(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記柔軟なスタンプ層および前記支持層の少なくとも1つが、シロキサン系ポリマーを含むか、またはシロキサン系ポリマーからなる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインプリント・スタンプ。
前記柔軟なスタンプ層が第1のヤング率を有し、前記支持層が第2のヤング率を有し、前記第1のヤング率が前記第2のヤング率よりも大きい、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のインプリント・スタンプ。
前記支持層の材料および前記充填材料が、前記支持層が少なくとも部分的に光学放射に対して透明であるような屈折率を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のインプリント・スタンプ。
前記犠牲材料が、スクロースマトリックスを含むか、またはスクロースマトリックスからなり、前記除去するステップが、前記スクロースマトリックスを溶解するステップを含む、請求項9に記載の方法。
プリント・プロセスが、マイクロ接触プリント・プロセスまたはインプリント・プロセスであることが好ましい、プリント・プロセスのための、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインプリント・スタンプの使用。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが認識する実際的な問題は、可撓性のあるスタンプからそのような輪郭表面へとパターンを転写することは些細なことではないことである。このような輪郭表面の曲率が増加するにつれて、これはより困難になる。特に、スタンプを、急に曲がっている領域または平坦な部分と(湾曲した)突起との間の境界領域に接触させることは困難であり、そのような領域は、パターン形状の不完全性または欠けを被り得る。これは、柔らかいスタンプを輪郭表面に正確に一致する程度に変形させるのは容易なことではないからである。さらに、スタンプをこれらの境界領域に押し込むために必要な高い圧力は、スタンプの寿命を低下させるか、これらの領域または他の領域の微細なパターンの忠実な複製を損なう。
【0005】
本発明の目的は、上述の問題を少なくとも部分的に解決することである。この目的は、少なくとも部分的に、独立請求項によって定義された発明によって満たされる。従属請求項は、有利な実施形態を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、輪郭表面のパターニングのためのインプリント・リソグラフィのためのパターン形成されたスタンプ、そのようなパターン形成されたスタンプの製造方法、及びより正確な方法で輪郭表面をパターニングするためのスタンプの使用を提供する。
【0007】
輪郭表面は、表面がリラックス状態にあるとき、すなわち積極的に曲げられたり、応力を受けたりしていないときに、少なくとも1つの輪郭(非平坦領域)を含む表面である。したがって、例えば、柔軟なスタンプ層は、印刷スタンプがそのリラックス状態にあるとき、すなわち何らかの形で曲げられないか、または応力がかかっていないときに、輪郭表面を含む。輪郭は、主表面(例えば、印刷スタンプの平面内の主表面)から伸びる突出部または引っ込むくぼみであり得る。そのような突起またはくぼみは、例えば、1つまたは複数の直線または曲面を有する台形またはピラミッド形状であり得る。突出部またはくぼみは、半球または円柱または他の丸い形状の形態であってもよい。輪郭が形成された表面は、主表面が、突起を伴いつつも実質的に平坦であることを必ずしも意味するものではなく、例えば主表面が半球または円筒または他の丸い突起またはくぼみの形状のように連続的に湾曲していることを意味する場合もあり得る。この場合、このような表面は、場合によっては主表面上に分布している1つ以上の突起またはくぼみをさらに有することもできる。
【0008】
スタンプは、スタンプ製造方法によって得ることができ、それにより、パターン化されるべき輪郭表面に関する位置と同様に、特にX-Y次元(主スタンプ面の面内)およびZ次元(主スタンプ面に垂直)に関して、改善された適合性を提供する。従って、パターニングのためのスタンプの使用は、改善された精度で選択された輪郭表面の印刷を提供することができる。
【0009】
特に、本発明のスタンプの製造は、既に存在する輪郭表面上にレリーフ・パターンを有するマスターを作製するための困難さを必要としない。その代わりに、本発明では、実質的に平坦なスタンプ層に選択されたレリーフ・パターンを設けることができ、そしてこのスタンプ層は、しばしば脆弱で柔軟なスタンプ層を取り扱うための、多孔質で、それにより柔軟および/または圧縮可能な支持層によって支持されることができる。この構成は、パターン領域を有するスタンプ層を、選択された基板のパターン化されていない輪郭表面の周りに共形的に適用することを可能にする(それにより、スタンプ層を少なくとも部分的に曲げておよび/または圧縮する)。この状態で、支持層は、その輪郭形状を保持するように、より硬く固定される(その可撓性および/または圧縮性を低下させる)ことができる。基板を除去すると、その形状マスターとして使用されたパターンを任意の基板に提供するために使用され得る輪郭付けされたスタンプが残る。
【0010】
本発明の印刷スタンプは、基板の輪郭表面のパターニングのために露出されるレリーフパターン(122)を有する輪郭表面(120)を有する柔軟なスタンプ層と、柔軟なスタンプ層に接着された支持層とを含み、充填材料で充填された複数の細孔を有する。
【0011】
印刷は、マイクロ接触プリンティングであってもよいが、好ましくはインプリンティングである。マイクロ接触プリンティングでは、レリーフ・パターンの突出部分を使用して、何らかの種類のインクを基板の表面に転写する。インプリンティングでは、スタンプのレリーフ・パターンは、インプリント可能な層またはインプリントインキ(インプリントレジストとも呼ばれる)に、この層がスタンプのレリーフ・パターンの逆であるレリーフ・パターンとなるように、適用される。
【0012】
