特許第6398041号(P6398041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398041電解質塩除去装置および電解質塩除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398041
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】電解質塩除去装置および電解質塩除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20180920BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20180920BHJP
   H01M 2/36 20060101ALI20180920BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALN20180920BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20180920BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/02 A
   H01M2/36 101A
   !H01M10/0566
   !H01M10/058
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-81667(P2014-81667)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-204145(P2015-204145A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】今村 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 道人
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−317297(JP,A)
【文献】 特開昭53−097264(JP,A)
【文献】 特開2004−220863(JP,A)
【文献】 特開平06−287795(JP,A)
【文献】 特開平10−255817(JP,A)
【文献】 特開平08−148155(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0224494(US,A1)
【文献】 特開2007−096048(JP,A)
【文献】 特開2001−001237(JP,A)
【文献】 特開2012−155933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 2/02
H01M 2/36
H01M 10/0566
H01M 10/058
A47L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液が収容された電池容器の外面に付着している電解質塩を除去する電解質塩除去装置であって、
露点が第1の閾値より低い第2の閾値以下の気体で満たされたドライ環境から露点が前記第1の閾値以上の気体で満たされた大気環境に前記電池容器を移送し、前記電池容器の外面に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させる液状化手段と、
前記大気環境に設けられ、前記液状化手段により水分を含有する気体と接触した電解質塩を除去する除去手段と、
を備え
前記液状化手段は、前記ドライ環境と前記大気環境との間に位置する中間環境を介して前記電池容器を移送するものであり、
前記液状化手段は、前記ドライ環境と前記中間環境との間に設けられ、前記ドライ環境から前記中間環境へ前記電池容器を移送する際に開き、前記中間環境から前記大気環境へ前記電池容器を移送する際に閉じる第1のシャッターと、前記中間環境と前記大気環境との間に設けられ、前記ドライ環境から前記中間環境へ前記電池容器を移送する際に閉じ、前記中間環境から前記大気環境へ前記電池容器を移送する際に開く第2のシャッターと、を有することを特徴とする電解質塩除去装置。
【請求項2】
前記液状化手段は、前記大気環境に設けられ、水分を含有する気体を前記電池容器に向って送風する送風手段を備えることを特徴とする請求項に記載の電解質塩除去装置。
【請求項3】
前記電解液は、前記ドライ環境にて、前記電池容器に形成された注液口から当該電池容器内に注液されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電解質塩除去装置。
【請求項4】
前記除去手段は、液状化した電解質塩を吸収可能な第1の吸収体を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電解質塩除去装置。
【請求項5】
前記第1の吸収体は、揮発性を有する極性溶媒を含んでいることを特徴とする請求項記載の電解質塩除去装置。
