周方向で異なる向き、の少なくとも一方に形成され、弾性のある部材で構成された前記複数の被検出部であって、各被検出部が、前記導光部材の湾曲量に応じて前記導光部材が導光する前記センサ光の光学特性を変化させることで、被検出部毎に異なる吸収波長特徴領域を有する前記光信号を生成する光学特性変化部材を含んで構成される、前記複数の被検出部と、
前記光源からの前記センサ光のうち、前記複数の被検出部を通過して光学的な特性変化を受けた後の前記複数の光信号を検出する光検出器と、
を具備し、
前記光学特性変化部材は、所定の波長域の光を吸収する、金属粒子からなる部材であり、当該金属固有の分光吸収スペクトルとは異なる特殊分光吸収スペクトルを有し、
前記複数の被検出部には、互いに異なる特殊分光吸収スペクトルを有する前記光学特性変化部材が配置されており、全ての光学特性変化部材の特殊分光吸収スペクトルは、前記光源からの前記センサ光の発光波長領域と、少なくとも一部で重なりを有している、
ことを特徴とする曲率センサ。
【請求項2】
前記光検出器で検出した前記複数の光信号から前記曲率情報を演算する曲率演算部を更に具備することを特徴とする請求項に記載の曲率センサ。
【請求項3】
前記曲率演算部は、前記導光部材の長手方向で略同じ場所に周方向で異なる向きに形成された複数の被検出部を一つの被検出部群として、前記光検出器で検出した前記複数の光信号から前記一つの被検出部群の曲率情報を演算することを特徴とする請求項に記載の曲率センサ。
【請求項4】
前記複数の被検出部が形成された前記導光部材の長手方向で異なる場所それぞれにおいて、略同じ場所に周方向で異なる向きに更に少なくとも一つの被検出部が形成されて、前記長手方向で異なる場所それぞれに被検出部群が構成され、
前記曲率演算部は、前記それぞれの被検出部群の曲率情報を、前記光検出器で検出した前記複数の光信号から演算することを特徴とする請求項に記載の曲率センサ。
【請求項5】
前記光学特性変化部材は、少なくとも1種類の光源の光でプラズモンを励起可能な光励起プラズモン生成機能を有することを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項6】
前記光励起プラズモン生成機能は、少なくとも1種類のプラズモン物質、ナノサイズ化した物質、ナノサイズ化した鉱物、ナノサイズ化した金属、の何れかで構成されることを特徴とする請求項に記載の曲率センサ。
【請求項7】
前記光励起プラズモン生成機能は、前記複数の被検出部で大きさ、長さ、及び厚みの少なくとも一つが異なる、少なくとも1種類のプラズモン物質、ナノサイズ化した物質、ナノサイズ化した鉱物、ナノサイズ化した金属、の何れかで構成されることを特徴とする請求項に記載の曲率センサ。
【請求項8】
前記光学特性変化部材は、互いに異なる被検出部において、少なくとも1種類の波長帯域の少なくとも一部で重なりあう波長の光に対して互いに異なる吸収量の吸収を起こす光吸収物質を含んだ構成であることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項9】
前記光吸収物質は、染料、または粒子をナノサイズ化した顔料であることを特徴とする請求項に記載の曲率センサ。
【請求項10】
前記光学特性変化部材は、前記光励起プラズモン生成機能を、分散材又はカプセルで周囲を囲んでいる構造であることを特徴とする請求項乃至の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項11】
前記光学特性変化部材は、前記光吸収物質を、分散材又はカプセルで周囲を囲んでいる構造であることを特徴とする請求項8又は9に記載の曲率センサ。
【請求項12】
前記複数の被検出部は、夫々の被検出部において夫々異なる光学特性変化部材で構成され、
前記光学特性変化部材は、光励起プラズモン生成機能、光吸収物質、及び前記導光部材に接するように前記被検出部に設けたグレーティング構造、のうち少なくとも2種類以上の組み合わせ構成であることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項13】
前記複数の被検出部は、前記導光部材の屈折率よりも大きな屈折率を有し、前記導光部材から前記被検出部へ入射した光を反射させるための前記導光部材よりも小さい屈折率を有する被検出部光閉じ込め部を有することを特徴とする請求項に記載の曲率センサ。
【請求項14】
前記光検出器は、前記複数の被検出部の数以上の検出波長帯域を有していることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項15】
前記光源は、前記吸収波長特徴領域の波長成分を少なくとも含む、または前記吸収波長特徴領域の波長成分の一部を少なくとも含む、前記発光波長領域のセンサ光を発光することを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項16】
前記光源は、前記吸収波長特徴領域の全波長成分で略均一な光強度を有する前記発光波長領域のセンサ光を発光することを特徴とする請求項1乃至及び15の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項17】
前記複数の被検出部は、波長帯域の短い範囲だけに吸収特性を有する狭帯域吸収部材、所定の光を吸収し他の波長のスペクトルを発生する蛍光部材、の少なくとも一つを更に含み、
前記光源は、前記狭帯域吸収部材及び前記蛍光部材に必要な波長の光を供給可能であり、
前記光検出器は、前記狭帯域吸収部材及び前記蛍光部材による光の変化を検出可能であることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項18】
前記光源は、複数の離散光源から構成され、
各離散光源は、前記発光波長領域内の一部の波長領域であって且つ他の離散光源と完全には重複しない波長領域の光を、他の離散光源と時間的に重複しないように発生することを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の曲率センサ。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れかに記載の曲率センサを搭載した内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の導光部材にて被検出部の曲率を検出する曲率センサ及びそれを搭載した内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7440661号明細書(以下、特許文献1と記す)は、内視鏡のスコープと一体的に曲折し、スコープの形状を検出するために使用される内視鏡形状検出プローブを開示している。
【0003】
この内視鏡形状検出プローブは、互いに異なる波長成分を有する検出光を伝達する曲率検出用ファイバと、該曲率検出用ファイバに設けられ、検出光が有する互いに異なる波長成分それぞれの強度もしくは波長のいずれかを変調する光変調部と、を備える。この内視鏡形状検出プローブは、被検出部である上記光変調部による変調の前後における波長成分それぞれの強度もしくは波長と、上記光変調部と上記曲率検出用ファイバの出射端との距離と、に基づいて、スコープの形状を検出可能にすることを特徴としている。
【0004】
上記特許文献1には、上記光変調部として、互いに異なる波長成分について吸収する構成が記載されており、1箇所の曲率検出は、所定波長の光の強度変調、所定波長を吸収し且つ異なる波長の光を放出させる波長変調、などを利用する構成となっている。特に、被検出部となる光変調部は、検出光に含まれる波長成分の数と同じ数だけ設けるが、互いに異なる波長成分のいずれかを選択的に吸収する、という点が上記特許文献1の内視鏡形状検出プローブの特徴となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7440661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、互いに異なる波長成分のいずれかを独立して吸収する材料は、あまり存在せず、あっても2〜3程度を分離することがせいぜいである。つまり、1本の光ファイバに多数の光変調部を設ける、被検出部の多点化を図ろうとしても、その多点化の限界が2〜3箇所となってしまう。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、被検出部の多点化の数を容易に増加し得る曲率センサ及びそれを搭載した内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の第の態様によれば、可撓性を有する導光部材に設けられた複数の被検出部由来の複数の光信号から曲率情報を検出する曲率センサであって、