両方のプロセスにおいて、スタンプの輪郭表面は、好ましくは、少なくとも部分的に(イン)プリンティングされるべき基板の輪郭表面の逆である。
【0013】
支持層は、柔軟な支持層材料を犠牲材料と混合して初期支持層を形成し、前記初期支持層を固化させ、初期支持層から犠牲材料を除去して支持層に複数の孔を形成することによって得ることができる。このようにして、支持層中の孔の少なくとも一部は、互いにおよび/または外界から完全に隔離されていないか、または相互および外界との相互接続を含む。
【0014】
充填材料は、柔軟なスタンプ層の材料とは異なる材料であってもよい。これは、本明細書で以下に説明するように、パターン化されたスタンプの特定の特性を調整するために、充填材料を意図的に選択することができるという利点を有する。
【0015】
あるいは、充填材料は、柔軟なスタンプ層の材料と同じ材料である。これは、支持層細孔表面と充填材料との間の良好な接着が容易に得られ、それによって良好な構造的完全性を有するパターン化されたスタンプを容易に得るという利点を有する。
【0016】
充填材料は、支持材料の屈折率と実質的に同じ(光学放射に対する)屈折率を有することができる。これは、充填材料が支持層材料と同じである場合に達成することができる。
【0017】
柔軟なスタンプ層および/または支持材料は、同一の材料または異なる材料で作ることができる。好ましくは、それらは同じ材料で出来ており、そうすれば、両方の層の間の接着性が利点となり得、および/または、熱膨張係数(スタンプにおける応力の低減)、屈折率(スタンプが光透過性を必要とする場合に有利である)などの物理的特性が実質的に一致する。柔軟なスタンプ層および/または支持材料は、ゴム材料を含むか、またはゴム材料からなることができる。ゴム材料は、ポリシロキサン系ポリマーであってもよい。そのようなポリシロキサンは、輪郭表面をインプリントするためのパターン化されたスタンプを形成するのに特に適した材料であることが見出されている。好ましくは、ポリシロキサン系ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)タイプのポリマーを含むか、またはそれからなる。材料の混合物(複数の異なるPDMS材料)を使用することができる。柔軟なスタンプ層および/または支持材料は、異なっていてもよい。その場合、それらは依然として実質的に同じ屈折率を有することができる。スタンプが光学的に透明である、す
なわち、スタンプにより(イン)プリントされるレジストを硬化させるために使用される放射線に対して透明である必要がある場合には、実質的に同じ屈折率が有利である。
【0018】
充填材料は、支持層材料と同じ材料であってもよい。したがって、充填材料は、好ましくは、PDMS型ポリマーのようなポリシロキサン系ポリマーを含むか、またはそれからなる。
【0019】
柔軟なスタンプ層は第1のヤング率を有し、支持層は第2のヤング率を有し、第1のヤング率は第2のヤング率より大きい。これは、優れた全体的な可撓性を有するスタンプが提供され、スタンプの輪郭表面上の形状の変形に対する構造安定性が向上するという利点を有する。
【0020】
支持層および充填材料の材料は、支持層が光放射に対して少なくとも部分的に透明であるような屈折率を有することができる。光放射は、その放射による刺激時に印刷動作中に印刷インキまたはインプリントレジストを固化させることができる放射であってもよい。このような放射は、可視領域、UV領域またはその両方の波長を有してもよい。好ましくは、このような放射は支持層によって吸収されない。
【0021】
また、柔軟なスタンプ層は、好ましくは、光学放射に対して少なくとも部分的に透明である。したがって、このようなスタンプにより、照射放射線の妨害を最小限に抑えて、スタンプを通してインクまたはインプリント・レジストを照射することができる。
【0022】
あるいは、支持層は、不透明であるかまたは光放射を散乱する。これは、光放射に対して支持層材料の屈折率とは異なる屈折率を有する充填材料を選択することによって行うことができる。そのようなスタンプにより、インク又はインプリントレジストの固化中の照射は、放射線の吸光度が相当高くない限り、散乱スタンプ層により均一に分布された散乱照射放射線で開始することができる。
【0023】
(イン)プリントスタンプは、曲げることが可能な剛性のキャリアを含むことができ、剛性のキャリアは支持層に接着される。剛性のキャリアは、スタンプにさらなる構造的完全性を与え、XY平面(すなわち主スタンプ表面の平面)における変形のリスクを低減することができる。このようなキャリアは、例えば、薄い0.5mmから50μmの厚さの、おそらく透明なガラス層であり得る。シリコン、金属、またはプラスチック製のような他の層もまた使用することができる。
【0024】
本発明のスタンプは、可撓性材料前駆体の層にレリーフパターン(112)を形成するために、逆レリーフパターン(52)を担持するレリーフ・パターン・マスター(50)上に、前記可撓性材料前駆体の前記層(115)を適用するステップと、
【0025】
可撓性材料前駆体を固化させて、レリーフ・パターンを含む柔軟なスタンプ層(120)を形成するステップと、
多孔性の柔軟なおよび/または圧縮可能な支持層(130)を固化した柔軟なスタンプ層に接着させることによって中間スタンプ構造を提供するステップと、
前記中間スタンプ構造を前記レリーフ・パターン・マスターから取り外すステップと、
【0026】
前記中間スタンプ構造を基板の輪郭表面上に、前記レリーフ・パターンが前記輪郭表面に面するようにして、押し込むステップと、
【0027】
多孔質の柔軟な支持層の細孔の少なくとも一部に充填材料を充填して支持層の柔軟性を低下させることにより印刷スタンプを形成するステップと、
【0028】
印刷スタンプを基板の輪郭表面から取り外すステップと、を有するスタンプ製造方法により作成されることができる。
【0029】