【請求項6】
前記液状化手段により水分を含有する気体を接触させるよりも前に、前記ドライ環境に設けられ、前記電池容器の外面に付着している電解液を除去する事前除去手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電解質塩除去装置。
【請求項7】
前記事前除去手段は、液状化した電解質塩を吸収可能な第2の吸収体を備えることを特徴とする請求項に記載の電解質塩除去装置。
【請求項8】
電解液が収容された電池容器の外面に付着している電解質塩を除去する電解質塩除去方法であって、
露点が第1の閾値より低い第2の閾値以下の気体で満たされたドライ環境から露点が前記第1の閾値以上の気体で満たされた大気環境に前記電池容器を移送手段により移送し、前記電池容器の外面に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させる第1のステップと、
前記大気環境にて、前記第1のステップにより水分を含有する気体と接触した電解質塩を除去手段により除去する第2のステップと、
を備え
前記第1のステップにおいて、前記電池容器は、前記ドライ環境と前記大気環境との間の中間環境を介して前記ドライ環境から前記大気環境へ移送されるものであり、
前記ドライ環境と前記中間環境との間には開閉可能な第1のシャッターを配置し、前記中間環境と前記大気環境との間には開閉可能な第2のシャッターを配置して、前記第1のシャッターを開くとともに前記第2のシャッターを閉じて前記電池容器を前記ドライ環境から前記中間環境へ移送し、前記第1のシャッターを閉じるとともに前記第2のシャッターを開いて前記電池容器を前記中間環境から前記大気環境へ移送することを特徴とする電解質塩除去方法。
【請求項9】
前記第1のステップでは、前記大気環境にて、水分を含有する気体を前記電池容器に向って送風することを特徴とする請求項に記載の電解質塩除去方法。
【請求項10】
前記電解液は、前記ドライ環境にて、前記電池容器に形成された注液口から当該電池容器内に注液されるものであることを特徴とする請求項8または9に記載の電解質塩除去方法。
【請求項11】
前記電解液が注液された後に前記注液口を封止し、当該注液口を封止された前記電池容器を前記第1のステップにて前記ドライ環境から前記大気環境へ移送することを特徴とする請求項10に記載の電解質塩除去方法。
【請求項12】
前記第2のステップでは、液状化した電解質塩を吸収可能な第1の吸収体で液状化した電解質塩を吸収することを特徴とする請求項から11のいずれか1項に記載の電解質塩除去方法。
【請求項13】
前記第1のステップを行うよりも前に、前記ドライ環境において、前記電池容器の外面に付着している電解液を除去する第3のステップを備えることを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の電解質塩除去方法。
【請求項14】
前記第3のステップでは、電解液を吸収可能な第2の吸収体で電解液を吸収することを特徴とする請求項13に記載の電解質塩除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に付着している電解質塩を除去する電解質塩除去装置および電解質塩除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、電極や電解液といった構成要素を電池ケース内に封入することによって製造される。
【0003】
例えばリチウムイオン二次電池であれば、セパレータを挟んで正極および負極が内部に収容された電池ケース内に、電解液を注液する。電解液は、電池ケースに形成された注液口から電池ケース内に注液され、注液口は、電解液の注液後に気密性を保つように封止体で封止される。
【0004】
正極や電解液は、嫌水性を有する。このため、電池ケース内に電解液を注液する工程や、注液口を封止する工程は、ドライ環境(例えば、露点−40度以下)で実施される。
【0005】
ここで、電池ケース内への電解液の注液時や、電池ケース内に電解液を注液してから注液口を封止するまでの間に、注液口から電池ケースの外部に電解液がこぼれて、注液口の周囲に電解液が付着してしまうことがある。そこで、電池ケース内に電解液を注液した後に、注液口の周囲にスポンジを押し付けて、注液口の周囲に付着している電解液を拭き取って除去したり、注液口の周囲にレーザー光を照射して、注液口の周囲に付着している電解液を蒸発させて除去したりする手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−155933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