所定の波長成分を少なくとも含む発光波長領域のセンサ光を発生する光源と、
可撓性を有し、上記センサ光を閉じ込めて導光する上記導光部材と、
上記導光部材の長手方向で異なる場所、及び長手方向で略同じ場所に周方向で異なる向き、の少なくとも一方に形成され、弾性のある部材で構成された上記複数の被検出部であって、各被検出部が、上記導光部材の湾曲量に応じて上記導光部材が導光する上記センサ光の光学特性を変化させることで、被検出部毎に異なる吸収波長特徴領域を有する上記光信号を生成する光学特性変化部材を含んで構成される、上記複数の被検出部と、
上記光源からの上記センサ光のうち、上記複数の被検出部を通過して光学的な特性変化を受けた後の上記複数の光信号を検出する光検出器と、
を具備し、
上記光学特性変化部材は、所定の波長域の光を吸収する、金属粒子からなる部材であり、当該金属固有の分光吸収スペクトルとは異なる特殊分光吸収スペクトルを有し、
上記複数の被検出部には、互いに異なる特殊分光吸収スペクトルを有する上記光学特性変化部材が配置されており、全ての光学特性変化部材の特殊分光吸収スペクトルは、上記光源からの上記センサ光の発光波長領域と、少なくとも一部で重なりを有している、
ことを特徴とする曲率センサが提供される。
また、本発明の第の態様によれば、本発明の第1の態様の曲率センサを搭載した内視鏡が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検出部の多点化の数を容易に増加し得る曲率センサ及びそれを搭載した内視鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る曲率センサの概略構成を示すブロック図である。
図2A図2Aは、導光部材の一例の形状を示す断面図である。
図2B図2Bは、導光部材の別の例の形状を示す断面図である。
図3A図3Aは、被検出部群を説明するための概略図である。
図3B図3Bは、導光部材の長手方向に多数設けられた被検出部群を説明するための概略図である。
図4A図4Aは、図2Aの導光部材における被検出部の構成の一例を示す断面図である。
図4B図4Bは、図4Aの導光部材の被検出部部分の長手方向に沿った断面図である。
図5A図5Aは、図4B中の破線の円部分におけるプラズモン物質の粒子サイズの例を説明するための図である。
図5B図5Bは、プラズモン物質の粒子サイズの違いによる特殊分光吸収スペクトルの例を示す図である。
図6図6は、被検出部群における各被検出部に用いるプラズモン物質の特殊分光吸収スペクトルの例を示す図である。
図7図7は、被検出部に形成されたプラズモン物質の一例を示す概略図である。
図8A図8Aは、曲率センサの原理を説明するための、紙面上方向に導光部材が湾曲した場合を示す図である。
図8B図8Bは、曲率センサの原理を説明するための、導光部材が湾曲していな場合を示す図である。
図8C図8Cは、曲率センサの原理を説明するための、紙面下方向に導光部材が湾曲した場合を示す図である。
図9図9は、導光部材の長手方向の互いに異なる場所に配置した多数の被検出部の例を示す導光部材の長手方向に沿った断面図である。
図10図10は、色素を用いた被検出部におけるエバネッセント光を説明するための図である。
図11A図11Aは、導光部材に入射する光のスペクトルの一例を示す図である。
図11B図11Bは、被検出部に配した吸収波長特徴領域発生部材の吸収スペクトルの一例を示す図である。
図11C図11Cは、導光部材から出射する光のスペクトルの一例を示す図である。
図12A図12Aは、被検出部に配した複数の吸収波長特徴領域発生部材についての吸収波長特徴領域を説明するための図である。
図12B図12Bは、吸収波長特徴領域の別の例を説明するための図である。
図13図13は、色素を用いた被検出部の別の構成例を示す導光部材の断面図である。
図14図14は、誘電体膜の反射スペクトル特性の例を示す図である。
図15A図15Aは、蛍光部材を用いた被検出部の構成例を示す導光部材の断面図である。
図15B図15Bは、蛍光部材の吸収特性及び発光特性を示す図である。
図16図16は、グレーティングを用いた被検出部の構成例を示す導光部材の断面図である。
図17A図17は、離散光を出射する光源からの光のスペクトルと吸収波長特徴領域との関係を示す図である。
図17B図17は、波長スペクトルが連続的な光を射出する光源からの光のスペクトルと吸収波長特徴領域との関係を示す図である。
図17C図17は、図17の光源からの光のスペクトルと吸収波長特徴領域の別の例との関係を示す図である。
図17D図17は、理想的な光源からの光のスペクトルと吸収波長特徴領域との関係を示す図である。
図18A図18Aは、光源のスペクトルに対する光検出器の検出帯域を説明するための図である。
図18B図18Bは、別の光源のスペクトルに対する光検出器の検出帯域を説明するための図である。
図19A図19Aは、被検出部の数が2の場合の光検出器の波長帯域の例を示す図である。
図19B図19Bは、被検出部の数が3の場合の光検出器の波長帯域の例を示す図である。
図20図20は、一実施形態に係る曲率センサを搭載した本発明の一実施形態に係る内視鏡装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る曲率センサ10は、光源12と、光分配部14と、導光部材16と、光反射部18と、光検出器20と、光量モニタ22と、制御&ドライバ24と、演算部26と、出力部30と、から構成される。
【0013】
導光部材16には、複数の被検出部、例えばm個の被検出部32−1,32−2,…,32−mが設けられている。
【0014】
演算部26は、入力制御部34と、記憶部36と、曲率演算部38と、2次情報演算部40と、出力制御部42と、を有する。記憶部36は、強度変調情報44、湾曲特性情報46、2次情報演算用情報48を記憶している。
【0015】
以下、各部の構成について詳述する。
【0016】
光源12は、半導体レーザ等を有し、センサ光を発生する。光分配部14は、例えば光カプラで構成され、上記光源12で発生されたセンサ光を導光部材16の一端に入射させる。導光部材16は、上記光分配部14によって上記一端に入射されたセンサ光を他端まで導光して、その他端から出射する。光反射部18は、上記導光部材16の他端から出射した光を反射して、上記導光部材16の上記他端に再び入射させる。これにより、上記導光部材16は、この他端に入射された光を入上記一端まで導光し、上記一端から出射する。上記光分配部14は、この導光部材16の一端から出射された光を光検出器20に入力させる。光検出器20は、入力された光のうち所定の波長の光量を検出し、検出光量情報を演算部26に出力する。
【0017】
また、光量モニタ22は、上記光源12から出射されたセンサ光の光量を検出し、その検出結果を光源光量情報として制御&ドライバ24に供給する。制御&ドライバ24は、上記光源12及び光検出器20の動作のオン/オフを制御する。さらに、制御&ドライバ24は、上記光量モニタ22からの光源光量情報に基づいて、上記光源12から出射されるセンサ光が所望の光量となるように制御したり、光検出器20の出力が所定の範囲となるようにゲイン調整したりする。
【0018】
ここで、上記導光部材16は、当該曲率センサ10により曲率情報を検出するべき搭載部、例えば内視鏡の挿入部の長手軸方向に沿って延在配置され、上記搭載部の湾曲状態に倣って湾曲するような可撓性を有している。
【0019】