この方法は、インプリンティング層がマスターから取り外される前に、支持層が(イン)プリンティング層、すなわち柔軟なスタンプ層に加えられ、それにより、インプリンティング層が、取り外される層の取り外しおよびその後の取り扱い中の損傷から保護されるので、輪郭表面に正確に適合し、高い歩留まりで製造されることができる、輪郭表面を(イン)プリントするためのパターン化されたスタンプの形成を容易にする。特に、支持層の多孔性により、柔軟な支持層、例えばエラストマー層の細孔が、支持層の圧縮性を高めて、中間スタンプ構造体を、(イン)プリントされるべき輪郭表面に良好に適合させることができるので、中間スタンプ構造は輪郭表面に適合されることができる。中間スタンプ構造を輪郭表面に適合させた後に充填材料を孔に充填することにより、支持層の圧縮性が低下し、すなわち、支持層は、輪郭表面に適合する変形状態で「凍結」され、それにより、輪郭表面の実質的にあらゆる面に接触させられることができる、輪郭表面をインプリントするためのパターン化されたスタンプが得られる。
【0030】
この方法はさらに、輪郭表面に適合した変形状態で支持層を固定化するために、充填材料を固化させること(「硬化」とも呼ばれる)を含む。固化/硬化される充填材料は、支持層を形成する材料と同じ材料であってもよく、例えば、スタンプの柔軟性のような、支持層及びパターン化されたスタンプの特定の特性を調整するために、異なる材料であってもよい。支持層、充填材料および柔軟な層の材料の材料については上記を参照のこと。
【0031】
多孔性の柔軟な支持層は、柔軟な材料を犠牲材料と混合して初期層を形成し、前記初期層を固化させて、初期層から犠牲材料を除去して多孔性の柔軟な支持層を形成することによって形成されることができる。これは、初期層を形成するときの犠牲材料と柔軟材料との間の比を制御することによって、多孔性の程度を制御することができるので、多孔性の柔軟な支持層の多孔度に対する優れた制御を提供する。
【0032】
例えば、犠牲材料は、スクロースマトリックスであってもよく、除去ステップは、前記スクロースマトリックスを溶解し、それにより多孔性の柔軟な支持層を形成するステップを含む。支持層を溶解しない溶媒に溶解する他のマトリックスを使用してもよい。従って、当業者によって多くの選択肢が考えられる。
【0033】
中間スタンプ構造は、任意の適切な態様で、例えば手作業または機械によるプレスによって、輪郭表面上に押し付けられてもよい。一実施形態では、中間スタンプ構造を輪郭表面に押し付けるステップは、中間スタンプ構造を真空チャンバ内で輪郭表面上に配置することと、特に良好に適合するスタンプ/輪郭表面アセンブリを得るために柔軟なスタンプ層を輪郭表面に押し付けるために、前記真空チャンバ内の圧力を減少させることを含む。
【0034】
柔軟なスタンプ層および多孔性の柔軟な支持層は、弾性のある材料を含むことが好ましい。そのような材料は、スタンプに所望の程度の柔軟性および圧縮性を与えるのを助けるからである。ポリジメチルシロキサン(PDMS)型ポリマーなどのポリシロキサン系材料が特に適している。
【0035】
この方法は、スタンプにさらなる構造的完全性を与え、X-Y平面(すなわち、キャリアを受け入れる主要なスタンプ面の平面)内のスタンプ変形の危険性を低減するために、パターン化されたスタンプをガラスキャリアなどの剛性キャリア上に固定するステップをさらに含むことができる。
【0036】
印刷方法または印刷プロセスのためのパターン化されたスタンプの使用も提供される。これは、マイクロ接触プリンティングまたはインプリンティングであり得る。
【0037】
インプリント方法は、パターン化された輪郭表面を形成するためのものであってもよい。この目的のために、この方法は、輪郭表面上にパターン前駆体層(印刷インクまたはインプリントレジストとも呼ばれることもある)を提供するステップと、本発明の1つまたは複数の実施形態によるパターン形成されたスタンプでパターン前駆体層を(イン)プリントするステップと、前記パターン前駆体層をパターン層へと現像するステップと、前記パターン形成されたスタンプを固化したパターン層から取り外すステップとを含む。これにより、優れたパターンカバレッジを有する輪郭表面が得られる。基板表面は、スタンプ表面の輪郭と一致する輪郭表面であってもよく、または平坦な表面であってもよい。
【0038】
インプリント・ステップは、パターン形成されたスタンプと輪郭表面との間の接触をさらに改善するために、減圧下、例えば真空下で実施されてもよい。
【0039】
印刷方法は、固化したパターン層のより薄い領域の少なくとも一部を除去して、除去されたより薄い領域で基板表面を露出させるためのエッチングステップを含むことができる。このようにして、固化したパターン層は、露出領域をエッチングすることができる方法の次のエッチングステップにおいて、エッチングマスクとして使用することができる。エッチングは、様々な基板および対応するマスクに関する文献で知られているように、ウェットエッチングまたはドライエッチングであってもよい。
【0040】
本発明のインプリンティング方法において、パターン層前駆体は、好ましくは、例えばシリコン系ゾル-ゲルを含むゾル-ゲル系レジストである。しかし、スタンプ層材料に適合する限り、他の材料を使用することができ、パターン層前駆体材料はスタンプ材料を劣化させないことが好ましい。
【0041】
本発明は、縮尺通りに描かれていない添付の図面を参照して、より詳細に、非限定的な例として記載される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
同一または類似の部分を示すために、図面全体にわたって同じ参照番号が使用されていることを理解されたい。
【0044】
図1には、1つまたは複数の輪郭12を含む表面10を印刷するための従来技術の平版印刷プロセスが示されている。スタンプ20の平坦な表面から延びる形状22のパターンを含む、PDMSスタンプなどのゴムスタンプ20は、1つ以上の輪郭12を含み、インプリント可能な層(例えば未現像レジスト層)で被覆される表面10に接触させられる。この層は
図2には示されていない。スタンプ20は、表面10上に配置され、スタンプ20が表面10の全体的な形状をとるように、スタンプ20に圧力を加えることによって変形される。続いてレジスト層が現像され、その後スタンプ20が表面10から取り外されて、形状22でインプリントされた現像された層が残される。
【0045】
しかしながら、この方法の問題点は、平面スタンプ20が限られた量しか変形することができず、輪郭12と表面10の残部との間の境界が、