注液口の周囲に付着している電解液の溶媒成分が蒸発すると、電解液中の電解質塩が結晶化する。結晶化した電解質塩は、電池としての外観を損なう原因になる。また、電解質塩は腐食性が高いため、電解質塩が電池ケースに付着したままの状態では、電池を製造するための装置や機器に悪影響を与えてしまうおそれがある。上述のようにスポンジを押し付けたりレーザー光を照射したりする手法では、液状の電解液を除去することはできたとしても、結晶化した電解質塩を除去することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電解質塩を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
(1) 本発明は、電池容器(例えば、図2の電池ケース110に相当)の外面に付着している電解質塩を除去する電解質塩除去装置(例えば、図1の電池製造装置AAに相当)であって、前記電池容器の外面に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させる液状化手段(例えば、図3の液状化部31に相当)と、前記液状化手段により水分を含有する気体と接触した電解質塩を除去する除去手段(例えば、図3の除去部32に相当)と、を備えることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0011】
この発明によれば、液状化手段により、電池容器の外面に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させるとともに、除去手段により、この気体と接触した電解質塩を除去することとした。このため、電池容器の外面に付着している電解液が結晶化して電解質塩になっていても、除去手段により除去する際に、この電解質塩を溶解させることにより液状化させておくことができる。したがって、電解質塩を除去することができる。
【0012】
なお、液状化手段による上述の処理や、除去手段による上述の処理は、注液口の封止前に行うものであってもよいし、注液口の封止後に行うものであってもよい。ただし、注液口の封止前に行う場合には、電池容器内への水分の侵入を抑えるために、液状化手段による上述の処理や、除去手段による上述の処理を、短時間に行うことが好ましい。電池容器内への水分の侵入を抑えるという観点からすると、注液口の封止後に行うことがより好ましい。
【0013】
(2) 本発明は、(1)の電解質塩除去装置について、前記液状化手段により電解質塩に接触させる気体は、露点が第1の閾値(例えば、後述の露点−20度に相当)以上の気体であり、前記除去手段は、露点が前記第1の閾値以上の気体で満たされた大気環境に設けられ、前記液状化手段は、露点が前記第1の閾値以下である第2の閾値(例えば、後述の露点−40度に相当)以下の気体で満たされたドライ環境から前記大気環境に、前記電池容器を移送する移送手段を備えることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0014】
この発明によれば、(1)の電解質塩除去装置において、除去手段を大気環境に設け、ドライ環境から大気環境に電池容器を移送する移送手段を液状化手段に設けることとした。このため、移送手段によりドライ環境から大気環境に電池容器を移送すれば、電池容器の外面に付着している電解質塩を溶解させることができる。
【0015】
(3) 本発明は、(1)または(2)の電解質塩除去装置について、前記液状化手段は、水分を含有する気体を前記電池容器に向って送風する送風手段(例えば、図3の送風部312に相当)を備えることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0016】
この発明によれば、(1)または(2)の電解質塩除去装置において、液状化手段に、水分を含有する気体を電池容器に向かって送風する送風手段を設けることとした。このため、電解質塩の液状化を促進させることができ、電解質塩の除去をより的確に行うことができる。
【0017】
(4) 本発明は、(1)から(3)のいずれか1つの電解質塩除去装置について、電解液は、前記電池容器に形成された注液口(例えば、図2の注液口120に相当)から当該電池容器内に注液され、前記液状化手段は、前記注液口の周囲に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0018】
この発明によれば、(1)から(3)のいずれか1つの電解質塩除去装置において、液状化手段により、注液口の周囲に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させることとした。このため、電池容器のうち注液口の周囲に付着している電解質塩を、効率的に液状化させることができる。
【0019】
(5) 本発明は、(1)から(4)のいずれか1つの電解質塩除去装置について、前記除去手段は、液状化した電解質塩を吸収可能な第1の吸収体(例えば、図3の吸収体321に相当)を備えることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0020】
この発明によれば、(1)から(4)のいずれか1つの電解質塩除去装置において、除去手段に、液状化した電解質塩を吸収可能な第1の吸収体を設けることとした。このため、液状化している電解質塩に第1の吸収体を接触させることで、この電解質塩を容易に除去することができる。