具体的には、上記導光部材16は、光ファイバによって構成されることができる。図2Aは、この光ファイバの長手軸方向に直交する方向である径方向の断面構造を示している。すなわち、上記光ファイバは、中心に存在する、光を導光するコア54と、当該コア54の周りに設けられた、光を安定的にコア54に閉じ込めるクラッド56と、更にこれらコア54及びクラッド56を物理的な衝撃及び熱的な衝撃から保護するためのジャケット58と、によって構成されている。
【0020】
あるいは、上記導光部材16は、光導波路によって構成されても良い。上記光導波路は、図2Bに示すように、フレキシブル基板60上に、上記光ファイバのそれらと同等の役割をするコア54とクラッド56とを設けたものである。
【0021】
上記導光部材16には、曲率情報を検出するべき上記搭載部の位置に対応する箇所に被検出部が設けられる。ここで、曲率情報は、曲げの向きと曲げの大きさの情報である。曲率情報を検出するべき1箇所に対し、少なくとも異なる2方向、好ましくは直交する2方向について曲げの大きさが検出できれば、当該箇所の曲げの向きも検出できる。そのため、曲率情報を検出するべき各箇所に少なくとも2つの被検出部を形成することが必要となる。従って、2本の導光部材16を用いて、1つの箇所に対応させて各導光部材16に被検出部を形成し、それら2個の被検出部が直交する向きとなるように導光部材16を上記搭載部に組み込めば良い。あるいは、1本の導光部材16のみ使用して、図3Aに示すように、複数の被検出部32−1〜32−mを、被検出部群62として、導光部材16の長手方向で略同じ場所に周方向で異なる向きに形成しても良い。また、曲率を検出するべき上記搭載部の位置が多数存在する場合には、各位置に、このような被検出部群62を設けることができる。すなわち、図3Bに示すように、導光部材16の長手方向で異なる場所に、n個の被検出部群62−1〜62−nを形成しても良い。このように被検出部群62として複数の被検出部を形成することで、導光部材16の本数を削減でき、導光部材16を組み込む上記搭載部の細径化が図れる。
【0022】
一つの被検出部群62について、少なくとも2つの被検出部が配置されていれば、曲率情報を求めることができる。例えば、上記被検出部群62−1は、図4Aに示すように、被検出部32−1と被検出部32−2との2つが、導光部材16である光ファイバの径方向に互いに90°異なる向きに形成されている。具体的には、図4A及び図4Bに示すように、上記被検出部32−1、32−2は、上記光ファイバの長手軸方向の所望位置において、上記ジャケット58と上記クラッド56を除去して上記コア54の一部を露出させ、この露出させた上記コア54の部分に、特定の方向の曲がり量に応じてこれに入射した光に、他の被検出部とは異なる光学的な特性変化を与える光学特性変化部材を含む被検出部材64を形成したものである。上記被検出部材64は、柔軟性のある部材もしくは弾性のある材料、例えば、アクリル系、エポキシ系、シリコン系、フッ素系などの樹脂、軟性の水ガラス、などの低屈折率の材料でなり、略クラッド厚程度に形成される。上記被検出部材64上の上記ジャケット58と上記クラッド56とを除去した部分に対してジャケット様の部材が、被検出部保護部材66として満たされて、光ファイバの元の形状が回復される。なお、被検出部保護部材66は、被検出部材64で代用しても良い。
【0023】
なお、上記ジャケット58及び上記クラッド56の除去は、レーザ加工によって、あるいは、フォト工程及びエッチング工程などを利用して行う。このとき、上記コア54にミクロな傷を付けてしまうと、光を漏らし、導光する光を損失させてしまったり、曲げに弱くなったりしたりするので、上記コア54に極力傷を付けない方法で加工することが望ましい。
【0024】
上記被検出部材64の部分68の拡大図である図5Aに示すように、上記被検出部材64は、所定の波長域の光を吸収する、金属粒子からなる光学特性変化部材70を含む。この光学特性変化部材70は、当該金属固有の分光吸収スペクトルとは異なる特殊分光吸収スペクトルを有するものである。例えば、光学特性変化部材70は、少なくとも1種類の光源の光でプラズモンを励起可能な光励起プラズモン生成機能を有する。すなわち、金属固有の分光吸収スペクトルと、表面プラズモン効果による特殊吸収スペクトルの和を吸収スペクトルとして有する金属ナノ粒子である。光励起プラズモン生成機能は、少なくとも1種類のプラズモン物質、ナノサイズ化した物質、ナノサイズ化した鉱物、ナノサイズ化した金属、の何れかで構成される。ここで、プラズモン物質とは、自由電子が集団的に振動して擬似的な粒子として振舞っている状態を有する物質である。また、ナノサイズとは1μmより小さいという意味である。金属粒子は、例えばAu、Ag、Cu、Pt、等であり、分散媒である。金属粒子の形状は、球または円柱または多角柱である。
【0025】
光励起プラズモン生成機能は、同じ光学特性変化部材70、例えば同じ金属粒子であっても、図5Aに示すように、その大きさ、長さ、及び厚みの少なくとも一つが異なると、特殊分光吸収スペクトルが異なる。例えば、図5Bに示すように、粒子サイズが大きくなるにつれて、光の吸収率のピーク波長(吸収波長特徴領域)が長波長側に移動していく。従って、複数の被検出部は、光学特性変化部材70として、同じ金属元素でk個の特殊分光吸収スペクトルを有する組合せがある。
【0026】
また、光励起プラズモン生成機能は、別の光学特性変化部材70、例えば別の金属粒子であれば、図6に示すように、特殊分光吸収スペクトルが異なる。
【0027】
さらに、複数の金属粒子を混合した複合光学特性変化部材とすることも可能である。
【0028】
従って、複数の光学特性変化部材70、例えば複数の金属粒子を、それぞれ大きさ、長さ、及び厚みの少なくとも一つを異ならせて使用することで、互いに異なる特殊分光吸収スペクトルを有する被検出部材64が実現でき、他の被検出部とは異なる光学的な特性変化を与える被検出部を多数形成することが可能となる。
【0029】
なお、被検出部材64の基材である低屈折率樹脂などに光学特性変化部材70を混ぜようとした場合、凝集が起こるため(低屈樹脂に光学特性変化部剤70が分散されず、分離して沈殿する)、ナノ化特有の光吸収特性が無くなる、または十分に働かなくなることがある。これを防止する方法として、光学特性変化部材70を、図7に示すように、1個又は複数個単位で、界面活性剤等の分散材72又はカプセル74で周囲を囲むようにしても良い。また、被検出部材64の基材として、光学特性変化部材70間の凝集を防止する凝集防止剤を添加した低屈折率樹脂78などを用いるようにしても良い。
【0030】
このような構造の被検出部32−1、32−2では、上記導光部材16である上記光ファイバが湾曲すると、これに伴って光ファイバ内を伝達する光の極々一部が上記被検出部材64内に漏れる。すなわち、上記被検出部32−1、32−2は、上記光ファイバの一側面に設けられ、上記光ファイバの湾曲に応じて上記漏れる光(滲み出す程度の光)の量が変化する。つまり、上記被検出部32−1、32−2は、上記光ファイバの湾曲に応じて、光に与える光学的な特性変化の量を変化させる。すなわち、光学的な特性変化が与えられた光信号の光伝達量を変化させる。
【0031】
図8A図8B及び図8Cは、上記光ファイバの湾曲に応じた光伝達量の模式図を示すものである。ここで、図8Aは、上記光ファイバを上記被検出部32−1、32−2の被検出部材64が設けられた側に湾曲したときの光伝達量を示し、図8Bは、上記光ファイバを湾曲しないときの光伝達量を示し、図8Cは、上記光ファイバを上記被検出部材64が設けられた側とは反対側に湾曲したときの光伝達量を示す。これら図8A図8B及び図8Cに示すように、上記光ファイバを上記被検出部材64が設けられた側に湾曲したときの光伝達量が最も多く、次に上記光ファイバを湾曲しないときの光伝達量、次に上記光ファイバを上記被検出部材64が設けられた側とは反対側に湾曲したときの光伝達量の順である。よって、上記光ファイバから出射される光信号の光強度を測定することで、上記被検出部材64が設けられた被検出部32−1、32−2における湾曲量を検出することができる。そして、上記被検出部32−1、32−2が設けられている上記光ファイバにおける径方向の位置つまり上記被検出部32−1、32−2の向きが既知であるので、湾曲方向も知ることができ、この湾曲方向と上記湾曲量とにより、曲率情報が検出されることができる。