図1の右側のペインおいて矢印によって示されるように、スタンプ20と接触することができないことである(明確にするために、形状22は右側のペインでは省略されている)。その結果、形状22のパターンがこれらの境界領域に存在しない、部分的にインプリントされた物品が得られる。覆われない領域のサイズは、インプリント・プロセス中にスタンプ20への圧力を増加させることによって減少させることができるが、これはスタンプ20の寿命を減少させ、インプリント・プロセス中の形状22のパターンの変形の危険性を増加させ、表面10上に転写されるパターンの品質を低下させる。
【0046】
この問題は、パターニングされる物品の表面10を補完する全体的な形状を有するパターン化された表面を有するスタンプが提供される本発明の少なくともいくつかの実施形態によって対処される。これは、スタンプ表面が、輪郭12の境界領域を含む表面10と接触するために、変形される必要がないという利点を有する。その結果、スタンプは、表面10上の1つ以上の輪郭12の境界領域を含む表面10の全体に、その形状のパターンを転写することができる。
【0047】
図2は、ソフトリソグラフィプロセスで使用するためのスタンプを製造するための本発明の一実施形態による方法の様々なステップ、例えば後でより詳細に説明するように、輪郭表面のナノスケールパターニングプロセスを概略的に示す。この方法は、この実施形態によって形成されるべきパターン化されたスタンプに形成されるべき形状の逆パターンまたはネガ型パターン52を担持するマスターモールド50を提供するステップ(a)から始まる。ネガ型パターン52が層115によって浸されるように、硬化性エラストマー材料前駆体の初期層115がマスターモールド50の上に塗布される。層115は、スピンコーティング、浸漬コーティング、キャスティング、インクジェット印刷などの任意の適切な方法でマスターモールド50に塗布されることができる。
【0048】
一実施形態では、初期層115は、適切なブロックコポリマー(例えばSEBS)またはポリシロキサン系のゴム状材料のようなエラストマーまたはゴム状材料の1つまたは複数の前駆体でできており、この初期層115は、ステップ(b)において硬化されて、形状122の所望のパターン、すなわちパターン52のネガを含むエラストマーまたはゴム状材料のスタンプ層120を形成する。前駆体は、未硬化、すなわち非架橋のエラストマーであってもよく、硬化、すなわち架橋によってスタンプ層120に変換される。
【0049】
一実施形態では、スタンプ層120は、PDMSのようなポリシロキサン系のゴム状材料で作られる。適切なPDMSタイプは、いわゆるX-PDMS、例えばWO2009/147602A2に開示されているようなT分岐および/またはQ分岐ポリシロキサン系のゴム状材料である。T分岐ポリシロキサンは、例えば直鎖ポリシロキサンによって架橋された場合に、三方分岐鎖、すなわち網状構造を含むことは疑いがないことに留意されたい。同様に、Q-分枝ポリシロキサンは、例えば直鎖ポリシロキサンによって架橋された場合、四方分枝鎖、すなわち網状構造を含む。さらに別の実施形態では、スタンプ層120はPDMSで作られる。しかしながら、スタンプ層120は、任意の適切に柔軟な材料から作製されてもよいことが理解されるべきである。
【0050】
柔軟なスタンプ層120は、スタンプ層120が所望の柔軟特性を有することを確実にするために、数mm以下、例えば1mm以下の厚さを有することができる。一実施形態では、柔軟なスタンプ層120は、PDMSなどのゴム状材料でできていてもよく、および/または、100から1000ミクロンの範囲の最大厚さを有してもよいが、この範囲の下限は、柔軟なスタンプ層120の脆弱性の増大を犠牲にして、例えば50ミクロン、10ミクロンまたはさらには1ミクロンにさらに低減されることができることが理解されるべきである。疑義を避けるために、柔軟なスタンプ層120の厚さは、バルク材料の厚さと形状122の高さとの組み合わせとして定義されることは明らかである。
【0051】
形状122は、少なくとも1つの輪郭12を含む表面10に転写されるパターンを画定する。形状122は、数ミクロンから数ナノメートルの範囲の形状サイズを有することができ、すなわち、形状122はナノ・パターンを画定することができるが、より大きな形状サイズを使用することも可能である。柔軟なスタンプ層120は、製造されるスタンプの形状部122の意図されたサイズに合わせて調整されたヤング率を有することができる。例えば、500nmから数ミクロン、例えば2ミクロンまたは5ミクロンの形状サイズのような比較的大きな形状サイズの場合、比較的柔らかいゴム状材料、2.5から5MPaのような範囲内のヤング率を有するゴム状材料、例えば柔らかいPDMSを使用することができる。これは、比較的大きなサイズの形状122が、スタンプ製造プロセスまたはインプリント・プロセス中の表面張力による崩壊に対して比較的鈍感であるためである。そのような崩壊は、典型的には、形状間距離に関係し、小さな形状間距離は、過度に可撓性のある形状122を互いにくっつかせる。形状間距離は、典型的には、必ずしも必要というわけではないが、形状サイズに相関するとは限らないことに留意されたい。
【0052】
したがって、形状122のより小さいサイズ(および/またはより小さな形状間距離)が必要とされる場合、上記の表面張力によるより小さいサイズの形状122の崩壊を防止するために、より剛性のあるゴム状材料が企図され得る。スタンプ形状122の寸法が200nmから2ミクロンの範囲内にある実施形態では、硬質のPDMSのような7から11MPaの範囲のヤング率を有するゴム状材料が考えられるが、スタンプ形状122の寸法が1nmから2ミクロンの範囲のスタンプでは、さらに硬質なPDMS(X-PDMSと呼ばれることもある)のような40から80MPaのヤング率を有するゴム状材料が考慮されるべきである。疑義を避けるために、報告されたヤング率は、ASTMD1415-06(2012)規格により標準化された硬度試験によって、規格によって規定される条件下で硬質ボールをゴム材料に貫通させることによって決定されたことに留意されたい。しかしながら、他の方法も、両方の層のヤング率を決定するために同方法が使用される限り、さもなければ比較がより困難または幾分精度が低苦なる場合、使用することができる。