【0021】
(6) 本発明は、(5)の電解質塩除去装置について、前記第1の吸収体は、揮発性を有する極性溶媒(例えば、後述の水やアルコールやカーボネートに相当)を含んでいることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0022】
この発明によれば、(5)の電解質塩除去装置において、第1の吸収体に極性溶媒を含ませることとした。このため、電解質塩に第1の吸収体を接触させることで、電解質塩の液状化をさらに促進させることができ、電解質塩の除去をより的確に行うことができる。
【0023】
また、この発明によれば、(5)の電解質塩除去装置において、第1の吸収体に含ませる極性溶媒を、揮発性を有する極性溶媒とした。このため、第1の吸収体に含ませた極性溶媒は、電池容器の外面に付着しても蒸発するので、第1の吸収体から電池容器の外面に付着した極性溶媒を除去する工程を行うことなく、上述のように電解質塩の液状化をさらに促進させることができる。
【0024】
(7) 本発明は、(1)から(6)のいずれか1つの電解質塩除去装置について、前記液状化手段により水分を含有する気体を接触させるよりも前に、前記電池容器の外面に付着している電解質塩を除去する事前除去手段(例えば、図7の事前除去部33に相当)を備えることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0025】
この発明によれば、(1)から(6)のいずれか1つの電解質塩除去装置において、事前除去手段により、電池容器の外面に付着している電解液を、液状化手段により水分を含有する気体を接触させるよりも前に除去することとした。このため、電池容器の外面に付着している電解液を、結晶化が進行していない段階で除去しておくことができるので、電解質塩を少なくすることができる。
【0026】
(8) 本発明は、(7)の電解質塩除去装置について、前記液状化手段により電解質塩に接触させる気体は、露点が第1の閾値(例えば、後述の露点−20度に相当)以上の気体であり、前記事前除去手段は、露点が前記第1の以下である第2の閾値(例えば、後述の露点−40度に相当)以下の気体で満たされたドライ環境に設けられることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0027】
この発明によれば、(7)の電解質塩除去装置において、事前除去手段をドライ環境に設けることとした。このため、電池容器がドライ環境にある段階で、この電池容器の外面に付着している電解液を除去することができる。
【0028】
(9) 本発明は、(7)または(8)の電解質塩除去装置について、前記事前除去手段は、液状化した電解質塩を吸収可能な第2の吸収体(例えば、図7の吸収体331に相当)を備え、前記第2の吸収体は、電解液の溶媒を含んでいることを特徴とする電解質塩除去装置を提案している。
【0029】
この発明によれば、(7)または(8)の電解質塩除去装置において、事前除去手段に、液状化した電解質塩を吸収可能な第2の吸収体を設け、第2の吸収体に電解液の溶媒を含ませることとした。このため、電解液に第2の吸収体を接触させることで、電解液の除去をより的確に行うことができる。
【0030】
(10) 本発明は、電池容器(例えば、図2の電池ケース110に相当)の外面に付着している電解質塩を除去する電解質塩除去方法であって、前記電池容器の外面に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させる第1のステップと、前記第1のステップにより水分を含有する気体と接触した電解質塩を除去する第2のステップと、を備えることを特徴とする電解質塩除去方法を提案している。
【0031】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0032】
(11) 本発明は、(10)の電解質塩除去方法において、前記第1のステップにより電解質塩に接触させる気体は、露点が第1の閾値(例えば、後述の露点−20度に相当)以上の気体であり、前記第2のステップは、露点が前記第1の閾値以上の気体で満たされた大気環境で行われ、前記第1のステップでは、露点が前記第1の閾値以下である第2の閾値(例えば、後述の露点−40度に相当)以下の気体で満たされたドライ環境から前記大気環境に、前記電池容器を移送させることを特徴とする電解質塩除去方法を提案している。
【0033】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0034】
(12) 本発明は、(10)または(11)の電解質塩除去方法において、前記第1のステップでは、水分を含有する気体を前記電池容器に向って送風することを特徴とする電解質塩除去方法を提案している。
【0035】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【0036】