【0032】
また、複数の被検出部は、夫々の被検出部において夫々異なる光学特性変化部材で構成されることもできる。例えば、図9に示すように、導光部材16である光ファイバの長手方向の異なる場所に5個の被検出部32−1、32−3、32−4、32−5、32−6を設ける場合、それぞれの被検出部材が異なる光学特性変化部材を備えることができる。ここで、被検出部32−1の被検出部材64は、光励起プラズモン生成機能を有する光学特性変化部材70を備える。被検出部32−3の被検出部材80は、例えば、光吸収物質(光散乱物質も含む)を有する光学特性変化部材を備える。被検出部32−4の被検出部材82は、例えば、積層誘電体膜を有する光学特性変化部材を備える。被検出部32−5の被検出部材84は、例えば、蛍光体を有する光学特性変化部材を備える。被検出部32−6の被検出部材86は、例えば、グレーティング構造を有する光学特性変化部材を備える。もちろん、複数の被検出部は、これら全ての光学特性変化部材を利用するのが必須では無く、それらのうち少なくとも2種類以上の組み合わせを用いることができる。また、導光部材16である光ファイバの長手方向の略同じ場所で異なる向きに形成される複数の被検出部についても、これと同様である。
【0033】
なお、被検出部32−3の被検出部材80、被検出部32−5の被検出部材84、及び被検出部32−6の被検出部材86に関しては、被検出部32−1の被検出部材64と同様に被検出部保護部材66が形成されて、光ファイバの元の形状が回復される。被検出部32−4の被検出部材82については、誘電体膜効果増大樹脂88が形成される。
【0034】
上記被検出部32−3は、図10に示すように、光学特性変化部材が異なる被検出部材80を用いること以外は上記被検出部32−1と同様の構成である。ここで、光学特性変化部材の有する光吸収物質とは、互いに異なる被検出部において、少なくとも1種類の波長帯域の少なくとも一部で重なりあう波長の光に対して互いに異なる吸収量の吸収を起こす物質である。例えば、光吸収物質は、ナノサイズ化された顔料(鉱物や化学的に合成された無機顔料、または、有機化合物を成分とする有機顔料)又は染料(元来1nm以下である)を含む。
【0035】
なお、この光吸収物質についても、上記光励起プラズモン生成機能を有する光学特性変化部材70と同様、分散材72又はカプセル74で周囲を囲むようにしたり、被検出部材80の基材として凝集防止剤を添加した低屈折率樹脂78などを用いたりしても良い。
【0036】
このような被検出部32−3の被検出部材80は、例えば図11Aに示すような波長帯域λL〜λUの間で略均一な光スペクトルを有する理想的な光源からの光に対し、図11Bに示すような吸収スペクトルを有している。ここで、Wは上記理想的な光源の発光波長領域である。上記理想的な光源からの光は、上記被検出部材80に当たると、上記被検出部材80は、上記コア54に接した光に対して、さらに、クラッド56へしみ出したエバネッセント光90に対して、上記吸収スペクトルの割合で吸収し、残った光を上記コア54に戻す。このことを分かり易くイメージで描くと、図10となる。実線の矢印が上記光源12から供給された光であり、上記被検出部32−3に当たった光が被検出部固有の吸収スペクトルで吸収され、残りが点線の矢印として上記コア54に戻されている。
【0037】
この被検出部32−3での効果としては、コア−クラッドとの屈折率差により光ファイバを曲げたことによる臨界角以上の角度となった光をロスさせることもでき、上記コア54の屈折率n1に対する上記クラッド56の屈折率をn1以下で調整することにより、制御することも可能である。光源から供給された略均一な光は、図11Cに示すスペクトルのように、上記被検出部32−3の吸収スペクトルで光学的な影響を受けたスペクトルとなる。
【0038】
被検出部32−3の被検出部材80が備える光学特性変化部材の吸収波長特徴領域は、被検出部32−1の被検出部材64が備える光学特性変化部材70の吸収波長特徴領域と異なるように設定される。例えば、図12Aは、2つの被検出部32−1、32−3に設定した被検出部材64、80の光の吸収スペクトルを示す図であり、実線は被検出部材64に、破線は被検出部材80に、それぞれ対応するものである。例えば図11Aに示すようなスペクトルを有する理想的な光が入射された場合、各被検出部32−1、32−3の被検出部材64、80では、図12Aに示す実線と点線のスペクトル比率で光強度を減衰させる。吸収波長特徴領域とは、例えば図12Aのλ1やλ2の箇所を示す。λ1,λ2の領域は、異なる被検出部32−1、32−3が有している吸収率αが、互いに異なっている。被検出部32−1のスペクトルでは、λ1のときα1iの吸収率、一方λ2のときα2iである。被検出部32−3のスペクトルでは、λ1のときα1jの吸収率、一方λ2のときα2jである。α1iとα1j、及びα2iとα2jは、波長λ1、波長λ2において、それぞれ異なる吸収率を示していて、かつ吸収率の比が異なっていることを特徴としている。このように、吸収波長特徴領域とは、利用する波長帯域の中にλ1及びλ2のような被検出部32−1、32−3を複数の波長の吸収率の比率により特徴付けられている領域があることを示している。波長λ1及びλ2は、特定の波長でも良いし、図12Bのように波長帯域に幅を有していても構わない。
【0039】
各被検出部32−1、32−3の分離は、光源12の光強度と光検出器20で検出した光強度との差分を、各被検出部32−1、32−3が吸収波長特徴領域の強度比を維持し、各曲率分の変化が与えられた合計であるとした数式を立てて解くことにより行う。この数式については後述する。
【0040】
このように、複数の被検出部にそれぞれ固有の吸収波長特徴領域を付与することは、複数の被検出部に相互吸収を発生させない構成と比較し、材料や吸収スペクトルの付与の仕方に自由度がある。したがって、このような構成は、1本の導光部材16に対し、多数の被検出部を設けることを可能とする。
【0041】
1本の導光部材16に多数の被検出部を設けることができれば、狭い空間に設置しようとした場合、設置上の有利さに加え、より正確に導光部材16を設置した箇所の複数の曲率情報を検出することができ、曲率情報を用いた形状検出等に応用すれば、より正確な形を検出することが可能となる。
【0042】
さらに、1本の導光部材16で多数の被検出部の検出が可能となるので、光供給部や、検出器の数を減らすことが可能となり、コストや設置場所のサイズも有利となる。
【0043】
なお、複数の被検出部32−1、32−3は、導光部材16、具体的にはコア54の屈折率よりも大きな屈折率を有している。そして、複数の被検出部32−1、32−3は、図13に示すように、導光部材16から被検出部32−1、32−3へ入射した光を反射させるために、導光部材16のコア54よりも小さい屈折率を有する被検出部光閉じ込め部92を更に有することができる。
【0044】
また、被検出部32−4の被検出部材82が備える光学特性変化部材は、積層誘電体膜を有する。誘電体は、例えば図14に示すような反射スペクトルを有しており、反射されない光を吸収する特性を有している。図14は、積層誘電体膜に対し或る入射角aで光が入射した場合を実線で、上記入射角aとは異なる入射角bで光が入射した場合を破線で、更に、それら入射角a,bとは異なる入射角cで光が入射した場合を二点鎖線で、それぞれ示している。このように、積層誘電体膜は、光の入射角つまり光ファイバの曲げに伴って、スペクトルが変化するので、波長方向の情報も変化する。ここでは、1つの例のみ記載したが、屈折率と厚みの異なる膜の積層方法により、スペクトルを変化することが可能となる。
【0045】
上述した光励起プラズモン生成機能及び光吸収物質だけでも多数の吸収波長特徴領域を有する被検出部を提供可能であるが、誘電体膜による吸収特性も含めると更に多数の吸収波長特徴領域を有する被検出部を提供可能となる。
【0046】