【0053】
上述したように、スタンプ層120がその相対的な薄さのために脆弱であり、マスターモールド50からのスタンプ層120の取り外しが、脆弱なスタンプ層120を損傷させる可能性がある。たとえスタンプ層120がマスターモールド50から無傷で取り外されたとしても、スタンプ層120のその後の取り扱い中に、例えば、以下でより詳細に説明するように、スタンプ層の形状を輪郭付けされたマスター面に適合させるためにスタンプ層120をそのようなマスター面に後で移動させる際に損傷が生じる可能性がある。したがって、薄いスタンプ層120は、輪郭付けされたマスター面に容易に適合させることはできるが、このような薄いスタンプ層120を輪郭付けされたマスター面に変形させるスタンプ製造方法は、多数の薄いスタンプ層120がマスターモールド50からのスタンプ層120の解放中または解放後に損傷することに起因して、歩留まりが低くなる傾向にある。
【0054】
このような製造プロセスの歩留まりは、マスターモールド50上のスタンプ層120の厚さを増加させることによって高めることができるが、これは、典型的には、スタンプ層120の柔軟性を損ない、スタンプ層120が輪郭付けされたマスター表面に順応しにくくなる可能性がある。
【0055】
この特定の問題は、中間スタンプ構造を形成するために、多孔質ポリシロキサン層のような多孔質エラストマー層130がスタンプ層120に接着される工程(c)に示すように対処される。PDMSは、そのような多孔質エラストマー層130のための特に適切な候補材料である。上述したように、スタンプ層上に硬い支持層を追加することによってスタンプ層120の厚さを増加させると、そのような硬い支持層、すなわち非多孔質支持層が、典型的には、形状122のいくつかは輪郭付けされたマスター表面と接触しないようにしか変形できず、または、すべての形状122を輪郭付けされたマスター表面に接触させるのに必要な圧力が形状122の少なくとも一部を変形させて、例えば崩れさせることに起因して、スタンプ層120がマスター輪郭表面に満足できる態様で順応する能力を低下させる。
【0056】
対照的に、支持層130として多孔質ポリシロキサン、例えばPDMSなどの多孔質エラストマーを使用する場合、支持層130は柔軟性(圧縮性)があり、形状122を有するスタンプ層120を輪郭付けされたマスター面に満足のいくように適合させるのに必要な力がより小さくなることが分かった。その結果、スタンプ層120に損傷を与えることなく中間型スタンプ構造を容易にマスターモールド50から取り外すことができ、同時に、以下に詳細に説明するように、輪郭マスター面に対するスタンプ層120の優れた適合性を容易にすることができる。
【0057】
このような柔軟な多孔質(エラストマー)支持層130は、例えば、エラストマーの前駆体を犠牲材料と混合し、犠牲材料のマトリックスを組み込んだエラストマーを含む層を形成するためにエラストマー前駆体を硬化させて、多孔性の柔軟な支持層130を形成するために犠牲材料を除去することによって、形成することができる。前に説明したように、いくつかの実施形態では、エラストマー前駆体は、架橋前のエラストマーであってもよい。本出願の文脈において、犠牲材料は、例えば熱分解を使用して、エラストマーを溶解しない適切な溶媒に犠牲材料を溶解するなどにより、エラストマー層から選択的に除去され得る材料である。
【0058】
前駆体材料は、好ましくは、柔軟なスタンプ層120上にゴム状の支持層を形成するための組成物である。ゴム状支持層は、好ましくは、柔軟なスタンプ層120と同様または同一の熱膨張係数を有する。これは、例えば、同じ材料組成を有する柔軟なスタンプ層120とゴム状支持層とによって達成されてもよい。
【0059】
一実施形態では、多孔性支持層130を形成するための前駆体材料は、2.5から5MPaのヤング率を有するPDMS、すなわち軟質PDMSを形成するための組成物である。軟質PDMSゴム状支持層は、前述のPDMS柔軟スタンプ層120のいずれか、すなわち、同じまたはより高いヤング率を有するPDMS柔軟スタンプ層120と組み合わせることができる。
【0060】
本発明の文脈において、エラストマーの前駆体を犠牲材料と「混合する」とは、犠牲材料がエラストマー前駆体層内に組み込まれる任意のプロセスを含み得る。例えば、犠牲材料が熱分解性ポリマー材料である場合、エラストマー前駆体と犠牲材料との混合物を作製することができ、この混合物は、犠牲材料を含むエラストマー前駆体層へと、成型、スピンコート、浸漬コーティング、インクジェット印刷され、その後、エラストマー前駆体層を硬化させることができ、犠牲材料は、当業者によって容易に理解されるように、加熱によってこの硬化層から放出され得る。
【0061】
他の例として、犠牲材料のマトリックスを作製し、その上にエラストマー前駆体を堆積させてエラストマー前駆体層を形成することができる。例えば、スクロースマトリックスは、水と砂糖(スクロース)とを混合し、その混合物をプレフォームまたは型に入れることによって形成することができる。混合物を乾燥させること、すなわちそこから水を除去することにより、スクロースマトリックスが得られる。このマトリクスは、平滑な犠牲マトリクスを得るように、成形(例えば研磨)されることができる。
【0062】
このようにして得られた犠牲マトリックスの上に、例えばPDMSのような未硬化ポリシロキサンのような流体エラストマー前駆体を、マトリックスがこの前駆物質で充填されるように、堆積させることができ、その後この材料は硬化され得る。前駆体材料を固化させてゴム状多孔質支持層130を形成することができる。硬化プロセスは、例えば、UV放射などの光放射、熱、ラジカルおよびそれらの組み合わせによって触媒される硬化プロセスによって達成され得る。
【0063】
流体エラストマー前駆体を堆積させるとき、犠牲マトリックスの少なくとも1つの表面は、好ましくは、硬化したエラストマーからの犠牲材料の放出を容易にするために露出したままである。スクロースマトリックスの非限定的な例では、マトリックス材料を水に溶解することによってマトリックスをエラストマー層から除去し、それによって多孔性の柔軟な支持層130を得ることができる。