(13) 本発明は、(10)から(12)のいずれか1つの電解質塩除去方法において、前記第1のステップにより電解質塩に接触させる気体は、露点が第1の閾値(例えば、後述の露点−20度に相当)以上の気体であり、前記第1のステップを行うよりも前に、露点が前記第1の閾値以下である第2の閾値(例えば、後述の露点−40度に相当)以下の気体で満たされたドライ環境において、前記電池容器の外面に付着している電解液を除去する第3のステップを備えることを特徴とする電解質塩除去方法を提案している。
【0037】
この発明によれば、上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電解質塩を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1実施形態に係る電池製造装置のブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外観を示す上面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る電池製造装置が備える電解質塩除去装置のブロック図である。
図4】温度23度の環境における、露点と、送風部による送風の有無と、電解質塩の溶解時間と、の関係を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る電池製造装置が行う処理のフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係る電池製造装置のブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る電池製造装置が備える電解質塩除去装置のブロック図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る電池製造装置が行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0041】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電池製造装置AAのブロック図である。電池製造装置AAは、注液装置1、溶接装置2、および電解質塩除去装置3を備え、図2に示すリチウムイオン二次電池100の電池ケース110の外面に付着している電解質塩を除去する。
【0042】
図2は、リチウムイオン二次電池100の概略上面図である。リチウムイオン二次電池100は、電池ケース110の内部に、正極と負極との間にセパレータを挟んで構成される発電要素を収容する。電池ケース110は、発電要素を収容する容器111と、発電要素を容器111の内部に収容するために容器111に形成された開口部を塞ぐ蓋部材112と、を備える。これら容器111と蓋部材112とは、容器111の内部に発電要素が収容された後に、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接、接着剤などにより接合される。蓋部材112には、注液口120が形成されている。
【0043】
図1に戻って、注液装置1は、注液口120から電池ケース110の内部に、電解液を注液する。注液装置1による電解液の注液は、容器111と蓋部材112との接合が行われた後に、行われる。
【0044】
溶接装置2は、注液口120を溶接により封止する。溶接装置2による注液口120の溶接は、注液装置1による電解液の注液が完了した後に、行われる。
【0045】
なお、正極や電解液は、嫌水性を有する。このため、注液装置1および溶接装置2は、露点−40度以下のドライ環境に配置される。
【0046】
電解質塩除去装置3は、電池ケース110の外面に付着している電解質塩を除去する。電解質塩除去装置3による電解質塩の除去は、溶接装置2による注液口120の溶接が完了した後に、行われる。
【0047】
図3は、電解質塩除去装置3のブロック図である。電解質塩除去装置3は、液状化部31および除去部32を備える。
【0048】
液状化部31は、電池ケース110の外面に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させる。この液状化部31は、移送部311および送風部312を備える。
【0049】
移送部311は、溶接装置2による注液口120の溶接が行われた電池ケース110を、ドライ環境から大気環境に移送する。このため、移送部311により電池ケース110を大気環境に移送すると、大気環境に含まれている水分が、電池ケース110の外面に付着している電解質塩に接触し、電解質塩が溶解することにより液状化することになる。なお、電解質塩が溶解するまでの溶解時間は、図4に示すように、大気環境の露点と、後述の送風部312による送風の有無と、に応じて変化する。
【0050】