被検出部材は、クラッド材と同様の柔軟性のある屈折率を調整した樹脂材料にすることにより、導光部材16の柔軟性を保持したままで、曲率センサを提供可能となる。被検出部材の屈折率を変えることにより、被検出部の曲げ量に対する漏れ光の量をコントロールすることができ、被検出部での吸収波長特徴領域のスペクトルを調整し、他の被検出部との差を出し易くなる。つまり、より被検出部の数を増やすことに効果がある。
【0047】
また、被検出部32−5の被検出部材84が備える光学特性変化部材は、蛍光体を有する。上記被検出部32−5は、図15Aに示すように、光学特性変化部材が異なる被検出部材84を用いること以外は上記被検出部32−1と同様の構成である。ここで、蛍光体は、図15Bに示すように、実線で示すような短波長側の光を吸収して、破線で示すような長波長側に発光を発生させる特性を有している。このような蛍光体の場合、光の変換方法が上記被検出部材80と異なり、上記被検出部32−5に当たった光が吸収され、上記被検出部32−5が散乱光を発光する。本実施形態では、この発光の波長を、上記光励起プラズモン生成機能及び上記光吸収物質について説明したような吸収波長特徴領域として扱う。この発光の発光量は、曲げの湾曲量により蛍光体に当たる光の量が増減するので、湾曲方向と湾曲量に伴って変化する。このような蛍光体を用いた場合は、上記被検出部材80を用いた場合と比較すると、若干、検出感度が悪い場合が多い。
【0048】
また、被検出部32−6の被検出部材86が備える光学特性変化部材は、グレーティング構造を有する。上記被検出部32−6は、図16に示すように、光学特性変化部材が異なる被検出部材86を用いること以外は上記被検出部32−1と同様の構成である。ここで、被検出部材86は、グレーティング94をコア54に接触するように形成したものである。また、グレーティング94は、接触していなくても、クラッド56の一部に形成されていてもよい。グレーティング94は、光が内部を伝搬または表面で反射するときに回折現象を起こして、当該グレーティング94への入射方向とは異なる所定の方向に進む特定の波長の光を強め合うように伝搬させる。図16では、上記光源12から供給された光を実線の矢印で示し、グレーティング94によって所定方向に進むようにされた特定波長の光を破線の矢印で示している。本実施形態では、このグレーティング94による特定波長を、上記光励起プラズモン生成機能及び上記光吸収物質について説明したような吸収波長特徴領域として扱う。
【0049】
次に、上記光源12について説明する。上記光源12は、レーザダイオード(LD)、LED、ランプ、またはこれらの光により蛍光材を発光させた光などが利用でき、これら複数の組み合わせにより、曲率センサ10に必要な波長特性の光(例えば白色光)を整えて出射する。なお、ここで言う光源とは、上記光分配部14がファイバカプラの場合であれば、ファイバカプラのファイバに光を集光して入射させるレンズ系なども含めている。上記光分配部14がハーフミラーまたはビームスプリッタの場合は、光を平行光に整えるレンズ系なども含めている。さらに、レーザダイオードのように戻り光が出力に影響を与える場合、アイソレータなども含める。
【0050】
上記光源12は、少なくとも上記吸収波長特徴領域の一部を含む必要がある。具体的には、上記光源12は、例えば、上記被検出部が2つの場合、図17Aに示すように、上記吸収波長特徴領域λ1とλ2を含むように、比較的狭帯域な光を合成して出射する光源とすることができる。この場合の上記光源12の例としては、LEDやLDなどがある。また、図17Bに示すように、蛍光体を低波長の光で励起し、発生した光を出射する光源であっても良い。このようなスペクトルの光であれば、複数の吸収波長特徴領域を容易に含むことができる。また、上記吸収波長特徴領域λ1及びλ2が図12Bのように波長帯域に幅を有している場合には、上記光源12は、図17Cに示すように、複数の吸収波長特徴領域の一部を含んでいれば良い。検出し易い光として、図17Dに示すように、複数の吸収波長特徴領域において略均一なスペクトル特性を有する光を出射する光源が望ましい。このような光源の場合、検出精度にばらつきが発生する可能性が減り、好ましい。
【0051】
また、上記光源12としては、図17Aに示すように比較的狭帯域な光を合成して出射するのではなく、図18A及び図18Bに示すように、光の波長が離散した複数の光源を順次発光させて、上記導光部材16である光ファイバに供給するようにしても構わない。このようにすれば、上記光検出器20の検出帯域Dは、全ての吸収波長特徴領域の波長の光を検出できるものとすれば良く、分光器のような波長毎の光強度を分離して検出するものを使用する必要が無い。このような構成では、上記光検出器20のコストが非常に安くすることが可能となる。
【0052】
もちろん、上記光検出器20は、複数の被検出部に付与した吸収波長特徴領域の特徴を検出することができれば、どのようなものでも良い。波長帯域で上記光検出器20の構成を記載すると、上記被検出部が2箇所の場合、図19Aに示すように、吸収波長特徴領域に対応した、または吸収波長特徴領域を含む帯域D1,D2の2つの帯域を検出できることが特徴となる。検出の帯域は、吸収波長特徴領域の特徴を残存させておければ良い。例えば、上記被検出部が3箇所の場合、吸収波長特徴領域の特徴を有する波長領域によるが、図19Bに示すように、上記光検出器20の帯域D1,D2,D3に、互いに重なる帯域が含まれていても問題ない。
【0053】
このように、光検出器20は、各被検出部の湾曲状態によって伝達量が変化した各吸収波長特徴領域の光信号を受信して、各吸収波長特徴領域の光の強度を検出し、検出光量情報を出力する。ここで、検出光量情報とは、各吸収波長特徴領域とその吸収波長特徴領域における光強度との関係を表す情報である。
【0054】
演算部26の入力制御部34は、光検出器20から入力された検出光量情報を曲率演算部38に伝達する。また、制御&ドライバ24から、光源12の発光強度や光検出器20のゲイン等の情報が入力される。
【0055】
記憶部36は、曲率演算部38が行う演算に必要な各種情報を記憶している。記憶部36は、例えば計算アルゴリズムを含むプログラムに加えて、強度変調情報44、湾曲特性情報46、2次情報演算用情報48、等を記憶している。
【0056】
曲率演算部38は、入力制御部34を介して取得した検出光量情報と、記憶部36に記憶されている情報に基づいて各被検出部の湾曲情報を算出することができる。しかしながら、個々の被検出部について湾曲情報を算出するのは、被検出部の数が多数になればなるほど演算時間がかかる。そこで、本実施形態では、後述する強度変調情報44及び湾曲特性情報46に基づいて、被検出部群62−1〜62−nの湾曲情報を算出する。勿論、本発明は、個々の被検出部について湾曲情報を算出するようにしても構わないことは言うまでも無い。
【0057】
曲率演算部38は、第1の演算部50と第2の演算部52を有している。第1の演算部50は、入力制御部34を介して取得した検出光量情報と、記憶部36に記憶されている強度変調情報44とに基づいて被検出部ごとの光量変化情報を算出する。第2の演算部52は、第1の演算部50によって算出された光量変化情報と、記憶部36に記憶されている湾曲特性情報46とに基づいて、被検出部群62−1〜62−nにおける湾曲情報を算出する。曲率演算部38は、算出した湾曲情報を2次情報演算部40及び出力制御部42に伝達する。なお、曲率演算部38は、光検出器20のゲイン等、湾曲情報の算出に必要な光検出器20の動作に関する情報を、入力制御部34を介して制御&ドライバ24に出力するようにしても良い。
【0058】
2次情報演算部40は、例えばCPUやASICなどを含む。2次情報演算部40は、曲率演算部38で算出された被検出部群62−1〜62−nの湾曲情報に基づいて、被検出部群62−1〜62−nが配置されている導光部材16、つまり当該曲率センサ10により曲率情報を検出するべき搭載部、例えば内視鏡の挿入部、の形状や状態などの2次情報を算出する。算出された2次情報は、出力制御部42に伝達される。
【0059】