【0064】
多孔性の柔軟な支持層130の細孔サイズおよび密度は、エラストマー前駆体に対する犠牲材料の比によって、および/または犠牲マトリックスの開放度を制御することによって、制御されることができる。例えば、水/スクロースの例では、水/スクロースの比を制御することによってマトリックスの開放度を制御することができる。特定の好適な比は、重量比で1:10から1:100の範囲であり、より高い比はより高密度のスクロースマトリックスを生じさせ、したがって多孔性の柔軟な支持層130中のより小さい孔をもたらす。スクロースは非限定的な例としてのみ言及されており、他の化合物、例えば他の糖または他の水溶性化合物を使用してこのような水溶性マトリックスを形成してもよいことが念を押される。さらに、マトリックスが水溶性である必要はない。多孔性の柔軟な支持層130のエラストマーは溶解しないがマトリックスを溶解する任意の溶媒を使用することができ、そのようなマトリックスを形成することができて選択された溶媒に溶解可能な任意の化合物が考えられる。
【0065】
このようにして得られた多孔性の柔軟な支持層130は、Langmuir,25(6),2009,25,3861-3866に開示されているような適切な接着剤またはアミン/エポキシ化学を使用して、中間スタンプ構造を形成するために任意の適切な方法でスタンプ層120に接着されることができる。例えば、PDMSスタンプ層120および多孔質PDMS支持層130の場合、未硬化PDMSをこれらの層の間の接着剤として使用し、続いて硬化させてこれらの層の間に必要な接着を達成することができる。これは単に非限定的な例であり、これらの層の間に任意の適切な接着剤を使用できることは当業者にとって直ちに明らかであることが強調される。
【0066】
方法はその後、中間スタンプ構造がマスターモールド50から取り外されるステップ(d)に進む。前述したように、多孔性の柔軟な支持層130の存在により、形状122を含むスタンプ層120は、多孔質の柔軟な支持層130による取り外しおよび続く転写プロセスの間の偶発的な損傷から保護される。
【0067】
ステップ(e)において、中間スタンプ構造は、形成されるパターン化スタンプによってインプリントされる輪郭表面の形状および寸法を有する輪郭形成されたマスター面10に押し付けられる。一実施形態では、輪郭表面10は、数ミクロンから数cmの範囲の長さを有する。スタンプ層120は、輪郭表面120の長さに対応する長さを有することができる。輪郭表面10は、任意の適切な材料、例えばガラス、適切なポリマー、金属、あるいは、Si、SiGe、AlGaNなどの半導体材料であってもよい。輪郭表面10は、輪郭表面10の複数のコピーまたはインスタンスがインプリントされるように、量産される物品の一部を形成することができる。
図2に示す輪郭表面10は、輪郭表面10のこれらの複数のコピーまたはインスタンスのテンプレートとして機能する。現在の位置の文脈では、輪郭表面10は、少なくとも1つの輪郭、少なくとも1つの突出部、または、例えば主表面から後退する1つの窪みを含む表面である。そのような突出部またはくぼみは、1つまたは複数の真っ直ぐな面または曲面を有するピラミッドとすることができる。主表面は、連続的に湾曲していてもよい(例えば、半球または円柱または他の丸い突出部またはくぼみ)。
【0068】
ステップ(e)では、形状のパターン122が輪郭表面10と接触するように、中間スタンプ構造が輪郭表面10上に適用される。前述したように支持層130に改善された圧縮性を付与する支持層130の多孔性により、柔軟なスタンプ層120を、輪郭12の境界領域、すなわち輪郭表面10が不連続性を含む領域を含む、輪郭表面10の全表面に接触させることができる。一実施形態では、中間スタンプ構造は、輪郭表面10上に減圧下で適用され、これにより、形状122と輪郭表面10との間の密接な関係がさらに改善される。柔軟なスタンプ層120と輪郭表面10との間からの空気または他の気体の除去は、柔軟なスタンプ層120が、輪郭表面10に、特に輪郭表面10の前述の不連続な表面領域に、確実に付着するようにする。このような減圧は、例えば、輪郭表面10および適用された中間スタンプ構造を真空チャンバ内に配置し、輪郭表面10および適用された柔軟なスタンプ層120に真空を適用することによって達成することができる。
【0069】
前述したように、形状122のパターンは、輪郭表面10上に柔軟なスタンプ層120を適用する間、例えば、柔軟なスタンプ層120を輪郭表面10上で成形または延伸するとき、および/または、比較的大きな圧力、例えば真空圧力が柔軟なスタンプ層120に加えられるときに、変形する可能性がある。このような変形は、典型的には、形状122の間に空隙が存在する場合に生じ得る。これは、(低減された)圧力が、これらの空隙から例えば空気などの媒体を除去し、形これが形状122の変形を招く可能性があるからである。
【0070】
一実施形態では、この問題は、パターン化された柔軟なスタンプ層120が輪郭表面10に押し込まれる適用ステップ(
e)の間、形状122の歪んだパターンが、形状122の意図されたまたは所望のパターンに変形するように、柔軟なスタンプ層120が形状122の歪んだパターンを含むことにより対処される。形状122の歪んだパターンは、経験的に決定されてもよいし、あるいは、例えば、加えられた圧力のもとでのそのような形状122の変形を推定することができるモデリングソフトウェアを使用して計算されてもよい。
【0071】
他の実施形態では、この問題は、現像されていないレジスト前駆体層または他の適切な液体層、例えば未硬化材料組成物などの柔軟な層を、
適用ステップ(
e)において形状122がこの柔軟な層に押し込まれるように、輪郭表面10に塗布することによって、対処される。より具体的には、形状122の間の空隙内の媒体は、これらの空隙中の柔軟な層材料が形状122に構造的な支持を提供して、形状122の著しい歪みを防止するように、柔軟な層材料、例えばレジスト材料で置き換えられる。したがって、これは、適用ステップ(
e)の間にパターンが大きく変形しないので、パターン化された柔軟なスタンプ層120に形状122の歪んだパターンを提供する必要性をなくすことができる。このように、この実施形態は、変形問題に対して、より費用対効果の高い解決策を提供することができる。