図4は、温度23度の環境における、露点と、送風部312による送風の有無と、電解質塩の溶解時間と、の関係を示す図であり、この関係は、本発明者らが実験により見出したものである。図4に示すように、露点−40度においては、送風部312による送風の有無に関わらず、時間をかけても電解質塩は溶解しない。また、露点が−40度より高い場合には、露点が高くなるに従って溶解時間が短くなるとともに、送風部312による送風を行う場合の方が、送風部312による送風を行わない場合と比べて溶解時間が短くなる。そのため、図4に示すように、電解質塩を溶解できる大気環境の露点としては、−20度以上とするのがよい。さらに、電池製造に係る時間を考慮すると、露点−10度以上にすることが好ましい。なお、本実施形態では、大気環境は、温度23度であって送風部312による送風が行われ、露点−10度以上であるものとする。
【0051】
なお、ドライ環境と大気環境との間には、中間環境が設けられており、ドライ環境と中間環境との間には第1のシャッターが設けられ、中間環境と大気環境との間には、第2のシャッターが設けられている。移送部311は、電池ケース110をドライ環境から大気環境に移送する際に、第1のシャッターおよび第2のシャッターを制御して、第1のシャッターおよび第2のシャッターのうち、一方を開いている期間では他方を閉じる。具体的には、移送部311は、電池ケース110をドライ環境から中間環境に移送する工程と、電池ケース110を中間環境から大気環境に移送する工程と、を行って、電池ケース110をドライ環境から大気環境に移送する。電池ケース110をドライ環境から中間環境に移送する工程では、第1のシャッターを開くとともに第2のシャッターを閉じる。一方、電池ケース110を中間環境から大気環境に移送する工程では、第1のシャッターを閉じるとともに、第2のシャッターを開く。これによれば、大気環境に含まれている水分がドライ環境に混入してしまうのを防止することができる。
【0052】
送風部312は、大気環境に配置され、予め定められた時間(例えば、大気環境の温度が23度で、大気環境の露点がゼロ度であれば、20秒間)だけ圧縮空気を電池ケース110に向って送風する。圧縮空気の温度および湿度は、大気環境における空気の温度および湿度と略等しいものとする。このため、電池ケース110の外面に付着している電解質塩の液状化が、促進されることになる。
【0053】
なお、電解質塩は、電池ケース110の外面のうち、主に注液口120の周囲に付着する。そこで、送風部312は、電池ケース110の外面のうち注液口120の周囲に送風する。
【0054】
ただし、電解質塩に風が直接当たると、その風の強さによっては液状化した電解質塩が飛び散ってしまうおそれがあるので、液状化した電解質塩が飛び散らない程度に風速や風量を調整した風を電解質塩に当てることが好ましい。また、送風部312は、注液口120の周囲に、直接的ではなく間接的に風が当たるように送風することとしてもよい。
【0055】
除去部32は、大気環境に配置され、液状化部31により液状化した電解質塩を除去する。この除去部32は、吸収体321、吸収体巻き出し部322、および吸収体巻き取り部323を備える。
【0056】
吸収体321は、液状化した電解質塩を吸収できる部材、例えば不織布や織布や紙などで、長尺状に構成される。この吸収体321は、揮発性を有する極性溶媒を含んでおり、電池ケース110の外面のうち注液口120の周囲に押し当てられる。これによれば、吸収体321に含まれている極性溶媒により、電池ケース110の外面に付着している電解質塩の液状化が、さらに促進され、液状化した電解質塩が吸収体321に吸収されて拭き取られることになる。
【0057】
なお、吸収体321に含まれる極性溶媒としては、例えば水であってもよい。ただし、エタノールと同程度以上の揮発性を有するものが好ましく、例えばアルコールやカーボネートなどであることが好ましい。
【0058】
上述の吸収体321は、液状化した電解質塩の拭き取りのため、電池ケース110の拭き取り対象箇所に押し当てられる。この吸収体321は、例えば、長尺状の一端側が吸収体巻き出し部322に巻かれ、長尺状の他端側が吸収体巻き取り部323にて巻き取られるようになっており、吸収体巻き出し部322と吸収体巻き取り部323との間に位置する吸収体321を、その下方に配置された電池ケース110へ、押し当て部にて吸収体321の上方から電池ケース110の拭き取り対象箇所に向って押し当てるようにする。
【0059】
吸収体巻き出し部322は、電池ケース110の外面のうち注液口120の周囲に吸収体321を押し当てた状態で、吸収体321を巻き出す。また、吸収体巻き取り部323は、吸収体巻き出し部322から巻き出された吸収体321を、予め定められた第1の方向に沿って巻き取る。これによれば、吸収体321は、電池ケース110の外面のうち注液口120の周囲に押し当てられた状態で第1の方向に沿って移動することになる。また、拭き取りを所定時間行った後に、例えば上述の押し当て部を上昇させることによって、吸収体321を電池ケース110への押し当てから解放する。これによれば、液状化した電解質塩を電池ケース110から拭き取ることができる。
【0060】