なお、本実施形態で言う「状態」とは、直線状やU字状などの形状的な状態だけで無く、当該曲率センサ10が搭載された機器特有の正常/異常を判断する状態も含む。上記機器特有の異常とは、例えば、内視鏡の分野において座屈と称されるような、進行していくべき挿入部がその位置で止まって曲率が変化していくような状態であり、上記機器の用途、使用状態、使用環境などによって異なっている。また、例えば、被検体が軟性を有していたりした場合の、被検体の伸展などの動き状態も含む。被検体の動きによって挿入部を進行させようとする力が吸収されて、進行していくべき挿入部が平行移動するだけで、挿入部の先端が進行してかなかったり、挿入部の曲率が変化しななかったりする、所謂横滑りが起こり得る。上記「状態」とは、このような被検体の動きの状態も含む。さらに、上記2次情報は、当該曲率センサ10が搭載された機器の挿入操作などを支援する操作支援情報も含むことができる。
【0060】
出力制御部42は、曲率演算部38から取得した被検出部群62−1〜62−nの湾曲情報や2次情報演算部40から取得した2次情報を出力部30に出力する。
【0061】
次に、曲率センサ10の使用時に曲率演算部38で行われる演算について説明する。
まず、説明の簡略化のために、図4Aに示すように2つの被検出部32−1、32−2を有する1つの被検出部群62を含む導光部材16の長さLの部分が、角度θ、曲率κで湾曲している状態を考える。この場合、次のようにして、被検出部群62における角度θと曲率κ、すなわち曲率情報を求める。
【0062】
まず、第1の演算部50において、光検出器20により検出された被検出部32−1の吸収波長特徴領域である第1の波長λ1及び被検出部32−2の吸収波長特徴領域である第2の波長λ2における検出光量情報Dλ1及びDλ2に基づいて、強度変調情報44に従って得られる以下の式(1)で表される二元一次連立方程式を、湾曲特性情報α(θ,κ)とβ(θ,κ)について解く。
【0063】
【数1】
【0064】
ここで、Iλ1、Iλ2は基準光量情報であり、被検出部群62が、基準となる所定の形状(以下、基準湾曲状態と称する)であるときに、光検出器20によって検出される波長λnの光についての光量である。また、Uαλ1、Uβλ1、Uαλ2、Uβλ2は被検出部群62の被検出部32−1、32−2についての強度変調情報である。これらの基準光量情報及び強度変調情報は、予め取得されて強度変調情報44として記憶部36に記憶されている。従って、第1の演算部50において、検出光量情報Dλ1、Dλ2と基準光量情報Iλ1、Iλ2と強度変調情報Uαλ1、Uβλ1、Uαλ2、Uβλ2とに基づいて、被検出部群62の被検出部32−1及び32−2における光量変化情報α及びβを算出することができる。
【0065】
次に、第2の演算部52において、第1の演算部50で算出された光量変化情報α及びβと、記憶部36に記憶されている湾曲特性情報46であるα(θ,κ),β(θ,κ)に従って得られる以下の式(2)で表される二元連立方程式を、角度θと曲率κについて解く。
【0066】
【数2】
【0067】
このようにして、被検出部群62の湾曲情報、すなわち被検出部群62における角度θ及び曲率κ、言い換えれば被検出部群62の曲げの向き及び曲げの大きさを求めることができる。なお、光量情報関係は、上述のような関数の形式で表されたものに限定されず、波長と光量との関係を保存した表(ルックアップテーブル)で表されたものであってもよい。
【0068】
また、被検出部群の曲げの大きさを表すパラメータを曲率とし、湾曲特性情報46を用いた湾曲情報導出演算について説明してきたが、曲げの大きさを表すパラメータとして曲率半径などの他のパラメータ、及びそれに対応する湾曲特性情報を用いた湾曲情報導出演算を採用することができる。
【0069】
次に、それぞれ2つの被検出部を有する2つの被検出部群について考える。すなわち、導光部材16のうち、第1の被検出部群を含む長さLの第1の部分が、角度θ及び曲率κで湾曲しており、この第1の部分に続く第2の被検出部群を含む長さLの第2部分が角度θ及び曲率κで湾曲している状態を考える。
【0070】
この場合には、次のようにして、第1の被検出部群及び第2の被検出部群における角度θ及びθと曲率κ及びκを求める。
【0071】
まず、第1の演算部50において、光検出器20により検出された第1、第2、第3、第4の波長λ1、λ2、λ3、λ4における検出光量情報Dλ1、Dλ2、Dλ3、Dλ4に基づいて、以下の式(3)で表される四元一次連立方程式をα(θ,κ)、β(θ,κ)、α(θ,κ)、β(θ,κ)について解く。
【0072】
【数3】
【0073】
基準光量情報Iλ1、Iλ2、Iλ3、Iλ4と強度変調情報Uα1λ1、Uα1λ2、Uα1λ3、Uα1λ4、Uβ1λ1、Uβ1λ2、Uβ1λ3、Uβ1λ4、Uα2λ1、Uα2λ2、Uα2λ3、Uα2λ4、Uβ2λ1、Uβ2λ2、Uβ2λ3、Uβ2λ4は、予め取得され強度変調情報44として記憶部36に記憶されている。従って、第1の演算部50において、第1の被検出部群の2つの被検出部及び第2の被検出部群の2つの被検出部における光量変化情報α、β、α、βをそれぞれ算出することができる。
【0074】
次に、第2の演算部52において、第1の演算部50で算出された光量変化情報α、βと、記憶部36に記憶されている湾曲特性情報46であるα(θ,κ)、β(θ,κ)に従って得られる以下の式(4)で表される二元連立方程式を角度θと曲率κについて解く。
【0075】
【数4】
【0076】
さらに、第2の演算部52において、第1の演算部50で求められた光量変化情報α、βと、記憶部36に記憶されている湾曲特性情報46であるα(θ,κ)、β(θ,κ)に従って得られる以下の式(5)で表される二元連立方程式を角度θと曲率κについて解く。
【0077】
【数5】
【0078】
このようにして、第1の被検出部群における角度θと曲率κすなわち湾曲情報と、第2の被検出部群における角度θと曲率κすなわち湾曲情報を求めることができる。
【0079】
この説明は、導光部材16の長手方向の異なる位置において2つの被検出部群が導光部材16に設けられた構成についてであるが、さらに多くの被検出部群62が導光部材16に設けられた構成においても、同様の手法によって各被検出部群62の湾曲情報を求めることができる。具体的には、次のようにして求められる。ここでは、被検出部群62の個数はmであるとする。また、1ないしmの自然数をn(すなわち、n=1,2,…,m)とする。
【0080】
第nの被検出部群の第(2n−1)の被検出部及び第(2n)の被検出部の湾曲特性情報46であるα(θ,κ)及びβ(θ,κ)は、第nの被検出部群以外の被検出部群を基準湾曲状態に設定しておいて、第nの被検出部群の角度θと曲率κを取り得る範囲で変化させることにより取得される。
【0081】
湾曲情報演算は、次のようにして行われる。
まず、以下の式(6)で表される2m元一次連立方程式をα(θ,κ)とβ(θ,κ)について解く。
【0082】
【数6】
【0083】
次に、以下の式(7)で表されるm組の二元連立方程式を角度θと曲率κについて解く。
【0084】
【数7】
【0085】
これにより、各被検出部群62の湾曲情報(θ、κ)が求められる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る曲率センサ10は、可撓性を有する導光部材16に設けられた複数の被検出部32−1〜32−m由来の複数の光信号から曲率情報を検出する曲率センサであって、光源12と、上記導光部材16と、上記複数の被検出部32−1〜32−mと、光検出器20と、を備える。ここで、上記光源12は、所定の波長成分を少なくとも含む発光波長領域のセンサ光を発生する。上記導光部材16は、可撓性を有し、上記センサ光を閉じ込めて導光する、例えば光ファイバである。上記複数の被検出部32−1〜32−mは、上記導光部材16の長手方向で異なる場所、及び長手方向で略同じ場所に周(曲げられる)方向で異なる向き、の少なくとも一方に形成され、柔軟性のある部材で構成される。そして、各被検出部が、特定の方向の曲がり量に応じてこれに入射した上記センサ光に、他の被検出部とは異なる光学的な特性変化を与えることで、被検出部毎に異なる吸収波長特徴領域を有する上記光信号を生成する。上記光検出器20は、上記光源12からの上記センサ光のうち、上記複数の被検出部32−1〜32−mを通過して光学的な特性変化を受けた後の上記複数の光信号を検出する。