【0072】
その後、方法はステップ(f)に進み、多孔性の柔軟な支持層130の細孔が充填材料で満たされ、充填された支持層140が得られる。支持層130の細孔がこの層に高い圧縮性を付与するので、これらの細孔を充填することにより、充填された支持層140の圧縮性が低下し、中間スタンプ構造を輪郭表面10の形状に固定または「凍結」し、パターン形成されたスタンプ100を形成する。これにより、パターン化されたスタンプ100は、輪郭表面10の形状を、この表面から取り外されたときに、確実に保持する。充填材料は、充填材料を固化させて充填された支持層140に所望の剛性を与えるために多孔性の柔軟な支持層130を充填した後に硬化させることができるエラストマーまたはエラストマー前駆体であってもよい。
【0073】
構造的完全性のために、(硬化した)充填材料は、エラストマー支持層130に使用される材料と同じ組成を有することができ、これにより、充填された支持層140を形成するときに、充填材料がエラストマー支持層130の細孔の壁に確実に付着する。
【0074】
しかし、別の実施形態では、充填材料は、柔軟な多孔質スタンプ層130の材料とは異なる材料である。これは、例えば、中間スタンプ構造が輪郭マスター表面10への優れた適合性を容易にしつつ、充填された支持層140が、柔軟な多孔質スタンプ層130の材料の細孔内のより堅い充填材料、例えば硬質PDMS充填材料で充填された軟質多孔質PDMS層により優れた形状保持特性を示すように、より硬い、すなわちより剛性のある充填材料で充填された非常に柔らかい、すなわち圧縮可能な柔軟な多孔スタンプ層130の提供を容易にする。他の適切な充填材料としては、シリコンゴムおよびポリウレタンゴムなどのエラストマーが挙げられる。さらなる適切な材料は、当業者には明らかであろう。
【0075】
剛性のある(形状保持性のある)支持層140を形成するために多孔性の柔軟な支持層130を充填材料で充填すると、オプションのステップ(
g)に示すように、剛性のあるキャリア160が支持層140上に任意に形成されてもよい。このような剛性のあるキャリア160は、例えばガラス、ポリカーボネート、PMMAのような任意の適切な剛性材料で作ることができる。金属も使用されることができる。剛性キャリヤ160は、好ましくは、インプリントプロセス中の温度の変化がスタンプのパターンを受ける表面とスタンプとの位置合わせに影響を与えないように、スタンプによってパターン化されるべき基板の材料と熱的に整合された材料で出来ており、例えば、熱膨張係数が同様または同一である。剛性支持層140は、任意の適切な方法で、例えば、接ぎ合わせによって、または接着剤を使用する接着によって、剛性キャリア160に固定されてもよい。
【0076】
得られた構造体はその後輪郭表面10から取り外されて、形状122のパターンを担持するスタンプ面を含むスタンプ層120を有するパターン形成されたスタンプ100が得られ、このスタンプ表面は輪郭表面10の表面プロファイルに一致し、スタンプ100の構造的完全性は、支持層140によって、オプションとして剛性キャリア160によって提供される。これは、ステップ(h)に示されている。言い換えれば、輪郭形成されたスタンプ層120は、形成されるべきパターン化輪郭表面の逆であるスタンプ面を含む。
【0077】
一実施形態では、パターニングされたスタンプ100は、充填支持層140と同じ材料、例えば軟質PDMSで作られたスタンプ層120を含むエラストマーまたはゴム体を有する。他の実施形態では、パターニングされたスタンプ100は、支持層140とは異なる材料、例えば、軟質PDMS支持層140および先に説明した硬質PDMSまたはX-PDMSスタンプ層120で作られたスタンプ層120を有する。さらに別の実施形態では、パターニングされたスタンプ100は、多孔質支持層130と同じ材料、例えば軟質PDMSで作られたスタンプ層120を含むエラストマーまたはゴム体を有し、ここで多孔質支持層130は、先に説明したように、異なる充填材料で充填される。さらに別の実施形態では、スタンプ層120、多孔質支持層130および充填材料はすべて異なる材料である。
【0078】
より一般的には、パターニングされたスタンプ100は、先に説明したように、充填された支持層140のエラストマーまたはゴム状材料と同じまたはより高いヤング率を有するエラストマーまたはゴム状材料のスタンプ層120を含むエラストマーまたはゴム体を有することができる。柔軟なスタンプ層120の材料は、可能な限り低いが、依然としてレリーフ形状パターンの崩壊を防止するのに十分高いヤング率を有するものを使用し、パターン化されたスタンプ100の寿命を最大にするために、パターン化されたスタンプ100によってインプリントされた層からパターン化されたスタンプ100を容易に取り外しできるようにすることが望ましいことが理解されるべきである。
【0079】
本発明の実施形態は、形状122のパターンを有する輪郭付けされた印刷表面を有する任意のパターン付きスタンプ100を対象とし、それは本発明のスタンプ製造方法の実施形態によって得ることができることは疑いのないことに留意されたい。
【0080】
パターニングされたスタンプ100は、パターニングされるべき表面上のインク(例えばレジスト層)がパターニングされたスタンプでインプリントされて、スタンプパターンをインクまたはレジスト層に転写するソフトリソグラフィインプリントプロセスのようなインプリント・プロセスにおいて使用され得る。これは、それ自体知られているように、そのような表面上にナノスケールの形状サイズを有するパターンの形成を可能にする。
【0081】
本発明によるインプリンティング方法の例示的な実施形態を
図3に示す。ステップ(a)では、1つまたは複数の輪郭12を含む受容面10が、本発明のパターン形成されたスタンプ100の実施形態と共に提供される。パターン化されたスタンプ100によってインプリントされるインクまたはレジスト前駆体層14が輪郭表面10上に設けられる。インクまたはレジスト前駆体層14は、任意の適切な材料、例えば、有機または無機レジスト前駆体材料であってもよい。そのような材料はそれ自体よく知られており、広く文章化されているので、そのような材料の組成のさらなる説明は、簡潔にするために省略されている。同様に、輪郭表面10に用いられる材料も特に限定されない。前に説明したように、任意の適切な材料を輪郭表面に使用することができる。なお、