図5は、電池製造装置AAが行う処理のフローチャートである。電池製造装置AAは、電池ケース110のそれぞれに対して、図5に示した各処理を1回ずつ行う。
【0061】
ステップS1において、電池製造装置AAは、注液装置1により、容器111と蓋部材112との接合が行われた電池ケース110の内部に、注液口120から電解液を注液し、ステップS2に処理を移す。
【0062】
ステップS2において、電池製造装置AAは、溶接装置2により、電池ケース110の画像を撮影して注液口120の位置を検知し、ステップS3に処理を移す。
【0063】
ステップS3において、電池製造装置AAは、溶接装置2により、ステップS2で検知した位置にSUS球を配置して、ステップS4に処理を移す。
【0064】
ステップS4において、電池製造装置AAは、溶接装置2により、ステップS3で配置したSUS球に熱を加えて溶接し、ステップS5に処理を移す。なお、溶接には、レーザー溶接や抵抗溶接などを適用することができる。
【0065】
ステップS5において、電池製造装置AAは、溶接装置2により、ステップS2で検知した位置を中心とした領域の画像を撮影して、溶接状態を検査し、ステップS6に処理を移す。溶接状態の検査では、まず、溶接跡の位置や大きさや形状などに基づいて、注液口120の封止が適切に行われているか否かを判定する。次に、注液口120の封止が適切に行われている電池ケース110を、ステップS6の処理に移行させるとともに、注液口120の封止が適切に行われていない電池ケース110を排除する。
【0066】
ステップS6において、電池製造装置AAは、移送部311により、電池ケース110をドライ環境から大気環境に移送して、ステップS7に処理を移す。
【0067】
ステップS7において、電池製造装置AAは、送風部312により、電池ケース110に向って送風し、ステップS8に処理を移す。
【0068】
ステップS8において、電池製造装置AAは、吸収体巻き出し部322および吸収体巻き取り部323により、電池ケース110の外面のうち注液口120の周囲に吸収体321を押し当てた状態で、吸収体321を第1の方向に沿って移動させて、液状化した電解質塩を吸収体321に吸収させ、図5に示した処理を終了する。
【0069】
以上の電解質塩除去装置3によれば、以下の効果を奏することができる。
【0070】
電解質塩除去装置3は、液状化部31により、電池ケース110の外面に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させるとともに、除去部32により、この気体と接触して液状化した電解質塩を除去する。このため、電池ケース110の外面に付着している電解液が結晶化して電解質塩になっていても、除去部32により除去する際に、この電解質塩を溶解させることにより液状化させておくことができる。したがって、電解質塩を除去することができる。
【0071】
また、電解質塩除去装置3において、除去部32が大気環境に設けられ、ドライ環境から大気環境に電池ケース110を移送する移送部311が液状化部31に設けられる。このため、移送部311によりドライ環境から大気環境に電池ケース110を移送すれば、電池ケース110の外面に付着している電解質塩を溶解させることができる。
【0072】
また、電解質塩除去装置3において、液状化部31に、水分を含有する気体を電池ケース110に向かって送風する送風部312が設けられる。このため、電解質塩の液状化を促進させることができ、電解質塩の除去をより的確に行うことができる。
【0073】
また、電解質塩除去装置3は、液状化部31により、注液口120の周囲に付着している電解質塩に、水分を含有する気体を接触させる。このため、電池ケース110の外面のうち注液口120の周囲に付着している電解質塩を、効率的に液状化させることができる。
【0074】
また、電解質塩除去装置3において、除去部32に、液状化した電解質塩を吸収可能な吸収体321が設けられる。このため、吸収体321により、液状化している電解質塩を容易に除去することができる。
【0075】
また、電解質塩除去装置3は、吸収体321に極性溶媒を含ませる。このため、電解質塩に吸収体321を接触させて、電解質塩の液状化をさらに促進させることができ、電解質塩の除去をより的確に行うことができる。
【0076】
また、電解質塩除去装置3は、吸収体321に含ませる極性溶媒を、揮発性の有する極性溶媒とする。このため、吸収体321に含ませた極性溶媒は、電池ケース110の外面に付着しても蒸発するので、吸収体321から電池ケース110の外面に付着した極性溶媒を除去する工程を行うことなく、上述のように電解質塩の液状化をさらに促進させることができる。
【0077】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係る電池製造装置BBのブロック図である。電池製造装置BBは、図1に示した本発明の第1実施形態に係る電池製造装置AAとは、電解質塩除去装置3の代わりに電解質塩除去装置3Aを備える点が異なる。なお、電池製造装置BBにおいて、電池製造装置AAと同一構成要件については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