このような曲率センサ10は、特定の方向の曲がり量に応じてこれに入射した上記センサ光に、他の被検出部とは異なる光学的な特性変化を与える被検出部を1本の導光部材16に複数形成することにより、各被検出部の湾曲量を独立した値として検出することが可能となる。従って、例えば内視鏡の挿入部のような細い管状挿入体の形状や状態(管状挿入体の剛性を考慮に入れた場合の被検出部に加わっている力や、特定の動作状態(例えば座屈していて先端が進まない状態や、正常に先端が進んでいる状態など)を検出することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態に係る曲率センサ10は、可撓性を有する導光部材16に設けられた複数の被検出部32−1〜32−m由来の複数の光信号から曲率情報を検出する曲率センサであって、光源12と、上記導光部材16と、上記複数の被検出部32−1〜32−mと、光検出器20と、を備える。ここで、上記光源12は、所定の波長成分を少なくとも含む発光波長領域のセンサ光を発生する。上記導光部材16は、可撓性を有し、上記センサ光を閉じ込めて導光する、例えば光ファイバやフレキシブルな導波路である。上記複数の被検出部32−1〜32−mは、上記導光部材16の長手方向で異なる場所、及び長手方向で略同じ場所に周(曲げられる)方向で異なる向き、の少なくとも一方に形成され、弾性のある部材で構成される。そして、各被検出部が、上記導光部材16の湾曲量に応じて上記導光部材16が導光する上記センサ光の光学特性を変化させることで、被検出部毎に異なる吸収波長特徴領域を有する上記光信号を生成する光学特性変化部材70を含んで構成される。上記光検出器20は、上記光源12からの上記センサ光のうち、上記複数の被検出部32−1〜32−mを通過して光学的な特性変化を受けた後の上記複数の光信号を検出する。なお、上記光学特性変化部材70は、所定の波長域の光を吸収する、金属粒子からなる部材であり、当該金属固有の分光吸収スペクトルとは異なる特殊分光吸収スペクトルを有する。上記複数の被検出部32−1〜32−mには、互いに異なる特殊分光吸収スペクトルを有する上記光学特性変化部材が配置されており、全ての光学特性変化部材の特殊分光吸収スペクトルは、上記光源12からの上記センサ光の発光波長領域と、少なくとも一部で重なりを有している。
このような曲率センサ10は、所定の波長領域に渡る特殊分光吸収スペクトルを有し、夫々異なる特殊分光吸収スペクトルであり、かつ特殊分光吸収スペクトルが少なくとも一部において互いに重なりがある被検出部を1本の導光部材16に複数形成することにより、各被検出部の湾曲量を独立した値として検出することが可能となる。従って、例えば内視鏡の挿入部のような細い管状挿入体の形状や状態(管状挿入体の剛性を考慮に入れた場合の被検出部に加わっている力や、特定の動作状態(例えば座屈していて先端が進まない状態や、正常に先端が進んでいる状態など)を検出することが可能となる。
【0088】
また、本実施形態の曲率センサ10は、上記光検出器20で検出した上記複数の光信号から上記曲率情報を演算する曲率演算部38を更に備えている。
従って、互いに重なり合った波長帯域(スペクトル)で互いに異なった変化を伴う光信号の合成波から、曲率情報を演算することが可能となる。
【0089】
ここで、上記曲率演算部38は、上記導光部材16の長手方向で略同じ場所に周方向で異なる向きに形成された複数の被検出部を一つの被検出部群62として、上記光検出器20で検出した上記複数の光信号から上記一つの被検出部群62の曲率情報を演算する。
従って、複数の被検出部が配置された箇所の曲率情報を求めるのに、個々の被検出部の曲率情報を求めることなく直接的に求めることができるので、演算時間が短くて済む。
【0090】
また、上記複数の被検出部32−1〜32−mが形成された上記導光部材16の長手方向で異なる場所それぞれにおいて、略同じ場所に周方向で異なる向きに更に少なくとも一つの被検出部が形成されて、上記長手方向で異なる場所それぞれに被検出部群が構成される。すなわち、長手方向に複数の被検出部群62−1〜62−nが設けられる。そして、上記曲率演算部38は、上記それぞれの被検出部群の曲率情報を、上記光検出器20で検出した上記複数の光信号から演算する。
従って、複数の被検出部が配置された複数箇所の曲率情報を求めるのに、個々の被検出部の曲率情報を求めることなく直接的に求めることができるので、演算時間が短くて済む。この効果は、被検出部の数が多いほど顕著になる。
【0091】
なお、上記光学特性変化部材は、少なくとも1種類の光源の光でプラズモンを励起可能な光励起プラズモン生成機能を有する。
被検出部にこのような光励起プラズモン生成機能を有する物質を用いれば、所定帯域の光領域において特徴的な吸収を行うことが可能となる。
【0092】
ここで、上記光励起プラズモン生成機能は、少なくとも1種類のプラズモン物質、ナノサイズ化した物質、ナノサイズ化した鉱物、ナノサイズ化した金属、の何れかで構成される。プラズモン物質とは、自由電子が集団的に振動して擬似的な粒子として振舞っている状態を有する物質である。プラズモンが観測されている物質としては、絶縁体、金属、半導体、半金属、大きな原子、大きな分子などが知られている。
被検出部は、これらの物質を有することにより、所定帯域の光領域において特徴的な吸収を行うことが可能となる。
【0093】
また、上記光励起プラズモン生成機能は、上記複数の被検出部32−1〜32−mで大きさ、長さ、及び厚みの少なくとも一つが異なる、少なくとも1種類のプラズモン物質、ナノサイズ化した物質、ナノサイズ化した鉱物、ナノサイズ化した金属、の何れかで構成されても良い。
被検出部は、これらの物質を有することにより、同じプラズモン生成機能を有する物質(同金属)でも所定帯域の光領域において異なる特徴的スペクトル吸収を行うことが可能となる。よって、物質数を増やすことなく、容易に被検出部の点数を増やすことが可能となる。
【0094】
なお、上記光学特性変化部材は、互いに異なる被検出部において、少なくとも1種類の波長帯域の少なくとも一部で重なりあう波長の光に対して互いに異なる吸収量の吸収を起こす光吸収物質(光散乱物質も含む)を含んだ構成としても良い。
被検出部は、このような光吸収物質を用いれば、所定帯域の光領域において特徴的な吸収を行うことが可能となる。
【0095】
ここで、上記光吸収物質は、染料、または粒子をナノサイズ化した顔料(鉱物や化学的に合成された無機顔料、または有機化合物を成分とする有機顔料)である。
顔料などの光の進行を大きく阻害する物質でも、微細化して密度を薄くすることにより、所定帯域の光領域において特徴的な吸収を行うことが可能となる。よって、曲率センサの被検出部数を容易に増加させることが可能となる。
【0096】
なお、上記光学特性変化部材は、上記光励起プラズモン生成機能又は上記光吸収物質を、分散材72又はカプセル74で周囲を囲んでいる構造とすることが好ましい。
すなわち、上記光励起プラズモン生成機能又は上記光吸収物質を特定の分散材72やカプセル74で囲んでおくことにより、特性が安定すると伴に、被検出部の基材に混ぜ込んだときに凝集が発生し難い。被検出部材の基材である低屈折率樹脂などに光学特性変化部材を混ぜようとした場合、凝集が起こるため(低屈樹脂に光学特性変化部材が分散されず、分離して沈殿する)、光吸収特性が無くなる、または十分に働かなくなることがある。これを防止する方法として、上記光励起プラズモン生成機能又は上記光吸収物質特定の分散材72やカプセル74で囲んでおくことは有効である。
さらに、被検出部材の基材として凝集防止剤を添加した低屈折率樹脂などを用いても良い。
【0097】
また、上記複数の被検出部32−1〜32−mは、夫々の被検出部において夫々異なる光学特性変化部材で構成されることができる。この場合、上記光学特性変化部材は、光励起プラズモン生成機能、光吸収物質、及び上記導光部材に接するように上記被検出部に設けたグレーティング構造、のうち少なくとも2種類以上の組み合わせ構成である。