図3に示されるインプリントされるべき輪郭表面10は、パターン化されたスタンプ100を形成するための
図2に示される輪郭マスター表面10と同一であり、それによって、パターン化されたスタンプ100の輪郭表面が、より詳細に前に説明されているように、輪郭12の境界領域を含めて、正しく位置合わせした際に輪郭表面10の形状と正確に一致することを保証する。
【0082】
ステップ(b)において、インクまたはレジスト層14は、パターン化されたスタンプ100でインプリントされ、その後、例えば硬化反応によって固化されて現像されて、例えばパターン化されたインクまたはレジスト層16を輪郭形成表面10上に形成し、その後、パターン化されたスタンプ100は、ステップ(c)において取り外されて、パターン化されたインクまたはレジスト層16を担持する輪郭表面10を含む物品を生成する。先に説明したように、このような物品は、輪郭表面10上のパターンが連続的であり、すなわち輪郭12の境界領域にも存在し、高品質の輪郭表面パターンを提供するという事実から利益を得る。
【0083】
この点において、本発明のインプリンティング方法は、輪郭表面のインプリントのみに限定されないことに留意されたい。代替的な実施形態が
図4に示されており、パターン化されたスタンプ100を使用して、平坦な受容面10上に輪郭を形成する。この目的のために、比較的厚い(粘性の)インクまたはレジスト前駆体層14が、ステップ(a)において表面10上に塗布され、その後、インクまたはレジスト前駆体層14はパターン化されたスタンプ100でインプリントされ、続いてステップ(b)で現像されて、ステップ(c)においてパターン化されたスタンプ100を取り外した後にパターン化されたインクまたはレジスト層18が得られる。パターン形成されたインクまたはレジスト層18は、
図2および
図3に示す輪郭12を含み、すなわち、輪郭12は、平坦な表面10を含む基板の一体部分を形成するのではなく、現像されたパターン化インクまたはレジスト層18の一部として形成される。
【0084】
現像されたパターン化インクまたはレジスト層18の一部を形成する輪郭12は、輪郭12が輪郭表面10の一体部分を形成する場合よりも収縮しやすいことに留意されたい。また、
図4の方法では、より多くのインクまたはレジスト材料14が必要であることは明らかである。しかしながら、
図3のインプリンティング方法では、輪郭表面10への形状122のパターンの高品質の転写を達成するためには、パターン化されたスタンプ100を輪郭表面10と慎重に位置合わせしなければならないが、
図4の方法では、パターン化されたスタンプ100の輪郭表面が平坦な表面10の形状と一致しないので、このような位置合せの要求はより緩和される。
【0085】
この点で、
図3及び
図4のインプリンティング・ステップ(b)は、減圧下で、例えば真空チャンバ内で実施されて、パターン化スタンプ100と(輪郭)表面10との間の接触をさらに改善することができることが留意される。
【0086】
図3に示す方法、すなわち既に輪郭が形成された表面上に形状パターンを形成する方法は、輪郭が比較的大きい寸法、例えば100ミクロンから数センチメートル以上の寸法を有する場合に有用であり得る。
図4に示された方法は、レジスト材料18から形成された輪郭12の収縮量が所望の輪郭表面10の正確な再現を妨げるような寸法のパターン化された輪郭表面を形成するのにはあまり適していない可能性がある。しかしながら、より小さい輪郭サイズ、例えば1から100ミクロンの範囲の輪郭サイズの場合、
図4に示す方法は、レジスト材料18から形成される輪郭12の収縮の適度な量のために、所望の輪郭表面を正確に再現するために使用されることができる。
【0087】
ここで、パターン化されたスタンプ100の印刷面における輪郭の大きさは、特に限定されない。輪郭は、約1ミクロンからセンチメートル範囲の寸法、例えば1cm以上の範囲の寸法を有することができる。
さらに、パターン化されたスタンプ100の印刷面における輪郭の寸法を形状122の寸法で割った比は、特に限定されず、2から1,000,000,000の範囲であることができ、例えば5から100,000,000または50から50,000,000である。換言すれば、ナノメーターサイズの形状が、数センチメートルから1メートルまでの輪郭寸法を有する輪郭表面にインプリントされてもよい。
【0088】
図5は、
図2に示す方法に従って形成されたパターン化スタンプ100を用いて
図3のインプリント方法に従ってインプリントされた直径4mmのガラス球の一対のSEM画像を示し、輪郭表面10として同一のガラス球が使用された。上の画像は得られた構造を89×の倍率で示し、下の画像は得られた構造を10,000×倍率で示す。
図5では、欠陥がごくわずかである規則的なパターンがガラス球上に生成されていることが容易に認識される。下の画像のガラス球上で認識できる残骸は、インプリンティング法とは無関係な、ガラス球のパターン化された表面の汚染である。
【0089】
上記の実施形態は本発明を限定するものではなく、当業者は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧内に置かれている参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「含む(comprising)」という語は、請求項に列挙された要素またはステップ以外の要素またはステップの存在を排除するものではない。要素に先行する冠詞「a」または「an」は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。本発明は、いくつかの別個の要素を含むハードウェアによって実施されることができる。いくつかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段のいくつかは、同一のハードウェアアイテムによって具体化されてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。