図7は、電解質塩除去装置3Aのブロック図である。電解質塩除去装置3Aは、電解質塩除去装置3とは、事前除去部33を備える点が異なる。
【0079】
事前除去部33は、ドライ環境に配置され、溶接装置2による注液口120の溶接が行われるよりも前に、電池ケース110の外面に付着している電解液を除去する。この事前除去部33は、吸収体331、吸収体巻き出し部332、および吸収体巻き取り部333を備える。
【0080】
吸収体331、吸収体巻き出し部332、および吸収体巻き取り部333は、それぞれ、吸収体321、吸収体巻き出し部322、および吸収体巻き取り部323と同様の構成である。
【0081】
ただし、吸収体321は、揮発性を有する極性溶媒を含んでいるのに対して、吸収体331は、電解液の溶媒のうち少なくとも一部で構成される溶媒を含んでいるものとする。このため、吸収体331に含まれている溶媒により、電解液の粘性が低下するので、吸収体331による電解液の吸収が促進されることになる。
【0082】
また、吸収体巻き取り部323は、第1の方向に沿って吸収体321を巻き取るのに対して、吸収体巻き取り部333は、第1の方向とは異なる第2の方向に沿って吸収体331を巻き取るものとする。このため、吸収体321は、第1の方向に沿って移動するのに対して、吸収体331は、第2の方向に沿って移動することになる。
【0083】
図8は、電池製造装置BBが行う処理のフローチャートである。電池製造装置BBは、電池ケース110のそれぞれに対して、図8に示した各処理を1回ずつ行う。
【0084】
ステップS11において、電池製造装置BBは、注液装置1により、容器111と蓋部材112との接合が行われた電池ケース110の内部に、注液口120から電解液を注液し、ステップS12に処理を移す。
【0085】
ステップS12において、電池製造装置BBは、吸収体巻き出し部332および吸収体巻き取り部333により、電池ケース110の外面のうち注液口120の周囲に吸収体331を押し当てた状態で、吸収体331を第2の方向に沿って移動させて、液状化した電解質塩を吸収体331に吸収させ、ステップS13に処理を移す。
【0086】
ステップS13からS19のそれぞれにおいて、電池製造装置BBは、図5に示したステップS2からS8のそれぞれにおいて電池製造装置AAが行った処理と同様の処理を行う。
【0087】
以上の電解質塩除去装置3Aによれば、電解質塩除去装置3が奏することのできる上述の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
【0088】
電解質塩除去装置3Aは、事前除去部33により、電池ケース110の外面に付着している電解液を、溶接装置2による注液口120の溶接が行われるよりも前に除去する。このため、電池ケース110の外面に付着している電解液を、結晶化が進行していない段階で除去しておくことができるので、電解質塩を少なくすることができる。
【0089】
また、電解質塩除去装置3Aは、事前除去部33をドライ環境に設ける。このため、電池ケース110がドライ環境にある段階で、この電池ケース110の外面に付着している電解液を除去することができる。
【0090】
また、電解質塩除去装置3Aにおいて、事前除去部33に、液状化した電解質塩を吸収可能な吸収体331が設けられ、吸収体331は、電解液の溶媒を含んでいる。このため、電解液に吸収体331を接触させて、電解液の除去をより的確に行うことができる。
【0091】
また、電解質塩除去装置3Aにおいて、吸収体321は、第1の方向に沿って移動するのに対して、吸収体331は、第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動する。このため、吸収体321と吸収体331とを同じ方向に沿って移動させる場合と比べて、電解液や液状化した電解質塩の拭き残しを防止することができる。
【0092】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
【0093】
例えば、上述の第1実施形態や第2実施形態では、液状化した電解質塩や電解液を、吸収体321や吸収体331で吸収するものとした。しかし、これに限らず、吸収体321や吸収体331の代わりに、液状化した電解質塩や電解液を吸引する吸引手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0094】
AA、BB;電池製造装置
1;注液装置
2;溶接装置
3、3A;電解質塩除去装置
31;液状化部
311;移送部
312;送風部
32;除去部
321、331;吸収体
322、332;吸収体巻き出し部
323、333;吸収体巻き取り部
33;事前除去部
100;リチウムイオン二次電池
110;電池ケース
120;注液口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8