原理の異なる複数の光学特性変化部材を組み合わせることにより、更に容易に被検出部の点数を増やすことが可能となる。
【0098】
また、上記複数の被検出部32−1〜32−mは、上記導光部材16の屈折率よりも大きな屈折率を有し、上記導光部材16から上記被検出部32−1〜32−mへ入射した光を反射させるための上記導光部材16よりも小さい屈折率を有する被検出部光閉じ込め部92を有するようにしても良い。
低屈樹脂は、樹脂全体から見れば選択肢として多く無い。このため、光学特性変化部材として構成が難しい(混ざり難い、染まり難い)場合でも、本構成を用いることで、屈折率に関係なく樹脂を選択することができ、容易に被検出部の点数を増加させることができる。
【0099】
また、上記光検出器20は、上記複数の被検出部32−1〜32−mの数以上の検出波長帯域を有している。
被検出部の数を増やすと、光検出器の検出波長分離数も増やす必要がある。最も高価なやり方は、分光器を利用することである。安く構成するには、カラーフィルタや光の干渉を利用したフィルタを光電変換素子の上に搭載(オンチップを含む)することである。この場合、検出する帯域の重なりを許すことができれば、更に容易に安価に光検出器20を提供することが可能となる。
【0100】
また、上記光源12は、上記吸収波長特徴領域の波長成分を少なくとも含む、または上記吸収波長特徴領域の波長成分の一部を少なくとも含む、上記発光波長領域のセンサ光を発光するものを使用している。
すなわち、光源12は、少なくとも吸収波長特徴領域の一部を含む必要がある。例えば、被検出部が2つの場合、図17Aに示すように、吸収波長特徴領域λ1とλ2を含むように比較的狭帯域な光の合成した光源とする。また、図17Bに示すような光であれば、複数の吸収波長特徴領域を容易に含むことができる。つまり、光源12は、図17Cに示すように、複数の吸収波長特徴領域の一部を含んでいれば良い。
【0101】
さらに、上記光源12は、上記吸収波長特徴領域の全波長成分で略均一な光強度を有する上記発光波長領域のセンサ光を発光する。
図17Dに示すように、複数の吸収波長特徴領域において略均一なスペクトル特性を有する光源であれば、検出精度にばらつきが発生する可能性が減るので、より好ましい。
【0102】
また、上記複数の被検出部32−1〜32−mは、波長帯域の短い範囲だけに吸収特性を有する狭帯域吸収部材、所定の光を吸収し他の波長のスペクトルを発生する蛍光部材、の少なくとも一つを更に含んでも良い。この場合、上記光源12は、上記狭帯域吸収部材及び上記蛍光部材に必要な波長の光を供給可能であり、上記光検出器20は、上記狭帯域吸収部材及び上記蛍光部材による光の変化を検出可能であるものを使用する。
これにより、1本の導光部材16に形成する被検出部の数を、更に増加させることが可能となる。
【0103】
また、上記光源12は、複数の離散光源から構成され、各離散光源は、上記発光波長領域内の一部の波長領域であって且つ他の離散光源と重複しない波長領域の光を、他の離散光源と時間的に重複しないように発生するようにしても良い。
この場合、光検出器20のコストが非常に安くすることが可能となる。
【0104】
また、本実施形態に係る曲率センサ10は、内視鏡に搭載することができる。なお、本明細書において、内視鏡とは、医療用内視鏡及び工業用内視鏡に限定するものではなく、鉗子やカテーテルなど、被挿入体に挿入される挿入部を備える機器一般を指している。
【0105】
以下、内視鏡として医療用内視鏡を例に説明する。
例えば、図20は、本実施形態に係る曲率センサ10の導光部材16を、管状挿入体としての内視鏡の挿入部96に沿って設置した内視鏡システムを示している。この内視鏡システムは、観察対象物である被検体(例えば体腔(管腔))内に挿入される管状挿入体である細長い挿入部96と、該挿入部96の基端部と連結した操作部98と、接続ケーブル100と、が配設される内視鏡を含む。さらに、内視鏡システムは、内視鏡を制御するコントローラ102を含んでいる。
【0106】
ここで、挿入部96は、挿入部96の先端部側から基端部側に向かって、先端硬質部と、湾曲する操作湾曲部と、可撓管部と、を有している。先端硬質部は、挿入部96の先端部であり、硬い部材となっている。この先端硬質部には、図示しない撮像部が設けられている。
【0107】
操作湾曲部は、操作部98に設けられた湾曲操作ノブの内視鏡オペレータ(医師らの作業者)による操作に応じて、所望の方向に湾曲する。オペレータは、この湾曲操作ノブを操作することで、操作湾曲部を湾曲させる。この操作湾曲部の湾曲により、先端硬質部の位置と向きが変えられ、観察対象物が撮像部の撮像範囲である観察視野内に捉えられる。こうして捉えられた観察対象物に対し、先端硬質部に設けられた図示しない照明窓から照明光が照射されて、観察対象物が照明させる。操作湾曲部は、図示しない複数個の節輪が挿入部96の長手方向に沿って連結されることにより、構成される。節輪同士が互いに対して回動することで、操作湾曲部は湾曲する。
【0108】
可撓管部は、所望な可撓性を有しており、外力によって曲がる。可撓管部は、操作部98から延出されている管状部材である。
【0109】
接続ケーブル100は、操作部98とコントローラ102との間を接続している。
【0110】
コントローラ102は、内視鏡の撮像部により撮像された観察画像に対して画像処理を施し、図示しない表示部に画像処理された観察画像を表示させる。そして、本実施形態では、図20に示すように、このコントローラ102に、曲率センサ10の光源12、光分配部14及び光検出器20を内蔵させ、導光部材16である光ファイバを、このコントローラ102から接続ケーブル100及び操作部98内を経由して、挿入部96の長手軸方向に沿って延在配置する。光反射部18は、挿入部96の先端硬質部内に設ける。この場合、複数の被検出部群62は、光ファイバの内、挿入部96の操作湾曲部及び可撓管部内に対応する位置に設けられる。
【0111】
前述したように、被検出部群62は、光ファイバの複数の部分の湾曲方向と曲がり量(曲率情報)を、各部分独立に測定することができる。従って、被検出部群62の個数が被測定物である挿入部96の操作湾曲部及び可撓管部の変形の度合いに比べて十分多数形成されていれば、挿入部96の曲がり量と湾曲方向、つまり曲率情報を測定することができる。
【0112】
コントローラ102は、さらに、制御及び演算部104を備えている。この制御及び演算部104は、光源12の発光制御を行う。さらに、制御及び演算部104は、光検出器20が測定した光ファイバつまり挿入部96の曲率情報から、2次情報として挿入部96の3次元的形状を演算し、得られた3次元的形状を図示しない表示部に表示することができる。
【0113】
なお、管状挿入体は、この内視鏡に限定するものではなく、各種プローブ、カテーテル、オーバーシース(内視鏡やカテーテル等を挿入する際の補助に使う管)、などであってもよい。
【0114】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0115】
10…曲率センサ、 12…光源、 14…光分配部、 16…導光部材、 18…光反射部、 20…光検出器、 22…光量モニタ、 24…制御&ドライバ、 26…演算部、 30…出力部、 32−1,32−2,32−3,32−4,32−5,32−6,32−m…被検出部、 34…入力制御部、 36…記憶部、 38…曲率演算部、 40…次情報演算部、 42…出力制御部、 44…強度変調情報、 46…湾曲特性情報、 48…2次情報演算用情報、 50…第1の演算部、 52…第2の演算部、 62,62−1,62−n…被検出部群、 64,80,82,84,86…被検出部材、 66…被検出部保護部材、 70…光学特性変化部材、 72…分散材、 74…カプセル、 78…凝集防止剤を添加した低屈折率樹脂、 92…被検出部光閉じ込め部、 94…グレーティング、 96…挿入部、 98…操作部、 100…接続ケーブル、 102…コントローラ、 104…演算部。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図19A
図19B
図20